【実施例】
【0037】
以下の成分を
図4に示す配合で混合し、反応・発泡させて各比較例及び各実施例のポリウレタンフォームを作製した。各成分の添加量の単位は重量部である。
・ポリオール;ポリエーテルポリオール、分子量:3000、官能基数3、水酸基価56.1mgKOH/mg、品番:GP−3000、三洋化成工業社製
・発泡剤;水
・アミン触媒;品番:33LV、エアプロダクツ社製
・整泡剤;シリコーン系整泡剤、品番:B8110、ゴールドシュミット社製
・金属触媒;オクチル酸第一錫、品番:MRH110、城北化学工業社製
・イソシアネート;2,4−TDI/2,6−TDI=80/20、品番:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業社製
・二水石膏; 比重2.32、平均粒子径40μmの二水石膏
・炭酸水素ナトリウム
・クエン酸
・リンゴ酸
【0038】
各比較例及び各実施例の最高発熱温度を以下のように測定した。予め蓋のない38cm×38cm×24cmの木箱を用意し、この木箱の中央に熱電対がくるようにセットした。そして、ポリオール配合成分とイソシアネート成分の2液を別々に用意し、上記2液をプロペラミキサーで混合撹拌後、反応混合液を上記木箱に注型して、ポリウレタンフォームを常温・大気圧下で自然発泡させた。
【0039】
また、各比較例及び各実施例のポリウレタンフォームの製造時の反応性を判断するため、クリームタイムとライズタイムを目視判定で測定した。クリームタイムは、ポリウレタンフォーム原料が、混合・注型時の混合反応液の状態から固化して樹脂状態に変色するまでの時間である。一方、ライズタイムは、混合・注型時から発泡体が膨張し、最大発泡高さになるまでの時間である。クリームタイムは、短い場合に初期の反応が急激であることを示し、長い場合に初期の反応が緩やかであることを示す。一方、ライズタイムは、最大発泡高さになるまでの時間であるため、ライズタイムからクリームタイムを減算した値が小の場合、クリームタイム以降の反応が急激であることを示し、逆に、減算した後の値が大の場合、クリームタイム以降の反応が緩やかであることを示す。
【0040】
各比較例及び各実施例のポリウレタンフォームについて、密度(JIS K7220)と通気性(JIS K6400−7)を測定した。
また、各比較例及び各実施例のポリウレタンフォームについて、マイクロスコープによりポリウレタンフォームの表面を観察し、ダブルセル領域の有無を判断した。ダブルセル領域が存在しない場合は「×」、存在する場合はダブルセル領域の存在量に応じて、「△」、「〇」、「◎」の三段階で表した。「△」は5cm×5cmの表面に1個以上、10個未満の場合、「〇」は5cm×5cmの表面に、10個以上、20個未満の場合、「◎」は5cm×5cmの表面に、20個以上の場合を示す。
【0041】
比較例1は、ポリオール100重量部、発泡剤として水10重量部、アミン触媒0.5重量部、整泡剤1.5重量部、金属触媒0.15重量部、イソシアネート170重量部、イソシアネートインデックス160、二水石膏20重量部の例であり、炭酸水素ナトリウムと有機固体酸としてのクエン酸及びリンゴ酸の何れも添加しない例である。比較例1は、最高発熱温度178℃、密度11.2kg/m
3、通気性1.37cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「×」であった。
【0042】
比較例2は、比較例1において、水5重量部、金属触媒0.35重量部、イソシアネート93重量部とし、二水石膏に代えて炭酸水素ナトリウムを5重量部とリンゴ酸を0.5重量部配合した以外は、比較例1と同様である。比較例2は、最高発熱温度139℃、密度27.5kg/m
3、通気性0.46cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「×」であり、比較例1と比べ、最高発熱温度が低く、密度が大である。また、発泡剤としての水の配合量が少ないため、ダブルセル領域が得られない。
【0043】
比較例3は、比較例2のクエン酸を15重量部とした以外は、比較例2と同様である。比較例3は、最高発熱温度136℃、密度26.4kg/m
3、通気性0.55cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「×」であり、比較例2と同様に、最高発熱温度が低く、密度が大である。また、発泡剤としての水の配合量が少ないため、ダブルセル領域が得られない。
【0044】
比較例4は、比較例2のクエン酸を30重量部とした以外は、比較例2と同様である。比較例4は、最高発熱温度126℃、密度19.5kg/m
3、通気性0.44cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「×」であり、比較例2と同様に、最高発熱温度が低く、密度が大である。また、発泡剤としての水の配合量が少ないため、ダブルセル領域が得られない。
【0045】
実施例1は、ポリオール100重量部、発泡剤として水10重量部、アミン触媒0.5重量部、整泡剤1.5重量部、金属触媒0.15重量部、イソシアネート170重量部、イソシアネートインデックス160、炭酸水素ナトリウム20重量部の例であり、有機固体酸としてのクエン酸及びリンゴ酸の何れも配合しない例である。実施例1は、最高発熱温度183℃、密度14.8kg/m
3、通気性1.85cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、最高発熱温度が極端に高いものではないため、得られたポリウレタンフォームの品質が良好であり、さらに、密度が小さく、軽量である。
【0046】
実施例2は、炭酸水素ナトリウムを15重量部に減らし、リンゴ酸を0.5重量部配合した以外は、実施例1と同様である。実施例2は、最高発熱温度165℃、密度10.8kg/m
3、通気性1.07cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「◎」であった。実施例2は、炭酸水素ナトリウムを15重量部とリンゴ酸0.5重量部の併用であるため、実施例1と比べて最高発熱温度が低く、ダブルセル領域が「◎」であった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0047】
実施例3は、イソシアネートを149重量部、イソシアネートインデックスを140とした以外は、実施例2と同様である。実施例3は、最高発熱温度160℃、密度11.6kg/m
3、通気性0.81cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例3は、イソシアネートインデックスが実施例2の160から140に下がったことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0048】
実施例4は、イソシアネートを128重量部、イソシアネートインデックスを120とした以外は、実施例2と同様である。実施例4は、最高発熱温度151℃、密度12.8kg/m
3、通気性1.25cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「△」であった。実施例3は、イソシアネートインデックスが実施例2の160から120に下がったことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「△」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0049】
実施例5は、リンゴ酸に代えてクエン酸0.5重量部を配合した以外は、実施例2と同様である。実施例5は、最高発熱温度162℃、密度13.6kg/m
