【解決手段】パンツ型吸収性物品1を、円周800mmの円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前側腰回り領域13Bのサイドシール部303間の円弧の寸法が、後側腰回り領域15Bのサイドシール部303間の円弧の寸法よりも、40mm以上大きく、後側腰回り領域15Bを、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、後側腰回り領域15Bの幅方向の伸縮応力が、同様の条件で試験した際の前側腰回り領域13Bの幅方向の伸縮応力に対して、1.3倍以上である、パンツ型吸収性物品1を提供する。
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びに前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体、を有する吸収性本体と、不織布及び伸縮性部材を積層した外装体と、を備える、パンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、前側領域、股下領域、後側領域からなり、
前記パンツ型吸収性物品は、前記前側領域の両側縁部と前記後側領域の両側縁部がそれぞれサイドシール部で接合されることにより、前記前側領域及び前記後側領域の上部にウエスト開口部、前記前側領域及び前記後側領域の間の前記股下領域の左右両側に脚開口部、をそれぞれ形成しており、
前記前側領域は、上部から前側ウエスト領域と前側腰回り領域に区分され、
前記後側領域は、上部から後側ウエスト領域と後側腰回り領域に区分され、
前記前側ウエスト領域と前記後側ウエスト領域には、幅方向に沿って複数のウエスト領域伸縮性部材が設けられており、
前記前側腰回り領域には、前側腰回り領域伸縮性部材が、前記後側腰回り領域には、後側腰回り領域伸縮性部材が、幅方向に沿って、それぞれ複数設けられており、
前記脚開口部周縁には、前記脚開口部に沿って脚回り伸縮性部材が設けられており、
前記前側腰回り領域伸縮性部材及び前記後側腰回り領域伸縮性部材は、前記パンツ型吸収性物品の厚み方向において、前記吸収体と重複しないように配置されており、
前記パンツ型吸収性物品を、円周800mmの円筒の外側に、前記円筒の底面が前記ウエスト開口部から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前側腰回り領域のサイドシール部間の円弧の寸法が、前記後側腰回り領域のサイドシール部間の円弧の寸法よりも、40mm以上大きく、
前記後側腰回り領域を、伸長前の前記後側腰回り領域の幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の前記後側腰回り領域の幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、前記後側腰回り領域の幅方向の伸縮応力が、
前記前側腰回り領域を、伸長前の前記前側腰回り領域の幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の前記前側腰回り領域の幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、前記前側腰回り領域の幅方向の伸縮応力に対して、1.3倍以上である、パンツ型吸収性物品。
前記パンツ型吸収性物品を、円周800mmの円筒の外側に、前記円筒の底面が前記ウエスト開口部から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前記後側腰回り領域の着圧が前記前側腰回り領域の着圧に対して1.2倍以上である、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
1本の前記後側腰回り領域伸縮性部材を、伸長前の前記後側腰回り領域伸縮性部材の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、伸長前の前記後側腰回り領域伸縮性部材の寸法の2.0倍となるまで戻した時点における、1本の前記後側腰回り領域伸縮性部材の伸縮応力が、
1本の前記前側腰回り領域伸縮性部材を、伸長前の前記前側腰回り領域伸縮性部材の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、伸長前の前記前側腰回り領域伸縮性部材の寸法の2.0倍となるまで戻した時点における、1本の前記前側腰回り領域伸縮性部材の伸縮応力に対して、1.2倍以上である、請求項1から4のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児、成人及び病人の排泄物を吸収するため、パンツタイプの紙おむつ(以下、パンツ型吸収性物品と称する)が使用されている。パンツ型吸収性物品は、ウエスト開口部と一対の脚開口部とを形成するとともに、排泄物を吸収する吸収性本体とその支持部材である外装体を有し、吸収性本体が前後から着用者の股間部を覆っている。そして、脚開口部に着用者の両足を入れ、紙おむつ本体を胴回りへ引っ張り上げて着用する。
