【課題】ギャザー部における機能性と外観審美性を両立することができ、特にヒステリシスに関して特定の優れた性能を有する弾性繊維の使用によって紙おむつ等に使用したときに優れたフィット性を発現可能な複合積層体の提供。
【解決手段】布帛間に、複数本の弾性繊維と、弾性繊維と交差する方向に並設され2枚の布帛と弾性繊維を接合する樹脂とを有し、樹脂と弾性繊維の交差箇所間では布帛と弾性繊維が離間しており、布帛に対する弾性繊維の繊度比が0.5以上300以下であり、弾性繊維が[式1](B)/(A)×100%≧70%、[式2](D)/(C)×100%≧60%の応力範囲をともに満たす複合積層体。(A)は、弾性繊維の300%繰り返し伸長を5サイクル行った際、5サイクル目100%伸長時往き応力、(B)はその戻り応力、(C)は200%伸長時往き応力、(D)はその戻り応力をそれぞれ表す。
一方向に延在する前記樹脂と前記弾性繊維が交差する箇所での複合積層体の厚みが、0.1mm以上2.0mm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の複合積層体。
前記弾性繊維の長手方向に隣り合う、一方向に延在する前記樹脂と前記弾性繊維が交差する箇所間での複合積層体の厚みの最大値が1mm以上20mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の複合積層体。
複合積層体を前記弾性繊維の延在方向に最大に伸張した状態での、一方向に延在する前記樹脂の1本あたりの幅が0.2mm以上10mm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の複合積層体。
複合積層体を前記弾性繊維の延在方向に最大に伸張した状態での、一方向に延在する前記樹脂の間隔が1mm以上20mm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の複合積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、高度な紙おむつ製品や衣料品に求められるギャザー部における機能性と外観審美性を両立することができ、とくに、特定性能を有する、特にヒステリシスに関して特定の優れた性能を有する弾性繊維の使用によって紙おむつ等に使用したときに優れたフィット性を得ることが可能な複合積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る複合積層体は、2枚の布帛の間に、一方向に複数本並列に配置された弾性繊維と、前記弾性繊維と交差する一方向に複数本並設され前記2枚の各布帛と前記弾性繊維を接合する樹脂とを有する複合積層体であって、前記弾性繊維の長手方向において隣り合う前記樹脂と前記弾性繊維が交差する箇所の間では前記2枚の各布帛と前記弾性繊維が離間しており、前記布帛を構成する繊維の繊度に対する前記弾性繊維の繊度の比が0.5以上300以下であり、かつ、前記弾性繊維が以下の式1及び式2の応力範囲をともに満たすことを特徴とするものからなる。
[式1](B)/(A)×100%≧70%
[式2](D)/(C)×100%≧60%
ここで、(A)、(B)、(C)、(D)については、前記弾性繊維の300%繰り返し伸長を5サイクル行い、(A)は5サイクル目の100%伸長時の往き応力、(B)は5サイクル目の100%伸長時戻り応力、(C)は5サイクル目の200%伸長時の往き応力、(D)は5サイクル目の200%伸長時戻り応力、をそれぞれ表す。
【0010】
このような本発明に係る複合積層体においては、いわゆるデザインコート等により複合積層体の所定の領域に所定の方向に必要な量だけ精度よく付与された樹脂を介して、弾性繊維が両側の布帛に弾性繊維の長手方向に間欠的に所望の形態で接合され、弾性繊維の長手方向において隣り合う樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では2枚の各布帛と弾性繊維が離間している構造が高い規則性をもって構成されて高度な伸縮機能を有するようになり、優れた着用時のフィット性となめらかで規則性、均一性のよい襞を有するギャザー部を備えた複合積層体が実現される。そして、このようなギャザー部を備えた複合積層体の外観審美性を高めるために、とくに、弾性繊維の存在が目立たない外観を得るために、本発明では、布帛を構成する繊維の繊度に対する弾性繊維の繊度の比が0.5以上300以下である構成を採用している。さらに、本発明では特に、弾性繊維が上記式1及び式2の応力範囲をともに満たす構成を採用している。この構成は、弾性繊維が、伸縮の際に特定の値以下の優れた(つまり、少ない)ヒステリシスロスを発現できるものであることを表す構成であり、とくに、特定の弾性繊維の使用と、接着用樹脂を所定の領域に所定の方向に必要な量だけ精度よく付与できるデザインコート技術等によって達成されるものである。この少ないヒステリシスロスの弾性繊維の使用により紙おむつ等に使用したときに優れたフィット性を得ることが可能になり、上述の用いられる弾性繊維と布帛の形態の最適化によってギャザー部の襞の均一性に優れ美麗な外観も有する複合積層体の実現が可能になる。
【0011】
弾性繊維が細い場合、複合積層体の製造において解舒張力変動が大きくなり、それに起因するギャザー部の襞の乱れが大きくなりやすいので、上記本発明に係る複合積層体においては、上記弾性繊維の繊度が350dtex(デシテックス)以下である場合、本発明による外観審美性向上効果がより顕著に発現され、ギャザー部における襞の均一性が高められる。したがって、本発明による効果をより高く得たい場合には、上記弾性繊維の繊度が350dtex以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る複合積層体においては、上記の如くヒステリシスロスの少ない弾性繊維を使用するに際し、前述の式1及び式2をより確実に満たすために、上記弾性繊維が、アルキル側鎖を有する高分子ジオールを分子構造中に有するポリウレタン弾性糸を含むことが好ましい。このような特定の弾性繊維の使用により、より確実に少ないヒステリシスロスが達成され、紙おむつ等に使用したときに優れたフィット性をより確実に得ることが可能になる。
