【解決手段】下記式(1)に示す末端構造を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、下記式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)とビスフェノールA由来のカーボネート構造単位(ii)からなるポリカーボネートコポリマー(B)を2〜100質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
前記式(1)におけるRが、n−オクチル基、イソ−オクチル基及びt−オクチル基からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリカーボネートコポリマー(B)中のカーボネート構造単位(i)とカーボネート構造単位(ii)の合計100mol%に対し、カーボネート構造単位(i)の割合が、10mol%超39mol%未満である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、リン系熱安定剤(C)及び/または酸化防止剤(D)を0.005〜0.5質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、数平均分子量が500〜5000のポリアルキレングリコール(E)を0.1〜4質量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
さらに、エポキシ化合物(F)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.0005〜0.2質量部含有する請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)が、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−3)で表される単位からなる共重合体である請求項10に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)が、テトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体である請求項11に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)が、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−1)で表される単位からなる共重合体である請求項10に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)が、テトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体である請求項13に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)が、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−2)で表される単位からなる共重合体である請求項10に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)が、テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体である請求項15に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記記式(1)に示す末端構造を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、上記式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)と上記式(3)で表されるカーボネート構造単位(ii)からなるポリカーボネートコポリマー(B)を2〜100質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分等につき、詳細に説明する。
【0017】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される末端構造を有するポリカーボネート樹脂である。
【化8】
(式(1)中、nは0もしくは1の整数を示し、Rは炭素数5〜14のアルキル基を示す。)
【0018】
なお、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートコポリマー(B)とは異なるポリカーボネート樹脂であり、ポリカーボネートコポリマー(B)以外のもので一般式(1)で表される末端構造を有するものであれば特に限定されず、種々のものが用いられる。
【0019】
ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできるが、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0020】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成化合物とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。この際、芳香族ジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成化合物に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしても良い。また芳香族ポリカーボネート樹脂は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)は1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0021】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0022】
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0023】
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0024】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0025】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0026】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0027】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
【0028】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0029】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0030】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、カーボネート形成化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0032】
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
【0033】
<界面重合法>
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じてジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
【0034】
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
【0035】
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0036】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0037】
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限はないが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0038】
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0039】
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、末端停止剤は、ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば特に限定されないが、ホスゲン吹込み工程に続いて添加するのが好ましい。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
