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特開2019-171441ベースメタル一体型オープンポーラスメタル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-171441(P2019-171441A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】ベースメタル一体型オープンポーラスメタル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 25/02 20060101AFI20190913BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20190913BHJP
   B22D 29/00 20060101ALI20190913BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   B22D25/02 G
   B22D19/00 E
   B22D29/00 G
   C22C1/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-63652(P2018-63652)
(22)【出願日】2018年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390008822
【氏名又は名称】アート金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 学
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅和
(72)【発明者】
【氏名】松瀬 康詩
(57)【要約】
【課題】オープンポーラスメタルとベースメタルとをそれぞれ独立して製作した後に両者を一体化させる後工程を経ることなく、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタル、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】空隙51を有する水溶性固化物41を準備する水溶性固化物準備工程と、水溶性固化物41を鋳型81内の一部に配置した後に、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れ、金属71を凝固させて水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91鋳造する鋳造工程と、中間構造物91を構成する水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程と、をその順で含むことにより上記課題を解決する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンポーラスメタルとベースメタルとの一体構造物であるベースメタル一体型オープンポーラスメタルを製造する方法であって、
空隙を有する水溶性固化物を準備する水溶性固化物準備工程と、
前記水溶性固化物を鋳型内の一部に配置した後に、前記鋳型内に溶融した金属を流し入れ、前記金属を凝固させて前記水溶性固化物と前記金属とが一体化した中間構造物を鋳造する鋳造工程と、
前記中間構造物を構成する前記水溶性固化物を溶解させる水溶性固化物溶解工程と、
をその順で含む、ことを特徴とするベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造方法。
【請求項2】
オープンポーラスメタルとベースメタルとが一体的に鋳造してなる円筒状又は矩形状の一体構造物であって、複数のセルを有するベースメタル一体型オープンポーラスメタル。
【請求項3】
表面に複数以上の開口したセルを有する、請求項2に記載のベースメタル一体型オープンポーラスメタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンポーラスメタルとベースメタルとを一体的に鋳造してなるベースメタル一体型オープンポーラスメタル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多孔質となるように製作された金属構造物は、圧延加工や押出加工等により製作された緻密性の高い金属構造物と比べて、多孔性であるか緻密性であるかが異なるため、弾性、エネルギー吸収性、断熱性の面で優れているという特徴を有する。
【0003】
多孔質となるように製作された金属構造物は、ポーラスメタルとも呼ばれ、上述の特徴を活かした様々な用途に利用されている。例えば、ポーラスメタルは、弾性やエネルギー吸収性に優れているという特徴を活かして、自動車等の衝撃吸収部材の一部として利用されたり、断熱性に優れているという特徴を活かして、断熱部材の一部として利用されたりしている。
【0004】
ポーラスメタルは、構成された複数の気孔(以下「セル」と呼ぶ。)の構造形態の違いから、クローズドセル構造のポーラスメタルと、オープンセル構造のポーラスメタルとの2種類に大別される。クローズドセル構造のポーラスメタルは、セルとセルとの境界が閉じているものであり、オープンセル構造のポーラスメタルは、セルとセルとの境界が開いているものである。オープンセル構造のポーラスメタルのうち、表面に開口するセルを多数有するスポンジ状のものは、オープンポーラスメタルとも呼ばれる。オープンポーラスメタルは、空隙やセルを多く有し、表面積も大きいため、クローズドセル構造のポーラスメタルよりも弾性、エネルギー吸収性、断熱性の面で優れているだけではなく、流体透過性の面でも優れている。なお、流体とは、気体及び液体のことをいい、流体透過性とは、物体が流体を透過させることができる性質のことをいう。この流体透過性を利用した製品も開発されており、例えば放熱板にオープンセル構造のポーラスメタルを接着して、このオープンセル構造のポーラスメタルに冷却水を透過させることで熱交換を行う熱交換ユニットが提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
