【解決手段】本発明の飲料充填システム1は、貯留タンクに貯えられている製品液を送給する送液部10と、送液部から供給される製品液を容器に充填する充填部30と、送液部10と充填部30の間に設けられる流路切替部20と、送液部10と流路切替部20を接続する第一送液路40と、流路切替部20と充填部を接続する第二送液路50と、を備える。本発明の飲料充填システム1は、流路切替部20が、送液部10から送給される製品液Lを充填部30に流す第一流路と、送液部10から送給される製品液Lを第一流路に戻す第二流路と、が切り替えられる。第一送液路40は、流路切替部20が第二流路に切り替えられているときに、第二流路及び貯留タンク11を通る、製品液Lが循環する循環経路を備える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る飲料充填システム1ついて説明する。
飲料充填システム1は、充填部30の運転が例えば下流工程の事由により中断して充填部30への製品液Lの供給が中断すると、送液部10と流路切替部20の間で製品液Lを循環させる。これにより、飲料充填システム1は製品液Lに含まれる固形物の沈殿を防止することができる。
飲料充填システム1は無菌状態で製品液Lを容器100に充填する、いわゆる無菌充填システムである。
【0015】
以下、飲料充填システム1の構成を説明した後にその運転動作を説明する。なお、本実施形態の製品液Lに含まれる固形物の例としては、みかんのさのう、タピオカ及びナタデココが掲げられるが、本発明においては他の固形物を用いることもできる。
【0016】
[飲料充填システム1の全体構成]
飲料充填システム1は、
図1に示すように、貯留された製品液Lを充填機に向けて供給する送液部10と、送液部10から供給された製品液Lを容器100に充填する充填部30と、送液部10から供給された製品液Lの流路を切り替える流路切替部20と、を備える。
【0017】
また、飲料充填システム1は、送液部10と流路切替部20の間を接続し、製品液Lが流れる第一送液路40と、流路切替部20と充填部30の間を接続し、製品液Lが流れる第二送液路50と、を備えている。
【0018】
飲料充填システム1は、後述するポンプ13、流路切替部20などの動作を司る制御部70を備えている。
【0019】
[送液部10]
送液部10は、充填部30で製品液Lを容器100に充填している間、製品液Lを充填部30に向けて供給する。
送液部10は、
図1に示すように、製品液Lを貯留する貯留タンク11と、貯留タンク11と流路切替部20とを接続する第一往路配管41と、第一往路配管41に設けられ、貯留タンク11に貯留される製品液Lを送給するポンプ13と、を備える。
【0020】
貯留タンク11は、無菌タンク(aseptic tank)からなり、殺菌された製品液Lを貯留する。図示を省略するが、貯留タンク11は攪拌器を有するのが一般的であり、これは製品液Lが固形物を含む場合に限らず含まない場合にも適用される。これは、貯留タンク11は、後述する充填タンク31に比べての容量が大きいためである。
【0021】
製品液Lを無菌状態で充填するシステムは、例えば容器に充填する飲料の種類を切り替えるか又は定期的に、システム内の飲料が流れる経路を構成する配管類、タンク類を洗浄して、付着した汚れを除去するとともに、その殺菌が行われる。
この洗浄は、CIP(cleaning in place:定置洗浄)と称され、配管系内に洗浄液を循環させることにより行われる。また、配管類、タンク類を無菌状態に維持するために、蒸気や熱水を経路内に循環させるSIP(sterilization in place:定置滅菌)と称される殺菌処理が定置洗浄に引き続いて行うこともできる。定置洗浄については第一送液路40の説明のところで具体的に説明する。
【0022】
ポンプ13は、貯留タンク11に貯留されている製品液Lを充填部30に向けて供給する。また、ポンプ13は、充填部30に向けた製品液Lの充填を中断している間に、製品液Lを第一送液路40が備える循環経路を循環させるように運転される。
【0023】
ポンプ13は、制御部70からの指示に基づいて運転される。製品液Lを充填部30に向けて供給する際には、制御部70は、充填部30が備える液面検知計37からの充填タンク31における製品液Lの液面高さに関する情報を取得する。制御部70は、取得した液面高さに関する情報に基づいて、充填タンク31における製品液Lの液面高さが所望する範囲になるように、ポンプ13の運転を制御する。