【0040】
<溶融エステル交換法>
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
【0041】
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0043】
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0044】
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
【0045】
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0046】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物、リン含酸性化合物及びそれらの誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0047】
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
【0048】
本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)は、前記したように、下記一般式(1)で表される末端構造を有することを特徴とする。
【化9】
【0049】
式(1)中、nは0もしくは1の整数であり、Rは炭素数5〜14のアルキル基である。ポリカーボネート樹脂(A)が、上記式(1)の末端構造を有することにより、強度を維持しながら高度の流動性を可能とし、色相も良好である。このため、流動性向上のためにポリカーボネート樹脂の分子量を低くすることが通常行われるが、本発明では、材料設計の際に、分子量を下げることなく所望の分子量を採用しても高度の流動性を達成できるので、高い強度を維持したまま高度の流動性を可能とする。
【0050】
式(1)中、Rのアルキル基の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上であり、また、好ましくは12以下であり、10以下であることがより好ましい。Rのアルキル基は、直鎖のものでも分岐していてもよい。
中でも、Rは、n−オクチル基、イソ−オクチル基及びt−オクチル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、t−オクチル基がより好ましく、一般式(1)における末端構造がt−オクチルフェニル基(即ち、1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニル基)であることが特に好ましい。
【0051】
上記式(1)中、フェニル基に結合する−(O)
nR基の位置は、オルト位でもメタ位でもパラ位でも良いが、下記一般式(1’)に示すパラ位が望ましい。
【化10】
【0052】
上記式(1)または(1’)で表される基の具体例としては、p−ペンチルフェニル基、p−ヘキシルフェニル基、p−ヘプチルフェニル基、p−n−オクチルフェニル基、p−イソ−オクチルフェニル基、p−t−オクチルフェニル基、p−ドデシルフェニル基及びp−テトラデシルフェニル基、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール等のアルキルフェニル基、p−ヘキシルオキシフェニル基、p−n−オクチルオキシフェニル基、p−イソ−オクチルオキシフェニル基、p−t−オクチルオキシフェニル基、p−ドデシルオキシフェニル基等のアルコキシフェニル基を好ましく挙げることができる。
【0053】
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、重合により製造する際に、下記一般式(1a)で表される1価フェノールの末端停止剤を用いることにより製造することができる。
【化11】
(式中、nは0もしくは1の整数を示し、Rは炭素数5〜14のアルキル基を示す。)
【0054】
一般式(1a)で表される末端停止剤の具体例としては、p−ペンチルフェノール、p−ヘキシルフェノール、p−ヘプチルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよびp−テトラデシルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール等のアルキルフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−n−オクチルオキシフェノール、p−イソ−オクチルオキシフェノール、p−t−オクチルオキシフェノール、p−ドデシルオキシフェノール等のアルコキシフェノールを好ましく挙げることができ、これらのいずれか若しくは複数を末端停止剤として使用することができる。式(1a)中、フェニル基に結合する−(O)
nR基の位置は、オルト位でもメタ位でもパラ位でも良いが、パラ位が望ましい。
中でも、p−t−オクチルフェノール、p−n−オクチルオキシフェノールのいずれかもしくは複数を末端停止剤として使用することが、流動性、成形体の強度および耐熱性に加え、入手のし易さの観点からより好ましい。
【0055】
末端停止剤は、材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で2種類以上併用してもよく、また、一般式(1)で示される構造以外の構造のものと併用することも可能である。
併用してもよい他の末端停止剤としては、例えば、フェノール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,4−キシレノール、p−t−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−プロピルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、p−トリフルオロメチルフェノール、オイゲノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノール、ベヘニルフェノール等のアルキルフェノール及びp−ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アミルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル等のp−ヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが挙げられる。
他の末端停止剤は2種類以上併用して使用することも可能である。特に一般式(1a)の末端停止剤と併用してもよい末端停止剤としては、純度やコストの観点から、p−t−ブチルフェノールが挙げられる。
他の末端停止剤を使用する場合は、ポリカーボネート樹脂(A)を含むポリカーボネート樹脂全体の全末端停止剤中の20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。
【0056】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、粘度平均分子量(Mv)で、10000〜18000であることが好ましく、より好ましくは10500以上、さらに好ましくは11000以上、特に好ましくは11500以上、最も好ましくは12000以上であり、より好ましくは17500以下、さらに好ましくは17000、特に好ましくは16500である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形加工を容易に行えるようになる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0057】
本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、
η=1.23×10
−4Mv
0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[η
sp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0058】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を大きく損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂(A)以外の、他の末端構造を有するポリカーボネート樹脂と組み合わせて含有してもよい。このようなポリカーボネート樹脂としては、市販品としても代表的なp−t−ブチルフェニル基末端構造を有するポリカーボネート樹脂等が挙げられる。他の末端構造を有するポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下、最も好ましくは10質量部以下である。
