【実施例】
【0073】
以下、本発明を種々の実施例により具体的に説明する。
【0074】
[実施例1、比較例1及び2]
<実施例1>
図1に、この発明に係わる生食用野菜類の洗浄処理方法の実施例1の工程構成を示す。
図1に示すように、先ず、原体としての生食用野菜類、この実施例ではネギを、カットしない状態で、殺菌槽に投入する(ステップS10)。そして、この殺菌槽内において、投入されたネギを一次殺菌する(ステップS12)。この一次殺菌工程S12においては、一次殺菌液剤として次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いるが、この次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度は、この実施例では200ppmに設定されている。そして、この一次殺菌工程S12において、投入されたネギは、この実施例では5分間に渡り一次殺菌処理される。
【0075】
この一次殺菌工程S12の後、一次殺菌されたネギは殺菌層から一旦取り出し、所定のサイズ及び形状に、周知のネギカット装置を用いてカットする(ステップS14)。そして、カットされたネギを、殺菌槽に再投入し(ステップS16)、この殺菌槽内で再投入されたカット済のネギを二次殺菌する(ステップS18)。この二次殺菌工程S18においては、二次殺菌剤として炭酸次亜水を用いるが、この炭酸次亜水の有効塩素濃度は、この実施例では100ppmに設定されている。そして、この二次殺菌工程S18において、投入されたカット済ネギは、この実施例では5分間に渡り二次殺菌処理される。
【0076】
この二次殺菌工程S18で二次殺菌されたカット済ネギを、同じ殺菌槽内でリンスする(ステップS20)。このリンス工程S20では、二次殺菌されたカット済ネギを、水道水による流水で、5分間に渡りリンスする。
【0077】
このリンス工程S20の後、リンスされたカット済ネギを、この発明の特徴となる静菌処理する(ステップS22)。この静菌工程S22においては、静菌液として亜塩素酸ナトリウム製剤を用いるが、この実施例では、この亜塩素酸ナトリウム製剤は、静菌液の全量に対して1.0重量%で配合されているものであり、また、その成分構成としては、5.0重量%の亜塩素酸塩ナトリウムと、0.2重量%の炭酸水素ナトリウムと、0.2重量%のクエン酸三ナトリウムと、2.0重量%のアルカリイオン水と、残余の水(92.6重量%)とから構成されている。尚、この静菌工程S22における静菌時間は、10分間に設定されている。
【0078】
このように静菌工程S22を施されたカット済ネギを、同じ殺菌槽内でリンスする(ステップS24)。このリンス工程S24では、静菌液としての亜塩素酸ナトリウム製剤で静菌処理されたカット済ネギを、水道水による流水で、5分間に渡りリンスする。
【0079】
リンス工程S24が終了すると、リンス後のカットネギを、周知の遠心脱水装置を用いて脱水処理する(ステップS26)。この脱水工程S26においては、例えば脱水条件として、回転数1100rpmで、脱水時間1分を行い、この脱水の終了したカット済ネギを遠心脱水装置から取り出し(ステップS28)、静菌処理の済んだカット済ネギを得て、一連の洗浄処理を終了する。
【0080】
尚、このような洗浄処理が済んだカット済ネギを、厚さ40μmの延伸プロピレン製袋に窒素ガスと共に入れ、袋の開口部をヒートシールすることによりカット済ネギ製品が製造され、その後、10℃で冷蔵保存した。
【0081】
<比較例1>
図1に示す実施例1の洗浄処理工程において、ステップS22の静菌工程とステップS24のリンス工程とを実施しない洗浄処理工程を、比較例2とした。即ち、この比較例2においては、一次殺菌処理及び二次殺菌処理が実施されるが、静菌処理は実施されず、それ以外は、実施例1と同様とした。
【0082】
<比較例2>
図1に示す実施例1の洗浄処理工程において、ステップS16の再投入工程から、ステップS22の静菌工程までを実施しない洗浄処理工程を、比較例1とした。即ち、この比較例1においては、一次殺菌処理のみが実施され、二次殺菌処理及び静菌処理は実施されず、それ以外は、実施例1と同様とした。
【0083】
<保存性評価>
[一般生菌]