【0003】
ところで、パンツ型吸収性物品の着用の対象となる高齢者は、前傾姿勢となり、また、腹部の筋力低下により下腹部が突出した体型になりやすい傾向にある。そして、前傾姿勢となることで後側(背側)からパンツ型吸収性物品がずれ落ちやすく、また、下腹部が突出した体型になると、パンツ型吸収性物品の着用時に下腹部の圧迫感を生じやすいという問題があった。このような、問題を解決する方法として、外装体の前側(着用者の腹回りに相当)の寸法を後側(着用者の背回りに相当)の寸法よりも大きくすることが考えられる。しかしながら、このような形状を有するパンツ型吸収性物品を高速で製造することは困難であり、製造効率が低下し、コストアップにつながるという問題があった。そこで、外装体の寸法ではなく、ウエスト領域や腰回り領域に幅方向に沿って設けられる伸縮性弾性部材について着目された検討がなされている。
【0004】
そのような観点で検討されたパンツ型吸収性物品として、例えば、特許文献1には、前側胴回り部から後側胴回り部へ向かう長さ方向に略直交する方向である幅方向に沿って複数設けられたものであって、当該前側胴回り部を伸縮させるための前側胴回り伸縮材と、後側胴回り部の幅方向に沿って複数設けられたものであって、当該後側胴回り部を伸縮させるための後側胴回り伸縮材とを備え、複数の前側胴回り伸縮材の合計の伸長応力が複数の後側胴回り伸縮材の合計の伸長応力と略等しくなるように、かつ、前側胴回り伸縮材の本数が後側胴回り伸縮材の本数よりも多くなるように、当該複数の前側胴回り伸縮材及び当該複数の後側胴回り伸縮材を配置した、パンツ型吸収性物品が開示されている。また、当該文献には、複数の前側胴回り伸縮材の合計の伸長応力が複数の後側胴回り伸縮材の合計の伸長応力と略等しくなるように、当該複数の前側胴回り伸縮材及び当該複数の後側胴回り伸縮材を配置することにより、装着者の背側と腹側を均等に締め付けることができ、排泄後の紙おむつの重量増加により、前側胴回り部又は後側胴回り部の一方がずり落ちることを防止することができると記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、透液性のトップシート、不透液性のバックシート、これらトップシートとバックシートとの間に配設された吸収体、及び、バックシートの外面側に結合された外装シートを備えた吸収性物品体を具備し、吸収性物品体は、長手方向に順次一体的に設けられ、装着者の背側に位置する背側胴回り部、幅方向両側に脚回り部を有する股下回り部及び装着者の腹側に位置する腹側胴回り部と、背側胴回り部の幅方向の両側部と腹側胴回り部の幅方向の両側部との接合により形成され、装着者の腰回りに位置する腰回り開口部及び装着者の脚回りに位置する一対の脚回り開口部と、腰回り開口部の縁部の全周に亘って配設された腰回り用弾性部材と、吸収性物品体の幅方向に伸縮可能な複数の背側弾性部材を有し、背側胴回り部に吸収性物品体の長手方向に亘って形成された背側弾性領域と、吸収性物品体の幅方向に伸縮可能な複数の腹側弾性部材を有し、腹側胴回り部に吸収性物品体の長手方向に亘って形成された腹側弾性領域とを備え、背側弾性部材は、腹側弾性部材よりも本数が多く設けられ、腰回り用弾性部材に最も近い部分ところの腰回り用弾性部材との間隔が、腹側弾性部材の腰回り用弾性部材に最も近い部分ところの腰回り用弾性部材との間隔と略等しい位置に配設され、背側弾性領域は、腹側弾性領域よりも吸収性物品体の長手方向に幅広に形成され、吸収体は、腹側弾性領域と重ならず、かつ背側弾性領域と重なる位置に配設されたことを特徴とするパンツ型吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載のパンツ型吸収性物品では、複数の前側胴回り伸縮材の合計の伸長応力が複数の後側胴回り伸縮材の合計の伸長応力と略等しくなるように、当該複数の前側胴回り伸縮材及び当該複数の後側胴回り伸縮材が配置されているため、下腹部が突出した高齢者が着用した場合に、下腹部に圧迫感を生じる可能性があった。また、特許文献2には、背側弾性部材は、腹側弾性部材よりも本数が多く設けられ、腰回り用弾性部材に最も近い部分とこの腰回り用弾性部材との間隔が、腹側弾性部材の腰回り用弾性部材に最も近い部分とこの腰回り用弾性部材との間隔と略等しい位置に配設され、背側弾性領域は、腹側弾性領域よりも吸収性物品体の長手方向に幅広に形成され、密着性がよく、ずれ落ちを防止できると記載されているが、この工夫だけでは、特に、前傾姿勢になりやすい高齢者が当該パンツ型吸収性物品を着用する場合において、十分に後側(背側)からのずれ落ちを防止できない可能性があった。すなわち、特許文献1及び2に記載のパンツ型吸収性物品においても、下腹部の圧迫感の軽減及び後側(背側)からのずれ落ちのしづらさの双方の点を、十分に満足できるものではなかった。