【0059】
また、本発明においては、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂と組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0060】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0061】
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0062】
[ポリカーボネートコポリマー(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、下記式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)と下記式(3)で表されるカーボネート構造単位(ii)からなるポリカーボネートコポリマー(B)を含有する。このようなポリカーボネートコポリマー(B)をポリカーボネート樹脂(A)に配合することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性、成形性と衝撃強度や折り曲げ強度、繰り返し疲労強度といった強度のバランスが顕著に良好なものになり、成形した際にも割れにくく、強度の高い成形品が得られる。
【0064】
式(2)中、R
1は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基を表す。このような炭素数8以上のアルキル基またはアルケニル基などの脂肪族炭化水素鎖含有置換基を持つことにより、ポリカーボネート樹脂(A)に配合してポリカーボネート樹脂組成物とした場合、溶融時におけるポリカーボネート樹脂の高分子鎖の絡まりを適度に阻害し、高分子鎖同士の摩擦を低減することにより高い流動性を発現することができる。このような観点より、上述の式(2)のR
1のアルキル基またはアルケニル基の炭素数は9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、11以上であることが特に好ましい。一方、上述の式(2)のカーボネート構造単位のR
1のアルキル基またはアルケニル基の炭素数は、24以下であるが、長鎖脂肪鎖が長すぎる場合は、耐熱性、機械物性が著しく低下するほか、ポリカーボネート樹脂(A)に対する相溶性が低下し、機械物性や透明性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。このような観点より、上述のR
1は炭素数22以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることが特に好ましい。
【0065】
上述の炭素数8〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状又は分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられるが、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基が好ましく、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、がより好ましく、n−ドデシル基が特に好ましい。このようなアルキル基を持つことで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性と耐衝撃性をより効果的に高めることができる。
【0066】
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。
なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
【0067】
アルケニル基の具体例としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、4,8,12−トリメチルトリデシル基が挙げられる。
【0068】
式(2)のカーボネート構造単位(i)中のR
2及びR
3は、炭素数1〜15の一価炭化水素基を表す。炭素数1〜15の一価炭化水素基を有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性や強度、硬度、耐薬品性等を向上させることができる。炭素数1〜15の一価炭化水素基としては、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数2〜15のアルケニル基等が好ましく挙げられるが、これらは直鎖状であっても分岐状であっても、環状であっても良い。このような一価炭素水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられるが、なかでもメチル基が好ましい。
【0069】
また、カーボネート構造単位(2)中のa及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、なかでも0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0070】
このようなカーボネート構造単位(i)の具体例としては、下記式(4)〜(13)で表される構造単位が挙げられるが、なかでも式(4)〜(11)の構造単位がより好ましく、式(5)〜(8)の構造単位がさらに好ましく、式(5)または(7)の構造単位が特に好ましく、式(7)の構造単位が最も好ましい。
【0076】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネートコポリマー(B)の上述の式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)は、具体的には例えば下記式(14)〜(16)で表される構造単位が挙げられる。なかでも熱安定性が向上する傾向にあるため式(14)で表される構造単位がより好ましいが、式(15)〜(16)の異性体構造を任意の割合で含んでいても良い。
【0078】
このような観点より、より好ましいカーボネート構造(i)の具体例としては、下記式(17)〜(26)で表される構造単位であることが好ましく、なかでも式(17)〜(24)の構造単位がより好ましく、式(18)〜(21)の構造単位がさらに好ましく、式(18)、(20)の構造単位が特に好ましく、式(20)の構造単位が最も好ましい。
【0084】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物のポリカーボネートコポリマー(B)中の上記式(3)で表されるカーボネート構造単位(ii)は、好ましくは下記式(27)で表されるビスフェノールA由来の構造単位であるが、式(28)で表される異性体構造単位を任意の割合で含んでいても良い。
【0086】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネートコポリマー(B)において、ポリカーボネートコポリマー(B)中の上記式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)と上記式(3)で表されるカーボネート構造単位(ii)の合計100mol%に対し、式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)の割合は、好ましくは10mol%を超え、39mol%未満である。上記式(2)で表されるカーボネート構造単位の割合は、12mol%以上がより好ましく、14mol%以上がさらに好ましく、中でも16mol%以上が好ましく、18mol%以上が特に好ましく、22mol%以上が最も好ましい。また38.5mol%以下がより好ましく、38mol%以下がさらに好ましく、中でも37.5mol%以下が好ましく、37mol%以下が特に好ましく、36.5mol%以下が最も好ましい。
【0087】
<ポリカーボネートコポリマー(B)の分子量>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネートコポリマー(B)の分子量は、特に制限はないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常5000〜50000である。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械物性が低下しやすく、またポリカーボネートコポリマー(B)がブリードしやすくなる傾向にある。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、流動性が不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、ポリカーボネートコポリマー(B)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは9000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは11000以上であり、また好ましくは30000以下、より好ましくは25000以下、さらに好ましくは20000以下であり、特に好ましくは18000以下である。
