特開2019-183034(P2019-183034A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-183034(P2019-183034A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】撥液剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20190927BHJP
   C08G 73/04 20060101ALI20190927BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   C09K3/18 101
   C08G73/04
   C08G59/40
   C09K3/18 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-76892(P2018-76892)
(22)【出願日】2018年4月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 勉
(72)【発明者】
【氏名】白井 淳
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】氏家 誠司
(72)【発明者】
【氏名】冨高 詩織
【テーマコード(参考)】
4H020
4J036
4J043
【Fターム(参考)】
4H020BA02
4H020BA25
4J036AA01
4J036AJ06
4J036FB14
4J036JA01
4J036KA01
4J043PA02
4J043PB13
4J043QA04
4J043YB29
4J043ZB03
(57)【要約】
【課題】本発明は、新たな撥液剤を提供することを課題とする。
【解決手段】1個以上の置換基で置換されたポリ(ヒドロカルビルアミン)であって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリ(ヒドロカルビルアミン)のアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体
を含有する、
撥液剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の置換基で置換されたポリ(ヒドロカルビルアミン)であって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリ(ヒドロカルビルアミン)のアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体
を含有する、
撥液剤。
【請求項2】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリエチレンイミン誘導体
である、
請求項1に記載の撥液剤。
【請求項3】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、直鎖状、分枝鎖状、又は環状、或いはこれらの組合せの構造を有する、請求項1又は2に記載の撥液剤。
【請求項4】
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、Rfaである。Rfaは、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である。)を有していてもよい2−ヒドロキシエチル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の撥液剤。
【請求項5】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、
式(U1):
−鎖状炭化水素−N(−Ray)− (U1)
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される構成単位を1個以上有するポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の撥液剤。
【請求項6】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、
ne個の末端基E、
np個の構成単位G
nqf個の構成単位Gqf、及び
nr個の構成単位Gを含み;
構成単位Gは、各出現において同一又は異なって、
式(Up1):
−CHCH−NH− (Up1)
で表される構成単位であり、
構成単位Gqfは、各出現において同一又は異なって、
式(Uq1):
−CHCH−N(−Rqfy)− (Uq1)
[式中、
qfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される構成単位であり、
構成単位Gは、各出現において同一又は異なって、
式(Ur1):
−CHCH−N(−Rot)− (Ur1)
[式中、
otは、Rqfyとは異なる置換基を表す。]
で表される構成単位であり;
neは、0〜50000の範囲内の整数であり、
npは、0〜50000の範囲内の整数であり、
nqfは、0〜50000の範囲内の整数であり、
nrは、0〜50000の範囲内の整数であり、
np及びnqfの合計は、100以上の整数であり、
nqf/(np+nqf)の比は、0.02〜100%の範囲内であり、
前記構成単位G、Gqf、及びGの結合法は、それぞれ任意の型であり、且つ
前記構成単位G、Gqf、及びGは、主鎖を構成しない部分によって他の構成単位と連結していてもよい。]
で表される重合体である、
請求項1〜5のいずれかに記載の撥液剤。
【請求項7】
qfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基又は1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基)を有していてもよいヒドロキシエチル基である請求項6に記載の撥液剤。
【請求項8】
表面処理用である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の撥液剤。
【請求項9】
物品表面への撥液性の付与用である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の撥液剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の撥液剤を含有する、撥液膜。
【請求項11】
請求項10に記載の撥液膜の製造方法であって、
1)物品表面上に、ポリ(ヒドロカルビルアミン)を含有する液体を塗工する工程、及び
2)更にその上に、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシランを含有する液体を塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、請求項10に記載の撥液膜を形成させる工程
を含む製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の撥液膜の製造方法であって、
ポリ(ヒドロカルビルアミン)、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシラン
を含有する液体を
物品表面上に塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、請求項10に記載の撥液膜を形成させることを含む製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の撥液膜を備える物品。
【請求項14】
請求項10に記載の撥液膜を備える物品の製造方法であって、
ポリ(ヒドロカルビルアミン)、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)を有していてもよいオキシラン
を含有する液体を
物品表面上に塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、請求項10に記載の撥液膜を形成させることを含む製造方法。
【請求項15】
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、
当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−COH
[式中、
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又は置換基を表す。
但し、4個のRのうちの少なくとも1個は、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基又は
1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基である。]
で表される置換基
である、ポリエチレンイミン誘導体。
【請求項16】
請求項15に記載のポリエチレンイミン誘導体を含有する撥液剤。
【請求項17】
1)ポリエチレンイミン;及び
2)1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシランを含有する
を含む撥液剤キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥油性に優れる様々な含フッ素化合物が用いられている。
提供されている。
しかし、このような含フッ素化合物は、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への溶解性が低いので、塗工の際には、高価なフッ素含有有機溶媒に溶解させる必要がある。
これに対して、特許文献1には、汎用溶剤への溶解性が高い撥油性及び/又は撥水性コーティング剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/115380号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高価な含フッ素溶剤の使用が抑制された、特に水に溶解させて塗工できる撥液剤が提供されれば、有用である。
従って、本発明は、新たな撥液剤、特に水に溶解させて塗工できる撥液剤を提供することを課題とする。
特に、本発明は、物品表面へ塗布により、物品表面に撥液性を付与できる撥液剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
1個以上の置換基で置換されたポリ(ヒドロカルビルアミン)であって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリ(ヒドロカルビルアミン)のアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体
を含有する、
撥液剤
によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の態様を含む。
項1.