【0013】
また、本発明に係る複合積層体においては、ギャザー部を備えた複合積層体の商品価値をより高めるために、目視での外観において、複合積層体中の弾性繊維が見えないか弾性繊維が存在していることが確認できない、あるいは弾性繊維が非常に見づらいかその存在が非常に確認しづらいという要求を満たすようにすることが好ましい。このような要求を満たすべく、本発明では、上述の布帛を構成する繊維の繊度に対する弾性繊維の繊度の比が0.5以上300以下である構成を採用するとともに、複合積層体を前記弾性繊維の延在方向に最大に伸張した状態で複合積層体の外部から布帛の外面を前記弾性繊維と交差する方向に分光測色計で測色していった際の、L
*値が最大値を示すポイントにおけるL
*値、a
*値、b
*値(L
*1、a
*1、b
*1)とL
*値が最小値を示すポイントにおけるL
*値、a
*値、b
*値(L
*2、a
*2、b
*2)を用いて次式で規定される色差変動ΔE
*vが1.0以下である複合積層体とすることができる。
ΔE
*v=√[(L
*1―L
*2)
2+(a
*1―a
*2)
2+(b
*1―b
*2)
2]
【0014】
この色差変動ΔE
*vは、複合積層体を弾性繊維の延在方向に最大に伸張した状態で複合積層体の外部から布帛の外面を弾性繊維と交差する方向に分光測色計で測色していった際に上式で表されるもので、測色方向における色差の変動の度合を示すものである。布帛と弾性繊維が同色系の場合には、色差変動ΔE
*vはとくに明度を示すL
*値の変化度合に左右され、それによって弾性繊維の見えやすさと見えづらさ、その存在の確認のしやすさとしづらさが左右される。この色差変動ΔE
*vが大きいほど、弾性繊維との交差部分での色差の変化が大きいので、外観上、弾性繊維が見えやすくなったり、弾性繊維の存在が確認しやすくなる。色差変動ΔE
*vが1.0以下であることにより、弾性繊維が見えないか弾性繊維が存在していることが確認できない、あるいは弾性繊維が非常に見づらいかその存在が非常に確認しづらいという要求特性が満たされることになる。したがって、所望の伸縮機能、優れた着用時のフィット性となめらかな肌触りで規則性のよい襞を有し、かつ、特に外部からの目視では弾性繊維の存在が目立たない均質な外観の審美性に優れた複合積層体が実現される。
【0015】
また、本発明に係る複合積層体においては、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での複合積層体の厚みが、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.1mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。
【0016】
また、本発明に係る複合積層体においては、弾性繊維の長手方向に隣り合う、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所間での複合積層体の厚みの最大値が1mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る複合積層体においては、複合積層体を弾性繊維の延在方向に最大に伸張した状態での、一方向に延在する樹脂の1本あたりの幅が0.2mm以上10mm以下であることが好ましい。このような好ましい樹脂幅は、デザインコートによって精度よく調整できる。
【0018】
また、本発明に係る複合積層体においては、複合積層体を弾性繊維の延在方向に最大に伸張した状態での、一方向に延在する樹脂の間隔が1mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る複合積層体においては、弾性繊維の熱軟化点が100℃以上240℃以下であることが好ましい。これによって、デザインコートされた樹脂との接合が容易に行われ得る。
【0020】
さらに、本発明に係る複合積層体においては、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂は、布帛および/または弾性繊維の構成成分と同一の成分を含むものであることが好ましい。これによって、デザインコートされた樹脂との接合が容易化される。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明に係る複合積層体によれば、高度な紙おむつ製品や衣料品に求められるギャザー部における機能性と外観審美性を両立させた複合積層体を得ることができ、とくに、ヒステリシスに関して特定の優れた性能を有する弾性繊維の使用によって紙おむつ等に使用したときに優れたフィット性を得ることが可能な複合積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
先ず、本発明によって得られる複合積層体の形態について述べる。
図1に、本発明により製造された複合積層体の試験片の代表的な一例を略平面方向から撮影した外観写真を例示する。
図2は、
図1の複合積層体の試験片を略断面方向から撮影した外観写真を示しており、図におけるAは一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での厚みを示し、Bは一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所間の厚みの最大値の測定箇所を示している。
