特開2019-181887(P2019-181887A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソディックの特許一覧

<>
  • 特開2019181887-金型装置 図000003
  • 特開2019181887-金型装置 図000004
  • 特開2019181887-金型装置 図000005
  • 特開2019181887-金型装置 図000006
  • 特開2019181887-金型装置 図000007
  • 特開2019181887-金型装置 図000008
  • 特開2019181887-金型装置 図000009
  • 特開2019181887-金型装置 図000010
  • 特開2019181887-金型装置 図000011
  • 特開2019181887-金型装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-181887(P2019-181887A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】金型装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20190927BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20190927BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   B29C45/26
   B29C45/27
   B22D17/22 T
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-78848(P2018-78848)
(22)【出願日】2018年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】合葉 修司
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 悟
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK42
4F202CK52
4F202CK84
4F202CK90
4F202CM00
(57)【要約】
【課題】設計上の制約がより少ない構造の金型装置を提供する。
【解決手段】
スプル流路140a,240aから供給された成形材料が流通するランナ流路113a,213aが形成される第1型板と、第2型板と、ランナ流路113a,213aと連通する貫通孔160a,260aを有するランナストリッパプレート160,260と、貫通孔160a,260aと連通し逆テーパ形状を有する逆テーパ空間170a,270aが形成され逆テーパ空間170a,270aに成形材料からなる係止部位R1a,R2aが形成されるランナ係止部と、ランナストリッパプレート160,260をランナ係止部と離間させるよう移動させ係止部位R1a,R2aの係止を解除するランナ係止解除手段180,280と、を備える金型装置100,200が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプル流路から供給された成形材料が流通するランナ流路が形成される第1型板と、
第2型板と、
前記ランナ流路と連通する貫通孔を有するランナストリッパプレートと、
前記貫通孔と連通し逆テーパ形状を有する逆テーパ空間が形成され、前記逆テーパ空間に前記成形材料からなる係止部位が形成されるランナ係止部と、
前記ランナストリッパプレートを前記ランナ係止部と離間させるよう移動させ前記係止部位の係止を解除するランナ係止解除手段と、を備え、
前記第1型板または前記第2型板の一方は他方に対し型開閉方向に移動し、
前記第1型板と前記第2型板とが接して成形品が成形されるキャビティ空間を形成し、
前記キャビティ空間には前記スプル流路および前記ランナ流路から送られた前記成形材料がゲートを介して充填される、金型装置。
【請求項2】
前記第1型板側の取付板である第1取付板と、
前記スプル流路が形成されるスプルブッシュと、
前記第2型板側の取付板である第2取付板と、をさらに備え、
前記ランナストリッパプレートは、前記第1取付板と前記第1型板との間に設けられ、請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記第1取付板と前記ランナストリッパプレートとの間に設けられるランナ係止プレートをさらに備え、
前記ランナ径止部は、前記ランナ係止プレートに設けられる、請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記ランナ係止プレートを型開方向に移動させて前記第1取付板と前記ランナ係止プレートとの間に所定の隙間を形成させるランナ係止プレート移動手段をさらに設ける、請求項3に記載の金型装置。