1個以上の置換基で置換されたポリ(ヒドロカルビルアミン)であって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリ(ヒドロカルビルアミン)のアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体
を含有する、
撥液剤。
項2.
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリエチレンイミン誘導体
である、
項1に記載の撥液剤。
項3.
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、分枝鎖状、又は環状、或いはこれらの組合せの構造を有する、項1又は2に記載の撥液剤。
項4.
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、Rfaである。Rfaは、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である。)を有していてもよい2−ヒドロキシエチル基である、項1〜3のいずれか一項に記載の撥液剤。
項5.
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、
式(U1):
−鎖状炭化水素−N(−Ray)− (U1)
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される構成単位を1個以上有するポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体である、
項1〜4のいずれか一項に記載の撥液剤。
項6.
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が、
ne個の末端基E、
np個の構成単位G
nqf個の構成単位Gqf、及び
nr個の構成単位Gを含み;
構成単位Gは、各出現において同一又は異なって、
式(Up1):
−CHCH−NH− (Up1)
で表される構成単位であり、
構成単位Gqfは、各出現において同一又は異なって、
式(Uq1):
−CHCH−N(−Rqfy)− (Uq1)
[式中、
qfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される構成単位であり、
構成単位Gは、各出現において同一又は異なって、
式(Ur1):
−CHCH−N(−Rot)− (Ur1)
[式中、
otは、Rqfyとは異なる置換基を表す。]
で表される構成単位であり;
neは、0〜50000の範囲内の整数であり、
npは、0〜50000の範囲内の整数であり、
nqfは、0〜50000の範囲内の整数であり、
nrは、0〜50000の範囲内の整数であり、
np及びnqfの合計は、100以上の整数であり、
nqf/(np+nqf)の比は、0.02〜100%の範囲内であり、
前記構成単位G、Gqf、及びGの結合法は、それぞれ任意の型であり、且つ
前記構成単位G、Gqf、及びGは、主鎖を構成しない部分によって他の構成単位と連結していてもよい。]
で表される重合体である、
項1〜5のいずれかに記載の撥液剤。
項7.
qfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基である項6に記載の撥液剤。
項8.
表面処理用である、項1〜7のいずれか一項に記載の撥液剤。
項9.
物品表面への撥液性の付与用である、項1〜8のいずれか一項に記載の撥液剤。
項10.
項1〜9のいずれか一項に記載の撥液剤を含有する、撥液膜。
項11.
項10に記載の撥液膜の製造方法であって、
1)物品表面上に、ポリ(ヒドロカルビルアミン)を含有する液体を塗工する工程、及び
2)更にその上に、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシランを含有する液体を塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、項10に記載の撥液膜を形成させる工程
を含む製造方法。
項12.
項10に記載の撥液膜の製造方法であって、
ポリ(ヒドロカルビルアミン)、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシラン
を含有する液体を
物品表面上に塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、項10に記載の撥液膜を形成させることを含む製造方法。
項13.
項10に記載の撥液膜を備える物品。
項14.
項10に記載の撥液膜を備える物品の製造方法であって、
ポリ(ヒドロカルビルアミン)、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)を有していてもよいオキシラン
を含有する液体を
物品表面上に塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、項10に記載の撥液膜を形成させることを含む製造方法。
項15.
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−COH
[式中、
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又は置換基を表す。
但し、4個のRのうちの少なくとも1個は、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基である。]
で表される置換基である、ポリエチレンイミン誘導体。
項16.
