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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-180626(P2019-180626A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】無呼吸判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20190927BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20190927BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   A61B5/08
   A61B5/11 100
   A61B5/02 310J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-72927(P2018-72927)
(22)【出願日】2018年4月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】虎本 紗代
(72)【発明者】
【氏名】小山 千佳
(72)【発明者】
【氏名】堀 翔太
(72)【発明者】
【氏名】樋江井 武彦
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA14
4C017AB10
4C017AC04
4C017AC30
4C017BC30
4C017FF05
4C038SS09
4C038SV00
4C038SV01
4C038SV05
4C038SX02
4C038SX09
(57)【要約】
【課題】就寝者の閉塞性無呼吸状態を精度よく検出できる無呼吸判定装置を提供する。
【解決手段】就寝者の心拍数周期性変動(cyclic variation of heart rate,CVHR)の発生区間における、就寝者の呼吸に伴う音に基づいて、該就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定する判定部(46)を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者の心拍数周期性変動(cyclic variation of heart rate,CVHR)の発生区間における、就寝者の呼吸に伴う音に基づいて、該就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定する判定部(46)を備えたことを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項2】
請求項1において、
就寝者の周囲の音を検出するマイクロフォン(60)を備え、
前記判定部(46)は、前記CVHRの発生区間における、前記マイクロフォン(60)で検出した音信号のうち就寝者の呼吸周期に同期した音信号に基づいて、前記就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定することを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記判定部(46)は、前記CVHRの波形の隣り合うディップの間の第1区間における前記音信号の振幅が所定値よりも小さい第1条件が成立すると、前記閉塞性無呼吸状態と判定することを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記判定部(46)は、前記CVHRの波形のディップを含む所定の第2区間における前記音信号の振幅が所定値よりも大きい第2条件が成立すると、前記閉塞性無呼吸状態と判定することを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記判定部(46)は、前記CVHRの波形の隣り合うディップの間の第1区間における前記音信号の振幅が所定値よりも小さい第1条件が成立し、且つ前記CVHRの波形のディップを含む所定の第2区間における前記音信号の振幅が所定値よりも大きい第2条件が成立すると、前記閉塞性無呼吸状態と判定することを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つにおいて、
前記就寝者の体動に応じた信号を出力する体動検知部(20A)と、
前記体動検知部(20A)の出力信号から、前記就寝者の呼吸に伴う呼吸信号を抽出する呼吸信号抽出部(43)と、
前記体動検知部(20A)の出力信号から、前記就寝者の心拍に伴う心拍信号を抽出する心拍信号抽出部(44)とを備え、
