【解決手段】液不透過性のバックシート30及びバックシート30の身体側に配置される高吸収性シート20を有する吸収性本体10と、外形形状を構成する外装体40と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、高吸収性シートが、1枚の基体不織布及び高吸収性ポリマーを有し、基体不織布の、衣類側表面が起毛しており、身体側表面は起毛しておらず、基体不織布の起毛した面において、高吸収性ポリマーが固着担持されており、平面視において、高吸収性ポリマー担持領域20Aが、高吸収性シート20の長手方向の略中央領域において、幅方向両側に括れを有する略砂時計形状である、パンツ型吸収性物品1を提供する。
液不透過性のバックシート及び前記バックシートの身体側に配置される高吸収性シートを有する吸収性本体と、外形形状を構成する外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、前側領域、股下領域、後側領域からなり、
前記パンツ型吸収性物品は、前記前側領域の両側縁部と前記後側領域の両側縁部がそれぞれサイドシール部で接合されることにより、前記前側領域及び前記後側領域の上部にウエスト開口部、前記前側領域及び前記後側領域の間の前記股下領域の左右両側に脚開口部、をそれぞれ形成しており、
前記高吸収性シートが、1枚の基体不織布及び高吸収性ポリマーを有し、
前記基体不織布の、衣類側表面が起毛しており、身体側表面は起毛しておらず、前記基体不織布の起毛した面において、前記高吸収性ポリマーが固着担持されており、
平面視において、高吸収性ポリマー担持領域が、高吸収性シートの長手方向の略中央領域において、幅方向両側に括れを有する略砂時計形状である、パンツ型吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について説明する。なお、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の腹側となる位置を「前」又は「前側」と称し、着用者の背側となる位置を「後」又は「後側」と称する。また、パンツ型吸収性物品1を着用したときに着用者の肌側となる面を「内側」と称する。
また、長手方向とは、パンツ型吸収性物品1を
図2のように展開した状態における平面視において、前側領域Aから後側領域Cに亘る方向であり、図中Yで表す方向であり、幅方向とは、長手方向に対して直交する方向であり、図中Xで表す方向である。また、パンツ型吸収性物品1の着用時に着用者の左右に亘る方向についても幅方向という文言を用いている。
さらに、身体側表面とは、各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
【0017】
<パンツ型吸収性物品>
図1は、本発明のパンツ型吸収性物品1の斜視図であり、
図2は、本発明のパンツ型吸収性物品1の展開平面図である。パンツ型吸収性物品1は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に略帯状の形態を有する吸収性本体10と、吸収性本体10の外側に重なりつつ吸収性本体10の周囲に延びてパンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する外装体40と、を有している。そして、
図1及び
図2に示すように、外装体40によりパンツ型吸収性物品1の外形形状が構成され、外装体40は、着用者の腹部に当接する前側領域A、着用者の背部に当接する後側領域C、及び吸収性本体10の一部又は全部が重なるように配置される股下領域Bに区分される。なお、本発明のパンツ型吸収性物品1の展開させた状態において、外装体40は
図2に示すように略砂時計形状を有している。
【0018】
なお、伸縮性部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の長手方向の寸法は600mm以上1000mm以下、幅方向の寸法は450mm以上900mm以下であることが好ましい。伸縮性部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品1を提供することができる。
【0019】
[吸収性本体]
図3は、
図2のX
1−X
1線における吸収性本体10の断面図である。
図2及び
図3に示すように、吸収性本体10は、液不透過性のバックシート30とバックシート30の身体側に配置される高吸収性シート20を有する。
従来のパンツ型吸収性物品に用いる吸収性本体では、トップシート、高吸収性シート(又はフラップパルプ等の吸収性繊維と高吸収性ポリマーを混合した吸収体)及びバックシートの3つの部材で層を形成した態様が広く一般的に用いられてきたが、本発明では、トップシートを用いずに、液不透過性のバックシート30と高吸収性シート20の2つの部材で吸収性本体10の層を形成しているため、従来のパンツ型吸収性物品よりも更に薄型にすることができ、スカートやズボンの下にパンツ型吸収性物品1を着用していることを目立たなくすることができる。
なお、上記同様に、各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品1に対応できるように、吸収性本体10の長手方向の寸法は350mm以上550mm以下、幅方向の寸法は100mm以上300mm以下であることが好ましい。また、薄型化を実現するために、吸収性本体10の厚みは、1.0mm以上2.5mm以下であることが好ましい。
