【実施例】
【0023】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制約されるものではない。また使用した薬剤のエキスについての抽出方法についても何ら限定されるものではない。
【0024】
〈抽出物製造例1〉植物抽出物(キハダ抽出物)の製法
キハダに関しては、学名がPhellodendron amurense Ruprecht又は同属植物であれば何を使用しても構わない。キハダの周皮を除いた樹皮(オウバク)30gに20倍量の50w/w%エタノール600gを加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(キハダ抽出物1)。別の製法として、キハダの周皮を除いた樹皮50gに10倍量の50w/w%エタノール500gを加え、室温にて5日間抽出を行い、ろ過し、抽出物を得た(キハダ抽出物2)。
【0025】
〈抽出物製造例2〉植物抽出物(コガネバナ抽出物)の製法
コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の周皮を除いた根(オウゴン)30gに20倍量の50w/w%エタノール600gを加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(コガネバナ抽出物1)。別の製法として、コガネバナの周皮を除いた根50gに10倍量の1,3−ブチレングリコール500gを加え、室温にて1日間抽出を行い、ろ過し、抽出物を得た(コガネバナ抽出物2)。
【0026】
〈抽出物製造例3〉植物抽出物(マルメロ抽出物)の製法
マルメロ(Cydonia oblonga Miller)の種子(クインスシード)30gに20倍量の精製水600を加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(マルメロ抽出物1)。別の製法として、マルメロ種子50gに10倍量の精製水500gを加え、40℃付近でかき混ぜながら8時間抽出し、ろ過後、フェノキシエタノール0.5%、1,3−ブチレングリコール1%になるよう加え、精製水を加えて調節し、抽出物を得た(マルメロ抽出物2)。
【0027】
〈抽出物製造例4〉植物抽出物(ニガヨモギ抽出物)の製法
ニガヨモギ(Artemisia absinthium Linne)の葉50gに20倍量の50w/w%エタノール1000gを加え、50℃にて3時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(ニガヨモギ抽出物1)。別の製法として、ニガヨモギの葉50gに10倍量の1,3−ブチレングリコール500gを加え、室温にて3時間抽出を行い、ろ過し、抽出物を得た(ニガヨモギ抽出物2)。
【0028】
(試験例1)DEPによる表皮細胞のIL−8過剰産生の抑制試験
試験例1として、大気汚染物質による表皮細胞の炎症性物質IL−8過剰産生の抑制試験を記載する。大気汚染物質のモデル物質としては、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が提供するDEP(ディーゼル排気微粒子):SRM1975を使用した。SRM1975は、多環芳香族炭化水素類(PAHs)が含有されており、数種類のPAHsに関して、NISTによって化合物の濃度が保証されている。なお、大気汚染物質に関しては、上記の自動車の排気ガス由来の物質でなくとも、火山噴火物・海塩・土壌由来、工場排気ガス・固形燃料使用時の煙・煙草の煙・野焼きの煙などから適宜選択して構わない。
試験試料は、製造例1〜4にて調製した抽出物(キハダ抽出物1、コガネバナ抽出物1、マルメロ抽出物1、ニガヨモギ抽出物1)を使用した。ヒト表皮細胞を5%ウシ胎児血清(以下FBSと略記)を含むDMEM培地にて調製し、96穴プレートに3.5×10
4個/穴ずつ播種し、37℃、5%炭酸ガス下、24時間培養した。24時間培養後、精製水に試験試料を溶解し、フィルター滅菌した溶液を添加した上記の培地にて、24時間同条件にて培養した。24時間培養後、試験試料を上記と同濃度で含有し、溶媒をDMSOに交換したSRM1975を含有する群(SRM1975(+))と含有しない群(SRM1975(−))に分けて添加し、更に24時間培養した。24培養後、培養上清を回収し、IL−8測定まで−80℃のディープフリーザーに保管した。上清回収後に、0.5%TritonX−100含有PBS(−)を添加し、細胞を溶解した後、BCA Protein Assay kit(Thermo Fisher Scientific)にてタンパク定量を実施した。培養上清中のIL−8の測定は、ELISAキット(R&D Systems)によって測定した。全ての条件でのIL−8量(pg)/Protein(mg)値を算出し、IL−8産生量として評価した。また、SRM1975ありのコントロールのIL−8量(pg)/Protein(mg)値を100%としたときの試験試料のIL−8産生率(%)も算出した。値を表1に記す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す通り、キハダ抽出物、コガネバナ抽出物、マルメロ抽出物、ニガヨモギ抽出物が、大気汚染物質によって過剰に産生が惹起される表皮細胞の炎症性因子IL−8産生を抑制することを確認した。
【0031】
(試験例2)皮膚外用剤の適用試験
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県内に在住する、30〜50歳の女性10名をパネルとし、表2記載の本発明の抽出物を含有する皮膚外用剤(実施例1)を配布し、毎日朝と夜の2回、24週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による炎症(肌荒れ症状の改善)や透明感(シミ症状の改善)、ハリ(シワ症状の改善)といった項目に関するアンケート結果を表3に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示す通り、植物抽出物を含む実施例1の皮膚外用剤は、長期間塗布することによって、大気汚染を含む外部環境の変化による肌荒れ症状やシミやシワを緩和することが確認された。
