【解決手段】缶体は、開口部に切断先端部が径方向の外側に折り返されて形成されたカール部を有し、缶軸を通る缶軸方向に沿う断面において、カール部の内側の空間部の断面積が4mm
以上であり、カール部の全周にわたって該カール部の基端側の外面と切断先端部との間に隙間が形成されている。また、缶軸を通る缶軸方向に沿う断面において、隙間の径方向の距離が切断先端部におけるカール部の板厚の2倍以上の大きさとされる。
前記缶軸を通る前記缶軸方向に沿う断面において、前記隙間の径方向の距離が前記切断先端部における前記カール部の板厚の2倍以上の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の缶体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る缶体の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の缶体(ボトル缶)101は、
図1及び
図2に示すように、全体がボトル形状に形成され、外部に開口する開口部15にカール部51を有する。缶体101は、カール部51を有する口部14を通じて内部に飲料等の内容物が充填された後、
図1に示すように、口部14にキャップ201を装着する(巻き締める)ことにより開口部15が密封され、ボトル容器301とされる。
図1には、缶体101と、缶体101の口部14に装着されたキャップ201と、を備えるボトル容器301を示している。また、
図1では、ボトル容器301の右半分を、缶軸Cを通る断面にして示している。
【0017】
缶体101は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板金属からなり、
図1に示すように、円筒状をなす胴部(ウォール)10と、円板状をなす底部(ボトム)20と、を備える有底円筒状に形成されている。
【0018】
図1に示すように、胴部10及び底部20は互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Cと称して説明を行う。また、缶軸Cに沿う方向(缶軸C方向)のうち、開口部15から底部20側へ向かう方向を下側(下方)、底部20から開口部15側へ向かう方向を上側(上方)とし、以下の説明においては、
図1に示す向きと同様に上下方向を定めるものとする。また、缶軸Cに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、缶軸Cに接近する向きを径方向の内側(内方)、缶軸Cから離間する向きを径方向の外側(外方)とする。また、缶軸C回りに周回する方向を周方向とする。
【0019】
本実施形態では、缶体101の底部20は、缶軸C上に位置するとともに、上方(胴部10の内部)に向けて膨出するように形成されたドーム部21と、該ドーム部21の外周縁部と胴部10の下端部とを接続するヒール部22とを備えている。また、ドーム部21とヒール部22との接続部分は、缶体101が正立姿勢(
図1に示される開口部15が上方を向く姿勢)となるように接地面(載置面)上に載置されたときに、接地面に接する接地部23となっている。接地部23は、底部20において最も下方に向けて突出しているとともに、周方向に沿って延びる環状をなしている。
【0020】
缶体101の胴部10は、
図1に示されるように、胴部10の下部側(底部20側)において円筒状に形成された円筒部11と、円筒部11の上端で径方向内方に屈曲するように缶軸C方向の上方に向けて縮径された肩部12と、肩部12の上端に接続されて缶軸C方向の上方に向けて延びる首部13と、首部13の上端に接続されて外部に開口する口部14と、を備える。なお、円筒部11、肩部12、首部13、口部14は、それぞれ胴部10の周方向全周にわたって延びる環状をなしている。
【0021】
このうち首部13は、
図1〜
図3に示すように、缶軸C方向の上方に向けて漸次縮径された形状とされており、胴部10の下部に形成された円筒部11よりも小径に形成されている。また、首部13の上端が最も小径に形成されている。本実施形態の缶体101では、首部13は、肩部12の上端に連続して径方向内方に凸となる凹状の接続凹部31と、接続凹部31の上端に連続して缶軸C方向に向けて漸次縮径するテーパ状のテーパ筒部32と、を有している。そして、テーパ筒部32の上端が口部14の下端と接続されている。
【0022】
口部14は、テーパ筒部32の上端に連続して形成されており、テーパ筒部32の上端で一旦拡径された大径部41と、大径部41の上端で再度縮径された小径部42と、小径部42の上端に形成されたカール部51と、を有している。
