特開2019-181848(P2019-181848A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-181848タイヤ加硫金型、タイヤの製造方法および空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-181848(P2019-181848A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型、タイヤの製造方法および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20190927BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20190927BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20190927BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20190927BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C33/10
   B29C35/02
   B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-77373(P2018-77373)
(22)【出願日】2018年4月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米津 功
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AM32
4F202AR13
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU02
4F202CU07
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM32
4F203AR12
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
4F203DL12
4F203DN26
(57)【要約】
【課題】脱型時のゴム欠けを防止可能なタイヤ加硫金型、および空気入りタイヤの製造方法を提供することである。さらには、ゴム欠けが抑制された空気入りタイヤを提供することである。
【解決手段】未加硫のタイヤの外表面に接する成形面にサイプブレード41が取り付けられたタイヤ加硫金型であって、サイプブレード41には、サイプブレード41を厚み方向D2に貫通するクロスベント42が形成されており、クロスベント42が、サイプブレード41の一方の面411に形成された第1開口部421と、サイプブレード41の他方の面412に形成された第2開口部422と、それらの間に位置する中央部423とを有し、中央部423の最小断面積が、第1開口部421の開口面積よりも小さく且つ第2開口部422の開口面積よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫のタイヤの外表面に接する成形面にサイプブレードが取り付けられたタイヤ加硫金型であって、
前記サイプブレードには、前記サイプブレードを厚み方向に貫通するクロスベントが形成されており、
前記クロスベントが、前記サイプブレードの一方の面に形成された第1開口部と、前記サイプブレードの他方の面に形成された第2開口部と、それらの間に位置する中央部とを有し、
前記中央部の最小断面積が、前記第1開口部の開口面積よりも小さく且つ前記第2開口部の開口面積よりも小さいことを特徴とする、
タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記サイプブレードの長さ方向から見て、前記クロスベントが有する一対の内壁のうち、前記成形面から遠い側の前記クロスベントの内壁がタイヤ径方向外側に向かって尖っていることを特徴とする、
請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記クロスベントが、前記第1および前記第2開口部の各々から前記中央部に向かってテーパ状に断面積を漸減させた形状を有する、請求項1または2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記中央部の断面積が、前記サイプブレードにおける前記厚み方向の中心で最小となることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ加硫金型に未加硫の前記タイヤをセットし、前記タイヤの外表面を前記成形面に密着させて加硫を行う加硫工程を含むことを特徴とする、