3、通気性0.75cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例5は、実施例2のリンゴ酸をクエン酸に代えたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0050】
実施例6は、クエン酸を0.25重量部とリンゴ酸0.25重量部を併用した以外は、実施例2と同様である。実施例6は、最高発熱温度154℃、密度18.9kg/m
3、通気性4.45cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例6は、実施例2のリンゴ酸0.5重量部のうち0.25重量部をクエン酸に代えたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、他の実施例と比べると密度が若干高くなった。
【0051】
実施例7は、イソシアネートを106重量部、イソシアネートインデックスを100とした以外は、実施例2と同様である。実施例7は、最高発熱温度132℃、密度15.8kg/m
3、通気性0.2cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「△」であった。実施例7は、イソシアネートインデックスを100に下げたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「△」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0052】
実施例8は、イソシアネートを191重量部、イソシアネートインデックスを180とした以外は、実施例2と同様である。実施例8は、最高発熱温度166℃、密度12.9kg/m
3、通気性2.01cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例8は、イソシアネートインデックスを180に上げたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0053】
実施例9は、イソシアネートを212重量部、イソシアネートインデックスを200とした以外は、実施例2と同様である。実施例9は、最高発熱温度167℃、密度13.1kg/m
3、通気性5.98cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例9は、イソシアネートインデックスを200に上げたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0054】
実施例10は、炭酸水素ナトリウムを30重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例10は、最高発熱温度134℃、密度12.7kg/m
3、通気性0.97cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「◎」であった。実施例10は、炭酸水素ナトリウムを実施例2の15重量部から30重量部に増やしたが、ダブルセル領域は実施例2と同様に「◎」であった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0055】
実施例11は、水を15重量部、イソシアネートを247重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例11は、最高発熱温度185℃、密度14.8kg/m
3、通気性12.3cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例11は、水を実施例2の10重量部から15重量部に増やしたことにより、発熱温度が実施例2よりも高くなり、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0056】
実施例12は、炭酸水素ナトリウムを30重量部とした以外は、実施例11と同様である。実施例12は、最高発熱温度145℃、密度11.9kg/m
3、通気性13.9cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例12は、炭酸水素ナトリウムを30重量部に増やしたことにより、発熱温度が実施例11よりも低くなったが、ダブルセル領域は実施例11と同様に「〇」であった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0057】
実施例13は、リンゴ酸を0.3重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例13は、最高発熱温度182℃、密度15.0kg/m
3、通気性3.28cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例13は、リンゴ酸を実施例2の0.5重量部から0.3重量部に減らしたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、最高発熱温度が極端に高いものではないため、得られたポリウレタンフォームの品質が良好であり、さらに、密度が小さく、軽量である。
【0058】
実施例14は、リンゴ酸を0.7重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例14は、最高発熱温度157℃、密度15.0kg/m
3、通気性2.05cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「〇」であった。実施例14は、リンゴ酸を実施例2の0.5重量部から0.7重量部に増やしたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「〇」になった。ダブルセル領域を有するため、吸音性が良好になる。また、密度が小さく、軽量である。
【0059】
実施例15は、炭酸水素ナトリウムを5重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例15は、最高発熱温度186℃、密度13.8kg/m
3、通気性2.85cc/cm
2/sec、ダブルセル領域「△」であった。実施例15は、炭酸水素ナトリウムを実施例2の15重量部から5重量部に減らしたことにより、ダブルセル領域が実施例2の「◎」から「△」になった。また、最高発熱温度は実施例2よりも高くなったが、極端に高いものではないため、得られたポリウレタンフォームの品質が良好であり、さらに、密度が小さく、軽量である。
【0060】
ダブルセル領域を有する実施例2と、比較例A及び比較例Bについて、周波数500−2000Hzと、2500−10000Hzとで7点平均吸音率を測定した。比較例Aは、不織布製吸音断熱材(3M社製、シンサレートTC、目付:300g/m
2)であり、一方、比較例Bは、メラミン樹脂製発泡体(BASF社製、バソテクトG+、目付:300g/m
2)である。試験サンプルは、厚み20mm、目付量300g/m
2である。7点平均吸音率の測定方法は、JIS A1409:1998(残響室法吸音率の測定方法)である。
【0061】
7点平均吸音率の測定結果は、
図5に示すとおりであり、実施例2では、500−2000Hzと2500−10000Hzの何れも90%以上であって吸音性が良好であったのに対し、比較例Aでは500−2000Hzが76.0%、比較例Bでは500−2500Hzが86.4%であり、比較例A及び比較例Bの何れも吸音性に劣っていた。
このように、実施例は、ポリウレタン樹脂の連続気泡構造においてダブルセル領域を有することにより、従来の不織布もしくはメラミン樹脂気泡体の比較例よりも吸音性が良好である。
【0062】
本発明のポリウレタンフォームは、良好な吸音性を有し、軽量で品質が良好であり、家具類、建材類、車両用内装材、吸音材などに好適である。