【0020】
(高吸収性シート)
図3に示すように、高吸収性シート20が、1枚の基体不織布21及び高吸収性ポリマー22を有し、基体不織布21の衣類側表面が起毛しており、基体不織布21の起毛した面において、高吸収性ポリマー22が固着担持されている。また、基体不織布21の身体側表面は起毛していない。基体不織布21の身体側表面が起毛していないことにより、基体不織布21の身体側表面の繊維の密集性が高く、高吸収性ポリマー22の外への漏れを防止することができる。
以上のように、基体不織布の両面は、起毛した面と起毛していない面に分かれるのであるが、本発明においては、基体不織布21の衣類側表面(起毛した面)は、後述するように、回転ノコ刃等を用いて起毛処理を行うことで起毛させた面(毛羽立たせた面)を指し、基体不織布21の身体側表面(起毛していない面)は、起毛処理を行っていない面を指す。
【0021】
(基体不織布)
本発明では、上記したとおり、吸収性本体10にトップシートを用いていないため、吸収性本体10において最も身体側に位置する部材が基体不織布21となるため、基体不織布はトップシートと同様に液透過性を有する必要がある。そのため、基体不織布21としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維や、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法、エアスルー法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものを用いることが好ましい。特に、本発明では、基体不織布21を起毛させるため、嵩高さを得やすいエアスルー不織布を用いることがより好ましい。基体不織布21が起毛していることにより、高吸収性ポリマーがより少ない接着剤で担持できるとともに、不織布本来の嵩高さに加えて、適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上することができる。また、基体不織布21が起毛していることにより表面積が大きくなることで液拡散性も向上し、基体不織布21の起毛していない面がトップシートとして機能しつつ、起毛した面が液拡散性シートの役割も十分に担うことができる。基体不織布21の衣類側表面を起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチが挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。
【0022】
基体不織布21としてエアスルー不織布を用いる場合には、1枚のエアスルー不織布は少なくとも2層構造を有し、各層の密度が互いに異なることが好ましく、起毛される面に最も密度の低い層(最低密度層)を設けることが好ましい。基体不織布21が低密度であるほうが起毛させやすい点で好ましいが、低密度であると起毛処理時に受ける負荷に耐えられない可能性がある。また、低密度であると、担持させた高吸収性ポリマー22が、基体不織布21の繊維間を通り抜けて高吸収性シート20の外に漏れる可能性もある。
したがって、1枚のエアスルー不織布を少なくとも2層を有する構造とし、各層の密度が互いに異なり、起毛される面に最低密度層を設け、さらに、最も密度の高い層(最高密度層)を最も身体側に配置させることで、起毛処理時の耐久性及び起毛性を向上させ、高吸収性ポリマー22の漏れを防止することができる。
また、最高密度層の密度は、0.10g/cm
3以上であることが好ましく、0.15g/cm
3以上であることがより好ましく、最低密度層の密度は、0.04g/cm
3以下であることが好ましく、0.03g/cm
3以下であることがより好ましい。
さらに、最低密度層の親水度が最高密度層の親水度よりも低いことが好ましい。このように親水度を調整することで、高密度側からの体液の素早い吸収性を維持しつつ、吸収性本体10から身体側表面への体液の戻り(ウェットバック)が起こりにくくなる。
【0023】
ここで、基体不織布の起毛した面が身体側に向くように配置すると、一度に多量の尿が基体不織布を介さずに基体不織布の起毛した面に固着担持された高吸収性ポリマーに移行することになり、当該高吸収性ポリマーがゲルブロッキングを起こし、吸収速度が低下する場合があるが、本発明では、
図3に示すように、基体不織布21の起毛した面が衣類側に向くように配置しているため、基体不織布21の起毛した繊維を介して尿が高吸収性ポリマー22に導かれることにより、吸収速度の低下を抑制することができる。
【0024】
基体不織布21の、長手方向の寸法は、350mm以上550mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法は、100mm以上300mm以下であることが好ましい。また、基体不織布21の厚さは、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。また、基体不織布21の坪量は、安定的に製造する観点から、20g/m
2以上180g/m
2以下であることが好ましく、40g/m
2以上160g/m
2以下であることがより好ましい。基体不織布21の坪量が、20g/m
2未満の場合には、起毛処理時に基体不織布21の断裂が起こりやすく、また、製造時にかかるテンションにより幅が狭くなりやすく、製造条件のコントロールが難しくなる。一方で、基体不織布21の坪量が、180g/m
