【解決手段】上方への開口部を有し、その開口部を前方へ倒すよう回転可能な内釜2と、この内釜2の外側に設けられて蒸気が供給されるジャケット3と、ジャケット3からのドレンを貯留するドレンタンク27とを備える。ドレンタンク27は、ジャケット3付きの内釜2と一体回転可能に設けられる。連通切替弁31を開けて、ジャケット3からドレンタンク27へドレンを排出後、連通切替弁31を閉じた状態でタンク給蒸弁34を開ける。ドレン排出路29の温度が設定温度を超えると、ドレンが排出されたとして、タンク給蒸弁34を閉じる。
ボイラに接続されるジャケット給蒸路と、真空発生装置に接続されるジャケット排気路とが、共通管路にまとめられて、前記内釜の回転軸部を介して、前記ジャケットに接続され、
前記回転軸部から前記ジャケットへの前記共通管路に、前記ジャケット圧制御弁が設けられると共に、前記タンク給蒸路が分岐して設けられ、
前記共通管路を介して、前記ジャケット内を前記真空発生装置で減圧するか、前記ジャケット内に前記ボイラからの蒸気を供給するかを切替可能とされる
ことを特徴とする請求項3に記載の蒸気釜。
前記ジャケット内から空気排除後、前記ジャケット内への蒸気供給を制御して、前記ジャケット内を大気圧未満の圧力としつつ、前記内釜を100℃未満で加熱可能とされ、
前記ドレンタンクは、タンク給蒸路を介して大気圧を超える圧力の蒸気が供給可能とされる一方、ドレン排出路を介してドレンを排出可能とされ、
前記タンク給蒸路にタンク給蒸弁が設けられる一方、前記ドレン排出路にスチームトラップおよび/またはドレン排出弁が設けられ、
前記ジャケットと前記ドレンタンクとの連通路には連通切替弁が設けられ、
前記各弁を制御する制御器は、前記連通切替弁を閉じた状態で前記タンク給蒸弁を開けて、前記ドレンタンクから前記ドレン排出路へドレンを排出し、前記ドレンタンクまたは前記ドレン排出路の温度が設定温度を超えるか、前記タンク給蒸弁の開放から設定開放時間経過すると、前記タンク給蒸弁を閉じる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気釜。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示される蒸気釜は、食品が収容される内釜(5)の周囲にジャケット(25)を備え、ジャケット内に蒸気を供給して、内釜内の食品を加熱できる。そして、加熱後には、内釜内を真空ポンプで減圧して、食品を冷却できる。また、内釜は、支持フレーム(3)に傾動回転可能に支持され、傾動により開口から食品を排出できる。
【0003】
しかしながら、ジャケット内を大気圧未満として、100℃未満の蒸気により、食品を加熱できるものではない。ジャケット内を真空下にする手段を備えないし、真空下のジャケットからドレンを排出する手段も備えない。ジャケット内を真空下とする場合、スチームトラップだけでは、円滑にドレンを排出することができない。
【0004】
一方、下記特許文献2に開示される蒸気釜は、エゼクタ(ノズル18,吸引室44)を備えることで、ジャケット(16)内を大気圧未満として、100℃未満の蒸気により、内釜(15)内の食品を加熱することができる。また、真空下のジャケット内からのドレンは、復水回収装置(20)により排出可能とされる。
【0005】
しかしながら、復水回収装置は、単なるタンクではなく、構造が複雑である。すなわち、復水回収装置は、ジャケットからの管路(19)や、蒸気供給源からの管路(23)や、復水排出用の管路(29)に、それぞれ弁を備える以外に、復水回収装置自体に、複数の弁(給気弁50,排気弁51,弁体60)の他、フロート(56)およびリンク機構などが内蔵されて構成される。ジャケットから復水回収装置へドレンを流下させる関係上、復水回収装置はジャケット付きの内釜の下方に設置される必要があるので、復水回収装置が複雑であるとコンパクトに構成できず、内釜の設置高さを抑えて作業性を向上することができない。また、復水回収装置は据え置き型とならざるを得ず、内釜を傾動させることもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、内釜の上部開口を前方へ倒すよう回転可能であると共に、ジャケット内を大気圧未満として100℃未満の蒸気により食品を加熱可能な蒸気釜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上方への開口部を有し、その開口部を前方へ倒すよう回転可能な内釜と、この内釜の外側に設けられて蒸気が供給されるジャケットと、このジャケット付きの内釜と一体回転可能に設けられ、前記ジャケットからのドレンを貯留するドレンタンクとを備えることを特徴とする蒸気釜である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ジャケットとは別にドレンタンクを備える。