【実施例1】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、実施例1に係る粘着テープ貼付け装置1の基本構成を示す正面図である。なお粘着テープ貼付け装置1を示す図において、各種構成を支持する支持手段、および各種構成を駆動させる駆動手段などについては図示を省略している。
【0046】
実施例1に係る粘着テープ貼付け装置1は、半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」と略称する)の一方の面とリングフレームfとにわたって支持用の粘着テープDTを貼り付けて、
図3(b)に示すようなマウントフレームMFを作製することを目的とする。なお、本実施例ではバックグラインド処理済のウエハWを用いることとする。
【0047】
なお、本実施例において「上流」および「下流」とは粘着テープDTの繰り出し方向Lに沿うものとして定義される。すなわち「上流」とは粘着テープDTの繰り出し方向Lにおいて、後述するテープ供給部3に近い側を意味するものとする。
【0048】
<全体構成の説明>
本実施例に係る粘着テープ貼付け装置1は
図1に示すように、テープ供給部3、第1テンション機構4、保持テーブル5、テープ貼付けユニット7、テープ切断ユニット9、テープ剥離ユニット11、テープ回収部13、セパレータ回収部15、および第2テンション機構37を備えている。
【0049】
テープ供給部3は、供給ボビン19および剥離ローラ21などを備えている。供給ボビン19には原反ロール20が装填されている。原反ロール20には、支持用の粘着テープDTが、セパレータSが添設された状態で巻回されている。
【0050】
供給ボビン19は電磁ブレーキ23に連動連結されて適度の回転抵抗がかけられている。電磁ブレーキ23は、供給ボビン19から過剰に粘着テープDTが繰り出し供給されることを防止する。
【0051】
剥離ローラ21は、粘着テープDTからセパレータSを剥離するとともに、剥離されたセパレータSをセパレータ回収部15へと案内する。
【0052】
第1テンション機構4は
図1に示すように、揺動アーム25を振動させるシリンダ27を備えている。揺動アーム25は、固定軸の支軸に遊点ローラ28が軸支されており、自由端側にダンサローラ29を備えている。第1テンション機構4は、シリンダ27の作動に連動して揺動する揺動アーム25の自由端側のダンサローラ29が下降し、粘着テープDTを下方に押し下げて繰り出し方向Lへテンションを付与するように構成される。
【0053】
保持テーブル5は
図1に示すように、ウエハ保持部31とフレーム保持部33と、基部17とを備えている。ウエハ保持部31は、回路形成面に保護用の粘着テープPTが貼り付けられているウエハWを、当該回路形成面を下向きにした状態で載置して保持する。本実施例ではウエハ保持部31として、ウエハWを吸着保持するチャックテーブルを用いるが、ウエハ保持部31の構成としてはこれに限られない。
【0054】
フレーム保持部33は、ウエハ保持部31を囲うように立設された環状の基台で構成されおり、リングフレームfを載置して保持する。また、ウエハ保持部31に載置されたウエハWの上面と、フレーム保持部33に載置されたリングフレームfの上面とが面一となるように、ウエハ保持部31およびフレーム保持部33が構成される。基部17はウエハ保持部31およびフレーム保持部33の各々の下部に接続されており、昇降移動を可能とするように構成されている。
【0055】
テープ貼付けユニット7は、保持テーブル5に載置されて吸着保持されたウエハWの回路面に粘着テープDTを貼付ける。テープ貼付けユニット7は
図1に示すように、図示しないレールに沿って左右水平に往復移動する可動台34と、可動台34に接続されたブラケットに軸支された貼付けローラ35とを備えている。
【0056】
テープ切断ユニット9は、保持テーブル5の上方に配置されており、フレーム38と、支軸39と、支持アーム41と、カッタ43と、押圧ローラ45とを備えている。
【0057】
支軸39は、フレーム38に沿って昇降移動を可能としており、保持テーブル5の中心上に位置する縦軸心P周りに駆動回転する。支持アーム41は、支軸39を中心に径方向に複数本延伸している。カッタ43は支持アーム41aの先端に設けられており、リングフレームfおよびウエハWにわたって貼付けられた粘着テープDTをリングフレームfに沿って切断する。押圧ローラ45は支持アーム41bの先端に設けられており、リングフレームf上のテープ切断部位を転動しながら押圧する。
【0058】
テープ剥離ユニット11は、カッタ43によって切り抜かれてウエハWの表面に貼り付けられた粘着テープDTwと、粘着テープDTwが切り抜かれて不要となった粘着テープDTである、不要テープDTnとを分離させる。テープ剥離ユニット11は、第1テンション機構4と協働して粘着テープDTのテンションを維持するガイドローラ46と、ニップローラ47とを備えている。
【0059】
ニップローラ47は、昇降移動を可能とするピンチローラ47aと、モータによって駆動する送りローラ47bによって構成される。テープ剥離ユニット11は、図示しないレールに沿って左右水平に往復移動が可能となるように構成されている。
【0060】
テープ回収部13はテープ剥離ユニット11の下流に配設されており、不要テープDTnを巻き取る回収ボビン49が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。セパレータ回収部15は、粘着テープDTから剥離されたセパレータSを巻き取る回収ボビン51が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。回収ボビン49および51の各々は、図示しないモータによって正逆に回転駆動制御されるように構成されている。
【0061】
なお、粘着テープ貼付け装置1は、さらに制御部40と入力部50とを備えている。制御部40はCPU(中央演算処理装置)などを備えており、粘着テープ貼付け装置1の各種動作を統括制御する。入力部50の例としてはコンソールパネルやキーボードなどが挙げられ、オペレータは入力部50を用いて各種指示を入力できる。入力部50に入力された指示内容は制御部40に送信され、制御部40は当該指示に沿って各種統括制御を行うことができる。
