(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-175972(P2019-175972A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】電磁弁のソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20190913BHJP
H01F 5/04 20060101ALI20190913BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20190913BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
H01F7/16 R
H01F5/04 C
F16K31/06 305D
H01F27/28 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-61632(P2018-61632)
(22)【出願日】2018年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村岡 敬一郎
【テーマコード(参考)】
3H106
5E043
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DB02
3H106DB12
3H106EE48
3H106GA10
5E043EA01
5E043EB01
5E048AB01
5E048CB03
5E048CB05
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、導線間の隙間を減らして、導線同士の接触による損傷を減らす。
【解決手段】電磁弁のソレノイドは、導線と前記導線がコイル状に巻き回されたボビンと、を有し、前記ボビンは、前記導線が巻き回される円筒部と、前記円筒部の軸方向一端側に設けられたフランジ部と、を有し、前記フランジ部は、前記フランジ部の径方向外周から前記円筒部の周面へ向かう方向に切れ込んだスリットが設けられ、前記円筒部の周面に沿って周方向の少なくとも一部に配置された段部を有し、前記導線は、前記スリットを介して前記フランジ部の前記円筒部と反対側の外面から前記円筒部側の内面へと引き出され、前記段部上に前記円筒部の周面に沿って巻き回され、前記段部は、前記導線の巻き回し方向下流側の端部が前記スリットに隣接し、軸方向における前記段部の寸法が、前記導線の巻き回し方向に沿って増加する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線と、
前記導線がコイル状に巻き回されたボビンと、
を有し、
前記ボビンは、
前記導線が巻き回される円筒部と、
前記円筒部の軸方向一端側に設けられたフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は、
前記フランジ部の径方向外周から前記円筒部の周面へ向かう方向に切れ込んだスリットが設けられ、
前記円筒部の周面に沿って周方向の少なくとも一部に配置された段部を有し、
前記導線は、前記スリットを介して前記フランジ部の前記円筒部と反対側の外面から前記円筒部側の内面へと引き出され、前記段部上に前記円筒部の周面に沿って巻き回され、
前記段部は、前記導線の巻き回し方向下流側の端部が前記スリットに隣接し、軸方向における前記段部の寸法が、前記導線の巻き回し方向に沿って増加する、
電磁弁のソレノイド。
【請求項2】
前記スリットは、前記フランジ部の径方向外周から前記円筒部の周面に達する、
請求項1に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項3】
軸方向における前記段部の寸法は、前記導線の直径以下である、
請求項1又は2に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項4】
径方向における前記段部の寸法は、一定値である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項5】
径方向における前記段部の寸法は、前記導線の直径以下である、
請求項4に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項6】
前記スリットは、前記円筒部の周面との接線上に設けられる、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項7】
前記スリットが設けられたフランジ部の角は、曲面状である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項8】