ポリカーボネートコポリマー(B)の粘度平均分子量(Mv)の定義及び測定法は、上述のポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)のものと同様である。
【0088】
<ポリカーボネートコポリマー(B)の末端水酸基量>
ポリカーボネートコポリマー(B)の末端水酸基量は、特に制限はないが、通常10〜2000ppmである。また、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下である。末端水酸基量が、前記範囲の下限値以上であれば、本発明のポリカーボネートコポリマー(B)の色相、生産性をより向上させることができ、また前記範囲の上限値以下であれば、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
【0089】
なお、末端水酸基濃度の単位は、上述のポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基の測定法、定義と同様である。
【0090】
<ポリカーボネートコポリマー(B)の製造方法>
ポリカーボネートコポリマー(B)は、上述のカーボネート構造を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。カーボネート構造単位(i)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物については、例えば下記式(29)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【化39】
【0091】
またカーボネート構造単位(i)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、下記式(30)〜(32)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。なかでも熱安定性が向上する傾向にあるため式(30)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物がより好ましいが、式(31)〜(32)の芳香族ジヒドロキシ化合物を任意の割合で含んでいても良い。
【0093】
なお、式(29)〜(32)中、R
1、R
2、R
3、a及びbの定義及び好ましい例は、上述の式(2)で表されるカーボネート構造単位(i)の記載と同じである。このような観点より、より好ましいカーボネート構造単位(i)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
【0094】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)オクタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ノナン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)デカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ノナタデカン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
【0095】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)イコサン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)イコサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)トリコサン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)オクタン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ノナン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)デカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ウンデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)トリデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
【0096】
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘキサデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)オクタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ノナタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)イコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘンイコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)トリコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、
【0097】
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン等である。
【0098】
ポリカーボネートコポリマー(B)のカーボネート構造単位(i)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、なかでも熱安定性と色相、衝撃強度の観点より、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナデカンがより好ましく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカンであることがさらに好ましく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンが最も好ましい。
【0099】
またカーボネート構造単位(ii)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられるが、なかでも熱安定性と色相、衝撃強度の観点より、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスフェノールA)がより好ましい。
【0100】
また、カーボネート形成性化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0101】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(33)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0102】
【化43】
式(33)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、R
4及びR
5が、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでも芳香族ジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりR
4及びR
5は、共にアリール基であることが好ましく、下記式(34)で表されるジアリールカーボネートであることがより好ましい。
【0103】
【化44】
式(34)中、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。
【0104】
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0105】
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0106】
ポリカーボネートコポリマー(B)を製造する方法としては、上述のポリカーボネート樹脂(A)の製造方法として例示した方法と同様である。
【0107】