そのため、ジャケット内を大気圧未満として100℃未満の蒸気により食品を加熱する場合でも、ジャケット内で生じたドレンをドレンタンクに移してから排出することができる。また、ドレンタンクをジャケット付きの内釜と一体回転可能に設けることで、ジャケット内を大気圧未満として100℃未満の蒸気により食品を加熱可能な蒸気釜でありながら、内釜の上部開口を前方へ倒すよう回転可能とでき、内釜からの食品の排出を容易に行える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、ボイラからの蒸気が、前記内釜の回転軸部を介して、タンク給蒸路により前記ドレンタンクに供給可能とされ、前記ジャケットと前記ドレンタンクとの連通路には連通切替弁が設けられる一方、前記タンク給蒸路にはタンク給蒸弁が設けられ、前記ドレンタンクからのドレン排出路は、スチームトラップおよび/またはドレン排出弁を備えると共に、前記回転軸部を介してドレン排出口へ開口され、前記タンク給蒸弁と、前記スチームトラップおよび/または前記ドレン排出弁とは、前記ジャケット付きの内釜と一体回転可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の蒸気釜である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ドレンタンクは、ジャケットとの連通路に連通切替弁が設けられ、タンク給蒸路にタンク給蒸弁が設けられ、ドレン排出路にスチームトラップおよび/またはドレン排出弁が設けられる。そのため、これら弁の開閉を制御することで、ジャケット内が真空下であっても、ジャケット内の復圧を防止しつつ、ジャケットからドレンタンクを介したドレンの排出を容易に行える。また、タンク給蒸弁と、スチームトラップおよび/またはドレン排出弁とは、ジャケット付きの内釜と一体回転可能に設けられるので、内釜の上部開口を前方へ倒すよう回転可能とでき、内釜からの食品の排出を容易に行える。しかも、内釜を回転可能としても、内釜の回転軸部を介して、ドレンタンクへのタンク給蒸路や、ドレンタンクからのドレン排出路を容易に配管することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、ボイラからの蒸気が、前記内釜の回転軸部を介して、ジャケット給蒸路により前記ジャケットに供給可能とされ、前記回転軸部から前記ジャケットへの前記ジャケット給蒸路には、ジャケット圧制御弁が設けられると共に、このジャケット圧制御弁よりも前記回転軸部側において前記ドレンタンクへのタンク給蒸路が分岐して設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気釜である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、内釜を回転可能としても、内釜の回転軸部を介して、ジャケットへの給蒸路を容易に配管することができる。また、回転軸部からジャケットへの給蒸路に設けたジャケット圧制御弁により、ジャケット内の圧力を容易に調整することができる。さらに、ジャケット給蒸路には、ジャケット圧制御弁よりも回転軸部側においてドレンタンクへのタンク給蒸路が分岐して設けられるので、回転軸部を介する配管数を抑えて、簡易に構成することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、ボイラに接続されるジャケット給蒸路と、真空発生装置に接続されるジャケット排気路とが、共通管路にまとめられて、前記内釜の回転軸部を介して、前記ジャケットに接続され、前記回転軸部から前記ジャケットへの前記共通管路に、前記ジャケット圧制御弁が設けられると共に、前記タンク給蒸路が分岐して設けられ、前記共通管路を介して、前記ジャケット内を前記真空発生装置で減圧するか、前記ジャケット内に前記ボイラからの蒸気を供給するかを切替可能とされることを特徴とする請求項3に記載の蒸気釜である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ジャケット給蒸路とジャケット排気路とを、共通管路として、内釜の回転軸部を介して、ジャケットに容易に配管することができる。そして、共通管路を介して、ジャケット内を真空発生装置で減圧するか、ジャケット内にボイラからの蒸気を供給するかを、切り替えることができる。また、回転軸部からジャケットへの共通管路に設けたジャケット圧制御弁により、ジャケット内の圧力を容易に調整することができる。