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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-182820(P2019-182820A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/282 20060101AFI20190927BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20190927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190927BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190927BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190927BHJP
   A61K 36/756 20060101ALI20190927BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20190927BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   A61K36/282
   A61K8/9789
   A61Q19/00
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61K36/756
   A61K36/73
   A61K36/539
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-81826(P2018-81826)
(22)【出願日】2018年4月5日
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】599000212
【氏名又は名称】香栄興業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 智洋
(72)【発明者】
【氏名】金澤 奈奈江
(72)【発明者】
【氏名】長南 律
(72)【発明者】
【氏名】三谷 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC692
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD352
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
4C088AB29
4C088AB38
4C088AB51
4C088AB62
4C088AC01
4C088AC02
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088AC11
4C088AC13
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA07
4C088CA08
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB11
(57)【要約】
【課題】人々が常に触れていて避けることが難しい室外・室内空気汚染物質によって引き起こされる、肌荒れ症状やシミやシワを予防、改善することができる皮膚外用剤の提供が必要となっている。
【解決手段】ミカン科キハダ属キハダ、シソ科タツナミソウ属コガネバナ、バラ科マルメロ属マルメロ、キク科ヨモギ属ニガヨモギの植物の抽出物が、室外・室内空気汚染物質による表皮細胞のIL−8過剰産生を抑制することを見出し、上記の抽出物を含有する皮膚外用剤を開発するに至った。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミカン科キハダ属、シソ科タツナミソウ属、バラ科マルメロ属、キク科ヨモギ属の1種または2種以上の植物の抽出物を含有する事を特徴とする室外・室内空気汚染物質による肌荒れ症状やシミやシワに対する皮膚外用剤。
【請求項2】
前記の植物が、ミカン科キハダ属キハダ、シソ科タツナミソウ属コガネバナ、バラ科マルメロ属マルメロ、キク科ヨモギ属ニガヨモギである請求項1記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外・室内空気汚染物質によって引き起こされる炎症やニキビなどの肌荒れ症状やシミやシワといった症状を予防、改善する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2016年の世界保健機構(WHO)の発表にて、2014年に世界の人口の約90%が、WHOが定める基準値を超える室外・室内空気汚染物質(以下、大気汚染物質と表現する)の漂う環境で生活していることが判明した(非特許文献1)。この原因として、大気汚染物質の種類が硫黄酸化物・窒素酸化物・粒子状物質・光化学オキシダント・花粉や無機物などと多岐に渡ること、また、大気汚染物質の発生源が火山噴火物・海塩・土壌といった自然由来と自動車排気ガス・工場排気ガス・固形燃料使用時の煙・煙草の煙・野焼きの煙といった人為由来と多岐にわたること、更には大気汚染物質が越境飛来することなどが複雑に関係していると考えられる。以上から、体の最も外側にある人間の最大臓器ともいえる皮膚を大気汚染物質に曝露させないことは不可能に近いことが考えられる。
【0003】
近年、大気汚染物質の多いと考えられる環境で生活している人々の皮膚にシミ(非特許文献2)やシワ(非特許文献3)、尋常性ざ瘡(非特許文献4)が形成されやすいという疫学的な研究が報告されている。よって、上記の背景も踏まえると、大気汚染物質による肌荒れ症状やシミやシワを予防、改善する対策が必要不可欠であると考えられる。
【0004】
大気汚染物質による皮膚の症状を予防、改善するためには、大気汚染物質を肌に付着させない、大気汚染物質が付着しても問題ない様に肌を保護する、すなわち大気汚染物質による悪影響を緩和するという二つの方法が考えられる。