【0024】
本実施形態に用いるポンプ13の種類は問われず、ターボ式ポンプ、容積式ポンプなど公知の形式のポンプを用いることができるが、固形物を取り扱う上では、容積式ポンプであることが好ましい。ただし、飲料充填システム1は無菌充填システムであるから、ポンプ13には無菌環境向けのポンプを用いることが好ましい。
【0025】
[流路切替部20]
流路切替部20について、
図1を参照しながら説明する。流路切替部20は、以下の3つの流路を切り替えることのできる弁である。この流路の切替は、制御部70からの指示に基づいて行われる。
[第一流路(
図2)]
第一流路は、飲料充填システム1が製品液Lの充填を行う定常運転時に選択される。
第一流路は、送液部10の貯留タンク11から供給される製品液Lを、充填部30の充填タンク31に向けて流す。製品液Lは、第一往路配管41、流路切替部20及び第二往路配管51をこの順に通って充填タンク31に供給される。
【0026】
[第二流路(
図3)]
第二流路は、定常運転していた充填部30が、例えば下流工程の要因に基づいて運転を中断している間に選択される。
第二流路は、貯留タンク11、第一往路配管41を通ってきた製品液Lを、流路切替部20から復路配管43に向けて流すことで、貯留タンク11、第一往路配管41、流路切替部20及び復路配管43で形成される循環経路を製品液Lが循環させる。
流路切替部20が第二流路を選択しただけでは製品液Lを循環させる経路を構成できないので、飲料充填システム1は、復路配管43とCIP配管45の間に流路切替弁44を備える。製品液Lを循環させるときには、流路切替弁44は復路配管43への製品液Lの流れを許容するが、CIP配管45への流れを阻止するように流路が選択される。この流路を流路切替弁44における第一流路とする。第一流路とは逆に、復路配管43への製品液Lの流れを阻止するが、CIP配管45への流れを許容する流路を、流路切替弁44の第二流路とする。
【0027】
[第三流路(
図5)]
第三流路は、定置洗浄(CIP)を行う際に選択される。
飲料充填システム1は、送液部10の側と充填部30の側を独立して定置洗浄を行うことができるように、送液部10と充填部30の間に流路切替部20を介在させている。つまり、飲料充填システム1は、流路切替部20を境にして、送液部10と充填部30の定置洗浄が独立して行われる。このように送液部10と充填部30を独立して定置洗浄すれば、それぞれで定置洗浄される経路を短くできる。したがって、本実施形態によれば、送液部10と充填部30を一気通貫して定置洗浄するのに比べて、短い時間で定置洗浄を終えることができる。
【0028】
第三流路は、送液部10の側の定置洗浄を行うために、貯留タンク11、第一往路配管41を通ってきたCIP液を、流路切替部20から復路配管43に向けて流すように流路が選択される。CIP液は、定置洗浄を行う際に用いられる洗浄液などの総称である。なお、CIP液は、第一定置洗浄部46から供給される。この流路は、第二流路と同じであるが、復路配管43とCIP配管45の間に設けられた流路切替弁44の流路が第二流路の逆であり、CIP配管45への流れを許容する流路を形成する。
【0029】
また、第三流路は、充填部30の側の定置洗浄を行うために、CIP供給配管53を通ってきたCIP液を、流路切替部20から第二往路配管51に向けて流す流路が選択される。なお、CIP液は、第二定置洗浄部55から供給される。第二往路配管51に流れたCIP液は、充填タンク31、充填バルブ33、CIPキャップ36及びCIP戻配管57を通って第二定置洗浄部55に戻る。
【0030】
第一定置洗浄部46、第二定置洗浄部55の構成は任意であり、例えば洗浄液タンク、殺菌液タンク、送液ポンプ、熱交換器からなる加熱装置及びこれらを接続する配管より構成される。
【0031】
[充填部30]
次に、充填部30について
図1を参照して説明する。
充填部30は、容器100に充填される製品液Lが一時的に貯留される充填タンク31と、充填タンク31から供給される製品液Lを容器100の内部に吐出する複数の充填バルブ33と、容器100から漏れた製品液Lを受けるドレンパン35と、を備えている。ここでは簡略化して記載しているが、充填部30は、例えばスターホイールと称される回転する円板の周縁に容器100を保持しながら、充填バルブ33から製品液Lが容器100に充填される。充填タンク31は、製品液Lが固形物を含む場合には、図示を省略する攪拌器を備えることが好ましい。