さらに、共通管路には、タンク給蒸路が分岐して設けられるので、回転軸部を介する配管数を抑えて、簡易に構成することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記ジャケット内から空気排除後、前記ジャケット内への蒸気供給を制御して、前記ジャケット内を大気圧未満の圧力としつつ、前記内釜を100℃未満で加熱可能とされ、前記ドレンタンクは、タンク給蒸路を介して大気圧を超える圧力の蒸気が供給可能とされる一方、ドレン排出路を介してドレンを排出可能とされ、前記タンク給蒸路にタンク給蒸弁が設けられる一方、前記ドレン排出路にスチームトラップおよび/またはドレン排出弁が設けられ、前記ジャケットと前記ドレンタンクとの連通路には連通切替弁が設けられ、前記各弁を制御する制御器は、前記連通切替弁を閉じた状態で前記タンク給蒸弁を開けて、前記ドレンタンクから前記ドレン排出路へドレンを排出し、前記ドレンタンクまたは前記ドレン排出路の温度が設定温度を超えるか、前記タンク給蒸弁の開放から設定開放時間経過すると、前記タンク給蒸弁を閉じることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気釜である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ドレンタンクは、ジャケットとの連通路に連通切替弁が設けられ、タンク給蒸路にタンク給蒸弁が設けられ、ドレン排出路にスチームトラップおよび/またはドレン排出弁が設けられる。そのため、これら弁の開閉を制御することで、ジャケット内が真空下であっても、ジャケット内の復圧を防止しつつ、ジャケットからドレンタンクを介したドレンの排出を容易に行える。すなわち、連通切替弁を開けてジャケットからドレンタンクへドレンを移した後、連通切替弁を閉じた状態でタンク給蒸弁を開けて、ドレンタンクからドレン排出路へドレンを排出することができる。そして、ドレンタンクまたはドレン排出路の温度が設定温度を超えるか、タンク給蒸弁の開放から設定開放時間経過することで、ドレンタンクからのドレンの排出が完了したとして、タンク給蒸弁を閉じればよい。
【0018】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記ジャケットから前記ドレンタンクへのドレンの排出は、前記連通切替弁を設定時間ごとに所定時間開放することで行い、前記タンク給蒸弁の開放から閉鎖までの時間に基づき、前記設定時間を変更することを特徴とする請求項5に記載の蒸気釜である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ジャケットからドレンタンクへのドレンの排出は、連通切替弁を設定時間ごとに所定時間開放することで、容易に実施することができる。そして、タンク給蒸弁の開放から閉鎖までの時間に基づき、前記設定時間を変更することで、ジャケットにおけるドレンの発生量に応じた制御が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内釜の上部開口を前方へ倒すよう回転可能であると共に、ジャケット内を大気圧未満として100℃未満の蒸気により食品を加熱可能な蒸気釜を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1から
図3は、本発明の一実施例の蒸気釜1を示す概略図であり、
図1は構成図、
図2は正面図、
図3は
図2におけるIII−III断面図である。なお、
図2では、一部を切り欠いて断面にして示している。
【0023】
本実施例の蒸気釜1は、
図1に示すように、食品が収容される内釜2と、この内釜2の外側に設けられるジャケット3と、このジャケット3内へ蒸気を供給する給蒸手段4と、ジャケット3内へ供給した蒸気の凝縮水(ドレン)を排出するドレン排出手段5と、内釜2内やジャケット3内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段6と、減圧下の内釜2内へ外気を導入して復圧する復圧手段7と、前記各手段4〜7を制御する制御手段(図示省略)とを備える。なお、一点鎖線の囲いで示すように、本実施例の蒸気釜1は、釜ユニット8と流体ユニット9とに分けられており、釜ユニット8に対し、流体ユニット9により、蒸気を供給したり、真空引きしたりすることができる。
【0024】
内釜2は、上方へ開口した有底の中空容器である。内釜2は、その形状を特に問わないが、本実施例では、