ポーラスメタルを製作するための手法としては、例えば、溶融した金属にガスを吹き込み、この金属の内部にセルを形成させることでポーラスメタルを製作する手法や、中空の金属製の球体を予め複数製作しておき、これらの球体を焼結させたり接着させたりすることでポーラスメタルを製作するもの等がある。これらの手法のうち、オープンポーラスメタルを製作することができる手法としては、焼結させた水溶性の物質の隙間に溶解金属を流し入れられて、金属が凝固した後に水溶性物質を除去することでオープンセル構造のポーラスメタルを製作する手法(非特許文献1参照)がある。
【0006】
オープンポーラスメタルは、セルを多く有するため、構造上脆くなる場合がある。このため、オープンポーラスメタルの強度を向上させ、取扱いを容易にするために、オープンポーラスメタル以外の部材と一体化させる加工を施してから利用する。例えば、オープンポーラスメタルを熱交換ユニットの一部として利用する場合には、図8に示すように、オープンポーラスメタルと、放熱板を構成するベースメタルとをそれぞれ独立して製作し、これらを一体化させてから利用する。オープンポーラスメタルを衝撃緩衝部材の一部として利用する場合も、オープンポーラスメタルと、衝撃緩衝部材を固定するためのベースメタルとをそれぞれ独立して製作し、これらを一体化させてから利用する。オープンポーラスメタルとベースメタルとの一体化手段としては、接着、溶接、カシメ、組み立て等、従来から多種の手法が存在する。
【0007】
しかしながら、これらの手法を用いてオープンポーラスメタルとベースメタルの両者を一体化させようとすると、オープンポーラスメタルの表面に多く存在する開口したセルによって、両者(オープンポーラスメタルとベースメタルのこと。以下同じ。)が接触する面積が小さくなる。このため、両者を強固に一体化させることは困難となる。両者を接着により一体化させる場合に両者の接触面に接着剤を厚く塗ることもできるが、オープンポーラスメタルの表面に存在する開口したセルの内部に接着剤等が充填されてしまうので、目詰まりが生じてしまうという難点がある。一方、両者を溶接により一体化させる場合に両者の接触面を多めに溶解させることもできるが、溶解によってオープンポーラスメタルの表面に存在するセルが潰れて目詰まりが生じたりしてしまうという難点がある。こうした接着や溶接による目詰まりによってオープンポーラスメタルの空隙率が低くなると、オープンポーラスメタルを利用するメリットが失われてしまう。また、カシメや組み立てにより両者を一体化させる場合には、両者が直接的に面接合しないので、振動に対する耐性等の面で問題がある。
【0008】
オープンポーラスメタルを利用する際の上記課題により、オープンポーラスメタルを効率良く利用するための新たな手法が求められていた。この課題に対しては、リンを添加したロウ材を用いて多孔質金属部材と母材とを被覆接合させる手法が提案されている(特許文献1参照)。この手法によれば、被覆接合は炉による加熱のみで被覆と接合が同時に発生し、なおかつ多孔質金属部材に目詰まりを起こさない、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−179491号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】一般社団法人軽金属学会 会誌「軽金属」(55巻(2005)7号 p.327〜332)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の手法では、オープンポーラスメタルとベースメタルとの境界に異種材料であるロウ材が存在するので、せっかくオープンポーラスメタルとベースメタルとを一体化させても、その境界部で弾性、エネルギー吸収性、断熱性等の特性の連続性が途切れてしまうとう問題がある。また、上記のような接着、溶接、カシメ、組み立て等で一体化させた場合は、既に説明したような目詰まりが生じたり、不完全な一体化となったりするので、オープンポーラスメタルのメリットを十分活かすことができないことがあった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、オープンポーラスメタルとベースメタルとをそれぞれ独立して製作した後に両者を一体化させる後工程を経ることなく、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタル、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造方法は、オープンポーラスメタルとベースメタルとが一体化したベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造方法であって、空隙を有する水溶性固化物を準備する水溶性固化物準備工程と、前記水溶性固化物を鋳型内の一部に配置した後に、前記鋳型内に溶融した金属を流し入れ、前記金属を凝固させて前記水溶性固化物と前記金属とが一体化した中間構造物を鋳造する鋳造工程と、前記中間構造物を構成する前記水溶性固化物を溶解させる水溶性固化物溶解工程と、をその順で含む、ことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、空隙を有する水溶性固化物を準備して、水溶性固化物を鋳型内の一部に配置した後に、鋳型内に溶融した金属を流し入れるので、オープンポーラスメタルとベースメタルとをそれぞれ独立して製作した後に両者を一体化させる後工程を経ることなく、水溶性固化物と金属とが一体化した中間構造物を鋳造することができる。さらに、この中間構造物を構成する水溶性固化物を溶解させるので、水溶性固化物が溶解した部分に、開口したセルが形成される。これにより、オープンポーラスメタルとベースメタルとを完全に一体化させることができるので、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタルを製造することができる。