製造直後のカット済ネギ製品の中身のカット済ネギの一般生菌の数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定し、以下基準により評価した。
【0084】
ランク 基準
A:1×10
4CFU/g未満(LOG値で4未満)
B:1×10
4CFU/g以上1×10
6CFU/g未満(LOG値で4以上6未満)
C:1×10
6CFU/g以上(LOG値で6以上)
尚、この実施例における一般生菌に関する評価は、Aランクに属することとし、この結果、評価の上限値としては、1×10
4CFU/g(LOG値で4)とした。
【0085】
【表1】
【0086】
<保存性評価>
[大腸菌群]
製造直後のカット済ネギ製品の中身のカット済ネギの大腸菌群の数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定し、以下基準により評価した。
【0087】
ランク 基準
A:1×10
1CFU/g未満(LOG値で1未満)
B:1×10
1CFU/g以上1×10
3CFU/g未満(LOG値で1以上3未満)
C:1×10
3CFU/g以上(LOG値で3以上)
尚、この実施例における大腸菌群に関する評価は、Aランクに属することとし、この結果、評価の上限値としては、1×10
1CFU/g(LOG値で1)とした。
【0088】
【表2】
【0089】
表1及び表2及びこれらをグラフとして表示した
図2及び
図3からわかるように、実施例1の洗浄処理方法で洗浄したカット済ネギは、カット処理直後から丸3日保存した後でも、一般生菌細菌数も少なく、大腸菌群においては陰性(即ち、検出されなかった)であり、充分な保存性があることが判明した。
【0090】
それに対し、ステップS22の静菌工程を実施せず、一次及び2次殺菌を実施した比較例1の洗浄方法、及び、ステップS12の一次洗浄工程しか実施していない比較例2で洗浄したカット済ネギは、大腸菌群の数が、共に、1日経過時点でランクBとなり、保存性が担保されていないことが判明した。更に、ステップS12の一次洗浄工程しか実施していない比較例2で洗浄したカット済ネギは、一般生菌数が3日経過時点でランクBに落ち、上記した大腸菌群と共に、保存性が担保されていないことが判明した。即ち、この実施例1、比較例1及び2の結果から、ステップS22の静菌工程を実施することが、保存性の確保に必須であることが明白となった。
【0091】
[実施例2、比較例3]
<実施例2>
図4に、この発明に係わる生食用野菜類の洗浄処理方法の実施例2の工程構成を示す。
図4に示すように、この実施例2においては、ステップS18の二次殺菌工程とステップS20のリンス工程とが取り除かれており、これ以外の工程は、上述した実施例1の工程と同様である。
【0092】
<比較例3>
図4に示す実施例2の洗浄処理工程において、ステップS22の静菌工程とステップS24のリンス工程とを実施しない洗浄処理工程を、比較例3とした。即ち、この比較例2においては、一次殺菌処理は実施されるが、二次殺菌処理及び静菌処理は実施されず、それ以外は、実施例1と同様とした。
【0093】
<保存性評価>
[一般生菌]
製造直後のカット済ネギ製品の中身のカット済ネギの一般生菌の数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定し、以下基準により評価した。
【0094】
ランク 基準
A:1×10
4CFU/g未満(LOG値で4未満)
B:1×10
4CFU/g以上1×10
6CFU/g未満(LOG値で4以上6未満)
C:1×10
6CFU/g以上(LOG値で6以上)
尚、この実施例における一般生菌に関する評価は、Aランクに属することとし、この結果、評価の上限値としては、1×10
4CFU/g(LOG値で4)とした。
【0095】
【表3】
【0096】
<保存性評価>
[大腸菌群]
製造直後のカット済ネギ製品の中身のカット済ネギの大腸菌群の数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方式により測定し、以下基準により評価した。
【0097】
ランク 基準
A:1×10
1CFU/g未満(LOG値で1未満)
B:1×10
1CFU/g以上1×10
3CFU/g未満(LOG値で1以上3未満)
C:1×10
3CFU/g以上(LOG値で3以上)