【請求項5】
前記ランナ径止部は、前記第1取付板に設けられる、請求項2に記載の金型装置。
【請求項6】
第1ベース型と、
前記第1ベース型に設けられ、前記スプル流路の少なくとも一部が形成されるスプルブッシュと、
前記第1型板が装填されるベース中間型と、
前記第2型板が装填される第2ベース型と、をさらに備え、
前記ランナストリッパプレートは、前記第1ベース型と前記第1型板との間に設けられる、請求項1に記載の金型装置。
【請求項7】
前記第1ベース型と前記ランナストリッパプレートとの間に設けられるランナ係止プレートをさらに備え、
前記ランナ径止部は、前記ランナ係止プレートに設けられる、請求項6に記載の金型装置。
【請求項8】
前記ランナ係止プレートを型開方向に移動させて前記第1ベース型と前記ランナ係止プレートとの間に所定の隙間を形成させるランナ係止プレート移動手段をさらに設ける、請求項7に記載の金型装置。
【請求項9】
前記ランナ径止部は、前記第1ベース型に設けられる、請求項6に記載の金型装置。
【請求項10】
前記ランナ係止解除手段は、前記ランナストリッパプレートを型開方向に移動させるランナストリッパプレート駆動装置を含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の金型装置。
【請求項11】
前記ランナ係止解除手段は、
前記第1型板と前記第2型板とを連結して前記第1型板と前記第2型板間の開き量を制限する引張リンクと、
頭部が第1型板を係止可能であるプラーボルトと、
頭部が第1ベース型を係止可能であるストップボルトと、を含み、
前記プラーボルトの端部と前記ストップボルトの端部は前記ランナストリッパプレートを挟んで連結される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金型装置、特に詳しくは、3プレート式の金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、可動側金型、固定側金型およびランナストリッパプレートを含んでなる3プレート式の金型装置が知られている。この3プレート式の金型装置においては、成形品とスプルランナが別体として成形され、成形品とスプルランナはランナストリッパプレートによりゲートで切り離される。成形品とスプルランナとを切り離すにあたり、一般的には、スプルランナは先端にアンダーカット形状を有するランナロックピンによって保持される。
【0003】
また、固定ベース型と可動ベース型とを有するベース型と、ベース型に装填可能なカセット型と、を含んでなるカセット式金型装置が知られている。このようなカセット型においても、特許文献2に示されるように、固定型板、可動型板およびランナストリッパプレートとを含んでなる3プレート式のカセット型が公知である。3プレート式のカセット型においても、成形品とスプルランナとの切り離しのためのスプルランナの保持は、一般的には、ランナロックピンによってなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5794242号公報
【特許文献2】特許2857841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなランナロックピンを有する金型装置においては、ランナロックピン自身に加え、ランナロックピンが挿通される貫通孔、ランナロックピンの駆動装置等を設ける必要性から、成形品の形状や各部品のレイアウト等設計上の制約が起こりうる。特に、特許文献2に示されているようなカセット式金型装置においては、ベース型のランナロックピンに係る設計に応じて、カセット型のランナ流路やゲート位置は非常に制限される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、設計上の制約がより少ない構造の3プレート式の金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、スプル流路から供給された成形材料が流通するランナ流路が形成される第1型板と、第2型板と、ランナ流路と連通する貫通孔を有するランナストリッパプレートと、貫通孔と連通し逆テーパ形状を有する逆テーパ空間が形成され逆テーパ空間に成形材料からなる係止部位が形成されるランナ係止部と、ランナストリッパプレートをランナ係止部と離間させるよう移動させ係止部位の係止を解除するランナ係止解除手段と、を備え、第1型板または第2型板の一方は他方に対し型開閉方向に移動し、第1型板と第2型板とが接して成形品が成形されるキャビティ空間を形成し、キャビティ空間にはスプル流路およびランナ流路から送られた成形材料がゲートを介して充填される、金型装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明による金型装置によれば、逆テーパ形状を有する逆テーパ空間に成形材料によって形成された成形材料からなる係止部位によってスプルランナを保持し、ランナストリッパプレートを係止部位が形成されるランナ係止部と離間させるよう移動させ係止部位の係止を解除することでスプルランナを離型させる。