【解決手段】積層体10の製造方法は、積層鉄心1を形成するための主体部40と、積層鉄心1の形成過程で主体部40から除去される仮止代50と、を有する第一の打抜部材20の素材となる帯状鋼板70において、仮止代50と主体部40との境界21に段差S1を形成することと、段差S1を有する第一の打抜部材20を帯状鋼板70から打ち抜くことと、段差S1同士の嵌合によって第一の打抜部材20同士が仮止めされるように、第一の打抜部材20を積層することと、を含む。
積層鉄心を形成するための主体部と、前記積層鉄心の形成過程で前記主体部から除去される仮止代と、を有する第一の打抜部材の素材となる鋼板において、前記仮止代と前記主体部との境界に段差を形成することと、
前記段差を有する前記第一の打抜部材を前記鋼板から打ち抜くことと、
前記段差同士の嵌合によって前記第一の打抜部材同士が仮止めされるように、前記第一の打抜部材を積層することと、を含む、積層体の製造方法。
前記主体部に接触する面と前記仮止代に接触する面との間に段差を有する金型によって前記仮止代と前記主体部とを前記鋼板の厚さ方向に圧縮する、請求項3に記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔積層体〕
本実施形態に係る積層体は、モータ用の積層鉄心の製造過程における中間生成物である。積層鉄心の構成について説明する。
図1に示す積層鉄心1は、モータのステータ(固定子)用のコアである。積層鉄心1は、円環状のヨーク2と、ヨーク2の内周面から突出した複数のティース3と、を備える。複数のティース3は、ヨーク2の円周方向に沿って等間隔に並んでいる。
図1に示すように、積層鉄心1は、互いに積層された複数の電磁鋼板4によって形成されている。複数の電磁鋼板4は、互いに同じ寸法形状である。
【0010】
図2に示すように、積層体10は、複数の第一の打抜部材20と、少なくとも一枚の第二の打抜部材30とを有する。複数の第一の打抜部材20は、互いに積層されている。第二の打抜部材30は、積層体10の最外層において第一の打抜部材20に更に積層されている。本実施形態において、第二の打抜部材30は積層体10の最下層に位置している。
【0011】
図3に示すように、第一の打抜部材20は、主面22,23を有する板状部材であり、主体部40と、少なくとも一つの仮止代50とを有する。本実施形態において、第一の打抜部材20は例えば4つの仮止代50を有している。なお、仮止代50の数は適宜変更可能である。
【0012】
主体部40は、積層鉄心1を形成するための部分である。より具体的に、主体部40は、積層鉄心1における電磁鋼板4を構成する。主体部40は、環状部41と、環状部41から内側に張り出した複数の張出部42と、を有する。複数の張出部42は、例えば、環状部41の周方向に沿って等間隔に並んでいる。なお、複数の張出部42が並ぶ間隔は等間隔でなくてもよい。環状部41は、積層鉄心1におけるヨーク2を構成する。複数の張出部42は、積層鉄心1における複数のティース3をそれぞれ構成する。
【0013】
主体部40は、その縁(例えば外周縁44)に形成された複数(仮止代50と同数)の接続凹部43を更に有している。複数の接続凹部43は、環状部41の周方向に沿って等間隔に並んでいる。なお、主体部40は、第一の打抜部材20同士の積層において他の主体部40と接続可能なかしめ部を有していない。すなわち、主体部40の外周縁44内の領域には、他の主体部40と接続可能なかしめ部は形成されていない。
【0014】
仮止代50は、積層鉄心1の製造過程において主体部40から除去される部分である。複数の仮止代50は、複数の接続凹部43において主体部40にそれぞれ接続されている。より具体的に、仮止代50は、主体部40と仮止代50との境界21の全域において、主体部40に接続されている。例えば仮止代50の厚さは、主体部40の厚さと同じ厚さである。
【0015】
図3に示すように、主体部40及び仮止代50は、第一の打抜部材20の厚さ方向において互いにずれている。第一の打抜部材20の主面22側においては、仮止代50が主体部40から陥没して凹部24が形成されている(以下、この段落において