【0062】
<第2テンション機構の構成>
ここで、第2テンション機構37の構成について説明する。第2テンション機構37は、粘着テープDTのうち所定の領域Hにおいて幅方向Rの両端を把持する。第2テンション機構37は、独立して駆動制御される複数の引張機構で構成されている。本実施例では2つの引張機構、すなわち第1引張機構53と第2引張機構55によって構成されているものとする。第1引張機構53と第2引張機構55は、粘着テープDTの繰り出し方向Lに並列配置されている。第2テンション機構37は、本発明におけるテンション付与機構に相当する。
【0063】
第1引張機構53は
図2(a)に示すように、第2引張機構55の下流側に設けられており、保持テーブル5を挟んで対向配備された一対の把持ユニット53Aおよび53Bによって構成される。第2引張機構55は、保持テーブル5を挟んで対向配備された一対の把持ユニット55Aおよび55Bによって構成される。
【0064】
把持ユニット53Aおよび53Bは粘着テープDTの幅方向Rの両端をそれぞれ把持し、当該幅方向Rへ所定距離移動する。当該移動により、粘着テープDTのうち第1引張機構53が把持している領域において、所定の大きさのテンションP1が幅方向Rへ付与される。また、把持ユニット55Aおよび55Bも同様に、粘着テープDTの幅方向Rの両端をそれぞれ把持し、幅方向Rへ所定距離移動する。当該移動により、粘着テープDTのうち第2引張機構55が把持している領域において、所定の大きさのテンションP2が幅方向Rへ付与される。
【0065】
把持ユニット53A、53B、55A、および55Bの構成は共通しており、いずれも把持部材61とシリンダ63とモータ65とを備えている。把持部材61は粘着テープDTを厚み方向(本実施例ではy方向)の両側から把持する。また把持部材61は当該把持を適宜開放できるように構成される。
【0066】
シリンダ63は把持部材61に接続されており、モータ65の正逆回転に連動して幅方向Rへ伸縮動作するように構成されている。すなわち、把持部材61はシリンダ63の伸縮動作に従って、粘着テープDTを把持した状態で幅方向Rへ移動可能となる。モータ65の回転量および回転方向に従って、把持部材61が幅方向Rへ移動する距離および方向が決定される。
【0067】
図2(b)に示すように、把持部材61は固定受け片67と、可動片68と、シリンダ69と、モータ70とを備えている。シリンダ69は可動片68に接続されており、モータ70の正逆回転に連動して粘着テープDTの厚み方向に伸縮する。すなわち可動片68はシリンダ69の伸縮動作に従って、粘着テープDTの厚み方向に昇降移動する。把持部材61は固定受け片67と可動片68とによって開閉動作が可能となるように構成されており、閉状態となることで粘着テープDTを安定に把持し、開状態となることで当該把持を解除する。
【0068】
把持ユニット53A、53B、55A、および55Bの各々に設けられているモータ65の回転は、それぞれ制御部40によって独立に制御される。特に把持ユニット53Aおよび53Bの各々に設けられているモータ65の回転と、把持ユニット55Aおよび55Bの各々に設けられているモータ65の回転とは独立して制御される。本実施例ではモータ65の回転を独立して制御することにより、第1引張機構53によって付与されるテンションP1の大きさと、第2引張機構55によって付与されるテンションP2の大きさとがそれぞれ異なるように制御できる。
【0069】
実施例1において、把持ユニット53Aおよび53Bの各々に設けられている把持部材61は、本発明における第1把持機構に相当する。把持ユニット55Aおよび55Bの各々に設けられている把持部材61は、本発明における第2把持機構に相当する。把持ユニット53Aおよび53Bの各々に設けられているシリンダ63およびモータ65は、本発明における第1引張部材に相当する。把持ユニット55Aおよび55Bの各々に設けられているシリンダ63およびモータ65は、本発明における第2引張部材に相当する。
【0070】
また、粘着テープ貼付け装置1はセンサ71を備えている。センサ71は
図1に示すように、繰り出し方向Lに並列配置されている、センサ71aおよびセンサ71bによって構成される。センサ71aおよびセンサ71bは、それぞれ1対のセンサによって構成される。
【0071】
センサ71aおよびセンサ71bは、
図10(a)などに示すように、粘着テープDTの幅方向Rにおける両端の位置を検知する。すなわち、センサ71aは、粘着テープDTのうち第1引張機構53が把持する領域について、粘着テープDTの幅方向Rにおける両端の位置を検知する。センサ71bは、粘着テープDTのうち第2引張機構55が把持する領域について、粘着テープDTの幅方向Rにおける両端の位置を検知する。
【0072】
センサ71の構成としては光学センサや感圧センサなど、粘着テープDTの端部の位置を検知できる構成を適宜用いてよい。制御部40はセンサ71が検知する粘着テープDTの端部の位置に基づいて、第1引張機構53によって付与されるテンションP1と、第2引張機構55によって付与されるテンションP2とを算出する。算出する方法の詳細は後述する。センサ71は本発明における両端検知機構に相当し、制御部40は本発明におけるテンション算出機構に相当する。
【0073】
<テープ貼付け動作の概要>
ここで、粘着テープ貼付け装置1を用いてマウントフレームMFを作製するための一連の基本動作を説明する。
図3は、支持用の粘着テープDTをウエハWおよびリングフレームfにわたって貼り付ける工程を説明するフローチャートである。
【0074】
このとき、保持テーブル5、テープ貼付けユニット7、テープ切断ユニット9、およびテープ剥離ユニット11の各々は
図4(a)に示す初期位置に移動している。すなわち、テープ貼付けユニット7は保持テーブル5の右側に移動しており、テープ剥離ユニット11は保持テーブル5の左側に移動している。また、テープ切断ユニット9は保持テーブル5の上方で待機している。保持テーブル5は、リングフレームfおよびウエハWを載置しても粘着テープDTと干渉しないように、基部17が下方へ移動している。