前記判定部(46)は、前記心拍信号から検出した前記就寝者のCVHRの発生区間における、前記呼吸信号の呼吸周期に同期する前記音信号の振幅に基づいて、前記就寝者が閉塞性無呼吸状態を判定することを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記体動検知部(20A)は、
前記就寝者の体動が作用する中空部材(20)と、
前記中空部材(20)の内圧に応じた信号を、前記就寝者の体動に応じた信号として出力する圧力センサ(31)とを備えていることを特徴とする無呼吸判定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
前記判定部(46)の判定結果を含むデータを出力する出力部(48)を備えていることを特徴とする無呼吸判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無呼吸判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝者の無呼吸状態を判定する無呼吸判定装置がある。この種の無呼吸判定装置として、特許文献1には、心拍数周期性変動(cyclic variation of heart rate、CVHR)を検出するものがある。ここで、CVHRは、「睡眠時における無呼吸又は低呼吸に伴う心拍変動」と定義される。特許文献1では、例えば所定時間当たりのCVHR波形の頻度を計測することにより、就寝者が無呼吸症候群であるかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−51387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
就寝者の心拍の挙動は、例えば心疾患や不整脈等、無呼吸以外の要因によっても変化する。このため、特許文献1に記載の無呼吸判定装置では、就寝者の無呼吸状態(閉塞性無呼吸状態)を精度よく検出することが困難であった。
【0005】
本開示の目的は、就寝者の閉塞性無呼吸状態を精度よく検出できる無呼吸判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、就寝者の心拍数周期性変動(cyclic variation of heart rate,CVHR)の発生区間における、就寝者の呼吸に伴う音に基づいて、該就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定する判定部(46)を備えたことを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0007】
第1の態様では、CVHRの検出により無呼吸状態の疑いがある条件下において、CVHRの発生区間における就寝者の呼吸に伴う音を用いることで、閉塞性無呼吸状態を精度よく判定できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、就寝者の周囲の音を検出するマイクロフォン(60)を備え、前記判定部(46)は、前記CVHRの発生区間における、前記マイクロフォン(60)で検出した音信号のうち就寝者の呼吸周期に同期した音信号に基づいて、前記就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定することを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0009】
第2の態様では、マイクロフォン(60)で検出した音信号から、就寝者の呼吸周期に同期した音信号を抽出する。これにより、就寝者の呼吸音を精度よく検出でき、ひいては閉塞性無呼吸状態の判定の精度を向上できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記判定部(46)は、前記CVHRの波形の隣り合うディップの間の第1区間における前記音信号の振幅が所定値よりも小さい第1条件が成立すると、前記閉塞性無呼吸状態と判定することを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0011】
第3の態様では、隣り合うディップの間の区間において、音信号が小さい場合、就寝かから音が発生しない、あるいは就寝者から呼吸努力音が発生していると推定できる。従って、この場合には、閉塞性無呼吸状態であると判定される。
【0012】
第4の態様は、第2の態様において、前記判定部(46)は、前記CVHRの波形のディップを含む所定の第2区間における前記音信号の振幅が所定値よりも大きい第2条件が成立すると、前記閉塞性無呼吸状態と判定することを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0013】
第4の態様では、ディップを含む区間において、音信号が大きい場合、閉塞性無呼吸状態である就寝者から、無呼吸状態となる前後の期間においていびき音が発生していると推定できる。従って、この場合には、閉塞性無呼吸状態であると判定される。
