【解決手段】冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態として冷凍食品を解凍するための食品用解凍マットに用いられ、冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料を封入する解凍用材料封入用の袋体310であって、シリコーン樹脂シートでなる袋体本体部320と、当該袋体本体部320に一体形成されており、当該袋体本体部320の内部に解凍用材料を注入するための注入口330が設けられている解凍用材料注入部340とを有する。
冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態として前記冷凍食品を解凍するための食品用解凍マットに用いられ、前記冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料を封入する解凍用材料封入用の袋体であって、
シリコーン樹脂シートでなる袋体本体部と、
当該袋体本体部に一体形成されており、当該袋体本体部の内部に前記解凍用材料を注入するための注入口が設けられている解凍用材料注入部と、
を有することを特徴とする解凍用材料封入用の袋体。
食品用解凍マットを少なくとも2枚用いて、当該2枚の食品用解凍マットで冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態として前記冷凍食品を解凍する冷凍食品解凍器であって、
前記食品用解凍マットは、請求項5又は6に記載の食品用解凍マットであり、前記冷凍食品を挟んだ状態としたときに当該冷凍食品の上方向に位置する前記食品用解凍マットを上側解凍マットとし、前記冷凍食品の下方向に位置する前記食品用解凍マットを下側解凍マットとしたとき、
前記上側解凍マット及び下側解凍マットと、
前記冷凍食品の解凍前の温度よりも高い温度の水を貯めるための貯水槽を有する貯水式保温器と、
前記下側解凍マットを載置する下側解凍マット載置トレイと、
を備え、
前記下側解凍マット載置トレイは、当該下側解凍マット載置トレイの底面が前記貯水槽に貯められている水の表面から所定量だけ浸漬した状態となるように前記貯水式保温器に取り付けられていることを特徴とする冷凍食品解凍器。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍技術は進歩しているが、冷凍食品((冷凍された肉、魚、寿司ネタ、加工食品など)を解凍する技術はいまだに進歩が遅れている。冷凍食品を解凍する方法としては、電子レンジによる解凍方法、流水による解凍方法、自然解凍による解凍方法が一般的であった。電子レンジや流水による解凍方法では、解凍後に肉汁(以下、「ドリップ」という。)が出てしまうために、食品の色や味を劣化させる原因となり、冷凍食品の評価を下げる理由の一つになっていた。特に、電子レンジによる解凍方法では、乾燥や加熱し過ぎにより味が劣化するという問題があった。
【0003】
一方、自然解凍による解凍方法は電子レンジや流水による解凍方法に比べると、好ましい解凍方法であるとされているが、2時間以上、冷蔵庫内や常温(20℃以下)で解凍しなければならないので効率が悪という問題があった。
【0004】
上記した問題を解決することのできる食品用解凍マットが、本発明の出願人により提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図9は、特許文献1に記載されている食品用解凍マット900を説明するために示す図である。特許文献1に記載されている食品用解凍マット900は、
図9に示すように、長方形状をなす解凍用材料封入用の袋体910の内部に、冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料が封入された2枚の解凍マット920と、2枚の解凍マット920を折り曲げ可能に連結する連結部930とを有する構造を有している。このような構造を有する食品用解凍マット900は、当該食品用解凍マット900の流通時又は保管時においては、2枚の解凍マット920を連結部930で折り畳んだ状態とし、解凍時において冷凍食品を挟むときには、2枚の解凍マット920を一旦開いた状態(
図9(a)参照。)とし、2枚の解凍マット920の一方の解凍マットに冷凍食品(図示せず。)を載せた状態で2枚の解凍マット920を折り畳む(
図9(b)参照。)。
【0006】
なお、
図9(a)において、2枚の解凍マット920のそれぞれの内側の面921上に描かれている破線枠923は、冷凍食品を載置する領域を示しており、解凍時においては、当該破線枠923で囲まれる領域内に冷凍食品を載せた状態で2枚の解凍マット920を折り畳んで使用する。
【0007】
特許文献1に記載の食品用解凍マット900は、冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料として、吸水性ポリマーと水とを混合したゲル状体又はカルボキシメチルセルロース(CMC)と水とを混合した粘性体と、粉末状アルミニウム又は粉末セラミックスとを混合した熱吸収材を含有するものである。また、解凍用材料には、防腐剤としてのヒノキチオールをさらに含有している。また、解凍用材料封入用の袋体910は、厚さ0.04mmから〜0.1mmの範囲内にあるプラスチックスシートからなる。プラスチックスシートは、金属フィルムがラミネートされた構造を有する。また、特許文献1に記載の食品用解凍マット900は、2枚の解凍マット920のそれぞれの厚みは、10mm〜30mmとし、1平方センチメートルあたり1g〜3gの重さを持つ。
【0008】
特許文献1に記載の食品用解凍マット900は、以下のような手順で製造することができる。まず、撹拌工程として、調合タンクに粉末アルミニウムや粉末セラミックスと水と防腐剤としてのヒノキチオールとを投入し撹拌する。次に、粉末アルミニウムや粉末セラミックスと水とヒノキチオールを撹拌したものを配合タンクに投入し、これに増粘剤あるいは調整剤として高吸水ポリマー又はCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を投入し撹拌することで熱吸収材の混合が行われる。この工程において、熱吸収材は所定の粘度を備えたゲル状となっている。この場合、ヒノキチオールの分量は、50ppmから500ppmが水に対して含まれる量に調整される。次に、撹拌工程で得た熱吸収材は封入工程において、プラスチックスシートなどからなる解凍用材料封入用の袋体に均一に封入される。プラスチックスシートは、アルミニウムフィルムなどの金属フィルムをラミネートしたプラスチックスシートであってもよい。
【0009】
なお、熱吸収材における、粉末アルミニウムや粉末セラミックスと水とヒノキチオールとCMC(カルボキシメチルセルロース、食品添加物として一般に使用されている)の組み合わせに代えて、不凍液であり増粘効果のあるエチレングリコールやプロピレングリコール(食品添加物としても使用されている)と水とヒノキチオールとCMC(カルボキシメチルセルロース)との組み合わせたものを熱吸収材に使用してもよい。さらにまた、CMCの代わりに、あるいは、合わせて高吸水性ポリマーを使用することもできる。
【0010】
解凍用材料封入用の袋体910は、プラスチックスシートを長方形に裁断し、2枚を重ねて、長辺側の1辺となる領域、これに連続する短辺側の2辺となる領域、連結部930となる領域をそれぞれ熱処理することにより閉じて袋状にしたものである。このとき、上記した熱吸収材を含有した解凍用材料を注入するための開口部を一部に残しておく。そして、開口部からゲル状の解凍用材料を注入したのちに当該開口部を熱処理等で閉じて4辺が綴じられた2枚の解凍マットを、連結部930によって連結した構造としたものを食品用解凍マットとする。なお、解凍用材料封入用の袋体910に封入される解凍用材料の量は適宜設定可能である。
【0011】
特許文献1に記載の食品用解凍マット900によれば、2枚の解凍マット920を折り畳むことによって冷凍食品を挟んだ状態で解凍を行うことができる。このため、冷凍食品を均一に解凍することが可能となる。また、2枚の解凍マット920と冷凍食品との接触面積が大きくなることから、比較的短時間(例えば10分〜50分)で冷凍食品の解凍を行うことができるようになる。その結果、冷凍食品の品質に影響を与えずドリップも最小限に抑えながら、冷凍食品を均一に、かつ、比較的短時間で解凍することができるといった優れた効果が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載されている食品用解凍マット900は、冷凍食品を解凍する際には、
図9(b)に示すように、2枚の解凍マット920を連結部930で折り畳むことにより、2枚の解凍マット920で冷凍食品を挟んだ状態で使用するものである。このため、2枚の解凍マット920のそれぞれのサイズを大きくすると、重量も重くなるため、持ち運びが不便となったり、折り畳みにくくなったりすることもあることから、2枚の解凍マット920のそれぞれのサイズは、せいぜい片側の手で一方の解凍マットを他方の解凍マット側に折り返せる程度のサイズとすることが好ましい。
【0014】