【0075】
なお、テープ供給部3において、ボビン19に装填されている原反ロール20からセパレータSが添設された粘着テープDTが下流へと繰り出し供給され、剥離ローラ21によって粘着テープDTおよびセパレータSに剥離される。そして粘着テープDTはテープ貼付けユニット7およびテープ剥離ユニット11に案内されている。また、第1テンション機構4、ガイドローラ46、およびニップローラ47によって、粘着テープDTに対して繰り出し方向Lへ適度にテンションが付与されている。
【0076】
貼付け指令が出されると、所定のウエハ収納部に収納されているウエハWは、アライメントステージで位置合わせされた後、図示しないウエハ搬送機構によって保持テーブル5のウエハ保持部31に載置される。ウエハ保持部31に載置されたウエハWは旋回され、ウエハWの中心がウエハ保持部31の中心の上にあるように位置合わせされた状態で吸着保持される。(ステップS1)。
【0077】
次に、所定のフレーム収納部に収納されているリングフレームfが、アライメントステージで位置合わせされた後、図示しないフレーム搬送機構によってフレーム保持部33に載置される。フレーム保持部33に載置されたリングフレームfは、その上面がウエハWの上面と面一になる(ステップS2)。
【0078】
次に、
図4(b)に示すように、保持テーブル5の基部17は上昇移動し、ウエハWおよびリングフレームfの上面は粘着テープDTと略同じ高さとなる。そして、テープ貼付けユニット7の貼付けローラ35は粘着テープDTを下方に押圧しながらウエハW上を前方(
図4では左方向)に転動し、点線で示す初期位置から実線で示す終端位置へと移動する。これによって、粘着テープDTがウエハWの裏面全体とリングフレームfとにわたって密着するように貼り付けられ、マウントフレームMFが作製される(ステップS3)。
【0079】
ウエハWおよびリングフレームfに粘着テープDTが貼り付けられた後、テープ切断ユニット9が作動し、粘着テープDTの切断が開始される。すなわち
図5に示すように、上方に待機していたテープ切断ユニット9が作動することによって、支軸39は所定の高さまで下降し、カッタ43が粘着テープDTに突き刺される。
【0080】
この状態で支軸39を縦軸心Pの軸回りに回転させる。当該回転により、支持アーム41が縦軸心Pを旋回中心として旋回する。カッタ43は支持アーム41の旋回に従ってリングフレームfの上を転動し、粘着テープDTをリングフレームfに沿って円形に切断する(ステップS4)。このとき、転動するカッタ43の後方を押圧ローラ45が転動する。すなわち、カッタ43が粘着テープDTを切断した部分は、押圧ローラ45によって押圧されるので、当該切断部分がリングフレームfの上面から浮き上がることを防止できる。
【0081】
リングフレームfに沿った粘着テープDTの切断が終了すると、テープ切断ユニット9は元の待機位置まで上昇される。そして、テープ貼付けユニット7は終端位置から初期位置へと復帰する。テープ貼付けユニット7が初期位置へ復帰するとともに、
図6に示すように、テープ剥離ユニット11が前方(
図6では右方向)へ移動する。すなわちテープ剥離ユニット11は、ピンチローラ47をやや上昇させつつ、
図6において点線で示す初期位置から実線で示す終端位置へ右方向に移動する。
【0082】
テープ剥離ユニット11は終端位置へ移動しつつ、粘着テープDTのうち、ウエハW上で切り抜き切断されて残った不要テープDTnを巻き上げて剥離する(ステップS5)。なお、粘着テープDTのうち、ウエハWの表面に貼り付けられている部分については符号DTwを付して不要テープDTnと区別する。
【0083】
このとき、リングフレームfおよびウエハWから剥離された粘着テープDTは、
図8(a)に示すように、カッタ43によって切断された部分C(切除領域C)が円形に切り抜かれている。そして切除領域Cが形成されることにより、特に切除領域Cの上流近傍において、繰り出し方向Lへ延びる皺Fが粘着テープDTに高頻度で発生する。本実施例では繰り出し方向Lに並ぶ2つの領域L1およびL2において皺Fが発生しているものとする。
【0084】
皺Fが発生することにより、平面視における粘着テープDTの幅は、粘着テープDTが平坦であった場合の幅Mと比べて狭くなる。このとき、切除領域Cに近い領域L1の方が、領域L1よりやや上流の領域L2と比べて皺Fの発生が多い。すなわち、皺Fの発生が多い領域L1における粘着テープDTの幅M1は、皺Fの発生が少ない領域L2における粘着テープDTの幅M2よりも実際には狭くなっている(
図11(b))。またこのとき、皺Fの発生が多い領域L1に作用している幅方向の張力T1は、皺Fの発生が少ない領域L2に作用している幅方向の張力T2より小さくなっている。実施例1において、領域L1は本発明における第1領域に相当し、領域L2は本発明における第2領域に相当する。
【0085】
テープ剥離ユニット11が剥離作業の終端位置に達し、ステップS5までの各処理が終了すると、
図7に示すように、保持テーブル5を下降させて粘着テープDTから退避させるとともに、テープ剥離ユニット11を初期位置へと復帰させる。保持テーブル5が
図7において実線で示される初期位置まで下降すると、保持テーブル5における吸着が解除される。吸着解除の後、粘着テープDTwが貼り付けられたマウントフレームMFは、マウントフレーム搬送機構によって搬送されて図示しないマウントフレーム回収部に回収される(ステップS6)。
【0086】
マウントフレームMFが回収されると、一定量の不要テープDTnが巻き取られてテープ回収部13へ案内されていくとともに、一定量の粘着テープDTがテープ供給部3から繰り出される(ステップS7)。一定量の粘着テープDTが繰り出されることにより、
図8(b)に示すように、ウエハ保持部31の上方に位置されていた切除領域Cは、下流方向へ所定距離の分、移動する。
【0087】
粘着テープDTを繰り出させ、ウエハ保持部31の上方に位置していた切除領域Cを下流方向へ移動させた後、ステップS8に係る粘着テープDTの矯正工程を行い、粘着テープDTに形成された皺Fを除去する。以下、ステップS8の工程について説明する。
【0088】