【0014】
第5の態様は、第2の態様において、前記判定部(46)は、前記CVHRの波形の隣り合うディップの間の第1区間における前記音信号の振幅が所定値よりも小さい第1条件が成立し、且つ前記CVHRの波形のディップを含む所定の第2区間における前記音信号の振幅が所定値よりも大きい第2条件が成立すると、前記閉塞性無呼吸状態と判定することを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0015】
第5の態様では、第1条件及び第2条件の双方が成立すると、閉塞性無呼吸状態であると判定される。これにより、閉塞性無呼吸状態の判定精度が向上する。
【0016】
第6の態様は、第1乃至5の態様のいずれか1つにおいて、前記就寝者の体動に応じた信号を出力する体動検知部(20A)と、前記体動検知部(20A)の出力信号から、前記就寝者の呼吸に伴う呼吸信号を抽出する呼吸信号抽出部(43)と、前記体動検知部(20A)の出力信号から、前記就寝者の心拍に伴う心拍信号を抽出する心拍信号抽出部(44)とを備え、前記判定部(46)は、前記心拍信号から検出した前記就寝者のCVHRの発生区間における、前記呼吸信号の呼吸周期に同期する前記音信号の振幅に基づいて、前記就寝者が閉塞性無呼吸状態を判定することを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0017】
第6の態様では、体動検知部(20A)から出力された信号が、CVHRを検出するための信号と、呼吸音を検出するための呼吸信号との双方に利用される。
【0018】
第7の態様は、第6の態様において、前記体動検知部(20A)は、前記就寝者の体動が作用する中空部材(20)と、前記中空部材(20)の内圧に応じた信号を、前記就寝者の体動に応じた信号として出力する圧力センサ(31)とを備えていることを特徴とする無呼吸判定装置である。
【0019】
第8の態様は、第1乃至7の態様のいずれか1つにおいて、前記判定部(46)の判定結果を含むデータを出力する出力部(48)を備えていることを特徴とする無呼吸判定装置である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る無呼吸判定装置のチューブ型センサの設置状態を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る無呼吸判定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、CVHRが発生した区間における、呼吸信号と心拍信号の挙動を示す信号波形図である。
図4図4は、就寝者の無呼吸状態を判定する動作を示すフローチャートである。
図5図5は、変形例1に係る無呼吸判定装置の図4に相当する図である。
図6図6は、変形例2に係る無呼吸判定装置の図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
《実施形態》
実施形態に係る無呼吸判定装置(10)は、寝具(B)に就寝する対象者(就寝者)の無呼吸状態を判定する。無呼吸判定装置(10)は、就寝者が閉塞性無呼吸状態であるかを判定する。ここで、閉塞性無呼吸状態は、肺による呼吸運動は行っているが、睡眠中の筋弛緩等の影響によりに舌根部等が下がり気道が閉塞されるといえる。
【0023】
本実施形態の無呼吸判定装置(10)は、チューブ型センサ(20)と、チューブ型センサ(20)が接続される判定ユニット(30)とを備える。
【0024】
〈チューブ型センサ〉
図1に示すように、チューブ型センサ(20)は、ベッドや布団などの寝具(B)に敷設される。就寝者が寝具(B)上に寝そべると、チューブ型センサ(20)が就寝者の下側に位置する。就寝者から生起する体動(寝返りなどの粗体動や、心拍や呼吸に由来する微体動)は、チューブ型センサ(20)に作用する。チューブ型センサ(20)は、中空状の中空部材を構成している。チューブ型センサ(20)は、細長い中空筒状に形成される。チューブ型センサ(20)に体動が作用すると、チューブ型センサ(20)に振動が伝わり、その内圧が変化する。
【0025】
〈判定ユニットの概要〉
判定ユニット(30)は、ケーシング(図示省略)と、圧力センサ(31)(マイクロフォン)と、回路基板(32)と、音センサ(60)(マイクロフォン)とを備える。圧力センサ(31)は、ケーシングに内臓される。圧力センサ(31)には、チューブ型センサ(20)の基端が接続される。圧力センサ(31)は、チューブ型センサ(20)の内圧に応じた信号を出力する。本実施形態では、チューブ型センサ(20)及び圧力センサ(31)が、就寝者