図6を併せて参照)。第一の打抜部材20の主面23側においては、仮止代50が主体部40から膨出して凸部25が形成されている。換言すると、第一の打抜部材20は、主体部40と仮止代50との境界21に形成された段差S1を有している。このため、主体部40と仮止代50との接続部の厚さが、主体部40及び仮止代50の厚さよりも小さくなっている。これにより、主体部40と仮止代50との接続強度が弱められ、主体部40と仮止代50との境界部にて仮止代50を主体部40から切り離すことが可能となっている。
【0016】
仮止代50は、主体部40の縁(例えば外周縁44)から張り出した耳部51と、主体部40の接続凹部43に入り込む接続凸部52とを有する。
図4に示すように、耳部51は、その先端及び基端の間にくびれ部53を有している。くびれ部53における幅B1は、先端及び基端における幅B2よりも小さい。換言すると、耳部51の両側の側縁54(端縁55と接続凸部52とを結ぶ線)には窪み56が形成されている。
【0017】
接続凹部43の深部へ向かうのに応じた接続凹部43及び接続凸部52の幅B3の増加率は、ゼロ以下となっている。なお、幅B3は、接続凹部43の深部へ向かう方向(例えば主体部40の中心に向かう方向)に直交する方向の幅である。幅B3は一定であってもよく、接続凹部43の深部へ向かうにつれて小さくなっていてもよい。また、接続凸部52の出隅部と、接続凹部43の入隅部とは、緩やかに丸まっていてもよい。
【0018】
仮止代50は、第一の打抜部材20同士の積層において他の仮止代50と接続可能なかしめ部を有しない。すなわち、仮止代50の外周縁内の領域には、他の仮止代50と接続可能なかしめ部は形成されていない。
【0019】
第二の打抜部材30は、
図5に示すように、第一の打抜部材20と同様の主体部40を有する。また、第二の打抜部材30は、上記仮止代50を有しない。このため、第二の打抜部材30の主体部40の外周縁44は、仮止代50が接続されていない複数の接続凹部43を有する。
【0020】
図6に示すように、積層体10においては、段差S1同士の嵌合により第一の打抜部材20同士が仮止めされている。換言すると、上記凹部24と凸部25との嵌合により第一の打抜部材20同士が仮止めされている。なお、段差S1同士の嵌合により第一の打抜部材20同士が仮止めされているとは、仮に重なり合う仮止代50同士の間が一切接合されておらず、主体部40同士の間も一切接合されていない状態においても、第一の打抜部材20同士の仮止めが維持されることを意味する。上述したように、本実施形態においては、主体部40及び仮止代50のいずれにもかしめ部は形成されていない。このため、仮止代50が主体部40から切り離されて段差S1が消失すると、主体部40同士の接続が解除され、仮止代50同士の接続も解除される。
【0021】
なお、段差S1同士の嵌合により第一の打抜部材20同士が仮止めされていれば、重なり合う仮止代50同士の間が更に接合されていてもよい。複数の仮止代50は、かしめ部を有する仮止代50とかしめ部を有しない仮止代50とを含んでいてもよい。
【0022】
また、
図6に示すように、第一の打抜部材20と第二の打抜部材30とは、第二の打抜部材の縁と段差S1との嵌合によって仮止めされている。換言すると、上記凸部25と、第二の打抜部材30の主体部40の外周縁44との嵌合によって第一の打抜部材20と第二の打抜部材30とが仮止めされている。より具体的に、上記凸部25は、第二の打抜部材30の主体部40の接続凹部43に嵌合している。
【0023】
また、積層体10において、第一の打抜部材20同士は主体部40と仮止代50との境界21に形成された段差S1を有していればよく、例えば仮止代50が主体部40に対して傾斜していてもよい。
【0024】
〔積層体製造装置〕
次に、
図7を参照し、上記の積層体10を製造する積層体製造装置の一例について説明する。