【0005】
第一の大気汚染物質を肌に付着させない方法として、藻類から抽出されたアルギン酸ナトリウムの酵素による解重合の生成物を利用した化粧品(特許文献1)が考えられている。肌に形成した膜等によって、大気汚染物質から肌を物理的もしくはその他の原理でバリアすることによって皮膚を保護するという方法である。しかし、前述した通り、大気汚染物質の種類は多岐に渡りその性質も複雑であることから、上記の方法が全ての大気汚染物質に対して有効であるかは不明であり、大気汚染物質を肌に全く付着させないことは困難であると予想される。
【0006】
第二に、肌に大気汚染物質が付着してしまった際に考えられる悪影響を緩和する方法として、グミ科ヒッポファエ属の抽出物を有効成分とする大気エアロゾル粒子に起因する皮膚炎症抑制剤(特許文献2)が報告されている。しかし、特許文献にて報告されている物質の表皮細胞の炎症性因子の過剰産生抑制作用を発揮する有効濃度は、数十〜数百μg/mL以上であり、より低濃度にて有効性を発揮する成分があれば、有効性の観点だけでなく、製剤中の色や匂いを抑えるという安定性の観点からも有用であると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−26231号公報
【特許文献2】特開2016−216366号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】WHO release(世界保健機構 発表)、“WHO releases country estimates on air pollution exposure and health impact(WHOは大気汚染曝露と健康への影響に関する国の見積りを発表する)”、原文“A new WHO air quality model confirms that 92% of the world’s population lives in places where air quality levels exceed WHO limits*.(新しいWHO大気質モデルは、世界の人口の92%が大気質の水準がWHOの制限を超える場所に住んでいることを確認しています)”、[online]、27 SEPTEMBER 2016(平成28年9月27日)、[平成30年3月1日検索]、インターネット<URL:http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2016/air−pollution−estimates/en/>
【非特許文献2】
【非特許文献3】Li Mら,J Dermatol Sci.79(2):148−54(2015)
【非特許文献4】Liu Wら,Skin Pharmacol Physiol.31(2):107−113(2018)
【非特許文献5】Yano Kら,Br J Dermatol.152(1):115−121(2005)
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の様な背景から、本発明は、人々が常に触れていて避けることが難しい大気汚染物質によって引き起こされる炎症やニキビなどの肌荒れ症状やシミやシワを予防、改善することができる皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、大気汚染物質としてディーゼル排気微粒子(DEP)を使用し、DEP処理による表皮細胞の炎症性因子の過剰産生を低濃度においても抑制する植物抽出物の探索を行った。一般的に大気汚染物質を表皮細胞に処理すると、活性酸素の産生が誘導され、シミやシワを誘導する炎症性因子の産生が促進されることが知られている。ここでの炎症性因子としては、インターロイキン−8(IL−8)に着目した。IL−8は、皮膚において好中球を誘導することが知られており、好中球はエラスターゼを産生してエラスチンを分解することから、シワを誘導することも知られている(非特許文献5)。なお、炎症性因子はIL−8でなくても、IL−1やIL−6、プロスタグランジンE2(PGE2)といった、他の炎症性因子を測定しても構わない。本発明者は、鋭意検討した結果、ミカン科キハダ属キハダ(Phellodendron amurense Ruprecht)の樹皮、シソ科タツナミソウ属コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の根、バラ科マルメロ属マルメロ(Cydonia oblonga Miller)の種子及びキク科ヨモギ属ニガヨモギ(Artemisia absinthium Linne)の葉の抽出物が、DEP処理による表皮細胞のIL−8過剰産生を500ng/mLという低濃度で抑制することを見出し、これらの抽出物を含有する皮膚外用剤が、大気汚染物質による肌荒れ症状やシミやシワを予防、防止する有用な剤であることを確認した。
【発明の効果】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る皮膚外用剤は、ミカン科キハダ属キハダ(Phellodendron amurense Ruprecht)の樹皮、シソ科タツナミソウ属コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の根、バラ科マルメロ属マルメロ(Cydonia oblonga Miller)の種子及びキク科ヨモギ属ニガヨモギ(Artemisia absinthium Linne)の葉の抽出物を含有することを特徴とする。この皮膚外用剤を用いて日常的にスキンケアすることによって、大気汚染物質によって引き起こされるシミやシワに加え、炎症やニキビといった肌荒れ症状を予防、改善することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
植物の部位
本発明における植物の部位は、特に限定はなく、全草、地上部、葉、花、茎、根茎、種子、根、果実など適宜使用することができるが、望ましくは、ミカン科キハダ属キハダに関しては樹皮、シソ科タツナミソウ属コガネバナに関しては根、バラ科マルメロ属マルメロに関しては種子、キク科ヨモギ属ニガヨモギに関しては葉が挙げられる。
