前記第1電極は、前記複数の前記第1表面領域に交差する方向に延びる第1ベース部と、前記第1ベース部から各前記第1表面領域に沿って延び、各前記第1表面領域に接続された第1延出部とを含み、
前記第2電極は、前記複数の前記第2表面領域に交差する方向に延びる第2ベース部と、前記第2ベース部から各前記第2表面領域に沿って延び、各前記第2表面領域に接続された第2延出部とを含み、
前記第1電極および前記第2電極は、互いに櫛歯状に噛み合っている、請求項9に記載の半導体装置。
第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する第1導電型の半導体層の前記第1面に第2導電型不純物を選択的に注入することによって、前記半導体層の前記第1面に露出する第2ベース領域と、前記半導体層の前記第2ベース領域以外の領域からなる第1ベース領域とを形成する工程と、
前記半導体層を前記第2面から除去することによって、前記半導体層の前記第2面に前記第1ベース領域および前記第2ベース領域を露出させる工程と、
前記第2ベース領域から離れるように、前記第1ベース領域の前記第1面に第2導電型の第1表面領域を形成する工程と、
前記第1ベース領域から離れるように、前記第2ベース領域の前記第1面に第1導電型の第2表面領域を形成する工程と、
前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界に跨るように、前記境界と前記第1表面領域との間の前記第1ベース領域の部分、および前記境界と前記第2表面領域との間の前記第2ベース領域の部分に対向するゲート電極を形成する工程と、
前記第1表面領域に電気的に接続される第1電極を形成する工程と、
前記第2表面領域に電気的に接続される第2電極を形成する工程と、
前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界に跨るように、前記半導体層の前記第2面に第3電極を形成する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなインバータ回路では、上下の素子が同時にオンしないよう、通常、上下の素子のオン/オフが切り替わるタイミングに、上下の素子が両方ともオフになる休止期間(デッドタイム)が設けられる。
しかしながら、デッドタイムの長さを適切に調節することは難しく、デッドタイムが長すぎると電力損失を生じる場合がある。また、一方の素子がオンしている間、他方の素子がオフであるため、オフ耐圧を考慮して素子を設計する必要がある。たとえば、素子の基板を厚くすることでオフ耐圧を向上できるが、背反として、オン抵抗が高くなる。
【0005】
本発明の目的は、デッドタイムの短くでき、オン抵抗を低減することができる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する半導体層と、前記半導体層に形成された第1導電型の第1ベース領域と、前記第1ベース領域に隣接して、前記半導体層に形成された第2導電型の第2ベース領域と、前記第2ベース領域から離れて、前記第1ベース領域に選択的に形成された第2導電型の第1表面領域と、前記第1ベース領域から離れて、前記第2ベース領域に選択的に形成された第1導電型の第2表面領域と、前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界に跨り、前記境界と前記第1表面領域との間の前記第1ベース領域の部分、および前記境界と前記第2表面領域との間の前記第2ベース領域の部分に対向するゲート電極と、前記第1表面領域に電気的に接続された第1電極と、前記第2表面領域に電気的に接続された第2電極と、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域に共通に電気的に接続された第3電極とを含む。
【0007】
たとえば、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である場合を考える。この場合、本発明の各構成は、第1ベース領域→n型ベース領域、第2ベース領域→p型ベース領域、第1表面領域→p型表面領域、第2表面領域→n型表面領域と定義してもよい。これにより、半導体層には、n型ベース領域、p型ベース領域のゲート電極に対向する部分およびn型表面領域を含むnチャネルトランジスタと、p型ベース領域、n型ベース領域のゲート電極に対向する部分およびp型表面領域を含むpチャネルトランジスタとが形成されることとなる。
【0008】
たとえば、第1電極をグランド電位、第2電極を高電位側、第3電極を低電位側として、第2電極および第3電極の間に電源を接続すると、nチャネルトランジスタにおいては、n型表面領域とp型ベース領域との間のpn接合部(寄生ダイオード)に逆バイアスが与えられる。一方、pチャネルトランジスタにおいては、p型表面領域とn型ベース領域との間のpn接合部(寄生ダイオード)に逆バイアスが与えられる。このとき、ゲート電極に対して、nチャネルトランジスタおよびpチャネルトランジスタの閾値電圧よりも低い制御電圧(絶対値)が与えられていると、第1電極−第3電極間および第2電極−第3電極間にはいずれの電流経路も形成されない。
【0009】
この状態から、たとえば、ゲート電極に対して、nチャネルトランジスタの閾値電圧以上の正電圧(Vg>0)が与えられると、p型ベース領域のゲート電極に対向する部分に電子が引き寄せられて反転層(チャネル)が形成される。これにより、n型表面領域とn型ベース領域との間が導通する。すなわち、第2電極から、n型表面領域、反転層、n型ベース領域を順に通って、第3電極に至る電流経路が形成される。すなわち、半導体装置は、オン状態となる。
【0010】