このような構成によりスプルランナの保持および保持解除を行うので、金型設計の自由度がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】型閉状態にある第1実施形態の金型装置を示す一部破断側面図。
図2】型開状態にある第1実施形態の金型装置を示す一部破断側面図。
図3】型閉状態にある第2実施形態の金型装置を示す一部破断側面図。
図4】スプルランナと成形品が切り離された状態にある第2実施形態の金型装置を示す一部破断側面図。
図5】スプルランナの係止が解除された状態にある第2実施形態の金型装置を示す一部破断側面図。
図6】成形品を取り出す状態にある第2実施形態の金型装置を示す一部破断側面図。
図7図3のスプルランナ周辺の拡大側断面図。
図8図4のスプルランナ周辺の拡大側断面図。
図9図5のスプルランナ周辺の拡大側断面図。
図10】ランナ係止部の変形例を示すスプルランナ周辺の拡大側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。第1実施形態の金型装置100は、成形材料が供給される側が固定側として構成される。換言すれば、第1取付板が固定側取付板111、第1型板が固定型板113、第2取付板が可動側取付板121、第2型板が可動型板123、にそれぞれ相当する。
【0011】
図1および図2に示す第1実施形態の金型装置100は、固定側取付板111と、固定型板113と、ランナストリッパプレート160とを有する固定側金型110と、可動側取付板121と、可動型板123とを有する可動側金型120と、を備えている。固定側取付板111と可動側取付板121はそれぞれ、図示外の成形機の型締装置における固定プラテンおよび可動プラテンに固定される取付板である。可動側金型120は可動プラテンによって、型開閉方向すなわち、固定側金型110に接近、離間する方向(図1および図2の左右方向)に移動可能とされている。
【0012】
固定側金型110には、金型装置100内への成形材料の供給路となるスプル流路140aが形成されるスプルブッシュ140が設けられる。可動側金型120には、成形品を可動型板123から押し出して離型させるエジェクタピン等を含むエジェクタ機構150が設けられる。固定型板113にはスプル流路140aから供給された成形材料が流通するランナ流路113aが形成される。図1は、固定型板113および可動型板123がパーティング面P1で互いに密着した型閉状態を示しており、固定型板113および可動型板123との間に成形品が形成されるキャビティ空間C1が形成される。なお、スプル流路140aは通常抜きテーパ形状を有する。また、図示省略したが、ランナ流路113aに連通して、コールドスラグ溜まりとなるコールドスラグウェルを形成するための空間を、必要に応じて適宜設けてよい。
【0013】
成形材料が供給される側、すなわち第1実施形態においては固定側には、溶融した成形材料を射出する成形機の射出ユニットが配置されている。射出ユニットは、成形材料を溶融可塑化し、スクリュやプランジャ等の射出軸で溶融した成形材料を押し出してノズル部191から射出させる。ノズル部191から射出された成形材料は、スプルブッシュ140のスプル流路140aへと送られ、固定型板113に形成されたランナ流路113aを経由して、ゲートG1を介してキャビティ空間Cへと充填される。ゲートG1は、開口径が極めて小さいピンポイントゲートとされている。
【0014】
図1および図2で明示されるように、ランナストリッパプレート160には、ランナ流路113aに連通する貫通孔160aが設けられている。この貫通孔160aは、ランナストリッパプレート160を貫通している。貫通孔160aは好ましくは抜きテーパ形状を有する。ここで、貫通孔160aの固定側取付板111側と連通し少なくとも一部に逆テーパ形状を有する逆テーパ空間170aが形成され、逆テーパ空間170aに成形材料からなる係止部位R1aが形成されるランナ係止部が設けられる。第1実施形態においては、ランナ係止部は、固定側取付板111とランナストリッパプレート160との間に設けられるランナ係止プレート170に設けられる。すなわち、ランナストリッパプレート160に対して固定側取付板111の方に位置するランナ係止プレート170には、逆テーパ形状を有する逆テーパ空間170aが設けられ、逆テーパ空間170aは貫通孔160aに連通している。