このため、特許文献1に記載されている食品用解凍マット900は、家庭用として使用する場合には、優れたものであると言えるが、このような食品用解凍マットをレストランやホテルなどにおいて業務用として使用する場合には改善すべき点もある。
【0015】
すなわち、レストランやホテルなどにおいては、調理品を限られた時間で効率よく、多くの客に提供する必要があるため、例えば、3枚下ろしにした冷凍鮭をそのままのサイズで解凍したり、複数枚のステーキ用肉などを一度に解凍したりする場合も多い。このような場合、冷凍食品の品質を落とさずに解凍することに加えて、業務の効率化のために、冷凍食品の解凍時間をできるだけ短縮化できることが望まれる。このようなサイズの大きな冷凍食品又は複数の冷凍食品を一度に解凍するには、
図9に示すような食品用解凍マットでは無理がある。そこで、2枚の解凍マットを連結しないで、別々の解凍マットとし、各解凍マットを大サイズ(例えば、
図9に示す解凍マット開いた状態としたときのサイズ)とすることが考えられる。
【0016】
図10は、連結されていない2枚の解凍マットで冷凍食品を挟んで使用する場合の一例を説明するために示す図である。
図10に示すように、連結されていない2枚の解凍マット(上側解凍マット920A及び下側解凍マット920Bとする。)で冷凍食品960を挟んで使用する場合においては、まず、下側解凍マット920Bを例えば調理台950上に載置して(
図10(a)参照。)、当該下側解凍マット920B上に冷凍食品960を載せて、その上から上側解凍マット920Aを載せる(
図10(b)参照。)という作業を行う。
【0017】
なお、ここで使用する解凍マット(上側解凍マット920A及び下側解凍マット920B)は、特許文献1に記載されている食品用解凍マット900と同じ材質でなる解凍用材料封入用の袋体(薄いプラスチックスシートでなる解凍用材料封入用の袋体)が用いられ、また、当該解凍用材料封入用の袋体には、特許文献1に記載されている食品用解凍マット900で用いた解凍用材料と同じ解凍用材料が封入されているものとする。
【0018】
このようにすることによって、大サイズの冷凍食品にも対応可能となるが、冷凍食品を単に挟んだ状態で解凍するだけでは、所望とする解凍時間の短縮化が実現できない場合もあり、冷凍食品の品質を落とさずに解凍することに加えて業務の効率化を図るためには、さらなる改善が必要となる。
【0019】
また、
図10に示す上側解凍マット920A及び下側解凍マット920Bは、解凍用材料封入用の袋体910が薄いプラスチックスシートでなるため、上側解凍マット920A及び下側解凍マット920Bで冷凍食品960を挟んだ状態としたときに、確かに、それぞれの解凍マットと冷凍食品との接触面積を大きくした状態で挟むことができるが、より効率的な解凍を行うには、上側解凍マット920A及び下側解凍マット920Bと冷凍食品960との接触面積をより大きくした状態で冷凍食品を挟むことができることが好ましい。
【0020】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、食品用解凍マットを用いて冷凍食品の解凍を行う際において、冷凍食品との接触面積をより大きくした状態で冷凍食品を挟むことができ、それによって、より効率的な解凍が可能となる解凍用材料封入用の袋体及び当該解凍用材料封入用の袋体を用いた食品用解凍マットを提供するとともに、当該食品用解凍マットを用いることによって、調理業務の効率化を可能とする冷凍食品解凍器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[1]本発明の解凍用材料封入用の袋体は、冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態として前記冷凍食品を解凍するための食品用解凍マットに用いられ、前記冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料を封入する解凍用材料封入用の袋体であって、シリコーン樹脂シートでなる袋体本体部と、当該袋体本体部に一体形成されており、当該袋体本体部の内部に前記解凍用材料を注入するための注入口が設けられている解凍用材料注入部と、を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の解凍用材料封入用の袋体によれば、当該解凍用材料封入用の袋体は、シリコーン樹脂シートでなるため、柔軟性の高い解凍用材料封入用の袋体となる。これにより、当該解凍用材料封入用の袋体の注入口から解凍材料を内部に注入した状態で、当該注入口を接着剤によって接着して密閉することによって、プラスチックスフィルムシートを用いた解凍用材料封入用の袋体に比べて、柔軟性のより高い食品用解凍マットを作製することができる。なお、この明細書において、シリコーン樹脂シートというのは、シリコーンゴムシート又はシリコーンシートとも呼ばれているものであるとする。
【0023】
[2]本発明の解凍用材料封入用の袋体においては、前記袋体本体部は、外観形状が矩形状をなし、前記解凍用材料注入部は、前記袋体本体部から外部に突出しており、前記袋体本体部及び前記解凍用材料注入部は、2枚のシリコーン樹脂シートでなり、当該2枚のシリコーン樹脂シートの各縁部のうち、前記注入口となる縁部以外の縁部が接着剤によって貼り合わせられてなることが好ましい。
【0024】
このようにして形成された本発明の解凍用材料封入用の袋体は、注入口を有する解凍用材料注入部が突出して形成されたものとなり、当該解凍用材料封入用の袋体に解凍用材料を注入する際に、解凍用材料を注入し易くすることができる。
【0025】
[3] 本発明の解凍用材料封入用の袋体においては、前記2枚のシリコーン樹脂シートの各シリコーン樹脂シートは、前記解凍用材料注入部の前記袋体本体部に対する付け根部に対応する部分の外周縁部が、円弧を描いて形成されていることを特徴とする解凍用材料封入用の袋体。
【0026】
このように、解凍用材料注入部の袋体本体部に対する付け根部が円弧を描くように形成されていることにより、2枚のシリコーン樹脂シートを接着することによって作られた解凍用材料封入用の袋体の内部(袋体本体部の内部)に、解凍用材料を封入した場合でも、封入されている解凍用材料による圧力を分散させることができ、付け根部Pにおいて接着が剥がれにくくすることができる。
【0027】
[4]本発明の解凍用材料封入用の袋体においては、前記接着剤としては、シリコーン接着シール剤が用いられていることが好ましい。
【0028】
これにより、2枚のシリコーン樹脂シートを接着することができる。なお、このような接着剤としては、「DOW CORNING(登録商標) SE 9186 CLEAR」という接着剤を用いることができる。
【0029】
[5]本発明の食品用解凍マットは、冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態として前記冷凍食品を解凍するための食品用解凍マットであって、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の解凍用材料封入用の袋体に、前記冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料が封入されてなることを特徴とする。
【0030】
本発明の食品用解凍マットは、解凍用材料封入用の袋体として前記[1]〜[4]のいずれかに記載の解凍用材料封入用の袋体を用いている。これにより、本発明の食品用解凍マットは、プラスチックスシートなどで作製された袋体を用いた食品用解凍マットに比べて、食品用解凍マットの柔軟性はより高いものとなる。このため、当該食品用解凍マットを例えば2枚用いて、当該2枚の食品用解凍マットで、冷凍食品を挟んだ状態としたとき、2枚の食品用解凍マットは、それぞれ冷凍食品の表面の凹凸に沿って容易に変形するため、冷凍食品の表面のほぼ全体に密着した状態となる。これにより、冷凍食品に対する接触面積をより大きくすることができ、より効率的な解凍が可能となる。
【0031】
[6]本発明の食品用解凍マットにおいては、前記解凍用材料は、プロピレングリコールと、カルボキシメチルセルローズ(CMC)と、防腐剤と、水との混合物を含有することが好ましい。
【0032】
解凍用材料がこのような材料を含有していることにより、冷凍食品の解凍を促進する効果を高めることができる。これにより、このような解凍材料を用いた食品用解凍マットは解凍効率に優れたものとなり、冷凍食品を短時間で解凍することができる。
【0033】
[7]本発明の冷凍食品解凍器は、食品用解凍マットを少なくとも2枚用いて、当該2枚の食品用解凍マットで冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態として前記冷凍食品を解凍する冷凍食品解凍器であって、前記食品用解凍マットは、前記[5]又は[6]に記載の食品用解凍マットであり、前記冷凍食品を挟んだ状態としたときに当該冷凍食品の上方向に位置する前記食品用解凍マットを上側解凍マットとし、前記冷凍食品の下方向に位置する前記食品用解凍マットを下側解凍マットとしたとき、前記上側解凍マット及び下側解凍マットと、前記冷凍食品の解凍前の温度よりも高い温度の水を貯めるための貯水槽を有する貯水式保温器と、前記下側解凍マットを載置する下側解凍マット載置トレイと、を備え、前記下側解凍マット載置トレイは、当該下側解凍マット載置トレイの底面が前記貯水槽に貯められている水の表面から所定量だけ浸漬した状態となるように前記貯水式保温器に取り付けられていることを特徴とする。