【0023】
カール部51は、
図3に示すように、缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う断面(縦断面)において、缶体101の切断先端部141を缶軸Cと直交する径方向の外方に折り返した状態に形成されており、内側に比較的大きな空間部150を有している。また、
図3に示すように、切断先端部141はカール部51の基端側の外面から離間して配置されており、カール部51の全周にわたってカール部51の基端側の外面と切断先端部141との間に隙間Gが形成されている。
【0024】
本実施形態では、
図3に示すように、カール部51は、缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う断面において、缶軸Cに対して所定角度で傾斜する小径部42の上端に連続して缶軸C方向の上方に向けて漸次縮径する内周テーパ部149と、内周テーパ部149の上端で缶軸C方向と平行となるように屈曲する内周下側屈曲部143と、内周下側屈曲部143の上端から缶軸Cと平行に缶軸C方向の上側に向けて垂直に延びる内周側円筒部144と、内周側円筒部144の上端から径方向の外方に向けて広がるように屈曲する内周上側屈曲部145と、内周上側屈曲部145の外周縁から径方向の外方に水平に延びる天頂部142と、天頂部142の外周縁から缶軸C方向の下方に向けて折り返すように屈曲する外周上側屈曲部146と、外周上側屈曲部146の外周縁から缶軸Cと平行に缶軸C方向の下方に向けて垂直に延びる外周側円筒部147と、外周側円筒部147の下端から缶軸C方向の下方及び径方向の内方に向けて屈曲する外周下側屈曲部148と、外周下側屈曲部148の下端から小径部42における缶軸C方向の途中位置に向けて縮径しながら延びる内向きテーパ状のカール端部151と、が連続して形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、
図3に示すように、カール端部151が、ほぼストレート状のテーパ形状に形成され、カール端部151の先端に配置される切断先端部141が缶軸C方向の下方に向けて配置されている。そして、切断先端部141の端面が小径部42の外面に対向して配置され、カール端部151の先端に配置される切断先端部141の下端141aがカール部51において最も低い位置に配置される。このため、小径部42のうち、切断先端部141の下端141aに対向する位置が、カール部51の基端位置となる。
図3には、カール部51の基端位置を破線Aで示す。
【0026】
このように、カール部51は、切断先端部141の下端141aよりも缶軸C方向の上側に形成された部分の形状とされる。なお、本実施形態では、小径部42と内周テーパ部149とが一つの連続した、すなわち同じ傾斜角度βのテーパ形状で形成されており、基端位置Aを境にして缶軸C方向の下側部分を小径部42、上側部分を内周テーパ部149としている。したがって、基端位置Aよりも缶軸C方向の上側に配置された内周テーパ部149からカール端部151の先端(切断先端部141)までの形状がカール部51とされる。
【0027】
また、
図3に示すように、カール部51の内側に形成される空間部150は、カール部51の内面で囲まれた範囲(断面積S)とされる。なお、
図3には、空間部150の断面積Sをハッチングして示している。詳細には、
図3の断面図において、空間部150は、切断先端部141の端面とカール部51の内面とが交差する点である切断先端部141の上端141bから径方向の内方に向けて水平に引いた線Lよりも内側に配置される部分とされる。そして、
図3に示す缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う断面において、空間部150の断面積S(mm
2)は4mm
2以上とされ、好ましくは10mm
2以下とされる。このように、カール部51の内側の空間部150は、比較的大きな断面積Sを有している。
【0028】
一方で、カール部51の空間部150は、隙間Gを介して外部に開放されている。隙間Gは、
図3に示すように、缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う断面における径方向の距離(水平距離)とされる。隙間Gは、切断先端部141におけるカール部51の板厚tの2倍以上の大きさ(G≧2t)に設けることが好ましく、さらに好ましくは板厚tの3以下の大きさ(G≦3t)の大きさとされる。なお、隙間Gは、後述するカール部51の径方向の厚みTよりも小さくなる。