逆テーパ空間170aには、貫通孔160aを介してランナ流路113aから成形材料が流れ込み、スプルランナR1を保持する係止部位R1aが形成される。なお、上記の「逆テーパ状」は、逆テーパ空間170aの形状が、貫通孔160aの開口と連通する側の空間端部(図1および図2中の左端部)から反対側の端部(図1および図2中の右端部)に向かって断面積が次第に大きくなっていることを指すものである。逆テーパ空間170aのテーパ角度は、例えば1度から10度である。なお、係止部位R1aはスプルランナR1を保持するよう設けられればよく、位置および個数は限定されない。換言すれば、逆テーパ空間170aは貫通孔160aを介してランナ流路113aと連通していればよい。但し、成形品とスプルランナR1を切り離す際適切にスプルランナR1を保持できるよう、係止部位R1aはゲートG1に対応した位置、すなわちゲートG1と型開閉方向に略同軸上に設けられることが望ましい。
【0015】
ランナ係止プレート170は固定側取付板111に常時固定されてもよいが、係止解除時は、固定側取付板111とランナ係止プレート170との間に所定の隙間が形成されることが望ましい。隙間から空気が流入することで、係止の解除が容易になる。この場合、ランナ係止プレート170を固定側取付板111と離接する方向に移動させるランナ係止プレート移動手段171が設けられる。ランナ係止プレート移動手段171は、例えば頭部がランナ係止プレート170に係止可能であり、軸部がランナ係止プレート170に挿通し、端部がランナストリッパプレート160に固定されたボルトである。このようにすれば、ランナストリッパプレート160が型開方向に移動した際、ランナ係止プレート移動手段171がランナ係止プレート170を押圧し移動させる。なお、ランナ係止プレート移動手段171としてシリンダ等を設けてもよいが、上述のような構成によれば、別途駆動装置等を設ける必要がなく、簡易な構成でランナ係止プレート170を移動させることができ、好適である。
【0016】
ここで、ランナストリッパプレート160をランナ係止部と離間させるよう移動させ係止部位R1aの係止を解除するランナ係止解除手段180が設けられる。ランナ係止解除手段180は、例えば、引張リンク181と、プラーボルト183と、ストップボルト185と、を含む。引張リンク181は、固定型板113と可動型板123とを連結して、固定型板113と可動型板123間の開き量を制限する。プラーボルト183は、頭部が固定型板113を係止可能である。ストップボルト185は、頭部が固定側取付板111を係止可能である。プラーボルト183の端部とストップボルト185の端部はランナストリッパプレート160を挟んで連結される。また、バネ等の付勢手段187が固定型板113とランナストリッパプレート160の間で、プラーボルト183に巻回されて設けられる。
【0017】
以下、第1実施形態の金型装置100における型開閉ならびに成形品およびスプルランナR1の取出方法について説明する。金型装置100が固定プラテンおよび可動プラテンによって所定の型締力で締め付けられた状態で、射出ユニットのノズル部191からスプルブッシュ140のスプル流路140aを通して、成形材料がキャビティ空間C1に向けて送入される。成形材料は、ランナ流路113aを経て、ゲートG1からキャビティ空間C1内に注入される。注入された成形材料は、その後冷却されて固化し、成形品となる。
【0018】
その際、スプル流路140aおよびランナ流路113aに流入した成形材料は同様に冷却されて固化し、スプルランナR1となる。また成形材料は、ランナストリッパプレート160の貫通孔160aに流入する。この成形材料は、貫通孔160aから流出して、ランナ係止プレート170の逆テーパ空間170aへと送られる。逆テーパ空間170aへと送られた成形材料は、冷却されて固化し、係止部位R1aとなる。
【0019】
次に、可動プラテンが型開方向に稼働する。付勢手段187によって、固定型板113とランナストリッパプレート160間がまず開かれる。これにより、キャビティ空間内C1にある成形品とスプルランナR1は、ゲートG1の部分で切断される。この際、スプルランナR1は、係止部位R1aによってランナストリッパプレート160およびランナ係止プレート170側に保持される。
【0020】
続いて、固定型板113と可動型板123との間のパーティング面P1が開かれる。固定型板113と可動型板123との間が所定の開き量に達した後にさらに可動プラテンが型開方向に稼働すると、引張リンク181によって固定型板113が型開方向に引き出され、次いでプラーボルト183を介してランナストリッパプレート160がランナ係止部と離間するように移動する。こうして、係止部位R1aは、ランナ係止プレート170の逆テーパ空間170aから離脱する。なお、ランナストリッパプレート160の移動ストロークはストップボルト185により制限される。
