特開2019-180860(P2019-180860A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社モリタ東京製作所の特許一覧

<>
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000003
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000004
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000005
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000006
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000007
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000008
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000009
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000010
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000011
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000012
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000013
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000014
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000015
  • 特開2019180860-保持部材および歯科用診療装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-180860(P2019-180860A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】保持部材および歯科用診療装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/16 20060101AFI20190927BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   A61G15/16
   A61C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-75674(P2018-75674)
(22)【出願日】2018年4月10日
(71)【出願人】
【識別番号】390011121
【氏名又は名称】株式会社モリタ東京製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】豊田 盛隆
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052KK04
4C052KK07
4C052LL05
(57)【要約】
【課題】歯科用診療装置に設けられた液体用管路内の残留液体を排出するための作業性の向上を図る。
【解決手段】歯科用診療装置に設けられた液体供給系内の残留液体の排出が行われる際にインスツルメントの端部が取り付けられ、端部を保持する保持部材8であって、弾性材料により構成され、端部が取り付けられると、取り付けられた端部により弾性変形して端部を保持する保持部材8である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用診療装置に設けられた液体用管路内の残留液体の排出が行われる際に当該液体用管路に接続される診療器具が取り付けられ、当該診療器具を保持する保持部材であって、
弾性材料により構成され、前記診療器具が取り付けられると、取り付けられた当該診療器具により弾性変形して当該診療器具を保持する保持部材。
【請求項2】
前記診療器具を保持する保持部を有し、当該診療器具が挿入されると、挿入された当該診療器具の外形に応じて当該保持部が弾性変形すること
を特徴とする請求項1記載の保持部材。
【請求項3】
前記弾性材料はシリコーンゴムであり、
