クローラ装置5のクローラユニット6は、第1回転軸線L1に沿って延びるフレーム10と、フレーム10に設けられた一対のクローラ部20A,20Bと一対の接地構造30A,30Bと、を有している。一対のクローラ部20A,20Bの各々は、一対のスプロケットホイール21,22と、チェーン組立体M(無端条体組立体)を有している。チェーン組立体Mは、チェーン23と、チェーン23の外周に設けられた多数の接地ラグ28,29とを有している。一対のクローラ部20A,20Bの接地ラグ28、29と一対の接地構造30A,30Bが協働して、クローラユニット20に、第1回転軸線L1を中心とする円筒形状を付与している。接地ラグ28,29は、チェーン23の幅内に収まるように配置されている。
第1方向に延びる第1回転軸線を中心に回転することにより上記第1方向と直交する第2方向にローリング走行可能なクローラユニットに組み込まれ、上記クローラユニットに上記第1方向へのクローラ走行機能を付与するための無端条体組立体において、
無端条体と、この無端条体の外周に間隔をおいて設けられた多数の接地ラグとを備え、
上記接地ラグの外面は、上記第1回転軸線を中心とする同一円筒面上に配置されており、
上記接地ラグは、上記無端条体の幅内に収まるように配置されていることを特徴とする無端条体組立体。
上記一対のリンク片は、上記連結板部と直角をなし互いに向き合うように折り曲げられたフランジ部を有しており、上記一対のリンク片のフランジ部により上記支持板部が構成され、上記接地ラグは上記一対のリンク片のフランジ部に固定されていることを特徴とする請求項4に記載の無端条体組立体。
上記一対のリンク片の一方は、他方のリンク片に向かって折り曲げられたフランジ部を有し、上記一方のリンク片の上記フランジ部により上記支持板部が構成されることを特徴とする請求項4に記載の無端条体組立体。
上記一方のリンク片において、上記フランジ部が上記連結板部と直角をなし、上記フランジ部の先端縁が、上記他方のリンク片のチェーン径方向外側の端面に当たることを特徴とする請求項6に記載の無端条体組立体。
上記一方のリンク片の上記フランジ部の先端に挿入部が突出して形成され、上記他方のリンク片には、上記挿入部が挿入される支持穴が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の無端条体組立体。
上記一方のリンク片において、上記フランジ部が上記連結板部から上記他方のリンク片に向かうにしたがってチェーン径方向外側に進むように傾斜していることを特徴とする請求項9に記載の無端条体組立体。
上記他方のリンク片には上記連結板部からチェーン径方向外側に突出する支持凸部が形成されており、この支持凸部に上記接地ラグの側面が当たっていることを特徴とする請求項9または11に記載の無端条体組立体。
さらにクローラ駆動機構とローリング駆動機構とを備え、上記クローラ駆動機構は、上記クローラユニットの上記一対のクローラ部を同方向に同速度で駆動することにより、上記第1方向への上記クローラ走行を実行し、上記ローリング駆動機構は、上記クローラユニットを上記第1回転軸線を中心に回転駆動することにより、上記第2方向への上記ローリング走行を実行することを特徴とする請求項16に記載のクローラ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2のクローラ装置では、各クローラ部の接地ラグが無端条体から幅方向に張り出しているため、大きな荷重を負担した場合には、接地ラグの張り出し部が接地した時に、大きな曲げや捩りの力が付与されることになり、接地ラグおよび無端条体の損傷や劣化を招く可能性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、第1方向に延びる第1回転軸線を中心に回転することにより上記第1方向と直交する第2方向にローリング走行可能なクローラユニットに組み込まれ、上記クローラユニットに上記第1方向へのクローラ走行機能を付与するための無端条体組立体において、
無端条体と、この無端条体の外周に間隔をおいて設けられた多数の接地ラグとを備え、上記接地ラグの外面は、上記第1回転軸線を中心とする同一円筒面上に配置されており、上記接地ラグは、上記無端条体の幅内に収まるように配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、上記接地ラグが接地された時でも、接地ラグおよび無端条体に付与される曲げや捩りの力を最小限に抑えることができる。その結果、大きな荷重を負担することができ、しかも接地ラグや無端条体の損傷や劣化を防止することができる。
【0012】
好ましくは、上記無端条体が、多数のリンクと、隣接する上記リンクを連結する連結軸とを有するチェーンからなり、上記接地ラグは上記リンクに設けられ、上記リンクの幅内に収まっている。