図3に、
図1の複合積層体の試験片を弾性繊維の延在方向に手で伸張する際の伸長途中の状態を示す、略平面方向から撮影した外観写真を例示する。
図4に、
図3の複合積層体の試験片を同じ方向に最大に伸張した状態を示す、略平面方向から撮影した外観写真を例示する。
【0024】
本発明の複合積層体においては、2枚の布帛の間に一方向に複数本並列に配置された、例えば前述したようなポリウレタン弾性糸からなる弾性繊維を有する。弾性繊維は、直線状もしくは曲線状またはそれらの組み合わせた形態で配置され、布帛で挟み込まれている。
【0025】
本発明の複合積層体においては、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を有する。すなわち、弾性繊維が挿入される方向に対して交差する方向に樹脂が配置される。この樹脂は、2枚の各布帛と弾性繊維を接合するための樹脂であり、いわゆるデザインコート等により所定の領域に所定の方向に必要な量だけ精度よく付与された接合用の樹脂であってもよく、超音波や加熱により布帛自体や弾性繊維自体(とくに、布帛自体)から生成された接合用の樹脂であってもよい。弾性繊維の長手方向において隣り合う樹脂と弾性繊維とが交差する箇所の間では2枚の各布帛と弾性繊維は離間している。上記において、一方向に延在するとは、樹脂が線状であり、全体として一方向に配置されていることをいう。線状の形態としては直線状もしくは曲線状またはそれらの組み合わせた形態いずれも採り得る。全体として一方向に配置されるとは、かかる線状の形態が幅10mm以内の平行な線の範囲内に収まるように配置されることをいい、一方向の方向とはかかる仮想の平行線の方向をいう。弾性繊維と一方向に延在する樹脂の交差する角度は特に限定されないが、90±20°の範囲内であることが好ましく、90±10°の範囲内であればより好ましく、90±5°の範囲内であればさらに好ましい。
【0026】
本発明における複合積層体においては、弾性繊維の長手方向に隣り合う、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では各布帛と弾性繊維が離間している。
【0027】
一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間の厚みは、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましく、より好ましいのは0.2mm以上2.0mm以下である。0.1mmより小さいと、複合積層体中の弾性繊維の存在が目視で判別できる場合があり、複合積層体を伸長した場合は、弾性繊維の存在がより顕著に判別できるようになることから、複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。2.0mmより大きいと、形成した襞が挫屈し易くなる場合があり、着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足となる場合がある。
【0028】
そして、弾性繊維の長手方向に隣り合う、当該箇所の間において、その厚みの最大値は、1mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましいのは2mm以上10mm以下である。1mmより小さいと、伸長複合積層体中の弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できる場合があり、複合積層体を伸長した場合は、弾性繊維の存在がより顕著に判別できるようになることから、複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。20mmより大きいと、形成した襞が挫屈し易くなる場合があり、着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足な場合がある。
【0029】
一方向に延在する樹脂の幅は、最大伸長時に0.2mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましいのは0.4mm以上6mm以下である。0.2mmより小さいと、複合積層体中の弾性繊維が動きやすく、伸縮を繰り返した場合に、襞の均一性が低下したり、隣り合う弾性繊維が近接して、その存在が目視で判別できる場合があり、複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。10mmより大きいと、複合積層体を透過光で見た場合、弾性繊維の存在が筋状または縞状に目立ちやすくなる場合がある。さらに、複合積層体の伸度が低下し、置き寸が大きくなる場合や着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足な場合がある。
【0030】
そして、一方向に延在する樹脂の間隔は、複合積層体の最大伸長時に1mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましいのは2mm以上15mm以下である。一方向に延在する樹脂の間隔とは、一方向に延在する樹脂の中心間の距離をいう。かかる間隔が1mmより小さいと、複合積層体中の弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できる場合が出現し、複合積層体を伸長した場合は、より顕著であり、著しく複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。20mmより大きいと、形成した襞が挫屈し易くなる場合があり、着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足となる場合がある。