【0034】
このように、本発明の冷凍食品解凍器は、柔軟性の高い食品用解凍マット(上側解凍マット及び下側解凍マット)を上下から冷凍食品の表面全体を挟んだ状態で解凍を行うものであるため、冷凍食品を均一に解凍することが可能となる。特に、上側解凍マット及び下側解凍マットに用いられているそれぞれの解凍用材料封入用の袋体は、シリコーン樹脂シートでなるため、柔軟性がより高い袋体となる。このため、冷凍食品の表面形状に凹凸があったとしても、上側解凍マット及び下側解凍マットは、冷凍食品の表面形状の凹凸に沿って密着状態で当該冷凍食品の表面全体を包み込むようにすることができる。これにより、上側解凍マット及び下側解凍マットと冷凍食品との接触面積が大きくなることから、冷凍食品の品質に影響を与えずドリップも最小限に抑えながら、冷凍食品を比較的短時間で均一に解凍することができるようになる。
【0035】
[8]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記下側解凍マット載置トレイの側面には、前記貯水槽内の空気を流入させるための通気孔が設けられていることが好ましい。
【0036】
このように、下側解凍マット載置トレイの左右両側面には、通気孔が設けられているため、貯水式保温器に貯められている水が所定温度の水(温水)となっている状態において、上側解凍マットと下側解凍マットとで冷凍食品を挟んで解凍を行っている場合には、貯水式保温器に貯められている温水の湯気(蒸気)が当該通気孔を通って下側解凍マット載置トレイ内に流入して行くこととなり、下側解凍マット及び上側解凍マットを保温することができる。特に、温水から離隔した位置にある上側解凍マットの保温が行えるため、冷凍食品の解凍を効率よく行える。
【0037】
[9]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態としたときの前記上側解凍マット及び下側解凍マットを包含した状態で、前記貯水槽の開口面を覆うことができる貯水槽カバーをさらに備えることが好ましい。
【0038】
当該貯水槽カバーは、上側解凍マットの上方側から貯水槽の開口面を覆うものである。このように、上側解凍マット及び下側解凍マットで冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態としたときに、貯水槽カバーで、上側解凍マットの上方側から貯水槽の開口面を覆うことにより、水(温水)の表面と貯水槽カバーとの間には、閉じられた空間が形成されるため、貯水式保温器に貯められている水(温水)の湯気(蒸気)が通気孔から下側解凍マット載置トレイ内に流入した際に、当該湯気(蒸気)を外部に発散させにくくすることができる。これにより、解凍状態にある下側解凍マット及び上側解凍マットを、より効率的に保温することができる。当該貯水槽カバーは、特に、冬季などのように外気温の低い時期においては有効なものとなる。
【0039】
[10]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記貯水式保温器の前記貯水槽に貯められている水の温度を設定温度とするための温度調節装置を備え、当該温度調節装置は、前記貯水式保温器に貯められている水を加熱するヒーターを制御するヒーター制御部と、前記貯水式保温器に貯められている水の温度を計測する水温計測部とを有し、ヒーター制御部は、前記水温計測部から出力される水温計測信号に基づいて前記ヒーターを制御することが好ましい。
【0040】
このような温度調節装置を備えていることにより、貯水式保温器の貯水槽に貯められている水の温度を設定温度とすることができるとともに、当該設定温度に保持できる。これにより、本発明の冷凍食品解凍器によって冷凍食品の解凍を行う際の温度管理を適切に行うことができ、それによって、適切な解凍を行うことができる。
【0041】
[11]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記下側解凍マット載置トレイの上段に上下方向にスライド可能に設けられており、上側解凍マットを載置する上側解凍マット載置トレイと、前記貯水式保温器、前記下側解凍マット載置トレイ及び前記上側解凍マット載置トレイを、上下方向に沿った下から順に、前記貯水式保温器、前記下側解凍マット載置トレイ及び前記上側解凍マット載置トレイの順序で支持する支柱と、をさらに備え、前記上側解凍マット載置トレイは、少なくとも前記上側解凍マットを載置する領域に網部を有することを特徴とする。
【0042】
このように、本発明の冷凍食品解凍器は、上側解凍マットを載置する上側解凍マット載置トレイを有し、しかも、当該上側解凍マット載置トレイが上下方向にスライド可能な構成となっているため、上側解凍マット及び下側解凍マットのサイズが大きく、かつ、重量が重くても、調理人などの作業者は大きな力を使うことなく、容易に上側解凍マット及び下側解凍マットで冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態とすることができ、解凍作業の効率化が図れる。特に、解凍作業を繰り返し行う場合には、より作業の効率化が図れる。このため、本発明の第2冷凍食品解凍器は、レストランやホテルなどで業務用として使用する場合に好適なものとなる。
【0043】
また、上側解凍マット載置トレイは、少なくとも上側解凍マットを載置する領域に網部を有しているため、上側の解凍マット載置トレイは、冷凍食品に対向する上側解凍マットの面の大部分が露出した状態で当該上側解凍マットを載置可能となる。このため、上側解凍マット載置トレイに載置されている上側解凍マットの下面(冷凍食品に対向する側の面)は、大部分が露出した状態となり、しかも、上側解凍マットは自重によって網部の各網目から下方向に多少の垂れ下がりが生じた状態となる。これにより、上側解凍マット及び下側解凍マットで冷凍食品を上方向及び下方向から挟んだ状態としたときに、上側解凍マット及び下側解凍マットと冷凍食品との接触面積を大きくすることができる。
【0044】
[12]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記上側解凍マット載置トレイには、当該上側解凍マット載置トレイを上下方向にスライドさせる際に把持可能な取っ手が設けられていることが好ましい。
【0045】
これにより、スライド可能な解凍マット載置棚を容易に上下方向にスライドさせることができる。
【0046】
[13]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記上側解凍マット載置トレイには、当該上側解凍マット受け棚部を前記支柱に対してロック/ロック解除のいずれかの状態に設定可能となるようなロック機構が設けられていることが好ましい。
【0047】
これにより、スライド可能な上側解凍マット載置トレイを所定の位置でロック(固定)することができ、上側解凍マットと下側解凍マットとで冷凍食品を挟んだ状態としたときに、当該挟んだ状態を保持できる。
【0048】
[14]本発明の冷凍食品解凍器においては、前記支柱は、前記貯水式保温器、前記下側解凍マット載置トレイ及び前記上側解凍マット載置トレイのそれぞれの4隅を支持するように4本設けられ、当該4本の支柱の上端部には、天板が設けられていることが好ましい。
【0049】
これにより、本発明の冷凍食品解凍器を調理場などに設置した場合に、物を置くスペースとして使用することができ、使い勝手を向上させることができる。例えば、解凍しようとする冷凍食品を一時的に置いたり、調理人がその時点で手に持っている調理器具などを一時的に置いたりすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態においては、冷凍食品の解凍を促進するための解凍用材料を封入する解凍用材料封入用の袋体、当該解凍用材料封入用の袋体を用いた食品用解凍マット及び当該食品用解凍マットを用いた冷凍食品解凍器について説明する。
【0052】
なお、解凍用材料を封入するための解凍用材料封入用の袋体を「実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体」として説明し、「実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体」を用いた食品用解凍マットを「実施形態に係る食品用解凍マット」として説明し、「実施形態に係る食品用解凍マット」を用いた冷凍食品解凍器を「実施形態に係る冷凍食品解凍器」として説明する。まずは、「実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体」及び[実施形態に係る食品用解凍マット]について説明する。
【0053】
[実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体]
図1は、実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体310を説明するために示す図である。