図2に示すように、軸線を左右方向へ沿って配置された横向き略円筒状で、その左右両端部が左右方向外側へ円弧状に膨出する端壁2aにて閉塞されると共に、左右両端部を除いた周側壁の上部に、上方へ開口するホッパー2bが設けられて構成される。但し、内釜2は、図示例に限らず、たとえば、軸線を上下方向へ沿って配置された縦向き略円筒状で、その下端部が下方へ円弧状に膨出する底壁にて閉塞されると共に、上方へ開口して構成されてもよい。いずれにしても、内釜2は、上部開口が蓋材10で開閉可能とされる。蓋材10を閉めた状態では、内釜2内を密閉することができる。
【0025】
ジャケット3は、蒸気が供給されることで、内釜2内を加熱する。ジャケット3は、本実施例では、内釜2の上下方向中途部から下方領域に設けられる。具体的には、内釜2は、前記下方領域が二重壁構造とされ、内外の壁体間の空間がジャケット3とされる。
【0026】
ジャケット3付きの内釜2は、蓋材10を開けた状態で、上部開口を前方へ倒すように、所定角度だけ回転可能とされる。そのために、ジャケット3付きの内釜2は、台座11から浮いた状態で回転可能に支持される。その際、台座11上の左右に設けられたサイドフレーム12と駆動ボックス13とに、内釜2の左右両端部が支持される。具体的には、内釜2の左右端壁2aの中央部には、左右方向外側へ延出して段付きの回転軸部14が設けられており、左側の回転軸部14は、サイドフレーム12の上端部において軸受15に回転自在に支持され、右側の回転軸部14は、駆動ボックス13内において軸受(図示省略)に回転自在に支持される。なお、
図1では、左側の回転軸部14のみが示される。また、
図1では、内釜2と回転軸部14とを離隔して示しているが、実際には両者一体である。詳細は後述するが、ジャケット3付きの内釜2は、ドレン排出手段5を伴って(つまり両者一体として)、回転可能とされる。
【0027】
内釜2には、所望により、食品の撹拌装置16が設けられる。本実施例では、
図2および
図3に示すように、内釜2内の左右を架け渡すように撹拌軸17が設けられ、その撹拌軸17に径方向外側へ延出するアーム18を介して撹拌羽根19が設けられる。撹拌軸17は、内釜2の軸線に沿って配置され、内釜2の左右の端壁2aの外側に設けられた軸受20に回転自在に支持される。撹拌軸17は、右側の軸受20よりも右側への延出部を有し、その延出部は、駆動ボックス13内の駆動装置(図示省略)に接続される。駆動ボックス13内の駆動装置により、撹拌軸17ひいては撹拌羽根19を回転させることができる。駆動ボックス13には、各種操作ボタン21やタッチパネル22の他、制御器(図示省略)も設けられている。駆動ボックス13の操作により、内釜2に対する蓋材10の開閉や、内釜2の回転も可能とされる。
【0028】
なお、内釜2の左右の回転軸部14の内、右側の回転軸部14は筒状とされ、その中空穴に撹拌軸17が通される。そして、回転軸部14や撹拌軸17は、駆動ボックス13内の駆動装置に接続される。一方、左側の回転軸部14は、内釜2側が筒状に形成され、その中空穴に撹拌軸17の端部が軸受20を介して支持される。左側の回転軸部14には、後述する共通管路44(ジャケット給蒸路23、第二排気路42)やドレン排出路29が設けられる。
【0029】
給蒸手段4は、ジャケット3内へ蒸気を供給する。具体的には、給蒸手段4は、給蒸口(ボイラ蒸気供給口)からの蒸気をジャケット3内へ供給するジャケット給蒸路23を備える。ジャケット給蒸路23は、給蒸遮断弁24、ナックルジョイント25、回転軸部14およびジャケット圧制御弁26を介して、ジャケット3に接続される。
【0030】
ドレン排出手段5は、ジャケット3内へ供給した蒸気の凝縮水(ドレン)を排出する。具体的には、ドレン排出手段5は、ドレンを貯留するドレンタンク27と、ジャケット3とドレンタンク27との連通路28と、ドレンタンク27からのドレン排出路29と、ドレンタンク27へのタンク給蒸路30とを備える。
【0031】
ドレンタンク27は、ジャケット3の下部に設けられる。ドレンタンク27は、文字通りのタンク(中空容器)であるが、後述する運転中のドレンの貯留および排出が可能な範囲で、最小容積とするのが好ましい。ジャケット3付きの内釜2の重量、内釜2への食品(水と仮定)の定格投入量(または想定される最大投入量)、想定される最低外気温からの昇温幅(冷態起動時の初期温度から最終温度までの上昇温度)、ジャケット3付きの内釜2の比熱、水の比熱に基づき、内釜2などからの放熱も考慮して、所定圧の蒸気で所定速度で昇温する際の、最大のドレン発生量(kg/s)が分かるので、これに基づきドレンタンク27の容量を決定するがのよい。
【0032】
ドレンタンク27として、これに接続される各配管よりもやや大径の管を用いることもできる。いずれにしても、本実施例では、ドレンタンク27には、水位検出手段(水位センサやフロートなど)が不要であるから、コンパクトに構成することができ、内釜2との一体回転を実現できる。