項15に記載のポリエチレンイミン誘導体を含有する撥液剤。
項17.
1)ポリエチレンイミン;及び
2)1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシランを含有する
を含む撥液剤キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新たな撥液剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】PEI−Ex2薄膜のDSCサーモグラムである(試験例2)。
図2】PEI−Ex2薄膜のIRスペクトルである(試験例3)
図3】PEI−Ex2薄膜のNMRスペクトルである(試験例4)
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0010】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0011】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
【0012】
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度を意味する。
【0013】
本明細書中、表記「Cn−Cm」(ここで、n、及びmは、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0014】
本明細書中、「撥液剤」とは、物品表面に適用(例:塗工)することにより、当該物品表面に撥液性を付与できる剤を意味する。
本明細書中、用語「撥液」は、撥水、撥油、又はその両方を意味し得る。
本明細書中、用語「撥液性」は、撥水性、撥油性、又はその両方を意味し得る。
本明細書中、用語「物品表面」は、物品の表面の全部又は一部を意味し得る。
【0015】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロ(基)」の例は、フルオロ(基)、クロロ(基)、ブロモ(基)、及びヨード(基)を包含できる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロゲン(原子)」の例は、フッ素(原子)、塩素(原子)、臭素(原子)、及びヨウ素(原子)を包含できる。
【0016】
本明細書中、「有機基」とは、1個以上の炭素原子を含有する基(又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基)を意味する。
【0017】
本明細書中、「有機基」は、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基[当該炭化水素基には、−NR−、=N−、−N=、−O−、−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)−、−S(=O)−、−S(=O)−、−S(=O)−NR−、−NR−S(=O)−、−S(=O)−、−S(=O)−NR−、及び−NR−S(=O)−(これらの式中、Rは、独立して、水素原子、又は有機基である。)からなる群より選択される1個以上の部分が挿入されていてもよい。]であることができる。
【0018】
化学分野の常識に基づいて通常理解される通り、このようにヘテロ原子が挿入された炭化水素基の例は、非芳香族複素環基、及びヘテロアリール基を包含できる。
【0019】
本明細書中、「1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」の炭素数は、例えば、1〜100、1〜80、1〜60、1〜40、1〜30、1〜20、又は1〜10(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であることができる。
【0020】
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
アルデヒド基、
O−、
CO−、
SO−、
OCO−、及び
OSO
(これらの式中、Rは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基である)
を包含できる。
【0021】
本明細書中、
「1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基」、
「1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいいアルキル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアリール基」、及び
「1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基」
における「置換基」の例は、それぞれ、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基を包含できる。
当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができる。
【0022】
本明細書中、用語「炭化水素基」及び用語「ヒドロカルビル(基)」は、相互互換的に使用され得る。
当業者が通常理解する通り、炭化水素基は、鎖状構造(非環状構造)、若しくは環状構造又はこれらの1種以上の組合せである構造を有し得る。
本明細書中、「炭化水素基」の例は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの組合せである基を包含できる。
【0023】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキル基」の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、及びドコシル等の、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を包含できる。
【0024】
本明細書中、「アルキル基」は、例えば、炭素数1〜30、炭素数1〜20、炭素数6〜20、炭素数1〜20、炭素数1〜15、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜6、炭素数1〜4、炭素数1〜3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のアルキル基であることができる。
【0025】
本明細書中、特に限定の無い限り、「(ハロ)アルキル基」は、アルキル基又はハロアルキル基を意味する。
【0026】
本明細書中、「ハロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基である。
【0027】
本明細書中、「ハロアルキル基」が有するハロゲン原子の数は、1個以上(例:1〜3個、1〜6個、1〜12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