上記構成によれば、チェーンを用いたことにより、耐久性をさらに向上させることができる。
【0013】
具体的には、上記リンクは、一対の連結板部と、これら一対の連結板部間に配置された支持板部と、を有し、隣接するリンクの上記一対の連結板部同士が上記連結軸により連結され、上記接地ラグは、上記リンクの上記支持板部に固定されるとともに上記支持板部の幅内に収まるように配置されている。
【0014】
好ましくは、上記リンクは一対のリンク片を含み、上記一対のリンク片がそれぞれ上記連結板部を有する。
上記構成によれば、一対のリンク片を用いるため、リンクの製作が容易となる。
【0015】
一具体例において、上記一対のリンク片は、上記連結板部と直角をなし互いに向き合うように折り曲げられたフランジ部を有しており、上記一対のリンク片のフランジ部により上記支持板部が構成され、上記接地ラグは上記一対のリンク片のフランジ部に固定されている。
上記構成によれば、リンク片は、例えば板材をプレス加工して折り曲げることにより得られるのでチェーンの製造コストを低減できる。また、接地ラグが一対のリンク片のフランジ部に跨って固定されているので、安定して支持することができる。
【0016】
別の具体例において、上記一対のリンク片の一方は、他方のリンク片に向かって折り曲げられたフランジ部を有し、上記一方のリンク片の上記フランジ部により上記支持板部が構成される。
上記構成によれば、一方のリンク片は、折り曲げ加工が実質的に不要なのでチェーンの製造コストを低減できる。
【0017】
好ましくは、上記一方のリンク片において、上記フランジ部が上記連結板部と直角をなし、上記フランジ部の先端縁が、上記他方のリンク片のチェーン径方向外側の端面に当たる。
上記構成によれば、一方のリンク片のフランジ部を介して他方のリンク片でも垂直荷重を負担することができる。
【0018】
好ましくは、さらに装着板を備え、上記装着板は、上記接地ラグが取り付けられるとともに接地ラグとともに上記フランジ部に固定される固定板部と、この固定板部のチェーン幅方向の一側縁から直角に折れ曲がり上記他方のリンク片の上記連結板部の外面に沿う側板部と、この側板部の先端縁から突出する挿入部とを有し、上記装着板の上記挿入部が、上記他方のリンク片の上記連結板部に形成された支持穴に挿入される。
上記構成によれば、接地ラグを固定した装着板の挿入部を、他方のリンク片の支持穴に引っ掛けるので、接地ラグのフランジ部への固定を簡略化することができる。
【0019】
好ましくは、上記一方のリンク片の上記フランジ部の先端に挿入部が突出して形成され、上記他方のリンク片には、上記挿入部が挿入される支持穴が形成されている。
上記構成によれば、クローラ走行時に接地ラグと路面の摩擦により、チェーンの延び方向の荷重が加わっても、挿入部と支持穴の係合によりこの荷重を受け止めることができ、フランジ部の捩れを防ぐことができる。また、ローリング走行の際に、接地ラグと路面の摩擦によりフランジ部が他方のリンク片から離れる方向の荷重を受けても、挿入部と支持穴の係合によりこの荷重を受け止めることができる。その結果、安定した走行を行なうことができる。
【0020】
好ましくは、上記一方のリンク片において、上記フランジ部が上記連結板部から上記他方のリンク片に向かうにしたがってチェーン径方向外側に進むように傾斜している。
上記構成によれば、接地ラグの厚さを抑制でき、大きな荷重が作用しても接地ラグの変形量を抑制して、安定した走行を行なうことができる。
【0021】
好ましくは、上記リンクが上記一対のリンク片と別体をなす支持板を有し、上記一対のリンク片のうち一方のリンク片には第1支持穴が形成され、他方のリンク片には第2支持穴が形成されており、上記支持板は、上記接地ラグが固定される上記支持板部と、上記支持板部の一側縁から折れ曲がり上記一方のリンク片の外面に沿う側板部と、この側板部の先端から折れ曲がり上記第1支持穴に挿入される第1挿入部と、上記支持板部の他側縁から突出して上記第2支持穴に挿入される第2挿入部とを有する。
上記構成によれば、支持板によりリンクが一体化されるので荷重負担能力を高めることができる。
また、リンク片の曲げ加工が実質的に不要となるので、チェーンの製造コストを低減できる。接地ラグが固定される支持板が一対のリンク片と別体をなしているので、接地ラグが消耗した場合に、リンク片をチェーンから外さずに、接地ラグを簡単に取り換えることができる。
【0022】
好ましくは、上記他方のリンク片には上記連結板部からチェーン径方向外側に突出する支持凸部が形成されており、この支持凸部に上記接地ラグの側面が当たっている。
上記構成によれば、接地ラグをより強固に支持することができ、大きな荷重を担うことができる。
【0023】