ステップS8を開始すると、まず第1引張機構53および第2引張機構55の各々について、把持部材61を駆動させて粘着テープDTを把持させる。すなわち
図9(a)に示すように、把持ユニット53Aおよび53Bの各々を幅方向Rの内側へ適宜移動させる。当該移動によって、固定受け片67と可動部68との間に粘着テープDTの幅方向の端部がそれぞれ入り込む。
【0089】
そして、粘着テープDTの幅方向の端部が入り込んだ状態で、制御部40はモータ70を回転させる。モータ70の回転によって、
図9(b)に示すように、シリンダ69が下方へ伸張する。シリンダ69の伸張により、可動部68は下方へ移動する。その結果、固定受け片67と可動部68との間隔が短くなり、固定受け片67と可動部68とによって領域L1における粘着テープDTの端部が把持される。
【0090】
なお、
図9(b)は第1引張機構53を構成する把持ユニット53Aおよび53Bの動作を示しているが、第2引張機構55を構成する把持ユニット55Aおよび55Bの動作も同様である。
【0091】
図9(a)に示すように。第1引張機構53および第2引張機構55は、切除領域Cの上流近傍において粘着テープDTの両端を把持する。第1引張機構53の把持ユニット53Aおよび53Bは、より切除領域Cに近い領域L1における、粘着テープDTの幅方向Rの両端を把持する。第2引張機構55の把持ユニット55Aおよび55Bは、領域L1よりやや上流側の領域L2における、粘着テープDTの幅方向Rの両端を把持する。
【0092】
第1引張機構53および第2引張機構55の各々により、粘着テープDTの幅方向の両端が把持されると、制御部40はモータ65の各々を回転させる。モータ65の各々が回転することにより、
図10(a)に示すように、把持ユニット53Aの把持部材61と、把持ユニット53Bの把持部材61とは幅方向Rにおいて外側へと互いに反対方向へ移動する。
【0093】
把持部材61の各々が幅方向Rへ移動することにより、把持部材61の各々が把持している粘着テープDTは幅方向の両外側へと引っ張られる。粘着テープDTが引っ張られることにより、繰り出し方向Lのテンションが付与されている粘着テープDTに対して、幅方向Rのテンションがさらに付与される。その結果、粘着テープDTに発生していた皺Fが除去され、粘着テープDTは平坦となる。
【0094】
図10(a)は、第1引張機構53を構成する把持ユニット53Aおよび53Bの動作を示している。なお、第2引張機構55を構成する把持ユニット55Aおよび55Bについても、把持部材61をそれぞれ幅方向Rにおいて外側へと互いに反対方向へ移動させることにより、粘着テープDTに幅方向Rのテンションを付与させる。
【0095】
本発明の特徴として、制御部40は第1引張機構53に設けられるモータ65の各々の回転と、第2引張機構55に設けられるモータ65の各々の回転とを独立に制御する。具体的には、把持ユニット55Aおよび55Bが幅方向Rへ移動する距離に比べて、把持ユニット53Aおよび53Bが幅方向Rへ移動する距離の方を長くする。その結果、第2引張機構55が把持して引っ張る領域L2に付与されるテンションP2に比べて、第1引張機構53が把持して引っ張る領域L1に付与されるテンションP1の方が大きくなる。
【0096】
上述しているように、皺Fが発生している時点において、皺Fの発生が多い領域L1における粘着テープDTの幅は、皺Fの発生が少ない領域L2における粘着テープDTの幅よりも実際には狭くなっている(
図11(b)を参照)。そのため、第1引張機構53の移動距離を第2引張機構55の移動距離より長くなるようにモータ65の各々を独立制御する。そして当該独立制御を行うことにより、領域L1における粘着テープDTの幅と領域L2における粘着テープDTの幅とが同じ長さとなるように、第2テンション機構37はそれぞれ異なるテンションP1およびP2を幅方向Rに付与できる。
【0097】
比較的大きなテンションP1の付与により、領域L1に発生していた多数の皺Fは確実に除去される。そして比較的小さなテンションP2の付与により、領域L2に発生している比較的少数の皺Fも確実に除去されるとともに、領域L2において新たな皺が発生することを防止できる。
【0098】
言い換えると、比較的小さい張力T1が作用していた領域L1には比較的大きなテンションP1が付与され、比較的大きな張力T2が作用していた領域L2には比較的小さなテンションP2が付与される。そのため、第2テンション機構37がそれぞれ異なるテンションP1およびP2を付与することにより、領域L1に作用する張力の大きさT1と領域L2に作用する張力T2とを略同じにできる(
図11(c)を参照)。
【0099】
従って、第2テンション機構37によって、粘着テープDTは、領域L1およびL2のいずれにおいても高い精度で平坦化される。その結果、切除領域Cの近傍領域である領域L1およびL2を、次の貼付け過程においてリングフレームfおよびウエハWに貼り付ける領域、すなわち次の切除領域Cとして用いることができる。第2テンション機構37によって粘着テープDTを平坦化することにより、ステップS8の工程は完了する。以上のステップS1ないしS8からなる一連の工程により、1サイクルの粘着テープ貼付け処理が完了する。
【0100】
以後、規定数のマウントフレームMFが作製されるまで、ステップS1からステップS8までの工程が繰り返される。なお、第2テンション機構37が粘着テープDTに幅方向RのテンションP1およびP2を付与している状態は、次のサイクルの粘着テープ貼付け処理において、粘着テープDTの貼付け工程(ステップS3)が実行されるまで維持されることが好ましい。
【0101】
ここで、テンションP1およびテンションP2をそれぞれ算出する工程の一例について説明する。本実施例ではセンサ71を用いて、ステップS8における第1引張機構53および第2引張機構55の移動距離をそれぞれ算出することにより、テンションP1およびテンションP2の各々が定められる。
【0102】
すなわち、粘着テープDTが平坦である場合、粘着テープDTの幅方向Rの両端はいずれも繰り出し方向Lへ平行に延びる。そのため、平面視における粘着テープDTの幅は、どの領域であっても同じ長さMである(