【0033】
ジャケット3とドレンタンク27とは、連通路28を介して接続され、その連通路28には連通切替弁31が設けられる。連通切替弁31を開けることで、重力により、ジャケット3内からドレンタンク27内へドレンを排出することができる。この排出を容易に行うために(具体的には連通切替弁31を開けた際に水柱により連通路28が閉塞されることのないように)、連通路28は所定以上の内径(本実施例ではたとえば20mm以上)とされる。
【0034】
ドレンタンク27からのドレン排出路29は、図示例ではスチームトラップ32と逆止弁33とが順に設けられ、回転軸部14と固定管路29Aを介してドレン排出口へ開口される。ドレンタンク27へのタンク給蒸路30は、ジャケット給蒸路23の内、回転軸部14とジャケット圧制御弁26との間から分岐するよう設けられ、その先端部がドレンタンク27に接続される。タンク給蒸路30には、タンク給蒸弁34が設けられている。
【0035】
ジャケット3内を大気圧未満として真空蒸気により内釜2内の食品を加熱する場合、スチームトラップ32からのドレン排出を円滑に行えないおそれがある。ところが、本実施例のドレン排出手段5によれば、詳細は後述するが、連通切替弁31を閉じた状態でタンク給蒸弁34を開けることで、大気圧を超える蒸気をドレンタンク27に供給して、スチームトラップ32を介してドレンを円滑に排出することができる。なお、ドレンタンク27の底部には、排水などのために、排出弁35を備えた排出路36を設けておいてもよい。
【0036】
減圧手段6は、内釜2内やジャケット3内の気体を外部へ吸引排出する。具体的には、内釜2からの第一排気路37には、第一真空弁38、蒸気凝縮用の熱交換器39、逆止弁40、および水封式の真空ポンプ41が順に設けられる。また、給蒸遮断弁24とナックルジョイント25との間のジャケット給蒸路23と、第一真空弁38と熱交換器39との間の第一排気路37とが、第二排気路42で接続され、その第二排気路42には第二真空弁43が設けられる。そのため、給蒸遮断弁24を閉めた状態で、第二真空弁43を開ければ、給蒸遮断弁24よりも下流側のジャケット給蒸路23を介して、ジャケット3内の減圧が可能となる。
【0037】
つまり、ジャケット給蒸路23の内、第二排気路42との接続部よりもジャケット3側の管路は、状況に応じて、ジャケット3内からの排気路としても機能する。言い換えれば、ボイラに接続されるジャケット給蒸路23と、真空発生装置(真空ポンプ41)に接続されるジャケット排気路(第二排気路42)とが、共通管路44にまとめられて、内釜2の回転軸部14を介して、ジャケット3に接続されている。一方、減圧手段6は、内釜2から第一真空弁38を介した第一排気路37と、ジャケット3から第二真空弁43を介した第二排気路42とが、合流して共通排気路45とされ、その共通排気路45に、熱交換器39、逆止弁40および真空ポンプ41が順に設けられた構成ということもできる。
【0038】
熱交換器39は、前記共通排気路45(第一排気路37,第二排気路42)内の流体とその冷却水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。熱交換器39により、共通排気路45内の蒸気を、冷却水により冷却し凝縮させることができる。熱交換器39には、熱交給水路46を介して冷却水が供給され、熱交排水路47を介して冷却水が排出される。熱交給水路46には、熱交給水弁48が設けられている。なお、図示例では、熱交換器39は、シェルアンドチューブ式の熱交換器とされ、シェル側に冷却水が通され、チューブ側が共通排気路45に接続されている。
【0039】
真空ポンプ41は、本実施例では水封式であり、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されつつ運転される。そのために、真空ポンプ41には、封水給水路49を介して水が供給される。封水給水路49には封水給水弁50が設けられており、封水給水弁50を開けることで、真空ポンプ41に封水を供給することができる。封水給水弁50の開閉は、真空ポンプ41の発停と連動して切り替えられる。
【0040】
復圧手段7は、減圧された内釜2内へ外気を導入して、内釜2内を復圧する。具体的には、内釜2内への給気路51に、エアフィルタ52および給気弁53が順に設けられて構成される。内釜2内が減圧された状態で、給気弁53を開けると、外気がエアフィルタ52を介して内釜2内へ導入され、内釜2内を復圧することができる。
【0041】
第一排気路37と給気路51とは、本実施例では、蓋材10に接続されている。内釜2に対し蓋材10を開閉可能とする関係上、第一排気路37および給気路51の一部に、たとえばフレキシブル配管が利用されている。また、蓋材10には、正圧解除弁54が設けられており、内釜2内が大気圧を超える場合には自力で機械的に開いて、内釜2内の加圧が防止される。