【0013】
抽出溶媒
本発明にあっては、抽出溶媒として、水、直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜5の低級アルコール、直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜5の低級エステル、直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜5の低級アセトン、及びこれらの二種以上の混合物が使用される。直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜5の低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が好ましくは挙げられ、より好ましくは、メタノール、エタノールが挙げられる。直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜5の低級エステルの具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル等が好ましくは挙げられ、より好ましくは酢酸エチルが挙げられる。直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜5の低級アセトンとしては、メチルエチルケトン、アセトン等が好ましくは挙げられ、より好ましくはアセトンが挙げられる。本発明にあっては、溶媒で抽出した溶媒抽出物をそのまま使用する場合、安全性の観点も考慮し、これら溶媒の中でも食品としても使用されるものを選択し使用することが好ましく、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物である。
【0014】
抽出溶媒の添加量は、植物原体の量、抽出温度等に適合させて適宜定めることができる。また、溶媒抽出は、常温、常圧下で行って良く、抽出温度は各溶媒の沸点等を考慮して適宜定めることができる。
【0015】
本発明にあっては、溶媒抽出する場合、原体と溶媒の重量比率は、1:20〜1:1であり、好ましくは1:15〜1:5であり、より好ましくは1:10である。また、抽出する際に加温するときの温度は、30℃以上100℃以下程度であり好ましくは、下限値が45℃以上であり上限値が90℃以下である。
【0016】
濃縮
本発明の別の態様によれば、溶媒抽出物から溶媒を除去した抽出物を得ることができる。溶媒を除去する方法としては、一般的には、減圧濃縮、加熱濃縮、通風濃縮、冷凍濃縮、噴霧濃縮、およびその他の濃縮方法、またはこれらの混合方法を用いることができる。濃縮の際の、圧力、温度、風力、噴霧等は、得られる抽出物の量及び使用用途に併せて適宜設定することができる。本発明においては、減圧濃縮が好ましくは利用される。減圧濃縮を行う場合、圧力、温度は得られる濃縮物の量及び使用用途に併せて適宜設定することができる。
【0017】
本発明で使用する抽出物は、そのまま用いてもよいが、必要に応じてろ過、濃縮してもよい。また、抽出物をカラムクロマト法、向流分配法などにより、分画、精製して用いることもできる。
【0018】
更に、上記のものを減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることもできる。
【0019】
乾燥/乾燥物
本発明の別の態様によれば、抽出物または溶媒を除去した抽出物を、乾燥し、乾燥物を得ることができる。本発明において、乾燥方法は、天日乾燥、(熱)風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、流動乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、高周波乾燥、およびその他の乾燥法、またはこれらの混合方法が用いられる。乾燥は、上記した濃縮と同時に行われても良い。
【0020】
皮膚外用剤
本発明による抽出組成物は、皮膚に適応した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。この皮膚外用剤は、具体的には植物の抽出物を含有する組成物を含んでなる皮膚外用剤である。皮膚外用剤の種類としては、例えばクリーム、化粧水、乳液、ローション、クレンジングジェル、パック、軟膏など様々なものが挙げられる。植物の抽出物の添加量は、皮膚用組成物(化粧品)の総重量に対して、約0.0001重量%以上であり、20重量%以下である。
本発明による抽出組成物をそのまま使用する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度等は何ら限定されるものではない。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、常法に従い、通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基剤に配合して調製することができ、外用剤の形態としては特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック等の任意の剤形を選択することができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤において、ミカン科キハダ属キハダの樹皮、シソ科タツナミソウ属コガネバナの根、バラ科マルメロ属マルメロの種子及びキク科ヨモギ属ニガヨモギの葉の抽出物とともに構成成分として利用可能なものは例えば、保湿剤・紫外線吸収剤・複合脂質・活性酸素消去作用を有する物質・抗炎症剤・ビタミンおよびその誘導体・油性成分・界面活性剤・防腐剤・粉体成分・精製水・高分子化合物・ゲル化剤・酸化防止剤・コレステロール類・植物ステロール類・リポプロテイン類・微生物由来成分・藻類抽出物・血行促進剤・抗脂漏剤・増粘剤・着色料・美容成分などをなどが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることが出来る。