図1(a)は2枚のシリコーン樹脂シート350,360を貼合わせて、解凍用材料封入用の袋体310とした状態の斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)をy軸に沿って矢印a方向に見た側面図であり、
図1(c)は2枚のシリコーン樹脂シート350,360のうちの一方のシリコーン樹脂シート350の平面図であり、
図1(d)は2枚のシリコーン樹脂シート350,360のうちの他方のシリコーン樹脂シート360の平面図である。これら2枚のシリコーン樹脂シート350,360は同サイズで同形状となっている。
【0054】
なお、
図1においては、2枚のシリコーン樹脂シート350,360の厚みは、当該2枚のシリコーン樹脂シート350,360の縦方向及び横方向のサイズに比べて誇張して描かれている。このことは、後述する
図2においても同様である。
【0055】
実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体310は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、シリコーン樹脂シート(2枚のシリコーン樹脂シート350,360)でなる袋体本体部320と、当該袋体本体部320に一体形成されており、当該袋体本体部320の内部に解凍用材料を注入するための注入口330が設けられている解凍用材料注入部340と、を有している。
【0056】
2枚のシリコーン樹脂シート350,360(
図1(c)及び
図1(d)参照。)において、各シリコーン樹脂シート350,360の外周に沿った縁部350a,360aのうち、解凍用材料を注入するための注入口330(
図1(a)及び
図1(b)参照。)となる縁部350b,360b以外の縁部(
図1(c)及び
図1(d)において灰色で示す部分)は、接着剤によって貼り合わす際の「貼りしろ」となる部分である。なお、
図1及び後述する
図2においては、「貼りしろ」となる縁部が灰色で示されているが、これは当該
図1及び
図2において「貼りしろ」であることを視覚的に分かり易くするためのものであり、実際の2枚のシリコーン樹脂シート350,360の「貼りしろ」となる縁部が灰色に着色されているというものではない。
【0057】
2枚のシリコーン樹脂シート350,360について具体的に説明する。2枚のシリコーン樹脂シート350,360のうち、一方のシリコーン樹脂シート350(
図1(c)参照。)は、外観形状が矩形状(長方形状とする。)をなし、袋体本体部320を形成するための袋体本体形成部351と、当該袋体本体形成部351の外周に沿った縁部の一部から突出され、解凍用材料注入部340を形成するための突出部352とを有している。他方のシリコーン樹脂シート360(
図1(d)参照。)も同様に、外観形状が長方形状をなし、袋体本体部320を形成するための袋体本体形成部361と、当該袋体本体形成部361の外周に沿った縁部の一部から突出され、解凍用材料注入部340を形成するための突出部362とを有している。
【0058】
そして、それぞれの突出部352,362の袋体本体形成部351,361に対する付け根部Pにおいては、外周に沿った縁部が円弧を描いて形成されている。このように、それぞれの突出部352,362の袋体本体形成部351,361との付け根部Pが円弧を描くように形成されていることにより、袋体本体部320内部に、解凍用材料として前述した解凍材料(特許文献1に記載されている食品用解凍マット900において使用されている解凍材料)を封入した場合でも、封入されている解凍用材料による圧力を分散させることができ、付け根部Pにおいて接着が剥がれにくくすることができる。
【0059】
ここで、2枚のシリコーン樹脂シート350,360のそれぞれサイズは、実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体310においては、袋体本体形成部351,361の長手方向の長さL1が約500mm、袋体本体形成部350,361の短手方向(縦方向とする。)の長さL2が約350mm、厚みは約0.5mmするが、必ずしもこのようなサイズに限定されるものではなく、必要に応じて、各種のサイズのものを製造することができる。
【0060】
このように構成されている2枚のシリコーン樹脂シート350,360は、それぞれの「貼りしろ」となる部分が接着剤によって貼り合わせられることによって、解凍用材料封入用の袋体310が作製される。なお、「貼りしろ」の幅w1は7mmから15mmである。また、接着剤としては、流動性を有するシリコーン接着シール剤が用いられており、このような接着剤としては、「DOW CORNING(登録商標) SE 9186 CLEAR」という接着剤を用いることができる。
【0061】
この接着剤を2枚のシリコーン樹脂シート350,360の「貼りしろ」となる部分に塗布して、これら2枚のシリコーン樹脂シート350,360を重ね合わせて、圧接ローラーなどにより圧接することにより、2枚のシリコーン樹脂シート350,360を接着する。このような工程を行うことによって、
図1(a)及び
図1(b)に示すような解凍用材料封入用の袋体310を作製することができる。
【0062】
このようにして作製された解凍用材料封入用の袋体310(
図1(a)及び
図1(b)参照。)は、高い気密性が得られ、例えば、液体を注入口330から内部に注入して、当該注入口330を封止した場合、外部から多少の圧力を与えても、内部に注入されている液体が外部に漏れ出ることがない。
【0063】
このような解凍用材料封入用の袋体310に内部に、例えば、前述した特許文献1に記載されている食品用解凍マット900において説明した解凍材料を注入口330から注入して、当該注入口330を上記した接着剤によって接着して密閉することにより、より柔軟性の高い食品用解凍マット300(
図2参照。)を作製することができる。すなわち、解凍用材料封入用の袋体310は、シリコーン樹脂シートでなるため、当該シリコーン樹脂シートでなる解凍用材料封入用の袋体310を用いることにより、従来のプラスチックスシートなどでなる袋体を用いた食品用解凍マットに比べて、より柔軟性の高い食品用解凍マットを作製することができる。
【0064】
[実施形態に係る食品用解凍マット]
図2は、実施形態に係る食品用解凍マット300を説明するために示す図である。なお、
図2(a)は実施形態に係る食品用解凍マット300の斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)に示す食品用解凍マット300をy軸に沿って矢印a方向から見た側面図である。
【0065】
実施形態に係る食品用解凍マット300は、長方形状をなす解凍用材料封入用の袋体310の内部に、解凍を促進するための解凍用材料が封入されたものとなっている。解凍用材料は、注入口330から注入される。そして、解凍用材料を注入口330から注入した後に、当該注入口330を封止する。なお、以下、解凍用材料封入用の袋体310を「袋体310」と略記する場合もある。当該袋体310の内部に封入されている解凍用材料などは、特許文献1に記載されている食品用解凍マット900と同様とすることが可能であるが、実施形態に係る食品用解凍マット300において用いる解凍用材料は、上記特許文献1に記載されている食品用解凍マット900において説明した解凍用材料のうち、不凍液であり食品添加物として使用されているプロピレングリコールと、増粘効果を有し食品添加物として使用されているカルボキシメチルセルローズ(CMC)と、防腐及び防かび効果を有する防腐剤と、水との混合物を含有したものであるとする。
【0066】
実施形態に係る食品用解凍マット300のサイズは、袋体310のサイズによって決まってくるが、具体的には、x軸に沿った方向(横方向とする。)の長さL1が400〜650mm、y軸に沿った方向(縦方向とする。)の長さL2が250mm〜500mmとすることが好ましい。また、厚みtは、20mm〜50mmとすることが好ましい。なお、実施形態に係る食品用解凍マット300は、横方向の長さL1を約500mmとし、縦方向の長さL2を約350mmとし、厚みtを、約50mmとしている。但し、実施形態に係る食品用解凍マット300のサイズは、このようなサイズに限られるものではなく、必要に応じて、各種のサイズのものを製造することができる。
【0067】
また、食品用解凍マット300の1枚の重量は、当該食品用解凍マット300のサイズや中に入れる解凍用材料の量などに応じて異なってくるが、実施形態に係る食品用解凍マット300においては、1枚の食品用解凍マット300の重量を約5kgとしている。但し、実施形態に係る食品用解凍マット300の重量は、このような重量に限られるものではなく、必要に応じて、各種の重量のものを製造することができる。
【0068】
実施形態に係る食品用解凍マット300は、折り畳み式ではない点が特許文献1に記載されている食品用解凍マット900と異なるとともに、袋体310の材質が特許文献1に記載されている食品用解凍マット900と異なる。特に、実施形態に係る食品用解凍マット300は、袋体310として前述の実施形態に係る解凍材料封入用の袋体310を用いている点が特許文献1に記載されている食品用解凍マット900と異なる。