一方、たとえば、ゲート電極に対して、pチャネルトランジスタの閾値電圧以下の負電圧(Vg<0)が与えられると、n型ベース領域のゲート電極に対向する部分に正孔が引き寄せられて反転層(チャネル)が形成される。これにより、p型表面領域とp型ベース領域との間が導通する。すなわち、第3電極から、p型ベース領域、反転層、p型表面領域を順に通って、第1電極に至る電流経路が形成される。すなわち、半導体装置は、オン状態となる。
【0011】
このように、ゲート電極に与える電圧の極性を正負反転させるだけで、nチャネルトランジスタおよびpチャネルトランジスタの切り替えを素早く行うことができるので、nチャネルトランジスタのオンとpチャネルトランジスタのオンと間に生じるデッドタイムを短くすることができる。そのため、半導体層の第1面と第2面との間にオフ電圧がかかる時間を短くできるので、従来に比べて、低い耐圧設計の半導体装置を提供することができる。したがって、半導体層の厚さを薄くできるので、これにより、半導体装置のオン抵抗を低減することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第1表面領域は、前記第1ベース領域の前記第1面に選択的に形成されており、前記第1ベース領域は、前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界と、前記ゲート電極と、前記第1表面領域とで囲まれる第1包囲領域を含み、前記第1包囲領域は、前記第1ベース領域の前記第1包囲領域以外の領域よりも高い不純物濃度を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、トランジスタの反転層が形成される部分の不純物濃度を高くすることによって、反転層が形成されるまでに時間の猶予を設けることができる。これにより、ゲート電圧が正負の境界である0Vを跨ぐ際に、両方のトランジスタがオンすることを防止することができる。
また、第1表面領域と第2ベース領域との距離は、第1包囲領域を挟む部分で比較的短くなる。そのため、第1包囲領域の不純物濃度を高くしておくことで、第1表面領域(第2導電型)−第1ベース領域(第1導電型)−第2ベース領域(第2導電型)で構成される寄生バイポーラトランジスタに過電流が流れる現象(バイポーラアクション)が起きることを抑制することができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第1包囲領域の不純物濃度は、1.0×10
14cm
−3〜1.0×10
16cm
−3であり、前記第1ベース領域の前記第1包囲領域以外の領域の不純物濃度は、1.0×10
13cm
−3〜1.0×10
15cm
−3であってもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第2表面領域は、前記第2ベース領域の前記第1面に選択的に形成されており、前記第2ベース領域は、前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界と、前記ゲート電極と、前記第2表面領域とで囲まれる第2包囲領域を含み、前記第2包囲領域は、前記第2ベース領域の前記第2包囲領域以外の領域よりも高い不純物濃度を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、トランジスタの反転層が形成される部分の不純物濃度を高くすることによって、反転層が形成されるまでに時間の猶予を設けることができる。これにより、ゲート電圧が正負の境界である0Vを跨ぐ際に、両方のトランジスタがオンすることを防止することができる。
また、第2表面領域と第1ベース領域との距離は、第2包囲領域を挟む部分で比較的短くなる。そのため、第2包囲領域の不純物濃度を高くしておくことで、第2表面領域(第1導電型)−第2ベース領域(第2導電型)−第1ベース領域(第1導電型)で構成される寄生バイポーラトランジスタに過電流が流れる現象(バイポーラアクション)が起きることを抑制することができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第2包囲領域の不純物濃度は、1.0×10
14cm
−3〜1.0×10
16cm
−3であり、前記第2ベース領域の前記第2包囲領域以外の領域の不純物濃度は、1.0×10
13cm
−3〜1.0×10
15cm
−3であってもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第1ベース領域および前記第2ベース領域は、共に前記半導体層の前記第2面に露出するように形成され、前記第3電極は、前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界に跨るように、前記半導体層の前記第2面に形成されていてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記ゲート電極は、プレーナゲート構造のゲート電極を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記ゲート電極は、トレンチゲート構造のゲート電極を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、複数の前記第1表面領域および複数の前記第2表面領域が交互に配置されたストライプ構造を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第1電極は、前記複数の前記第1表面領域に交差する方向に延びる第1ベース部と、前記第1ベース部から各前記第1表面領域に沿って延び、各前記第1表面領域に接続された第1延出部とを含み、前記第2電極は、前記複数の前記第2表面領域に交差する方向に延びる第2ベース部と、前記第2ベース部から各前記第2表面領域に沿って延び、各前記第2表面領域に接続された第2延出部とを含み、前記第1電極および前記第2電極は、互いに櫛歯状に噛み合っていてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記半導体層は、3μm〜50μmの厚さを有していてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体パッケージは、前記半導体装置と、前記第1電極に電気的に接続された第1端子と、前記第2電極に電気的に接続された第2端子と、前記第3電極に電気的に接続された第3端子と、前記第ゲート電極に電気的に接続された第4端子と、前記半導体装置および前記第1〜第4端子を封止する樹脂パッケージとを含む。