前記フランジ部は、前記スリットとの距離が近いほど、軸方向における前記フランジ部の内面の位置が外面側に近づく傾斜面か、軸方向における前記フランジ部の外面の位置が内面側に近づく傾斜面を有する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項9】
前記フランジ部には、前記フランジ部の径方向外側から前記スリットへ繋がる溝が設けられ、
前記導線は、前記溝に沿って前記スリットへと引き出され、さらに前記スリットを介して前記フランジ部の外面から内面へと引き出されて、前記段部上に前記円筒部の周面に沿って巻き回される、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項10】
前記フランジ部は、径方向外側に張り出す端子部を有し、
前記溝は、前記スリットから前記端子部へ向かう方向に沿って設けられる、
請求項9に記載の電磁弁のソレノイド。
【請求項11】
前記端子部には、径方向外側から内側へ凹む2つの凹部が設けられ、前記各凹部に端子が配置され、
前記導線の両端部は、前記端子部に引き出されて、前記端子と電気的に接続される、
請求項10に記載の電磁弁のソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁のソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁のソレノイドには、導線が巻き回されたボビンが用いられる。ボビンは、一般的に、円筒部材と、円筒部材の両端にそれぞれ設けられたフランジ部とを備える。2つのフランジ部間を複数回往復しながら、円筒部材の周面上に導線が巻き回され、径方向外側へ向かって複数層の導線が重ねられる。
【0003】
巻き始めと巻き終わりの導線の端部は、ボビン外部へと引き出される。引き出された導線部分がフランジ部上に位置すると、引き出された導線部分と円筒部材に巻き回された導線とがフランジ部上で交差するため、導線同士の接触によって導線が損傷することがある。従来は、フランジ部の径方向に切り欠きを設け、この切り欠きを介して円筒部材からフランジ部の外面側へと導線を引き出して、フランジ部上での導線同士の交差を避けていた(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−71203号公報
【特許文献2】特開2012−15290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、径方向に切り欠きを設けると、導線は切り欠きに向かって軸方向の円筒部材側に引き出され、切り欠きを抜けた後は軸方向と直交するフランジ部の内面へと引き出されるため、切り欠きが設けられたフランジ部の縁において導線が大きく屈曲する。この屈曲部分に2周目の導線が巻き回されたとき、2周目の導線が変形して1周目と2周目の導線間に隙間が生じることがある。導線間に隙間が生じると、モールド成形時に流し込まれたモールドの流圧によって導線が動き、隣接する導線と接触して損傷する可能性がある。
【0006】
上記特許文献2によれば、軸方向におけるフランジ部の内面の位置を、基準面に対して周方向で一定の増分で変化させ、切り欠きが設けられたフランジ部の一方の縁部と他方の縁部の間に段差が設けられる。段差によって軸方向における2周目の導線の位置を1周目の導線の位置からずらし、1周目の導線の屈曲部分による2周目の導線の変形を抑えることができる。
【0007】
しかしながら、導線の屈曲部分の影響があるのは、周面上に巻き回された1層目の導線だけである。それにもかかわらず、フランジ部全体に段差が設けられるため、屈曲部分の影響がない2層目以降も導線の位置が軸方向にずれてしまう。また、段差の分だけフランジ部が肉厚になり、導線を巻くスペースが減るため、ボビンの円筒部材を大きくしなければならず、小型化が難しい。
【0008】
本発明は、簡易な構成で、導線間の隙間を減らして、導線同士の接触による損傷を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の例示的な第1発明によれば、導線と、前記導線がコイル状に巻き回されたボビンと、を有し、前記ボビンは、前記導線が巻き回される円筒部と、前記円筒部の軸方向一端側に設けられたフランジ部と、を有し、前記フランジ部は、前記フランジ部の径方向外周から前記円筒部の周面へ向かう方向に切れ込んだスリットが設けられ、前記円筒部の周面に沿って周方向の少なくとも一部に配置された段部を有し、前記導線は、前記スリットを介して前記フランジ部の前記円筒部と反対側の外面から前記円筒部側の内面へと引き出され、前記段部上に前記円筒部の周面に沿って巻き回され、前記段部は、前記導線の巻き回し方向下流側の端部が前記スリットに隣接し、軸方向における前記段部の寸法が、前記導線の巻き回し方向に沿って増加する、電磁弁のソレノイドが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本願の例示的な第1発明によれば、簡易な構成で、導線間の隙間を減らして、導線同士の接触による損傷を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の電磁弁のソレノイドが備えるボビン、導線及び端子を端子側から示す斜視図である。