【0021】
係止が解除されたスプルランナR1は、従来公知のスプルランナ取出ロボット等を用いて金型装置100から取り出される。また、成形品はエジェクタ機構150によって離型され、従来公知の成形品取出ロボット等を用いて金型装置100から取り出される。当然、スプルランナR1および成形品は、自動落下により取り出してもよい。
【0022】
スプルランナR1および成形品と取り出した後は、可動プラテンを型閉方向に稼働させ、金型装置100の型閉および型締を行う。
【0023】
第1実施形態においては、固定側取付板111とランナストリッパプレート160との間にランナ係止プレート170を設け、ランナ係止プレート170にランナ係止部を設けたが、固定側取付板111に、ランナ係止部を設けるようにしてもよい。ただし、ランナ係止プレート170にランナ係止部を設ける、すなわちランナ係止プレート170に逆テーパ空間170aを設ける方が製作が容易であるため、より好ましい。
【0024】
また、第1実施形態の金型装置100は、成形材料が供給される側が固定側として構成されたが、成形材料が供給される側が可動側として構成されてもよい。換言すれば、第1取付板が可動側取付板、第1型板が可動型板、第2取付板が固定側取付板、第2型板が固定型板、にそれぞれ相当するよう構成してもよい。すなわち、可動側取付板と、成形材料が供給されるスプル流路が形成されるスプルブッシュと、スプル流路から供給された成形材料が流通するランナ流路が形成される可動型板と、を有する可動側金型と、固定側取付板と、固定型板と、を有する固定側金型と、可動側取付板と可動型板との間に設けられランナ流路と連通する貫通孔を有するランナストリッパプレートと、貫通孔の可動側取付板側と連通し逆テーパ形状を有する逆テーパ空間が形成され逆テーパ空間に成形材料からなる係止部位が形成されるランナ係止部と、ランナストリッパプレートをランナ係止部と離間させるよう移動させ係止部位の係止を解除するランナ係止解除手段と、を備え、可動型板は固定型板に対し型開閉方向に移動し、可動型板と固定型板とが接して成形品が成形されるキャビティ空間を形成し、キャビティ空間にはスプル流路およびランナ流路から送られた成形材料がゲートを介して充填されるよう構成されてもよい。
【0025】
次に、第2実施形態の金型装置200について説明する。第2実施形態の金型装置200は、ベース型と、ベース型に装填可能なカセット型と、を含んでなるカセット式金型装置である。前述の通り、本発明はこのようなカセット式金型装置に対し、特に有効である。
【0026】
図3から図6に示す第2実施形態の金型装置200は、成形材料が供給される側が固定側として構成される。換言すれば、第1ベース型が固定側ベース型211、第1型板が固定型板213、第2ベース型が可動側ベース型221、第2型板が可動型板223、にそれぞれ相当する。
【0027】
この金型装置200は、固定側ベース型211と、可動側ベース型221と、固定側ベース型212および可動側ベース型221の間に配設されたベース中間型231とを有している。固定側ベース型211および可動側ベース型221はそれぞれ、図示外の成形機の型締装置における固定プラテンおよびに可動プラテンに固定されている。可動側ベース型221は可動プラテンによって、型開閉方向つまり、固定側ベース型211に接近、離間する方向(図3から図6中の上下方向)に移動可能とされている。
【0028】
固定側ベース型211には、金型装置200内への成形材料の供給路となるスプル流路240aの少なくとも一部が形成されるスプルブッシュ240が設けられる。可動側ベース型221には、可動型板223が取外し自在に装填保持され、さらに成形品を可動型板223から押し出して離型させるエジェクタピン等を含む不図示のエジェクタ機構が設けられる。また、ベース中間型231には、スプル流路240aから供給された成形材料が流通するランナ流路213aが形成される固定型板213が装填保持されている。図3は、固定型板213および可動型板223がパーティング面P2で互いに密接した型閉状態を示しており、固定型板213および可動型板223の間に成形品が形成されるキャビティ空間C2が形成される。また、固定側ベース型211と固定型板213との間にランナストリッパプレート260が設けられる。好ましくはさらに、ランナストリッパプレート260と固定側ベース型211との間にランナ係止プレート270が設けられる。なお、図7から図8に示すように、ランナストリッパプレート260にはスプル流路240aの一部が形成される。またランナ係止プレート270が設けられるとき、ランナ係止プレート270にはスプル流路240aの一部が形成される。すなわち、第2実施形態においては、スプルブッシュ240、ランナストリッパプレート260およびランナ係止プレート270に形成された互いに連通する孔がスプル流路240aとなる。なお、スプル流路240aは通常抜きテーパ形状を有する。また、図示省略したが、ランナ流路213aに連通して、コールドスラグ溜まりとなるコールドスラグウェルを形成するための空間を、必要に応じて適宜設けてよい。