前記保持部は、挿入された前記診療器具の外形に応じて弾性変形する箇所に応じて肉厚を変えること、を特徴とする請求項2記載の保持部材。
【請求項4】
前記保持部は、複数の内径または内面形状を有する貫通孔が複数設けられ、個々の当該貫通孔にて、異なる内径または内面形状の箇所にて前記肉厚が異なる部分を有することを特徴とする請求項3記載の保持部材。
【請求項5】
複数の前記貫通孔は、同様な機能を有する複数種類の前記診療器具を挿入可能であることを特徴とする請求項4記載の保持部材。
【請求項6】
前記歯科用診療装置に取り付ける取り付け部を備え、
前記複数の貫通孔は、前記取り付け部に対して複数列を有して配置されることを特徴とする請求項4記載の保持部材。
【請求項7】
前記取り付け部は、患者が口腔内から排出した廃液を受ける廃液受け部の縁部に引っ掛け可能な凹形状で形成され、当該縁部が入る入り口側よりも奥側が広くなっていることを特徴とする請求項6記載の保持部材。
【請求項8】
前記診療器具は、操作されると前記管路の液体を出す第1レバーおよび操作されると当該管路で供給される空気を出す第2レバーを有し、
前記診療器具を保持する前記貫通孔は、当該診療器具が挿入された際、前記第1レバーを操作する一方で前記第2レバーを操作しない形状の内面を持つことを特徴とする請求項4記載の保持部材。
【請求項9】
患者が口腔内から排出した廃液を受ける廃液受け部の縁部から離れる方向に凸の円弧外面を持つことを特徴とする請求項1記載の保持部材。
【請求項10】
歯科用の診療器具と、
前記診療器具に接続された管路に液体を供給するための内部配管と、
患者が口腔内から排出した廃液を受ける廃液受け部と、
前記廃液受け部に取り付けられ、請求項1ないし9何れか1項に記載の保持部材と、
を備える歯科用診療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部材および歯科用診療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、術者用インスツルメントを挿着し得る差込孔を備え、これら差込孔に挿着された術者用インスツルメントの給水管路中の残留水をスピットンに排出する為、スピットンに設置可能とされる放水皿と、補助者用キャビネット内に設置され、補助者用インスツルメントを挿着し得る差込孔を備え、これら差込孔に挿着された補助者用インスツルメントの給水管路中の残留水を排出する為の洗浄タンクとを備え、術者用インスツルメントの給水管路及び補助者用インスツルメントの給水管路中の残留水の排出が、共通の水元及び主給水管路から新たな水を給送することによって、同時又は順次なされるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、歯科診療装置を使用した歯科診療に先立ち、歯科診療装置に設けられた液体用管路内に残留した残留液体の排出が行われることがある。すなわち、液体用管路に接続される診療器具を、廃液受け部に設置した保持具で保持し、残留液体が診療器具から廃液受け部に流れるようにする。しかしながら、診療器具を保持具に保持させる際、保持具と診療器具との間にがたつきがある等で不安定な場合、残留液体の排出中に保持具から診療器具が外れるおそれがあり、残留液体の排出を終了するまでの作業性の向上を図ることが困難である。
本発明の目的は、歯科用診療装置に設けられた液体用管路内の残留液体を排出するための作業性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される保持部材は、歯科用診療装置に設けられた液体用管路内の残留液体の排出が行われる際に当該液体用管路に接続される診療器具が取り付けられ、当該診療器具を保持する保持部材であって、弾性材料により構成され、前記診療器具が取り付けられると、取り付けられた当該診療器具により弾性変形して当該診療器具を保持する保持部材である。
ここで、前記診療器具を保持する保持部を有し、当該診療器具が挿入されると、挿入された当該診療器具の外形に応じて当該保持部が弾性変形することを特徴とすることができる。また、前記弾性材料はシリコーンゴムであり、前記保持部は、挿入された前記診療器具の外形に応じて弾性変形する箇所に応じて肉厚を変えること、を特徴とすることができる。さらに、前記保持部は、複数の内径または内面形状を有する貫通孔が複数設けられ、個々の当該貫通孔にて、異なる内径または内面形状の箇所にて前記肉厚が異なる部分を有することを特徴とすることができる。またさらに、複数の前記貫通孔は、同様な機能を有する複数種類の前記診療器具を挿入可能であることを特徴とすることができる。