【0031】
本発明の複合積層体に用いられる布帛とは織物、編物、不織布などが好適で、特に好ましい布帛は不織布であり、抄紙法などの湿式不織布製造法またはレジンボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、スパンレース法、メルトブロー法およびフラッシュ紡糸法などの乾式不織布製造法により得られるもののいずれであってもよく、それらのうち単層体であっても複数の積層体であってもよい。また、不織布の目付は10〜20g/m
2以下が好ましく、より好ましくは12〜18g/m
2である。
【0032】
布帛を構成する繊維の素材については特に限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレン等各種α−オレフィンのコポリマ、ポリウレタン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の再生繊維、半合成繊維、ウール、綿等の天然繊維などが好ましい。
【0033】
布帛を構成する繊維の形態は、長繊維フィラメント、短繊維紡績糸のいずれであってもよく、2種以上の繊維を混紡、混繊したものや、捲縮加工を施したもの、その他、複合繊維等広く選択することができる。
【0034】
本発明における複合積層体は、少なくとも一部に弾性繊維が用いられるものである。
本発明で使用される弾性繊維は、ポリウレタン系弾性繊維、ポリエーテル・エステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、もしくは、天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからなる糸状のいわゆるゴム糸、さらに、エラストマーフィルムを繊維状に裁断したもの、または、これらを主体とした他の有機合成樹脂体との複合もしくは混合によって得られる繊維、捲縮繊維などが採用でき、繊維自身がエンタルピー弾性を有するものがより好ましい。そして、複合積層体として伸縮性がよりよく発揮させる観点から、最も好ましいのはポリウレタン系弾性繊維(代表的には、前述したようなポリウレタン弾性糸)である。
【0035】
本発明の複合積層体に用いられる弾性繊維は裸糸であっても、他の弾性繊維または非弾性繊維によって被覆(カバリング)されたものであってもよい。複合積層体として伸縮性の観点から、最も好ましいのは裸糸である。
【0036】
なお、ポリウレタン系弾性繊維とは、ソフトセグメントとしてコポリエステルジオールなどの長鎖ジオール、ハードセグメントとしてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、MDIと略する。)などのジイソシアネートおよび鎖伸長剤として二官能性水素化合物を主構成成分とするポリエステル系弾性繊維またはソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略する)、ハードセグメントとしてMDI、鎖伸長剤として低分子量の二官能性水素化合物を主構成成分とするポリエーテル系弾性繊維が好ましい。
【0037】
また、ポリエーテル・エステル系弾性繊維とは、ソフトセグメントとしてPTMG、ハードセグメントとしてポリブチルテレフタレートまたはポリブチルイソフタレートを主構成成分とするものが好ましい。
【0038】
本発明においては、最終製品に所望の伸縮性を付与させる観点から、前述したようにポリウレタン系弾性繊維を用いるのが好ましい。
【0039】
本発明で使用され得るポリウレタン系弾性繊維に用いるポリウレタン重合体は、いずれも長鎖のポリエーテルセグメント、ポリエステルセグメントまたはポリエーテルエステルセグメント等を主構成成分とするソフトセグメントとイソシアネートと鎖伸長剤であるジアミンまたはジオールを主構成成分とするハードセグメントとから構成されることが好ましい。
【0040】
かかるポリウレタン重合体のソフトセグメントを構成する原料としては、1)テトラヒドロフラン(以下、THFと略する)、テトラメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチルテトラヒドロフラン(以下、3MeTHFと略する)等から得られる重合体または共重合体であるポリエーテルセグメント、2)エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等のジオールとアジピン酸、コハク酸等の二塩基酸とから得られるポリエステルセグメント、3)ポリ−(ペンタン−1,5−カーボネート)ジオール、ポリ−(ヘキサン−1,6−カーボネート)ジオール等から得られるポリエーテルエステルセグメントを用いることができるが、中でもテトラメチレングリコールから得られるPTMGが好ましい。そして、さらに好ましくは2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3MeTHFから得られる共重合体であるポリエーテルセグメントである。
【0041】
本発明の複合積層体に用いられる弾性繊維においてポリウレタン重合体は、ヒドロキシル末端ソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートで重付加反応させること(キャッピング反応)によって得られたプレポリマ生成物をジアミン鎖伸長剤またはジオール鎖伸長剤で鎖伸長させて得ることができる。さらには、熱軟化点を調整する目的で、プレポリマ生成物にさらに有機ジイソシアネートを反応させた後、鎖伸長剤を反応させて得ることも好適である。
【0042】