【0015】
本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルは、オープンポーラスメタルとベースメタルとが一体的に鋳造してなる円筒状又は矩形状の一体構造物であって、複数のセルを有する。この発明によれば、オープンポーラスメタルとベースメタルとが一体的に鋳造してなる円筒状又は矩形状の一体構造物なので、境界部での特性の連続性を維持することができる。
【0016】
本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルにおいて、表面に複数の開口したセルを有する、ことが好ましい。この発明によれば、表面に複数の開口したセルを有するので、弾性、エネルギー吸収性、断熱性の面で優れているだけではなく、流体透過性の面でも優れたベースメタル一体型オープンポーラスメタルを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オープンポーラスメタルとベースメタルとをそれぞれ独立して製作した後に両者を一体化させる後工程を経ることなく、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタル、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造過程で形成される円柱状の水溶性固化物の一例を示す写真である。(A)は平面写真である。(B)は斜視写真である。(C)は側面写真である。
図2】本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造過程で形成される円板状の水溶性固化物の一例を示す写真である。(A)は平面写真である。(B)は斜視写真である。(C)は側面写真である。
図3図1に示す円柱状の水溶性固化物を用いて鋳造されたオープンポーラスメタルの一例を示す斜視写真である。
図4図2に示す円板状の水溶性固化物を用いて鋳造されたオープンポーラスメタルの一例を示す斜視写真である。
図5図3に示す円柱状の水溶性固化物を用いて鋳造されたベースメタル一体型オープンポーラスメタルの一例を示す写真である。
図6】本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの具体例(第1実施形態〜第4実施形態)とその鋳型を示す模式図である。(A)は円柱状の一例(第1実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(B)は円板状の一例(第2実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(C)は円板状の他の一例(第3実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(D)は円板状の他の一例(第4実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。
図7】本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの具体例(第5実施形態〜第9実施形態)とその鋳型を示す模式図である。(E)は矩形板状の一例(第5実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(F)は矩形板状の一例(第6実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(G)は矩形板状の一例(第7実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(H)は円柱状の他の一例(第8実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。(I)は半円柱状の一例(第9実施形態)を示す斜視図と、その鋳型を示す断面図である。
図8】オープンポーラスメタルとベースメタルとを一体化させるための方法として従来から用いられている方法の一例を示す模式図である。(A)は円筒状のベースメタルと円柱状のオープンポーラスメタルとを一体化させる方法の模式図である。(B)は円板状のベースメタルとオープンポーラスメタルとを一体化させる方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタル、及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。以下での説明は、最初に本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造方法の基本構成(基本実施形態)及びその各要素について説明し、その後、第1〜第9実施形態のベースメタル一体型オープンポーラスメタル及びその製造方法のそれぞれの特徴点について説明する。なお、共通する構成部分の説明は簡略化し、特徴的な構成部分(鋳造工程)を説明している。
【0020】
[基本構成]
本発明の製造方法により製造されるベースメタル一体型オープンポーラスメタルは、例えば熱交換ユニットの一部や、衝撃緩衝部材の一部として利用されるものである。その製造方法の基本的な構成は、図1図7に示すように、オープンポーラスメタル11とベースメタル21とをそれぞれ独立して製作した後に両者を一体化させる後工程を経ることなく、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造するというものである。詳しくは、水溶性物質31を固化する等により、空隙51を有する水溶性固化物41を準備する水溶性固化物準備工程と、水溶性固化物41を鋳型81内の一部に配置した後に、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れ、金属71を凝固させて水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する鋳造工程と、中間構造物91を構成する水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程と、をその順で含む製造方法である。