図11(a))。しかし、切除領域Cの形成によって皺Fが発生した場合、皺Fの発生量に応じて幅Vの長さが短くなる。従って、平面視において、皺Fが比較的多い領域L1における幅の長さM1は、領域L2における幅の長さM2よりも短くなる(
図11(b))。
【0103】
そこで、センサ71を用いて平面視における粘着テープDTの両端の位置を常時検知し、領域L1における幅の長さと領域L2における幅の長さとがいずれも同じ長さとなるように、第1引張機構53および第2引張機構55の移動距離を定める。
【0104】
領域L1における粘着テープDTの幅は、センサ71aにより適時検知される。領域L2における粘着テープDTの幅は、センサ71bにより適時検知される。そのため、制御部40はセンサ71aおよびセンサ71bが検知した情報に基づいて、領域L1における粘着テープDTの幅と領域L2における粘着テープDTの幅が等しくなるように、テンションP1の大きさとテンションP2の大きさとをそれぞれ正確に算出できる。
【0105】
具体的には、MとM1との差はMとM2との差よりも大きいので、第1引張機構53の移動距離は第2引張機構55の移動距離よりも長くなるように算出される。粘着テープDTの幅方向へ付与されるテンションの大きさは、粘着テープDTを把持して幅方向Rへ移動する第1引張機構53または第2引張機構55の移動距離によって変化する。第1引張機構53および第2引張機構55がそれぞれ算出された距離を移動する結果、平面視における粘着テープDTの幅の長さは、領域L1およびL2の各々において、皺Fが発生する前の長さMと同じとなる(
図11(c))。
【0106】
このように、センサ71を用いて粘着テープDTの端部を検知する方法によって、ステップS8における第1引張機構53の移動距離および第2引張機構55の移動距離を正確に算出できる。さらに、粘着テープDTに付与するテンションP1およびP2を過度に大きくする事態を回避できる。
【0107】
なお、特に粘着テープDTが柔らかい材料で構成される場合、粘着テープDTの伸縮率を考慮して第1引張機構53および第2引張機構55の移動距離を定めることが好ましい。この場合、テンションP1およびP2を付与した後における粘着テープDTの幅方向の長さは、当該伸縮率に応じてMより長くなる。
【0108】
<実施例の構成による効果>
従来の粘着テープ貼付け装置において粘着テープの幅方向にテンションを付与する場合、クランプ部材などで粘着テープの両端における一定の領域を把持する。そして当該把持された領域の全てにわたって均一のテンションが幅方向に付与させる。具体的には
図15(d)に示すように、従来の引張機構101は、粘着テープDTを把持している領域L1および領域L2のいずれも均一の力をかけて引っ張る。
【0109】
そのため、従来の方法では粘着テープが切り抜かれた領域(切除領域)に近い領域と、当該切除領域から遠い領域の各々に対してテンションが均等に付与される。切除領域に近く皺が多い領域L1に作用しているテンションは比較的低く、切除領域から遠く皺が少ない領域L2に作用しているテンションは比較的高い。
【0110】
つまり、従来の引張機構101で粘着テープDTを引っ張った後も、領域L1に作用しているテンションと領域L2に作用しているテンションとの間には大きな差がある。その結果、テンションを幅方向に付与しても粘着テープに発生する皺を確実に除去できないので、切除領域として設定できる部分のピッチが大きくなる。
【0111】
一方、本実施例に係る粘着テープ貼付け装置において、第2テンション機構37は第1引張機構53および第2引張機構55を備えている。そして粘着テープDTのうち、切除領域Cから比較的近い領域L1においては第1引張機構53を用いて比較的大きいテンションP1を幅方向に付与し、切除領域Cから比較的遠い領域L2においては第1引張機構53を用いて比較的小さいテンションP2を幅方向に付与する。すなわち、第1引張機構53による粘着テープDTの拡張力と、第2引張機構55による粘着テープDTの拡張力とを独立して制御する。
【0112】
繰り出し方向Lへ帯状に延びる粘着テープDTのうち、皺Fの発生が比較的多い領域L1においては、第1引張機構53によって比較的大きなテンションP1が付与される。そのため、粘着テープDTは十分に大きな力で幅方向Rの両端側へ引っ張られるので、比較的多く発生していた皺Fは確実に除去される。その結果、領域L1において粘着テープDTの面を確実に平坦にすることができる(
図10(b))。
【0113】
一方、皺Fの発生が比較的少ない領域L2においては、第2引張機構55によって比較的小さいテンションP2が付与される。領域L2において発生している皺Fは少ないので、領域L2において皺Fの除去に要する力の大きさは比較的小さい。そのため領域L2においても皺Fを確実に除去できる。
【0114】
さらに、テンションP1と比べてテンションP2を小さくすることにより、領域L2において、皺Fが除去されたにも関わらず過度に大きなテンションが幅方向に付与され続けるという事態を防止できる。従って、過度に大きなテンションが付与されることに起因して、領域L2において幅方向Rに延びる皺Gが新たに発生するという問題を回避できる(
図15(d)を参照)。
【0115】
このように、本実施例に係る第2テンション機構37を用いて粘着テープDTを幅方向に拡張(矯正)を行った結果、拡張後において粘着テープDTの幅方向に作用するテンションは、第2テンション機構37が把持している領域にわたって、より均一となる。すなわちステップS8の工程を完了することにより、第2テンション機構37が把持している領域のうち、切除領域Cに近い領域L1と切除領域Cから遠い領域L2との各々において、幅方向Rに作用するテンションが略同じとなる。
【0116】
従って、皺が発生し易い領域である、切除領域Cの上流近傍領域であっても第2テンション機構37を用いて粘着テープDTを確実に平坦化できる。その結果、当該上流近傍領域を、次のサイクルにおいてワークへ貼り付けて切り抜く領域として用いることができる。従って、切除領域Cのピッチを短くして粘着テープDTの廃棄量を低減することが可能となる。
【実施例2】