したがって、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、下腹部の圧迫感及び後側(背側)からのずれ落ちが十分に抑制された、パンツ型吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、着用時に着用者の腸骨領域に配されるパンツ型吸収性物品の領域を腰回り領域とした場合において、着用時における、前側の腰回り領域の寸法を、後側の腰回り領域の寸法より大きくなるように調整し、腰回り領域を所定の範囲に伸長させたあとに、所定の位置まで戻した時点の後側の伸縮応力を前側の伸縮応力よりも大きくすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びに前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体、を有する吸収性本体と、不織布及び伸縮性部材を積層した外装体と、を備える、パンツ型吸収性物品であって、前記外装体は、前側領域、股下領域、後側領域からなり、前記パンツ型吸収性物品は、前記前側領域の両側縁部と前記後側領域の両側縁部がそれぞれサイドシール部で接合されることにより、前記前側領域及び前記後側領域の上部にウエスト開口部、前記前側領域及び前記後側領域の間の前記股下領域の左右両側に脚開口部、をそれぞれ形成しており、前記前側領域は、上部から前側ウエスト領域と前側腰回り領域に区分され、前記後側領域は、上部から後側ウエスト領域と後側腰回り領域に区分され、前記前側ウエスト領域と前記後側ウエスト領域には、幅方向に沿って複数のウエスト領域伸縮性部材が設けられており、前記前側腰回り領域には、前側腰回り領域伸縮性部材が、前記後側腰回り領域には、後側腰回り領域伸縮性部材が、幅方向に沿って、それぞれ複数設けられており、前記脚開口部周縁には、前記脚開口部に沿って脚回り伸縮性部材が設けられており、前記前側腰回り領域伸縮性部材及び前記後側腰回り領域伸縮性部材は、前記パンツ型吸収性物品の厚み方向において、前記吸収体と重複しないように配置されており、前記パンツ型吸収性物品を、円周800mmの円筒の外側に、前記円筒の底面が前記ウエスト開口部から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前側腰回り領域のサイドシール部間の円弧の寸法が、前記後側腰回り領域のサイドシール部間の円弧の寸法よりも、40mm以上大きく、前記後側腰回り領域を、伸長前の前記後側腰回り領域の幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の前記後側腰回り領域の幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、前記後側腰回り領域の幅方向の伸縮応力が、前記前側腰回り領域を、伸長前の前記前側腰回り領域の幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の前記前側腰回り領域の幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、前記前側腰回り領域の幅方向の伸縮応力に対して、1.3倍以上である、パンツ型吸収性物品である。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のパンツ型吸収性物品であって、前記パンツ型吸収性物品を、円周800mmの円筒の外側に、前記円筒の底面が前記ウエスト開口部から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前記後側腰回り領域の着圧が前記前側腰回り領域の着圧に対して1.2倍以上であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のパンツ型吸収性物品であって、前記後側腰回り領域伸縮性部材の本数が、前記前側腰回り領域伸縮性部材の本数に対して、1.5倍以上であることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品であって、前記後側腰回り領域の伸長率が、前記前側腰回り領域の伸長率に対して、1.3倍以上であることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品であって、1本の前記後側腰回り領域伸縮性部材を、伸長前の前記後側腰回り領域伸縮性部材の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、伸長前の前記後側腰回り領域伸縮性部材の寸法の2.0倍となるまで戻した時点における、1本の前記後側腰回り領域伸縮性部材の伸縮応力が、1本の前記前側腰回り領域伸縮性部材を、伸長前の前記前側腰回り領域伸縮性部材の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、伸長前の前記前側腰回り領域伸縮性部材の寸法の2.0倍となるまで戻した時点における、1本の前記前側腰回り領域伸縮性部材の伸縮応力に対して、1.2倍以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパンツ型吸収性物品において、パンツ型吸収性物品を、円周800mmの円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前側腰回り領域のサイドシール部間の円弧の寸法が、前記後側腰回り領域のサイドシール部間の円弧の寸法よりも、40mm以上大きくなるように調整されている。そのため、着用時の下腹部の圧迫感を十分に抑制することができる。