【0029】
固定側ベース型211には、例えば1対の流体圧シリンダであるベース中間型駆動装置233が固定されている。このベース中間型駆動装置233は、ベース中間型231および固定型板213を型開閉方向に移動させ、固定側ベース型211と可動側ベース型221との間の任意の位置に位置決め固定する。すなわち、各ベース中間型駆動装置233のピストン233aの先端は、ベース中間型231に連結されており、これらのピストン233aが互いに同期して伸長、収縮されるとベース中間型231が型開閉方向に移動し、それにより固定型板213が型開閉方向に移動する。
【0030】
固定側ベース型211には、ガイドロッド250が固定されている。このガイドロッド250は、一端が固定側ベース型211に固定され、この固定部分から可動側ベース型221側に延びるように配置されている。可動側ベース型221およびベース中間型231にはそれぞれ、型開閉方向に延びるガイド孔221aおよびガイド孔231aが設けられ、これらのガイド孔221aおよびガイド孔231aには上記ガイドロッド250が挿通されている。それにより可動側ベース型221およびベース中間型231は、相互間で独立して、固定側ベース型211に対して型開閉方向に相対移動可能とされている。
【0031】
成形材料が供給される側、すなわち本実施形態においては固定側には、溶融した成形材料を射出する成形機の射出ユニット290が配置されている。射出ユニット290は、成形材料を溶融可塑化し、スクリュやプランジャ等の射出軸で溶融した成形材料を押し出してノズル部291から射出させる。ノズル部291から射出された成形材料は、スプル流路240aへと送られ、ランナ流路213aを経由して、ゲートG2を介してキャビティ空間C2へと充填される。ゲートG2は、開口径が極めて小さいピンポイントゲートである。
【0032】
図7に明示されるようにランナストリッパプレート260には、ランナ流路213aに連通する貫通孔260aが設けられている。この貫通孔260aは、ランナストリッパプレート260を貫通している。貫通孔260aは好ましくは抜きテーパ形状を有する。ここで、貫通孔260aの固定側ベース型211側と連通し少なくとも一部に逆テーパ形状を有する逆テーパ空間270aが形成され、逆テーパ空間270aに成形材料からなる係止部位R2aが形成されるランナ係止部が設けられる。本実施形態においては、ランナ係止部はランナ係止プレート270に設けられる。すなわち、ランナストリッパプレート260に対して固定側ベース型211の方に位置するランナ係止プレート270には、逆テーパ形状を有する逆テーパ空間270aが設けられ、逆テーパ空間270aは貫通孔260aに連通している。逆テーパ空間270aには、貫通孔260aを介してランナ流路213aから成形材料が流れ込み、スプルランナR2を保持する係止部位R2aが形成される。なお、上記の「逆テーパ状」は、先に述べた通り逆テーパ空間270aの形状が、貫通孔160aの開口と連続連通する側の空間端部(図7中の上端部)から反対側の端部(図7中の下端部)に向かって断面積が次第に大きくなっていることを指すものである。逆テーパ空間270aのテーパ角度は、例えば1度から10度である。なお、係止部位R2aはスプルランナR2を保持するよう設けられればよく、位置および個数は限定されない。換言すれば、逆テーパ空間270aは貫通孔260aを介してランナ流路213aと連通していればよい。但し、成形品とスプルランナR2を切り離す際適切にスプルランナR2を保持できるよう、係止部位R2aはゲートG2に対応した位置、すなわちゲートG2と型開閉方向に略同軸上に設けられることが望ましい。
【0033】
ランナ係止プレート270は固定側ベース型211に常時固定されてもよいが、係止解除時は、固定側ベース型211とランナ係止プレート270との間に所定の隙間が形成されることが望ましい。隙間から空気が流入することで、係止の解除が容易になる。この場合、ランナ係止プレート270を固定側ベース型211と離接する方向に移動させるランナ係止プレート移動手段271が設けられる。ランナ係止プレート移動手段271は、例えば頭部がランナ係止プレート270に係止可能であり、軸部がランナ係止プレート270に挿通し、端部がランナストリッパプレート260に固定されたボルトである。このようにすれば、ランナストリッパプレート260が型開方向に移動した際、ランナ係止プレート移動手段271がランナ係止プレート270を押圧し移動させる。なお、ランナ係止プレート移動手段271としてシリンダ等を設けてもよいが、上述のような構成によれば、別途駆動装置等を設ける必要がなく、簡易な構成でランナ係止プレート270を移動させることができ、好適である。