空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
トレッド面にサイプが形成された空気入りタイヤであって、
前記サイプが、前記サイプの一方の側面に形成された第1ゴム突起と、前記サイプの他方の側面に形成された第2ゴム突起とを有しており、
前記第1ゴム突起の先端部が前記第2ゴム突起の先端部に突き合わされており、
前記第1および前記第2ゴム突起の先端部が、それぞれ根元部よりも細いことを特徴とする、
空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ加硫金型、タイヤの製造方法および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫金型の成形面には、タイヤのトレッド面にサイプを形成するために、図13に例示するようなサイプブレード31が取り付けられることがある。サイプは、濡れた路面や氷雪路面におけるタイヤの走行性能を向上させるために形成される切り込み状の細溝である。
【0003】
サイプブレード31にはクロスベント32が形成されている。このようなクロスベントは、たとえば特許文献1〜4に記載されている。クロスベント32は、サイプブレード31の厚み方向に貫通する孔である。クロスベント32を形成することで、加硫成形時のエア流れを向上することが可能であり、これによって、排気効率を高めることができる。この例では、クロスベント32が一定の直径で厚み方向に真っ直ぐに延びている。
【0004】
クロスベント32には、未加硫タイヤの外表面のゴムが加硫成形時に流れ込む。このため、加硫後のクロスベント32内には、図14に示すように、サイプブレード31の両側のサイプ側面ゴム37、38を接続する接続ゴム36が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−262285号公報
【特許文献2】特開2013−75593号公報
【特許文献3】特開2015−36221号公報
【特許文献4】特開2017−213830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなクロスベント32を有するタイヤ加硫金型から加硫後のタイヤを脱型する際、接続ゴム36は、接続ゴム36とサイプ側面ゴム37との境界33、または接続ゴム36とサイプ側面ゴム38との境界34で切断されやすい。これは、タイヤを脱型する際に境界33,34にせん断力が作用するためである。
【0007】
しかし、接続ゴム36が境界33で切断されるときに、サイプ側面ゴム37が引きちぎられて一部が欠ける、いわゆるゴム欠けを起こすことがあった。同様に、接続ゴム36が境界34で切れるときには、サイプ側面ゴム38でゴム欠けを起こすことがあった。ゴム欠けは、引裂強さが低いゴム(たとえば、シリカ配合のゴム)で特に起こりやすく、タイヤ外観を悪化させる。また、境界33と境界34との両方で接続ゴム36が切断された場合は、切断されたゴム片がクロスベント32から脱落し、次に加硫される未加硫タイヤに異物として混入してしまうおそれがある。
【0008】
いっぽう、特許文献1は、図15に示すような形状のクロスベント92が形成されたサイプブレード91を開示している。このクロスベント92は、図15左側に位置する一方の開口部から直径が漸増しながら図15右側に位置する他方の開口部まで延びるテーパ状に形成されている。
【0009】
このようなクロスベント92を設けたタイヤ加硫金型から加硫後のタイヤを脱型する場合は、接続ゴム96とサイプ側面ゴム97との境界93で切断されにくく、接続ゴム96とサイプ側面ゴム98との境界94で切断されやすい。境界93よりも境界94で切断されやすいのは、境界94の断面積が、境界93の断面積よりも小さいためである。これによればゴム片の混入を抑えられるものの、接続ゴム96が境界94で切断されるときに、サイプ側面ゴム98でゴム欠けを起こす恐れがある。
【0010】