図7は、第一の打抜部材20及び第二の打抜部材30を打抜き加工によって製造する積層体製造装置100の概略構成を示す模式図である。積層体製造装置100は、アンコイラー110と、送り装置130と、順送り金型140と、プレス機械120とを備える。
【0025】
アンコイラー110は、帯状の電磁鋼板Wの巻重体Cが装着された状態で、巻重体Cを回転自在に保持する。巻重体Cを構成する電磁鋼板Wの長さは例えば500〜10000mであってもよい。巻重体Cを構成する電磁鋼板Wの厚さは0.1〜0.5mm程度であってもよく、積層鉄心1のより優れた磁気的特性を達成する観点から、0.1〜0.3mm程度であってもよい。巻重体Cを構成する電磁鋼板Wの幅は50〜500mm程度であってもよい。
【0026】
送り装置130は、巻重体Cから引き出された電磁鋼板Wを、順送り金型140に向けて送り出す。例えば送り装置130は、電磁鋼板Wを上下から挟み込む一対のローラ130a,130bを有している。一対のローラ130a,130bは、回転及び停止を繰り返し、電磁鋼板Wを順送り金型140に向けて間欠的に順次送り出す。
【0027】
順送り金型140は、プレス機械120によって駆動され、電磁鋼板Wに対して打抜き加工を行う。より具体的に、順送り金型は、電磁鋼板Wに対して打抜き加工等を連続的に実施する。また、順送り金型140は、打抜き加工によって得た電磁鋼板Wを順次重ね合わせ、積層体10を製造する。順送り金型140は、製造した積層体10を排出する機能を有していてもよい。
【0028】
図8に示すように、順送り金型140は、搬送方向Pに沿って並ぶ打抜き部141,142,143,144,145を有する。打抜き部141,142,143,144,145は、帯状の電磁鋼板Wの同一領域に対して順次打抜きを行って所定の形状の電磁鋼板Wの形成から積層までを実行する。
【0029】
図9に示すように、打抜き部141,142,143,144,145のそれぞれは、基本構成として、ダイ200と、ストリッパープレート300と、パンチ400とを備える。ダイ200及びパンチ400は、電磁鋼板Wを上下で挟み込むことによって所定の形状に加工するための金型である。ダイ200は、例えば下型201内に配置され、下側から電磁鋼板Wを支持する。パンチ400は、例えば上型401内において電磁鋼板Wに対し進退可能に配置され、プレス機械120の動力によって上側から電磁鋼板Wを押圧する。ストリッパープレート300は、パンチ400に食いついた電磁鋼板Wをパンチ400から引き剥がす。ストリッパープレート300は、電磁鋼板Wをダイ200側に押さえ付けるように構成されていてもよい。
図9に示すように、パンチ400が下降して、ダイ200内にパンチ400が挿入されると、所定の形状の電磁鋼板Wが打ち抜かれる。
【0030】
〔積層体製造手順〕
次に、
図10〜
図20を参照し、積層体製造方法の一例として、積層体製造装置100が実行する積層体10の製造手順を説明する。
【0031】
積層体10の製造手順は、第一の打抜部材20の打抜き手順として、積層鉄心1を形成するための主体部40と、積層鉄心1の形成過程で主体部40から除去される仮止代50と、を有する第一の打抜部材20の素材となる帯状鋼板70(鋼板)において、仮止代50と主体部40との境界21に段差S1を形成することと、段差S1を有する第一の打抜部材20を帯状鋼板70から打ち抜くことと、段差S1同士の嵌合によって第一の打抜部材20同士が仮止めされるように、第一の打抜部材20を積層することと、を含む。
【0032】
また、上記の製造手順は、第二の打抜部材30の打抜き手順として、主体部40を有し仮止代50を有しない第二の打抜部材30を帯状鋼板70から打ち抜くことと、第二の打抜部材30の縁(主体部40の外周縁44の接続凹部43)と段差S1との嵌合によって第一の打抜部材20と第二の打抜部材30とが仮止めされるように、第一の打抜部材20と第二の打抜部材30とを積層することと、を含んでいてもよい。以下、各手順の詳細について説明する。
【0033】
(第一の打抜部材の打抜き手順)