2より大きい場合、起毛処理は安定的に行うことができ、装着時の柔軟性も向上するが、パンツ型吸収性物品1の厚みを薄くすることが困難になる。
【0025】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー22としては、尿を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、高吸収性ポリマー22の坪量は、吸収性能を確保するために、200g/m
2以上1200g/m
2以下とすることが好ましい。また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさをより向上させる観点から、高吸収性ポリマー22の坪量は、300g/m
2以上900g/m
2以下とすることがより好ましい。
【0026】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー22の中位粒子径は、50μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0027】
高吸収性ポリマー22は、ホットメルト接着剤により、基体不織布21の起毛した面に固着担持されていることが好ましい。なお、高吸収性ポリマー22の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないように、ホットメルト接着剤の含有量は10g/m
2以下であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体やスチレン−イソプレン−スチレン系共重合体など合成ゴム系、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法など公知の方法が利用できる。
【0028】
(高吸収性ポリマー担持領域)
本発明では、
図2に示すように、平面視において、高吸収性ポリマー担持領域20Aは、高吸収性シート20の長手方向の略中央領域において、幅方向両側に括れを有する略砂時計形状である。
ここで、従来の高吸収性シートにおいて、平面視における高吸収性ポリマー担持領域は、その幅方向の寸法は長手方向の一方端部から他方端部にかけて略同一である、略長方形状である場合が多く、当該高吸収性シートを備えた吸収性本体をパンツ型吸収性物品に用いた場合には、幅方向の寸法が最も狭くなる股間部に合わせた、高吸収性シートを用いる必要があり、高吸収性ポリマー担持領域の幅方向の寸法を全体的に狭くせざるを得ず、高吸収性ポリマー担持領域の幅方向の寸法を全体的に狭くすることで、パンツ型吸収性物品の吸収性は低下することになる。一方で、吸収性を向上させるために、高吸収性ポリマー担持領域の幅方向の寸法を大きくすると、パンツ型吸収性物品の着用時に、着用者の股間部において、脚圧によって高吸収性シートの幅方向中央側で歪や隆起が発生し、スカートやズボンの下にパンツ型吸収性物品を着用していることが目立つことがあった。
本発明では、平面視において、高吸収性ポリマー担持領域20Aは、高吸収性シート20の長手方向の略中央領域において、幅方向両側に括れを有する略砂時計形状であるため、パンツ型吸収性物品1の着用時に、着用者の股間部において、高吸収性シート20の幅方向中央側における歪や隆起を防ぎ、かつ、成人用のパンツ型吸収性物品1として十分な吸収性を維持することができる。
【0029】
以下、さらに、高吸収性ポリマー担持領域20Aの態様について詳細に説明する。まず、高吸収性ポリマー担持領域20Aの長手方向の寸法は、基体不織布21の長手方向の寸法に対して80%以上95%以下であることが好ましい。また、略砂時計形状の括れていない領域における、高吸収性ポリマー担持領域20Aの幅方向の最大寸法は(
図2中の符号20C)、160mm以上250mm以下であることが好ましく、略砂時計形状の括れている領域の幅方向の最小寸法(
図2中の符号20B)は、50mm以上100mm以下であることが好ましい。そして、略砂時計形状である高吸収性ポリマー担持領域20Aにおいて、高吸収性ポリマー担持領域20Aの前側端部から括れを開始する地点までの長手方向の距離は、高吸収性ポリマー担持領域20Aの長手方向の寸法に対して、20%以上30%以下であることが好ましく、高吸収性ポリマー担持領域20Aの後側端部から括れを開始する地点までの長手方向の距離は、高吸収性ポリマー担持領域20Aの長手方向の寸法に対して、20%以上30%以下であることが好ましい。
高吸収性ポリマー担持領域20Aの略砂時計形状が、このように特定されることにより、パンツ型吸収性物品1の着用時に、着用者の股間部において、高吸収性シート20の幅方向中央側における歪や隆起をより効果的に防ぎ、かつ、成人用のパンツ型吸収性物品1として吸収性を向上させることができる。
【0030】
さらに、吸収性シート20の幅方向中央側における歪や隆起をより防ぐために、吸収性本体10が外装体40と組み合わさる際には、外装体40の股下領域Bと高吸収性ポリマー担持領域20Aの括れている領域が重複することが好ましい。
【0031】
(高吸収性ポリマー担持領域を略砂時計形状にする方法)
図4及び
図5は、高吸収性ポリマー22を略砂時計形状に担持させる方法を示すイメージ図である。高吸収性ポリマー担持領域20Aの略砂時計形状は、高吸収性ポリマー散布装置600に2つの第一のシャッター700及び2つの第二のシャッター800を設け、第一のシャッター700及び第二のシャッター800の開閉タイミングを調整することにより、形成することができる。