【0015】
さらに、後側腰回り領域を、伸長前の後側腰回り領域の幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の後側腰回り領域の幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、後側腰回り領域の幅方向の伸縮応力が、前側腰回り領域を、伸長前の前側腰回り領域の幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の前側腰回り領域の幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、前側腰回り領域の幅方向の伸縮応力に対して、1.3倍以上となるように、調整されている。このため、着用者の下腹部の圧迫感と後側(背側)からのずれ落ちを十分に抑制することができる。よって、本発明によれば、下腹部の圧迫感及び後側(背側)からのずれ落ちが十分に抑制された、パンツ型吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について説明する。なお、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の腹側となる位置を「前」又は「前側」と称し、着用者の背側となる位置を「後」又は「後側」と称する。また、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の肌側となる面を「内側」と称する。
【0018】
<パンツ型吸収性物品>
図1は、本発明のパンツ型吸収性物品1の斜視図であり、
図2は、本発明のパンツ型吸収性物品1の展開平面図である。パンツ型吸収性物品1は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に略帯状の形態を有する吸収性本体20と、吸収性本体20の外側に重なりつつ吸収性本体20の周囲に延びてパンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する外装体30と、を有している。そして、
図1及び
図2に示すように、外装体30によりパンツ型吸収性物品1の外形形状が構成され、外装体30は、着用者の腹部に当接する前側領域13、着用者の背部に当接する後側領域15、及び吸収性本体20の一部又は全部が重なるように配置される股下領域14に区分される。
【0019】
なお、伸縮性部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の長手方向の寸法は600mm以上1000mm以下、幅方向の寸法は450mm以上900mm以下であることが好ましい。伸縮性部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【0020】
[吸収性本体]
図2に示すように、吸収性本体20は、液透過性のトップシート24と、液不透過性のバックシート25と、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29とを含む。なお、上記同様に、各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができるようにするために、吸収性本体20の長手方向の寸法は300mm以上500mm以下、幅方向の寸法は100mm以上300mm以下であることが好ましい。
【0021】
(トップシート)
トップシート24は、体液が吸収体29へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布等の親水性の不織布材料等、感触が柔らかで肌に刺激を与えない材料から構成される。また、トップシート24には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート24には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート24の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート24の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体29へと誘導するために必要とされる、吸収体29を覆う形状であればよい。
【0022】
(バックシート)
バックシート25は、吸収体29が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、通気性又は非通気性の樹脂フィルムから形成される。ここで、使用できる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。強度及び加工性の点から、バックシート25の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有する樹脂フィルムをバックシート25として使用することが好ましい。バックシート25に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート25にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0023】