【0029】
カール部51の缶軸C方向の幅W(mm)は、缶軸C方向におけるカール部51の上端位置からそのカール部51の下端位置までの缶軸Cと平行な垂直距離とされる。
図3に示す缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う断面において、天頂部142がカール部51の最も缶軸C方向の上端位置に配置され、切断先端部141の下端141a(基端位置A)がカール部51の最も缶軸C方向の下端位置に配置されており、幅Wは天頂部142の外面から切断先端部141の下端141aまでの垂直距離とされる。また、カール部51の径方向の厚みT(mm)は、径方向におけるカール部51の最内径位置から最外径位置までの缶軸Cに直交する水平距離とされる。
図3に示す缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う断面において、内周側円筒部144がカール部51の最も径方向の内方位置に配置され、外周側円筒部147がカール部51の最も径方向の外方位置に配置されており、厚みTは内周側円筒部144の外面から外周側円筒部147の外面までの水平距離とされる。
【0030】
本実施形態では、カール部51の外径をDとしたとき、外径Dと厚みTとの比率(T/D)が0.07以上0.12以下とされ、カール部51の厚みTは外径Dの7%以上12%以下の大きさに形成される。具体的には、例えば、カール部51の外径Dが25mm以上40mm以下とされる缶体101において、カール部51の厚みTは2.0mm以上4.5mm以下、好ましくは3.0mm以上4.0mm以下とされる。また、カール部51の幅Wは3.0mm以上5.0mm以下、好ましくは3.5mm以上4.7mm以下とされる。なお、カール部51の厚みTが4.5mmを超えると、カール部51の成形工程時に割れが発生しやすくなる。また、厚みTが2.0mmよりも小さくなると、外周上側屈曲部146は成形工程において所定の形状が得られ難くなる。
【0031】
なお、
図3等では、カール部51の外周側に、若干のストレート状の外周側円筒部147が形成されているが、外周側円筒部147を有さず、外周上側屈曲部146に連続する外周下側屈曲部148を設けて連続した湾曲面(屈曲面)でカール部51を形成してもよい。この場合、外周上側屈曲部146の下端と外周下側屈曲部148の上端との接続位置がカール部51の最外径位置となる。また、カール部51の上端に配置された天頂部142についても径方向に所定の厚みをもって形成されているが、内周上側屈曲部145の外周縁と外周上側屈曲部146の内周縁とを連続する湾曲面に形成してもよい。この場合、内周上側屈曲部145の外周縁と外周上側屈曲部146の内周縁との接続位置が天頂部142となる。
【0032】
また、本実施形態では、カール部51のうち、外周側に配置される外周上側屈曲部146の曲率半径R12(mm)は、内周上側屈曲部145の曲率半径R11(mm)よりも十分に大きく形成されている。また、最外径位置の外周側円筒部147の下端に連続する外周下側屈曲部148の曲率半径R13(mm)は、外周上側屈曲部146の曲率半径R12よりも小さく形成されるが、比較的緩やかな(大きな)曲率半径に形成される。なお、これらの内周上側屈曲部145の曲率半径R11、外周上側屈曲部146の曲率半径R12及び外周下側屈曲部148の曲率半径R13は、それぞれ単一の曲率半径として形成してもよいし、異なる複数の曲率半径の円弧を連続させて形成してもよい。
【0033】
図3に示すように、カール部51の外面における曲率半径で、カール部51の内周側に配置される内周上側屈曲部145の曲率半径R11は、例えば0.5mm以上2.0mm以下、好ましくは0.5mm以上1.0mm以下とされる。また、カール部51の外周側に配置される外周上側屈曲部146の曲率半径R12は、例えば1.5mm以上3.5mm以下、好ましくは2.0mm以上3.0mm以下に形成される。外周下側屈曲部148の曲率半径R13は0.5mm以上1.2mm以下に形成される。また、カール端部151の外面と缶軸C方向に直交する水平線とがなす角度αは、例えば0°以上45°以下に設けられる。また、内周テーパ部149の外面と缶軸Cに平行な垂直線とがなす角度βは、例えば0°を超えて20°以下に設けられる。
【0034】