【
図3】
図2中のA−A線におけるボビンの断面図である。
【
図4】ボビンをフランジ部の外面側から示す斜視図である。
【
図8A】フランジ部に段部を設けない場合の導線を示す側面図である。
【
図8B】フランジ部に段部を設けた場合の導線を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電磁弁のソレノイドの実施形態について、図面を参照して説明する。
本明細書において、軸とは
図2に示す中心軸Jをいい、単に周方向又は軸方向という場合は、中心軸Jの周方向又は中心軸Jの軸方向をいう。単に径方向という場合は、中心軸Jと直交する方向をいう。軸方向の一方側を「上側」と呼び、他方側を「下側」と呼ぶことがある。なお、上下方向は、説明の便宜上定める方向であり、重力方向と一致する必要はない。
【0013】
図1は、本実施形態の電磁弁のソレノイドの構成の一部を示す。
図1に示すように、本実施形態のソレノイドは、導線1、ボビン2及び2つの端子31を有する。
導線1は、エナメル線等の絶縁被膜が設けられた導電性の線材である。ボビン2は、円筒状であり、導線1がコイル状に巻き回される。2つの端子31は、ボビン2に巻き回された導線1の両端にそれぞれ接続される。
【0014】
図2は、ボビン2を示す。
図2に示すように、ボビン2は、円筒部2aと、2つのフランジ部2bと、を有する。
【0015】
(円筒部)
円筒部2aは、中心軸Jに沿った貫通孔を有する円筒部材である。円筒部2aの周面には、周方向に沿った複数の溝26が軸方向に連続して設けられる。導線1は、各溝26に沿って円筒部2aの周面に巻き回される。導線1は、端子31が設けられる軸方向下側から上側まで円筒部2aの周面に巻き回した後、逆方向に巻き回す操作を複数回繰り返すことにより、コイル状の導線1の複数の層が径方向に重ねられる。
【0016】
(フランジ部)
フランジ部2bは、円筒部2aの軸方向両端にそれぞれ設けられ、径方向外側に延びる。フランジ部2bの円筒部2a側の面を内面といい、円筒部2aと反対側の面を外面という。
【0017】
(スリット)
2つのフランジ部2bのうち、少なくとも一方のフランジ部2bには、スリット21が設けられる。スリット21は、フランジ部2bの径方向外周から円筒部2aの周面に向かう方向に切れ込む。巻き始めの導線1は、スリット21を介してフランジ部2bの外面側から内面側へと引き出されて、円筒部2aの周面に巻き回される。巻き回されずに円筒部2aの周面から延びる導線1の端部は、フランジ部2bの外面側に位置するので、円筒部2aの周面上に巻き回された複数層の導線1とフランジ部2bの内面上で交差することを回避することができる。これにより、導線1同士の接触による損傷を減らすことができる。
【0018】
スリット21は、
図2に示すように、フランジ部2bの径方向外周から円筒部2aの周面に達すると、導線1をフランジ部2bの外面から内面に直線状に引き出しやすく、好ましい。
また、
図2に示すように、スリット21は、円筒部2aの周面との接線上に設けられることが好ましい。これにより、スリット21を介してフランジ部2bの外面側から内面側へ引き出された導線1を、直線状に円筒部2aへと導くことできる。
【0019】
図3は、
図2中のA−A線における断面図である。
図4は、ボビン2をフランジ部2bの外面側から示す斜視図である。
図3及び
図4に示すように、スリット21に隣接するフランジ部2bの外面側は、スリット21から端子部3側に向かう方向にさらに切り込まれて、フランジ部2bの厚みが小さくなっている。
【0020】
図3に示すように、スリット21が設けられたフランジ部2bの角は、例えば曲面状とすることができる。スリット21の周縁の形状が曲面であると、スリット21の周縁と接触した導線1の損傷を抑えることができる。
【0021】
フランジ部2bは、
図3及び
図4に示すように、スリット21の周辺において、2つの傾斜面221及び222を有する。
図3及び