本発明においてポリウレタン重合体に供する有機ジイソシアネートとしては、MDI、トリレンジイソシアネート(TDI)、ビス−(4−イソシアナートシクロヘキシル)−メタン(PICM)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3,3,5−トリメチル−5−メチレンシクロヘキシルジイソシアネート等を用いることができるが、中でもMDIが好ましい。
【0043】
種々のジアミン、たとえばエチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等がポリウレタンウレアを形成させるためのジアミン鎖伸長剤として好ましく使用される。
【0044】
ジアミン鎖伸長剤は、1種のみのジアミンに限定されるわけでなく、複数種のジアミンからなるものであってもよい。鎖停止剤は、ポリウレタンウレアの最終的な分子量の調節を助けるために反応混合物に包有させることができる。通常、鎖停止剤として活性水素を有する一官能性化合物、たとえばジエチルアミン等を使用することができる。
【0045】
また、鎖伸長剤としては、上記ジアミンに限定されることはなく、ジオールであってもよい。特に、100℃〜180℃の熱軟化点を有する弾性繊維を得るのに好適である。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびパラキシリレンジオール等を用いることができる。ジオール鎖伸長剤は、1種のみのジオールに限定されるわけでなく、複数種のジオールからなるものであってもよい。また、イソシアネート基と反応する1個の水酸基を含む化合物と併用していてもよい。この場合、このようなポリウレタンを得る方法については溶融重合法、溶液重合法など各種方法を採用することができ、限定されるものではない。重合の処方についても、特に限定されずに、たとえば、ポリオールとジイソシアネートと、ジオールからなる鎖伸長剤とを同時に反応させることにより、ポリウレタンを合成する方法等を採用することができ、いずれの方法によるものでもよい。
【0046】
さらに本発明の効果を損なわない範囲で安定剤、熱伝導性改良剤、顔料を配合することも好ましい。
【0047】
例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー(登録商標)”GA−80などをはじめとするヒンダードフェノール系薬剤、BASF社製“チヌビン(登録商標)”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、リン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、ポリフッ化ビニリデンなどを基とするフッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸化合物、リン酸エステル化合物などの各種の帯電防止剤などが添加されてもよいし、またポリマーと反応して存在してもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150,Clariant Corporation製“Hostanox(登録商標)”SE10等、熱酸化安定剤などを含有させることが好ましい。
【0048】
そして、溶融や熱軟化を促進するために、熱伝導性改良剤として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素等を含有させることが好ましい。
【0049】
例えば、顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸ジルコニウムなどを含有させることが好ましい。中でも弾性繊維の目剥きによるギラツキを抑え、弾性繊維が目立たない均質な外観の複合積層体を得るという観点からは酸化チタンが好ましい。酸化チタンであればルチル型、アナターゼ型のいずれでも好ましく用いられる。また、光の反射を抑え、かつポリウレタン弾性糸を安定的に製造するという観点から、平均一次粒子径が0.15μmから0.3μmの範囲のものであることが好ましい。また、ポリウレタン系弾性繊維中への含有量はギラツキの防止という観点から0.3質量%以上であることが好ましく、口金への詰まり等を防ぎ安定的にポリウレタン系弾性繊維を紡糸するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0050】
そして、溶融や熱軟化を促進するために、熱伝導性改良剤として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素等を含有させることが好ましい。
【0051】
ポリウレタン重合体を溶液とする場合に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略する)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を使用することができるが、DMAcが最も一般的に使用される溶媒である。
【0052】
ポリウレタン重合体の溶液濃度としては、30〜50質量%(溶液の全質量を基準にして)の溶液濃度にてポリウレタン系弾性繊維のフィラメント糸を得る乾式紡糸法が好ましい。
【0053】
本発明においては、ポリウレタン重合体からポリウレタン系弾性繊維を紡糸する方法は特に限定されるものではないが、例えば、1)ジオールを鎖伸長剤として用いたポリウレタン系弾性繊維の紡糸法として、溶融紡糸法、乾式紡糸法または湿式紡糸法等を採用することができる。また2)ジアミンを鎖伸長剤として用いたポリウレタン系弾性繊維の紡糸法として、通常乾式紡糸法を採用することができる。
【0054】
本発明においては、前述の如く、弾性繊維が以下の式1及び式2の応力範囲をともに満たすことが必要である。すなわち、ヒステリシスロスの少ない弾性繊維を使用することが必要である。