の体動に応じた信号を出力する体動検知部を構成している。音センサ(60)は、就寝者()の周囲に設けられ、就寝者から発する音(呼吸に伴う音)を検出する。
【0026】
〈回路基板〉
回路基板(32)には、マイクロプロセッサと、コンピュータプログラムが記憶されたメモリデバイス(具体的には半導体メモリ)とが搭載される。
【0027】
図2に示すように、無呼吸判定装置(10)は、回路基板(32)上で処理を行う機能ブロックとして、信号増幅部(41)、フィルタ部(42)、呼吸信号抽出部(43)、心拍信号抽出部(44)、CVHR検出部(45)、呼吸音抽出部(62)、及び判定部(46)を有する。
【0028】
信号増幅部(41)は、圧力センサ(31)で検出された信号を増幅させる。フィルタ部(42)は、信号増幅部(41)で増幅した信号に対して所定の前処理を行う。呼吸信号抽出部(43)は、フィルタ部(42)で前処理した後の信号から呼吸帯域成分を抽出する。つまり、呼吸信号抽出部(43)は、就寝者の呼吸に由来する呼吸信号を得る。心拍信号抽出部(44)は、フィルタ部(42)で前処理した後の信号から心拍帯域成分を抽出する。つまり、心拍信号抽出部(44)は、就寝者の心拍に由来する心拍信号を得る。
【0029】
CVHR検出部(45)は、心拍信号抽出部(44)で得た心拍信号において、CVHR波形の有無を検出する。ここで、CVHRは、「睡眠時における無呼吸又は低呼吸に伴う心拍変動」と定義される。図3に示すように、就寝者が無呼吸発作を引き起こすと、CVHRと定義される周期的な心拍変動が発生する。CVHR波形においては、周期的なディップ(減少方向におけるピーク)が観察される。CVHR波形は、無呼吸時に生じる徐波と、呼吸再開時に生じる頻脈とから成り、ディップは頻脈中に存在する。CVHR波形では、隣り合うディップの間に無呼吸の区間が必ず存在することになる。
【0030】
CVHR検出部(45)は、公知の方法に基づきCVHRの発生を検出する。つまり、CVHR検出部(45)は、心拍信号抽出部(44)で抽出した心拍信号からディップの存在を特定し、図3に示すような周期的な心拍変動が発生しているか否かを判定する。
【0031】
呼吸音抽出部(62)は、呼吸信号抽出部(43)で得た呼吸信号と、音センサ(60)で検出した音信号とを同期検波する。つまり、呼吸音抽出部(62)は、音センサ(60)で検出した音信号から、就寝者の呼吸運動の周囲に同期する成分を抽出する。これにより、音センサ(60)で検出した音信号から、就寝者の周囲の環境音を除去でき、就寝者の呼吸に伴う音を精度よく抽出できる。
【0032】
判定部(46)は、CVHR検出部(45)で検出したCVHR波形と、呼吸音抽出部(62)で得た音信号とに基づいて、就寝者が閉塞性無呼吸状態であるか否かの判定を行う。具体的には、判定部(46)は、CVHRが発生する区間における音信号の振幅に基づいて、閉塞性無呼吸状態の有無を判定する(詳細は後述する)。
【0033】
記憶部(47)には、時刻と、該時刻に対応する就寝者の生体情報に関するデータが適宜記憶されていく。生体情報に関するデータは、呼吸信号、心拍信号、判定部(46)による無呼吸状態の判定結果を含む。
【0034】
出力部(48)は、記憶部(47)に記憶されたデータを外部へ出力する。出力部(48)から出力されたデータは、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の通信端末(50)に転送される。出力部(48)と通信端末(50)との間の通信は、無線式又は有線式の通信回線により行われる。
【0035】
〈動作〉
就寝者が閉塞性無呼吸状態であるか否かを判定する動作について、図4を参照しながら説明する。
【0036】
就寝者の体動がチューブ型センサ(20)に作用すると、チューブ型センサ(20)の内圧が変化する。圧力センサ(31)は、この内圧変化を信号(圧力信号)として検出する(ステップST1)。同時に、音センサ(60)は、就寝者から発する呼吸音を検出する(ステップST2)。ここでいう呼吸音は、就寝者のいびき音、及び呼吸努力音を含む。呼吸努力音は、例えば就寝者が閉塞性無呼吸状態であり、舌根部が下がって気道が閉塞された状態において、呼吸運動に伴い生じる音である。
【0037】
次いで、信号増幅部(41)及びフィルタ部(42)により、この信号の前処理が行われる(ステップST3)。次いで、心拍信号抽出部(44)は、前処理後の信号から心拍信号を抽出する(ステップST4)。呼吸信号抽出部(43)は、前処理後の信号から呼吸信号を抽出する(ステップST5)。
【0038】
次いで、CVHR検出部(45)は、心拍信号の波形からディップの発生を特定し、CVHRの発生を検出する(ステップST6)。この処理は、例えば記憶部(47)に時々刻々と記憶された心拍信号に基づいて行われる。CVHR検出部(45)によりCVHRが検出されない場合、就寝者は「閉塞性無呼吸状態でない」と判定される(ステップST10)。CVHR検出部(45)によりCVHRが検出されると、無呼吸の疑いがあると判定され(ステップST7)、ステップST9へ移行する。一方、ステップST8では、音センサ(60)で検出した音信号から呼吸信号の周期成分に同期した成分が抽出される。