さらにまた、前記歯科用診療装置に取り付ける取り付け部を備え、前記複数の貫通孔は、前記取り付け部に対して複数列を有して配置されることを特徴とすることができる。この場合、前記取り付け部は、患者が口腔内から排出した廃液を受ける廃液受け部の縁部に引っ掛け可能な凹形状で形成され、当該縁部が入る入り口側よりも奥側が広くなっていることを特徴とすることができる。
また、前記診療器具は、操作されると前記管路の液体を出す第1レバーおよび操作されると当該管路で供給される空気を出す第2レバーを有し、前記診療器具を保持する前記貫通孔は、当該診療器具が挿入された際、前記第1レバーを操作する一方で前記第2レバーを操作しない形状の内面を持つことを特徴とすることができる。
また、患者が口腔内から排出した廃液を受ける廃液受け部の縁部から離れる方向に凸の円弧外面を持つことを特徴とすることができる。
他の観点から捉えると、本発明が適用される歯科用診療装置は、歯科用の診療器具と、前記診療器具に接続された管路に液体を供給するための内部配管と、患者が口腔内から排出した廃液を受ける廃液受け部と、前記廃液受け部に取り付けられ、請求項1ないし9何れか1項に記載の保持部材と、を備える歯科用診療装置ものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、歯科用診療装置に設けられた液体用管路内の残留液体を排出するための作業性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る歯科用診療装置の全体構成を示した斜視図である。
図2】診療器具に液体を供給する液体供給系を説明するブロック図である。
図3】供給装置に保持具が設置された状態の一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図4】保持具の構成を説明する斜視図である。
図5】保持具の構成を説明する平面図である。
図6図5の線A−Aによる保持部を説明する断面図である。
図7図6において診療器具を保持した状態を示す断面図である。
図8図5の線B−Bによる保持部を説明する断面図である。
図9図8において診療器具を保持した状態を示す断面図である。
図10図5の線C−Cによる保持部を説明する断面図である。
図11図10において診療器具を保持した状態を示す断面図である。
図12図5の線D−Dによる保持部および診療器具を図示する断面図である。
図13図12において他の診療器具を保持した状態を部分的に破断して示す斜視図である。
図14図12において他の診療器具を保持した状態を部分的に破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る歯科用診療装置1の全体構成を示した斜視図である。
同図に示すように、本実施形態の歯科用診療装置1では、床面の上に、診療台2が設けられている。ここで、この診療台2は、基台21と、基台21により支持され昇降可能に設けられた座板22と、一端が座板22に取り付けられこの一端を中心に回転可能に設けられた背板23と、背板23に取り付けられ患者の頭を支えるヘッドレスト24とを有している。
【0009】
さらに、本実施形態の歯科用診療装置1では、診療台2の脇に、ドクター用のトレーテーブル31が設けられるとともに、ドクター用の診療器具6を抜き差し自在に保持するためのホルダ32が設けられている。なお、このホルダ32は、トレーテーブル31に取り付けられている。さらに、本実施形態では、診療台2を挟みトレーテーブル31の反対側に、アシスタント用の診療器具6を抜き差し自在に保持するためのホルダ33が設けられている。また、本実施形態では、光源を備えたデンタルライト56、このデンタルライト56を支持するアーム57、このアーム57を支持する支柱58が設けられている。
【0010】
ここにいう診療器具6とは、液体を供給するためのチューブ7と不図示のインスツルメントを接続する部品、スリーウェイシリンジ(歯科用口腔洗浄器)またはマイクロモータハンドピース(歯科用電気回転駆動装置)等の各種の器具をいい、歯科用電気回転駆動装置や歯科用空気回転駆動装置、歯科用口腔洗浄器等が含まれる。
なお、ここにいうインスツルメントとは、チューブ7の端部に取り付けられるハンドピースをいい、例えば、歯科用ガス圧式ハンドピース、歯科用多目的超音波治療器、歯科用エアースケーラ、超音波歯周用スケーラ、歯科重合用光照射器、歯科用口腔内カメラのほか、歯科用根管拡大装置等が含まれる。