[式1](B)/(A)×100%≧70%
[式2](D)/(C)×100%≧60%
ここで、(A)、(B)、(C)、(D)については、前記弾性繊維の300%繰り返し伸長を5サイクル行い、(A)は5サイクル目の100%伸長時の往き応力、(B)は5サイクル目の100%伸長時戻り応力、(C)は5サイクル目の200%伸長時の往き応力、(D)は5サイクル目の200%伸長時戻り応力、をそれぞれ表す。後述の表1においては、(B)/(A)×100%を100%応力比、(D)/(C)×100%を200%応力比と表記する。
【0055】
そして、上記の式1及び式2をより確実に満たすために、上記弾性繊維が、アルキル側鎖を有する高分子ジオールを分子構造中に有するポリウレタン弾性糸を含むことが好ましい。前述したように、このような特定の弾性繊維の使用により、より確実に少ないヒステリシスロスが達成され、紙おむつ等に使用したときに優れたフィット性をより確実に得ることが可能になる。
【0056】
また、本発明においては、高度な伸縮性、特に伸縮回復応力の観点からはポリウレタン系弾性繊維のフィラメント糸の使用が好適であるが、弾性繊維自体が目立ちやすくなる傾向がある。そこで、次の形態の繊維仕様や組み合わせが好ましい。
【0057】
布帛を構成する繊維および弾性繊維の繊度は、使用される用途に応じて適宜選択しうるが、0.1〜5000dtexの範囲が好ましい。
【0058】
本発明における複合積層体を構成する布帛の繊度とは布帛表面に分布する繊維の最大繊度を表す。
【0059】
そして、布帛を構成する繊維の繊度は、均一性の高い襞形成の観点から0.1〜500dtexがより好ましく、0.1〜50dtexがより好ましく、最も好ましくは、0.3〜30dtexである。そして、複合積層体中の感触の観点から、好ましくは、0.2〜5dtex、最も好ましくは、0.2〜2.0dtexである。
【0060】
また、弾性繊維の繊度としては、1〜3000dtexが好ましく、より好ましくは、350dtex以下であり、とくに好ましくは、10〜350dtexである。弾性繊維の単糸繊度としては、前述の如く、5dtex以上13dtex以下であることが好ましい。
【0061】
弾性繊維の繊度が、1dtexに満たない弾性繊維を用いると製造時、走行摩擦に弾性繊維が耐えられず糸切れが生じやすくなるという傾向があり、また、3000dtexを超える弾性繊維を用いると、製造時、走行摩擦にセンサー側が耐えきれずに破損する傾向がある。
【0062】
そして、本発明の複合積層体において、外観品位の観点から、布帛表面に分布する繊維の最大繊度に対する弾性繊維の繊度の比は0.5以上300以下であることが必要である。
【0063】
複合積層体中の弾性繊維の存在が判別困難である形態、すなわち、弾性繊維が目立たない均質な外観の複合積層体を得るには、透過光より表面反射光の影響が支配的であり、表面に分布する繊維の最大繊度と弾性繊維との繊度比が重要である。
【0064】
布帛表面に分布する繊維の最大繊度に対する弾性繊維の繊度の比が300を超えると、弾性繊維の存在が顕著に目立ち、外観品位を損ねる。
【0065】
布帛表面に分布する繊維の最大繊度に対する弾性繊維の繊度の比が0.5以上300以下であると弾性繊維の存在を目視で容易に認識できなくなり、外観品位に特に優れたものとなる。
【0066】
この効果は、布帛表面に分布する繊維の最大繊度が0.2〜2.2dtexの範囲でより顕著に表れ、より顕著に表れるのは0.5〜2.0dtexである。布帛表面に分布する繊維の最大繊度に対する弾性繊維の繊度の比は300より大きいと、複合積層体中の弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できる場合があり、複合積層体を伸長した場合は、より目視で判別しやすくなり、複合積層体の外観および審美性が低下する。繊度比が0.5より小さいと、実質、弾性繊維の弾性が不足し、襞が形成され難く、伸縮性も発現しない。
【0067】
さらに、本発明に係る方法においては、弾性繊維が見えないあるいは目立たない均質な外観の複合積層体10を得るために、以下のように規定される色差変動ΔE
*vを特定の値以下(1.0以下)とすることが好ましい。色差変動ΔE
*vは、後述する非接触式の分光測色計によるLab表色系におけるL
*値、a
*値、b
*値の値から後述する式により算出される値である。なお、Lab表色系におけるL
*値とは、明度を表す指標であり、a
*値は赤〜緑の間の位置、b
*値は黄〜青の間の位置を表す指標である。この色差変動ΔE
*vが大きいほど、弾性繊維との交差部分での色差の変化が大きいので、外観上、弾性繊維が見えやすくなったり、弾性繊維の存在が確認しやすくなる。色差変動ΔE
*vが1.0以下であることにより、弾性繊維が見えないか弾性繊維が存在していることが確認できない、あるいは弾性繊維が非常に見づらいかその存在が非常に確認しづらいという要求特性が満たされることになる。
【0068】
なお、本発明においては弾性繊維が原着糸であってもよく、布帛やそれを構成する繊維は予め着色されたものを使用することも好ましい。布帛やそれを構成する繊維の着色方法については特に限定されるものではないが、弾性繊維と同色に着色するという観点から、色の調整が可能なチーズ染色等によって着色することも好ましい。
【0069】