【0028】
本明細書中、「ハロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜30、炭素数1〜20、炭素数6〜20、炭素数1〜20、炭素数1〜15、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜6、炭素数1〜4、炭素数1〜3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のハロアルキル基であることができる。
【0029】
「(ハロ)アルキル基」の例は、(フルオロ)アルキル基を包含する。
本明細書中、特に限定の無い限り、(フルオロ)アルキル基は、アルキル基又はフルオロアルキル基を意味する。
【0030】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
【0031】
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1〜3個、1〜6個、1〜12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
【0032】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜30、炭素数1〜20、炭素数6〜20、炭素数1〜20、炭素数1〜15、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜6、炭素数1〜4、炭素数1〜3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のフルオロアルキル基であることができる。
【0033】
本明細書中、特に限定の無い限り、(フルオロ)アルキル基は、アルキル基又はフルオロアルキル基を意味する。
【0034】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1〜3個、1〜6個、1〜12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜30、炭素数1〜20、炭素数6〜20、炭素数1〜20、炭素数1〜15、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜6、炭素数1〜4、炭素数1〜3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のフルオロアルキル基であることができる。
【0035】
当業者が通常理解する通り、接尾語「パーハロゲノ」は全ての水素原子がハロ基に置換されていることを意味する。
当業者が通常理解する通り、接尾語「パーフルオロ」は全ての水素原子がハロ基に置換されていることを意味する。
【0036】
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。
【0037】
「パーフルオロアルキル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。当該パーフルオロアルキル基の具体例は、トリフルオロメチル基(CF−)、及びペンタフルオロエチル基(C−)を包含する。
【0038】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜30、炭素数1〜20、炭素数6〜20、炭素数1〜20、炭素数1〜15、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜6、炭素数1〜4、炭素数1〜3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のフルオロアルキル基であることができる。
【0039】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基(CF−)、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基(C−)、テトラフルオロプロピル基(例:HCFCFCH−)、ヘキサフルオロプロピル基(例:(CFCH−)、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基(例:HCFCFCFCFCH−)、及びトリデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0040】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルケニル基」の例は、ビニル、1−プロペン−1−イル、2−プロペン−1−イル、イソプロペニル、2−ブテン−1−イル、4−ペンテン−1−イル、及び5−へキセン−1−イル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C2−10アルケニル基を包含できる。
【0041】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキニル基」の例は、エチニル、1−プロピン−1−イル、2−プロピン−1−イル、4−ペンチン−1−イル、5−へキシン−1−イル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C2−C10アルキニル基を包含できる。
【0042】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルキル基」の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等のC3−C7シクロアルキル基を包含できる。
【0043】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルケニル基」の例は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等のC3−C7シクロアルケニル基を包含できる。
【0044】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルカジエニル基」の例は、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、シクロノナジエニル、シクロデカジエニル等のC4−C10シクロアルカジエニル基を包含できる。
【0045】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」は、C6−C18アリール基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」の例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、及び2−アンスリルを包含できる。
【0046】