【0042】
蒸気釜1には、内釜2内の圧力を検出する第一圧力センサ55と、ジャケット3内の圧力を検出する第二圧力センサ56と、ドレン排出路29内の温度を検出する温度センサ57の他、所望によりさらに、内釜2内の温度を検出する第二の温度センサ(図示省略)などが設けられる。第一圧力センサ55は、内釜2または蓋材10に設けられる以外に、第一真空弁38と内釜2との間の第一排気路37に設けられてもよい。また、第二圧力センサ56は、ジャケット3に設けられる以外に、ジャケット圧制御弁26とジャケット3との間のジャケット給蒸路23に設けられてもよい。さらに、温度センサ57は、ドレンタンク27からのドレン排出路29の内、スチームトラップ32よりも上流側(ドレン排出弁が設けられる場合にはそれよりも上流側)に設けられるが、場合により、ドレンタンク27に設けられてもよい。
【0043】
ところで、本実施例の蒸気釜1では、ジャケット3付きの内釜2は、所定角度だけ回転可能とされるが、その際、ジャケット3付きの内釜2とドレンタンク27とが、一体回転可能に構成される。つまり、
図2に示すように、ジャケット3付きの内釜2は、開口部を上方へ向けた通常状態において、ジャケット3付きの内釜2の下部にドレンタンク27が配置され、そのドレンタンク27は連通路28を介してジャケット3と接続されるので、ジャケット3付きの内釜2にドレンタンク27を保持して、両者を一体回転可能とされる。また、内釜2の回転軸部14からジャケット3へのジャケット給蒸路23と、このジャケット給蒸路23から分岐するタンク給蒸路30と、ドレンタンク27からスチームトラップ32や逆止弁33(
図2では図示省略)を介したドレン排出路29とは、それぞれ回転軸部14と共にジャケット3付きの内釜2と一体回転可能とされる。なお、ドレンタンク27からドレン排出路29を介して回転軸部14内の流路まで供給されたドレンは、サイドフレーム12に固定の管路29Aを介して外部へ排出される。この固定管路29Aは、内釜2が
図2の通常位置にある状態で、ドレン排出路29と連通される。
【0044】
回転式の蒸気釜1は、釜を回転可能に配管する必要があり、また省スペース化も要求される。ところが、本実施例のドレンタンク27は、水位検出手段などを備えず、単なる中空部であるから、コンパクトに構成して、ジャケット3付きの内釜2と一体回転可能に設置できる。そのため、ジャケット3内を大気圧未満として100℃未満の蒸気により食品を加熱可能な蒸気釜1でありながら、内釜2の上部開口を前方へ倒すよう回転可能とでき、内釜2からの食品の排出を容易に行える。
【0045】
制御手段は、前記各センサ55〜57の検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段4〜7などを制御する制御器(図示省略)である。具体的には、内釜2や撹拌軸17を回転させたり蓋材10を着脱したりする駆動装置、真空ポンプ41、給蒸遮断弁24、ジャケット圧制御弁26、連通切替弁31、タンク給蒸弁34、排出弁35、第一真空弁38、第二真空弁43、熱交給水弁48、封水給水弁50、給気弁53の他、第一圧力センサ55、第二圧力センサ56および温度センサ57などは、制御器に接続される。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、内釜2内の食品の加熱調理を実行可能とされる。
【0046】
運転開始前、少なくとも、給蒸遮断弁24、熱交給水弁48および封水給水弁50は閉じられており、駆動装置および真空ポンプ41は停止している。そして、所定のスタートボタンが押されるなど、運転開始が指示されると、制御器は、空気排除工程と給蒸加熱工程とを順次に実行する。内釜2内への食品の投入は、運転開始前、または遅くとも給蒸加熱工程の開始までになされる。内釜2内を真空下にして調理する場合、内釜2内への食品の投入後、内釜2の上部開口は蓋材10で気密に閉じられる。
【0047】
空気排除工程では、減圧手段6により、ジャケット3内およびドレンタンク27内の空気を排除する。具体的には、給蒸遮断弁24を閉じたまま、第二真空弁43およびジャケット圧制御弁26を開けた状態で、減圧手段6を作動(つまり熱交換器39に通水すると共に真空ポンプ41を作動)させて、ジャケット3内の気体を外部へ吸引排出する。この際、排出弁35、第一真空弁38、給気弁53は閉じられており、連通切替弁31(および/またはタンク給蒸弁34)は、開けられている。これにより、ジャケット3内だけでなく、ドレンタンク27内の空気も排除することができる。所定圧力までジャケット3内を減圧した後、好ましくはさらに所定時間保持してから、第二真空弁43を閉じると共に減圧手段6を停止して、次工程へ移行する。但し、空気排除工程の内容は、これに限らず、たとえば、減圧手段6によるジャケット3内の減圧と、給蒸手段4によるジャケット3内への給蒸とを、所定に繰り返してもよい。