好ましくは、上記支持板部が上記一対のリンク片の上記連結板部と直角をなし、上記接地ラグは、上記フランジ部に取り付けられる取付面と、上記第1回転軸線を中心とする上記円筒面に沿う円弧面と、背の高さが異なる一対の側面とを有し、背が高い方の側面が上記他方のリンク片の上記支持凸部に当たる。
上記構成によれば、接地ラグの厚肉側の部位を支持凸部で支持することができ、大きな荷重を担うことができる。
【0024】
変形例では、上記リンクは一対のリンク片により構成され、上記一対のリンク片がそれぞれ連結板部を有し、隣接するリンクの上記一対のリンク片の連結板部同士が上記連結軸により連結され、上記一対のリンク片の一方は、他方のリンク片に向かって折り曲げられた板部を有し、この板部が円弧形状をなして上記接地ラグとして提供され、上記他方のリンク片はチェーン径方向外側に向かって突出する支持凸部を有し、この支持凸部のチェーン径方向外側の端面に上記板部の先端縁が当たる。
上記構成によれば、接地ラグが一方のリンク片と一体をなしているので、製作が容易であり接地ラグの取付作業を省略できる。
【0025】
好ましくは、上記リンクが、交互に配置された外側リンクと内側リンクとを含み、上記外側リンクは上記一対の連結板部として一対の平板形状の外側連結板部を有し、上記内側リンクは上記連結板部として一対の平板形状の内側連結板部を有し、上記一対の内側連結板部が上記一対の外側連結板部の内側にそれぞれ配置された状態で上記連結軸が上記一対の内側連結板部と上記一対の外側連結板部を貫通することにより、上記外側リンクと上記内側リンクが連結されており、上記接地ラグは、上記外側リンクに設けられた第1接地ラグと、上記内側リンクに設けられた第2接地ラグとを含む。
【0026】
本発明の他の態様は、クローラ装置において、上記クローラユニットを備え、上記クローラユニットは、上記第1回転軸線に沿って延びるフレームと、上記第1回転軸線に沿って延びて上記フレームに設けられるとともに上記第1回転軸線を挟んで対向するように配置された一対のクローラ部と、上記フレームに設けられるとともに、上記一対のクローラ部の対向方向において上記一対のクローラ部の外側に配置された一対の接地構造と、を有し、上記一対のクローラ部の各々は、上記第1方向に離れて配置された一対のホイールと、これら一対のホイールに架け渡された上記無端条体組立体とを有し、上記一対のホイールは、上記一対のクローラ部の対向方向に延びる互いに平行な一対の第2回転軸線を中心として、それぞれ上記フレームに回転可能に支持されており、上記一対のクローラ部の接地ラグと上記一対の接地構造が協働して、上記クローラユニットに、上記第1回転軸線を中心とする円筒形状を付与することを特徴とする。
【0027】
好ましくは、さらにクローラ駆動機構とローリング駆動機構とを備え、上記クローラ駆動機構は、上記クローラユニットの上記一対のクローラ部を同方向に同速度で駆動することにより、上記第1方向への上記クローラ走行を実行し、上記ローリング駆動機構は、上記クローラユニットを上記第1回転軸線を中心に回転駆動することにより、上記第2方向への上記ローリング走行を実行する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の無端条体組立体を二方向に走行可能なクローラユニットに用いると、大きな荷重を負担することができ、しかも接地ラグと無端条体の損傷や劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の第1実施形態について
図1〜
図8を参照しながら説明する。
図1〜
図4において互いに直交するX方向(第1方向)とY方向(第2方向)を定める。
図1に示すロボットR(走行体)は、走行体ボデイ1(以下、単にボデイと言う。)と、このボデイ1に設けられてX方向に延び互いにY方向に離間した一対のクローラ装置5,5とを備えている。
【0031】
ボデイ1には、クローラ装置5,5等を制御するマイクロコンピュータおよびインターフェイスを含むコントローラ、送受信器、バッテリ等(いずれも図示せず)が設置されるとともに、必要に応じて各種作業機構や各種センサが設置されている。
【0032】
ボデイ1は、水平台2と、この水平台2から下方に突出する突出部3とを有している。突出部3はクローラ装置5のサポートとして提供され、
図2に示すように、垂直をなす一対の内側支持板3aと、これら内側支持板3aの外側に配置された垂直をなす一対の外側支持板3bとを有している。これら支持板3a,3bは、互いに平行をなしてY方向に延び、その上縁が上記水平台2に固定されている。
図3にのみ示すが、水平台2のX方向両端にはカバー4が取り付けられている。
【0033】
各クローラ装置5は、X方向に延びて同軸をなす一対のクローラユニット6を備えている。
図2において、一対のクローラユニット6の対向する端部に符号6aを付す。