<ポリカーボネートコポリマー(B)の含有量>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ポリカーボネートコポリマー(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、2〜100質量部である。2質量部未満では、流動性と強度のバランスが不足し、100質量部を超えると耐熱性が低下する。ポリカーボネートコポリマー(B)の含有量は、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、中でも好ましくは6質量部以上、特には7質量部以上が好ましく、また、好ましくは8質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、中でも好ましくは60質量部以下、特には50質量部以下が好ましい。
【0108】
[リン系安定剤(C)及び/または酸化防止剤(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系安定剤(C)及び/または酸化防止剤(D)を含有することが好ましい。このようなリン系安定剤(C)及び/または酸化防止剤(D)を含有させることで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相や熱安定性を向上させることができる。
【0109】
<リン系熱安定剤(C)>
リン系熱安定剤(C)としては、公知のものであれば特に制限はなく、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
本発明において、好ましいリン系熱安定剤としては、以下の式(35)で表される亜リン酸エステルが挙げられる。
【化45】
式(35)中、R
8は、アリール基またはアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0110】
R
8がアリール基である場合、R
8は以下の式(36)及び式(37)、ならびに式(38)で表されるアリール基が好ましい。
【0112】
上記式(36)〜(37)中、R
9、R
10は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【化48】
【0113】
このような亜リン酸エステルとしては、例えば、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が好ましく挙げられ、具体的にはADEKA社製「アデカスタブPEP−24G」、「アデカスタブPEP−36」、ドーバーケミカル社製「ドーバホスS−9228」として市販されている。
【0114】
上記式(35)中、R
8のアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。かかる亜リン酸エステルの具体例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルペンタエリスリトールジホスファイト等が好ましく挙げられるが、なかでもジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0115】
また、本発明において、他の好ましいリン系熱安定剤は、以下の一般式(39)で表される亜リン酸エステルである。
【化49】
【0116】
上記式(39)中、R
11〜R
15は、水素原子、アリール基または炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(39)中、R
11〜R
15におけるアリール基またはアルキル基としては、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、特に、R
11、R
13がtert−ブチル基であり、R
12、R
14、R
15が水素原子である、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、これは、ADEKA社より「アデカスタブ2112」の商品名で市販されている。
【0117】
<酸化防止剤(D)>
酸化防止剤(D)としては、従来公知の任意のものを使用できるが、特にフェノール化合物が好ましく、フェノール系酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0118】
その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0119】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
【0120】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、リン系熱安定剤(C)は1種が含有されていてもよく、2種類以上を混合して含有されていてもよい。また、酸化防止剤(D)は、1種が含有されていてもよく、2種類以上を混合して含有されていてもよい。さらに、リン系熱安定剤(C)と酸化防止剤(D)は、併用してもよい。
リン系熱安定剤(C)及び/または酸化防止剤(D)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.005〜0.5質量部である。含有量が前記下限値未満の場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相、熱安定性改良効果が不十分となりやすく、一方前記上限値を超える場合は、効果が頭打ちになったり、成形時にガスが発生しやすく、金型汚染の原因となったりしやすいため好ましくない。このような観点より、リン系熱安定剤(C)及び/または酸化防止剤(D)の含有量は、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.02質量部以上、特に好ましくは0.05質量部以上である。また、より好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。
【0121】
[ポリアルキレングリコール(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、数平均分子量が500〜5000のポリアルキレングリコール(E)を含有することが好ましく、その好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜4質量部であり、より好ましくは0.2〜3質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部である。
【0122】
ポリアルキレングリコール(E)としては、各種のポリアルキレングリコールが使用でき、下記一般式(I)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と下記一般式(II−1)〜(II−4)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(E3)が好ましいものとして挙げられる。
【0123】
【化50】
(式(I)中、nは3〜6の整数を示す。)
【0125】
(式(II−1)〜(II−4)中、R
1〜R
10は各々独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、それぞれの式(II−1)〜(II−4)においてR
1〜R
10の少なくとも1つは炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0126】
上記一般式(I)で示される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)としては、それをグリコールとして記載すると、nが3であるトリメチレングリコール、nが4であるテトラメチレングリコール、nが5のペンタメチレングリコール、nが6のヘキサメチレングリコールが挙げられ、好ましくはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0127】
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。また、最近ではバイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することが行われている。
【0128】
上記一般式(II−1)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)エチレングリコール、(2−エチル)エチレングリコール、(2,2−ジメチル)エチレングリコールなどが挙げられ、好ましくは(2−メチル)エチレングリコールである。
【0129】