【0020】
この構成によれば、前記半導体装置を備えているので、たとえば、インバータ回路において、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを交互にオン/オフできる素子を1パッケージで実現することができる。
本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する第1導電型の半導体層の前記第1面に第2導電型不純物を選択的に注入することによって、前記半導体層の前記第1面に露出する第2ベース領域と、前記半導体層の前記第2ベース領域以外の領域からなる第1ベース領域とを形成する工程と、前記半導体層を前記第2面から除去することによって、前記半導体層の前記第2面に前記第1ベース領域および前記第2ベース領域を露出させる工程と、前記第2ベース領域から離れるように、前記第1ベース領域の前記第1面に第2導電型の第1表面領域を形成する工程と、前記第1ベース領域から離れるように、前記第2ベース領域の前記第1面に第1導電型の第2表面領域を形成する工程と、前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界に跨るように、前記境界と前記第1表面領域との間の前記第1ベース領域の部分、および前記境界と前記第2表面領域との間の前記第2ベース領域の部分に対向するゲート電極を形成する工程と、前記第1表面領域に電気的に接続される第1電極を形成する工程と、前記第2表面領域に電気的に接続される第2電極を形成する工程と、前記第1ベース領域と前記第2ベース領域との境界に跨るように、前記半導体層の前記第2面に第3電極を形成する工程とを含む。
【0021】
この方法によって、前記半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体パッケージ1の模式的な全体図である。なお、
図1では、半導体パッケージ1の内部を透視して示している。
半導体パッケージ1は、端子フレーム2と、半導体装置3(半導体チップ)と、樹脂パッケージ4とを含む。
【0024】
端子フレーム2は、金属製の板状に形成されている。端子フレーム2は、四角形状を有し、半導体装置3を支持するベース部5と、当該ベース部5と一体的に形成された第3端子6と、ベース部5に対して離間して形成された第1端子7、第2端子8および第4端子9とを含む。
第1端子7、第2端子8および第4端子9は、それぞれ一端および他端を有する平面視直線状に形成され、第1端子7、第2端子8、第3端子6および第4端子9の順に互いに平行に並べて配置されている。これらの端子6〜9のうち、ベース部5と一体的な第3端子6の一端のみが、ベース部5に接続されている。残りの端子7〜9のうち、第4端子9は、その一端が、第3端子6の接続位置と隣り合うベース部5の一の角部に対向するように配置されている。第1端子7は、ベース部5の他の角部に対向するように配置されている。第2端子8は、第1端子7と第3端子6との間に配置されている。
【0025】
半導体装置3は、第1電極膜10と、第2電極膜11と、ゲート電極膜12とを含む。第1電極膜10、第2電極膜11およびゲート電極膜12は、アルミニウムその他の金属からなる。
第1電極膜10および第2電極膜11は、それぞれ、互いに平行に延びる直線状の第1ベース部13および第2ベース部14を含む。第1ベース部13からは、直線状の複数の第1延出部15が、第2ベース部14へ向かって、互いに平行に延びている。第2ベース部14からは、直線状の複数の第2延出部16が、第1ベース部13へ向かって、隣り合う第1延出部15の各間の領域に延びている。第1延出部15および第2延出部16は、互いに並列に交互に配列され、これにより、第1電極膜10および第2電極膜11は、互いに櫛歯状に噛み合っている。
【0026】
ゲート電極膜12は、ゲートパッド17と、ゲートフィンガー18とを含む。
ゲートパッド17は、四角形状に形成され、半導体装置3の一つの側面の近傍に配置されている。ゲートフィンガー18は、第1電極膜10および第2電極膜11を取り囲むように、ゲートパッド17から半導体装置3の側面に沿って四角環状に形成されている。
第1電極膜10の第1ベース部13と第1端子7とは、第1ワイヤ19によって電気的に接続されている。第2電極膜11の第2ベース部14と第2端子8とは、第2ワイヤ20によって電気的に接続されている。ゲート電極膜12のゲートパッド17と第4端子9とは、第4ワイヤ21によって電気的に接続されている。第1ワイヤ19、第2ワイヤ20および第4ワイヤ21は、たとえば、Auワイヤ、Cuワイヤ等の公知のボンディングワイヤで構成されていてもよい。また、第1ワイヤ19、第2ワイヤ20および第4ワイヤ21は、それぞれ、1本だけであってもよいし、複数本であってもよい。
【0027】
なお、
図1では示していないが、後述する第3電極43は、半田等の接合材によって、ベース部5(第3端子6)に電気的に接続されている。