【0117】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1に係る粘着テープ貼付け装置と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分である第2テンション機構の構成について詳述する。
【0118】
実施例1に係る第2テンション機構37は、繰り出し方向Lに並列する独立した複数の引張機構である第1引張機構53と第2引張機構55とを備える。すなわち第2テンション機構37は複数対の把持ユニットを備えている。一方、実施例2に係る第2テンション機構80は、
図12に示すように、粘着テープDTのうち、所定の領域Hを把持する一対の把持ユニット81Aおよび81Bで構成される。把持ユニット81Aおよび81Bは、保持テーブル5を挟んで対向配備されている。把持ユニット81Aおよび81Bは粘着テープDTの幅方向Rの両端をそれぞれ把持し、当該幅方向Rへ所定距離移動する。
【0119】
把持ユニット81Aおよび81Bの各々は、把持部材82と、第1シリンダ83と、第2シリンダ84とを備えている。把持部材82は、所定の領域Hにわたって粘着テープDTの幅方向Rの端部を把持する。
【0120】
第1シリンダ83および第2シリンダ84の各々は、把持部材82に接続されている。第1シリンダ83および第2シリンダ84は粘着テープDTの繰り出し方向Lに並列するように配設されており、第1シリンダ83は第2シリンダ84よりも繰り出し方向Lの下流側に配設されている。第1シリンダ83および第2シリンダ84は、繰り出し方向Lにおける把持部材82の中心線Qを挟んで対称となる位置に配設されることが好ましい。
【0121】
第1シリンダ83には第1モータ86が接続されており、第2シリンダ84には第2モータ87が接続されている。第1シリンダ83は第1モータ86の正逆回転に連動して幅方向Rへ伸縮動作し、第2シリンダ84は第2モータ87の正逆回転に連動して幅方向Rへ伸縮動作する。そして第1シリンダ83および第2シリンダ84の伸縮動作に従って、把持部材82は粘着テープDTを把持した状態で幅方向Rへ移動可能となる。第1モータ86および第2モータ87の各々が回転する量と方向とに応じて、把持部材82が幅方向Rへ移動する距離および方向が決定される。
【0122】
把持部材82が粘着テープDTの所定領域Hを把持した状態で第1シリンダ83および第2シリンダ84を伸縮させることにより、所定領域Hのうち下流側では第1シリンダ83の伸縮量に応じた大きさのテンションP1が幅方向Rに付加される。そして所定領域Hのうち上流側では、第2シリンダ84の伸縮量に応じた大きさのテンションP2が幅方向Rに付加される。
【0123】
本発明の特徴として、制御部40は、第1モータ86の回転と第2モータ87の回転とをそれぞれ独立に制御する。すなわち第1シリンダ83の伸縮動作と第2シリンダ84の伸縮動作も独立制御される。そのため、所定領域Hのうち下流側に付与されるテンションP1の大きさと、所定領域Hのうち上流側に付与されるテンションP2の大きさとを独立して調節できる。
【0124】
実施例2において、把持部材82は、本発明における把持機構に相当する。第1シリンダ83および第1モータ86は、本発明における第1引張部材に相当する。第2シリンダ84および第2モータ87は、本発明における第2引張部材に相当する。
【0125】
実施例2において、粘着テープDTをワーク(リングフレームfおよびウエハW)に貼り付ける工程は、ステップS8を除いて
図3に示す実施例1の工程と共通する。実施例2に係るステップS8では、まず
図13(a)に示すように、把持ユニット81Aおよび81Bの各々を幅方向Rの内側へ適宜移動させる。
【0126】
次に、固定受け片67と可動部68との間に粘着テープDTの幅方向の端部が入り込んだ状態で、制御部40はモータ70を回転させる。モータ70の回転によって、シリンダ69が下方へ伸張し、固定受け片67と可動部68とによって粘着テープDTの端部が把持される(
図9(b)を参照)。
【0127】
モータ70の駆動により、幅方向Rにおける粘着テープDTの両端が、領域L1およびL2を含む所定の領域Hにわたって把持される。このとき、
図13(a)に示すように、把持部材82のうち下流側の部分は、切除領域Cに近い領域L1における粘着テープDTの両端を把持しており、当該下流側の部分には第1シリンダ83が接続されている。一方、把持部材82のうち上流側の部分は、領域L1より上流側の領域L2における粘着テープDTの両端を把持しており、当該上流側の部分には第2シリンダ84が接続されている。
【0128】
把持部材82の各々により粘着テープDTが把持されると、制御部40は第1モータ86および第2モータ87の各々を回転させる。第1モータ86および第2モータ87の各々が回転することにより、
図13(b)に示すように、把持ユニット81Aおよび81Bの把持部材82は、それぞれ幅方向Rにおいて互いに反対方向へ移動する。
【0129】
このとき、制御部40は第1モータ86および第2モータ87の各々を独立して制御する。具体的には、第1モータ86の回転量の方が第2モータ87の回転量よりも大きくなるように制御される。
【0130】
当該制御により、第1シリンダ83の伸縮量は比較的大きいため、把持部材82のうち第1シリンダ83が接続している下流側部分は、幅方向Rへの移動距離が比較的長くなる。一方、第2シリンダ84の伸縮量が比較的小さいため、把持部材82のうち第2シリンダ84が接続している上流側部分は、幅方向Rへの移動距離が比較的短くなる。
【0131】
把持部材82のうち上流側部分の移動距離と下流側部分の移動距離とが異なるよう制御される結果、
図13(b)に示すように、粘着テープDTのうち領域L1および領域L2に対して、それぞれ異なる大きさのテンションが幅方向Rへ付与される。すなわち、把持部材82のうち下流側の部分が把持している領域L1においては、第1シリンダ83の伸縮量の影響をうけて比較的大きなテンションP1が幅方向Rへ付与される。一方、把持部材82のうち上流側の部分が把持している領域L2においては、第2シリンダ84の伸縮量の影響をうけて比較的小さなテンションP2が幅方向Rへ付与される。
【0132】