【0069】
このような袋体310に前述した特許文献1に記載されている食品用解凍マット900において使用されている解凍材料を注入口330から注入して、当該注入口330を封止したものが実施形態に係る食品用解凍マット300となる。このような食品用解凍マット300を2枚用意して、2枚の食品用解凍マット300で冷凍食品を挟んだ状態として当該冷凍食品の解凍を行う。なお、食品用解凍マット300で、冷凍食品を挟んだ状態としたときに当該冷凍食品の上方向に位置する食品用解凍マット300を「上側解凍マット300A」とし、冷凍食品の下方向に位置する食品用解凍マット300を「下側解凍マット300B」とする。
【0070】
以上説明したように、実施形態に係る食品用解凍マット300は、解凍用材料封入用の袋体310として、実施形態に係る解凍用材料封入用の袋体310を用いている。これにより、実施形態に係る食品用解凍マット300は、プラスチックスシートなどに比べて、より柔軟性の高いものとなる。このため、上側解凍マット300Aと下側解凍マット300Bとで、冷凍食品を挟んだ状態としたとき、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bはそれぞれ冷凍食品の表面の凹凸に沿って変形するため、冷凍食品の表面のほぼ全体に密着した状態となる。このため、冷凍食品の表面形状に凹凸があったとしても、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bは、冷凍食品の表面形状の凹凸に沿って密着状態で当該冷凍食品の表面全体を包み込むようにすることができる。これにより、上側解凍マット及び下側解凍マットと冷凍食品との接触面積が大きくなることから、冷凍食品の品質に影響を与えずドリップも最小限に抑えながら、冷凍食品を比較的短時間で均一に解凍することができるようになる。
【0071】
[実施形態に係る冷凍食品解凍器]
以下、実施形態に係る冷凍食品解凍器について説明する。ここでは、実施形態に係る冷凍食品解凍器について2種類の冷凍食品解凍器を例示する。なお、2種類の冷凍食品解凍器のうち、一方の冷凍食品解凍器を「実施形態に係る第1冷凍食品解凍器10」として説明し、他方の冷凍食品解凍器を「実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20」として説明する。なお、実施形態に係る第1冷凍食品解凍器10及び実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20のそれぞれにおいて用いる食品用解凍マット300は、前述した実施形態に係る食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)を用いるものとする。
【0072】
図3は、実施形態に係る第1冷凍食品解凍器10を説明するために示す図である。
図4は、実施形態に係る第1冷凍食品解凍器10で使用される貯水式保温器100及び下側解凍マット載置トレイ200を説明するために示す図である。
【0073】
まずは、
図3及び
図4を参照して実施形態に係る第1冷凍食品解凍器10を説明する。以下、実施形態に係る第1冷凍食品解凍器10を「第1冷凍食品解凍器10」と略記する場合もある。第1冷凍食品解凍器10は、
図3に示すように、冷凍食品Fの解凍前の温度よりも高い温度の水を貯めることができる貯水式保温器100と、食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)と、下側解凍マット300Bを載置する下側解凍マット載置トレイ200と、を備えている。なお、
図3(a)は、冷凍食品を解凍するための準備状態(解凍準備状態という。)を示しており、
図3(b)は、冷凍食品を解凍している状態(解凍状態)を示している。
【0074】
貯水式保温器100は、
図4に示すように、上部が開口面となっているステンレス鋼製の貯水槽110と、貯水槽110に貯められている水W(
図3参照。)を加熱するためのヒーター120と、ヒーター120の制御を行うことによって貯水槽110に貯められている水を設定温度に保持する温度調節装置600(
図5参照。)と、電源のON/OF及び各種設定を行うコントロールパネル130と、貯水槽110に貯められている水Wの量を外部から目視可能な水量計140などを有している。なお、貯水槽110の深さは特に限定されるものではないが、例えば、45mm〜150mm程度のものを使用することが好ましく、第1冷凍食品解凍器10においては、65mm程度のものを使用するものとする。また、水量計140の上部は開口140aとなっており、当該開口140aは貯水槽110内に水を供給する際の水供給口として使用することができる。なお、水は「貯水式保温器100の貯水槽110」に貯められるものであるが、「水を貯水式保温器100に貯める」というように、「貯水槽110」を省略して表記する場合もある。
【0075】
コントロールパネル130には、電源スイッチ131と、各種設定を行う設定部として、例えば、貯水式保温器100に貯められている水の温度(水温という。)を所望とする温度に設定するための水温設定部132、水温設定部132によって設定した温度(設定温度という。)及び現時点の水温などを表示する表示部133などが設けられている。
【0076】
また、貯水槽110の底面111には、貯められている水を排出するための排出口150が設けられており、排出口150から外部に突出している排出パイプ(図示せず。)に設けられているコック(図示せず。)を開くことにより、貯水式保温器100に貯められている水を排出できるようになっている。
【0077】
このような貯水式保温器100には、水温を設定温度に保持可能な温度調節装置600(
図5参照。)が設けられており、当該温度調節装置600によって、貯水式保温器100に貯められている水は、設定温度に保持されるようになっている。
【0078】
図5は、温度調節装置600を説明するために示す図である。温度調節装置600は、ヒーター120を制御するヒーター制御部610と、貯水式保温器100に貯められている水の温度を計測する水温計測部620とを有している。
【0079】
ヒーター制御部610は、水温計測部620から出力される水温計測信号に基づいてヒーター120を制御する。具体的には、ヒーター制御部610は、貯水式保温器100に貯められている水の温度が、水温設定部132によって設定された設定温度よりも低い場合には、当該設定温度に達するまで、ヒーター120を作動させて、水の温度が設定温度に達した後は、当該設定温度を保持するようにヒーター120を制御する。ヒーター制御部610がこのような制御を行うことによって、貯水式保温器100に貯められている水の温度を設定温度に保持することができる。
【0080】
例えば、コントロールパネル130の温度設定部132によって、水温を50℃に設定したとする。このとき、貯水式保温器100に貯められている水の温度が設定温度よりも低い場合には、まずは、ヒーター制御部610は、水温が50℃となるようにヒーター120を連続作動させ、水温が50℃となった後は、水温が50℃を保持するようにヒーター120を制御する。これにより、貯水式保温器100に貯められている水は設定温度に保持される。なお、水の温度を設定温度に保持するということは、設定温度を基準として、多少のプラス又はマイナス(例えば、±1℃〜±2℃程度)は許容されることを含むものである。
【0081】
ところで、貯水式保温器100に貯められている水の温度は、30℃〜60℃程度に保持されることが好ましいが、冷凍食品のサイズや食品の種類などによって適宜最適な温度に設定できる。また、貯水式保温器100に水を貯める際には、最初から、設定温度(例えば40度程度)に温められている温水を貯水式保温器100に入れるようにしてもよい。このようにすることによって、貯水式保温器100に貯められている水を、ヒーター120によって設定温度にまで加熱させる必要がなくなり、直ちに、解凍作業を行うことができる。
【0082】
図4に戻って下側解凍マット載置トレイ200について説明する。下側解凍マット載置トレイ200は、耐久性及び耐蝕性の面と、洗浄のし易さなど衛生上の面と、熱伝導率の面とを考慮してステンレス鋼であることが好ましい。このような下側解凍マット載置トレイ200は、調理用バットと類似した形状をなしており、当該下側解凍マット載置トレイ200の上部開口面の各縁部には、水平方向に外方に突出した鍔部220が設けられている。このように構成されている下側解凍マット載置トレイ200は、鍔部220を貯水式保温器100の上面部160に載せることによって、貯水式保温器100に取り付けることができる。なお、下側解凍マット載置トレイ200は、貯水式保温器100に固定されているものではなく、貯水式保温器100に対して容易に着脱自在となっている。なお、鍔部220には、下側解凍マット載置トレイ200を貯水式保温器100に対して着脱する際に把持する取っ手230が設けられている。
【0083】
下側解凍マット載置トレイ200は、底面211が平坦面となっていて、当該底面211の面積よりも上部開口面の面積の方が大きくなっている。このため、下側解凍マット載置トレイ200の4つの側面212a〜212dは、それぞれ底面211から上部開口面に向かうに従って外側に傾くテーパー面となっている。なお、下側解凍マット載置トレイ200(鍔部220を除いた部分)の平面サイズは、貯水式保温器100の貯水槽110に収納可能なサイズとなっている。なお、