図4に示すように、傾斜面221は、フランジ部2bの厚みが小さい部分の外面に設けられる。傾斜面221は、スリット21との距離が近いほど、軸方向におけるフランジ部2bの外面の位置が内面側に近づく。傾斜面222では、スリット21との距離が近いほど、軸方向におけるフランジ部2bの内面の位置が外面側に近づく。傾斜面221及び222に沿って、スリット21から導線1を引き出すことにより、導線1を直線状に円筒部2aへガイドすることができる。これにより、導線1の屈曲を減らすことができ、屈曲によって1周目と2周目の導線1間に生じる隙間を減らすことができる。
【0022】
(段部)
図5は、ボビン2をスリット21側から示す斜視図である。
図6は、
図5に示すボビン2に導線1を巻き回した斜視図である。
フランジ部2bは、円筒部2aの周面に沿って内面上に配置された段部23を有する。
図5に示すように、段部23の導線1の巻き回し方向W下流側の端部23aは、スリット21に隣接する。段部23の端部23aがスリット21に隣接するのであれば、段部23は周方向の全部ではなく、少なくとも一部に設けられていればよい。
図6に示すように、スリット21からフランジ部2bの内面側に引き出された導線1は、段部23上に円筒部2aの周面に沿って巻き回される。
【0023】
図7は、ボビン2を端子部3側から示す斜視図である。
図5〜
図7に示すように、本実施形態では、段部23は、スリット21と反対側の円筒部2aの周面からスリット21に到る周面まで、円筒部2aの半周に設けられる。
【0024】
図5〜
図7に示すように、段部23の軸方向における寸法d1は、導線1の巻き回し方向Wに沿って増加する。すなわち、スリット21と隣接する端部23aにおいて段部23の寸法d1が最も大きくなる。このような段部23上に1周目の導線1を配置することにより、1周目の導線1に変形が生じても、2周目の導線1の変形を減らすことができる。軸方向における段部23の寸法d1は、導線1の直径以下であることが好ましい。段部23によって1周目と2周目の導線1を軸方向に重ねやすくなり、導線1の隙間を減らすことができる。
【0025】
図8Aは、径方向に切り欠き72が設けられた、従来のフランジ部71の内面上に巻き回された導線1を示す。
図8Bは、フランジ部2bの内面に段部23が設けられ、この段部23上に巻き回された導線1を示す。
図8Aに示すように、従来のフランジ部71は、切り欠き72からフランジ部71の内面に導線1を引き出すと、フランジ部71の角に接触して導線1が屈曲する。この屈曲部分は、1周目の導線1の巻き始めに生じる。2周目の導線1は、軸方向の位置が1周目の導線1と同じであるため、1周目の導線1の屈曲部分に接触して変形する。変形により、
図8A中の破線の円で示すように、1周目と2周目の導線1間に隙間が生じると、モールド成形時に隙間に流れ込むモールド樹脂の流圧により導線1が動いて、互いに接触して被膜が損傷する可能性がある。
【0026】
一方、本実施形態によれば、フランジ部2bに傾斜面221が設けられるため、
図8Bに示すように、スリット21から引き出された導線1の屈曲が少ない。さらに、段部23上に導線1を巻き回すため、2周目の導線1の位置が1周目の導線1の位置から軸方向にずれ、2周目の導線1が1周目の導線1の屈曲部分と接触することを避けるか、又は接触しても2周目の導線1の変形を大きく減らすことができる。このように、2周目の導線1が、屈曲部分によって変形しにくくなるため、
図8B中の破線の円で示すように、1周目と2周目の導線1間の隙間が減り、上述したモールド成形時の損傷を減らすことができる。段部23の軸方向の寸法d1は徐々に増加するので、導線1を変形させることなく、軸方向の導線1の位置をずらすことができる。
【0027】
本実施形態において、径方向における段部23の寸法d2は、導線1の巻き回し方向Wによらず一定値である。径方向の寸法d2が一定値であると、導線1を段部23上に安定して配置しやすくなる。径方向における段部23の寸法d2は、導線1の直径以下であることが好ましい。径方向の寸法が直径以下であれば、1層目の1周目の導線1上に、2層目の導線1が巻き回されたときに2層目の導線1に干渉することを回避できる。
【0028】
(溝)
図5に示すように、フランジ部2bには、フランジ部2bの径方向外側からスリット21へ繋がる溝24が設けられる。巻き始めの導線1は、溝24に沿ってスリット21へと引き出される。溝24により、フランジ部2bの外面側の導線1をスリット21へとガイドすることができ、導線1の引き出しが容易になる。
【0029】
(端子部)
2つのフランジ部2bのうちの一方は、径方向外側に張り出す端子部3を有する。端子部3は、スリット21と同じフランジ部2bに設けられると、導線1の接続が効率的である。端子部3には、