繰り出し方向Lにおいてそれぞれ異なる領域L1およびL2に対して、それぞれ異なる大きさであるテンションP1およびP2を付与することにより、粘着テープDTに発生していた皺Fは確実に除去され、粘着テープDTは平坦となる。すなわち皺Fが多く発生している領域L1では、より大きいテンションP1が付与されるので、皺Fを確実に除去できる。一方、皺Fの発生が少ない領域L2では比較的小さいテンションP2が付与されるので、皺Fを十分に除去できるとともに、過度なテンションの付与による皺の発生を防止できる。
【0133】
このように、実施例2に係る第2テンション機構では、把持ユニット81Aおよび81Bの各々において、第1シリンダ83および第2シリンダ84を用いて、単一の把持部材82を繰り出し方向Lに並ぶ複数の箇所で引っ張る構成となっている。そして各箇所で引っ張る力を独立に制御することにより、それぞれの箇所で付与されるテンションP1およびP2について、それぞれ異なる大きさとなるように調整する。
【0134】
第2テンション機構80が幅方向へテンションP1およびP2を付与する結果、実施例1と同様に実施例2の構成においても、粘着テープDTは繰り出し方向Lの広い範囲にわたって精度良く平坦化できる。
【0135】
ステップS8の開始前において、領域L1に作用していた幅方向の張力T1と、領域L2に作用する幅方向の張力T2との差は、ステップS8に係るテープの矯正工程によって解消される。すなわち、比較的小さい張力T1にテンションP1が付与され、比較的大きい張力T2にテンションP2が付与される。従って、テンション付与後(ステップS8の完了後)において、粘着テープDTにおける幅方向の張力のばらつきを小さくできる。その結果、切除領域Cの近傍である領域L1およびL2を次のワークに貼り付ける領域として利用できるので、粘着テープDTの廃棄量を低減できる。
【0136】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0137】
(1)実施例1において、第2テンション機構37は粘着テープDTの繰り出し方向Lに並列する2つの独立した引張機構、すなわち第1引張機構53および第2引張機構55を備える構成を例示したが、3つ以上の引張機構を備える構成であってもよい。同様に、実施例2に係る把持部材82には、繰り出し方向Lに並ぶ3つ以上のシリンダが接続され、各々のシリンダが異なる大きさの力で幅方向Rへ引っ張る構成であってもよい。
【0138】
(2)各実施例および各変形例において、幅方向のテンションを付与する対象となる粘着テープDTの例として、半導体ウエハをリングフレームとにわたって支持する支持用粘着テープ(ダイシングテープ)を例に挙げて説明したがこれに限られない。すなわちダイシングテープの他、半導体ウエハの回路面を保護する保護用の粘着テープ(保護テープ)や、保護テープ剥離用の粘着テープなど、長尺状の粘着テープであれば本発明に係る粘着テープ貼付け装置の構成を適用できる。
【0139】
(3)本発明は、粘着テープDTにおいて繰り出し方向Lに並ぶ複数の領域に対して、粘着テープDTの幅方向にそれぞれ異なるテンションを付与できる構成であれば、第2テンション機構の構成は各実施例に限定されることなく、適宜変更してよい。繰り出し方向Lに並ぶ複数の領域L1およびL2の各々に対して、幅方向Rにそれぞれ異なるテンションを付与する構成の他の例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0140】
変形例に係る第2テンション機構90は、
図14(a)に示すように、粘着テープDTのうち、所定の領域Hを把持する一対の把持ユニット90Aおよび90Bで構成される。把持ユニット90Aおよび90Bの各々は、把持部材91とシリンダ92とモータ93とを備えている。把持部材91は、所定の領域Hにわたって粘着テープDTを把持する。シリンダ92は、把持部材91のうち下流寄りの部分に接続されている。シリンダ92はモータ93の回転に従って幅方向Rへ伸縮し、把持部材91を幅方向Rへ移動させる。
【0141】
領域L1はシリンダ92が把持部材91に接続されている部分に比較的近く、領域L2はシリンダ92が把持部材91に接続されている部分から比較的遠い。すなわち、領域L2と比べて領域L1にはシリンダ92の伸縮によって発生する力がより効率良く伝達される。そのため、シリンダ92が伸縮して把持部材91を移動させると、領域L1にはより大きなテンションP1が付与される一方、領域L2に付与されるテンションP2の大きさは比較的小さくなる。
【0142】
このように、分離している複数の把持部材61を繰り出し方向Lに並列させる実施例1の構成や、単一の把持部材82を複数箇所で引っ張る実施例2の構成に限られない。本変形例のように、単一の把持部材91を単一の箇所で引っ張る構成であっても、各実施例と同様に、繰り出し方向Lについてそれぞれ異なるテンションP1およびP2を幅方向Rへ付与できる。
【0143】
他の変形例としては、
図14(b)に示すように、一対の把持ユニット95Aおよび95Bについて、繰り出し方向Lの上流側へと幅方向Rから傾斜している、方向Dに伸縮移動するシリンダ97が把持部材96に接続される構成であってもよい。モータ98の回転に従ってシリンダ97が方向Dに伸縮することによっても、領域L1およびL2に対して、それぞれ異なる大きさのテンションP1およびP2を幅方向に付与できる。シリンダ97およびモータ98は、本発明における傾斜方向引張部材に相当する。
【0144】
各実施例および変形例では、ステップS8において、センサ71を用いて各領域における粘着テープDTの幅方向Rの端部を検知し、領域L1に付与するテンションP1の大きさと、領域L2に付与するテンションP2の大きさとを算出する。これは、領域L1に付与するテンションP1の大きさと、領域L2に付与するテンションP2の大きさとを算出する構成の一例であって、センサ71を用いる構成に限られない。
【0145】
他の一例として、皺Fを確実に除去して粘着テープDTを全体的に平坦化できるような、第1引張機構53および第2引張機構55の各々が幅方向Rへ移動する距離をシミュレーションによって予め求め、当該算出結果に基づいてテンションP1およびP2を算出してもよい。またセンサ71で粘着テープDTの面をモニタし、皺や波打ちが無くなることによってテンションP1およびP2の付与を完了させてもよい。