【実施例】
【0023】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制約されるものではない。また使用した薬剤のエキスについての抽出方法についても何ら限定されるものではない。
【0024】
〈抽出物製造例1〉植物抽出物(キハダ抽出物)の製法
キハダに関しては、学名がPhellodendron amurense Ruprecht又は同属植物であれば何を使用しても構わない。キハダの周皮を除いた樹皮(オウバク)30gに20倍量の50w/w%エタノール600gを加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(キハダ抽出物1)。別の製法として、キハダの周皮を除いた樹皮50gに10倍量の50w/w%エタノール500gを加え、室温にて5日間抽出を行い、ろ過し、抽出物を得た(キハダ抽出物2)。
【0025】
〈抽出物製造例2〉植物抽出物(コガネバナ抽出物)の製法
コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)の周皮を除いた根(オウゴン)30gに20倍量の50w/w%エタノール600gを加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(コガネバナ抽出物1)。別の製法として、コガネバナの周皮を除いた根50gに10倍量の1,3−ブチレングリコール500gを加え、室温にて1日間抽出を行い、ろ過し、抽出物を得た(コガネバナ抽出物2)。
【0026】
〈抽出物製造例3〉植物抽出物(マルメロ抽出物)の製法
マルメロ(Cydonia oblonga Miller)の種子(クインスシード)30gに20倍量の精製水600を加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(マルメロ抽出物1)。別の製法として、マルメロ種子50gに10倍量の精製水500gを加え、40℃付近でかき混ぜながら8時間抽出し、ろ過後、フェノキシエタノール0.5%、1,3−ブチレングリコール1%になるよう加え、精製水を加えて調節し、抽出物を得た(マルメロ抽出物2)。
【0027】
〈抽出物製造例4〉植物抽出物(ニガヨモギ抽出物)の製法
ニガヨモギ(Artemisia absinthium Linne)の葉50gに20倍量の50w/w%エタノール1000gを加え、50℃にて3時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥し、粉末化し、抽出物を得た(ニガヨモギ抽出物1)。別の製法として、ニガヨモギの葉50gに10倍量の1,3−ブチレングリコール500gを加え、室温にて3時間抽出を行い、ろ過し、抽出物を得た(ニガヨモギ抽出物2)。
【0028】
(試験例1)DEPによる表皮細胞のIL−8過剰産生の抑制試験
試験例1として、大気汚染物質による表皮細胞の炎症性物質IL−8過剰産生の抑制試験を記載する。大気汚染物質のモデル物質としては、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が提供するDEP(ディーゼル排気微粒子):SRM1975を使用した。SRM1975は、多環芳香族炭化水素類(PAHs)が含有されており、数種類のPAHsに関して、NISTによって化合物の濃度が保証されている。なお、大気汚染物質に関しては、上記の自動車の排気ガス由来の物質でなくとも、火山噴火物・海塩・土壌由来、工場排気ガス・固形燃料使用時の煙・煙草の煙・野焼きの煙などから適宜選択して構わない。
試験試料は、製造例1〜4にて調製した抽出物(キハダ抽出物1、コガネバナ抽出物1、マルメロ抽出物1、ニガヨモギ抽出物1)を使用した。ヒト表皮細胞を5%ウシ胎児血清(以下FBSと略記)を含むDMEM培地にて調製し、96穴プレートに3.5×10個/穴ずつ播種し、37℃、5%炭酸ガス下、24時間培養した。24時間培養後、精製水に試験試料を溶解し、フィルター滅菌した溶液を添加した上記の培地にて、24時間同条件にて培養した。24時間培養後、試験試料を上記と同濃度で含有し、溶媒をDMSOに交換したSRM1975を含有する群(SRM1975(+))と含有しない群(SRM1975(−))に分けて添加し、更に24時間培養した。24培養後、培養上清を回収し、IL−8測定まで−80℃のディープフリーザーに保管した。上清回収後に、0.5%TritonX−100含有PBS(−)を添加し、細胞を溶解した後、BCA Protein Assay kit(Thermo Fisher Scientific)にてタンパク定量を実施した。培養上清中のIL−8の測定は、ELISAキット(R&D Systems)によって測定した。全ての条件でのIL−8量(pg)/Protein(mg)値を算出し、IL−8産生量として評価した。また、SRM1975ありのコントロールのIL−8量(pg)/Protein(mg)値を100%としたときの試験試料のIL−8産生率(%)も算出した。値を表1に記す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す通り、キハダ抽出物、コガネバナ抽出物、マルメロ抽出物、ニガヨモギ抽出物が、大気汚染物質によって過剰に産生が惹起される表皮細胞の炎症性因子IL−8産生を抑制することを確認した。
【0031】
(試験例2)皮膚外用剤の適用試験
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県内に在住する、30〜50歳の女性10名をパネルとし、表2記載の本発明の抽出物を含有する皮膚外用剤(実施例1)を配布し、毎日朝と夜の2回、24週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による炎症(肌荒れ症状の改善)や透明感(シミ症状の改善)、ハリ(シワ症状の改善)といった項目に関するアンケート結果を表3に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示す通り、植物抽出物を含む実施例1の皮膚外用剤は、長期間塗布することによって、大気汚染を含む外部環境の変化による肌荒れ症状やシミやシワを緩和することが確認された。