(吸収体)
吸収性本体20は、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29を有している。吸収体29は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体29の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体29に使用される高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体29のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、10g/m
2以上500g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0025】
吸収体29における吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体29の形状の安定化の目的から、吸収体29をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0026】
吸収体29は、2層以上の吸収体からなるものであってもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0027】
[外装体]
外装体30は、パンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する部材であり、吸収性本体20のバックシート25側に積層され、不織布及び伸縮性部材を積層して形成されたものである。不織布の態様は特に限定されないが、一般に外装不織布シート301と、外装不織布シート301の身体側の内装不織布シート302から構成される。なお、外装体30は、前側領域13、股下領域14、後側領域15の3つの領域からなる。ここで、これらの領域の区分について、長手方向において、後述するサイドシール部303を設ける領域(すなわち脚開口部12を形成しない領域)を、前側領域13又は後側領域15とし、サイドシール部303を設けない領域(すなわち、脚開口部12を形成する領域)を股下領域14とする。
【0028】
外装不織布シート301は、股下領域14の中心線を中心として略対称な前側領域13と後側領域15とを有し、吸収性本体20も上記中心線を中心として略対称に配置されている。そして、吸収性本体20が内側となるように外装不織布シート301(及び吸収性本体20)が上記中心線で二つ折りにされ、前側領域13及び後側領域15の両側縁部がサイドシール部303を介して接合されている。これにより、外装不織布シート301は、伸縮性を有するウエスト開口部11と、一対の脚開口部12とを形成し、パンツ型吸収性物品1を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。
【0029】
外装不織布シート301の内側には、内装不織布シート302が積層されており、外装体30の強度を高めるようになっている。また、外装体30には、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に加えて、吸収性本体20の周縁を覆う補助シートが設けられ、これが内装不織布シート302に積層されていてもよい。外装不織布シート301及び内装不織布シート302には、サーマルボンド不織布、エアースルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアースルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、10g/m
2以上40g/m
2以下とすればよい。
【0030】
(前側腰回り領域と後側腰回り領域の態様)
さらに、本発明においては、前側領域13は、
図1及び
図2に示すように、上部から前側ウエスト領域13Aと前側腰回り領域13Bに区分され、後側領域15は、上部から後側ウエスト領域15Aと後側腰回り領域15Bに区分される。ここで、前側腰回り領域13Bと後側腰回り領域15Bは、着用時に腸骨付近に触れる領域を指し、前側ウエスト領域13Aと後側ウエスト領域15Aは、それぞれ前側腰回り領域13Bと後側腰回り領域15Bよりも上部方向の領域を指す。なお前側ウエスト領域13Aと後側ウエスト領域15Aは、後述するウエスト領域伸縮性部材311が配される領域をいう。ここで、前側ウエスト領域13Aと後側ウエスト領域15Aは、ウエスト開口部11を形成する辺(すなわち、