【0021】
本発明の特徴は、空隙51を有する水溶性固化物41を準備して、この水溶性固化物41を鋳型81内の一部に配置した後に、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れ、金属71を凝固させて水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造することにある。空隙51を有する水溶性固化物41を準備して、この水溶性固化物41を鋳型81内の一部に配置した後に、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れるので、オープンポーラスメタル11とベースメタル21とをそれぞれ独立して製作した後に、両者を一体化させる後工程を経ることなく、水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造することができる。さらに、この中間構造物91を構成する水溶性固化物41を溶解させるので、水溶性固化物41が溶解した部分に、複数の開口したセル111が形成される。これにより、オープンポーラスメタルとベースメタルとを完全に一体化させることができるので、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0022】
以下、各構成要素を詳しく説明する。
【0023】
[水溶性固化物準備工程]
水溶性固化物準備工程は、空隙51を有する水溶性固化物41を準備する工程である。
【0024】
(水溶性固化物)
水溶性固化物41は、図1及び図2に示すように、水溶性物質31を固化することで形成される、空隙51を有する固化物である。
【0025】
水溶性物質31は、水に溶ける物質である。空隙51は、水溶性物質31が固化して水溶性固化物41が形成されたときに、隣り合う水溶性物質31との間に形成される空隙である。この空隙51に、溶融した金属71を流し入れることで中間構造物91を鋳造する。水溶性物質31として用いる物質は、特に限定されないが、溶融した金属71を流し入れたときに変形したり溶解したりしない物質であり、かつ、中間構造物91から溶解し易い物質であることが好ましい。例えば塩化ナトリウムを水溶性物質31として用いることができる。水溶性固化物41の水に溶ける性質は、後述する水溶性固化物溶解工程において、オープンポーラスメタル11のセル111を形成させる際に利用される。すなわち、後述する中間構造物91には、水溶性固化物41と金属71とで構成されるが、このうち、水溶性固化物41のみが水に溶解するので、中間構造物91のうち水溶性固化物41が存在していた部分に、オープンポーラスメタル11のセル111が形成される。
【0026】
このように、水溶性固化物41が存在していた部分に、オープンポーラスメタル11のセル111が形成されるので、結果的に水溶性固化物41の体積と、オープンポーラスメタル11のセル111の体積とは同じ又は略同じになる。つまり、セル111の1つ1つの大きさは、水溶性固化物41を構成する水溶性物質31の1つ1つが大きければ、それに伴って大きくなるが、水溶性物質31の1つ1つが小さければ、それに伴って小さくなる。このため、オープンポーラスメタル11を構成するセル111の1つ1つの大きさを大きくしたい場合には、水溶性物質31の1つ1つを大きくすればよいし、セル111の1つ1つの大きさを小さくしたい場合には、水溶性物質31の1つ1つを小さくすればよい。
【0027】
例えば、水溶性物質31の1つ1つを大きくして、セル111の1つ1つの大きさを大きくしたい場合には、塩化ナトリウムを成形してペレット状にした造粒塩を水溶性物質31として用いてもよい。造粒塩は水中溶解性に優れているため、後述する水溶性固化物溶解工程において水溶性固化物(造粒塩)を溶解する作業の効率化を図ることができる。さらに、造粒塩は、調達も容易であるため、調達コストを抑えることもできる。造粒塩は、粒径が1mm単位から10mm単位のものまで存在するので、セル111の1つ1つの大きさを大きくしたい場合には、粒径が10mm単位の造粒塩を固化させて水溶性固化物41を形成させることができる。水溶性物質31として用いられる。なお、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の機能に要求される空隙率を確保することと、強度を維持させることとの観点から、造粒塩の粒径は1mm〜10mmの範囲とすることが好ましい。ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の空隙率は特に限定されず、用途に応じて造粒塩の粒径を調節することで容易に変更することができる。
【0028】
水溶性物質31の形状、大きさ、配列に規則性を持たせることもできる。水溶性物質31の形状、大きさ、配列に規則性を持たせることで、形状、大きさ、配列に規則性を有するセル111を形成させることができる。これにより、例えば下から上に向かって徐々にセル111の大きさが大きくなるようにしたり、外側から内側に向かって徐々にセル111の大きさが大きくなるようにしたり、といったような自由な設計が可能になる。水溶性物質31の形状、大きさ、配列に規則性を持たせるためには、例えば、複数の切欠き面を有する同一形状の造粒塩を水溶性物質31として採用し、隣接する造粒塩の切欠き面同士が対向するように配列させてもよい。形状が同一であり、かつ、配列に規則性を有する複数の造粒塩を固化させると、形状及び配列に規則性を有するセル111を形成させることができる。これにより、溶融した金属71を隙間51に流し入れ易くすることができるとともに、統一的な外観を有する審美性の高いオープンポーラスメタル11を形成させることができる。さらに、熱交換ユニットの一部としてベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を用いる場合には、セル111の形状に規則性を持たせることで熱交換の効率を高めることもできる。