【0039】
ステップST9及びステップST12では、CVHRの発生が認められた区間において、呼吸音を含む音信号に基づいて、就寝者が閉塞性無呼吸状態であるか否かの判定が行われる。
【0040】
まず、ステップST9では、隣り合うディップの間の所定区間(図3に示す第1区間(T1)において行われる。ディップの発生時点(td)を基準として、所定時間ΔTa前を時点taとし、所定時間ΔTb後を時点tbとする。ΔTa及びΔTbは、例えば数十秒に設定される。例えばΔTaとΔTbとは同じ値に設定される。第1区間(T1)は、隣り合う2つのディップのうち前側のディップに対応する時点tbと、後側のディップに対応する時点taとの間の区間である。第1区間(T1)は、CVHRのうち上述した徐波に対応する区間である。つまり、第1区間(T1)は、CVHRが発生している就寝者が無呼吸状態になる区間といえる。
【0041】
ステップST9では、判定部(46)は、第1区間(T1)において、音信号の振幅が所定値(第1閾値)より小さいか否かの判定を行う。音信号の振幅が第1閾値より小さい条件(第1条件)が成立する場合、第1区間(T1)において就寝者が無呼吸状態であり、就寝者から音が発生していない、あるいは呼吸努力音しか発生していないと判断できる。つまり、この場合には、呼吸運動が行われているが、舌根部等が下がり気道が閉塞されている可能性が高い。従って、この第1条件が成立しない場合、無呼吸以外の要因によってCVHRが検出された可能性があるため、ステップST10へ移行し、「無呼吸状態でない」と判定される。第1条件が成立する場合、ステップST12へ移行する。
【0042】
ステップST12では、判定部(46)は、ディップを含む所定区間(図3に示す第2区間(T2))において、音信号の振幅が所定値(第2閾値)より大きいか否かの判定を行う。ここで、第2区間(T2)は、CVHRの発生区間のうち第1区間(T1)を除いた区間である。具体的には、第2区間(T2)は、ディップの発生時点tdを挟んでtaからtbまでの区間である。第2区間(T2)は、CVHRのち頻波に対応する区間である。音信号の振幅が第2閾値より大きい条件(第2条件)が成立する場合、第2区間(T2)において、就寝者から大きないびき音が発生していると判断できる。つまり、無呼吸状態となる第1区間(T1)の前後においては、大きないびき音が発生したと判断できる。従って、第2条件が成立する場合、ステップST11へ移行し、就寝者が「閉塞性無呼吸状態である」と判定される。第2条件が成立しない場合、無呼吸以外の要因によってCVHRが検出された可能性があるため、ステップST10へ移行し、「閉塞性無呼吸状態でない」と判定される。
【0043】
第1閾値は、CVHRが検出される前(就寝者が正常状態であるとき)の音信号の振幅に基づいて設定されるのがよい。例えば正常状態の音信号の平均的な振幅をA1とすると、第1閾値は、A1に所定倍率α(1>α)を乗じた値とする。これにより、就寝者の個体差を考慮しつつ、就寝者の無呼吸状態を判定できる。
【0044】
第2閾値は、CVHRが検出される前(就寝者が正常状態であるとき)の音信号の振幅に基づいて設定されるのがよい。例えば正常状態の音信号の平均的な振幅をA1とすると、第2閾値は、A2に所定倍率β(1<β)を乗じた値とする。これにより、就寝者の個体差を考慮しつつ、就寝者の無呼吸状態を判定できる。
【0045】
第2閾値が第1閾値を所定の倍率となるように、第1閾値及び第2閾値の値を設定することもできる。
【0046】
就寝者の無呼吸状態に関する判定結果は、対応する時刻とともに記憶部(47)に記憶される。記憶部(47)に記憶された判定結果は、出力部(48)を介して所定の通信端末(50)へ転送される。
【0047】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、就寝者の心拍数周期性変動(cyclic variation of heart rate,CVHR)の発生区間における、就寝者の呼吸に伴う音に基づいて、該就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定する判定部(46)を備える。つまり、CVHRが発生したときに、更に就寝者の呼吸音の考慮することで、就寝者の閉塞性無呼吸状態を精度よく判定できる。
【0048】
上記実施形態では、就寝者の呼吸に伴う音を検出する音センサ(60)(マイクロフォン)を備え、判定部(46)は、CVHRの発生区間における、音センサ(60)で検出した音信号のうち就寝者の呼吸周期に同期した音信号に基づいて、前記就寝者が閉塞性無呼吸状態であることを判定する。これにより、音センサ(60)で検出した音信号から、呼吸音を精度よく抽出でき、ひいては閉塞性無呼吸状態の判定の精度が向上する。
