(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-173876(P2019-173876A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】カラー及びカラーの取付方法
(51)【国際特許分類】
F16B 4/00 20060101AFI20190913BHJP
【FI】
F16B4/00 Q
F16B4/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-62795(P2018-62795)
(22)【出願日】2018年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友啓
(57)【要約】
【課題】被取付部材の他の部材への取り付け安定性を向上するカラー及びカラーの取付方法を提供すること。
【解決手段】カラー1は、筒状の本体部10を有し、この本体部10は、一端側に該本体部10から該一端側に延設される羽部11を有し、他端側にフランジ部を有する。また、本体部10は、一端側の端面における羽部11の内側に隣接する位置に環状の第1溝部104を有する。また、羽部11は、本体部10の軸周り外周面側の基端に環状の第2溝部111を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部を有し、
前記本体部は、一端側に該本体部から該一端側に延設される羽部を有し、他端側にフランジ部を有し、前記一端側の端面における前記羽部の内側に隣接する位置に環状の第1溝部を有する、
ことを特徴とするカラー。
【請求項2】
前記羽部は、前記本体部の軸周り外周面側の基端に環状の第2溝部を有することを特徴とする請求項1に記載のカラー。
【請求項3】
前記第2溝部は、前記第1溝部の底部と同じ高さ位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載のカラー。
【請求項4】
前記羽部は、連続する薄肉リング状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のカラー。
【請求項5】
前記本体部の外周面は、前記羽部の外周面と同径の小径部と、前記小径部と連設して前記羽部側へ向かって漸次縮径するテーパー部と、前記テーパー部と連設する大径部と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のカラー。
【請求項6】
前記本体部は円筒状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のカラー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載のカラーの取付方法であって、
前記カラーを被取付部材の取付孔に前記羽部側から挿入させ、
加圧具により前記羽部を前記本体部側に負荷を加え、前記羽部を前記本体部の径方向外側へ傾倒させることで、前記被取付部材を前記羽部と前記フランジ部とにより挟持させる、
ことを特徴とするカラーの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー及びカラーの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カラーを挿入した被取付部材の取付孔にボルトを挿通させて、被取付部材を筐体等に取り付ける技術が提供されている。例えば、特許文献1には、被取付部材の取付孔と、ボルトの軸部との間にカラー(スペーサ)を介在させる技術が開示されている。そして、ボルトが挿通されるカラーの貫通孔は、ボルトの挿入方向に拡開される。従って、カラーの径方向の厚みは、ボルトの挿入方向に薄くなるように形成される。よって、ボルトを締め付けると、カラーのボルト挿入方向の端部外周が座屈してかしめられ、カラーは被取付部材の取付孔に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−181652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のカラーは、座屈後の端部の形状が安定せず、被取付部材を筐体等の他の部材に取り付ける際に当該他の部材とカラーとの接触面積が少なくなる場合があり、被取付部材と他の部材との取り付け状態が安定しないことがあった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、被取付部材の他の部材への取り付け安定性を向上するカラー及びカラーの取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカラーは、筒状の本体部を有し、前記本体部は、一端側に該本体部から該一端側に延設される羽部を有し、他端側にフランジ部を有し、前記一端側の端面における前記羽部の内側に隣接する位置に環状の第1溝部を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明のカラーの取付方法は、上記のカラーの取付方法であって、前記カラーを被取付部材の取付孔に前記羽部側から挿入させ、加圧具により前記羽部を前記本体部側に負荷を加え、前記羽部を前記本体部の径方向外側へ傾倒させることで、前記被取付部材を前記羽部と前記フランジ部とにより挟持させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被取付部材の他の部材への取り付け安定性を向上するカラー及びカラーの取付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るカラーを示す図であり、(a)は平面側から見た斜視図であり、(b)は裏面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るカラーの平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る