本発明で使用される弾性繊維として好ましいのは、工程通過性も含め、実用上の問題がなく、かつ、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での形態に優れたものを得る観点から、熱軟化点が100℃以上240℃以下の範囲となるものが好ましい。熱軟化点が100℃より低いと、染色など加工工程や実用上、タンブラー乾燥や複合積層体製造時の一方向に延在する樹脂からの受熱などで形態が破壊される場合があり、240℃より高いと、一方向に延在する樹脂と弾性繊維との相溶性が低く、襞の形成に悪影響を与える場合がある。熱軟化点の範囲はより好ましくは、110℃以上200℃以下、さらに、最も好ましいのは120℃以上160℃の範囲である。この範囲であれば、公知の手法である熱ロールや超音波ウエルダー、高周波ウエルダー、電磁誘導ウエルダー、これらの複合ウエルダーを使用して、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を弾性繊維および/または布帛を構成する素材が熱軟化または溶融せしめるのに好適である。
【0070】
本発明における複合積層体に用いられる布帛においては、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂が存在し、樹脂とはホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等の各種接着剤や弾性繊維および/または布帛を構成する素材が熱軟化または溶融したものである。
【0071】
布帛を構成する素材が熱軟化または溶融したものの場合には熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法による種々公知の方法を採り得る。
【0072】
一方向に延在する樹脂の領域にはニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法が加わっていることも好ましい。
【0073】
さらに、一方向に延在する樹脂として好ましい樹脂は、本発明はその効果を高めるために、布帛や弾性繊維と同種の素材を含む樹脂であり、布帛や弾性繊維の成分を含むものであることがより好ましい。そして、一方向に延在する樹脂として、かかる布帛や弾性繊維の成分を含む樹脂を用いる場合、布帛または弾性繊維を熱軟化または溶融させて一方向に延在する樹脂を形成することもが好ましく、最も好ましいのは、布帛と弾性繊維が共に熱軟化または溶融して形成された場合である。
【0074】
本発明の複合積層体は、伸縮性を有する複合積層体であって、肌に密着する衣類、具体的には下着、スポーツウェアあるいは、子供用および大人用おむつ、生理用品、マスク、医療用ウエア、手術着、包帯、サポーターのような衛生材料、医療材料等の用途に好適に使用され、更には、審美性に優れることからカーテン、家具などのインテリア用品、寝具、裏地、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、衣料用ウエストバンド、ストレッチスポーツウエア、ストレッチアウター等の用途が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明における複合積層体の評価について、実施例を用いて説明する。まず、本発明の説明において使用した各特性の測定、評価方法について説明する。
【0076】
[熱軟化点]
弾性繊維の耐熱性の指標の一つとして熱軟化点を測定した。弾性繊維について、レオメトリック社製動的弾性率測定機RSAIIを用い、昇温速度10℃/分で、動的貯蔵弾性率E’の温度分散を測定した。熱軟化点は、E’曲線のプラト領域での接線と、E’が熱軟化により降下するE’曲線の接線との交点から求めた。なお、E’は対数軸、温度は線形軸を用いた。
【0077】
[布帛の繊度]
走査型電子顕微鏡を用いて布帛の表面の繊維を観察し、ランダムに選んだ10本の表面繊維の直径の最大値(α)を測定し、布帛を構成する物質の密度(ρ)g/m
3を用いて、以下の算式より求めた。
繊度(dtex)=ρ×π×(α/2)
2×10000
【0078】
[弾性繊維の繊度]
本発明において弾性繊維の繊度はISO2060に準じて測定した見掛繊度であり、測定方法は次の通りである。見掛繊度の測定に供する弾性繊維のサンプルは20℃、65%相対湿度環境下に24時間静置したものを使用する。弾性繊維を無荷重下で長さd(単位:m)に切断し、見掛繊度(dtex)=長さd(m)の糸質量(g)×10000÷dを小数点以下1桁まで求める。ここで、長さdとしては、通常0.1mあれば足りるが、連続した1本の繊維である必要はなく、複数本の合計の長さd’が0.1mあればよい。この場合、弾性繊維のサンプルを複合積層体から取り出す場合には2枚の布帛の間に配置された弾性繊維が各布帛と離間した箇所からサンプリングすればよい。例えば、複合積層体を、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂に沿って、ハサミを用いて切断し、直線形状のよい弾性繊維片を長さの合計が0.1±0.01mになるまで光学顕微鏡にて寸法を測定して複数本の弾性繊維片を選び、合計した長さd’を求める。次に精密天秤にて選んだ複数本の弾性繊維片の合計質量を測定し、弾性繊維片の合計質量(g)×10000÷d’を算出して弾性繊維の繊度を求める方法が挙げられる。
【0079】
[複合積層体の色差変動測定]
測定対象の複合積層体を伸張方向に最大に伸張して固定し、裏地に黒色(L
*=20±1、a
*=0.2±0.2、b
*=0.3±0.2)の板を配置した。非接触式の分光測色計としてカラーマスター(D25 DP−9000型 シグナルプロセッサー)、測色径φ=1mmを使用してL*a*b*表色系におけるL
*値、a
*値、b
*値の各値を複合積層体の幅方向に0.5mm間隔で40点測定した。測定結果から、L*が最大値のポイントをL
*1、a
*1、b
*1とし、最小値のポイントをL
*2、a
*2、b
*2として色差変動“△E
*v”を以下の算式より求めた。
ΔE
*v=√[(L
*1―L
*2)
2+(a
*1―a
*2)
2+(b
*1―b
*2)
2]
【0080】