図2において長手方向両端部に位置する辺)から、股下領域14の方向に向かって20〜60mm程度までの領域となる。前側腰回り領域13Bは、前側領域13内において、前側ウエスト領域13Aを除く領域をいい、同様に、後側腰回り領域15Bは、後側領域15内において、後側ウエスト領域15Aを除く領域をいう。
【0031】
前側ウエスト領域13Aと後側ウエスト領域15Aには、幅方向に沿って複数のウエスト領域伸縮性部材311が設けられており、脚開口部12周縁には、脚開口部12に沿って脚回り伸縮性部材314が設けられている。これにより、パンツ型吸収性物品1の着用時の着用者のウエストや脚回りにおけるパンツ型吸収性物品1のフィット性を付与することができる。なお、各領域における、ウエスト領域伸縮性部材311の本数は4本以上12本以下であることが好ましく、脚回り伸縮性部材314の本数(1つの脚開口部12周縁分)は、1本以上5本以下であることが好ましい。
【0032】
さらに、前側腰回り領域13Bには、前側腰回り領域伸縮性部材312が、後側腰回り領域15Bには、後側腰回り領域伸縮性部材313が、幅方向に沿って、それぞれ複数設けられている。これにより、着用者の腰回り(着用者の腸骨領域に相当する位置)におけるパンツ型吸収性物品1のフィット性を付与することができる。なお、吸収体20と、前側腰回り領域伸縮性部材312又は後側腰回り領域伸縮性部材313とが、パンツ型吸収性物品1の厚み方向において重複すると、重複した領域における吸収体20が収縮し変形してしまうため、吸収性が低下し漏れが生じやすくなる。このため、吸収体20が収縮することを防止するために、前側腰回り領域伸縮性部材312及び後側腰回り領域伸縮性部材313は、パンツ型吸収性物品1の厚み方向において、吸収体20と重複しないように配置されている。本発明では、主に、前側腰回り領域13B及び後側腰回り領域15Bの態様を工夫することにより、下腹部の圧迫感及び後側(背側)からのずれ落ちを抑制させたパンツ型吸収性物品1を得ることを実現している。
【0033】
本発明において、パンツ型吸収性物品1を、円周800mmの円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、前側腰回り領域13Bのサイドシール部303間の円弧の寸法が、後側腰回り領域15Bのサイドシール部303間の円弧の寸法よりも、40mm以上大きくなるように調整している。そのため、着用時の下腹部の圧迫感を十分に抑制することができ、特に、下腹部が突出した高齢者が着用した場合に、下腹部の圧迫感を効果的に軽減することができる。なお、上記の条件で試験した場合に、前側腰回り領域13Bのサイドシール部303間の円弧の寸法が、後側腰回り領域15Bのサイドシール部303間の円弧の寸法よりも、40mm以上150mm以下であることが好ましい。当該数値が150mmを超えると、着用時に前側からずれ落ちやすくなる。さらに、上記の数値範囲は55mm以上100mm以下であることがより好ましい。
【0034】
次に、本発明では、後側腰回り領域15Bを、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、後側腰回り領域15Bの幅方向の伸縮応力が、前側腰回り領域13Bを、伸長前の前側腰回り領域13Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の前側腰回り領域13Bの幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、前側腰回り領域13Bの幅方向の伸縮応力に対して、1.3倍以上であるように調整されている。これにより、下腹部の圧迫感及び後側(背側)からのずれ落ちを抑制することができ、特に、前傾姿勢となりやすく、下腹部が突出した体型である高齢者が着用する際に、下腹部の圧迫感及び後側(背側)からのずれ落ちを効果的に抑制することができる。また、上記の条件で試験した場合に、後側腰回り領域15Bの幅方向の伸縮応力が、前側腰回り領域13Bの幅方向の伸縮応力に対して、1.3倍以上2.5倍以下であることが好ましい。当該数値が2.5倍を超えると、着用者の後側(背側)の圧迫感が強くなりすぎてしまう。さらに、上記の数値範囲は、着用者の後側(背側)の圧迫感を抑えつつ、下腹部の圧迫感及び後側からのずれ落ちをより効果的に抑制するために、1.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。
【0035】
上記の伸縮応力の測定方法について、説明する。まず、パンツ型吸収性物品1を
図2のように展開させ、後側腰回り領域15Bの幅方向両端部を、テンシロン型引張試験機のチャックにそれぞれ取り付け、後側腰回り領域15Bの幅方向の両端がチャックに挟まれた測定サンプルを、クロスヘッド移動速度300mm/minの条件で、幅方向への伸長を開始させ、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、元の状態に戻すまでの、SS曲線を作成し、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の2.0倍まで幅方向に伸長させたあとに、伸長前の後側腰回り領域15Bの幅方向の寸法の1.5倍となるまで戻した時点における、SS曲線上の数値を読み取り、伸縮応力とする。前側腰回り領域13Bの幅方向の伸縮応力についても同様に測定する。