図2のカラーのIII−III断面図であり、(a)はIII−III断面の全体図を示し、(b)は
図3(a)のカラーのA部拡大図を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係るカラーの取り付け工程を示す図であり、(a)は被固定部材にカラーを挿入した様子を示し、(b)は凸湾曲面により羽部を傾倒させる様子を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係るカラーの取り付け工程を示す図であり、(a)は平坦面により羽部を傾倒させる様子を示し、(b)は被取付部材へのカラーの取り付け工程が終了した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。まず、カラー1の構成について
図1〜
図3を用いて説明する。なお、以下の説明では、カラー1の羽部11が設けられる側を上とし、フランジ部12が設けられる側を下とする。
【0011】
本実施形態のカラー1は、金属材料により形成することができ、全体が軸Azを中心とする軸対称となるように略円筒状に形成される。カラー1は、本体部10、羽部11及びフランジ部12を有する。本体部10は円筒状に形成され、外周面102の下側にフランジ部12が形成される。フランジ部12と本体部10の下面は、同一平面とされる。フランジ部12の上側の外縁12aと、下側の外縁12bは、各々C面取りされている。円筒状の本体部10の中央は、上下方向に貫通する横断面円形の貫通孔101とされる。貫通孔101の上端側の内縁101aと、下端側の内縁101bは、各々C面取りされている。
【0012】
本体部10の外周面102は、上方部分が漸次縮径するよう形成される。より詳細には、外周面102は、フランジ部12側の大部分を占める大径部102aと、大径部102aの上端から連設して羽部11側へ向かって漸次縮径するテーパー部102bと、テーパー部102bから連設する小径部102c(
図3(b)も参照)と、を有する。
【0013】
羽部11は、本体部10の外周側において本体部10の上方である一端側から環状に連続する薄肉リング状に突出して設けられる。より詳細には、
図3(b)に示すように、羽部11の外周面112は、本体部10の外周面102である小径部102cと同径に形成される。羽部11の内周面113は、羽部11の先端側から基端側に向かって徐々に厚肉となるように傾斜している。羽部11の先端には、平面状の先端面114が形成される。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、本体部10は、羽部11が設けられる一端側の端面103外周における羽部11と隣接する内側の位置に、軸Az周りに環状の第1溝部104を有する。第1溝部104は、縦断面視において上方に向かって拡開する略台形状に形成される。従って、第1溝部104の内側の内壁104aと外側の内壁104bは、それぞれ底部104cから上方に向かって傾斜している。内壁104bの壁面は、内周面113と直線状に連続している。底部104cの中央部分は、略平坦に形成される。
【0014】
羽部11は、外周面112と小径部102cの接続部(換言すれば、外周面112の基端)に、軸Az周り環状の第2溝部111を有する。第2溝部111は、縦断面凹円弧状に形成される。また、第2溝部111は、端面103よりも下方側(フランジ部12側)に位置する。第2溝部111は、第1溝部104の底部104cと、上下方向に略同じ高さ位置となるように形成される。第1溝部104と第2溝部111の間に形成される羽部11の基端部115は、下方における外周面112と内周面113との間よりも薄肉に形成される。そして、基端部115の肉厚中央部は、羽部11の先端よりも、カラー1の径方向内側に配置される。従って、後述のカラー1の取り付け作業において、端面103より下方の基端部115を軸に、羽部11を外側に傾倒しやすくすることができる。
【0015】
つぎに、カラー1の取付方法について説明する。
図4(a)はカラー1の取り付け工程において被取付部材2にカラー1を挿入した様子を示す図である。被取付部材2は樹脂等の可撓性を有するカラー1よりも柔軟な材料で形成することができる。被取付部材2は取付孔21を有する。取付孔21とカラー1の本体部10(大径部102a)の径は略同径とされる。具体的には、取付孔21の径は、本体部10(大径部102a)が圧入されるように設定してもよいし、僅かなクリアランスで挿入されるように設定してもよい。また、カラー1の被取付部材2への取り付けは、ポンチ等の加圧具3により行う。加圧具3は、全体を図示しないが、例えば、端部に後述する凸湾曲面31と平坦面32を備えて棒状に形成することができる。
【0016】