【0029】
造粒塩を固化させて水溶性固化物41を形成させる具体的な手法は特に限定されない。例えば、水溶性物質31を圧粉して焼結することで水溶性固化物41を形成させる手法や、表面に塩水を付着させた造粒塩を金型に入れて加熱し、造粒塩の表面に付着した塩水の水分を蒸発させることで水溶性固化物41を形成させる手法等の手法を用いることができる。
【0030】
ただし、造粒塩を圧粉して焼結することで水溶性固化物41を形成させた場合には、圧粉のための装置を用意する必要があるため調達コストを要するだけではなく、圧粉によって水溶性物質31の一部が崩壊してしまうことがある。一方、表面に塩水を付着させた造粒塩を金型に入れて加熱し、造粒塩の表面に付着した塩水の水分を蒸発させることで水溶性固化物41を形成させた場合には、造粒塩の表面に付着した塩水が乾燥して固化することで造粒塩同士が接着されるので、造粒塩に塩水をまぶして乾かすだけで水溶性固化物41を形成させることができる。その結果、造粒塩を圧粉するための装置を用意するコストが不要になるだけではなく、造粒塩を圧粉して焼結させた場合に生じる造粒塩の崩壊を防ぐこともできる。なお、造粒塩の表面に付着させる塩水は、飽和状態にあるスラリー状の塩化ナトリウムであることが好ましい。飽和状態にあるスラリー状の塩化ナトリウムは、飽和状態にない塩水に比べて粘度を有するので、造粒塩に付着させ易いだけではなく、含有する水分が少ないので固化させ易いというメリットがある。
【0031】
(空隙)
空隙51は、水溶性物質31を固化して水溶性固化物41が形成される際に、隣り合う水溶性物質31間に形成される空隙である。後述する鋳造工程では、空隙51に溶融した金属71を流し入れて、オープンポーラスメタル11を形成させる。つまり、空隙51の体積と、そのままオープンポーラスメタル11を構成する金属71の体積とは同一又は略同一になる。このため、オープンポーラスメタル11は、空隙51の割合が大きければ、それに伴い金属71を流し入れる量が増え、空隙51の割合が小さければ、それに伴い金属71を流し入れる量が減ることとなる。
【0032】
このように、水溶性固化物41に占める空隙51の体積の違いによってオープンポーラスメタル11を構成する金属71の体積が変わってくるが、空隙51の形状に応じて、空隙51に金属71を流し入れる圧力も変わってくる。すなわち、水溶性固化物41を構成する水溶性物質31の1つ1つの大きさが大きい場合には、形成される空隙51が広く(粗く)なるので、金属71を流し入れる圧力も少なくて済むが、水溶性固化物41を構成する水溶性物質31の1つ1つの大きさが小さい場合には、形成される空隙51が狭く(細かく)なるので、それだけ金属71を流し入れる圧力も大きくする必要がある。
【0033】
準備とは、後述する鋳造工程で鋳型81内に配置される水溶性固化物41を準備することをいい、水溶性物質31を固化して水溶性固化物41を形成させてもよいし、既に存在する水溶性固化物41を別途調達等してもよい。
【0034】
[鋳造工程]
鋳造工程は、水溶性固化物41を鋳型81内の一部に配置した後に、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れ、金属71を凝固させて水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する工程である。すなわち、鋳造工程では、鋳型81内でオープンポーラスメタル11を形成することとなる一部の領域に水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。
【0035】
(配置)
配置とは、鋳型81内の一部に水溶性固化物41を固定することで、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れることができる状態にすることをいう。
【0036】
鋳造工程では、まず、鋳型81内でオープンポーラスメタル11を形成することとなる領域に水溶性固化物41を配置する。鋳型81内で、水溶性固化物41が配置された領域は、オープンポーラスメタル11を形成する領域となり、それ以外の領域は、ベースメタル21を形成する領域となる。具体的には、図6及び図7に示すように、鋳型81内は、水溶性固化物41が配置された領域Pと、それ以外の領域Qとに二分される。なお、鋳型81内でオープンポーラスメタル11を形成することとなる領域に水溶性固化物41を配置する手法は特に限定されない。鋳型81内に針、ピン、凹凸等を設けて水溶性固化物41を固定することで配置してもよい。
【0037】
鋳型81内に水溶性固化物41を配置する位置や方法、鋳型81自体の形状や大きさは、製造するベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の形状や、セル111の位置や形状に応じて任意に選択することができる。これにより、多種多様の用途に合わせたベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。なお、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の具体例については、後述する第1〜第9実施形態において詳細に説明する。
【0038】
(鋳造)
鋳造とは、水溶性固化物41が内部に配置されている鋳型81内に、溶融した金属71を流し入れて、水溶性固化物41と金属71とを一体的に凝固させることで中間構造物91を形成させることをいう。
【0039】