【0034】
ここで、ランナストリッパプレート260をランナ係止部と離間させるよう移動させ係止部位R2aの係止を解除するランナ係止解除手段280が設けられる。ランナ係止解除手段280は、具体的に、例えば1対の流体圧シリンダであるランナストリッパプレート駆動装置281である。ランナストリッパプレート駆動装置281は固定側ベース型211に固定されている。また、ランナストリッパプレート260は図3から図6に示される通り、一例として2つの側端部において連結部材281bに連結されている。これらの連結部材281bには各々、ランナストリッパプレート駆動装置281のピストン281aの先端が連結されている。ランナストリッパプレート駆動装置281は、係止部位R2aの係止を解除する際、ランナストリッパプレート281をランナ係止部と離間させるよう移動させる。このような構成により、ランナロックピンを用いずともスプルランナR2を保持することが可能となり、金型装置200の設計の自由度が向上する。
【0035】
以下、第2実施形態の金型装置200における型開閉ならびに成形品およびスプルランナR2の取出方法について説明する。図3は、型閉状態にある金型装置200を示している。型閉状態のとき、ベース中間型駆動装置233はピストン233aを収縮させて、ベース中間型231を、固定側ベース型211に密接させる。またランナストリッパプレート駆動装置281もピストン281aを収縮させて、ランナストリッパプレート260およびランナ係止プレート270を互いに密接した状態で、固定側ベース型211に密接させる。他方、可動側ベース型221は前述した可動プラテンによって型閉方向に移動され、可動型板223を固定型板213にパーティング面P2で密接させる。特に成形時は、固定型板213および可動型板223は、固定プラテンおよび可動プラテンによって所定の型締力で締め付けられる。
【0036】
この状態下で、射出ユニット290のノズル部291からスプル流路240aを通して、成形材料がキャビティ空間C2に向けて送入される。図7に示されるように成形材料は、ランナ流路213aを経て、ゲートG2からキャビティ空間C2内に注入される。注入された成形材料は、その後冷却されて固化し、成形品となる。
【0037】
その際、スプル流路240aおよびランナ流路213aに流入した成形材料は同様に冷却されて固化し、スプルランナR2となる。また成形材料は、ランナストリッパプレート260の貫通孔260aに流入する。この成形材料は、貫通孔260a流出して、ランナ係止プレート270の逆テーパ空間270aへと送られる。逆テーパ空間270aへと送られた成形材料は、冷却されて固化し、係止部位R2aとなる。
【0038】
次に金型装置200は、スプルランナR2の取り出しを行う。まず、図4に示すようにスプルランナR2をゲートG2において成形品と切り離す。すなわち、可動プラテンが型開方向に駆動し、可動側ベース型221が型開方向に移動する。この可動プラテンの駆動と同期して、ベース中間型駆動装置233はピストン233aを伸長させて、固定型板213と可動型板223がパーティング面Pで密接した状態で、ベース中間型231を、固定側ベース型211から離間させる。固定型板213がスプルランナR2の取り出しが可能な位置まで固定側ベース型211から離間すると、ベース中間型駆動装置233は、固定型板213と可動型板223とが当接した状態で、ベース中間型231を位置決め固定する。図8は、このときのスプルランナR2周辺の状態を詳しく示している。
【0039】
固定型板213が固定側ベース型211から離間すると、キャビティ空間C2内に有る成形品とスプルランナR2は、ゲートG2の部分で切断される。この際、図8に示されるようにスプルランナR2は係止部位34によってランナストリッパプレート260およびランナ係止プレート270側に保持される。
【0040】
スプルランナR2が成形品と切り離され、固定型板213がスプルランナR2の取り出しが可能な位置まで固定側ベース型211から離間した後に、金型装置200は、図5に示すようにスプルランナR2の係止を解除する。すなわち、ランナストリッパプレート駆動装置281のピストン281aが伸長され、連結部材281bを介してランナストリッパプレート260をランナ係止部と離間させるよう移動させる。図9は、このときのスプルランナR2周辺の状態を詳しく示している。
【0041】
上述のようにして、ランナストリッパプレート260がランナ係止プレート270から離れるように移動することにより、係止部位R2aは、ランナ係止プレート270の逆テーパ空間270aから離脱する。こうしてスプルランナR2は、ランナ係止プレート270による係止が解除された状態となる。そこでスプルランナR2を、従来公知のスプルランナ取出ロボット等を用いて金型装置200から取り出すことができる。