カラー1の被取付部材2の取付孔21の取り付けは、まず、カラー1の羽部11側からカラー1を取付孔21に挿入する。このとき、カラー1は、取付孔21の内周面が羽部11の外周面112に倣って、圧入の場合はテーパー部102bにより広げられるようにして、挿入される。従って、カラー1は取付孔21にスムーズに挿入することができる。羽部11側から挿入されたカラー1は、フランジ部12の上面122が被取付部材2の下面22と当接するまで挿入される。第2溝部111は、上面23よりも外側に位置するよう設定される。
【0017】
図4(b)は、加圧具3の凸湾曲面31により羽部11を傾倒させる様子を示す図である。カラー1を取付孔21に挿入した後、端面121を被取付部材2とともに平坦な作業台等に載置させる。そして、上方から羽部11より大径の加圧具3の凸湾曲面31を羽部11の先端に当接させて、ハンマー等により加圧具3の後端を打ち付け等して、羽部11に対しカラー1側に向けて負荷を加える。すると、羽部11の先端が、凸湾曲面31の接点から径方向外側への分力を受けて、羽部11は、第1溝部104及び第2溝部111により薄肉となった基端部115を軸として、カラー1の径方向外側へ傾倒する。羽部11は、
図4(b)に示すように、凸湾曲面31の一部がカラー1の内縁101aに当接するため、所定の傾倒角度で止まる。
【0018】
図5(a)は、加圧具3の平坦面32により羽部11を傾倒させる様子を示す図である。
図4(b)の傾倒させた羽部11に上方から加圧具3の平坦面32を当接させ、ハンマー等により加圧具3を打ち付け等して、羽部11に対しカラー1側に向けて負荷を加える。すると、羽部11は、カラー1の径方向外側へさらに傾倒する。このとき、羽部11は、平坦面32がカラー1の端面103に当接することで、羽部11の内周面113の先端とカラー1の端面103とが略同一平面となる位置まで傾倒することができる。
【0019】
図5(b)は、被取付部材2へのカラー1の取り付け工程が終了した様子を示す図である。被取付部材2は、フランジ部12と、傾倒後の羽部11とにより挟持される。
【0020】
このように、羽部11を傾倒させることで、カラー1は、取付孔21の縁部周辺を、羽部11とフランジ部12とにより挟持して、被取付部材2に対し脱落しないように取り付けることができる。また、カラー1は、専用工具を使用することなく凸湾曲面31や平坦面32を有した簡易な工具でかしめることができるため、容易に取付孔21の補強材として用いることができる。
【0021】
以上、本実施形態では、筒状の本体部10が、一端側に延設される羽部11を有し、他端側にフランジ部12を有し、更に、一端側の端面外周における羽部11の内側に隣接する位置に環状の第1溝部104を有するカラー1について示した。したがって、カラー1は羽部11を被取付部材2へ傾倒させて一端側に平坦な面を容易に形成することができ、カラー1と、カラー1に接する他の部材との接触面積を増加させて、被取付部材2の取り付けを確実に行うことができる。また、カラー1は、羽部11を径方向外側に安定した基端部115の位置で容易に傾倒させることができ、かしめ状態を確実にして被取付部材2からの脱落が防止される。そのため、被取付部材2の他の部材へ取り付け安定性を向上させることができる。
【0022】
なお、加圧具3をカラー1の径方向外側へ傾倒させる等しながら、羽部11を全周に亘りフランジ部12側へ負荷を加えることで、羽部11の先端が端面103よりもフランジ部12側に位置するように、羽部11をさらに傾倒させることもできる。これにより、羽部11とフランジ部12で被取付部材2をさらに狭圧して、カラー1の両端に、平坦な面(端面121と端面103)を形成するとともに、カラーの軸方向への移動を防げることができる。
【0023】
また、本実施形態のカラー1は、軸Azに軸対称な形状で構成されるため、旋盤加工等により安価で容易に製造することができる。
【0024】
また、被取付部材2にかしめたカラー1は、一端側の端部を平坦な端面103とし、他端側の端部も平坦な端面121としている。そのため、カラー1に対してボルトやナット等の締結具を面当接させることができ、締結具の緩みを防止することができる。したがって、被取付部材2を他の部材に確実に固定することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、円筒状に形成されたカラー1について示したが、カラー1全体を矩形筒状としてもよい。また、羽部11は、本体部10の周方向に対し間欠的な切欠を備えるリング状に設けてもよい。この場合、第1溝部104及び第2溝部111は、羽部11が形成される位置に対応させて、間欠的な環状に設けることができる。さらに、羽部11は、本体部10の一端側においてリング状とならないように(例えば羽部11を2箇所に設ける等により)設けてもよい。
【0026】
また、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 カラー 2 被取付部材
3 加圧具 10 本体部
11 羽部 12 フランジ部
12a 外縁 12b 外縁
21 取付孔 22 下面
23 上面 31 凸湾曲面
32 平坦面 101 貫通孔
101a 内縁 101b 内縁
102 外周面 102a 大径部
102b テーパー部 102c 小径部
103 端面 104 第1溝部
104a 内壁 104b 内壁
104c 底部 111 第2溝部
112 外周面 113 内周面
114 先端面 115 基端部
121 端面 122 上面
Az 軸