なお、外周上側屈曲部146の曲率半径R12が3.5mmより大きいと密封性が低下し、1.5mmより小さいと、口当たりが悪くなるとともに、カール部51の成形時に割れや皺が発生するおそれがある。また、外周下側屈曲部148の曲率半径R13が1.2mmより大きいと、キャップ201との嵌合性が悪くなる。一方、曲率半径R13が0.5mmより小さいと、カール部51の成形工程時にカール部51に割れや皺が発生するおそれがある。
【0035】
ただし、缶体101の上記寸法は、上記数値範囲に限られるものではない。また、缶体101のその他の寸法についても限定されるものではない。缶体101のその他の諸寸法についても一例を挙げると、缶体101の板厚は、成形前のアルミニウム合金板の元板厚が0.250mm〜0.500mmであり、カール部51における板厚が0.200mm〜0.400mmである。切断先端部141におけるカール部51の板厚tが0.200mm以上0.400mm以下とされる場合、隙間Gは0.400mm〜1.200mm以下とされる。
【0036】
このように構成される缶体101には、
図1に示すように、口部14の開口部15にキャップ201が装着され、ボトル容器301とされる。具体的には、缶体101の内部に内容物を充填後、口部14にキャップ201を被せる。そして、キャップ201を上方から缶軸C方向の下方に向けて押圧し、シール材112を圧縮した状態で、キャップ201のスカート部111を工具の爪で径方向内方に向けて押圧することにより、カール部51の外面に倣わせるようにスカート部111を変形させる。これにより、スカート部111の下端部をカール部51のカール端部151に引っ掛けるように巻き込み、キャップ201を缶体101に装着する。
【0037】
このキャップ201の装着状態において、キャップ201の下端部は、カール部51の外周下側屈曲部148からカール端部151にかけて引っ掛けられた状態であるので、カール部51の天頂部142から外周下側屈曲部148にかけてシール材112が密着し、缶体101の内部を確実に密封できる。一方、口部14からキャップ201を離脱させることで、缶体101の開口部15が開封され、缶体101の内部に充填された内容物を外部に注ぎ出すことができる。
【0038】
前述したように、本実施形態の缶体101では、空間部150の断面積Sが4mm
2以上のカール部51を有しているが、カール部51の全周にわたってカール部51の基端側の外面と切断先端部141との間に隙間Gを形成している。このため、キャップ201を口部14に装着する際に、缶体101の内部に充填した余剰の内容物等の液体が零れて空間部150に入り込んだとしても、周方向に開いた円環状の隙間Gから外部に排出されやすく、空間部150内に留まり難くなっている。また、ボトル容器301の洗浄時には、隙間Gを通じて空間部150内を容易に洗浄できるので、液体を効率的に洗い流すことができる。
【0039】
また、カール部51においては、隙間Gを、切断先端部141におけるカール部51の板厚tの2倍以上の大きさに形成しているので、カール部51の内側の空間部150に入り込んだ液体を空間部150内に留まらせることなく、隙間Gを通じて確実に洗い流すことができる。さらに、カール部51の切断先端部141を缶軸C方向の下方に向けて配置しているので、空間部150に入り込んだ液体をカール部51の形状に沿って円滑に外部に排出できる。したがって、缶体101においては、口部14の外観を美しく保つことができるとともに、口部14を衛生的に保つことができる。
【0040】
(第2実施形態)
図4及び
図5は、本発明の第2実施形態の缶体102を示す。第2実施形態の説明、
図4及び
図5では、前述の第1実施形態と共通する部分について同一符号を用いて説明を簡略化する。
【0041】
前述した第1実施形態の缶体101では、口部14の下部に、首部13のテーパ筒部32の上端で一旦拡径された大径部41と大径部41の上端で再度縮径された小径部42とを有し、首部13のテーパ筒部32と口部14のカール部51とが、大径部41及び小径部42を介して接続されていた。一方、
図4及び
図5に示す第2実施形態の缶体102では、首部13のテーパ筒部32に連続してカール部52が形成される。
【0042】
また、第2実施形態の缶体102においては、カール端部152が径方向の内方に向けて水平に延びており、カール端部152の先端に配置される切断先端部141が径方向の内方に向けて配置されている。そして、切断先端部141の端面がテーパ筒部32の外面に対向して配置され、カール端部152の先端に配置される切断先端部141の下端141aがカール部52において最も低い位置に配置される。このため、テーパ筒部32のうち、切断先端部141の下端141aに対向する位置が、カール部52の基端位置となる。