【0042】
スプルランナR2が金型装置200から取り出されると、次に金型装置200は、成形品の取出しを行う。すなわち、図6に示すように、ランナストリッパプレート駆動装置281のピストン281aが収縮され、連結部材281bを介してランナストリッパプレート260が、ランナ係止プレート270と接する位置に移動される。それと共に、ベース中間型駆動装置233のピストン233aが収縮され、ベース中間型231は固定側ベース型211に接する位置まで移動される。換言すれば、固定型板213と固定側ベース211が当接するようベース中間型231が位置決め固定される。このとき、可動型板223と固定型板213との間のパーティング面P2が開かれる。そして、成形品は不図示のエジェクタ装置によって離型され、従来公知の成形品取出ロボット等を用いて、金型装置200から成形品が取り出される。
【0043】
上述の通りにして成形品の取出しがなされた後、可動プラテンによって可動側ベース型221が型閉方向に移動されて、金型装置200は図3に示す型閉状態に戻され、次の成形品の成形に備える。なお上記可動プラテンの駆動は不図示の成形機の制御装置によって制御される。また、ベース中間型駆動装置233およびランナストリッパプレート駆動装置281の駆動は成形機の制御装置によって行われてもよいし、独自の制御装置によって行われてもよい。
【0044】
以上のように、固定型板213と可動型板223が当接した状態でスプルランナR2の取り出しを行い、固定型板213と固定側ベース板211が当接した状態で成形品の取り出しを行うことは必須の構成ではないが、金型装置200の型開量を節約することができ、ひいては型開量についての制約を減らすことができるから、金型設計の自由度が増す点でより望ましい。
【0045】
また、第2実施形態においては、固定側ベース型211とランナストリッパプレート260との間にランナ係止プレート270を設け、ランナ係止プレート270にランナ係止部を設けたが、図10に示すように、固定側ベース型211に、ランナ係止部を設けるようにしてもよい。ただし、ランナ係止プレート270にランナ係止部を設ける、すなわちランナ係止プレート270に逆テーパ空間270aを設ける方が製作が容易であるため、より好ましい。
【0046】
また、第2実施形態の金型装置200は、成形材料が供給される側が固定側として構成されたが、成形材料が供給される側が可動側として構成されてもよい。換言すれば、可動側ベース型と、可動側ベース型に設けられ成形材料が供給されるスプル流路の少なくとも一部が形成されるスプルブッシュと、スプル流路から供給された成形材料が流通するランナー流路が形成される可動型板と、可動型板が装填されるベース中間型と、固定型板と、固定型板が装填される固定側型と、可動側ベース型と可動型板との間に設けられランナ流路と連通する貫通孔を有するランナストリッパプレートと、貫通孔の可動側ベース型側と連通し逆テーパ形状を有する逆テーパ空間が形成され逆テーパ空間に成形材料からなる係止部位が形成されるランナ係止部と、ランナストリッパプレートを前記ランナ係止部と離間させるよう移動させ前記係止部位の係止を解除するランナ係止解除手段と、を備え、可動型板は固定型板に対し型開閉方向に移動し、可動型板と固定型板とが接して成形品が成形されるキャビティ空間を形成し、キャビティ空間にはスプル流路およびランナ流路から送られた成形材料がゲートを介して充填されるように構成してもよい。
【0047】
なお、第1実施形態および第2実施形態を含め、本発明の金型装置100,200は射出成形機等の成形機に搭載可能であり、また成形機の型締装置は横型であっても竪型であってもよい。また、第1実施形態および第2実施形態に示した構成は、技術的に矛盾が生じない範囲でそれぞれ互いに組み合わせ可能である。例えば、各実施形態に示したランナ係止解除手段180,280は互いに入れ替えて実施してもよい。
【0048】
本発明は、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100,200 金型装置
113,213 固定型板
113a,213a ランナ流路
123,223 可動型板
140,240 スプルブッシュ
140a,240a スプル流路
160,260 ランナストリッパプレート
160a,260a 貫通孔
170,270 ランナ係止プレート
170a,270a 逆テーパ空間
180,280 ランナ係止解除手段
C1,C2 キャビティ空間
R1a,R2a 係止部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10