樹脂パッケージ4は、半導体パッケージ1の外形をなし、略直方体状に形成されている。樹脂パッケージ4は、たとえば、エポキシ樹脂など公知のモールド樹脂からなり、半導体装置3とともに端子フレーム2のベース部5、第1ワイヤ19、第2ワイヤ20および第4ワイヤ21を覆い、4本の端子(第1端子7、第2端子8、第3端子6および第4端子9)を露出させるように、半導体装置3を封止している。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置3の模式的な断面図である。
半導体装置3は、第1面22および第1面22の反対側の第2面23を有する半導体層24を含む。半導体層24は、たとえば、Si基板からなっていてもよいし、SiC基板、GaN基板等の他の半導体基板からなっていてもよい。また、半導体層24の第1面22および第2面23は、それぞれ、半導体装置3の端子フレーム2への実装状態から(
図1参照)、半導体層24の表面および裏面と称してもよい。また、半導体層24の厚さは、たとえば、3μm〜50μmであってもよい。
【0029】
半導体層24には、本発明の第1ベース領域の一例としてのn
−型ベース領域25と、本発明の第2ベース領域の一例としてのp
−型ベース領域26とが形成されている。n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26は、半導体層24の第1面22から第2面23に至るように形成されており、第1面22および第2面23の両方において露出している。また、n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26は、互いに接するように隣接して配置されている。この実施形態では、複数のn
−型ベース領域25および複数のp
−型ベース領域26が、交互に隣接されて配列されることによって、ストライプ構造を形成している。
【0030】
なお、n
−型ベース領域25に含まれるn型不純物としては、P(リン)、As(ヒ素)、SB(アンチモン)等を適用できる。また、p
−型ベース領域26に含まれるp型不純物としては、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)等を適用できる。以下に示す、n型およびp型の半導体層(半導体領域)に含まれる不純物についても、同様のものを適用できる。
【0031】
各n
−型ベース領域25の表面部(第1面22)には、本発明の第1表面領域の一例としてのp
+型表面領域27が形成されている。p
+型表面領域27は、n
−型ベース領域25とp
−型ベース領域26との境界29(ストライプの両側の境界)から所定距離だけ内側に位置するようにn
−型ベース領域25内に形成されている。これにより、n
−型ベース領域25およびp
+型表面領域27を含む半導体層24の表面部において、p
+型表面領域27とp
−型ベース領域26との間には、n
−型ベース領域25の表面部が介在し、この介在している表面部が第1チャネル領域30を提供する。したがって、n
−型ベース領域25には、n
−型の第1チャネル領域30にp型の反転層が形成されることにより動作するpチャネルトランジスタ32が形成されている。
【0032】
一方、各p
−型ベース領域26の表面部(第1面22)には、本発明の第2表面領域の一例としてのn
+型表面領域28が形成されている。n
+型表面領域28は、n
−型ベース領域25とp
−型ベース領域26との境界29(ストライプの両側の境界)から所定距離だけ内側に位置するようにp
−型ベース領域26内に形成されている。これにより、p
−型ベース領域26およびn
+型表面領域28を含む半導体層24の表面部において、n
+型表面領域28とn
−型ベース領域25との間には、p
−型ベース領域26の表面部が介在し、この介在している表面部が第2チャネル領域31を提供する。したがって、p
−型ベース領域26には、p
−型の第2チャネル領域31にn型の反転層が形成されることにより動作するnチャネルトランジスタ33が形成されている。
【0033】
この実施形態では、複数のp
+型表面領域27およびn
+型表面領域28は、それぞれ、第1電極膜10の第1延出部15および第2電極膜11の第2延出部16の直下に配置され、全体として、互いに交互に配列されたストライプ構造を形成している。第1チャネル領域30および第2チャネル領域31は、p
+型表面領域27およびn
+型表面領域28の形状に応じて、ストライプ構造を形成している。
【0034】
また、この実施形態では、p
+型表面領域27およびn
+型表面領域28は、互いに同じ深さであってもよいし、異なる深さであってもよい。p
+型表面領域27の深さは、たとえば、1μm〜5μmであり、n
+型表面領域28の深さは、たとえば、1μm〜5μmである。
半導体層24の第1面22には、ゲート絶縁膜34が形成されている。ゲート絶縁膜34は、pチャネルトランジスタ32とnチャネルトランジスタ33との間に跨って、少なくとも第1チャネル領域30におけるn
−型ベース領域25および第2チャネル領域31におけるp
−型ベース領域26の表面を覆うように形成されている。この実施形態では、ゲート絶縁膜34は、p
+型表面領域27の一部、第1チャネル領域30、第2チャネル領域31およびn
+型表面領域28の一部の表面を覆うように形成されている。つまり、ゲート絶縁膜34は、互いに隣接してpn接合を形成している第1チャネル領域30および第2チャネル領域31に共通のゲート絶縁膜として形成されている。
【0035】
ゲート絶縁膜34は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、ハフニウム酸化膜、アルミナ膜、タンタル酸化膜等からなっていてもよい。また、ゲート絶縁膜34の厚さは、たとえば、100Å〜10000Åであってもよい。
ゲート絶縁膜34上には、ゲート電極35が形成されている。ゲート電極35は、ゲート絶縁膜34を介して第1チャネル領域30および第2チャネル領域31に対向するように形成されている。ゲート電極35は、たとえば、不純物を注入して低抵抗化したポリシリコンからなっていてもよい。