付言すると、アシスタント用の診療器具6としては、例えば、患者の口腔内の唾液、血液、切削屑など(以下、「廃液」と称することがある)を吸引する吸引用器具を挙げることができる。この吸引用器具としては、サクションシリンジ(バキュームシリンジ)や、サライバエジェクタ等がある。なお、この吸引用器具は、コンプレッサーやポンプなどの不図示の吸気源に接続されており、この吸気源にて吸気が行われることで、廃液の吸引を行う。
【0011】
また、本実施形態では、診療台2の脇に、患者がうがいを行う際に用いるコップに対して水を供給する供給装置(スピットン装置)5が設けられている。この供給装置5には、各種機能部を内部に有するベースユニット51、ベースユニット51の上に設置され患者の口腔内から排出された廃液を受ける廃液受け部(ベースン)52、廃液受け部52の脇に設けられコップに対し水を供給するコップ用給水部53、清掃用の水を廃液受け部52に供給する清掃用給水部54が設けられている。
【0012】
さらに、本実施形態の供給装置5では、ベースユニット51の内部に、廃液を収容する収容容器(サクションタンク)55が設けられている。ここで、この収容容器55には、上記吸引用器具(サクションシリンジ、サライバエジェクタ等)によって吸引された廃液(患者の口腔内から吸引された廃液)が収容される。
【0013】
次に、図1においてドクター用のホルダ32やアシスタント用のホルダ33に保持される診療器具6に、例えば水等の液体を供給する液体供給系について説明する。
図2は、診療器具6に液体を供給する液体供給系9を説明するブロック図である。
図2に示すように、歯科用診療装置1における液体供給系9は、ポンプ等の液体供給源91と、液体供給源91の液体を診療器具6に接続されているチューブ7に供給する供給装置5の内部配管92と、を含んで構成されている。また、液体供給系9は、上述したチューブ7を含んでもよく、診療器具6の一部を含んでも良い。内部配管92からは、チューブ7、コップ用給水部53および清掃用給水部54に液体が供給される。
ここでチューブ7は、診療器具6ごとに接続されており、内部配管92から複数のチューブ7の各々に液体が供給される。なお、診療器具6とチューブ7とは、例えば滅菌作業を行う際に分解される。
診療器具6のチューブ7は、液体だけが供給されるもののほか、液体およびエア(圧縮空気)が供給されるものがある。そのため、チューブ7には、少なくとも液体が供給されることから、後述する残留液体の交換作業が必要となる。
【0014】
図3は、供給装置5に保持具8が設置された状態の一例を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)は側面図であり、チューブ7の一部又は全部を省略した状態で示す。保持具8は、保持部材の一例である。
図3に示す保持具8は、ドクター用のホルダ32やアシスタント用のホルダ33に保持される診療器具6を保持するための、歯科用診療器具保持具である。
ここで、保持具8は、歯科診療の際には例えばベースユニット51に収容されており、図1に示すような歯科診療の状態では使用されない。実際に患者を診療する歯科診療以外のとき、例えば診察開始時間の前に、保持具8が供給装置5の廃液受け部52に設置され、液体供給系9の例えば内部配管92に残留している残留液体を排出し、新しい液体に替える作業が行なわれる。
【0015】
図3では、保持具8の複数の貫通孔(後述)に、診療器具6(61〜65)が保持される。保持される診療器具6としては、先端部ごと保持される態様の他、先端部を外して継手部分が保持される態様がある。
残留液体を排出し新しい液体に替える作業では、図3に示すように、保持具8を廃液受け部52に設置し、図1に示すドクター用のホルダ32やアシスタント用のホルダ33に保持されている診療器具6を、保持具8の予め定められた位置に挿す。そして、診療器具6からの残留液体は、廃液受け部52から排出され、液体供給系9の液体交換が行われる。
このように、液体供給系9において液体供給源91から内部配管92に新規の液体を供給し残留液体を診療器具6等から排出する作業を行う場合に、保持具8が廃液受け部52に設置される。なお、図3では、コップ用給水部53からの残留液体を受ける水抜き用穴を持つコップ53aが置かれている。
本実施の形態では、廃液受け部52の周囲を囲む縁部52aに保持具8が取り付けられることで、保持具8の廃液受け部52への設置がなされる。なお、これに限られず、例えば廃液受け部52の底部に載置するようにしても良い。
【0016】