上記一般式(II−2)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2−メチル)トリメチレングリコール、(3−メチル)トリメチレングリコール、(2−エチル)トリメチレングリコール、(3−エチル)トリエチレングリコール、(2,2−ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2−メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2−ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3−ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3−ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられる。
【0130】
上記一般式(II−3)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)テトラメチレングリコール、(4−メチル)テトラメチレングリコール、(3−エチル)テトラメチレングリコール、(4−エチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3−ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4−ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、(3−メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0131】
上記一般式(II−4)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3−メチル)ペンタメチレングリコール、(4−メチル)ペンタメチレングリコール、(5−メチル)ペンタメチレングリコール、(3−エチル)ペンタメチレングリコール、(4−エチル)ペンタメチレングリコール、(5−エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4−ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5−ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられる。
【0132】
以上、分岐アルキレンエーテル単位(P2)を構成する一般式(II−1)〜(II−4)で表される単位を便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0133】
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)として好ましいものを挙げると、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−3)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にテトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。また、テトラメチレンエーテル単位と前記一般式(II−1)で表される単位からなる共重合体も好ましく、特にテトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
【0134】
直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体を製造する方法は公知であり、上記したようなグリコール、アルキレンオキシドあるいはそのポリエーテル形成性誘導体を、通常、酸触媒を用いて重縮合させることによって製造することができる。
【0135】
ポリアルキレングリコール共重合体は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0136】
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)の前記一般式(I)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と前記一般式(II−1)〜(II−4)で表される分岐アルキレンエーテル単位(P2)の共重合比率は、(P1)/(P2)のモル比で、好ましくは95/5〜5/95であり、より好ましくは93/7〜40/60であり、更に好ましくは90/10〜65/35であり、直鎖アルキレンエーテル単位(P1)がリッチであることがより好ましい。
なお、モル分率は、
1H−NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
【0137】
また、ポリアルキレングリコール共重合体(E3)において、その末端基はヒドロキシル基であることが好ましい。加えて、その片末端あるいは両末端がアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、脂肪酸エステル、アリールエステルなどで封鎖されていても、その性能発現に影響はなく、エーテル化物又はエステル化物が同様に使用できる。
【0138】
アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれも使用でき、炭素数1〜22のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等であり、ポリアルキレングリコールのメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0139】
アリールエーテルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0140】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれも使用でき、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜22の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸や、1価の不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸およびデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸である。
【0141】
アリールエステルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6〜22、より好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。末端封止する基は、アラルキル基であっても芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と良好な相溶性を示すことから、アリール基と同様の作用を発現できる。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜23、より好ましくは炭素数7〜13、さらに好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0142】
ポリアルキレングリコール共重合体(E3)としては、なかでもテトラメチレンエーテル単位と2−メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と3−メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と2,2−ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体が特に好ましい。このようなポリアルキレングリコール共重合体としては、具体的には例えば、日油社製商品名(以下同様)「ポリセリンDCB」、保土谷化学社製「PTG−L」、旭化成せんい社製「PTXG」などが挙げられる。
【0143】
ポリアルキレングリコールとしては、下記一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール(E1)又は下記一般式(III−2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール(E2)も好ましいものとして挙げられる。なお、下記一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール又は下記一般式(III−2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコールは、他の共重合成分との共重合体であってもよいが、単独重合体が好ましい。
【0144】
【化52】