【0036】
ゲート電極35は、ゲート絶縁膜34とほぼ同じパターンに形成されており、ゲート絶縁膜34の表面を覆っている。より具体的には、p
+型表面領域27の一部、第1チャネル領域30、第2チャネル領域31およびn
+型表面領域28の一部の表面の上方に配置されている。つまり、ゲート電極35は、pチャネルトランジスタ32とnチャネルトランジスタ33を共通に制御するように形成されている。これにより、プレーナゲート構造が構成されている。
【0037】
半導体層24の不純物濃度に関して、p
+型表面領域27の不純物濃度は、p
−型ベース領域26の不純物濃度よりも高く、たとえば、1.0×10
17cm
−3〜1.0×10
19cm
−3であってもよい。また、n
+型表面領域28の不純物濃度は、n
−型ベース領域25の不純物濃度よりも高く、たとえば、1.0×10
17cm
−3〜1.0×10
19cm
−3であってもよい。
【0038】
また、n
−型ベース領域25は、互いに不純物濃度が異なる領域を有していてもよい。この実施形態では、n
−型ベース領域25とp
−型ベース領域26との境界29とゲート電極35と、p
+型表面領域27とで区画されたn型包囲領域36を含み、相対的に高い不純物濃度を有していてもよい。この実施形態では、
図2の破線44で示すp
+型表面領域27の底部の深さ位置に対して半導体層24の第1面22側の領域(つまり、p
+型表面領域27の底部よりも浅い領域)が、n型包囲領域36である。一方、n型包囲領域36以外の、p
+型表面領域27の底部よりも深い領域は、n
−型領域37であってもよい。
【0039】
たとえば、n
−型領域37の不純物濃度は、n
−型ベース領域25の不純物濃度が維持された濃度であり、たとえば、1.0×10
13cm
−3〜1.0×10
15cm
−3である。一方、n型包囲領域36の不純物濃度は、n
−型領域37の不純物濃度よりも高く、たとえば、1.0×10
14cm
−3〜1.0×10
16cm
−3であってもよい。
p
−型ベース領域26は、互いに不純物濃度が異なる領域を有していてもよい。この実施形態では、p
−型ベース領域26とn
−型ベース領域25との境界29とゲート電極35と、n
+型表面領域28とで区画されたp型包囲領域38を含み、相対的に高い不純物濃度を有していてもよい。この実施形態では、
図2の破線45で示すn
+型表面領域28の底部の深さ位置に対して半導体層24の第1面22側の領域(つまり、n
+型表面領域28の底部よりも浅い領域)が、p型包囲領域38である。一方、p型包囲領域38以外の、n
+型表面領域28の底部よりも深い領域は、p
−型領域39であってもよい。
【0040】
たとえば、p
−型領域39の不純物濃度は、p
−型ベース領域26の不純物濃度が維持された濃度であり、たとえば、1.0×10
13cm
−3〜1.0×10
15cm
−3である。一方、p型包囲領域38の不純物濃度は、p
−型領域39の不純物濃度よりも高く、たとえば、1.0×10
14cm
−3〜1.0×10
16cm
−3であってもよい。
半導体層24上には、ゲート電極35を覆うように、層間絶縁膜40が形成されている。層間絶縁膜40は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、TEOS(テトラエトキシシラン)等の絶縁材料からなる。
【0041】
層間絶縁膜40には、pチャネルトランジスタ32のp
+型表面領域27を露出させるコンタクト孔41、およびnチャネルトランジスタ33のn
+型表面領域28を露出させるコンタクト孔42が形成されている。コンタクト孔41,42は、層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜34を貫通して形成されている。
第1電極膜10は、層間絶縁膜40の表面を選択的に覆い、かつコンタクト孔41に埋め込まれるように形成されている。この実施形態では、第1電極膜10の第1延出部15がp
+型表面領域27に沿って形成され、コンタクト孔41内でp
+型表面領域27にオーミック接続されている。
【0042】
第2電極膜11は、層間絶縁膜40の表面を選択的に覆い、かつコンタクト孔42に埋め込まれるように形成されている。この実施形態では、第2電極膜11の第2延出部16がn
+型表面領域28に沿って形成され、コンタクト孔42内でn
+型表面領域28にオーミック接続されている。
また、図示はしないが、ゲート電極膜12は、たとえば、ゲート電極35のストライプの両端部において、ゲートフィンガー18によってオーミック接続されていてもよい。
【0043】
半導体層24の第2面23には、第3電極43が形成されている。第3電極43は、アルミニウムその他の金属からなる。第3電極43は、境界29に跨るように半導体層24の第2面23に接している。これにより、第3電極43は、複数のn
−型ベース領域25および複数のp
−型ベース領域26に並列にオーミック接続されており、複数のpチャネルトランジスタ32および複数のnチャネルトランジスタ33の両方に電流が流れるように構成されている。
【0044】
次に、半導体装置3の製造方法について説明する。
図3A〜
図3Gは、半導体装置3の製造工程を工程順に示す図である。
半導体装置3を製造するには、たとえば、
図3Aを参照して、n
−型の半導体層24のnチャネルトランジスタ33の形成領域の第1面22にp型不純物が選択的に注入される。その後、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことによって、p
−型ベース領域26が形成される。n
−型の半導体層24のp
−型ベース領域26以外の領域は、n
−型ベース領域25として形成される。この状態では、p