本開示の目的は、脱型時のゴム欠けを防止可能なタイヤ加硫金型を提供することである。本開示のほかの目的は、脱型時のゴム欠けを防止可能な空気入りタイヤの製造方法を提供することである。本開示のほかの目的は、ゴム欠けが抑制された空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のタイヤ加硫金型は、未加硫のタイヤの外表面に接する成形面にサイプブレードが取り付けられている。前記サイプブレードには、前記サイプブレードを厚み方向に貫通するクロスベントが形成されており、前記クロスベントが、前記サイプブレードの一方の面に形成された第1開口部と、前記サイプブレードの他方の面に形成された第2開口部と、それらの間に位置する中央部とを有し、前記中央部の最小断面積が、前記第1開口部の開口面積よりも小さく且つ前記第2開口部の開口面積よりも小さいことを、本開示のタイヤ加硫金型は特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態におけるタイヤ加硫金型の断面図である。
図2図1のタイヤ加硫金型の要部を拡大して示す断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4図3のサイプブレードのIV−IV断面図である。
図5】タイヤ加硫成形後における図3のサイプブレードのIV−IV断面図である。
図6】本実施形態における空気入りタイヤのトレッド部をタイヤ子午面で切断したときのサイプ付近の断面図である。
図7】本実施形態における変形例1が備えるサイプブレードの断面図である。
図8】本実施形態における変形例2が備えるサイプブレードの断面図である。
図9】本実施形態における変形例3が備えるサイプブレードの断面図である。
図10】本実施形態における変形例4が備えるサイプブレードの断面図である。
図11】本実施形態における変形例5が備えるサイプブレードの断面図である。
図12】本実施形態における変形例6が備えるサイプブレードの断面図である。
図13】従来のタイヤ加硫金型が備えるサイプブレードの正面図である。
図14】タイヤ加硫成形後における図13のサイプブレードのA−A断面図である。
図15】タイヤ加硫成形後における特許文献1に記載のタイヤ加硫金型が備えるサイプブレードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
本実施形態で登場する、タイヤ基準の三つの方向(タイヤ幅方向・タイヤ周方向・タイヤ径方向D1)をまず述べる。タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸と平行な方向である。タイヤ周方向は、タイヤ回転軸周りの方向である。タイヤ径方向D1は、タイヤの直径方向である。タイヤ径方向D1で内側の向きを内側方向D11と呼ぶ場合がある。タイヤ径方向D1で外側の向きを外側方向D12と呼ぶ場合がある。
【0015】
次に、タイヤ赤道面・タイヤ子午面について述べる。タイヤ赤道面は、タイヤ回転軸に直交する面でかつタイヤ幅方向の中心に位置する面である。タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面でかつタイヤ赤道面と直交する面である。
【0016】
図1〜3に示す本実施形態のタイヤ加硫金型7には、未加硫タイヤ(図示していない)がタイヤ軸を上下にしてセットされる。図1では、上下方向がタイヤ幅方向であり、左右方向がタイヤ径方向D1である。図2および図3では、上下方向がタイヤ径方向D1であり、左右方向がタイヤ幅方向である。タイヤ加硫金型7は、いわゆるセグメンテッドモールドである。
【0017】
タイヤ加硫金型7は、キャビティ79にセットされた未加硫タイヤの外表面に接する成形面70を備える。成形面70は、空気入りタイヤのトレッド部87(図6参照)を成形するトレッド成形面701と、空気入りタイヤのサイドウォール部(図示していない)を成形するサイド成形面702とを備える。
【0018】
タイヤ加硫金型7は、複数のセクターで構成されるトレッドリング71と、サイドプレート72、73とを備える。トレッドリング71は、空気入りタイヤのトレッド部87を成形する役割を担う。サイドプレート72、73は、空気入りタイヤのサイドウォール部を成形する役割を担う。型締め時には、複数のセクターが、タイヤ周方向に連なって環状のトレッドリング71を構成する。いっぽう、型開き時には、トレッドリング71とサイドプレート73とが上昇するとともに、各セクターが放射状に広がるようにしてタイヤ径方向D1で外側に変位する。
【0019】
トレッドリング71を構成する各セクターはトレッド成形面701を備える。トレッド成形面701には、トレッド成形面701に開口を有する排気孔(図示していない)が設けられている。排気孔を通じて、未加硫タイヤの外表面とトレッド成形面701との間のエアが加硫成形時に排出され、それによりベアと呼ばれるゴム欠損に起因した成形不良の発生が防止される。少なくとも一つの排気孔が、各セクターのトレッド成形面701に設けられている。