(式(III−1)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜23の脂肪族アシル基、又は炭素数1〜23のアルキル基を示し、nは10〜400の整数を示す。)
【0145】
【化53】
(式(III−2)中、X及びYは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数2〜23の脂肪族アシル基又は炭素数1〜22のアルキル基を示し、mは2〜6の整数、pは6〜100の整数を示す。)
【0146】
上記の一般式(III−1)において、整数(重合度)nは、10〜400であるが、好ましくは15〜200、更に好ましくは20〜100である。重合度nが10未満の場合、成形時のガス発生量が多くなり、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する可能性がある。一方、重合度nが400を超える場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。
【0147】
分岐型ポリアルキレングリコールとしては、一般式(III−1)中、X,Yが水素原子で、Rがメチル基であるポリプロピレングリコール(ポリ(2−メチル)エチレングリコール)やエチル基であるポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)が好ましく、特に好ましくはポリブチレングリコール(ポリ(2−エチル)エチレングリコール)である。
【0148】
上記の一般式(III−2)において、p(重合度)は、6〜100の整数であるが、好ましくは8〜90、より好ましくは10〜80である。重合度pが6未満の場合、成形時にガスが発生するので好ましくない。一方、重合度pが100を超える場合、相溶性が低下するので好ましくない。
【0149】
直鎖型ポリアルキレングリコールとしては、一般式(III−2)中のX及びYが水素原子で、mが2であるポリエチレングリコール、mが3であるポリトリメチレングリコール、mが4であるポリテトラメチレングリコール、mが5であるポリペンタメチレングリコール、mが6であるポリヘキサメチレングリコールが好ましく挙げられ、より好ましくはポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールあるいはそのエステル化物又はエーテル化物である。
【0150】
また、ポリアルキレングリコールとして、その片末端あるいは両末端が脂肪酸またはアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、脂肪酸エステル化物またはエーテル化物を同様に使用することができ、従って、一般式(III−1),(III−2)中のX及び/又はYは炭素数1〜23の脂肪族アシル基又はアルキル基であってもよい。
【0151】
脂肪酸エステル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用でき、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。また、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1〜23の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸や、1価の不飽和脂肪酸、具体的には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、具体的には、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
これらの脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0152】
分岐型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、一般式(III−1)において、Rがメチル基、XおよびYが炭素数18の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールステアレート、Rがメチル基、XおよびYが炭素数22の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールベヘネートが挙げられる。直鎖型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリアルキレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコールジステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリアルキレングリコールベヘネート等が挙げられる。
【0153】
ポリアルキレングリコールのアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1〜23のアルキル基が挙げられ、このようなポリアルキレングリコールとしては、ポリアルキレングリコールのアルキルメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0154】
一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール(E1)としては、具体的には例えば、日油社製商品名「ユニオールD−1000」、「ユニオールPB−1000」などが挙げられる。
【0155】
前記ポリアルキレングリコール共重合体(E3)、前記一般式(III−1)で表される分岐型ポリアルキレングリコール(E1)、前記一般式(III−2)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール(E2)等のポリアルキレングリコールの数平均分子量としては、前記したように500〜5000であることが好ましく、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下、特に好ましくは2000以下、とりわけ好ましくは1000未満であり、800以下であることが最も好ましい。上記範囲の上限を超えると、相溶性が低下するので好ましくなく、また、上記範囲の下限を下回ると成形時にガスが発生するので好ましくない。
ここでいうポリアルキレングリコールの数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0156】
ポリアルキレングリコール(E)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0157】
[エポキシ化合物(F)]
本発明の樹脂組成物はエポキシ化合物(F)を含有することも好ましい。エポキシ化合物(F)をポリアルキレングリコール(E)と併せて含有することで耐熱変色性をより向上させることができる。
【0158】
エポキシ化合物(F)としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6’−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル−3−t−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。
エポキシ化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0159】
これらのうち、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられ、特に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましい。
【0160】
エポキシ化合物(F)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005〜0.2質量部であり、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。エポキシ化合物(F)の含有量が、0.0005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、0.2質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化しやすく、色相や湿熱安定性も低下しやすい。
【0161】
[添加剤等]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は一種または二種以上を配合してもよい。