−型ベース領域26は、半導体層24の表面部に選択的に形成されており、p
−型ベース領域26と半導体層24の第2面23との間には、n
−型ベース領域25が広がっている。つまり、半導体層24の第2面23は、全体がn
−型ベース領域25で構成されている。
【0045】
次に、
図3Bを参照して、半導体層24を第2面23から除去(たとえば、研削、研磨等)することによって薄化させる。この薄化は、半導体層24の第2面23にp
−型ベース領域26が露出するまで行われる。これにより、p
−型ベース領域26に対して半導体層24の第2面23側のn
−型ベース領域25が除去され、半導体層24には、ストライプ状のn
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26が形成される。
【0046】
次に、
図3Cを参照して、pチャネルトランジスタ32の形成領域の第1面22に、p型不純物が選択的に注入される。また、nチャネルトランジスタ33の形成領域の第1面22に、n型不純物が選択的に注入される。その後、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことによって、p
+型表面領域27およびn
+型表面領域28が形成される。この後、必要に応じて、n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26に、それぞれ、n型不純物およびp型不純物をさらに注入することによって、n型包囲領域36およびp型包囲領域38を形成してもよい。
【0047】
次に、
図3Dを参照して、半導体層24上に、ゲート絶縁膜34が形成される。ゲート絶縁膜34は、半導体結晶表面の熱酸化によって形成されてもよい。
次に、
図3Eを参照して、半導体層24上に、不純物を添加しながらゲート電極35の材料(この実施形態では、ポリシリコン)を堆積し、その後、堆積したポリシリコン層をパターニングする。これにより、ゲート電極35が形成される。
【0048】
次に、
図3Fを参照して、ゲート電極35を覆うように、層間絶縁膜40が形成され、この層間絶縁膜40に、フォトリソグラフィによって、コンタクト孔41,42が形成される。
次に、
図3Gを参照して、層間絶縁膜40上に、表面メタルとして、第1電極膜10、第2電極膜11およびゲート電極膜12(図示せず)が形成される。この後、半導体層24の第2面23に第3電極43が形成されることによって、前述の半導体装置3を得ることができる。
【0049】
図4Aおよび
図4B、ならびに
図5Aおよび
図5Bは、
図2の半導体装置の動作モードを説明するための図である。
図4Aおよび
図4Bが、ゲート電極35に正電圧を与えたときの動作を示し、
図5Aおよび
図5Bが、ゲート電極35bに負電圧を与えたときの動作を示す。
たとえば、第1電極膜10をグランド電位、第2電極膜11を高電位側、第3電極43を低電位側として、第2電極膜11および第3電極43の間に電源を接続すると、nチャネルトランジスタ33においては、n
+型表面領域28とp
−型ベース領域26との間のpn接合部(寄生ダイオード)に逆バイアスが与えられる。一方、pチャネルトランジスタ32においては、p
+型表面領域27とn
−型ベース領域25との間のpn接合部(寄生ダイオード)に逆バイアスが与えられる。このとき、ゲート電極35に対して、nチャネルトランジスタ33およびpチャネルトランジスタ32の閾値電圧よりも低い制御電圧(絶対値)が与えられていると、第1電極膜10−第3電極43間および第2電極膜11−第3電極43間にはいずれの電流経路も形成されない。
【0050】
この状態から、たとえば、ゲート電極35に対して、nチャネルトランジスタ33の閾値電圧以上の正電圧(Vg>0)が与えられると、
図4Aおよび
図4Bを参照して、第2チャネル領域31に電子が引き寄せられて反転層(チャネル)が形成される。これにより、n
+型表面領域28とn
−型ベース領域25との間が導通する。すなわち、第2電極膜11から、n
+型表面領域28、反転層(第2チャネル領域31)、n
−型ベース領域25を順に通って、第3電極43に至る電流経路が形成される。すなわち、半導体装置3は、オン状態となる。
【0051】
一方、たとえば、ゲート電極35に対して、pチャネルトランジスタ32の閾値電圧以下の負電圧(Vg<0)が与えられると、第1チャネル領域30に正孔が引き寄せられて反転層(チャネル)が形成される。これにより、p
+型表面領域27とp
−型ベース領域26との間が導通する。すなわち、第3電極43から、p
−型ベース領域26、反転層(第1チャネル領域309、p
+型表面領域27を順に通って、第1電極膜10に至る電流経路が形成される。すなわち、半導体装置3は、オン状態となる。
【0052】
このように、ゲート電極35に与える電圧の極性を正負反転させるだけで、nチャネルトランジスタ33およびpチャネルトランジスタ32の切り替えを素早く行うことができるので、nチャネルトランジスタ33のオンとpチャネルトランジスタ32のオンと間に生じるデッドタイムを短くすることができる。そのため、半導体層24の第1面22と第2面23との間にオフ電圧がかかる時間を短くできるので、従来に比べて、低い耐圧設計の半導体装置を提供することができる。したがって、半導体層24の厚さを薄くできるので、これにより、半導体装置3のオン抵抗を低減することができる。
【0053】
そして、このような半導体装置3を備える半導体パッケージ1では、たとえば、インバータ回路において、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを交互にオン/オフできる素子を4端子1パッケージで実現することができる。