各クローラユニット6は細長い円筒形状をなし、X方向に延びる第1回転軸線L1を中心として回転可能に突出部3に支持されている。
【0034】
図4に示すように、各クローラユニット6は、第1回転軸線L1に沿って延びるフレーム10と、第1回転軸線L1に沿って延びフレーム10に設けられた一対のクローラ部20A,20Bと、フレーム10に設けられた一対の接地構造30A,30Bと、を有している。
【0035】
上記フレーム10は、互いに平行をなしてX方向(第1回転軸線L1方向)に延びるとともに第1回転軸線L1を挟んで互いに平行に離間対向する一対の細長い側板11と、これら一対の側板11の上記対向端部6a側の端に固定された端板12と、これら一対の側板11の中間部に固定された中間板13と、側板11と平行をなし端板12と中間板13を連結する連結板14と、一対の側板11の対向端部6a寄りの部位および連結板14に回転可能に支持された原動側シャフト15と、一対の側板11における対向端部6aと反対側の端部に支持された従動側シャフト16とを有している。
【0036】
原動側シャフト15と従動側シャフト16の中心軸線L2,L2’は、上記第1回転軸線L1と直交し互いに平行をなして延びており、それぞれ後述するスプロケットホイール21,22の回転軸線(第2回転軸線)として提供される。
【0037】
上記一対のクローラ部20A,20Bは、一対の側板11間において第1回転軸線L1を挟んで離間対向して配置されている。これらクローラ部20A,20Bの各々は、第1回転軸線L1方向に離れたスプロケットホイール21,22(ホイール)と、これらスプロケットホイール21,22に掛け渡されたチェーン23(無端条体)と、このチェーン23の外周に間隔をおいて取り付けられた多数の接地ラグ28,29とを有している。チェーン23と接地ラグ28,29により、チェーン組立体M(無端条体組立体;
図2参照)が構成されている。
【0038】
一対のクローラ部20A、20Bのホイール21,21は原動側シャフト15に固定されている。一対のクローラ部20A,20Bのホイール22,22は、従動側シャフト16に回転可能に支持されている。
【0039】
上記一対の接地構造30A,30Bの各々は、第1回転軸線L1方向に間隔をおいて配置された複数の接地部材31を有している。これら接地部材31は側板11の外面に固定され、側板11と直角をなして第2回転軸線L2,L2’方向に突出している。
【0040】
図5に示すように、上記一対のクローラ部20A,20Bの接地ラグ28,29の外面および上記一対の接地構造30A,30Bの接地部材31の外面は円弧面をなしており、これら外面が協働して、クローラユニット6の外周に上記第1回転軸線L1を中心とする円筒形状を付与している。換言すれば、接地ラグ28,29の外面および接地部材31の外面は、第1回転軸線L1を中心とする同一円筒面上に位置するように円弧面をなしている。
【0041】
図1に示すように、各クローラ装置5は、クローラ駆動機構40とローリング駆動機構50とを備えている。
クローラ駆動機構40は、一対のクローラユニット6に共通のクローラモータ41と、このクローラモータ41の回転トルクを一対のクローラユニット6のクローラ部20A,20Bに伝達するクローラ用トルク伝達機構を有している。
ローリング駆動機構50は、一対のクローラユニット6に共通のローリングモータ51と、このローリングモータ51の回転トルクを一対のクローラユニット6のフレーム10に伝達するローリング用トルク伝達機構を有している。
【0042】
ローリングモータ51とクローラモータ41は、一対のクローラユニット6の外において、一対のクローラユニット6からY方向に外れた位置に配置されている。より具体的には、ローリングモータ51とクローラモータ41は、第1回転軸線L1と平行をなして一対の外側支持板3bにそれぞれ固定されている。
【0043】
図4に示すように、クローラ用トルク伝達機構は、内側支持板3aに回転可能に支持された歯車42と、この歯車42に固定されて第1回転軸線L1上に配置された回転シャフト43を含む。これら歯車42と回転シャフト43は、一対のクローラユニット6に共通の構成要素である。回転シャフト43は、一対のクローラユニット6のフレーム10の端板12を相対回転可能に貫通し、その両端が一対のクローラユニット6内部に位置している。回転シャフト43の両端のそれぞれには傘歯車44が固定されており、この傘歯車44は原動側シャフト15に固定された傘歯車45と噛み合うようになっている。
【0044】
上記クローラモータ41が駆動すると、そのトルクがクローラ用トルク伝達機構の図示しない伝達部(図示しない)を介して歯車42および回転シャフト43に伝達され、さらに一対のクローラユニット6内において、傘歯車44,45を介して、クローラ部20A,20Bの原動側シャフト15に伝達される。これにより、一対のクローラユニット6のクローラ部20A,20Bが同方向に同速度で駆動される。