また、充填タンク31は、内部に貯留される製品液Lの液面の高さを検知する液面検知計37を備えており、ここで検知された液面の高さに関する情報は制御部70に送られる。
充填部30は、図示を省略するが、充填タンク31などの無菌状態を維持するために充填タンク31などの要素を覆い周囲の環境から隔離するチャンバを備えている。
【0032】
[第一送液路40]
次に、第一送液路40について
図1を参照して説明する。
第一送液路40は、以下の三つの機能を発揮する。
第一機能:貯留タンク11に貯留されている製品液Lを、流路切替部20を介して、充填タンク31に供給する。
第二機能:充填部30の運転が中断している間に、製品液Lを循環させる。
第三機能:貯留タンク11を含めて送液部10の側の定置洗浄を実行する。
【0033】
第一送液路40は、以上の三つの機能を発揮するために、以下の構成を備えている。
第一送液路40は、一端が貯留タンク11の下端に連なり、他端が流路切替部20に連なる第一往路配管41を備えている。第一往路配管41の途中には、ポンプ13が設けられており、ポンプ13が運転されると貯留タンク11の製品液Lが第一往路配管41を通って流路切替部20まで送られる。
【0034】
第一往路配管41の貯留タンク11とポンプ13の間には、液面検知計47が設けられている。液面検知計47は、第一往路配管41における製品液Lの液面の高さを検知し、制御部70はこの検知結果を取得する。
【0035】
第一送液路40は、一端が貯留タンク11の上部空間に連なり、他端が流路切替部20に連なる復路配管43を備えている。復路配管43は、第一送液路40が第二機能を発揮するとき及び第三機能を発揮するときに用いられる。つまり、復路配管43は、第二機能を発揮するときには流路切替部20から貯留タンク11に向けて製品液Lが流れ、第三機能を発揮するときにはCIP液が流路切替部20から流路切替弁44まで流れる。
【0036】
第一送液路40は、一端が流路切替弁44に連なり、他端が貯留タンク11の上部空間に連なるCIP配管45を備えている。CIP配管45は、第一送液路40が第三機能を発揮するときに、復路配管43とともに用いられ、復路配管43及び流路切替弁44を通ってきたCIP液を貯留タンク11に向けて流す。
CIP配管45には、流路切替弁44と貯留タンク11の間に第一定置洗浄部46が設けられており、第一定置洗浄部46で生成されたCIP液が第一定置洗浄部46、貯留タンク11、第一往路配管41、流路切替部20、復路配管43、流路切替弁44及びCIP配管45の順に流れることで、送液部10の側の定置洗浄が実行される。
【0037】
以上の通りであるから、循環経路は、第一定置洗浄部46を構成するCIP配管45の一部を通り、また、復路配管43が、第一定置洗浄部46を構成するCIP配管45の一部を通る。換言すれば、循環経路とCIP配管45は流路を共用している部分があり、また、復路配管43とCIP配管45は一部の流路を共用している。これらの配管同士の共用は、第一送液路40における配管構成の簡略化に貢献している。
【0038】
[第二送液路50]
次に、第二送液路50について
図1を参照して説明する。
第二送液路50は、以下の三つの機能を発揮する。
第一機能:流路切替部20を通ってきた製品液Lを充填タンク31に流す。
第二機能:充填タンク31を含めて充填部30の側の定置洗浄を実行する。
第三機能:充填タンク31を含めて充填部30の側のリンス(すすぎ)を実行する。
【0039】
第二送液路50は、以上の三つの機能を発揮するために、以下の構成を備えている。
第二送液路50は、一端が充填タンク31に連なり、他端が流路切替部20に連なる第二往路配管51を備えている。第二往路配管51は、第二送液路50が第一機能を発揮するとき、流路切替部20を通ってきた製品液Lを充填タンク31に供給する。
第二送液路50は、一端がCIPキャップ36に連なり、他端が第二定置洗浄部55に連なるCIP戻配管57を備えている。CIP戻配管57は、第二機能を発揮するときに、CIP液を第二定置洗浄部55に向けて流す。第二定置洗浄部55は、第三機能を発揮するときは、すすぎ用の水を供給する。つまり、第二定置洗浄部55は本願発明のリンス部を兼ねる一例である。