起毛した面を上側に配した基体不織布21が流れるラインの上部に、2つの第一のシャッター700及び2つの第二のシャッター800を設けた高吸収性ポリマー散布装置600を配置する。なお、
図5に示すように、第一のシャッター700及び第二のシャッター800は、ラインの流れ方向に対して、その左右にそれぞれ一つずつ設けられ、第一のシャッター700は第二のシャッター800の上部に設けられる。
なお、第一のシャッター700は、ライン面に対して略水平に設けられ、第二のシャッター800は開いている状態では、第一のシャッター700及びライン面に対して略垂直になるように設けられる。なお、第一のシャッター700同士及び第二のシャッター800同士の開閉タイミングはそれぞれ略同一である。
【0032】
第一のシャッター700は、一定のタイミングでライン面に対して略水平に開閉し、ラインの流れ方向に間欠的に高吸収性ポリマー担持領域20Aを形成するためのシャッターであり、第二のシャッター800は、高吸収性ポリマー22を散布する幅を変更し、上記の括れを形成するためのシャッターである。2つの第二のシャッター800は、
図5に示すように、それぞれラインの水平面に対して、ライン幅の内側に向けて所定の角度をつけて閉じることにより、高吸収性ポリマー22を散布する幅を小さくし、高吸収性ポリマー担持領域20Aに括れを形成し、略砂時計形状にすることができる。
第二のシャッター800が仮に第一のシャッター700のように、ライン面に対して略水平に開閉する態様の場合には、第二のシャッター800上で高吸収性ポリマー22が飛び跳ね、基体不織布21への高吸収性ポリマー22の散布にムラが出るおそれがあるが、第二のシャッター800が上記のように開閉することにより、基体不織布21に高吸収性ポリマー22をムラなく散布することができる。また、第二のシャッター800が閉じることにより、基体不織布21に散布できなかった高吸収性ポリマー22については、
図5に示すように回収して再利用すればよい。
【0033】
高吸収性ポリマー担持領域20Aの形成を開始するタイミングで、第一のシャッター700は、略砂時計形状の括れていない領域における、高吸収性ポリマー担持領域20Aの幅方向の寸法に合わせて開き、その際に、第二のシャッター800は、第一のシャッター700による、略砂時計形状の括れていない領域における、高吸収性ポリマー担持領域20Aの幅方向の寸法の調整を妨げないように開いている。そして、
図5に示すように、括れ形成を開始する地点で第二のシャッター800が閉じ始め、その後、再度第二のシャッター800が開くことで括れの形成を終了し、その後、再び略砂時計形状の括れていない領域を形成し、最終的には第一のシャッター700が閉じることで一つの高吸収性ポリマー担持領域20Aの形成が終了する。なお、第一のシャッター700は、基体不織布21への散布の開始と終了を決めるシャッターであるため、第二のシャッター800よりも速い開閉速度が必要となる。
【0034】
(バックシート)
バックシート30は、高吸収性シート20が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、通気性又は非通気性の樹脂フィルムから形成される。ここで、使用できる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。強度及び加工性の点から、バックシート30の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有する樹脂フィルムをバックシート30として使用することが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0035】
(立体ギャザー)
図2及び
図3に示すように、吸収性本体10の幅方向両端部には、長手方向に沿って、立体ギャザー50が設けられていることが好ましい。パンツ型吸収性物品1に立体ギャザー50を設けることにより、幅方向からの尿漏れを抑制できる。
【0036】
立体ギャザー50は、立体ギャザーシート51及び少なくとも1本の伸縮性弾性部材52を備えており、立体ギャザーシート51は、高吸収性シート20とバックシート30に固定された固定部512と、高吸収性シート20とバックシート30に固定されずに起立した自由部511と、に区分され、自由部511の先端は折り返され、折り返された部分に長手方向に沿って、伸縮性弾性部材52が配されている。伸縮性弾性部材52を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー50が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなり、フィット性を向上させることができる。なお、自由部511の長手方向の両端部は、基体不織布21の身体側表面に固定されている接合領域を有する(図示しない)。これにより、接合領域を除く部位のみにおいて起立し、接合領域を除く領域の起立性を向上させることができる。
また、より立体ギャザー50の起立性を向上させるために、接合領域の長手方向の寸法は30mm以上70mm以下であることが好ましい。さらに、接合領域を除く、基体不織布21の身体側表面からの立体ギャザー50の高さは、20mm以上50mm以下であることが好ましい。立体ギャザー50の高さを上記の範囲とすることにより、尿漏れを十分に抑制することができる。
【0037】