なお、ポリカーボネート樹脂以外のその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂成分(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0162】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネートコポリマー(B)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0163】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して各種成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
【0164】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性と強度の両者をより高いレベルでバランス良く達成したポリカーボネート樹脂材料であるので、射出成形法により、各種成形品、特には光学部品、中でも薄肉の光学部品を成形するのに好適に用いられる。射出成形の際の樹脂温度は、特に薄肉の成形品の場合には、一般にポリカーボネート樹脂の射出成形に適用される温度である260〜300℃よりも高い樹脂温度にて成形することが好ましく、305〜380℃の樹脂温度が好ましい。樹脂温度は310℃以上であるのがより好ましく、315℃以上がさらに好ましく、320℃以上が特に好ましく、370℃以下がより好ましい。従来のポリカーボネート樹脂組成物を用いた場合には、薄肉成形品を成形するために成形時の樹脂温度を高めると、成形品の黄変が生じやすくなるという問題もあったが、本発明の樹脂組成物を使用することで、上記の温度範囲であっても、良好な色相を有する成形品、特に薄肉の光学部品を製造することが可能となる。また、薄肉成形品を成形するためにポリカーボネート樹脂の分子量を下げることも従来から行われているが、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は流動性が良好なので、分子量を下げずとも薄肉成形が可能なので、より強度の高い成形品とすることが可能となる。
なお、樹脂温度とは、直接測定することが困難な場合はバレル設定温度として把握される。
【0165】
ここで、薄肉成形品とは、肉厚が通常1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下の板状部を有する成形品をいう。ここで、板状部は、平板であっても曲板状になっていてもよく、平坦な表面であっても、表面に凹凸等を有してもよく、また断面は傾斜面を有していたり、楔型断面等であってもよい。
【0166】
光学部品としては、LED、有機EL、白熱電球、蛍光ランプ、陰極管等の光源を直接または間接に利用する機器・器具の部品が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いた光学部品は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
【実施例】
【0167】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0168】
以下の実施例及び比較例で使用した原料および評価方法は次の通りである。
なお、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定方法は、前述したとおりである。
【0169】
ポリカーボネートコポリマー(B)は、以下の製造例によって製造した。
<ポリカーボネートコポリマー(B)の製造例>
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン40質量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)60質量部、ジフェニルカーボネート107質量部、及び触媒として炭酸セシウム2質量%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.5μmolとなるように添加して原料混合物を調整し、該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した第1反応器に投入し、窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、第1反応器の内温を220℃に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
【0170】
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った後に、窒素で復圧の上、第1反応器内のオリゴマーを内温240℃の攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備した第2反応器に移送後、該オリゴマーを38rpmで攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は255℃とした。第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了し、反応器内を窒素で復圧後、圧力をかけ漕底から抜出し、水冷漕で冷却し、芳香族ポリカーボネートコポリマーを得た。その後、得られた芳香族ポリカーボネートコポリマーにパラトルエンスルホン酸ブチルを5ppm配合し、φ30mmの二軸押出機で240℃で溶融混練し、ストランド状にしたものをペレタイザーでカッティングし、ペレット状の芳香族ポリカーボネートコポリマーを得た。
得られたポリカーボネートコポリマー(B)は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン由来の構造単位が30モル%、ビスフェノールA由来の構造単位が70モル%であり、粘度平均分子量(Mv)は15000であった。
【0171】
【表1】
【0172】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記表1に記載した各成分を、以下の表2に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0173】
[単位時間あたりの流出量:Q値(単位:×10
−2cm
3/sec)]
上記の方法で得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JIS P8115に準拠し、高架式フローテスターを用いて、240℃の温度、荷重160kgf/cm
2の条件下で組成物の単位時間あたりの流出量(Q値、単位:×10
−2cm
3/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
【0174】
[色相(YI)の測定]
得られたペレットを120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC100SX−2A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形した。
この長光路成形品について、300mmの光路長でYI(黄変度)の測定を行った。測定には長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA 1」、C光源、2°視野)を使用した。
【0175】
[割れ試験(最大変位点の測定)]
得られたペレットを、120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(ソディック社製「HSP100A」)により、樹脂温度360℃、金型温度40℃にて、
図2に示す61mm×112mm×厚み0.45mmで、裏面側に凹凸の平行パターン2を有する成形品1を成形した。成形品1の裏面側に設けた平行凹凸パターン2は、
図3に示すように、凹部から凸部の距離は0.014mmであり、凸部の底辺長さは0.05mm、平行凹凸パターン2の凹部及び凸部の角度は120°である。
得られた成形品1を、
図4に示す曲げ試験装置を用いて、以下の条件で割れ試験を行った。すなわち、成形品1を、裏面2を下にして、奥行き1200mmの平行に設けた支持台3、3’上に載置し、支持台3、3’間のスパンdを3mmにして、治具(図示せず)を用いて固定した。成形品1上には、支持台3、3’の中心線の上方に、厚さ3mm、先端角度が30°、先端部はR0.14mmの丸みを付けたナイフ状エッジ4が設置され、エッジ4を成形品1上から、スパンdの中心線下方向に、10mm/minの速度で押し下げて、成形品1が割れるまでの変位を求め、最大変位点(単位:mm)とした。
以上の評価結果を以下の表2に示す。
【0176】
【表2】
【0177】
図1は、上記実施例と比較例のQ値(流動性)と最大変位点(強度)をの関係を示すグラフであり、◆は実施例、△が比較例である。
図1から実施例はいずれも流動性と強度の両者のバランスが非常に優れているが、比較例はそのバランスが劣ることが分かる。