図10に示すように、まず、打抜き部141が帯状鋼板70の複数個所を打ち抜いて複数のスリット71を形成する(以下、「仮止代50の側部スリット形成工程」という。)。例えば打抜き部141は、上述したダイ200、ストリッパープレート300及びパンチ400(
図9参照)によってスリット71の打抜きを実行する。複数のスリット71は、仮止代50の耳部51の側縁54の少なくとも一部(例えば窪み56)を形成する。
【0034】
次に、積層体製造装置100は、仮止代50の切り曲げを実行する(以下、「仮止代50の切り曲げ工程」という。)。具体的には、
図11に示すように、打抜き部142が帯状鋼板70の複数個所を打ち抜いて仮止代50と主体部40との境界21を切断する。打抜き部142は、主体部40と仮止代50とを厚さ方向にずらすようにせん断して境界21を切断してもよい。
【0035】
例えば打抜き部142は、
図12に示すように、ダイ221と、ストリッパープレート321と、パンチ421とを備える。ダイ221及びストリッパープレート321は、それぞれ、パンチ421と同径に形成された開口222,322を有する。パンチ421は、境界21側へ向かうに従ってダイ221側に近付くように傾斜する先端面422を有する。パンチ421は、先端面422の下端のエッジにより、帯状鋼板70をせん断する。パンチ421が下降して、ダイ221の開口222にパンチ421が挿入されると、パンチ421の先端面422のエッジの当接位置において帯状鋼板70が切断され、先端面422の傾斜に従って仮止代が下方に曲げられる。なお、パンチ421は、先端面422の上端が帯状鋼板70に達しない範囲で上下動するように構成されている。このため、帯状鋼板70のうち先端面422の上端側に位置する部分は、打抜き部142によって切断されない。
【0036】
次に、
図13に示すように、打抜き部143が帯状鋼板70の複数箇所を打ち抜いて複数の開口72を形成する。開口72は、隣り合うティース3(
図1参照)間のスロットを構成する。
【0037】
この際に、積層体製造装置100は、段差S1を残すように境界21を再接続することを実行する(以下、「仮止代50の再接続工程」という。)。例えば積層体製造装置100は、せん断された仮止代50と主体部40とを帯状鋼板70の厚さ方向に圧縮して境界21を再接続する。具体的には、打抜き部143が、仮止代50の曲げ戻しを実行する。例えば打抜き部143は、せん断された仮止代50と主体部40とを帯状鋼板70の厚さ方向に圧縮して境界21を再接続する。積層体製造装置100は、主体部40に接触する面と、仮止代50に接触する面との間に段差を有する金型によって仮止代50と主体部40とを帯状鋼板70の厚さ方向に圧縮してもよい。
【0038】
例えば
図14に示すように、打抜き部143のダイ231においては、仮止代50に接触する面233が主体部40に接触する面232から陥没しており、面232と面233との間に段差S2が形成されている。このため、仮止代50は、主体部40に対して再接続された後も下側にずれた状態に保たれ、段差S1が残る。なお、切り曲げにおける曲げを大きくしておけば、金型に段差を設けずに段差S1を残すことも可能である。
【0039】
仮止代50の再接続工程においては、
図15に示すように、主体部40に対して仮止代50を上側にずらして段差S1を残してもよい。
図15に示すダイ231において、仮止代50に接触する面233は主体部40に接触する面232から突出しており、面233と面233との間に段差S2が形成されている。これに対応し、ストリッパープレート331のうち仮止代50に対応する部分には凹部332が形成されている。
【0040】
また、積層体製造装置100は、切り曲げ工程において境界21を切断せずに、せん断により主体部40及び仮止代50を厚さ方向にずらして段差S1を形成してもよい。この場合、再接続を省略可能である。
【0041】
なお、積層体製造装置100は、仮止代50の再接続工程を、仮止代50の切り曲げ工程の後に実行すればよく、例えば複数の開口72の形成の前後における別の工程において実行してもよい。