また、固定部512の一方端部は、バックシート30の衣類側表面における幅方向の端部と接合し、バックシート30の幅方向端部を起点として基体不織布21側に折り返された形状となっており、固定部512の他方端部は、基体不織布21の身体側表面における幅方向の端部と接合している。このように、固定部512がバックシート30及び基体不織布21と接合していることにより、立体ギャザー50が高吸収性シート20にしっかりと固定され、また、高吸収性シート20の幅方向からの高吸収性ポリマー22の漏れを防止することができる。なお、上記の接合はホットメルト接着剤による接合等の従来公知の方法を用いることができる。
【0038】
立体ギャザーシート51としては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性のシート、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポリエチレンフィルムを用いることができる。また、立体ギャザーシート51の坪量は、加工性及び強度の点から、15g/m
2以上100g/m
2以下であることが好ましい。これらのなかでも、液不透過性と肌触りのバランスの良さのため、スパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0039】
さらに、伸縮性弾性部材52としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。なお、1つの自由部511に配される伸縮性弾性部材52の本数は1本以上3本以下であることが好ましい。
【0040】
[外装体]
外装体40は、パンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する部材であり、吸収性本体10のバックシート30側に積層され、不織布及び伸縮性部材を積層して形成されたものである。不織布の態様は特に限定されないが、一般に外装不織布シート401と、外装不織布シート401の身体側の内装不織布シート402から構成される。なお、外装体40は、前側領域A、股下領域B、後側領域Cの3つの領域からなる。ここで、これらの領域の区分について、長手方向において、後述するサイドシール部403を設ける領域(すなわち脚開口部Eを形成しない領域)を、前側領域A又は後側領域Cとし、サイドシール部403を設けない領域(すなわち、脚開口部Eを形成する領域)を股下領域Bとする。
【0041】
外装不織布シート401は、股下領域Bの中心線を中心として略対称な前側領域Aと後側領域Cとを有し、吸収性本体10も上記中心線を中心として略対称に配置されている。そして、吸収性本体10が内側となるように外装不織布シート401(及び吸収性本体10)が上記中心線で二つ折りにされ、前側領域A及び後側領域Cの両側縁部がサイドシール部403を介して接合されている。これにより、外装不織布シート401は、前側領域A及び後側領域Cの上部にウエスト開口部D、前側領域A及び後側領域Cの間の股下領域Bの左右両側に脚開口部Eを形成し、パンツ型吸収性物品1を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。
【0042】
外装不織布シート401の内側には、内装不織布シート402が積層されており、外装体40の強度を高めるようになっている。また、外装体40には、外装不織布シート401及び内装不織布シート402に加えて、吸収性本体10の周縁を覆う補助シートが設けられ、これが内装不織布シート402に積層されていてもよい。外装不織布シート401及び内装不織布シート402には、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアスルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、10g/m
2以上40g/m
2以下とすればよい。
【0043】
本発明のパンツ型吸収性物品1には、ウエスト開口部Dの周縁、脚開口部Eの周縁、前側領域A、股下領域B及び後側領域Cにおいて、外装不織布シート401及び内装不織布シート402の間に、複数の外装体用伸縮性部材404が配置されており、これが、外装不織布シート401及び内装不織布シート402に接合されている。
外装体用伸縮性部材404としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができ、その太さは、300dtex以上1500dtex以下であることが好ましい。
なお、内装不織布シート402と外装体用伸縮性部材404とは、外装体用伸縮性部材404にのみ介在するホットメルト接着剤を介して互いに接着されていることが好ましい。
【0044】
[パンツ型吸収性物品の製造方法]
パンツ型吸収性物品1の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から順にバックシート30と高吸収性シート20を配置し、立体ギャザー50を上記の態様で高吸収性シート20及びバックシート30に固定して吸収性本体10を作製する工程、外装体用伸縮性部材404を外装不織布シート401及び内装不織布シート402に接合する工程、外装体40の身体側に吸収性本体10を配設する工程、前側領域Aの両側縁部と後側領域Cの両側縁部を、それぞれサイドシール部403を介して接合する工程、の順に各工程を経ることで、パンツ型吸収性物品1を得ることができる。
【0045】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。