本明細書中、「フルオロアリール基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基である。
【0047】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アラルキル基」の例は、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、2−ビフェニリルメチル、3−ビフェニリルメチル、及び4−ビフェニリルメチルを包含できる。
【0048】
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含有する非芳香族複素環基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」の例は、テトラヒドロフリル、オキサゾリジニル、イミダゾリニル(例:1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル)、アジリジニル(例:1−アジリジニル、2−アジリジニル)、アゼチジニル(例:1−アゼチジニル、2−アゼチジニル)、ピロリジニル(例:1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル)、ピペリジニル(例:1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル)、アゼパニル(例:1−アゼパニル、2−アゼパニル、3−アゼパニル、4−アゼパニル)、アゾカニル(例:1−アゾカニル、2−アゾカニル、3−アゾカニル、4−アゾカニル)、ピペラジニル(例:1,4−ピペラジン−1−イル、1,4−ピペラジン−2−イル)、ジアゼピニル(例:1,4−ジアゼピン−1−イル、1,4−ジアゼピン−2−イル、1,4−ジアゼピン−5−イル、1,4−ジアゼピン−6−イル)、ジアゾカニル(例:1,4−ジアゾカン−1−イル、1,4−ジアゾカン−2−イル、1,4−ジアゾカン−5−イル、1,4−ジアゾカン−6−イル、1,5−ジアゾカン−1−イル、1,5−ジアゾカン−2−イル、1,5−ジアゾカン−3−イル)、テトラヒドロピラニル(例:テトラヒドロピラン−4−イル)、モルホリニル(例:4−モルホリニル)、チオモルホリニル(例:4−チオモルホリニル)、2−オキサゾリジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、及びジヒドロキノリル等を包含できる。
【0049】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ヘテロアリール基」の例は、単環性芳香族複素環基(例:5又は6員の単環性芳香族複素環基)、及び芳香族縮合複素環基(例:5〜18員の芳香族縮合複素環基)を包含できる。
【0050】
本明細書中、特に限定の無い限り、「5又は6員の単環性芳香族複素環基」の例は、ピロリル(例:1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、フリル(例:2−フリル、3−フリル)、チエニル(例:2−チエニル、3−チエニル)、ピラゾリル(例:1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例:3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル)、オキサゾリル(例:2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例:3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、ピラジニル等を包含できる。
【0051】
本明細書中、特に限定の無い限り、「5〜18員の芳香族縮合複素環基」の例は、イソインドリル(例:1−イソインドリル、2−イソインドリル、3−イソインドリル、4−イソインドリル、5−イソインドリル、6−イソインドリル、7−イソインドリル)、インドリル(例:1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル)、ベンゾ[b]フラニル(例:2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニル、4−ベンゾ[b]フラニル、5−ベンゾ[b]フラニル、6−ベンゾ[b]フラニル、7−ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[c]フラニル(例:1−ベンゾ[c]フラニル、4−ベンゾ[c]フラニル、5−ベンゾ[c]フラニル)、ベンゾ[b]チエニル、(例:2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、4−ベンゾ[b]チエニル、5−ベンゾ[b]チエニル、6−ベンゾ[b]チエニル、7−ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[c]チエニル(例:1−ベンゾ[c]チエニル、4−ベンゾ[c]チエニル、5−ベンゾ[c]チエニル)、インダゾリル(例:1−インダゾリル、2−インダゾリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、6−インダゾリル、7−インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(例:1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル)、1,2−ベンゾイソオキサゾリル(例:1,2−ベンゾイソオキサゾール−3−イル、1,2−ベンゾイソオキサゾール−4−イル、1,2−ベンゾイソオキサゾール−5−イル、1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル、1,2−ベンゾイソオキサゾール−7−イル)、ベンゾオキサゾリル(例:2−ベンゾオキサゾリル、4−ベンゾオキサゾリル、5−ベンゾオキサゾリル、6−ベンゾオキサゾリル、7−ベンゾオキサゾリル)、1,2−ベンゾイソチアゾリル(例:1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル、1,2−ベンゾイソチアゾール−4−イル、1,2−ベンゾイソチアゾール−5−イル、1,2−ベンゾイソチアゾール−6−イル、1,2−ベンゾイソチアゾール−7−イル)、ベンゾチアゾリル(例:2−ベンゾチアゾリル、4−ベンゾチアゾリル、5−ベンゾチアゾリル、6−ベンゾチアゾリル、7−ベンゾチアゾリル)、イソキノリル(例:1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル)、キノリル(例:2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル)、シンノリニル(例:3−シンノリニル、4−シンノリニル、5−シンノリニル、6−シンノリニル、7−シンノリニル、8−シンノリニル)、フタラジニル(例:1−フタラジニル、4−フタラジニル、5−フタラジニル、6−フタラジニル、7−フタラジニル、8−フタラジニル)、キナゾリニル(例:2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、5−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、8−キナゾリニル)、キノキサリニル(例:2−キノキサリニル、3−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル、7−キノキサリニル、8−キノキサリニル)、ピラゾロ[1,5−a]ピリジル(例:ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−3−イル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−4−イル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−5−イル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−6−イル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−7−イル)、イミダゾ[1,2−a]ピリジル(例:イミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−5−イル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−イル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−7−イル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イル)等を包含できる。
【0052】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基」、及び
「1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基」
における各「置換基」の例は、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基を包含できる。
当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができる。
【0053】
本明細書中、「ポリ(ヒドロカルビルアミン)」は、当業者が理解する通り、
ヒドロカルビルアミン(例:アリルアミン、ビニルアミン、エチルアミン)の仮想的な又は実際の重合により形成されるポリマーと同じ化学構造を有するポリマーを意味する。言い換えれば、当該名称は、その実際の原料には無関係に、その化学構造を表し得る。これから理解される通り、例えば、ポリ(アルキレンイミン)は、ポリ(アルキルアミン)と同義であることができる。
【0054】
本明細書中、「ポリ(ヒドロカルビルアミン)」は、鎖状構造[非環状構造(例:分枝鎖状構造)]、若しくは環状構造又はこれらの1種以上の組合せである構造を有し得る。
特に、2個以上の環状構造を有する「ポリ(ヒドロカルビルアミン)」は網状構造を有し得る。
【0055】
本明細書中、「ポリ(ヒドロカルビルアミン)」は、好ましくは1個以上(より好ましくは2個以上)の環状構造(環状部分)を有する。
【0056】
ポリ(ヒドロカルビルアミン)の好適な例は、ポリ(C2−C4アルキレンイミン)、ポリ(C2−C4アルキルアミン)を包含し、及びその特に好適な例は、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アリルアミン)及びポリ(ビニルアミン)を包含する。
念のために記載するに過ぎないが、これらは、ポリ(ヒドロカルビルアミン)について説明したのと同様に、鎖状構造[非環状構造(例:分枝鎖状構造)]、若しくは環状構造又はこれらの1種以上の組合せである構造を有し得る。
【0057】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0058】
2.撥液剤
本発明の撥液剤は、
1個以上の置換基で置換されたポリ(ヒドロカルビルアミン)であって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリ(ヒドロカルビルアミン)のアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体
を含有する。
【0059】
当該「ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体」は、1個以上の側鎖部を有する網状構造を有することができる。
【0060】
本発明の撥液剤を物品表面に適用した場合、好適に、前記網状構造は、物品表面に付着し、及び側鎖部は物品表面に対して垂直配向できる。
【0061】
当該垂直配向の機構は、好適に、側鎖部の疎水性に基づくことができる。
【0062】
本発明は、これに限定されるものではないが、本発明の撥液剤の機能は、当該側鎖部の垂直配向に基づくことができる。
【0063】
<本発明の撥液剤の好適な一態様>
本発明の撥液剤の好適な一態様において、前記「ポリ(ヒドロカルビルアミン)」は、ポリエチレンイミンである。
【0064】
言い換えると、本発明の好適な一態様の撥液剤は、
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−Ray
[式中、
ayは、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリエチレンイミン誘導体
を含有する撥液剤である。
【0065】
ポリエチレンイミン誘導体
当該ポリエチレンイミン誘導体は、言い換えれば、
少なくとも1個のアミン部が、1個以上の置換基Rayで置換され、及び
更に任意の部位が1個以上の置換基で置換されていてもよい
ポリエチレンイミンであることができる。
【0066】
当該ポリエチレンイミン誘導体の好適な例は、
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−COH
[式中、
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又は置換基を表す。
但し、4個のRのうちの少なくとも1個は、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基又は
1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基
である。]
で表される置換基である、ポリエチレンイミン誘導体
を包含する。
【0067】
当該ポリエチレンイミン誘導体の分子量は、
好ましくは300〜1000000、