【0020】
トレッド成形面701には突起706が設けられている。突起706は、タイヤ周方向に沿って延びる。突起706は、空気入りタイヤのトレッド面88(図6参照)に主溝を形成する役割を持つ。この例では、突起706が四つ設けられているものの、これに限られない。
【0021】
図2および図3に示すように、トレッド成形面701にはサイプブレード41が取り付けられている。サイプブレード41は、トレッド成形面701から突き出るようにトレッド成形面701上を延びている。サイプブレード41は、タイヤ幅方向に沿って延びているものの、これに限られない。この例では、タイヤ幅方向が、サイプブレード41の長さ方向と一致しているものの、これに限られない。サイプブレード41は、突起706の側面から延びているものの、これに限られない。サイプブレード41は、第1面411と、その反対側の第2面412(図4参照)とを有する。サイプブレード41の厚みT41(図4参照)は、たとえば0.3mm〜1.5mmである。サイプブレード41は板状に形成されており、本実施形態では平板状に形成されている。サイプブレード41は、突起706とは異なる材料、たとえばステンレス鋼で形成されている。
【0022】
サイプブレード41にはクロスベント42が形成されている。クロスベント42は、サイプブレード41を厚み方向D2(図4参照)に貫通する孔である。厚み方向D2は、サイプブレード41における厚みの方向である。クロスベント42は、厚み方向D2に対して傾斜していない。本実施形態では、厚み方向D2と直交する任意の面でクロスベント42を切断したときの断面で、クロスベント42が円形状をなす。この例では、一枚のサイプブレード41にクロスベント42が二つ設けられているものの、これに限られない。
【0023】
図4に示すように、クロスベント42は、サイプブレード41の一方の面である第1面411に形成された第1開口部421と、サイプブレード41の他方の面である第2面412に形成された第2開口部422と、それらの間に位置する中央部423とを有する。
【0024】
中央部423の最小直径D423は、第1開口部421の直径D421よりも小さく且つ第2開口部422の直径D422よりも小さい。中央部423の最小直径D423は、中央部423の直径のうちもっとも小さい直径である。中央部423の直径は、厚み方向D2と直交する面で中央部423を切断したときの断面で測定される。
【0025】
中央部423の最小断面積は、第1開口部421の開口面積よりも小さく且つ第2開口部422の開口面積よりも小さい。中央部423の最小断面積は、中央部423の断面積のうちもっとも小さい断面積である。中央部423の断面積は、厚み方向D2と直交する面で中央部423を切断したときの断面積である。中央部423の最小断面積は、たとえば0.5mm〜2.0mmである。
【0026】
本実施形態において、中央部423の断面積は、サイプブレード41における厚み方向D2の中心で最小となる。より具体的には、中央部423は、厚み方向D2の中心で最小となり、かつ、その中心以外では、それよりも大きい断面積となる。
【0027】
サイプブレード41の長さ方向からクロスベント42を見ると、図4のようにクロスベント42が有する一対の内壁416、417を見て取ることができる。内壁416は、内壁417よりも、成形面70から遠い側に位置する。内壁416は、外側方向D12に向かって尖っている。すなわち、内壁416は、タイヤ径方向D1で外側に向かって尖っている。いっぽう、内壁417は、内壁416よりも成形面70の近くに位置する。内壁417は、内側方向D11に向かって尖っている。すなわち、内壁417は、タイヤ径方向D1で内側に向かって尖っている。
【0028】
本実施形態では、クロスベント42の内壁全体が、クロスベント42の内方に向かって尖っている。クロスベント42の内壁全体は、上述した内壁416および内壁417を含んでいる。
【0029】
本実施形態において、第1開口部421の開口面積は、第2開口部422の開口面積に等しい。両者の開口面積は、中央部423の最小断面積に対して、たとえば1.5倍〜2.0倍である。
【0030】
クロスベント42は、第1開口部421および第2開口部422の各々から中央部423に向かってテーパ状に断面積を漸減させた形状を有する。具体的には、クロスベント42が、第1開口部421から中央部423における最小断面積の部分に向かってテーパ状に断面積を漸減させ、且つ第2開口部422からも、その部分に向かってテーパ状に断面積を漸減させている。より具体的には、クロスベント42が、第1開口部421から、サイプブレード41の厚み方向D2の中心に向かってテーパ状に断面積を漸減させ、且つ第2開口部422からも、その中心に向かってテーパ状に断面積を漸減させている。