水溶性固化物41が内部に配置されている鋳型81内に、溶融した金属71が流し入れられると、鋳型81内の領域Pでは、溶融した金属71が水溶性固化物41の空隙51に充填され、鋳型81内の領域Qでは、溶融した金属71が領域Q全域に充填される。このとき、鋳型81に流し入れる金属71の温度は、金属71として用いられる金属の種類によって異なるので特に限定されないが、金属71が溶解する温度は、水溶性固化物41が溶解する温度よりも低いことが好ましい。例えば、水溶性固化物41が溶解温度を約800℃程度とする塩化ナトリウムである場合には、それよりも溶解温度が低いアルミニウム(約660℃程度)又はその合金(約550℃〜560℃程度)であることが好ましく、鋳型81に流し入れられる際のアルミニウムの温度は、590℃〜800℃であることが好ましい。なお、鋳造工程で鋳型81に流し入れられる金属71は、水溶性固化物41との関係性を満たせば特に限定されず、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の用途に応じて様々な金属を採用することができる。例えば、アルミニウム又はその合金に代表される様々な金属を採用することができる。具体的には、熱交換ユニットの一部にベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を利用する場合には、溶解温度が比較的低くて加工し易いアルミニウム合金を採用すると好適である。衝撃緩衝部材の一部にベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を利用する場合には、アルミニウムを採用すると好適である。
【0040】
(一体化)
一体化とは、オープンポーラスメタル11とベースメタル21とが境界部を有することなく1つの構造体を形成することをいう。
【0041】
鋳型81内の領域Pで水溶性固化物41とともに凝固した金属71は、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1のうちオープンポーラスメタル11を形成することとなる。これに対して、領域Qで凝固した金属71は、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1のうちベースメタル21を形成することとなる。ここで、領域Pと領域Qとは、説明の便宜上分けて説明しているが、いずれも鋳型81内の同一空間上の領域であり、鋳型81内に流し入れた金属71は、領域Pと領域Qとで物理的に分離するようなことはなく一体的に凝固して中間構造物91を形成する。これにより、オープンポーラスメタル11とベースメタル21とを完全に一体化させることができる。鋳造工程で鋳造された中間構造物91は、鋳造工程が完了した時点で、水溶性固化物41と金属71とが互いに入り組んで固まった状態、すなわち、凝固した金属71に水溶性固化物41が付着して固化した状態となる。
【0042】
[水溶性固化物溶解工程]
水溶性固化物溶解工程は、中間構造物91を構成する水溶性固化物41を溶解させる工程である。
【0043】
(溶解)
溶解とは、中間構造物91を水に浸す等により、中間構造物91から水溶性固化物41を溶かし出すことをいう。
【0044】
水溶性固化物溶解工程では、水溶性固化物41の水溶性という性質を利用するので、水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91から水溶性固化物41を容易に溶解させることができる。水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91から水溶性固化物41が溶解されると、図3図5に示すように、水溶性固化物41が溶解する前に存在していた部分にセル111が形成される。このように、水溶性固化物溶解工程では、水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91から水溶性固化物41が溶解するので、図5示すような、オープンポーラスメタル11とベースメタル21とが一体的に鋳造されたベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を形成させることができる。
【0045】
以上説明した方法により製造されたベースメタル一体型オープンポーラスメタル1は、オープンポーラスメタル11とベースメタル21とをそれぞれ独立して製作した後に両者を一体化させる後工程を経ることなく、境界部での特性の連続性を維持することができるベースメタル一体型オープンポーラスメタルである。このような構成のベースメタル一体型オープンポーラスメタル1は、弾性、エネルギー吸収性、断熱性、流体透過性の面で優れているので、衝撃吸収部材の一部、断熱部材の一部、熱交換ユニットの一部として有効に活用することができる。
【0046】
[第1〜第9実施形態]
ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の製造方法についての基本的な構成は上述したとおりであるので、以下の第1〜第9実施形態では、上記基本構成と同様の構成についてはその説明を省略し、それぞれの特徴的な構成要素(鋳造工程)について説明する。
【0047】
以下では、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1の形態について、鋳造工程における、鋳型81の形状、及び鋳型81内に水溶性固化物41を配置する位置の違いによって異なるそれぞれの形態毎に下記の第1〜第9実施形態で説明する。
【0048】
[第1実施形態]
第1実施形態では、鋳造工程において、図6(A)に示すように、縦長の円筒状の鋳型81内の中心部又はその付近の領域Pに、オープンポーラスメタル11を形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、円柱状のオープンポーラスメタル11の周囲をベースメタル21が囲うように配置された、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態では、鋳造工程において、図6(B)に示すように、横広の円筒状の鋳型81内の上部の領域Pに、オープンポーラスメタル11を形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、円板状のベースメタル21の上にオープンポーラスメタル11が重なるように配置された、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0050】