より好ましくは10000〜900000、及び
更に好ましくは20000〜800000
の範囲内であることができる。
【0068】
前記の通り、ポリエチレンイミン誘導体は、1個以上の置換基で置換されているポリエチレンイミンである。
当該ポリエチレンイミン誘導体の骨格であるポリエチレンイミンは、分枝鎖状、又は環状、或いはこれらの組合せの構造を有することができる。
説明の目的のために一例を示すに過ぎないが、当該構造は、以下のような、分枝鎖状、又は環状、或いはこれらの組合せの構造を有する部分構造を有し得る。
【0069】
【化1】
【0070】
一般に、このように、分枝鎖状、又は環状、或いはこれらの組合せの構造を有するポリエチレンイミンを分岐ポリエチレンイミンと称する場合がある。
本明細書においても、用語「分岐ポリエチレンイミン」は、このような構造を有するポリエチレンイミンを意味することを意図して使用され得る。
【0071】
当該ポリエチレンイミンの分子量は、前記ポリエチレンイミン誘導体の分子量と同様であることができる。
当該ポリエチレンイミンの分子量は、具体的には、
好ましくは300〜1000000、
より好ましくは10000〜900000、及び
更に好ましくは20000〜800000
の範囲内であることができる。
【0072】
前記ポリエチレンイミン誘導体もまた、分枝鎖状、又は環状、或いはこれらの組合せの構造を有することができる。
説明の目的のために一例を示すに過ぎないが、当該構造は、以下のような、1個以上の分枝鎖状部分、及び1個以上の環状部分を含む構造を有し得る。当該構造式中、Rayは、各出現において独立して、−CHCHRfa−OH、又は−CHCHRfa−OH等を表す。
【0073】
【化2】
【0074】
前記ポリエチレンイミンが有していてもよい「置換基」(すなわち、前記ポリエチレンイミン誘導体中の置換基)の例は、
ハロ基;
ニトロ基;
シアノ基;
オキソ基;
チオキソ基;
スルホ基;
スルファモイル基;
スルフィナモイル基;
スルフェナモイル基;及び
有機基
を包含する。
【0075】
当該置換基の数は、1個以上である。
その下限は、例えば、5個、10個、15個、又は20個であることができる。
その上限は、例えば、5000個、10000個、30000個、又は50000個であることができる。
当該置換基の数は、前記ポリエチレンイミン骨格を構成するエチレンイミンの数に対して、例えば、0.1〜10倍、0.1〜7倍、0.1〜5倍、又は0.1〜3倍であることができる。
【0076】
前記の通り、前記置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、前記式(S1):−Ray[式中の記号は前記と同意義を表す。]で表される置換基である。
【0077】
ayで表される、「1個以上の置換基を有していてもよいヒドロキシエチル基」における置換基の例は、
1個以上のエーテル官能基(−O−)を有していてもよい(ハロ)アルキル基、ハロ基(例:フルオロ基)、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、オキソ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基
を包含する。
【0078】
当該置換基の数は、0個(無置換)、1個、2個、3個、又は4個である。
当該置換基のうち少なくとも1個は、Rfaである。その数は、1個、2個、3個、又は4個であることができる。
【0079】
前記の通り、Rfaは、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である。
faにおける当該アルキル基は、好ましくはC1−C30アルキル基、より好ましくはC6−C20アルキル基、及び更に好ましくはC12−C20アルキル基である。
【0080】
faである当該「1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基は、
好ましくはC1−C30アルキル基(中でも好ましくは、直鎖状または分岐鎖状C1−C30アルキル基)、
より好ましくはC6−C30アルキル基(中でも好ましくは、直鎖状または分岐鎖状C6−C30アルキル基)、
更に好ましくはC6−C20アルキル基(中でも好ましくは、直鎖状または分岐鎖状C6−C20アルキル基)、及び
より更に好ましくはC12−C20アルキル基(中でも好ましくは、直鎖状または分岐鎖状C12−C20アルキル基)
である。
当該アルキル基が有していてもよい当該置換基の例は、
1個以上のエーテル官能基(−O−)を有していてもよい(ハロ)アルキル基、ハロ基(例:フルオロ基)、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、オキソ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基
を包含する。
【0081】
faである当該「1個以上の置換基を有していてもよいアリール基」のアリール基の好適な例は、フェニル基を包含する。
当該アリール基が有していてもよい当該置換基の例は、
1個以上のエーテル官能基(−O−)を有していてもよい(ハロ)アルキル基、ハロ基(例:フルオロ基)、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、オキソ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基
を包含する。
【0082】
faは、
好ましくは1個以上のエーテル官能基(−O−)を有していてもよいフルオロアルキル基、
より好ましくは直鎖状の、1個以上(好ましくは1個)のエーテル官能基(−O−)を有していてもよいC1−C30フルオロアルキル基、及び
更に好ましくは直鎖状の、1個以上(好ましくは1個)のエーテル官能基(−O−)を有していてもよいC6−C20パーフルオロアルキル基である。
【0083】
前記ポリエチレンイミン誘導体中の、N−Ray部/全エチレンイミン単位のモル比は、
好ましくは0.01〜2、
より好ましくは0.01〜1.5、及び
更に好ましくは0.01〜1
の範囲内であることができる。
【0084】
前記ポリエチレンイミン誘導体中、Rfa部/N−Ray部のモル比は、
好ましくは1/4〜1、
より好ましくは1/3〜1、及び
更に好ましくは1/2〜1
の範囲内であることができる。
【0085】
ayは、好ましくは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、Rfaである)を有していてもよい2−ヒドロキシエチル基である。
【0086】
前記ポリエチレンイミン誘導体は、好ましくは、
式(U1):
−CHCH−N(−Ray)− (U1)
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される構成単位を1個以上有するポリエチレンイミン誘導体である。