【0042】
次に、
図16に示すように、打抜き部144が複数の開口72に囲まれた中心部分を打ち抜いて複数の張出部42を形成する。この際に、積層体製造装置100は、打抜き部144によって複数のスリット73も形成する(以下、「仮止代50の端部スリット形成工程」という。)。仮止代50の端部スリット形成工程により、仮止代50の耳部51の端縁55の少なくとも一部が形成される。このスリット73により、後述の第一の打抜部材20の打抜き工程において、ダイ200上に残る帯状鋼板70側に仮止代50が引かれて主体部40から分離してしまうことが防止される。
【0043】
次に、
図17に示すように、打抜き部145が主体部40の外形を打ち抜いて第一の打抜部材20を形成する(以下、「第一の打抜部材20の打抜き工程」という)。
図18に示すように、打抜き部145は、打ち抜いた第一の打抜部材20を順次積層させる。打抜き部145は、段差S1同士の嵌合によって第一の打抜部材20同士が仮止めされるように第一の打抜部材20を積層する。なお、打抜き部145は、仮止代50内にかしめ部を形成することなく第一の打抜部材20を打ち抜き、仮止代50内にかしめ部が無い状態にて第一の打抜部材20同士を積層する。以上により、積層体製造装置100は、第一の打抜部材20の打抜き手順を完了する。
【0044】
(第二の打抜部材の打抜き手順)
第二の打抜部材30は、仮止代50の切り曲げ工程に代えて、仮止代50の打ち抜き工程を行う点を除き、第一の打抜部材20と同様に形成される。仮止代50の打ち抜き工程においては、打抜き部142が、上述した仮止代50の切り曲げ工程における位置(以下、「切り曲げ位置」という。)よりも低い位置(以下、「打抜き位置」という。)までパンチ421を下降させることで、仮止代50を打抜く(除去する)。
【0045】
切り曲げ位置は、最下位置まで下降したパンチ421の先端面422のうち、下端がダイ221の開口222に進入し、上端がストリッパープレート321の開口322に残留する位置である(
図12参照)。これに対し、打抜き位置は、
図19に示すように、最下位置まで下降したパンチ421の先端面422が、すべてダイ221の開口222に進入する位置である。
【0046】
打抜き部142は、パンチ421が上下動する範囲を調節可能に構成されていてもよい。第一の打抜部材20の形成における仮止代50の切り曲げと、第二の打抜部材30の形成における仮止代50の打ち抜きとの両方に対応するために、打抜き部142は、
図20に示す可変機構490を更に備える。可変機構490は、スライドスペーサ491と、スライド駆動部492と、を備える。
【0047】
スライドスペーサ491は、パンチ421の上方において、パンチ421と接触するように配置されており、帯状鋼板70に対向する第一受け面493及び第二受け面494を有する。第一受け面493及び第二受け面494は、パンチ421の移動方向(上下方向)に交差する方向に沿って並んでいる。第一受け面493の高さは、第二受け面494の高さよりも高い。スライド駆動部492は、第一受け面493及び第二受け面494が並ぶ方向に沿ってスライドスペーサ491を往復移動させる。この往復移動によって、パンチ421の上面が第一受け面493に接する状態と、パンチ421の上面が第二受け面494に状態とが切り替わる。パンチ421の上面が第一受け面493に接する状態において、パンチ421は切り曲げ位置まで下降する。パンチ421が第二受け面494に接する状態において、パンチ421は打抜き位置まで下降する。
【0048】
なお、積層体製造装置100は、第一の打抜部材20の形成において仮止代50の切り曲げを行う打抜き部とは別の打抜き部により仮止代50を打ち抜くように構成されていてもよい。この場合、仮止代50を打ち抜く打抜き部は、可変機構490と同様に構成された可変機構を備え、仮止代50の打抜きを行う場合(第二の打抜部材30を形成する場合)と仮止代50の打抜きを行わない場合(第一の打抜部材20を形成する場合)との両方に対応するように、当該可変機構によって当該打抜き部のパンチが上下動する範囲を調節可能に構成されていてもよい。