[複合積層体の襞の外観形状評価]
複合積層体をMD方向に20%伸長させ、長さ30cmで両端を固定し、温度20℃、65%相対湿度環境下で24時間放置した後、目視にて襞の形状を観察し、以下の判定を行った。
《襞の評価》
◎:襞の乱れが0カ所。
○:襞の乱れが1〜3カ所。
△:襞の乱れが4〜10カ所。
×:襞の乱れが10カ所以上
【0081】
[複合積層体の襞の伸長巻き上げ後の襞形状発現性]
複合積層体を巻き上げた状態で、温度23℃、65%相対湿度環境下で24時間静置した後、複合積層体を巻き上げ状態から解舒し、上記《襞の評価》を行った。
【0082】
[紙おむつの評価:フィット性1:紙おむつの締め付け力の分散度合い]
紙おむつのギャザー部に使用された積層体が、人間の肌にくい込み難いと感じるかを、10人の判定者が肌に押し当てて観察する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
◎:8人以上がくい込みにくいと感じた。
○:8人未満6人以上がくい込みにくいと感じた。
△:6人未満4人以上がくい込みにくいと感じた。
×:4人未満がくい込みにくいと感じた。
【0083】
[紙おむつの評価:フィット性2:紙おむつのずれにくさ]
作成したギャザー部を紙おむつのウエスト胴まわり周囲50cmに伸縮方向がウエスト部が広がる方向に筒状12cm幅で作成した紙おむつを着用し、屈伸運動を10回した後に紙おむつの位置ズレがどの程度発現したかについて10人の判定者評価を行った。このときの被験者のウエストサイズは80cm±5cmであった。その判定結果は以下の区分で表示した。
◎:8人以上がずれにくいと感じた。
○:8人未満6人以上がずれにくいと感じた。
△:6人未満4人以上がずれにくいと感じた。
×:4人未満がずれくいと感じた。
【0084】
[実施例1]
表1に示すように、弾性繊維として、高分子ジオールのモノマー構成(モル比)が3MeTHF/THF=15/85で、235dtexのポリウレタン弾性糸(熱軟化点:200℃)を12本、布帛間への挿入時ドラフト3倍にて挿入した。このポリウレタン弾性糸の100%応力比は87%、200%応力比は76%で、前述の式1及び式2をともに満たすヒステリシスロスの少ないものであった。複合積層体の布帛として、PP(ポリプロピレン)の不織布で、スパンボンド層/メルトブロー層/スパンボンド層の3層積層構造(表1では「SMS」と表記)を有するPP(ポリプロピレン)の不織布を、目付17g/m
2、表面繊維繊度1dtexで使用し、2枚の布帛間に上記弾性繊維を挿入し、接合用樹脂をデザインコートで付与して、各布帛と弾性繊維を間欠的に接合した。本発明における布帛を構成する繊維の繊度に対する弾性繊維の繊度の比としては235であった。ポリウレタン弾性糸と布帛としての不織布との接合用樹脂には、ゴム系ホットメルト接着剤を使用し、該樹脂として、市販の凝集力高めの標準品(製造元:ボスティック・ニッタ株式会社、品番:AFX−162)を、塗布量20g/m
2で使用した。結果、表1の評価結果に示すように、色差変動△E
*vが0.6と1.0以下であり、襞の外観形状が◎、伸長巻き上げ後の襞形状発現性が◎、紙おむつの評価におけるフィット性:紙おむつの締め付け力の分散度合いが◎、フィット性:紙おむつのずれにくさが◎で、目標とする規則性、均一性の高い美しい襞を有し、外観の審美性に優れるとともに、紙おむつとして使用した場合のフィット性、ずれにくさにも優れた複合積層体が得られた。
【0085】
[実施例2〜3、比較例1〜5]
表1に示すように、実施例1に比べていずれかの条件を変更した(ポリウレタン弾性糸の熱軟化点はいずれも200℃)。なお、表1における「コームガン」とは、一般的なコームガンで弾性繊維に連続的に直接ホットメルト樹脂を塗布してそのホットメルト樹脂により布帛と弾性繊維とを貼り合わせて複合積層体を形成する方式であり、「カーテンスプレー」とは、片面の布帛にホットメルト樹脂を塗布して弾性繊維ともう一方の布帛とを接着させて複合積層体を形成する方式であり、いずれも、デザインコートでは弾性繊維と並行する方向に配置された延在する樹脂を有する複合積層体が形成されるのに対し、弾性繊維と並行する方向に配置された延在する樹脂を有する複合積層体が形成されるものである。
【0086】
表1に示すように、実施例1〜3では、本発明で規定した条件を満たしているので、乱れの少ない高い規則性、均一性を有する襞を有し、かつ、弾性繊維の存在が目立たない審美性に優れた外観を有するとともに、紙おむつとしてのフィット性にも優れた複合積層体が得られた。一方、比較例1〜5では、本発明で規定した条件のいずれかを満たしていないので、弾性繊維の存在が目立たない審美性、襞の目標性能をともに満たすとともにフィット性にも優れた複合積層体は得られなかった。すなわち、とくに、比較例1、2では、接合用樹脂の付与方法がコームガン、カーテンスプレーであったため、とくに本発明で規定した布帛、弾性繊維、樹脂の配置形態の構成を達成できず、目標とする襞の性能、フィット性を達成できなかった。比較例3では、弾性繊維の100%応力比、200%応力比がともに本発明で規定した条件を満たしていなかったので、とくに紙おむつの評価におけるフィット性:紙おむつのずれにくさが悪かった。比較例4では、弾性繊維の100%応力比、200%応力比がともに本発明で規定した条件を満たしていなかったとともに、接合用樹脂の付与方法がコームガンであったため、紙おむつの評価におけるフィット性:紙おむつの締め付け力の分散度合い以外の評価がすべて悪かった。比較例5では、布帛を構成する繊維の繊度に対する弾性繊維の繊度の比が大きすぎたので、色差変動△E
*vが1.0を超え、弾性繊維が目立つ点で優れた外観の審美性が得られなかったとともに、紙おむつの評価におけるフィット性も良くなかった。
【0087】
【表1】