【0048】
給蒸加熱工程は、給蒸遮断弁24を開けてジャケット3内へ給蒸し、ジャケット3内を設定加熱圧力(ジャケット3内は飽和蒸気で満たされるので設定加熱温度ということもできる)にした後、その状態を保つことで、内釜2内の食品を加熱する。たとえば、第二圧力センサ56の検出圧力を設定加熱圧力(食品の加熱目標温度を飽和温度とする圧力)に維持するように、ジャケット圧制御弁26の開閉または開度を調整すればよい。この際、ジャケット3内を大気圧未満の圧力として、内釜2内の食品を100℃未満の比較的低温(たとえば60℃以上100℃未満)で加熱することもできる。給蒸加熱工程では、次に述べる場合を除き、連通切替弁31およびタンク給蒸弁34は閉じられた状態に維持される。
【0049】
給蒸加熱工程中、所定のタイミングで、ジャケット3からドレンタンク27へドレンが排出される。ジャケット3からドレンタンク27へのドレンの排出は、タンク給蒸弁34を閉じた状態で、連通切替弁31を開けることで行われる。本実施例では、設定時間ごとに所定時間、連通切替弁31を開けることで、ジャケット3内のドレンがドレンタンク27へ排出される。その後、連通切替弁31を閉じる一方、タンク給蒸弁34を開けることで、大気圧よりも高圧の蒸気により、ドレンタンク27内のドレンを、スチームトラップ32を介して外部へ排出することができる。タンク給蒸弁34の開放後、温度センサ57の検出温度が設定温度以上になる(好ましくは設定温度以上を第一規定時間継続後にさらに第二規定時間経過する)と、ドレンタンク27からドレンが排出されたとして、タンク給蒸弁34を閉じる。以後、同様に、連通切替弁31を、前回の閉鎖から設定時間経過すると所定時間開放した後、連通切替弁31を閉鎖した状態でタンク給蒸弁34を開放する操作を繰り返せばよい。このようにして、定期的に、ジャケット3からドレンタンク27を介して、ドレンの排出を図ることができる。
【0050】
本実施例では、ジャケット3内の真空蒸気(100℃未満の蒸気)のドレンがドレンタンク27へ排出され、ドレンタンク27からのドレンの排出には、タンク給蒸路30を介した大気圧以上の蒸気(100℃以上の蒸気)が利用される。そのため、ドレンタンク27からのドレンの排出は、ドレン排出路29に設けた温度センサ57の検出温度により(たとえば温度センサ57の検出温度が100℃以上になることにより)検知することができる。これにより、ドレンタンク27からのドレンの排出を、容易に確実に図ることができる。
【0051】
蒸気元圧(ジャケット圧制御弁26よりも上流側の蒸気圧)に基づき、タンク給蒸路30による蒸気温度が変化するので、ドレンタンク27からのドレン排出完了を判定するための前記設定温度は、蒸気元圧に応じて設定(変更)されるのがよい。また、タンク給蒸弁34の開放後、所定時間経過しても温度センサ57が設定温度に達しない場合には、異常があるとして、アラーム等で報知するのがよい。
【0052】
前述したとおり、本実施例では、ジャケット3からドレンタンク27を介したドレンの排出は、連通切替弁31を設定時間ごとに所定時間開放した後、連通切替弁31を閉鎖した状態で、温度センサ57の検出温度が所定になるまでタンク給蒸弁34を開放することを繰り返して行う。この際、タンク給蒸弁34の開放から閉鎖までの時間に基づき、前記設定時間を変更してもよい。タンク給蒸弁34の開放から閉鎖までの時間に基づき、前記設定時間を変更することで、ジャケット3におけるドレンの発生量に応じた制御が可能となる。つまり、ドレンタンク27からの排水時間が短い場合(タンク給蒸弁34の開放時間が短くなる場合)、ドレンの発生量が少ないと判断し、ドレン排出のタイミングを延ばすことができる。従って、連通切替弁31やタンク給蒸弁34の開閉回数を減らして、バルブの耐久性を向上することができる。
【0053】
なお、本実施例では、ジャケット3からドレンタンク27を介したドレンの排出は、連通切替弁31を設定時間ごとに所定時間開放した後、連通切替弁31を閉鎖した状態で、温度センサ57の検出温度が所定になるまでタンク給蒸弁34を開放することを繰り返したが、次のように制御してもよい。すなわち、前述したドレンタンク27の容量設計と同様に、運転中のドレン発生量(kg/s)(たとえば運転開始からの経過時間に応じたドレン発生量)は予測可能であるから、そのドレン発生量(運転開始からの経過時間に応じた予測値)に基づき、タンク給蒸弁34の開放から閉鎖までの時間(設定開放時間)を、予め制御器に設定しておいてもよい。さらに、連通切替弁31についての前記設定時間も変更してもよい。