【0049】
積層体製造装置100は、第一の打抜部材20の打抜き手順で主体部40に対して仮止代50を下側にずらす場合、第二の打抜部材30の打抜き手順を先に実行し、その後に第一の打抜部材20の打抜き手順を実行する。この際に、段差S1を第二の打抜部材30の縁(外周縁44の接続凹部43)に嵌合させる。
【0050】
また、積層体製造装置100は、主体部40に対して仮止代50を上側にずらす場合、第一の打抜部材20の打抜き手順を先に実行し、その後に第二の打抜部材30の打抜き手順を実行する。この際に、段差S1を第二の打抜部材30の縁(外周縁44の接続凹部43)に嵌合させる。
【0051】
〔仮止代の除去〕
次に、
図21を参照し、仮止代50の除去について説明する。上述したように、仮止代50は、積層鉄心1の完成までに積層体10から除去される。仮止代50は、主体部40同士を互いに接合する前に除去されてもよく、主体部40同士を互いに接合した後に除去されてもよい。主体部40同士は、例えば接着により主体部40同士が互いに接合されてもよく、主体部40に樹脂充填孔を設け、当該樹脂充填孔内に注入される樹脂によって複数の主体部40同士が一体化されて互いに接合されてもよい。
【0052】
仮止代50は、工具を耳部51に引っ掛けることにより除去されてもよい。例えば、
図21に示すように、耳部51の外形に応じた形状を呈する工具T10が用いられてもよい。工具T10は、耳部51の先端側(外周縁44における窪み56から端縁55に亘る領域)の外形に沿った形状を呈している。工具T10は、ベースT11と、二つの爪部T12と、二つの爪保持部T13とを備える。ベースT11は、耳部51の外側(主体部40の逆側)に配置される。二つの爪部T12は、耳部51の二か所のくびれ部53内にそれぞれ配置される。二つの爪保持部T13は、ベースT11と二つの爪部T12とをそれぞれ接続する。爪部T12とくびれ部53とが引っかかった状態で、工具T10を主体部40から離れる方向(
図21の矢印参照)に引くと、主体部40から離れる方向の力が仮止代50に作用する。これにより、仮止代50が積層体10から除去される。積層体10から各仮止代50が除去されることにより、積層鉄心1には接続凹部43が連なった溝5が形成される(
図1参照)。
【0053】
なお、工具T10はあくまで一例であり、工具は、耳部に引っ掛けて、仮止代50に主体部40から離れる方向の力を作用させ得る限りいかようにも構成可能である。仮止代の耳部の形状も適宜変更可能である。
図22に示す仮止代80は、主体部40の外周縁44から張り出した耳部81と、主体部40の逆側に向って開き、主体部40に近づくにつれて幅が大きくなるように耳部81に形成された切欠部82と、を有する。仮止代80を除去するための工具T20は、切欠部82に嵌合するヘッドT21を有してもよい。ヘッドT21が切欠部82に勘合した状態で、工具T20を主体部40から離れる方向に引くと、主体部40から離れる方向の力が仮止代80に作用する。これにより、仮止代80が積層体10から除去される。
【0054】
また、仮止代は、主体部40の外周縁44から張り出し、主体部40から遠ざかるにつれて幅が大きくなるように形成された耳部を有していてもよい。この場合にも、当該耳部の外形に応じた形状を呈する工具を用いて当該仮止代を除去してよい。
【0055】
また、仮止代は、積層方向の力を仮止代に作用させることにより除去されてもよい。
【0056】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態に係る積層体10の製造方法は、積層鉄心1を形成するための主体部40と、積層鉄心1の形成過程で主体部40から除去される仮止代50と、を有する第一の打抜部材20の素材となる帯状鋼板70において、仮止代50と主体部40との境界21に段差S1を形成することと、段差S1を有する第一の打抜部材20を帯状鋼板70から打ち抜くことと、段差S1同士の嵌合によって第一の打抜部材20同士が仮止めされるように、第一の打抜部材20を積層することと、を含む。