【0040】
第二送液路50は、一端が第二定置洗浄部55に連なり、他端が流路切替部20に連なるCIP供給配管53を備えている。CIP供給配管53は、第二機能を発揮するときに、CIP液を第二定置洗浄部55から流路切替部20に流す。
CIP供給配管53は、第二定置洗浄部55と流路切替部20の間に開閉弁58を備えている。第二送液路50において定置洗浄を実行するときには開閉弁58が開き、それ以外のときには開閉弁58を閉じる。
【0041】
[無菌エア供給部60]
飲料充填システム1は、
図1に示すように、無菌エア供給部60を備えている。
無菌エア供給部60は、送液部10の側で製品液Lを循環させた後に、復路配管43に残っている製品液Lを貯留タンク11に押し出して回収する回収機構を構成する。
無菌エア供給部60は、以上の機能を発揮するために、エア供給源61と、エア供給源61から供給される無菌とされたエアを流路切替部20に向けて流すエア供給配管63と、エア供給配管63の流路切替部20より手前に設けられる流路切替弁65と、を備えている。
【0042】
エア供給配管63は、流路切替弁65で分岐配管63Aと分岐配管63Bに分岐しており、分岐配管63Aは流路切替部20に接続され、分岐配管63Bは、エア供給源61から流路切替弁65までの間をSIPにより殺菌する際の末端部となる。殺菌・冷却完了後には、分岐配管63B側は常時閉とされる。
【0043】
送液部10の側における製品液Lの循環運転を終えた後に、エア供給源61から無菌エアを供給する。このとき、流路切替弁65は分岐配管63Aの側の流路が選択されており、供給された無菌エアは分岐配管63A、流路切替部20を通って復路配管43に流入し、復路配管43の内部に残されている製品液Lを貯留タンク11に向けて搬送する。
無菌エア供給部60は、流路切替部20よりも下流側から流路切替部20を介して復路配管43に無菌エアを供給する。これにより、流路切替部20の内部に残されている製品液Lも貯留タンク11に向けて押し出す。
【0044】
[飲料充填システム1の運転]
以上の構成を備える飲料充填システム1の運転項目を
図2〜
図6を参照して説明する。
[充填運転(
図2、
図6(S101))]
飲料充填システム1の定常運転にあたる製品液Lの充填の際にはポンプ13を運転することにより、
図2に示すように、貯留タンク11の製品液Lが第一往路配管41、流路切替部20及び第二往路配管51を通って充填タンク31に供給され、供給された製品液Lは充填バルブ33から容器100に充填される。
図2において、太線で示されている配管類は、製品液Lが流れていることを示している。
図3〜
図5において、製品液Lだけではなく無菌エア、CIP液についても同様に示される。
【0045】
飲料充填システム1は、充填タンク31における製品液Lの液面の高さの制御はポンプ13の運転を制御することにより行われる。飲料充填システム1は、この製品液Lの充填の際に、固形物を含む製品液Lが流れる流路の径は一定である。これが、ポンプ13を使って固形物を含む製品液Lの充填を行う利点になるが、詳しくは後述する効果のところで説明する。ちなみに、バルブの開度によって製品液Lの流量、換言すれば製品液Lの液面の高さを制御する方式だと、流量を絞るためにバルブの開度を狭くする必要がある。この開度を狭くすると、固形物が流れる障害になり得る。
【0046】
充填運転の際には、流路切替部20は製品液Lが第一往路配管41を通って第二往路配管51に流れる第一流路が選択される。
【0047】
[循環運転(
図3,
図6(S107,S109))]
飲料充填システム1が充填運転をしていたが、何らかの事由により充填部30の運転を中断する必要があることがある。この場合、運転を再開するまでの間に、貯留タンク11から充填タンク31までの経路に製品液Lが停滞すると、固形物が沈殿してしまう。循環運転はこの固形物の沈殿を防止するために行われるが、飲料充填システム1はポンプ13により製品液Lを送給するので循環運転を容易に行うことができる。
【0048】
循環運転は、ポンプ13の運転は継続して行われるが、流路切替部20の流路が前述した第二流路に切り替えられる。これより、ポンプ13により送給される製品液Lは、
図3に示すように、第一往路配管41、流路切替部20、復路配管43及び貯留タンク11を経由して第一往路配管41に戻るという循環経路を流れる。この循環は、充填部30における充填運転が再開されるまで続けられる。