【0054】
また、本実施例の蒸気釜1は、内釜2内の食品の撹拌装置16を備える。つまり、蒸気釜1は、蒸気ニーダとして構成される。そのため、ジャケット3内へ給蒸して食品を加熱中、撹拌装置16により、食品の撹拌を図ることができる。
【0055】
また、本実施例の蒸気釜1は、内釜2の上部開口は、蓋材10で気密に閉鎖可能とされ、この蓋材10には、真空発生装置(真空ポンプ41)が接続されており、蓋材10を閉じた状態で、真空発生装置により、内釜2内を大気圧未満に減圧することができる。そのため、食品の加熱中に真空引きすることで、食品の濃縮を図ることができる。具体的には、内釜2の蓋材10を閉じた状態で、第一真空弁38を開けて、減圧手段6により内釜2内を減圧すればよい。逆に、ジャケット3内を大気圧以上として、食品を100℃以上で加熱することもでき、その場合、給蒸中、連通切替弁31を開けたまま保持(タンク給蒸弁34は閉じた状態に保持)すればよい。
【0056】
所定の終了条件を満たすと、ジャケット3内への給蒸を停止すると共に、内釜2内の減圧を停止する。具体的には、給蒸遮断弁24および第一真空弁38を閉じると共に、減圧手段6を停止する。但し、所望により、ジャケット3への給蒸を停止した状態で、内釜2内を減圧して、食品を真空冷却してもよい。その後、給気弁53を開けて、内釜2内を大気圧まで復圧した状態で、蓋材10を開ければよい。その状態では、内釜2を回転させて開口部を下方へ向けることができるので、内釜2内からの食品の排出を容易に行うことができる。
【0057】
本発明の蒸気釜1は、前記実施例の構成(制御を含む)に限らず適宜変更可能である。特に、(a)上方への開口部を有し、その開口部を前方へ倒すよう回転可能な内釜2と、(b)この内釜2の外側に設けられて蒸気が供給されるジャケット3と、(c)このジャケット3付きの内釜2と一体回転可能に設けられ、ジャケット3からのドレンを貯留するドレンタンク27とを備えるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0058】
たとえば、前記実施例では、ドレンタンク27からのドレン排出路29には、スチームトラップ32を設けたが、スチームトラップ32の手前にドレン排出弁を設けたり、スチームトラップ32の代わりにドレン排出弁を設けたり、スチームトラップ32の設置を省略したりしてもよい。ドレン排出弁を設ける場合、そのドレン排出弁の開閉は、タンク給蒸弁34の開閉と連動するよう制御される。
【0059】
また、前記実施例では、蒸気釜1は、食品の撹拌装置16を備える蒸気ニーダとされたが、撹拌装置16の設置を省略することもできる。
【0060】
また、前記実施例では、ジャケット3付きの内釜2の下部にドレンタンク27を離して設置したが、ジャケット3の下部にドレンタンク27を連接してもよい。つまり、ジャケット3の外壁で仕切りつつ、ジャケット3の外側下部にドレンタンク27を一体的に設けてもよい。
【0061】
さらに、前記実施例において、減圧手段6を省略してもよい。その場合、スチームトラップ32に代えてドレン排出弁が設けられる。そして、以下に述べるようにして、ジャケット3内を大気圧未満として、食品を100℃未満で加熱可能である。
【0062】
すなわち、空気排除工程では、ジャケット3内へ蒸気を供給して加圧する給蒸操作と、ジャケット3外へ蒸気を排出する排蒸操作とによって、ジャケット3内からの空気排除を図る。この際、連通切替弁31は開けられた状態に維持される一方、タンク給蒸弁34は閉じられた状態に維持される。そして、給蒸操作では、ドレン排出弁を閉じた状態で、ジャケット圧制御弁26を開けて、ジャケット3内に蒸気を供給して、ジャケット3内を所定まで加圧する。一方、排蒸操作では、ジャケット圧制御弁26を閉じた状態で、ドレン排出弁を開けて、ジャケット3の内外の差圧(つまりジャケット3内の圧力と大気圧との差圧)を利用して、ジャケット3内の流体を排出する。この際、ジャケット3内の蒸気や空気だけでなく、ジャケット3内(さらにはドレンタンク27内)のドレンも、ドレン排出路29から外部へ排出される。このような給蒸操作と排蒸操作とのセットを、少なくとも1回、好ましくは複数回繰り返す。従って、空気排除工程においてジャケット3内の空気を排除し、ジャケット3内には基本的には蒸気のみが存在する状況とできるので、蒸気の凝縮を待つことで、ジャケット3内を大気圧未満の圧力とすることができ、以後、給蒸加熱工程へ移行して、ジャケット3内を大気圧未満の圧力として、前記実施例と同様、食品を100℃未満で加熱可能となる。