図4においては、斜視図であるため、4つの側面212a〜212dのうち、側面212b,212dは目視できない位置にあり、側面212b,212dは図示されていない。
【0084】
また、下側解凍マット載置トレイ200の深さ(底面211から上部開口面までの高さ)H1は、下側解凍マット載置トレイ200を
図3に示すように貯水式保温器100に取り付けたときに、貯水式保温器100の貯水槽110の底面111に設けられているヒーター120と下側解凍マット載置トレイ200の外側底面211'との間に所定の空間ができる程度の深さとする。
【0085】
また、下側解凍マット載置トレイ200の4つの側面212a〜212dのうち、左右両側面212c,212dには、直径が3mm〜7mm程度の通気孔213が複数個(例えば、4〜6個)ずつで奥行方向に一列に並んで設けられている。なお、
図4においては、左右2つの側面212c、212dうち、一方の側面(図示の左側の側面212c)に設けられている通気孔213については図示されているが、他方の側面(図示の右側の側面212d)に設けられている通気孔は目視できない位置にあるため、図示されていない。しかし、当該図示の右側の側面212dにも図示の左側の側面212cと同様に通気孔213が設けられている。
【0086】
この通気孔213は、下側解凍マット載置トレイ200を貯水式保温器100に
図3に示すように、水に浸漬させたときに、温められている水(温水という。)からの湯気(蒸気)を下側解凍マット載置トレイ200内部に流入させるためのものである。なお、左右両側面212c,212dにおいて当該通気孔213を設ける位置(下側解凍マット載置トレイ200の底面211からの高さH2)は、下側解凍マット載置トレイ200を
図3に示すように貯水式保温器100に取り付けたときに、貯水式保温器100に貯められている水が下側解凍マット載置トレイ200内部に侵入しないように、上部開口面に近い位置が好ましい。
【0087】
第1冷凍食品解凍器10においては、下側解凍マット載置トレイ200は、
図3(a)に示すように、貯水式保温器100に取り付けられる。そして、当該
図3(a)に示す状態で、下側解凍マット300Bを下側解凍マット載置トレイ200に載置して、解凍準備状態とする。その後、当該下側解凍マット300Bの上に冷凍食品Fを載せて、当該冷凍食品Fの上から、上側解凍マット300Aで冷凍食品Fを覆った状態する(
図3(b)参照。)。
図3(b)は解凍状態を示している。このとき、貯水式保温器100に貯められている水(温水)は、解凍に適した温度に保持されている。このような解凍状態を所定時間継続することによって、冷凍食品を解凍する。
【0088】
なお、冷凍食品Fの解凍状態は、完全に解凍させる場合もあるが、半解凍の状態で解凍を終了させる場合もある。例えば、冷凍食品Fが半身の鮭などの場合、当該鮭を所定のサイズに切り分ける必要がある場合には、半解凍の状態で切り分けることが切り分け易い。従って、半解凍の状態で切り分けるような場合には、冷凍食品Fは、半解凍の状態で解凍を終了させる。このことは、後述する第2冷凍食品解凍器20においても同様である。
【0089】
以上説明したように、第1冷凍食品解凍器10によれば、実施形態に係る食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)を用いて、当該食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)を上下から冷凍食品Fの表面全体を挟んだ状態で解凍を行うものであるため、冷凍食品を比較的短時間で均一に解凍することが可能となる。
【0090】
特に、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bに用いられているそれぞれの袋体310は、シリコーン樹脂シートでなるため、より柔軟性が高い袋体となる。このため、冷凍食品Fの表面形状に凹凸があったとしても、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bは、冷凍食品の表面形状の凹凸に沿って密着状態で当該冷凍食品の表面全体を包み込むようにすることができる。これにより、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bと冷凍食品Fとの接触面積が大きくなることから、冷凍食品Fの品質に影響を与えずドリップも最小限に抑えながら、冷凍食品を比較的短時間で均一に解凍することができるようになる。
【0091】
例えば、解凍対象となる冷凍食品Fが、約2kgの重量を有する鮭のフィレである場合を例示すると、貯水式保温器100に貯められている温水の温度を50℃に保持した場合、約15分で半解凍の状態(包丁で切り分け易くなる程度の解凍状態)に達することが実験により確かめられた。このように、比較的低い温度で短時間に解凍(この場合は半解凍)が可能となるため、第1冷凍食品解凍器10によれば、解凍時においてドリップを可能な限り少なくすることができ、食品の「うまみ」を食品に閉じ込めた状態での解凍が可能となる。例えば、上記した鮭のフィレを流水解凍した場合、数ccのドリップが流出してしまう場合が多いが、第1冷凍食品解凍器10によれば、ドリップは殆ど流出しないため、うま味成分の流出が抑えられ、それによって、冷凍食品を解凍したものとは思えないような食感が得られる。
なお、温水の温度は、50℃に限定されるものではなく、前述したように、解凍対象となる冷凍食品の種類や、量及び解凍度合いなどに応じて、適宜、最適な温度とすることができる。
【0092】
また、第1冷凍食品解凍器10においては、下側解凍マット載置トレイ200は、貯水式保温器100に貯められている水(温水)に浸漬されており、下側解凍マット300Bは下側解凍マット載置トレイ200に載置されているため、下側解凍マット300Bは保温されている状態となる。また、下側解凍マット載置トレイ200の左右両側面212c,212dには、それぞれ湯気(蒸気)を下側解凍マット載置トレイ200内部に流入させるための通気孔213が設けられている。このため、貯水式保温器100に貯められている水(温水)の湯気(蒸気)が当該通気孔213から下側解凍マット載置トレイ200内に流入して行き、解凍状態(
図3(b)参照。)にある下側解凍マット300B及び上側解凍マット300Aを保温することができる。これにより、冷凍食品Fが解凍マット(下側解凍マット300B及び上側解凍マット300A)の熱を奪って、当該解凍マット300の温度が解凍に不適切な温度にまで低下してしまうといった不具合を未然に防止できる。
【0093】
また、第1冷凍食品解凍器10によれば、食品用解凍マット300(上側解凍マット300Aおよび下側解凍マット300B)のサイズは、それぞれ横方向長さが約500mm、楯方向長さが350mmの大きなサイズを有しており、このような大きなサイズの下側解凍マット300Bと上側解凍マット300Aとで冷凍食品を挟んだ状態で解凍するため、レストランなどにおいて一般的に使われる比較的大きなサイズの冷凍食品であっても解凍可能となる。例えば、3枚下ろしにした冷凍鮭など比較的大きなサイズの冷凍魚をそのままのサイズで解凍することができ、また、厚みのあるステーキ用肉などを複数枚同時に解凍することができる。
【0094】
次に、実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20について説明する。
図6は、実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20を説明するために示す図である。なお、
図6(a)は実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20の正面図であり、
図6(b)は
図6(a)をx軸に沿って右から見た側面図であり、
図6(c)は上側解凍マットを載置する上側解凍マット載置トレイ400を取り出してz軸に沿って上から見た平面図である。なお、
図6(a)及び
図6(b)は一部が断面図として示されている。以下、実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20を「第2冷凍食品解凍器20」と簡略化して表記する場合もある。
【0095】
第2冷凍食品解凍器20は、
図6に示すように、貯水式保温器100と、当該貯水式保温器100に取り付けられる下側解凍マット載置トレイ200と、当該下側解凍マット載置トレイ200の上段に設けられており、上側解凍マット300Aを載置する上側解凍マット載置トレイ400と、貯水式保温器100、下側解凍マット載置トレイ200及び上側解凍マット載置トレイ400を支持する4本の支柱510と、支柱510の下端部に設けられている脚部520と、支柱510の上端部に設けられている天板530と、を備えている。上側解凍マット載置トレイ400は、z軸に沿って上下方向にスライド可能に支柱510に支持されている。
【0096】