【0049】
[無菌エア供給運転(
図4,
図6(S111))]
飲料充填システム1は、充填部30における充填運転が再開される前に、無菌エア供給運転が行われる。この運転は、循環運転を行った後に復路配管43に残っている製品液Lを、流体(無菌エア)により押し出して貯留タンク11に回収するために行われる。
無菌エア供給運転は、エア供給源61を運転させることにより、
図4に示すように、エア供給配管63、流路切替弁65、分岐配管63A、流路切替部20及び復路配管43をこの順に無菌エアが通って貯留タンク11に流れ込む。この無菌エアの流れによって、復路配管43に残っている製品液Lが貯留タンク11に回収される。
無菌エア供給運転が終了すると、充填運転が再開される。
【0050】
[定置洗浄運転(
図5,
図6(S113))]
所定量の製品液Lの充填を終えて、製品液の種類を切り替えるか又は定期的な時期に至っていれば、定置洗浄運転が行われる。
定置洗浄運転は、
図5に示すように、送液部10の側と充填部30の側の両方で独立して行われる。
【0051】
送液部10の側では、第一定置洗浄部46を稼働させると、CIP配管45、貯留タンク11、第一往路配管41、流路切替部20及び復路配管43の順にCIP液が通ることで定置洗浄が行われる。
送液部10の側の定置洗浄は、流路切替弁44を切り替えることにより、
図5に太線で示される経路とは異なる経路を洗浄の対象とすることができる。この経路は、第一定置洗浄部46を稼働させると、CIP配管45、貯留タンク11、第一往路配管41、流路切替部20、復路配管43、流路切替弁44、CIP配管45、貯留タンク11の順にCIP液が通る。この洗浄経路は、流路切替弁44から図中の上方に立ち上がっているCIP配管45の部分をCIP液が通る点で、
図5と相違する。
送液部10の定時洗浄運転中において、流路切替弁44を定期的に切替えることにより、送液部10の全ての配管、機器類を定置洗浄する。
【0052】
また、充填部30の側では、第二定置洗浄部55を稼働させると、CIP液がCIP供給配管53、開閉弁58、流路切替部20、第二往路配管51、充填タンク31、充填バルブ33、CIPキャップ36及びCIP戻配管57の順にCIP液が通ることで定置洗浄が行われる。
【0053】
充填部30の側の定置洗浄を行う前に、リンス用の水をCIP供給配管53、開閉弁58、第二往路配管51、充填タンク31および充填バルブ33へ供給し製品液Lをリンス水で置換しながらドレンパン35へ排水しておくことが好ましい。この好ましい形態は、第二定置洗浄部55がリンス部を兼ねることで実現される。また、このとき容器100は取り除かれている。
定置洗浄を終えると、必要に応じてSIP及びその他の保守作業を行った後に、次の製品液Lの充填が開始される。
【0054】
[飲料充填システム1の制御手順(
図6)]
次に、
図6を参照して、飲料充填システム1の運転を制御する手順を
図6に基づいて説明する。
飲料充填システム1は、ポンプ13を運転して製品液Lの容器100への充填を開始する(
図6 S101)。
所定の本数の製品液Lの容器100への充填を終えると生産終了となる(
図6 S103 Y)。そうすると、飲料充填システム1は、定置洗浄へ移行する(
図6 S113,S115)。
【0055】
飲料充填システム1において、充填作業の中断は、飲料充填システム1よりも下流の工程、例えば容器100にキャップを付ける工程で起こることもあれば、飲料充填システム1で起こることもある。
制御部70は、製品液Lの充填を中断する要因が発生しない限り、継続して製品液Lの充填を続ける(
図6 S105 N)。
【0056】
一方、制御部70は、製品液Lの充填を中断する事由が発生すると、製品液Lの充填、つまり充填部30の運転を停止してから、循環運転に移行する(
図6 S107)。循環運転へ移行するには、流路切替部20の流路を第一流路から第二流路に切り替える。
【0057】
制御部70は、充填を中断していた事由が解消されたか否かを監視し、その結果に基づいて充填運転を再開するか否かを判断する(
図6 S109)。製品液Lの充填を再開する場合には(
図6 S109 Y)、循環運転を停止するとともに、無菌エア供給を行う(
図6 S111)。製品液Lの充填を再開するに至らない場合には(
図6 S109 N)、循環運転が継続して行われる(