図4および図5は、保持具8の構成を説明する図であり、図4は斜視図、図5は平面図である。
図4および図5に示すように、保持具8は、上から見た平面視で略円弧形状であり、互いに同じ側に湾曲する円弧外周面8aおよび円弧内周面8bを有し、湾曲した所定幅を有する帯状の領域を形成している。円弧外周面8aは、保持具8(図3参照)を取り付けた廃液受け部52の縁部52aの部分から離れる方向に凸の円弧外面を有する。これによって、後述する保持部(81〜85)を密集させ、保持具8の全体の大きさを小さくできるとともに、診療器具6を保持具8の比較的狭い領域にまとめることが可能である。円弧内周面8bは、コップ用給水部53との干渉を避ける形状を有している(図3参照)。これにより、コップ用給水部53に隣接させて保持具8を設置することができる。
【0017】
また、保持具8は、上述した廃液受け部52の縁部52aに取り付けるための取り付け部としての溝部8cを持つ。この溝部8cは、廃液受け部52の形状に合わせて湾曲するように形成されている。この溝部8cの形状は、円弧外周面8aとは向きが反対である。
【0018】
保持具8は、診療器具6を保持するように形成された複数の保持部81〜85を持つ。保持部81〜85としては、同一形状のものや異なる形状のものを備えることが可能であり、図5に示す例では、保持部81、82はそれぞれ1個、保持部83〜85はそれぞれ2個ずつである。保持部81〜85は貫通孔で構成されている。
図5を参照すると、保持具8の上面8dは、円弧外周面8aと円弧内周面8bとで形成される平面視で円弧形状の領域であり、この領域に保持部81〜85が複数列を形成して配置されている。すなわち、図5に示す例では、保持部81〜84は、X方向に3列、Y方向に2列で配列されている。保持部85は、X方向に関して保持部81〜84を間に挟むように配置されている。また、図5に示す例では、同様な機能を有する複数種類の診療器具6を保持する保持部83〜85は、診療器具6の取付けの容易性を図るために、保持具8の中心位置(例えば図5の線B−B)から均等な距離(保持部83,85)、共に中心位置(保持部84)などとなるように配置されている。
【0019】
保持部81〜85に形成される貫通孔は、上面8dから窪んで形成され複数の内径または内面形状を有している。この貫通孔は、後述するように、保持する診療器具6の周りを全周にわたって囲む内周面を有する。この貫通孔は、本実施の形態では、貫通方向に横断面形状が変化する段形状に形成されている。貫通孔は、円形状である場合のほか、円形状以外の例えば四角形状であっても良い。
また、保持具8は、柔軟性のある弾性材料により形成されている。保持具8自体は、複数の診療器具6を保持する程度の強度が必要であり、肉厚のブロック状にして必要な強度を確保する構造を採用している。
【0020】
そして、保持具8の保持部81〜85は、診療器具6が取り付けられると、取り付けられた診療器具6の部分により弾性変形して保持する。すなわち、診療器具6が挿入されると、その外形に応じて保持部81〜85が弾性変形する。このような弾性変形は、後述する図6図12に示すように、挿入された診療器具6の外形に応じて弾性変形する箇所に応じて保持部81〜85の肉厚を変えることで実現している。例えば図6に示す保持部81,83の各貫通孔にて、異なる内径の箇所にて肉厚が異なる部分を有する。
このような構成により、必要な強度を確保しつつ、診療器具6に密着し、しっかり保持する保持部81〜85を形成することが可能になる。さらに、診療器具6の形状が少し違っていても保持することが可能になる。
なお、本実施の形態では、保持具8の必要な強度を確保しつつ診療器具6の外形に応じた弾性変形を可能にするための構成として、肉厚を薄くしているが、これに代えてあるいはこれと共に切欠きを設けても良い。
【0021】
また、保持部81〜85のうち保持部83は、さらに保持具8の上面8dから円周状に突出する突出部83aを有する。
なお、図4には、2つの保持部84の一方にアダプタ41が設置されている。保持部84の他方には、アダプタ41あるいはアダプタ41とは異なる形状のアダプタ42を設置することができる(図8参照)。このアダプタ41,42は、保持する診療器具6の様々な形状に対応するために必要に応じて設置されるものである。アダプタ41,42の種類を増やすことで、より多くの形状に対応することが可能になる。図4に示すアダプタ41の図示を、図5では省略している。
【0022】