【0045】
2つのクローラモータ41の回転速度が等しい場合にはX方向に直進することができる。また、2つのクローラモータ41の回転速度を違えることにより、ロボットRはカーブを描いて走行することもできる。また、2つのクローラモータ41を逆方向に同一速度で回転させることにより、ロボットRはその場旋回(超信地旋回)することもできる。
【0046】
図4に示すように、ローリング用トルク伝達機構は、一対の歯車52を有している。これら歯車52は、一対のクローラユニット6のフレーム10の端板12にそれぞれ固定されて上記回転シャフト43に相対回転可能に支持されている。
【0047】
ローリングモータ51が駆動すると、そのトルクがローリング用トルク伝達機構の第1伝達部(図示しない)を介して2つの第2伝達部(図示しない)に分岐して伝達され、これら第2伝達部から一対の歯車52にそれぞれ伝達される。これにより、一対のクローラユニット6全体が第1回転軸線L1を中心に同一方向、同一速度で回転する(ローリングする)。
2つのローリングモータ51を同時に駆動して一対のクローラ装置5をローリングさせることにより、ロボットRはY方向に直進することができる。
【0048】
次に、本発明の特徴部をなすクローラ部20A,20Bのチェーン組立体M(チェーン23と接地ラグ28,29)について、特に
図6〜
図8を参照しながら詳述する。
チェーン23は、周方向に交互に配置された外側リンク24(リンク)および内側リンク25(リンク)と、隣接する外側リンク24と内側リンク25を連結する連結軸26とを有している。
【0049】
外側リンク24は、一対の同形状をなす外側リンク片24x,24x(リンク片)により構成されている。各外側リンク24xは平板材をプレス加工により折り曲げることによりL字形をなしており、チェーン23の周方向に細長い平板形状の外側連結板部24a(連結板部)と、この外側連結板部24aの中央部の外縁(チェーン径方向外側の縁)に連なり外側連結板部24aと直角をなす平板形状のフランジ部24bとを有している。外側連結板部24aの両端部には軸穴24hが形成されている。
【0050】
一対の外側リンク片24x、24xの外側連結板部24a、24aは互いに対向して配され、フランジ部24b、24bは、同一平面上に配置されるとともにその先端が僅かな隙間を介して対向している。これらフランジ部24b、24bにより、外側リンク24の第1支持板部24c(支持板部)が構成されている。第1支持板部24cは一対の外側連結板部24a,24a間に配置され、これら一対の外側連結板部24a,24aから連結軸26の軸線方向外側(チェーン幅方向外側)に突出しない。
【0051】
内側リンク25も外側リンク24と同様に、一対の同形状をなす内側リンク片25x,25x(リンク片)により構成されている。各内側リンク25xは平板材をプレス加工して折り曲げることによりL字形をなしており、チェーン23の周方向に細長い平板形状の内側連結板部25a(連結板部)と、この内側連結板部25aの中央部の外縁(チェーン径方向外側の縁)に連なり内側連結板部25aと直角をなす平板形状のフランジ部25bとを有している。内側リンク片25xの内側連結板部25aは、外側リンク片24xの外側連結板部24aと同形状をなし、フランジ部25bは外側リンク片24xのフランジ部24bより短い(チェーン23の幅方向の寸法が小さい)。内側連結板部25aの両端部には軸穴25hが形成されている。この軸穴25hの径は、外側リンク片24xの軸穴24hより大きい。
【0052】
一対の内側リンク片25x、25xの内側連結板部25a、25aは互いに対向して配置され、フランジ部25b、25bは、同一平面上に配置されるとともにその先端が僅かな隙間を介して対向している。これらフランジ部25b、25bにより、内側リンク25の第2支持板部25c(支持板部)が構成されている。第2支持板部25cは一対の内側連結板部25a,25a間に配置され、これら一対の内側連結板部25a,25aから連結軸26方向外側に突出しない。
【0053】
一対の外側リンク片24x、24xの外側連結板部24a,24aの端部の内側に、一対の内側リンク片25x、25xの内側連結板部25a、25aの端部を配置し、これら連結板部24a,24a,25a,25aに連結軸26を通すことにより、4枚のリンク片24x、24x,25x,25xが連結され、ひいては隣接する外側リンク24と内側リンク25が相対回転可能に連結されている。
【0054】
連結軸26は、ピン26aと、このピン26aに外装された中間ブッシュ26bと、この中間ブッシュ26bに外装された回転カラー26cとを有している。ピン26aの両端部が、外側連結板部24a、24aの軸穴24h、24hに挿入され、中間ブッシュ26bの両端部が内側連結板部25a,25aの軸穴25h、25hに挿通されており、回転カラー26cが内側連結板部25a,25a間に配置されている。
【0055】
上記連結軸26の回転カラー26cと、スプロケットホイール21,22の外周縁に等間隔をおいて形成された係合凹部との係合を介して、スプロケットホイール21,22とチェーン23との間のトルク伝達が行われる。
【0056】
外側リンク24の第1支持板部24cには、2つの第1接地ラグ28が間隔を置いて取り付けられており、内側リンク25の第2支持板部25cにも、2つの第2接地ラグ29が間隔をおいて取り付けられている。
これら接地ラグ28,29は、例えば硬質ゴム製からなり、それぞれ平坦な取付面28a,29aと、この取付面28a,29aの反対側の円弧面28b、29bと、取付面28a,29aと円弧面28b、29bを連ねる両側面とを有している。両側面は垂直をなし、取付面28a,28bと直角に交わっている。
【0057】
第1接地ラグ28の取付面28aを外側リンク24の第1支持板部24cの平坦面の全域に当接させた状態で、円弧面28bの座グリ穴に挿入されたビス27を一対の外側リンク片24x、24xのフランジ部24b、24bのネジ穴にねじ込むことにより、第1接地ラグ28が外側リンク24に固定されている。
図8(A)に示すように、第1接地ラグ28の幅W1は、外側リンク24の幅すなわちチェーン23の幅W0より狭い。
【0058】
第2接地ラグ29の取付面29aを内側リンク25の第2支持板部25cの平坦面の全域に当接させた状態で、円弧面29bの座グリ穴に挿入されたビス27を一対の内側リンク片25x、25xのフランジ部25b、25bのネジ穴にねじ込むことにより、第2接地ラグ29が内側リンク25に固定されている。
図8(B)に示すように、第2接地ラグ29の幅W2は、内側リンク25の幅およびチェーン23の幅W0より狭く、第1接地ラグ28の幅W1より狭い。
接地ラグ28,29の円弧面28b、29bは、接地構造30A,30Bの外周面とともに、第1回転軸線L1を中心とする共通の円筒面上に配置されている。
【0059】
各クローラ装置5において、一対のクローラ部20A,20Bの接地ラグ28,29が接地された状態で、前述したクローラ走行が実行される。この際、接地ラグ28,29はチェーン23の幅内に収まっているので、接地ラグ28,29に加わる垂直荷重は、チェーン23のリンク24,25の支持板部24c、25cによって直接受け止めることができ、接地ラグ28,29に付与される曲げや捩れの力を最小限に抑制することができる。
【0060】
ローリング走行時には、各クローラユニット6において、クローラ部20A,20Bの接地ラグ28,29と接地構造30A,30Bの接地板31が交互に地面に接する。このローリング走行時でも、接地ラグ28,29の幅をチェーン23の幅内に収めたことにより、接地ラグ28,29に付与される曲げや捩れの力を最小限に抑制することができ、さらに支持板部24c、25cに付与される曲げや捩れの力を最小限に抑制することができる。
【0061】
上記のように接地ラグ28,29および支持板部24c、25cに発生する曲げ応力等を最小限に抑制できるので、ロボットRに大きな荷重が掛けることができる。例えば水平台2に大重量の荷を直接載せたり、水平台2に大重量の装置を接地したり、水平台2に装備したリフト機構(図示しない)により重量の大きな荷を収容したカーゴを持ち上げたりすることができ、接地ラグ28,29やチェーン23の損傷、劣化を回避できる。
【0062】
本実施形態ではチェーン23を用いることにより、さらに耐久性を高めることができる。また、接地ラグ28,29をチェーン23と別体としたことにより、用途に適した材料を選択することができる。さらに、使用により摩耗した接地ラグ28,29のみを取り替えることでチェーン23を取り替えることなく所定の走行性能を維持できる。
また、本実施形態では、外側リンク片24x、内側リンク片25xは、板材をプレス加工して折り曲げることにより得られるのでチェーン23の製造コストを低減できる。また、第1接地ラグ28が一対の外側リンク片24xのフランジ部24bに跨って固定され、第2接地ラグ29が一対の内側リンク片25xのフランジ部25bに跨って固定されているので、安定して接地ラグ28,29を支持することができる。
【0063】
本実施形態では、接地ラグ28,29の幅を狭くし、これに応じて高さを減じたので、スプロケットホイール21,22の径を大きくすることができ、より安定したクローラ走行を行うことができる。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明する。これら実施形態において、第1実施形態に対応する構成部には図において同符号または類似符号を付してその詳細な説明を省略する。