【0031】
このようなタイヤ加硫金型7を用いた空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ加硫金型7に未加硫タイヤをセットし、未加硫タイヤの外表面をタイヤ加硫金型7の成形面70に密着させて加硫を行う加硫工程を含む。
【0032】
加硫工程では、タイヤ加硫金型7に未加硫タイヤをセットし、タイヤ加硫金型7を閉じるとともに、図示しないブラダーと呼ばれるゴムバッグを膨張させることにより、未加硫タイヤの外表面を成形面70に押し当て、未加硫タイヤを加熱する。
【0033】
図5に示すように、加硫工程では、未加硫タイヤの外表面のゴムがクロスベント42に流れ込み、接続ゴム51が形成される。接続ゴム51は、サイプブレード41両側のゴム52、53を接続している。具体的には、サイプブレード41の第1面411に面したゴム52と、サイプブレード41の第2面412に面したゴム53とを接続している。
【0034】
加硫後のタイヤをタイヤ加硫金型7から脱型する際は、そのタイヤから成形面70が離れる動作に伴って接続ゴム51が切断される。本実施形態では、上記のようにクロスベント42の断面積が中央部423で最も小さくなっているため、接続ゴム51が中央部423で切断される。このように、接続ゴム51とゴム52との境界520や、接続ゴム51とゴム53との境界530ではなく、クロスベント42の中央部423で接続ゴム51が切断されることで、ゴム52およびゴム53が引きちぎられることなく、脱型時のゴム欠けを防止できる。
【0035】
図6に示すように、このような手順で得られた空気入りタイヤのトレッド面88には、サイプブレード41によってサイプ61が形成される。トレッド面88は、トレッド部87の外表面を構成する。トレッド部87は、一対のビード部(図示していない)の各々からタイヤ径方向D1で外側に延びる一対のサイドウォール部(図示していない)のタイヤ径方向D1の外端部に連接されている。サイプ61は、タイヤ幅方向に沿って延びている。
【0036】
空気入りタイヤのトレッド面88には、タイヤ加硫金型7の突起706によって主溝(図示していない)が形成されている。主溝はサイプ61よりも深い。
【0037】
サイプ61は、サイプ61の一方の側面611(以下、「第1側面611」という)に形成された第1ゴム突起81と、サイプ61の他方の側面612(以下、「第2側面612」という)に形成された第2ゴム突起82とを有している。第1ゴム突起81と第2ゴム突起82とは、接続ゴム51が切断されることによって形成される。
【0038】
第1ゴム突起81は、先端部811と根元部812とを備える。先端部811は、根元部812よりも細い。第1ゴム突起81は、第1側面611から離れるほど細くなるテーパ状をなす。第2ゴム突起82は、先端部821と根元部822とを備える。先端部821は、根元部822よりも細い。第2ゴム突起82は、第1側面612から離れるほど細くなるテーパ状をなす。
【0039】
第1ゴム突起81の先端部811は、第2ゴム突起82の先端部821に突き合わされている。このように、第1ゴム突起81の先端部811と、第2ゴム突起82の先端部821とは互いに向き合っている。第1ゴム突起81の先端部811は、第2ゴム突起82の先端部821に接触していてもよく、離れていてもよい。
【0040】
ここまで説明したように、本実施形態のタイヤ加硫金型7では、未加硫のタイヤの外表面に接する成形面70にサイプブレード41が取り付けられている。サイプブレード41には、サイプブレード41を厚み方向D2に貫通するクロスベント42が形成されており、クロスベント42が、サイプブレード41の一方の面411に形成された第1開口部421と、サイプブレード41の他方の面412に形成された第2開口部422と、それらの間に位置する中央部423とを有し、中央部423の最小断面積が、第1開口部421の開口面積よりも小さく且つ第2開口部422の開口面積よりも小さい。
【0041】
本実施形態のタイヤ加硫金型7は脱型時のゴム欠けを防止できる。ゴム欠けを防止できるのは、接続ゴム51とゴム52との境界520や、接続ゴム51とゴム53との境界530ではなく、接続ゴム51を中央部423で切断することが可能であり、これによって、ゴム52およびゴム53が引きちぎられることを防止できることにある。接続ゴム51を中央部423で切断できるのは、クロスベント42の中央部423で成形された部分の断面積が小さいためである。