尚、この実施例における大腸菌群に関する評価は、Aランクに属することとし、この結果、評価の上限値としては、1×10
1CFU/g(LOG値で1)とした。
【0098】
【表4】
【0099】
表3及び表4及びこれらをグラフ化した
図5及び
図6によれば、実施例2の洗浄処理方法で洗浄したカット済ネギは、カット処理直後から丸3日保存した後でも、一般生菌細菌数も少なく、大腸菌群においては陰性(即ち、検出されなかった)であり、充分な保存性があることが判明した。
【0100】
それに対し、ステップS22の静菌工程を実施せず、ステップS12の一次洗浄工程しか実施していない比較例3で洗浄したカット済ネギは、大腸菌群の数が、共に、1日経過時点でランクBとなり、保存性が担保されていないことが判明した。更に、ステップS12の一次洗浄工程しか実施していない比較例2で洗浄したカット済ネギは、一般生菌数が3日経過時点でランクBに落ち、上記した大腸菌群と共に、保存性が担保されていないことが判明した。即ち、この実施例2、比較例3の結果からも、ステップS22の静菌工程を実施することが、保存性の確保に必須であることが改めて明白となった。
【0101】
[実施例3、比較例4]
<実施例3>
図7に、この発明に係わる生食用野菜類の洗浄処理方法の実施例3の工程構成を示す。
図7に示すように、この実施例3においては、ステップS10の原体投入工程及びステップS12の一次殺菌工程が除かれており、これに従い、ステップS16のカット野菜再投入工程が、カット野菜投入工程として表示されている。また、ステップS16で投入されたカット野菜を洗浄する洗浄工程がステップS17として追加されている。この洗浄工程S17においては、周知の洗浄機が用いられ、洗浄剤として中性洗剤が用いられており、洗浄時間として3分間を設定している。
【0102】
このステップS17の洗浄工程後に静菌工程が実施されるものであるが、この実施例3においては、静菌工程における静菌時間、即ち、静菌剤としての亜塩素酸ナトリウム製剤への浸漬時間を、実施例1の場合と異なり、3分間に設定されている。従って、この実施例3においては、静菌工程はステップS22Aとして表記している。そして、これ以降の工程は、上述した実施例1の工程と同様である。
【0103】
<実施例4>
図8に、この発明に係わる生食用野菜類の洗浄処理方法の実施例4の工程構成を示す。
図8に示すように、この実施例4においては、上述した実施例3と、静菌工程における浸漬時間を3分ではなく5分としている以外は、全く同様に設定している。従って、この実施例4においては、静菌工程は、浸漬時間が実施例1及び3と異なるので、テップS22Bとして表記している。
【0104】
<比較例4>
図8に示す実施例4における静菌工程を省略したものを、比較例4とした。即ち、この比較例4においては、ステップ22として規定した静菌工程を実施しない以外は、実施例4と同様である。
【0105】
<保存性評価>
[一般生菌]
製造直後のカット済ネギ製品の中身のカット済ネギの一般生菌の数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定し、以下基準により評価した。
【0106】
ランク 基準
A:1×10
4CFU/g未満(LOG値で4未満)
B:1×10
4CFU/g以上1×10
6CFU/g未満(LOG値で4以上6未満)
C:1×10
6CFU/g以上(LOG値で6以上)
尚、この実施例における一般生菌に関する評価は、Aランクに属することとし、この結果、評価の上限値としては、1×10
4CFU/g(LOG値で4)とした。
【0107】
【表5】
【0108】
<保存性評価>
[大腸菌群]
製造直後のカット済ネギ製品の中身のカット済ネギの大腸菌群の数を、食品衛生検査指針(厚生労働省)に準拠する試験方法により測定し、以下基準により評価した。
【0109】
ランク 基準
A:1×10
1CFU/g未満(LOG値で1未満)
B:1×10
1CFU/g以上1×10
3CFU/g未満(LOG値で1以上3未満)
C:1×10
3CFU/g以上(LOG値で3以上)
尚、この実施例における大腸菌群に関する評価は、Aランクに属することとし、この結果、評価の上限値としては、1×10
1CFU/g(LOG値で1)とした。
【0110】
【表6】
【0111】