ここで、保持具8は、本実施の形態では、弾性材料として、シリコーンゴムを用いている。そして、保持具8は、コンプレッション成形により製造される。すなわち、保持具8は、同一材料で一体に成形されるものであり、複数部品を組み立てて製造するものではない。
なお、保持具8の上面8dに、保持部81〜85の各々が保持する診療器具6を識別可能なマークを付しても良い。
【0023】
図6図14は、保持具8の保持部81〜85を説明する断面図である。より具体的には、図6は、図5の線A−Aによる保持部81,83を図示する断面図であり、図7は、図6の断面図において診療器具61,63を保持した状態を示す図である。図8は、図5の線B−Bによる保持部84を図示する断面図であり、図9は、図8の断面図において診療器具64を保持した状態を示す図である。図10は、図5の線C−Cによる保持部82,83を図示する断面図であり、図11は、図10の断面図において診療器具62,63を保持した状態を示す図である。図12は線D−Dによる保持部85および診療器具63を図示する断面図である。図13および図14は、保持部85で診療器具65を保持した状態を部分的に破断して示す斜視図であり、図13は、保持部85で保持される診療器具65の一例を示し、図14は、保持部85で保持される診療器具65の他の例を示す。図13図14とでは、診療器具65の外形形状が互いに異なる。なお、図6図14において、チューブ7(図1または図3参照)の図示を省略している。
以下、図6図14の順に、保持部81〜85およびこれらに保持される診療器具61〜65について説明する。なお、本実施の形態における診療器具61〜65の各々は、上述した診療器具6の一例である。
【0024】
図6に示すように、保持部81は、Z方向の中間位置にある縮径部81aと、その上側および下側にそれぞれ位置する内周面81b,81cと、により形成された貫通孔を有する。上側の内周面81bは、肉厚を縮径部81aや下側の内周面81cよりも薄くし、変形し易いようにしている。
また、図6に示すように、突出部83aを持つ保持部83は、Z方向の中間位置にある縮径部83bと、その上側および下側にそれぞれ位置する内周面83c,83dと、により形成された貫通孔を有する。また、上側の内周面83cには、突出部83aに対応する部分に大径部83eが形成されている。これにより、他の部分よりも薄肉の突出部83aがさらに薄くなり、保持部83が変形し易くなる。
【0025】
図7に示すように、保持部81に上から差し込まれる診療器具61の端部ないし継手611は、大径先端部612と、大径先端部612よりも先端側に位置する小径先端部613と、を備える。
診療器具61の大径先端部612は、保持部81の内周面81bに取り付けられて保持され、また、そのZ方向の位置は、縮径部81aにより規定される。このように、診療器具61は、大径先端部612で保持部81に保持される。なお、小径先端部613は、保持部81の縮径部81aおよび内周面81cと密着しておらず、診療器具61の抜き差しに伴う継手611への荷重を抑制している。また、抜き差しの際に継手611が保持部81の縮径部81aまたは内周面81b,81cに接したとしても、シリコーンゴムで形成されていることから、継手611に対する入力が軽減される。
【0026】
また、保持部83に上から差し込まれる診療器具63の継手631は、大径先端部632と、大径先端部632よりも先端側に位置する小径先端部633と、を備える。保持部83による診療器具63の保持は、上述した保持部81による診療器具61の保持と同じであり、その説明を省略する。なお、保持部83は突出部83aを備えることから、保持部81の場合よりも長い距離での保持が可能になる。また、上述したように、保持部83の入り口部分には大径部83eが形成されていることから、診療器具63を差し込み易い。
【0027】
次に、図8および図9を用いて保持部84に関して説明する。
図8に示すように、保持部84には、互いに異なる形状のアダプタ41,42が設置可能である。
アダプタ41は、Z方向の中間位置にある縮径部411と、その上側および下側にそれぞれ位置する内周面412,413と、により形成された貫通孔を有する。アダプタ42は、Z方向の中間位置にある縮径部421と、その上側および下側にそれぞれ位置する内周面422,423と、により形成された貫通孔を有する。
【0028】
図9に示すように、保持部84のアダプタ41に差し込まれる診療器具64の継手641は、大径先端部642と、大径先端部642よりも先端側に位置する小径先端部643と、を備える。診療器具64の大径先端部642は、アダプタ41の内周面412で保持され、縮径部411によりZ方向の位置が規定される。