図6 S107)。
【0058】
また、生産中に充填部30のみが無菌ブレークした場合には、送液部10の側にしてみれば、充填部30が中断と判断されるため、循環運転、無菌エア供給へ移行する(
図6 S105,S107,S111)。この場合には、生産終了後に行われる定置洗浄は、充填部30のみを対象にできる。
【0059】
生産が終了すると(
図6 S103 Y)、ポンプ13、充填部30の運転を停止してから、定置洗浄(CIP)を行う(
図6 S113)。定置洗浄においては、送液部10の側と充填部30の側でそれぞれ独立して行われる。
生産終了後、送液部10を定置洗浄運転に移行するには、流路切替部20の流路を第二流路から第三流路に切り替えるとともに、流路切替弁44を第二流路に切り替える。
【0060】
制御部70は、定置洗浄を終えると(
図6 S115 Y)、次の生産が控えているか否かを判断し、次の生産が控えていなければ(
図6 S117 N)、飲料充填システム1の動作を停止する。
制御部70は、次の生産が控えていれば(
図6 S117 Y)、送液部10および充填部30を定置殺菌(SIP,
図6 S119,S121)するように指示する。定置殺菌を終えると、次の生産が開始される(
図6 S117 Y,S101)。
【0061】
[飲料充填システム1の効果]
次に、飲料充填システム1が奏する効果を説明する。
<循環運転による効果>
飲料充填システム1は、充填部30の運転が中断し、製品液Lの充填部30への供給が中断すると、送液部10の側で循環運転を行う。これにより、飲料充填システム1は、送液部10の側の配管類における固形物の沈殿を防ぐことができる。
しかも、飲料充填システム1は、流路切替部20の第二流路が選択されているときに、第二流路及び貯留タンク11を通る、製品液Lが循環する循環経路を備える。これにより、飲料充填システム1によれば、充填部30の運転が中断している間だけ、流路切替部20の第二流路を選択することにより、製品液Lを循環させることができる。この製品液Lの循環のときは、単に製品液Lを循環すれば足りるので、循環量は少なくてもよい。したがって、飲料充填システム1によれば、製品液Lの充填のときに比べてポンプ13を低負荷で運転できるので、製品液Lの循環に費やすエネルギを最小限に抑えることができる。
【0062】
飲料充填システム1は、循環経路が流路切替部20を含んで構成されており、充填部30及び第二送液路50を除く広い領域で循環運転を行うことができる。これにより、飲料充填システム1は、充填部30を中断している間の固形物の沈殿を広い範囲で防ぐことができる。
【0063】
また、飲料充填システム1は、循環運転を行う循環経路がCIP配管45の一部を利用している。これにより、循環経路を構成する配管を少なくできるとともに配管が専有する面積を抑えることができる。
また、循環経路がCIP配管45の一部を利用し、かつ、流路切替部20を含んで構成されている。これにより、飲料充填システム1は、循環経路を設けながら、送液部10と充填部30の独立した定置洗浄を実現できる。
【0064】
<無菌エア供給による効果>
飲料充填システム1は、循環運転に続いて循環経路に無菌エアを供給することで、循環経路、特に復路配管43に滞留した製品液Lを貯留タンク11に回収できる。これにより、固形物を含む製品液Lが、復路配管43に滞留し続けて廃棄の対象となるのを防ぐことができる。
飲料充填システム1は、製品液Lの充填運転中にも無菌エアを復路配管43に供給して管路内を陽圧にすることで、当該経路を無菌状態に維持することができる。
【0065】
<ポンプ送給による効果>
飲料充填システム1は、ポンプ13が送液部10から充填部30への製品液Lの供給し、かつ充填タンク31における製品液Lの液面制御を担う。ここで、バルブの開度によって製品液Lの流量、換言すれば製品液Lの液面制御をするものとすれば、液面制御のためにバルブの開度を広狭させる必要がある。ところが、開度が狭くなると製品液Lに含まれる固形物がバルブに詰まるおそれがある。これに対して、ポンプ13を用いる飲料充填システム1は、この製品液Lの充填の際に、固形物を含む製品液Lが流れる流路の径を広狭させることがなく一定である。したがって、固形物が詰まるおそれのない流路径を採用しておけば、以後の充填運転の際に固形物が配管経路で詰まるのを防ぐことができる。
【0066】