【0036】
また、パンツ型吸収性物品1を、円周800mmの円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させた際の、後側腰回り領域15Bの着圧が前側腰回り領域13Bの着圧に対して1.2倍以上であることが好ましい。当該条件で測定した着圧を上記の範囲とすることにより、下腹部が突出した体型である高齢者が前傾姿勢になった際の、着用者の前後の腰回り(着用者の腸骨領域に相当する位置)の着圧差が小さくなるため、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側(背側)からのずれ落ちを抑制することができる。また、当該条件で試験した場合における、後側腰回り領域15Bの着圧が前側腰回り領域13Bの着圧に対して1.2倍以上2.0倍以下であることがより好ましく、1.3倍以上1.7倍以下であることが更に好ましい。
【0037】
上記の着圧の測定には、エイエムアイ・テクノ社製のエアパック式接触圧測定器を用いる。円周800mmの円周の測定位置にエアパックを貼り付け、パンツ型吸収性物品1を、当該円筒の外側に、円筒の底面がウエスト開口部11から深さ150mmの位置と一致するように装着させ、装着前後のエアパックの圧力差を読み取り着圧とし、後側腰回り領域15Bと前側腰回り領域13Bそれぞれの幅方向中心線上の着圧を読み取り、各領域の着圧として採用する。
【0038】
また、後側腰回り領域伸縮性部材313の本数が、前側腰回り領域伸縮性部材312の本数に対して、1.5倍以上であることが好ましい。このように調整することにより、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側(背側)からのずれ落ちをより効果的に抑制することができる。また、当該数値が大きくなりすぎると前側腰回り領域伸縮性部材312の1本にかかる圧力が大きくなり、前側腰回り領域伸縮性部材312が下腹部にくい込み、下腹部の圧迫感を生じるため、後側腰回り領域伸縮性部材313の本数が、前側腰回り領域伸縮性部材312の本数に対して、1.5倍以上3.0倍以下であることがより好ましく、1.7倍以上2.5倍以下であることが更に好ましい。なお、後側腰回り領域伸縮性部材313の本数は8本以上20本以下であることが好ましい。
【0039】
また、後側腰回り領域13Bの伸長率が、前側腰回り領域15Bの伸長率に対して、1.3倍以上であることが好ましい。このように調整することにより、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側からのずれ落ちをより効果的に抑制することができる。伸張率(%)は、静置状態の後側腰回り領域又は前側腰回り領域それぞれの長さに対する、それぞれの最大伸張時の長さ(%)を示す。また、当該数値が大きくなりすぎると、パンツ型吸収性物品1の製造工程において、前側領域13の両側縁部と後側領域15の両側縁部を、それぞれサイドシール部303を介して接合する際の効率が低下するため、1本あたりの後側腰回り領域伸縮性部材313の伸長率が、1本あたりの前側腰回り領域伸縮性部材312の伸長率に対して、1.3倍以上2.0倍以下であることがより好ましく、1.3倍以上1.5倍以下であることが更に好ましい。
【0040】
また、1本の後側腰回り領域伸縮性部材313を、伸長前の後側腰回り領域伸縮性部材313の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、伸長前の後側腰回り領域伸縮性部材313の寸法の2.0倍となるまで戻した時点における、1本の後側腰回り領域伸縮性部材313の伸縮応力が、1本の前側腰回り領域伸縮性部材312を、伸長前の前側腰回り領域伸縮性部材312の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、伸長前の前側腰回り領域伸縮性部材312の寸法の2.0倍となるまで戻した時点における、1本の前側腰回り領域伸縮性部材312の伸縮応力に対して、1.2倍以上であることが好ましい。このように調整することにより、下腹部の圧迫感を抑えつつ、前傾姿勢になった際の後側からのずれ落ちをより効果的に抑制することができる。このような性質を有する伸縮性部材312、313を用いることにより、上記した前側腰回り領域13Bと後側腰回り領域15Bとの伸縮応力及び着圧の関係を調整しやすくなる。
【0041】
1本の後側腰回り領域伸縮性部材313両端部を、テンシロン引張試験機のチャックにそれぞれ取り付け、1本の後側腰回り領域伸縮性部材313両端部がチャックに挟まれた測定サンプルを、クロスヘッド移動速度300mm/minの条件で、伸長を開始させ、伸長前の後側腰回り領域の寸法の3.0倍まで伸長させたあとに、元の状態に戻すまでの、SS曲線を作成し、伸長前の後側腰回り領域伸縮性部材313の寸法の3.0倍まで伸長させた後に、伸長前の寸法の2.0倍まで戻した時点における、SS曲線上の数値を読み取り、伸縮応力とする。1本の前側腰回り領域伸縮性部材312についても同様に測定する。