保持部84に設置されるアダプタ42では、継手641の大径先端部642は、内周面422で保持され、縮径部421によりZ方向の位置が規定される。
【0029】
次に、図10および図11に示す保持部82,83のうち保持部83については既に説明したので(図6および図7参照)、ここでは保持部82について説明する。
図10に示すように、保持部82は、Z方向の中間位置にある縮径部82aと、その上側および下側にそれぞれ位置する内周面82b,82cと、により形成された貫通孔を有する。そして、図11に示すように、診療器具62における継手621の大径先端部622は、保持部82の内周面82bに取り付けられて保持され、また、そのZ方向の位置は、縮径部82aにより規定される。
【0030】
保持具8は、診療器具61〜65が取り付けられると、取り付けられた診療器具61〜65により弾性変形して診療器具61〜65を保持する。
また、保持具8の保持部81〜85は、診療器具61〜65が挿入されると、挿入された診療器具61〜65の外形に応じて弾性変形する。また、保持具8の保持部81〜85は、他の部分よりも変形し易く、診療器具61〜65と密着して保持する。
【0031】
ここで、保持具8は保持部材の一例であり、歯科用診療装置1は歯科用診療装置の一例である。
液体供給系9は、歯科用診療装置に設けられた液体用管路の一例である。内部配管92は、管路に液体を供給するための内部配管の一例である。
また、診療器具61〜65は、診療器具の一例である。チューブ7は、診療器具に接続された管路の一例である。
また、縮径部81a,82a,83b,411,421、内周面81b,81c,82b,82c,83c,83d,85a,412,413,422,423は、貫通孔の一例である。
また、溝部8cは、取り付け部の一例である。円弧外周面8aは、離れる方向に凸の円弧外面の一例である。廃液受け部52は廃液受け部の一例であり、廃液受け部52の縁部52aは、縁部の一例である。
【0032】
次に、保持部85について、図12図13図14および図3図5を用いて説明する。
保持部85は、例えば図12に示す内周面85aを有し、この内周面85aにより保持具8の貫通孔が形成されている。内周面85aは、診療器具65(図3参照)を保持するためのものである。
この内周面85aは、図4または図5に示すように、Y方向の位置が互いに異なる内周部分85b,85cを含む。すなわち、内周部分85cは、内周部分85bよりも円弧内周面8b寄りに位置し、上面8dとの境界がY方向に関して互いに異なる。このため、保持部85の内部空間を内周部分85b側の空間と内周部分85c側の空間とに分けた場合、両者の広さが異なり、内周部分85b側の空間よりも内周部分85c側の空間の方がY方向に長い。
なお、保持部85は、直線状に形成された保持部81〜84とは異なり、曲がり形状の部分を持つ診療器具65と密着するために、Z方向の中間位置に折れ曲がるように形成されている。
【0033】
図13に示す2つのレバー651,652は、押し込むことで操作される。より詳細には、レバー651は、押し込む操作がなされると診療器具65から液体が排出される操作部であり、レバー652は、押し込む操作がなされると診療器具65からエアが吐出される操作部である。
【0034】
このレバー651,652を持つ診療器具65を保持部85が保持する場合について説明する。
診療器具65が保持部85に保持されると、レバー651は内周面85aの内周部分85b側に位置し、レバー652は内周部分85c側に位置する。レバー651が内周部分85bに当たり、もう一つのレバー652は、内周部分85bにも内周部分85c(図5参照)にも当たらない。
そして、診療器具65が保持部85に取り付けられて保持されると、レバー652が内周部分85bにより押されて診療器具65から液体が排出される。その一方で、レバー652は、内周面85aに接触せず、押されないことから、診療器具65からエアは吐出されない。
このため、診療器具65を保持部85に取り付けると、液体用のレバー651が操作されて診療器具65から液体が排出され、診療器具65から液体を排出する作業を容易に行うことができる。また、その際に、診療器具65からエアが出ないことから、液体がエアにより散らばって周囲を汚してしまう事態を防止できる。
【0035】
ここで、診療器具65のレバー651は第1レバーの一例であり、レバー652は第2レバーの一例である。また、内周部分85b、85cを持つ内周面85aは、診療器具が保持部に挿入されると第1レバーを操作する一方で第2レバーを操作しない形状の内面の一例である。