図9に示す第2実施形態では、第2接地ラグ29の取付面29aは、一対の内側リンク片25xにおける内側連結板部25aとフランジ部25bの交差部25eの湾曲面まで延びて、この湾曲面に接している。その結果、第2接地ラグ29の幅W2’が広がって第1接地ラグ28の幅W1と略等しくなり、走行をより安定して行うことができる。
【0065】
図10に示す第3実施形態では、外側リンク24の一方の外側リンク片24yは、外側連結板部24aと、外側連結板部24aと直角なすフランジ部24dを有し、L字形をなしている。他方の外側リンク片24zは、フランジ部を有さず外側連結板部24aのみからなる。このフランジ部24dは、他方の外側リンク片24zの外側連結板部24aまで延びており、外側リンク24の第1支持板部を提供している。
内側リンク25も外側リンク24と同様の構成をなしている。すなわち、一方の内側リンク片は、内側連結板部とフランジ部を有し、L字形をなしており、他方の内側リンク片は、内側連結板部のみからなる。このフランジ部は、上記他方の内側リンク片の外側連結板部まで延びており、内側リンクの第2支持板部を提供している。
この第3実施形態では、他方の外側リンク片24zと他方の内側リンク片は、折り曲げ加工が不要で平板のまま用いることができ、しかも同形状にすることができるので、チェーンの製造コストを低減できる。
【0066】
以下に説明する実施形態では外側リンク24および第1接地ラグ28について説明するが、内側リンク25及び第2接地ラグ29についても同様の構成を有するので説明を省略する。
【0067】
図11に示す第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、外側リンク24の一方の外側リンク片24yは、外側連結板部24aとフランジ部24dを有し、L字形をなしており、他方の外側リンク片24zは外側連結板部24aのみからなる。このフランジ部24dは、他方の外側リンク片24zの外側連結板部24aまで延びており、外側リンク24の第1支持板部を提供している。
【0068】
第4実施形態では、外側リンク片24zのチェーン径方向外側の縁に凸部24eが形成されており、この凸部24eの端面にフランジ部24dの先端縁が当たっている。外側リンク片24zの連結板部24aには凸部24eの近傍に支持穴24fが形成されている。
【0069】
第4実施形態の外側リンク24は、外側リンク片24y、24zの他にJ字形をなす装着板60を備えている。この装着板60は、接地ラグ28が加硫接着された固定板部61と、この固定板部61のチェーン幅方向一側縁から直角に折れ曲がった側板部62と、この側板部62の先端縁から直角に折れ曲がった挿入部63とを有している。
【0070】
装着板60をチェーン幅方向から外側リンク片24zに近づけることにより、装着板60の挿入部63を外側リンク片24zの支持穴24fに挿入するとともに、側板部62を外側リンク片24zの連結板部24aの外面に沿わせるとともに、固定板部61をフランジ部24dの外面に沿わせる。次に、固定板部61と第1接地ラグ28を貫通するビス27を、フランジ部24dのねじ穴にねじ込むことにより、接地ラグ28と装着板60をフランジ部24dに固定する。
【0071】
外側リンク片24yのフランジ部24dの先端縁が外側リンク片24zの凸部24eの端面に当たっているので、接地時の垂直荷重を受け止めることができる。
また、接地ラグ28を固定した装着板60の挿入部63を、外側リンク片24zの支持穴24fに引っ掛けるので、接地ラグ28のフランジ部24dへの固定を簡略化する(具体的にはビス27の本数を減らす)ことができる。
【0072】
図12に示す第5実施形態では、一方の外側リンク片24yが、直角をなす外側連結板部24aとフランジ部24dを有している。フランジ部24dの先端縁には挿入部24gが突出して形成されている。
他方の外側リンク片24zは、外側連結板部24aと、この外側連結板部24aの中央部からチェーン径方向外側に突出し外側連結板部24aと面一をなす支持凸部24jを有している。支持凸部24jには支持穴24kが形成されており、この支持穴24kに外側リンク片24yの挿入部24gが挿入されている。
【0073】
第5実施形態では、第1接地ラグ28がビス27によりフランジ部24dに固定されている。第1接地ラグ28の背の高い方の側面28cは、外側リンク片24zの支持凸部24jに接している。
【0074】
第5実施形態では、外側リンク片24yの挿入部24gが外側リンク片24zの支持穴24kに挿入されているので、一対の外側リンク片24y、24zを一体化することができ、走行時の荷重負担能力を高めることができる。具体的には、クローラ走行時に接地ラグ28と路面の摩擦により、チェーン23の延び方向の荷重が加わっても、挿入部24gと支持穴24kの係合によりこの荷重を受け止めることができ、フランジ部24dの捩れを防ぐことができる。また、ローリング走行の際に、接地ラグ28と路面の摩擦によりフランジ部24dが他方のリンク片24zから離れる方向の荷重を受けても、挿入部24gと支持穴24kの係合によりこの荷重を受け止めることができる。その結果、安定した走行を行なうことができる。