なお、このような第2冷凍食品解凍器20は、例えば、調理場などの床に設置して使用する場合を想定して、支柱510の高さ(脚部520から天板530までの高さ)が例えば1000mm〜1200mm程度と比較的高い「床設置用の冷凍食品解凍器」として製造することもできる。また、第2冷凍食品解凍器20は、例えば、調理台などの上に設置することを想定して、支柱510の高さ(脚部520から天板530までの高さ)が例えば400mm〜600mm程度と比較的低い「調理台設置用の冷凍食品解凍器」として製造することもできる。
【0097】
第2冷凍食品解凍器20において使用する貯水式保温器100は、前述の第1冷凍食品解凍器10において使用した貯水式保温器100(
図3及び
図4参照。)と同様のものを用いることができる。また、第2冷凍食品解凍器20において使用する下側解凍マット載置トレイ200も、第1冷凍食品解凍器10において使用した下側解凍マット載置トレイ200(
図3及び
図4参照。)と同様のものを用いることができる。なお、下側解凍マット載置トレイ200は、貯水式保温器100に対して着脱自在であるとともに、支柱510からも取り出すことができるようになっている。
【0098】
また、第2冷凍食品解凍器20において用いる食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)は、第1冷凍食品解凍器10において用いた解凍マット300(
図2参照。)と同じものであるとする。
【0099】
上側解凍マット載置トレイ400は、外観的には、下側解凍マット載置トレイ200とほぼ同様に、調理用バット状の形状をなしており、また、下側解凍マット載置トレイ200とほぼ同様に、当該上側解凍マット載置トレイ400の上部開口面の各縁部には、水平方向に外方に突出した鍔部420が設けられている。上側解凍マット載置トレイ400が下側解凍マット載置トレイ200と大きく異なる点は、上側解凍マット載置トレイ400においては、少なくとも、上側解凍マット300Aを載置する領域(上側解凍マット載置トレイ400の底面)が網部430となっている。
【0100】
また、上側解凍マット載置トレイ400は、下側解凍マット載置トレイ200よりも一回り小さなサイズとなっている。このため、上側解凍マット載置トレイ400は、下側解凍マット載置トレイ200に出し入れ自在となっている。
【0101】
ところで、網部430は、例えば、テニスラケットに張るストリング(ガットとも呼ばれている。)のような合成樹脂素材でなる線状部材を格子状に配置することによって形成することができる。なお、線状部材は、上側解凍マット300Aを例えば2枚程度載置した場合の重量に十分な耐え得る強度を得ることができれば、細いものが好ましく、また、網部430を形成する線状部材の間隔は可能な限り広い(網目の粗さは可能な限り粗い)方が好ましい。これは、解凍状態としたときにおいて、上側解凍マット300Aの冷凍食品Fに対する接触面積をできるだけ広くすることが好ましいからである。
【0102】
上側解凍マット載置トレイ400がこのような網部430を有することにより、上側解凍マット300Aを上側解凍マット載置トレイ400の網部430に載置したときに、当該上側解凍マット300Aの下面(冷凍食品に対向する面)の大部分が露出した状態となる。なお、以下、「冷凍食品に対向する面」を「冷凍食品対向面」という。
【0103】
また、網部430以外の各部材は、耐久性及び耐蝕性の面と、洗浄のし易さなど衛生上の面とを考慮してステンレス鋼であることが好ましい。また、当該鍔部420の4隅は、それぞれ対応する支柱510に対してz軸に沿った上下方向にスライド可能に支持されており、これによって、上側解凍マット載置トレイ400は、支柱510に対してz軸に沿った上下方向にスライド可能となっている。
ところで、実施形態に係る冷凍食品解凍器10においては、貯水式保温器100の貯水槽110、下側解凍マット載置トレイ200及び上側解凍マット載置トレイ400などの素材としては、ステンレス鋼が好ましいとしているが、当該ステンレス鋼の種類は、例えば、SUS304を例示できる。
【0104】
また、上側解凍マット載置トレイ400には、当該上側解凍マット載置トレイ400を上下方向にスライドさせる際に把持可能な取っ手440が設けられている。なお、取っ手440を設ける位置は特に限定されるものではないが、例えば、
図5(c)に示すように、上側解凍マット載置トレイ400における正面側の左右2箇所の位置に設けるようにすることが好ましい。
【0105】
また、上側解凍マット載置トレイ400には、当該上側解凍マット載置トレイ400を支柱510に対してロック(固定)/ロック解除(固定解除)のいずれかの状態に設定可能となるようなロック機構が設けられている。ロック機構は、公知の技術を使用することができるため、詳細な説明及び図示は省略するが、例えば、それぞれの取っ手440に設けられているロックレバー450を取っ手440とともに把持すると、ロック機構が解除されて、上側解凍マット載置トレイ400を上下方向に自在にスライドさせることができる。また、ロックレバー450の把持を解除するとロック機構が働いて、上側解凍マット載置トレイ400の動きが規制されて当該位置で上側解凍マット載置トレイ400が支柱510に対してロック(固定)されるようになっている。このように構成されている上側解凍マット載置トレイ400は、支柱510から取り外しが可能となっている。
【0106】
一方、下側解凍マット載置トレイ200は、
図1と同様に、当該下側解凍マット載置トレイ200の上部開口面を上向きとした状態で貯水式保温器100に取り付けられている。
【0107】
次に、第2冷凍食品解凍器20の具体的な使用例について説明する。
図7は、実施形態に係る第2冷凍食品解凍器20の具体的な使用例について説明するために示す図である。なお、
図7は
図6に示す第2冷凍食品解凍器20の要部を拡大して示す図であり、正面から見た場合の断面図として示されている。また、
図7において、
図7(a)の状態を「解凍準備状態」とし、
図7(b)の状態を「解凍状態」とする。
【0108】
図7(a)に示す解凍準備状態においては、下側解凍マット載置トレイ200には下側解凍マット300Bが載置されており、当該下側解凍マット300Bには解凍対象となる冷凍食品Fが載せられている状態となっている。また、上側解凍マット載置トレイ400には上側解凍マット300Aが載置されている。
【0109】
当該解凍準備状態においては、上側解凍マット載置トレイ400は、下側解凍マット載置トレイ200に対して離間した状態となっている。また、貯水式保温器100には、所定温度(例えば約40度)の温水が所定量だけ貯められており、下側解凍マット載置トレイ200は、貯水式保温器100に貯められている温水の表面から、所定の深さ(温水の表面が下側解凍マット載置トレイ200の側面に設けられている通気孔213に達しない深さ)まで浸漬した状態となっているものとする。なお、温水は温度調節装置600(
図5参照。)によって設定温度に保持されるものとする。
【0110】
なお、上側解凍マット載置トレイ400に載置されている上側解凍マット300Aは、上側解凍マット載置トレイ400の網部430に載置されているため、上側解凍マット300Aの下面(冷凍食品対向面)は、大部分が露出した状態となり、しかも、自重によって網部430の各網目から下方向に垂れ下がりが生じている。
【0111】
このような解凍準備状態(
図7(a)参照。)において、上側解凍マット載置トレイ400の取っ手440(
図6(c)参照。)とロックレバー450(
図6(c)参照。)とを同時に把持して上側解凍マット載置トレイ400を下方向(矢印z'方向)にスライドさせる。なお、ロックレバー450が把持されると、ロック機構が解除されて、上側解凍マット載置トレイ400を下方向にスライドさせることができる。
【0112】
上側解凍マット載置トレイ400を下方向(矢印z'方向)にスライドさせる際においては、上側解凍マット300Aが、下側解凍マット300Bに載せられている冷凍食品Fに対して適度な押圧力で接触する位置となるまで、上側解凍マット載置トレイ400をスライドさせる。なお、適度な押圧力というのは、冷凍食品Fに対して無理な押圧力を与えることなく、冷凍食品Fの表面全体が上側解凍マット300Aと下側解凍マット300Bとによって包み込まれるような状態となる押圧力である。
【0113】
なお、上側解凍マット300Aが、下側解凍マット300Bに載せられている冷凍食品Fに対して適度な押圧力で接触する位置に達した状態で、取っ手440とロックレバー450との把持を解除すると、ロック機構が働いて、当該上側解凍マット載置トレイ400は支柱510に対して固定された状態となり、上側解凍マット載置トレイ400の動きが規制される。
【0114】
これにより、
図7(b)に示す解凍状態とすることができる。そして、当該解凍状態を所定時間保持することにより、冷凍食品Fを解凍することができる。なお、解凍時間は冷凍食品の種類やサイズ、さらには、解凍の度合いなどによって異なるが、概ね10分〜40分程度である。そして、解凍が終了したら、上側解凍マット載置トレイ400の取っ手440とロックレバー450とを把持して上側解凍マット載置トレイ400を上方向(矢印z方向)にスライドさせる。
【0115】
第2冷凍食品解凍器20によれば、第1冷凍食品解凍器10によって得られる効果に加えて、第2冷凍食品解凍器20特有の効果が得られる。