【0042】
上記した各伸縮性部材311、312、313は、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に接合されている。なお、内装不織布シート302と各伸縮性部材311、312、313とは、各伸縮性部材にのみ介在するホットメルト接着剤を介して互いに接着されていることが好ましい。
伸縮性部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができ、その太さは、300dtex以上1500dtex以下であることが好ましい。
【0043】
[パンツ型吸収性物品の製造方法]
パンツ型吸収性物品1の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、吸収体29をトップシート24とバックシート25との間に挟持し、トップシート24とバックシート25を接合して吸収性本体20を作製する工程、前側ウエスト領域13A、前側腰回り領域13B、後側ウエスト領域15A、後側腰回り領域15B及び脚開口部12周縁において、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に、上記した各伸縮性部材311、312、313を配置し、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に接合する工程、外装体30の身体側に吸収性本体20を配設する工程、前側領域13の両側縁部と後側領域15の両側縁部を、それぞれサイドシール部303を介して接合する工程、の順に各工程を経ることで、パンツ型吸収性物品1を得ることができる。
【0044】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(パンツ型吸収性物品の作製)
まず、フラッフパルプ及びSAPを混合して、吸収体を準備し、吸収体をトップシートとバックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートの全周に亘ってホットメルト接着剤を用いて固定し、吸収性本体を作製する。前側ウエスト領域、後側ウエスト領域、前側腰回り領域、後側腰回り領域及び脚開口部周縁において、外装不織布シート及び内装不織布シートに、上記した各伸縮性部材を配置し、外装不織布シート及び内装不織布シートに接合した。その後、外装体の身体側に吸収性本体を配設し、前側領域及び後側領域の両側縁部を、サイドシール部を介して接続し、実施例1から4、比較例1及び比較例2のパンツ型吸収性物品を得た。なお、トップシートとしては、サーマルボンド不織布を用い、外装不織布シート、及び内装不織布シートとしては、スパンボンド不織布を用い、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルムを用いた。
【0047】
伸縮性部材については、ウエスト伸縮性部材(太さ1240detx、糸状の合成ゴム)を、幅方向に沿って、前側ウエスト領域と後側ウエスト領域に、それぞれ6本ずつ配置させ、脚回り伸縮性部材(太さ940detx、糸状の合成ゴム)を、脚開口部周縁に、脚開口部に沿って、左右両側にそれぞれ3本ずつ配置させた。前側腰回り領域伸縮性部材及び後側腰回り領域伸縮性部材については、太さ620detxの糸状の合成ゴムを用い、前側腰回り領域と後側腰回り領域にそれぞれ表1に記載の本数で配置させた。なお、前側腰回り領域伸縮性部材及び後側腰回り領域伸縮性部材は、パンツ型吸収性物品の厚み方向において、吸収体(長手方向420mm、幅方向190mm)と重複しないように配置した。また、パンツ型吸収性物品の大きさとしては、各伸縮性部材を配設する前のパンツ型吸収性物品の展開時の長手方向の寸法を780mm、幅方向の寸法を560mm(成人用のMサイズに相当)になるように調整した。
【0048】
このようにして得られた各パンツ型吸収性物品を用いて、以下の官能評価を行った。官能評価では、ウエストサイズが60cm以上90cm以下の10名の成人をパネラーとし、各パンツ型吸収性物品をそれぞれ着用して生活し、以下の基準により評価を行った。
(官能評価:下腹部の圧迫感のなさ)
〇:「下腹部に圧迫感がある」がいないか3人以下のとき
△:「下腹部に圧迫感がある」が4人以上7人以下のとき
×:「下腹部に圧迫感がある」が8人以上10名以下のとき
(官能評価:後側(背側)のずれ落ち感)
〇:「後側のずれ落ち感がある」がいないか3人以下のとき
△:「後側のずれ落ち感がある」が4人以上7人以下のとき
×:「後側のずれ落ち感がある」が8人以上10名以下のとき
(官能評価:着用時の動きやすさ)
〇:「動きにくい」がいないか3人以下のとき
△:「動きにくい」が4人以上7人以下のとき
×:「動きにくい」が8人以上10名以下のとき
【0049】
【表1】
【0050】
以上より、本発明によれば、下腹部の圧迫感及び後側からのずれ落ちが十分に抑制され、更に、着用時の動きやすさを兼ね備えた、パンツ型吸収性物品を提供することができる。