【0057】
この製造方法によれば、主体部40と仮止代50との境界21に形成される段差S1同士の嵌合によって、第一の打抜部材20同士が仮止めされる。このため、仮止代50同士の接合部の省略又は縮小が可能となるので、仮止代50の大きさを縮小し得る。したがって、材料の節約に有効な積層体を得ることが可能となり、積層鉄心1の生産性向上に有効である。
【0058】
仮止代50と主体部40との境界21に段差S1を形成することは、境界21を切断することと、境界21を切断した後に段差S1を残すように境界21を再接続することと、を含んでいてもよい。この場合、仮止代50と主体部40との境界21を一度切断しているため、仮止代50を除去する際の主体部40への負担が軽減される。
【0059】
上記の製造方法は、主体部40と仮止代50代とを帯状鋼板70の厚さ方向にずらすようにせん断して境界21を切断し、せん断された仮止代50と主体部40とを帯状鋼板70の厚さ方向に圧縮して境界21を再接続してもよい。この場合、境界21を切断する際のせん断において生じただれが、圧縮時には境界21内に入り込んで再接続を強化するように作用する。このため、主体部40と仮止代50との間に段差S1を残しつつも、主体部40及び仮止代50をしっかりと再接続させることができる。
【0060】
上記の製造方法は、主体部40に接触する面232と仮止代50に接触する面233との間に段差S2を有するダイ231によって仮止代50と主体部40とを厚さ方向に圧縮してもよい。この場合、ダイ231の段差S2によって第一の打抜部材20ごとの段差S1のばらつきを抑制し、段差S1同士の嵌合による仮止めの信頼性を更に高めることができる。
【0061】
上記の製造方法は、主体部40を有し仮止代50を有しない第二の打抜部材30を帯状鋼板70から打ち抜くことと、第二の打抜部材30の主体部40の接続凹部43と段差S1との嵌合によって第一の打抜部材20と第二の打抜部材30とが仮止めされるように、第一の打抜部材20と第二の打抜部材30とを積層することと、を含んでいてもよい。
この場合、仮止代50を有しない第二の打抜部材30を積層体10の最外層にすることで、積層体10の端面から仮止代50が突出することが防止され、積層体10の取扱い易さを向上させることができる。
【0062】
上記の製造方法は、仮止代50内にかしめ部を形成することなく第一の打抜部材20を打ち抜き、仮止代50内にかしめ部が無い状態にて第一の打抜部材20を積層してもよい。この場合、仮止代50内にかしめ部が無い状態とされるため、仮止代50を更に縮小することが可能となる。また、かしめ部を形成するための工程が省略されるので、積層体10の生産性が向上可能となる。
【0063】
仮止代80は、主体部40の外周縁44から張り出した耳部81と、主体部40の逆側に向かって開き、主体部40に近づくにつれて幅が大きくなるように耳部81に形成された切欠部82と、を有していてもよい。この場合、切欠部82の形成により、仮止代80用の材料消費を削減することができる。また、切欠部82に嵌合する治具(例えば工具T20)を用いることで、仮止代80を主体部40の外周側に容易に引き抜くことができる。したがって、仮止代80の除去の容易性が向上する。
【0064】
主体部40は外周縁44に接続凹部43を有し、仮止代50は接続凹部43に入り込む接続凸部52を有し、接続凸部52の深部へ向かうのに応じた接続凹部43及び接続凸部52の幅B3の増加率がゼロ以下となっていてもよい。この場合、仮止代50を主体部40の外周側に容易に引き抜くことができる。したがって、仮止代50の取り外しの容易性が向上する。
【0065】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本発明に係る積層体の製造方法及び積層体は、ロータコアの製造にも適用可能である。