図5には、カール部52の基端位置を破線Aで示す。そして、切断先端部141の下端141aよりも缶軸C方向の上側に形成された部分の形状が、カール部52とされる。
【0043】
なお、本実施形態では、テーパ筒部32と内周テーパ部149とが、一つの連続した、すなわち同じ傾斜角度γのテーパ形状で形成されており、基端位置Aを境にして缶軸C方向の下側部分をテーパ筒部32、上側部分を内周テーパ部149としている。したがって、基端位置Aよりも缶軸C方向の上方に配置された内周テーパ部149からカール端部152の先端(切断先端部141)までの形状がカール部52とされる。なお、傾斜角度γは、缶軸Cを通る缶軸C方向に沿う縦断面において、内周テーパ部149の外面と缶軸Cに平行な垂直線とがなす角度であり、例えば0°を超えて20°以下に設けられる。
【0044】
第2実施形態の缶体102においても、カール部52の内側の空間部150の断面積Sが4mm
2以上とされるが、カール部52の全周にわたってカール部52の基端側の外面から切断先端部141を離間して配置し、カール部52の基端側の外面と切断先端部141との間に隙間Gを形成している。このため、周方向に開いた円環状の隙間Gから空間部150内に入り込んだ液体が外部に排出されやすく、空間部150内に留まり難くなっている。また、隙間Gを通じて空間部150内を容易に洗浄できるので、液体を効率的に洗い流すことができる。
【0045】
また、カール部52においても、隙間Gを切断先端部141におけるカール部52の板厚tの2倍以上の大きさに形成することで、カール部52の内側の空間部150に入り込んだ液体を空間部150内に留まらせることなく、隙間Gを通じて確実に洗い流すことができる。また、カール部52の切断先端部141を径方向の内方に向けて配置して、カール端部152を径方向の内方に向けて水平に配置しているので(カール端部152の外面と缶軸C方向に直交する水平線とがなす角度α=0°)、空間部150に入り込んだ液体が空間部150内に留まることを抑制でき、液体を隙間Gから円滑に外部に排出できる。したがって、缶体102においても、口部14の外観を美しく保つことができるとともに、口部14を衛生的に保つことができる。
【0046】
(第3実施形態)
図6及び
図7は、本発明の第3実施形態の缶体103を示す。第3実施形態の説明、
図6及び
図7では、前述の第1実施形態及び第2実施形態と共通する部分について同一符号を用いて説明を簡略化する。
【0047】
前述した第1実施形態の缶体102及び第2実施形態の缶体102では、カール部51,52の内周側に、缶軸Cに対して所定角度(β,γ)で傾斜して缶軸C方向の上方に向けて漸次縮径する内周テーパ部149を設けていたが、第3実施形態の缶体103のように、内周テーパ部149を設けることなく、缶軸Cと平行に缶軸C方向の上側に向けて垂直に延びる内周側円筒部144を形成したカール部53を設けることもできる。
【0048】
図6に示すように、缶体103においては、首部13が、肩部12の上端に連続して径方向内方に凸となる凹状の接続凹部31と、接続凹部31の上端に連続して缶軸C方向に向けて漸次縮径するテーパ状のテーパ筒部32と、テーパ筒部32の上端に連続して缶軸C方向と平行になるように屈曲する下部屈曲部33と、下部屈曲部33の上端から缶軸Cと平行に缶軸C方向の上側に向けて垂直に延びる中間円筒部34と、を有する。そして、この首部13の中間円筒部34の上端に連続してカール部53の内周側円筒部144が形成されている。なお、首部13の形状は、第1〜第3実施形態の形状に限定されるものではなく、様々な形状を採用できる。
【0049】
第3実施形態の缶体103においては、カール端部152が径方向の内方に向けて水平に延びており、カール端部152の先端に配置される切断先端部141が径方向の内方に向けて配置されている。そして、切断先端部141の端面が中間円筒部34の外面に対向して配置され、カール端部152の先端に配置される切断先端部141の下端141aがカール部53において最も低い位置に配置される。このため、中間円筒部34のうち、切断先端部141の下端141aに対向する位置が、カール部53の基端位置となる。
図7には、カール部53の基端位置を破線Aで示す。そして、切断先端部141の下端141aよりも缶軸C方向の上側に形成された部分の形状が、カール部53とされる。なお、本実施形態では、中間円筒部34と内周側円筒部144とが一つの連続した形状で形成されており、基端位置Aを境にして缶軸C方向の下側部分を中間円筒部34、上側部分を内周側円筒部144としている。したがって、基端位置Aよりも缶軸C方向の上方に配置された内周側円筒部144からカール端部152の先端(切断先端部141)までの形状がカール部53とされる。