【0036】
次に、保持部85により、図14に示すレバー651を持つ診療器具65が保持される場合について説明する。
診療器具65のレバー651は、液体排出用のものである。診療器具65が保持部85に保持されると、レバー651は、内周面85aの内周部分85bにより押され、液体が排出される。
【0037】
次に、溝部8cの形状について説明する。
溝部8cは、入り口側よりも奥側が広くなるような凹形状に形成されている。より詳細には、例えば図14に示すように、溝部8cのZ方向下側が廃液受け部52の縁部52aが入る入り口側であり、縁部52aが奥側まで入り込んで縁部52aに引っ掛けられる。そして、入り口側の開口長さW1と奥側の内部長さW2を比べると、奥側の内部長さW2の方が入り口側の開口長さW1よりも長い。
このように、廃液受け部52の縁部52aが、保持具8において広めに形成された溝部8cの奥側に至ることで、保持具8が廃液受け部52に取り付けられる。
【0038】
さらに説明すると、本実施の形態のように、保持具8が凹形状の部分で廃液受け部52の凸形状の部分を受ける構造を採用する場合、廃液受け部52への引っ掛けに懸念が生じる。すなわち、廃液受け部52が陶器製で縁部52aの形状寸法に比較的大きなばらつきがある場合、溝部8cの奥側が入り口側と同じ幅であったり狭い幅であったりすると、廃液受け部52への引っ掛けを確実に行うことが困難になるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、溝部8cの奥側が入り口側よりも広い幅とすることで、廃液受け部52の縁部52aの形状寸法にばらつきが生じたり縁部52aの位置によって溝部8cの厚さが不均一であったりするような場合でも、廃液受け部52への引っ掛けを確実に行うことを可能にしている。
付言すると、このような溝部8cの横断面形状は、溝部8cの長さ方向に関して同一に形成されているが、部分的に形状を変更しても良い。
【0039】
ここで、本実施の形態では、図3(a)に示すように、保持具8を廃液受け部52の縁部52aに引っ掛けた場合、保持具8は、廃液受け部52に対して斜めに取り付けられるようになっている。言い換えると、同図(b)に示すように、保持具8の上面8dが傾斜した状態になる。このような構成を採用する理由を説明する。
保持具8の保持部81〜84は、上面8dに対して略垂直に形成されている(図6図8図10参照)。このため、診療器具61〜64は、上面8dに対して略垂直な状態で保持部81〜84に保持される(例えば図7参照)。仮に、保持具8の上面8dが斜めではなく水平になるように廃液受け部52に取り付けられる場合、診療器具61〜64に接続されているチューブ7は根元で強く折れ曲がってしまう。そのため、長期に亘る使用によりチューブ7が痛んで部品としての寿命が短くなるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、保持具8を廃液受け部52に斜めに取り付けることで、保持具8に保持されている診療器具61〜64が斜めになるようにし、これにより、保持具8に保持される状態でチューブ7にかかる負荷を軽減し、チューブ7の製品寿命が短くなることを防止している。
付言すると、保持具8において、診療器具61〜64の差込口(保持部81〜84)を上面8dに対して垂直にすることで、差込口を上面8dに対して斜めにする場合に比べ、保持具8の小型化に貢献できる。
【0040】
このように、本実施の形態では、残留液体の交換作業を行う際に廃液受け部52に設置される保持具8は、診療器具61〜65が保持部81〜85に取り付けられると弾性変形して診療器具61〜65を保持するように構成されている。このため、保持部81〜85に診療器具61〜65を挿入することで診療器具61〜65がより確実に保持され、残留液体排出のための作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…歯科用診療装置、7…チューブ、8…保持具、8a…円弧外周面、8c…溝部、9…液体供給系、52…廃液受け部、52a…縁部、92…内部配管、61〜65…診療器具、81a,82a,83b,411,421…縮径部、81b,81c,82b,82c,83c,83d,85a,412,413,422,423…内周面、651,652…レバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14