【0146】
(4)実施例および各変形例において、リングフレームfおよびウエハWをワークとして、当該ワークに粘着テープDTを貼り付ける粘着テープ貼付け装置を例示したが、粘着テープを貼り付ける対象となるワークは、リングフレームfおよびウエハWに限られない。他の例として、ウエハWをワークとしてもよい。すなわち、回路保護用の粘着テープTをウエハの回路面に貼り付けた後、当該粘着テープTを所定の形状(円形など)に切り抜く構成が挙げられる。また、リングフレームfをワークとする構成などにも本発明の構成を適用できる。
【0147】
ここで実施例とはワークが異なる場合の変形例について、図面を用いて説明する。当該変形例において、
図15(a)に示すように、ワークとして位置決め用のノッチNが形成されたウエハWaを用いることとする。なおウエハWaに形成されているノッチNはV字状であるが、ノッチNの形状はV字状に限ることはなく、例えばU字状あってもよい。またウエハWaとしてオリエンテーションフラットが形成されているものを用いてもよいし、各実施例のようにノッチ等が形成されていない円形のウエハWを用いてもよい。
【0148】
ウエハWaをワークとする変形例において各実施例とは異なる構成を、保持テーブル5aおよびテープ切断ユニット9aとして異なる符号を付して
図15(b)に示す。保持テーブル5aはフレーム保持部33が省略されており、ウエハWaを載置するウエハ保持部31aを備えている。ウエハ保持部31aの径は、ウエハWaの径より短くなるように構成されている。
【0149】
テープ切断ユニット9aは、駆動昇降可能な可動台10の下部に、保持テーブル5aの中心上に位置する縦軸心P周りに駆動旋回可能に支持アーム12が装備される。また、この支持アーム12の遊端側に、刃先を下向きにしたカッタ14が装着されている。つまり、本変形例では支持アーム12が縦軸心Pを旋回中心として旋回することにより、カッタ14がウエハWの外周に沿って移動して粘着テープTを切り抜くよう構成されている。
【0150】
ここで(4)に係る変形例において、ワークであるウエハWaに対して粘着テープTを貼り付ける工程を説明する。まずステップS1においてウエハWaがノッチNに基づいて回転方向の位置が決定され、ウエハ保持部31aに載置される。なお、リングフレームfは用いられないので、ステップS2の工程は省略されている。そしてステップS3において、テープ貼付けユニット7を用いて粘着テープTがウエハWaの表面全体にわたって貼り付けられる(
図4(b)を参照)。
【0151】
本変形例に係るステップS4の動作について、
図15(c)に示す。すなわち、上方に待機していたテープ切断ユニット9aが下降され、カッタ14が粘着テープTに突き刺される。カッタ14が粘着テープTに突き刺されると、支持アーム12が縦軸心Pを旋回中心として旋回する。これに伴ってカッタ14がウエハWaの外周縁に沿って旋回移動する。
【0152】
当該旋回移動により、
図15(d)に示すように、粘着テープTは切断軌跡Kに沿って円形に切り抜かれる。このように、粘着テープTをウエハWaに応じた所定の形状に切断することによりステップS4の工程は完了する。ステップS5〜S8の各工程は、各実施例と同様であるので以降の説明は省略する。
【0153】
なお、ワークに応じた所定の形状に粘着テープTを切り抜く構成であれば、粘着テープTの切断軌跡Kは円形に限ることはない。一例として
図15(e)に示すように、切断軌跡KはノッチNの部分に相当する粘着テープTも切断する軌跡、すなわちウエハWaの外形に沿った形状であってもよい。さらに、ワークに応じた所定の形状に粘着テープTを切り抜く構成であれば、保持テーブル5aおよびテープ切断ユニット9aの構成は適宜変更してよい。例えば、カッタ14はウエハWaの外周縁に沿って旋回移動する構成に限られない。
【0154】
すなわち、
図15(f)に示すように、ウエハ保持部31aの径がウエハWaの径より大きい場合、粘着テープTに突き刺されたカッタ14がウエハ保持部31aの外周縁に沿って旋回移動することが好ましい。この場合、粘着テープTはウエハWaに応じて、ウエハWaの径よりやや大きい円形状に切断される。
【0155】
(5)各実施例および各変形例において、ワークは円形状または略円形状に限ることはない。一例として、矩形状や多角形状の基板をワークとして粘着テープTを貼り付ける構成などにも本発明に係る構成を適用できる。
【0156】
(6)各実施例および各変形例において、テンションP1およびテンションP2の大きさを独立に制御する構成として、モータ65を例とする各種モータの回転を独立に制御することにより各々の把持ユニットの位置を独立に調整する構成を例示している。しかし、テンションP1およびテンションP2の大きさを独立して制御する構成であれば、モータで制御する構成に限ることはない。
【0157】
テンションP1およびテンションP2の大きさを独立に制御する構成の他の例としては、シリンダ63の各々を独立して制御する構成が挙げられる。すなわち、切除領域Cに近い領域L1を把持する把持ユニット53Aおよび53Bに設けられるシリンダ63に対しては比較的高い圧力のエアー(一例として0.4MPa程度)を供給することにより、比較的強い力で領域L1を引っ張らせる。一方、領域L2を把持する把持ユニット55Aおよび55Bに設けられるシリンダ63に対しては比較的低い圧力のエアー(一例として0.2MPa程度)を供給することにより、比較的弱い力で領域L2を引っ張らせる。
【0158】
このように、シリンダ63を制御して領域L1が引っ張られる力と領域L2が引っ張られる力とがそれぞれ独立に制御されることによっても、テンションP1とテンションP2の大きさを異ならせることができる。このような構成ではモータ65を例とする各種モータを削除することができる。
【0159】
(7)各実施例および各変形例において、保持テーブル5が昇降移動することによって粘着テープDTの貼付けを行う構成を例示しているが、保持テーブル5が昇降移動可能とする構成に限られない。すなわち他の例として、テープ貼付けユニット7およびテープ剥離ユニット11が昇降移動することによって粘着テープDTの貼付けを行う構成であってもよい。