また、飲料充填システム1は、製品液Lの供給にポンプ13を用いるので、充填待機中の循環運転を容易に実現できる。製品液Lを供給するのに貯留タンク11を加圧タンクにして貯留タンク11と充填タンク31の圧力差を利用できるが、圧力差によって循環運転を行うのは容易ではないが、ポンプ13を用いれば容易に循環運転を実現できる。
【0067】
さらに、飲料充填システム1は、製品液Lの供給にポンプ13を用いるので、製品液Lの流速を確保しやすく、充填運転中に固形成分が沈殿しにくい。つまり、ポンプ13を用いれば、貯留タンク11と充填タンク31の間に設けられる配管の径を小さくしても流量を稼ぐことができる。これにより、製品液Lの流速を一定以上に保つことが可能となるので、固形物が撹拌されることで沈殿するおそれが小さい。
【0068】
さらにまた、飲料充填システム1は、ポンプ13を流路切替部20よりも上流であって貯留タンク11との間に設けている。これにより、飲料充填システム1によれば、定置洗浄を行う際のCIP液の払い出しを無理なく行うことができる。
ここで、仮に貯留タンク11を加圧することにより製品液Lを圧送する場合を想定する。固形物の沈殿を防ぐために製品液Lの流速を確保するためには配管経路の開口径を小さくする必要がある。ところが、CIP液を循環させるのに必要な圧力に耐えられる貯留タンク11は相当高価なものになる。
【0069】
<リンス機能による効果>
次に、飲料充填システム1は、リンス機能を備えるので、流路切替部20及び充填部30において滞留する固形物を含む製品液Lをリンス水で置換することができる。これにより、後に行われる定置洗浄において、特に充填バルブ33、CIPキャップ36に固形物が詰まるのを防ぐことができる。つまり、定置洗浄を行う前に、定置洗浄とは独立するリンス運転を有する事により充填バルブ33から十分にドレンを行うことによって、配管経路内をリンス水で置換しておくことで、定置洗浄の際に固形物が充填バルブ33、CIPキャップ36などに詰まるのを防ぐことができる。
【0070】
<循環経路による効果>
充填の中断時には、第一往路配管41、流路切替部20および第二往路配管51は、製品液Lの移動ができないため、配管中の固形物は滞留し、沈殿、分離する可能性がある。なお、ここでいう充填の中断とは、充填部30へ製品液の供給を開始した後、ライン全体を含めてのあらゆる中断を意味している。
ここで、第一往路配管41の始端から流路切替部20を経由して第二往路配管51の末端までの総配管長は、飲料充填システム1を設置する場所、レイアウトにより長短が生じ得るが、この配管長は短いほうが好ましい。
【0071】
飲料充填システム1は、第一往路配管41と流路切替部20の間に復路配管43を設けることにより、循環経路を構成することができる。これにより、第一往路配管41と流路切替部20の間の固形物の沈殿を防ぐことができるので、第一往路配管41と流路切替部20の間の配管長を短くするように配慮する必要がなくなる。換言すると、第一往路配管41と流路切替部20の間の距離が長いほど、その効果は大きいといえる。
ここで、充填が中断して固形物が沈殿した後に、充填が復帰して製品液Lを充填するときの容器100における固形物の含有量のばらつきが懸念される。許容値を超えて含有量がばらつくと、不良品として扱われる。つまり、第一往路配管41と流路切替部20の間の距離が長いほどこの間に保留される製品液Lの量は増えるので、固形物のばらつきによる影響が大きくなるが、飲料充填システム1によれば、この懸念がなくなる。
【0072】
以上、本発明の好ましい一実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、本実施形態の製品液Lは飲料を例にするが、本発明が対象とする製品液Lは飲料に限るものでなく、液体に固形物を含む食品、薬品などに適用することもできる。また、本実施形態の製品液Lは固形物を含むことを前提にしているが、本発明の飲料充填システムは、固形物を含む製品液Lの充填と固形物を含まない製品液Lの充填に併用できる。
また、本実施形態は、循環経路が、第一定置洗浄部46を構成するCIP配管45の一部を通り、また、復路配管43が、第一定置洗浄部46を構成するCIP配管45の一部を通る構成としてが、本発明はこれに限定されない。循環経路及び復路配管43の一方又は双方が、第一定置洗浄部46を構成する配管類とは独立した経路を有することもできる。