【0035】
本発明による大気汚染物質による皮膚症状改善のための皮膚外用剤への植物抽出物の配合例を下記に示す。なお、配合例は本発明を限定するものではない。
【0036】
(配合例1)クリーム
下記の成分(1)〜(10)、これとは別に下記成分(11)〜(15)及び(17)を75℃に加温溶解し、乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(16)を加え、クリームを調整した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 3.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)メチルポリシロキサン 0.5%
(4)ステアリルアルコール 0.5%
(5)セチルアルコール 0.5%
(6)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 12.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 5.0%
(8)モノステアリン酸ジグリセリル 1.5%
(9)モノステアリン酸デカグリセリル 3.0%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)キサンタンガム 0.1%
(12)コガネバナ抽出物2 0.1%
(13)サッカロミセス/加水分解チョロギ塊茎発酵液 1.0%
(14)1,3−ブチレングリコール 2.5%
(15)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(16)香料 0.1%
(17)精製水 残量
【0037】
(配合例2)化粧水
下記成分(7)〜(9)を混合溶解させてA液とし、これとは別に下記成分(1)〜(6)及び(10)を混合溶解させてB液とし、A液とB液を均一に混合し、化粧水を得た。
(成分) (重量%)
(1)グリセリン 5.0%
(2)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(3)マルメロ抽出物2 0.5%
(4)ザクロ花エキス 0.1%
(5)チャ花エキス 0.1%
(6)ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル 1.2%
(7)エチルアルコール 5.0%
(8)フェノキシエタノール 0.1%
(9)香料 0.1%
(10)精製水 残量
【0038】
(配合例3)乳液
下記成分(1)〜(10)、これとは別に下記成分(11)〜(14)及び(16)を75℃で加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(15)を加え、乳液を調製した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 1.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)ベヘニルアルコール 1.0%
(4)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0%
(5)テトラグリセリン縮合リシノレイン酸 0.1%
(6)モノオレイン酸プロピレングリコール 0.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 1.0%
(8)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 1.0%
(9)モノミリスチン酸デカグリセリル 0.5%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)キハダ抽出物2 0.1%
(12)タモギタケエキス 0.2%
(13)1,3−ブチレングリコール 3.0%
(14)パラオキシ安息香酸メチル 0.1%
(15)香料 0.1%
(16)精製水 残量
【0039】
(配合例4)クレンジングジェル
下記成分(1)〜(3)、これとは別に下記成分(4)〜(7)及び(9)を70℃に加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて均一になるまで攪拌する。攪拌しながら、50℃まで冷却し、成分(8)を加えてクレンジングジェルを調製した。
(成分) (重量%)
(1)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 20.0%
(2)流動パラフィン 59.7%
(3)パラオキシ安息香酸エステル 0.3%
(4)ニガヨモギ抽出物2 0.1%
(5)ホホバ葉エキス 0.1%
(6)濃グリセリン 5.0%
(7)ソルビトール 5.0%
(8)香料 0.1%
(9)精製水 残量
【0040】
(配合例5)パック剤
下記成分(1)〜(6)及び(11)を70℃に加熱溶解しA液とし、(8)〜(10)を混合してB液とする。B液をA液に混合した後、冷却し(7)を均一に分散してパックを調製した。
(成分) (重量%)
(1)ポリビニルアルコール 20.0%
(2)グリセリン 5.0%
(3)カオリン 6.0%
(4)マルメロ抽出物2 0.5%
(5)ベルゲニアリグラタ根エキス 0.1%
(6)フトモモ葉エキス 0.1%
(7)塩化ベンザルコニウム 20.0%
(8)エタノール 20.0%
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(10)香料 0.1%
(11)精製水 残量
【0041】
大気汚染物質による表皮細胞のIL−8産生亢進を抑制する作用を有するミカン科キハダ属キハダ、シソ科タツナミソウ属コガネバナ、バラ科マルメロ属マルメロ、キク科ヨモギ属ニガヨモギの抽出物は、大気汚染物質による皮膚の肌荒れ症状やシミやシワなどの皮膚の諸症状の予防、改善効果があることが判明した。