また、この半導体装置3によれば、n型包囲領域36およびp型包囲領域38の不純物濃度が、それぞれ、n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26において、選択的に高くなっている。これにより、第1チャネル領域30および第2チャネル領域31の不純物濃度が高くなっている。これにより、第1チャネル領域30および第2チャネル領域31に反転層が形成されるまでに時間の猶予を設けることができる。したがって、ゲート電圧が正負の境界である0Vを跨ぐ際に、両方のpチャネルトランジスタ32およびnチャネルトランジスタ33がオンすることを防止することができる。
【0054】
また、第1表面領域と第2ベース領域との距離は、第1包囲領域を挟む部分で比較的短くなる。そのため、第1包囲領域の不純物濃度を高くしておくことで、第1表面領域(第2導電型)−第1ベース領域(第1導電型)−第2ベース領域(第2導電型)で構成される寄生バイポーラトランジスタに過電流が流れる現象(バイポーラアクション)が起きることを抑制することができる。
【0055】
また、n
+型表面領域28とn
−型ベース領域25との距離は、p型包囲領域38を挟む部分で比較的短くなり、p
+型表面領域27とp
−型ベース領域26との距離は、n型包囲領域36を挟む部分で比較的短くなる。そのため、n型包囲領域36およびp型包囲領域38の不純物濃度を高くしておくことで、n
+型表面領域28−p
−型ベース領域26−n
−型ベース領域25で構成される寄生バイポーラトランジスタ(npnトランジスタ)およびp
+型表面領域27−n
−型ベース領域25−p
−型ベース領域26で構成される寄生バイポーラトランジスタ(pnpトランジスタ)に過電流が流れる現象(バイポーラアクション)が起きることを抑制することができる。
【0056】
次に、ゲート電圧の大きさによって半導体装置3の電流の流れがどのように変わるかをシミュレーションに示す。
図6〜
図8は、
図2の半導体装置3の電流の流れを示すシミュレーション結果である。
図6がゲート電圧と第3電極43に流れる電流との関係を示し、
図7がゲート電圧と第2電極膜11に流れる電流との関係を示し、
図8がゲート電圧と第1電極膜10に流れる電流との関係を示す。
【0057】
シミュレーションでは、第1電極膜10をグランド電位(0V)、第2電極膜11を2V、第3電極43を1Vで固定し、正負のゲート電圧を与えた。
まず、
図6から明らかなように、ゲート電圧が負の値では(Vg<0)、
図5Aおよび
図5Bで示したように、第3電極43からpチャネルトランジスタ32へ流入する方向(正の方向)に電流が流れていた。一方、ゲート電圧が正の値では(Vg>0)、
図4Aおよび
図4Bで示したように、nチャネルトランジスタ33から第3電極43へ流出する方向(負の方向)に電流が流れていた。これにより、一つの半導体装置3において、ゲート電圧の正負の反転によって電流の正負の切り替えを行うことができることが証明された。
【0058】
また、
図7を参照して、ゲート電圧が正の値(Vg>0)のときに第3電極43に流れていた電流は、第2電極膜11から流れてきたものであり、
図8を参照して、ゲート電圧が負の値(Vg<0)のときに第3電極43に流れていた電流は、第1電極膜10へ向かったものであることが証明された。これにより、ゲート電圧の正負が切り替わるタイミングにおいて、pチャネルトランジスタ32およびnチャネルトランジスタ33の両方が同時にオンされていないことが確認できた。
【0059】
次に、半導体装置3のスイッチング波形を、ダブルパルス試験によって確認した。より具体的には、
図9に示すハーフブリッジ回路を構成して行った。試験では、直流電源46として、100V、2Aの直流電源を使用し、空芯インダクタ47として、L=1mHのものを使用した。そして、パルス電源48から、30Vの電圧を、パルス幅5μs、パルス−パルス間時間5μsで出力して、pチャネルトランジスタ32およびnチャネルトランジスタ33のゲートに電圧を供給して試験を行った。その結果、直流電流が交流電流に変換されていることを確認できた。
【0060】
図10は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置51の模式的な断面図である。
図10において、前述の
図2との間で互いに対応する要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
半導体装置51では、半導体層24にゲートトレンチ52が形成されている。ゲートトレンチ52は、n
−型ベース領域25とp
−型ベース領域26との境界29に跨るように、半導体層24の第1面22から第2面23に向かって、半導体層24の厚さ方向途中部まで形成されている。境界29は、ゲートトレンチ52の底部から半導体層24の第2面23まで延びている。
【0061】
これにより、ゲートトレンチ52の互いに対向する側面53の一方側には、半導体層24の第1面22から順に、p
+型表面領域27およびn
−型ベース領域25が露出している。一方、ゲートトレンチ52の互いに対向する側面53の他方側には、半導体層24の第1面22から順に、n
+型表面領域28およびp
−型ベース領域25が露出している。つまり、p
+型表面領域27およびn
+型表面領域28がゲートトレンチ52を隔てて対向しており、その下方で、n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26がゲートトレンチ52を隔てて対向している。p
+型表面領域27およびn
+型表面領域28は、半導体層24の第1面22に露出しており、n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26は、ゲートトレンチ52の底部を形成する。
【0062】
この半導体装置51では、n
−型ベース領域25において、p
+型表面領域27とn