【0050】
なお、カール部53においては、内周上側屈曲部145の外周縁と外周上側屈曲部146の内周縁とが連続する湾曲面で形成されており、これらの内周上側屈曲部145の外周縁と外周上側屈曲部146の内周縁との接続位置がカール部53において最も缶軸方向の上端位置に配置される天頂部142となる。
【0051】
第3実施形態の缶体103においても、カール部53の内側の空間部150の断面積Sが4mm
2以上とされるが、カール部53の全周にわたってカール部53の基端側の外面と切断先端部141との間に隙間Gを形成している。このため、周方向に開いた円環状の隙間Gから空間部150内に入り込んだ液体が外部に排出されやすく、空間部150内に留まり難くなっている。また、隙間Gを通じて空間部150内を容易に洗浄できるので、液体を効率的に洗い流すことができる。
【0052】
また、カール部53においても、隙間Gを切断先端部141におけるカール部53の板厚tの2倍以上の大きさに形成することで、カール部53の内側の空間部150に入り込んだ液体を空間部150内に留まらせることなく、隙間Gを通じて確実に洗い流すことができる。また、カール部53の切断先端部141を径方向の内方に向けて配置して、カール端部152を径方向の内方に向けて水平に配置しているので(カール端部152の外面と缶軸C方向に直交する水平線とがなす角度α=0°)、空間部150に入り込んだ液体が空間部150内に留まることを抑制でき、液体を隙間Gから円滑に外部に排出できる。したがって、缶体103においても、口部14の外観を美しく保つことができるとともに、口部14を衛生的に保つことができる。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、底部20と胴部10とが一体に形成された有底円筒状の缶体について説明したが、缶体は必ずしも底部を有していないものも含むものとし、カール部を成形した後に、その胴部に、別に形成した底部を巻き締めるものも含まれる。
【実施例】
【0054】
本発明の実施例及び比較例の缶体を作製した。それぞれの缶体の寸法等の条件は、表1に示す通りである。このうち、実施例1及び実施例2の缶体については、切断先端部をカール部の基端側の外面から離間させて、カール部の全周わたって隙間Gを形成した。一方、比較例1及び比較例2の缶体については、切断先端部をカール部の基端側の外面に当接させるようにして形成した。なお、比較例1及び比較例2の缶体は、切断先端部をカール部の全周にわたって当接させることができず、部分的に隙間Gが形成された。そして、各缶体について、カール部の下部に一定量(アルミニウムとして70μg)のアルミニウム溶液を付着させた後、口部にキャップを装着してボトル容器を作製した。
【0055】
次に、
図8に示すように、キャップ201の左右側(矢印B1,B2)及び天面側(矢印B3)から水を噴射する洗浄評価装置を用いて、各ボトル容器301を洗浄した。ボトル容器301は、洗浄評価装置に1秒間又は5秒間滞留させることにより、洗浄した。洗浄後、ボトル容器を抽出液(希塩酸)に浸し、1分間の超音波洗浄を行った。そして、抽出液に含まれるアルミニウム濃度を原子吸光光度計で測定し、洗浄しきれなかったアルミニウムの残留量を確認した。このようにして得られたアルミニウムの残留量Yと洗浄前に塗布したアルミニウムの塗布量Xとを比較し、洗浄により落としきれなかったアルミニウムの残留率{(Y/X)×100}(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果からわかるように、カール部の全周にわたる隙間Gを設けた実施例1及び実施例2については、比較例1及び比較例2と比較して、アルミニウムの残留率を小さくできた。また、隙間Gを板厚tの2倍以上の大きさに設けるとともに、角度αを0°より大きくしてカール部の先端(切断先端部)を下方に向けて配置した実施例1については、実施例2よりもさらにアルミニウムの残留率を小さくできた。これらの結果からわかるように、切断先端部をカール部の基端側の外面から離間させて、カール部の全周にわたって隙間Gを形成することにより、空間部内に入り込んだ液体等を効率的に洗い流すことができ、口部の外観を美しく保つことができるとともに、口部を衛生的に保つことができる。