また、第1接地ラグ28の背の高い方の側面28cが外側リンク片24zの支持凸部24jに接しているため、特にローリング走行時に横荷重が付与された時に支持凸部24jで受け止めることができる。
【0075】
図13に示す第6実施形態では、外側リンク片24yのフランジ部24d’が外側連結板部24aと直角ではなく、外側リンク片24zに向かうにしたがってチェーン径方向外側に進むように傾斜している。第1接地ラグ28は硬質ゴムからなり、フランジ部24d’に加硫接着されている。その他の構成は、
図12に示す第5実施形態と同様である。
第6実施形態では、第1接地ラグ28の厚さを第5実施形態に比べて抑制することができるので、硬質ゴムからなる第1接地ラグ28の圧縮変形量を抑制して、走行安定性を高めることができる。
【0076】
図14に示す第7実施形態の外側リンク24は、外側リンク片24y、24zに加えて、外側リンク片24y、24zと同程度の厚さの支持板70を備えている。外側リンク片24yは連結板部24aのみを有し、この連結板部24aには第1支持穴24mが形成されている。
図13の第6実施形態と同様に、外側リンク片24zには連結板部24aからチェーン径方向外側に突出する支持凸部24jが形成され、この支持凸部24jには第2支持穴24nが形成されている。
【0077】
上記支持板70は、第1接地ラグ28が加硫接着等により固定される支持板部71と、支持板部71の一側縁から折れ曲がり外側リンク片24yの外面に沿う側板部72と、この側板部72の先端から折れ曲がる第1挿入部73と、支持板部71の他側縁から突出する第2挿入部74とを有している。
支持板70をチェーン幅方向から外側リンク片24yに近づけて、その第1挿入部73を外側リンク片24yの第1支持穴24mに挿入するとともに、第2挿入部74を外側リンク24zの第2支持穴24nに挿入することにより、支持板70を外側リンク片24y、24zに組み付け、ひいては第1接地ラグ28を外側リンク24に組み付ける。挿入部73,74は楔形状を有して挿入穴24m、24nに圧入するのが好ましい。楔形状を用いず他の手段で挿入部73,74を支持穴24m、24nに着脱可能に固定してもよい。
【0078】
上記第7実施形態では、支持板70により外側リンク片24y、24zが一体化されているので、荷重負担能力を高めることができる。また、接地ラグ28の背の高い側面28cが外側リンク片24yの支持凸部24jに当たるので、特にローリング走行時に生じる横荷重を支持凸部24jで受け止めることができる。
外側リンク片24y、24zは曲げ加工が不要である。支持板70を外すことにより消耗した接地ラグ28を交換することができる。
【0079】
図15に示す第8実施形態では、外側リンク24yは、外側連結板部24aと、この外側連結板部24aから延びる円弧形状の板部24pを有している。外側リンク片24zは、外側連結板部24aと、この外側連結板部24aの中央部からチェーン径方向外側に突出する支持凸部24jを有している。板部24pは外側リンク24zの支持凸部24jまで延び、その先端縁が支持凸部24jの端面に接している。板部24pは、第1接地ラグとして提供される。この実施形態では、板部24p(第1接地ラグ)の幅は、チェーン23の幅と略等しい。この実施形態では、外側接地ラグ24pが外側リンク片24と一体をなすので、チェーンの製造コストを低減できる。
【0080】
本発明は上記実施形態に拘わらず、種々の形態を採用可能である。例えば、クローラ部の無端条体はベルトであってもよい。
チェーンの外側リンクと内側リンクは、それぞれ単一のU字形をなすリンク片で構成してもよい。
接地ラグは外側リンクのみ、又は内側リンクのみに取り付けてもよい。
チェーンのリンクは全て同一形状にしてもよい。この場合、リンクの一対の連結板部の一方の端部の間隔を他方の端部の間隔より狭くする。
接地ラグは全てのリンクに取り付けなくてもよい。例えば1つとばし、2つとばしに取
り付けてもよい。
上記実施形態では、各クローラ装置は同軸上に配置された一対のクローラユニットを有しているが、各クローラ装置が1つのクローラユニットを有していてもよい。
上記実施形態では、クローラモータはクローラユニットの外に配置されているが、クローラユニットの内部に配置してもよい。
上記実施形態では、クローラユニットを一端のみで支持しているが、両端で回転可能に支持してもよい。
クローラモータ、ローリングモータを省いてもよい。この場合、人力で走行体を2方向に移動させることになる。