【0042】
サイプブレード41の長さ方向から見て、クロスベント42が有する一対の内壁416、417のうち、成形面70から遠い側のクロスベント42の内壁416がタイヤ径方向D1で外側に向かって尖っている、という構成をタイヤ加硫金型7は備える。
【0043】
このような構成のタイヤ加硫金型7は、接続ゴム51を一か所で切断することが可能であるため、接続ゴム51がゴム片になることを防止できる。接続ゴム51を一か所で切断可能であるのは、内壁416が、外側方向D12に向かって尖っているためである。よって、本実施形態のタイヤ加硫金型7は、ゴム片の混入を防止できる。
【0044】
クロスベント42が、第1および第2開口部421、422の各々から中央部423に向かってテーパ状に断面積を漸減させた形状を有する、という構成をタイヤ加硫金型7は備える。
【0045】
このような構成のタイヤ加硫金型7では、第1および第2開口部421、422から中央部423に向かって接続ゴム51の断面積を次第に小さくすることにより、より確実に接続ゴム51を中央部423で切断できる
【0046】
中央部423の断面積が、サイプブレード41における厚み方向D2の中心で最小となる、という構成をタイヤ加硫金型7は備える。
【0047】
このような構成のタイヤ加硫金型7によれば、サイプブレード41における厚み方向D2の中心付近で接続ゴム51が切断されやすくなるので、ゴム52およびゴム53が引きちぎられることをより確実に防止可能で、ゴム欠けを効果的に防止できる。
【0048】
第1開口部421の開口面積および第2開口部422の開口面積が、中央部423の最小断面積に対して、1.5倍〜2.0倍であることが好ましい。1.5倍以上が好ましいのは、境界520または境界530で接続ゴム51が切断されることをより確実に防止できるためである。2.0倍以下が好ましいのは、中央部423におけるクロスベント42の内壁の断面形状が鋭くなり過ぎることを防いで、サイプブレード41の耐久性を確保できるためである。
【0049】
本実施形態における空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ加硫金型7に未加硫のタイヤをセットし、タイヤの外表面を成形面70に密着させて加硫を行う加硫工程を含む。
【0050】
本実施形態における空気入りタイヤの製造方法は、脱型時のゴム欠けを防止できる。さらに、切断された接続ゴム51がゴム片として脱落することを防止可能であるため、次に加硫される未加硫タイヤに異物として混入することを防止できる。
【0051】
本実施形態の空気入りタイヤは、トレッド面88にサイプ61が形成されている。サイプ61が、サイプ61の一方の側面611に形成された第1ゴム突起81と、サイプ61の他方の側面612に形成された第2ゴム突起82とを有しており、第1ゴム突起81の先端部811が第2ゴム突起82の先端部821に突き合わされており、第1および第2ゴム突起81、82の先端部811、821が、それぞれ根元部812、822よりも細い。
【0052】
本実施形態の空気入りタイヤは、ゴム欠けが抑制されている。これは、本実施形態の空気入りタイヤが、タイヤ加硫金型7で製造可能であるためである。
【0053】
なお、本発明のタイヤ加硫金型、空気入りタイヤの製造方法、および空気入りタイヤは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、これらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。たとえば、後述する各種の変形例に係る構成や方法などを任意に一つまたは複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法などに採用してもよいことはもちろんである。
【0054】
ここからは、前述した本実施形態の変形例をいくつか説明する。なお、前述した本実施形態で説明した部位と同一の部位には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、本実施形態の変形例1では、第1開口部421の開口面積が、第2開口部422の開口面積よりも大きい。第1開口部421の開口面積は、たとえば、第2開口部422の開口面積に対して1倍越えかつ3倍以下であることができる。
【0056】
図8に示すように、本実施形態の変形例2では、サイプブレード41における厚み方向D2の中心よりも第2開口部422よりの位置で中央部423の断面積が最小となる。いっぽう、サイプブレード41における厚み方向D2の中心よりも第1開口部421よりの位置で中央部423の断面積が最小になってもよい。