【0049】
上記実施形態では、判定部(46)が、CVHRの波形の隣り合うディップの間の第1区間における音信号の振幅が所定値よりも小さい第1条件が成立し、且つCVHRの波形のディップを含む所定の第2区間における前記音信号の振幅が所定値よりも大きい第2条件が成立すると、閉塞性無呼吸状態であると判定する。これにより、第1区間においては呼吸音が小さく、第2区間においてはいびき音が発生していることを考慮して、閉塞性無呼吸状態を精度よく判定できる。
【0050】
上記実施形態では、前記就寝者の体動に応じた信号を出力する体動検知部(20A)と、体動検知部(20A)の出力信号から、前記就寝者の呼吸に伴う呼吸信号を抽出する呼吸信号抽出部(43)と、体動検知部(20A)の出力信号から、就寝者の心拍に伴う心拍信号を抽出する心拍信号抽出部(44)とを備え、判定部(46)は、心拍信号から検出した就寝者のCVHRの発生区間における、呼吸信号の呼吸周期に同期する音信号の振幅に基づいて、就寝者が閉塞性無呼吸状態を判定する。これにより、体動検知部(20A)の出力信号を、CVHRの発生区間の検出と、呼吸音を含む音信号の振幅の検出との双方に兼用できる。この結果、無呼吸判定装置(10)の簡素化を図ることができる。
【0051】
上記実施形態では、体動検知部(20A)が、就寝者の体動が作用する中空部材(20)と、該中空部材(20)の内圧に応じた信号を就寝者の体動に応じた信号として出力する圧力センサ(31)とを備えている。これにより、比較的簡易なセンサ構造により、就寝者の体動に応じた信号を得ることができる。
【0052】
上記実施形態では、判定部(46)の判定結果を含むデータを出力する出力部(48)を備えている。これにより、就寝者の無呼吸状態に関する判定結果を、通信端末(50)へ転送できる。
【0053】
〈変形例1〉
変形例1は、上記実施形態と閉塞性無呼吸状態の判定する方法が異なる。図5に示すように、変形例1の判定部(46)は、実施形態の第1条件のみを判定し、第2条件の判定は行わない。つまり、ステップST9において、CVHR波形の第1区間(T1)における音信号の振幅が第1閾値より小さい第1条件が成立すると、ステップST11へ移行し、「閉塞性無呼吸状態である」と判定される。第1条件が成立しない場合、ステップST10へ移行し、「閉塞性無呼吸状態でない」と判定される。
【0054】
〈変形例2〉
変形例2は、上記実施形態及び変形例1と閉塞性無呼吸状態の判定する方法が異なる。図6に示すように、変形例2の判定部(46)は、実施形態の第2条件のみを判定し、第1条件の判定は行わない。つまり、ステップT6において、CVHRが検出されると、ステップST7を経て、ステップST12へ移行する。ステップST12において、CVHR波形の第2区間(T2)における音信号の振幅が第2閾値より大きい第2条件が成立すると、ステップST11へ移行し、「閉塞性無呼吸状態である」と判定される。第2条件が成立しない場合、ステップST10へ移行し、「閉塞性無呼吸状態でない」と判定される。
【0055】
《その他の実施形態》
上記実施形態及び変形例は、以下のような構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態の無呼吸判定装置(10)において、体動検知部(20A)と回路基板(32)とを別ユニットとしてもよい。また、回路基板(32)の一部の処理を他の回路基板で実行することもできる。例えば記憶部(47)を通信端末(50)側に設けることもできる。
【0057】
上記実施形態では、就寝者の体動に応じた信号を出力する体動検知部(20A)として、中空部材であるチューブ型センサ(20)と、圧力センサ(31)とを用いている。体動検知部(20A)は、これに限らず、例えば圧電素子等の他のセンサであってもよい。中空部材は、必ずしも細長いチューブ状でなくてもよく、袋状の部材や、中空のベッドであってもよい。
【0058】
無呼吸判定装置(10)は、判定部(46)の判定結果を表示する表示部、判定部(46)の判定結果を知らせる報知部ないし警報部を有していてもよい。
【0059】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本開示は、無呼吸判定装置について有用である。
【符号の説明】
【0061】
10 無呼吸判定装置
20 チューブ型センサ(中空部材)
20A 体動検知部
31 圧力センサ
43 呼吸信号抽出部
44 心拍信号抽出部
46 判定部
48 出力部
60 音センサ(マイクロフォン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6