図7に示すように、端子部3の径方向外側から内側へ窪む2つの凹部30が設けられる。各凹部30内には、
図1に示すように、2つの端子31が配置される。導線1の両端部は端子部3に引き出されて、端子31と電気的に接続される。このように、フランジ部2bに設けられた端子部3において、導線1と端子31を接続することが可能である。
【0030】
本実施形態において、溝24は、
図5に示すように、スリット21から端子部3へ向かう方向に沿って設けられる。溝24により、
図6に示すように、スリット21から端子部3へ導線1の端部をガイドすることができ、端子部3までの導線1の動きを抑えることができる。
【0031】
端子部3は、例えば軸方向に対して垂直に面状に広がり、2つの凹部30は端子部3の先端部に設けられる。2つの凹部30は、軸方向及び径方向のそれぞれと直交する幅方向に並び、各凹部30に2つの端子31は挿入され、配置される。
【0032】
図7に示すように、フランジ部2bの外縁には、端子部3の外側に2つの切り欠き25が設けられる。
図1に示すように、端子部3の軸方向の上端面、すなわち端子部3の円筒部2aよりも外側の端面には、2つの壁部41が設けられる。2つの壁部41は、端子部3の幅方向の両側に配置され、軸方向に直立して互いに対向している。壁部41は、端子31からフランジ部2bの外縁まで延びる。2つの壁部41の間隔は、円筒部2aの外径より狭い。
【0033】
導線1の両端部は、
図1に示すように、2つの切り欠き25を介してボビン2から端子部3へ引き出され、2つの壁部41の円筒部2a側から径方向外側に引き回され、端子31に電気的に接続される。導線1の両端部は、例えば2つの壁部41の向かい合う面に沿って引き回される。さらに、導線1の両端部は、端子31に設けられた2つの切り欠き31aを介してそれぞれ端子31に巻き付けられる。端子31に巻き付けられた導線1の両端部は、端子31の径方向外側に位置する加締め部32と接触して位置が固定されるとともに、電気的に接続される。
【0034】
(1)以上のように、本実施形態の電磁弁のソレノイドは、ボビン2のフランジ部2bにスリット21が設けられ、スリット21を介してフランジ部2bの外面から内面へ導線1が引き出されるので、フランジ部2bの内面上で導線同士の交差を回避することができる。また、フランジ部2bに段部23が設けられ、1周目の導線1が段部23上に配置されて、さらに軸方向における段部23の寸法d1が導線1の巻き回し方向Wに沿って増加する。これにより、1周目と2周目の導線1の位置を軸方向にずらすことができ、1周目の導線1がフランジ部2bによって変形した場合でも、1周目の導線1の変形にともなう2周目の導線1の変形を減らすことができる。少なくとも周方向の一部に設ければよい段部23とスリット21を設けるだけの簡易な構成で、導線1同士の交差及び導線1間の隙間を減らして、導線1同士の接触による損傷を減らすことができる。
【0035】
(2)本実施形態では、径方向の段部23の寸法d2は、一定値であるため、1周目の導線1を段部23上に配置しやすい。また、段部23の軸方向及び径方向の寸法d1及びd2は、導線1の直径以下であるため、1周目と2周目の導線1が軸方向に重なりやすく、また2層目の導線1との干渉を回避することができ、各導線1間の隙間を減らすことができる。
【0036】
(3)スリット21は円筒部2aの周面との接線上に設けられ、スリット21周辺のフランジ部2bの外面と内面にそれぞれ傾斜面221及び222が設けられるため、導線1を直線状に円筒部2aの周面へ引き出して巻き回すことができ、1周目の導線1の変形をより減らすことができる。また、スリット21が設けられるフランジ部2bの角は曲面状であるため、フランジ部2bとの接触による導線1の損傷を減らすことができる。
【0037】
(4)フランジ部2bには溝24が設けられるため、溝24により導線1の端部をフランジ部2bの外面側へガイドすることができる。また、溝24はスリット21から端子部3へ向かう方向に設けられるため、巻き回した導線1の端部を溝24により端子部3へガイドすることができ、端子部3までの導線1の動きを抑えることができる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、ボビン2と端子部3は単一の部材であり、樹脂により金型成形する等して得ることができるが、それぞれ別の部材として接着剤等により接続してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 導線
2 ボビン
2a 円筒部
2b フランジ部
221、222 傾斜面
21 スリット
23 段部
24 溝
3 端子部
30 凹部
31 端子