【0057】
このような変形例2では、中央部423の断面積が最小となる位置(中央部423の最小直径D423の位置)は、クロスベント42を厚み方向D2で100の領域に等分したとき、第1開口部421から数えて、25番目〜75番目の領域のいずれかに位置することが好ましく、40番目〜60番目の領域のいずれかに位置することがより好ましく、45番目〜55番目の領域のいずれかに位置することがさらに好ましい。
【0058】
図9に示すように、本実施形態の変形例3では、クロスベント42の内壁全体が、クロスベント42の内方に向かって丸みを帯びて突き出ている。
【0059】
図10に示すように、本実施形態の変形例4では、内壁416が、外側方向D12に向かって尖り、且つ内壁417が、内側方向D11に向かって丸みを帯びて突き出ている。
【0060】
図11に示すように、本実施形態の変形例5では、中央部423が、第1開口部421からテーパ状に断面積を漸減させながら延び、次いで断面積を一定に保ちながら円柱状に延び、次いでテーパ状に断面積を漸増させながら延びて第2開口部422に至る形状を有する。中央部423は、円柱状に形成された部分で最小断面積を示す。円柱状に形成された部分は、クロスベント42を厚み方向D2で100の領域に等分したとき、第1開口部421から数えて、25番目〜75番目の領域内に任意の長さを有することができる。
【0061】
図12に示すように、本実施形態の変形例6では、中央部423が、第1の直径で第1開口部421から円柱状に延び、次いで第2の直径で円柱状に延び、次いで第3の直径で円柱状に延びて第2開口部422に至る形状を有する。第2の直径は、第1の直径よりも小さく、かつ第3の直径よりも小さい。第1の直径と第3の直径は等しい。このように、中央部423は、第2の直径で円柱状に形成された部分で最小断面積を示す。この部分は、クロスベント42を厚み方向D2で100の領域に等分したとき、第1開口部421から数えて、25番目〜75番目の領域内に任意の長さを有することができる。ただし、変形例6はこれに限られず、たとえば、第1の直径と第3の直径とは等しくなくてもよい。
【0062】
ここまで、サイプブレード41が平板状をなすことを説明した。ただし、本開示はこれに限られず、たとえば、サイプブレード41が波板状をなしてもよい。
【0063】
また、クロスベント42が、厚み方向D2に対して傾斜していないことを説明したものの、傾斜していてもよい。
【0064】
厚み方向D2と直交する任意の面でクロスベント42を切断したときの断面で、クロスベント42が円形状をなすことを説明したものの、円形状でなくてもよい。たとえば、この断面でクロスベント42が多角形状をなしていてもよい。ただし、円形状が、加工容易という理由で好ましい。
【0065】
タイヤ加硫金型7がセグメンテッドモールドであることを説明したものの、トレッド部の中央部で上下に二分割された、いわゆる2ピースモールドであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
D1…タイヤ径方向、D11…内側方向、D12…外側方向、7…タイヤ加硫金型、79…キャビティ、70…成形面、701…トレッド成形面、702…サイド成形面、71…トレッドリング、72・73…サイドプレート、706…突起、41…サイプブレード、411…サイプブレードの第1面、412…サイプブレードの第2面、T41…サイプブレードの厚み、42…クロスベント、D2…サイプブレードの厚み方向、421…第1開口部、422…第2開口部、423…中央部、D423…中央部の最小直径、D421…第1開口部の直径、D422…第2開口部の直径、416・417…内壁、51…接続ゴム、52…サイプブレードの第1面よりのゴム、53…サイプブレードの第2面よりのゴム、520・530…境界、88…トレッド面、87…トレッド部、61…サイプ、W61…サイプの溝幅、611…サイプの第1側面、612…サイプの第2側面、81…第1ゴム突起、811…第1ゴム突起の先端部、812…第1ゴム突起の根元部、82…第2ゴム突起、821…第2ゴム突起の先端部、822…第2ゴム突起の根元部、31…サイプブレード、32…クロスベント、36…接続ゴム、37・38…サイプ側面ゴム、33・34…境界、92…クロスベント、91…サイプブレード、96…接続ゴム、97・98…サイプ側面ゴム
図1
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