−型ベース領域25との境界54から、ゲートトレンチ52の側面53に沿ってゲートトレンチ52の底部にある境界29までの領域が、第1チャネル領域30を定義している。この第1チャネル領域30を含むゲートトレンチ52の内面に沿う領域は、前述のn型包囲領域36と同様に、選択的に高い不純物濃度を有する領域であってもよい。
【0063】
また、p
−型ベース領域26において、n
+型表面領域28とp
−型ベース領域26との境界55から、ゲートトレンチ52の側面53に沿ってゲートトレンチ52の底部にある境界29までの領域が、第2チャネル領域31を定義している。この第2チャネル領域31を含むゲートトレンチ52の内面に沿う領域は、前述のp型包囲領域38と同様に、選択的に高い不純物濃度を有する領域であってもよい。
【0064】
ゲートトレンチ52には、ゲート絶縁膜56を介して、ゲート電極57が埋め込まれている。ゲート電極57は、ゲートトレンチ52に露出するp
+型表面領域27、第1チャネル領域30、第2チャネル領域31およびn
+型表面領域28に対向している。つまり、ゲート電極57は、pチャネルトランジスタ32とnチャネルトランジスタ33を共通に制御するように形成されている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。
【0065】
この半導体装置51においても、ゲート電極57に与える電圧の極性を正負反転させるだけで、nチャネルトランジスタ33およびpチャネルトランジスタ32の切り替えを素早く行うことができるので、nチャネルトランジスタ33のオンとpチャネルトランジスタ32のオンと間に生じるデッドタイムを短くすることができる。そのため、半導体層24の第1面22と第2面23との間にオフ電圧がかかる時間を短くできるので、従来に比べて、低い耐圧設計の半導体装置を提供することができる。したがって、半導体層24の厚さを薄くできるので、これにより、半導体装置51のオン抵抗を低減することができる。さらに、ゲート構造がトレンチゲート構造であるため、素子の微細化を図ることもできる。
【0066】
次に、半導体装置51の製造方法について説明する。
図11A〜
図11Hは、半導体装置51の製造工程を工程順に示す図である。
半導体装置51を製造するには、たとえば、
図11Aを参照して、n
−型の半導体層24のnチャネルトランジスタ33の形成領域の第1面22にp型不純物が選択的に注入される。その後、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことによって、p
−型ベース領域26が形成される。n
−型の半導体層24のp
−型ベース領域26以外の領域は、n
−型ベース領域25として形成される。この状態では、p
−型ベース領域26は、半導体層24の表面部に選択的に形成されており、p
−型ベース領域26と半導体層24の第2面23との間には、n
−型ベース領域25が広がっている。つまり、半導体層24の第2面23は、全体がn
−型ベース領域25で構成されている。
【0067】
次に、
図11Bを参照して、半導体層24を第2面23から除去(たとえば、研削、研磨等)することによって薄化させる。この薄化は、半導体層24の第2面23にp
−型ベース領域26が露出するまで行われる。これにより、p
−型ベース領域26に対して半導体層24の第2面23側のn
−型ベース領域25が除去され、半導体層24には、ストライプ状のn
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26が形成される。
【0068】
次に、
図11Cに示すように、半導体層24が第1面22から選択的に除去されることによって、ゲートトレンチ52が形成される。除去方法は、たとえば、ドライエッチングであってもよい。なお、n
−型ベース領域25およびp
−型ベース領域26のゲートトレンチ52の内面に沿う領域の不純物濃度を選択的に高くする場合には、ゲートトレンチ52の形成後、当該領域に、それぞれ、n型不純物およびp型不純物をさらに注入すればよい。
【0069】
次に、
図11Dを参照して、ゲートトレンチ52の内面に、ゲート絶縁膜56が形成される。ゲート絶縁膜56は、半導体結晶表面の熱酸化によって形成されてもよい。
次に、
図11Eを参照して、半導体層24上に、不純物を添加しながらゲート電極57の材料(この実施形態では、ポリシリコン)を堆積し、その後、堆積したポリシリコン層をエッチバックする。これにより、ゲートトレンチ52にゲート電極57が埋め込まれる。
【0070】
次に、
図11Fを参照して、pチャネルトランジスタ32の形成領域の第1面22に、p型不純物が選択的に注入される。また、nチャネルトランジスタ33の形成領域の第1面22に、n型不純物が選択的に注入される。その後、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことによって、p
+型表面領域27およびn+型表面領域28が形成される。
【0071】
次に、
図11Gを参照して、ゲート電極57を覆うように、層間絶縁膜40が形成され、この層間絶縁膜40に、フォトリソグラフィによって、コンタクト孔41,42が形成される。
次に、
図11Hを参照して、層間絶縁膜40上に、表面メタルとして、第1電極膜10、第2電極膜11およびゲート電極膜12(図示せず)が形成される。この後、半導体層24の第2面23に第3電極43が形成されることによって、前述の半導体装置51を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、半導体装置3,51の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、半導体装置3,51において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。