【0116】
すなわち、第2冷凍食品解凍器20においては、下側解凍マット載置トレイ200とは別に、上側解凍マット載置トレイ400を設け、当該上側解凍マット載置トレイ400を上下方向にスライド可能とした構成となっている。これにより、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bのサイズが大きく、かつ、重量が重くても、
図7(a)に示したような解凍準備状態から、容易に
図7(b)に示すような解凍状態とすることができる。このため、解凍すべき冷凍食品が多数存在する場合においても、
図7(a)に示したような解凍準備状態において、解凍すべき冷凍食品を下側解凍マット300Bに載せて、上側解凍マット載置トレイ400をスライドさせる操作を行うだけでよく、調理人が、その都度、上側解凍マット300Aを手で持って、解凍すべき冷凍食品Fの上に載せるといった作業が不要となる。
【0117】
このように、第2冷凍食品解凍器20には、冷凍食品の解凍を頻繁に行うレストランやホテルなどで、業務用として使用する場合に好適なものとなる。また、第2冷凍食品解凍器20は、天板530(
図6参照。)が設けられているため、当該冷凍食品解凍器20を調理場などに設置した場合に、物を置くスペースとして使用することができ、使い勝手を向上させることができる。例えば、解凍しようとする冷凍食品を一時的に置いたり、調理人がその時点で手に持っている調理器具などを一時的に置いたりすることができる。
【0118】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0119】
(1)上記実施形態に係る食品用解凍マット300においては、1枚の食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)の厚みがそれぞれ20mm〜50mmとしたが、これに限られるものではなく、袋体310に、より多くの解凍材料を封入して、上記実施形態において示した食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)よりも厚みを厚くした食品用解凍マットとしてもよい。
また、厚みの異なる食品用解凍マット300を複数枚用意しておけば、冷凍食品の種類、冷凍状態、解凍の度合いなど、様々な状況に応じて、使用する食品用解凍マットを種々組み合わせて使用することができ、より効率のよい解凍が可能となる。
【0120】
(2)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)おいては、食品用解凍マット300は、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bを各1枚ずつ用意し、上側解凍マット載置トレイ400に1枚の解凍マット(上側解凍マット300A)を載置し、下側解凍マット載置トレイ200にも1枚の解凍マット(下側解凍マット300B)を載置して、上下それぞれ1枚ずつの解凍マットで冷凍食品Fを挟んで解凍を行うようにしたが、冷凍食品の種類、冷凍状態、解凍の度合いなど、様々な状況に応じて、使用する食品用解凍マット300の数を適宜設定することができる。
【0121】
(3)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)おいては、通気孔213は、下側解凍マット載置トレイ200の2つの側面212c,212dに設けるようにしたが、他の側面(側面212a,212b)に設けるようにしてもよく、3つの側面又は4つの側面に設けるようにしてもよい。
【0122】
(4)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)において、より効率的に解凍を行うには、解凍準備の一つとして、食品用解凍マット300(上側解凍マット300A及び下側解凍マット300B)を予め温水に浸すなどして所定の温度とした状態として、解凍準備状態とするようにしてもよい。このようにすれば、解凍作業をより効率化することができる。
【0123】
(5)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)においては、冷凍食品の解凍を行う場合について説明したが、冷凍食品の解凍だけでなく他の使い方も可能である。例えば、10℃程度で冷蔵保存されていたステーキ用生肉を調理して客に提供する場合などにおいては、調理人によっては、客の注文を受けてから、冷蔵保存されていたステーキ用生肉を冷蔵庫から取り出して、当該生肉を常温(例えば20℃とする)に戻してから焼くといったこともなされている。
【0124】
これは、ステーキ用生肉の温度が10℃以下のまま焼くと火の通りが悪いということがあり、これを防ぐために、常温に戻してから焼くことが好ましいからである。このような場合においても、第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20を使用することにより、短時間でステーキ用生肉を常温に戻すことができるため、ステーキ用生肉の品質を落とすことがなくなり、また、調理時間の短縮化も図れる。このことは、ステーキ用生肉に限られるものではなく、常温で調理した方が好ましい食材については同様のことが言える。
【0125】
(6)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)においては、上側解凍マット300Aには、特に、保温機能を設けてはいないが、当該上側解凍マット300Aに対しても保温機能を設けるようにしてもよい。例えば、上側解凍マット300Aを覆うように敷設可能な柔軟性を有する平板状のヒーター(上側解凍マット用ヒーターとする。)と、当該上側解凍マット用ヒーターを制御することによって上側解凍マットの温度を設定温度に制御可能な上側解凍マット温度制御装置とを備えるようにしてもよい。
【0126】
(7)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)においては、冷凍食品としては、冷凍鮭及びステーキ用肉などを例示したが、解凍可能な冷凍食品としては、冷凍魚類(例えば、冷凍マグロ、冷凍鯖、冷凍鮭、冷凍イカ、冷凍されたサバの味噌漬けなど)、冷凍肉類(冷凍牛肉、冷凍豚肉、冷凍鶏肉、冷凍ミンチ肉など)、冷凍加工食品(冷凍パスタ麺、冷凍うどん麺など)、冷凍寿司食品又は材料(冷凍された寿司米や寿司ネタなど)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
(8)上記第2冷凍食品解凍器20においては、上側解凍マット載置トレイ400に設けられている網部430は、縦方向及び横方向にそれぞれ線状部材が存在するいわゆる格子状の網部430としたが、縦方向又は横方向のいずれかの方向のみに線状部材が存在するものであってもよい。
【0128】
(9)上記第2冷凍食品解凍器20においては、上側解凍マット載置トレイ400をスライドさせる際には、手動でスライドさせる場合を例示したが、電動でスライド可能とするようにしてもよい。この場合、例えば、上方向スライドボタン及び下方向スライドボタンを設け、これらのスライドボタンを押している間はスライドを行い、スライドボタンを離すとスライドが停止するとった機構を採用することができる。
【0129】
(10)上記実施形態に係る冷凍食品解凍器(第1冷凍食品解凍器10及び第2冷凍食品解凍器20)において、冷凍食品Fを上方向及び下方向から挟んだ状態としたときの上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bを包含した状態で、貯水式保温器100における貯水槽110の開口面を覆うことができる貯水槽カバー700(
図8参照。)をさらに備えるようにしてもよい。当該貯水槽カバー700は、例えば、
図3に示す第1冷凍食品解凍器10の場合においては、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bで冷凍食品Fを上方向及び下方向から挟んだ状態としたときに、上側解凍マット300Aの上方側から貯水槽110の開口面を覆うものである。
【0130】
図8は、貯水槽カバー700について説明するために示す図である。なお、
図8は
図3(b)において貯水槽カバー700を使用した場合を示す図である。
図8に示すように、、上側解凍マット300A及び下側解凍マット300Bで冷凍食品Fを上方向及び下方向から挟んだ状態としたときに、貯水槽カバー700で、上側解凍マット300Aの上方側から貯水槽110の開口面を覆うことによって、水(温水)の表面と貯水槽カバー700との間には、閉じられた空間が形成される。このため、貯水式保温器100に貯められている水(温水)の湯気(蒸気)が通気孔213から下側解凍マット載置トレイ200内に流入した際に、当該湯気(蒸気)を外部に発散させにくくすることができる。これにより、解凍状態にある下側解凍マット300B及び上側解凍マット300Aを、より効率的に保温することができる。当該貯水槽カバー700は、特に、冬季などのように外気温の低い時期においては有効なものとなる。
なお、このような貯水槽カバー700は、第2冷凍食品解凍器20においても同様に使用可能である。