表5及び表6及びこれらをグラフ化した
図9及び
図10によれば、実施例3及び4の洗浄処理方法で洗浄したカット済ネギは、カット処理直後から丸3日保存した後でも、一般生菌細菌数は上限値を超えるものはなく、全てランクAに分類される結果となし、大腸菌群においては全て陰性(即ち、検出されなかった)であり、充分な保存性があることが判明した。
【0112】
それに対し、ステップS22の静菌工程を実施せず、中性洗剤でしか洗浄しない比較例4で洗浄したカット済ネギは、一般生菌数が3日経過時点で上限値を超えてランクBに落ち、大腸菌群の数が、1日目から上限値を超えてランクBとなり、保存性が担保されていないことが判明した。この実施例3及び4と比較例4との結果からも、ステップ22A、22Bの静菌工程のみを実施することが、保存性が充分に確保できることが判明した。これは、に必須であることが改めて明白となった。これは、生食用野菜類を洗浄する作業をするメーカーにとっては、大変に重要なポイントであり、従来、生食用野菜の洗浄のためには、次亜塩素酸ナトリウムを用いることが必須であったのに対して、亜塩素酸ナトリウム製剤を用いた静菌処理をすれば、次亜塩素酸ナトリウムを用いなくとも、充分に保存性が担保され、より具体的には、洗浄後3日間は、一般生菌及び大腸菌群に関して、問題の無いレベルで静菌されていることが判明したものである。
【0113】
また、ステップ22A、22Bの静菌工程の静菌時間、即ち、亜塩素酸ナトリウム製剤への漬け込み時間は、実施例1のように10分に限定されること無く、3分間でも充分な静菌効果を達成することが出来ることが判明した。これは、生食用野菜類を洗浄する作業をするメーカーにとっては、更に重要なポイントであり、静菌処理工程を実施する静菌時間が短くて済むので、全体の処理時間の短縮化を図ることが出来ると共に、静菌剤としての亜塩素酸ナトリウム製剤を複数回にわたり用いることが出来ることを示すものであり、これにより、洗浄コストを安価に抑えることが可能となるものである。
【0114】
<官能評価>
実施例3及び比較例4を実施することにより夫々得られたカット済ネギについて、官能評価を両者を対比した状態で行った。この官能評価において、評価対象として、色調、臭い、食感、風味の4つとし、「色調」は評価者による目視の結果を、良・可・不可で評価し、「臭い」は評価者による臭い嗅ぎにの結果に基づき、臭気を感じ取る程度により、良・可・不可で評価し、「食感」は評価者が実際に食した結果の鮮度(シャキシャキ感)の程度により、良・可・不可で評価し、「風味」は評価者による全体評価の結果として、良・可・不可で評価した、尚、評価基準としては、可以上で問題なしと判断する。
【0115】
【表7】
【0116】
この表7から明らかなように、実施例3及び比較例4で得られた洗浄済のカット野菜の官能評価としては、洗浄作業後3日間を経過しても、全ての項目において可以上となり、問題ないことが判明した。
【0117】
この発明は、上述した実施例の工程構成・数値等に限定されること無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形・変更可能であることは言うまでも無い。
【0118】
例えば、上述した実施例1及び2において、一次殺菌工程S12で一次殺菌した生食用野菜類を、一旦、殺菌槽から取り出して、ステップS14のカット工程を実施し、ステップS16のステップS16で、カットされた生食用野菜類を再び殺菌槽に投入するように説明したが、この発明は、このような工程に限定されること無く、例えば、殺菌槽内でカットできる機構を用いれば、別段、生食用野菜類を一次殺菌処理の後、殺菌槽から取り出す必要は無く、また、カット後に殺菌槽に再投入する必要もないものである。
【0119】
また、上述した実施例1及び2において、静菌工程S22の後はリンス工程S24を経て脱水工程S28を実施するように説明したが、この発明は、このような工程に限定されること無く、例えば、静菌工程S22の後に二次殺菌工程を付加的に加入しても良いものである。このように、静菌工程S22の後に二次殺菌工程を加入することにより、一次殺菌工程S12で用いられる殺菌剤として安価で殺菌力の弱いものを用いることが出来ることになり、この結果、洗浄対象となるカット野菜に対する殺菌剤によるダメージを効果的に抑止することが出来るものである。