[第3実施形態]
第3実施形態では、鋳造工程において、図6(C)に示すように、横広の円筒状の鋳型81内の中央部又はその付近の領域Pに、オープンポーラスメタル11を形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、円板状のベースメタル21が円板状のオープンポーラスメタル11を上下から挟んだようなサンドイッチ状のベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0051】
[第4実施形態]
第4実施形態では、鋳造工程において、図6(D)に示すように、横広の円筒状の鋳型81内の上部及び下部の領域Pに、オープンポーラスメタル11を形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、円板状のオープンポーラスメタル11が円板状のベースメタル21を上下から挟んだようなサンドイッチ状のベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0052】
[第5実施形態]
第5実施形態では、鋳造工程において、図7(E)に示すように、横広の直方体形状の鋳型81内の上部の領域Pに、オープンポーラスメタルを形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、矩形板状のベースメタル21の上に矩形板状のオープンポーラスメタル11が重なるように配置された、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0053】
[第6実施形態]
第6実施形態では、鋳造工程において、図7(F)に示すように、横広の直方体形状の鋳型81内の中央部又はその付近の領域Pに、オープンポーラスメタルを形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、矩形板状のベースメタル21が矩形板状のオープンポーラスメタル11を上下から挟んだような、サンドイッチ状のベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0054】
[第7実施形態]
第7実施形態では、鋳造工程において、図7(G)に示すように、横広の直方体形状の鋳型81内の上部及び下部の領域Pに、オープンポーラスメタルを形成させるための水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、矩形板状のオープンポーラスメタル11が矩形板状のベースメタル21を上下から挟んだような、サンドイッチ状のベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0055】
[第8実施形態]
第8実施形態では、鋳造工程において、図7(H)に示すように、中心部又はその付近に円柱状の柱を有する円筒状の鋳型81の内壁面付近の領域Pに、オープンポーラスメタルを形成させるための、空洞101を有する水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、中心部又はその付近に空洞101を有する円柱状のベースメタル21の周囲をオープンポーラスメタル11が囲うように配置された、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0056】
[第9実施形態]
第9実施形態では、鋳造工程において、図7(I)に示すように、半円柱状の凸部を有する半円筒状の鋳型81の内壁面付近の領域Pに、オープンポーラスメタル11を形成させるための、切欠き部を有する半円柱状の水溶性固化物41を配置し、鋳型81内に溶融した金属71を流し入れて、流し入れられた金属71を凝固させることで水溶性固化物41と金属71とが一体化した中間構造物91を鋳造する。このような鋳造工程を経た後に、水溶性固化物41を溶解させる水溶性固化物溶解工程を経ることにより、切欠き部102を有する半円柱状のベースメタル21の弧の外側をオープンポーラスメタル11が囲うように配置された、ベースメタル一体型オープンポーラスメタル1を製造することができる。
【0057】
以上、本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタル及びその製造方法について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。また本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や上記実施の形態の組み合わせを施してもよい。
【0058】
本発明に係るベースメタル一体型オープンポーラスメタルの製造方法における水溶性固化物は、その性質上、製造工程で水に溶けて消失してしまうものである。このため、ベースメタル一体型オープンポーラスメタルが完成した後の段階では、その製造工程で水溶性固化物が用いられたか否かが判別し難い場合がある。しかしながら、オープンポーラスメタルとベースメタルとが完全に一体化されているものであれば、本発明に係る製造方法を用いて製造された蓋然性が高いといえる。
【符号の説明】
【0059】
1 ベースメタル一体型オープンポーラスメタル
11 オープンポーラスメタル
21 ベースメタル
31 水溶性物質
41 水溶性固化物
51 空隙
71 金属
81 鋳型
91 中間構造物
101 空洞
102 切欠き部
111 セル
P 鋳型内の領域
Q 鋳型内の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8