【0035】
本発明による大気汚染物質による皮膚症状改善のための皮膚外用剤への植物抽出物の配合例を下記に示す。なお、配合例は本発明を限定するものではない。
【0036】
(配合例1)クリーム
下記の成分(1)〜(10)、これとは別に下記成分(11)〜(15)及び(17)を75℃に加温溶解し、乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(16)を加え、クリームを調整した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 3.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)メチルポリシロキサン 0.5%
(4)ステアリルアルコール 0.5%
(5)セチルアルコール 0.5%
(6)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 12.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 5.0%
(8)モノステアリン酸ジグリセリル 1.5%
(9)モノステアリン酸デカグリセリル 3.0%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)キサンタンガム 0.1%
(12)コガネバナ抽出物2 0.1%
(13)サッカロミセス/加水分解チョロギ塊茎発酵液 1.0%
(14)1,3−ブチレングリコール 2.5%
(15)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(16)香料 0.1%
(17)精製水 残量
【0037】
(配合例2)化粧水
下記成分(7)〜(9)を混合溶解させてA液とし、これとは別に下記成分(1)〜(6)及び(10)を混合溶解させてB液とし、A液とB液を均一に混合し、化粧水を得た。
(成分) (重量%)
(1)グリセリン 5.0%
(2)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(3)マルメロ抽出物2 0.5%
(4)ザクロ花エキス 0.1%
(5)チャ花エキス 0.1%
(6)ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル 1.2%
(7)エチルアルコール 5.0%
(8)フェノキシエタノール 0.1%
(9)香料 0.1%
(10)精製水 残量
【0038】
(配合例3)乳液
下記成分(1)〜(10)、これとは別に下記成分(11)〜(14)及び(16)を75℃で加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(15)を加え、乳液を調製した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 1.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)ベヘニルアルコール 1.0%
(4)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0%
(5)テトラグリセリン縮合リシノレイン酸 0.1%
(6)モノオレイン酸プロピレングリコール 0.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 1.0%
(8)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 1.0%
(9)モノミリスチン酸デカグリセリル 0.5%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)キハダ抽出物2 0.1%
(12)タモギタケエキス 0.2%
(13)1,3−ブチレングリコール 3.0%
(14)パラオキシ安息香酸メチル 0.1%
(15)香料 0.1%
(16)精製水 残量
【0039】
(配合例4)クレンジングジェル
下記成分(1)〜(3)、これとは別に下記成分(4)〜(7)及び(9)を70℃に加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて均一になるまで攪拌する。攪拌しながら、50℃まで冷却し、成分(8)を加えてクレンジングジェルを調製した。
(成分) (重量%)
(1)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 20.0%
(2)流動パラフィン 59.7%
(3)パラオキシ安息香酸エステル 0.3%
(4)ニガヨモギ抽出物2 0.1%
(5)ホホバ葉エキス 0.1%
(6)濃グリセリン 5.0%
(7)ソルビトール 5.0%
(8)香料 0.1%
(9)精製水 残量
【0040】
(配合例5)パック剤
下記成分(1)〜(6)及び(11)を70℃に加熱溶解しA液とし、(8)〜(10)を混合してB液とする。B液をA液に混合した後、冷却し(7)を均一に分散してパックを調製した。
(成分) (重量%)
(1)ポリビニルアルコール 20.0%
(2)グリセリン 5.0%
(3)カオリン 6.0%
(4)マルメロ抽出物2 0.5%
(5)ベルゲニアリグラタ根エキス 0.1%
(6)フトモモ葉エキス 0.1%
(7)塩化ベンザルコニウム 20.0%
(8)エタノール 20.0%
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(10)香料 0.1%
(11)精製水 残量
【0041】
大気汚染物質による表皮細胞のIL−8産生亢進を抑制する作用を有するミカン科キハダ属キハダ、シソ科タツナミソウ属コガネバナ、バラ科マルメロ属マルメロ、キク科ヨモギ属ニガヨモギの抽出物は、大気汚染物質による皮膚の肌荒れ症状やシミやシワなどの皮膚の諸症状の予防、改善効果があることが判明した。