本明細書中、当該構成単位(U1)を1個以上有するポリエチレンイミン誘導体を、ポリエチレンイミン誘導体(PU1)と称する場合がある。
【0087】
前記ポリエチレンイミン誘導体は、好ましくは、
ne個の末端基E、
np個の構成単位G
nqf個の構成単位Gqf、及び
nr個の構成単位Gを含む。
【0088】
末端基Eの具体例は、−NH、−CH、及び−Cを包含する。当該末端基は前記置換基を1個以上有していてもよい。
neは、
好ましくは0〜50000、
より好ましくは0〜40000、及び
更に好ましくは0〜30000
の範囲内である。
ここで、説明のために記載するに過ぎないが、neが0のときは、技術常識から理解可能な通り、前記ポリエチレンイミン誘導体は環状構造を有し、後記の各構成単位の置換基以外の分枝を有さない。
【0089】
構成単位Gは、各出現において同一又は異なって、
式(Up1):
−CHCH−NH− (Up1)
で表される構成単位である。
【0090】
構成単位Gの数であるnpは、
好ましくは0〜50000、
より好ましくは0〜40000、及び
更に好ましくは0〜30000
の範囲内である。
【0091】
構成単位Gqfは、各出現において同一又は異なって、
式(Uq1):
−CHCH−N(−Rqfy)− (Uq1)
[式中、
qfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される構成単位である。
好ましくは、Rqfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基又は1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基である。
より好ましくは、Rqfyは、1個以上の置換基(当該置換基のうち少なくとも1個は、パーフルオロアルキル基である)を有していてもよいヒドロキシエチル基である。
【0092】
構成単位Gqfの数であるnqfは、
好ましくは0〜50000、
より好ましくは0〜40000、及び
更に好ましくは0〜30000
の範囲内である。
【0093】
構成単位Gは、各出現において同一又は異なって、
式(Ur1):
−CHCH−N(−Rot)− (Ur1)
[式中、
otは、Rqfyとは異なる置換基を表す。]
で表される構成単位である。
構成単位Gの数であるnrは、
好ましくは0〜50000、
より好ましくは0〜40000、及び
更に好ましくは0〜30000
の範囲内である。
【0094】
np及びnqfの合計は、
好ましくは100以上、
より好ましくは100〜100000、及び
更に好ましくは1000〜100000
の範囲内である。
nqf/(np+nqf)の比は、
好ましくは0.02〜100%、
より好ましくは0.1〜100%、及び
更に好ましくは1〜100%
の範囲内である。
【0095】
前記構成単位G、Gqf、及びGの結合法は、それぞれ任意の型であり、且つ
前記構成単位G、Gqf、及びGは、主鎖を構成しない部分によって他の構成単位と連結していてもよい。]
で表される重合体である。
当該型の例は、ランダム、ブロック、及び交互、ならびにそれらの組合せを包含する。
【0096】
本発明の撥液剤は、前記ポリエチレンイミン誘導体(PU1)に加えて、所望により添加剤、及び所望により溶媒等を含有してもよい。
【0097】
当該添加剤としては、撥液剤において通常使用される添加剤を用いることができる。
【0098】
当該溶媒の例は、
水;
アルコール溶媒[例:メタノール、エタノール];
非芳香族炭化水素溶媒[例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n−デカン、イソドデカン、トリデカン];
芳香族炭化水素溶媒[例:ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド];
ケトン溶媒[例:アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、イソホロン];
ハロゲン化炭化水素溶媒[例:ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン];
エーテル溶媒[例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、フェネトール、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル];
エステル溶媒[例:酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン];
ニトリル溶媒[例:アセトニトリル、ベンゾニトリル];
スルホキシド系溶媒[例:ジメチルスルホキシド、スルホラン];及び
アミド溶媒[例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド]
を包含する。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0099】
3.撥液剤の製造方法
【0100】
本発明の撥液剤は、例えば、前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体を、前記所望による添加剤、及び前記所望による溶媒と混合することにより、製造される。
【0101】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体は、商業的に入手可能であるか、又は後記する本発明のポリエチレンイミン誘導体の製造方法若しくはこれに類似する方法によって製造できる。
【0102】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体が前記ポリエチレンイミン誘導体(PU1)である、本発明の撥液剤は、例えば、前記ポリエチレンイミン誘導体(PU1)を、前記所望による添加剤、及び前記所望による溶媒と混合することにより、製造される。
【0103】
前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体は、商業的に入手可能であるか、又は後記する本発明のポリエチレンイミン誘導体の製造方法若しくはこれに類似する方法によって製造できる。
具体的には、例えば、ポリエチレンイミンの製造におけるエチレンイミンに換えて、目的とするポリ(ヒドロカルビルアミン)の構造に対応する環状炭化水素アミン[例:目的とするポリプロピレンイミンに対応するプロピレンイミン]を用いればよい。
【0104】
4.撥液剤の使用
本発明の撥液剤は、物品表面に適用(例:塗布)することにより、当該物品表面に撥液性を付与する用途に広く使用され得る。
本明細書中、「撥液性の付与」は、防汚性の付与を意味することができる。
本明細書中、「物品表面への撥液性の付与」は、当該物品表面の撥液性を向上させることを意味することができる。
【0105】
当該「撥液剤の使用」の詳細は、本発明の他の部分の記載、及び技術常識を参照して、理解可能である。
【0106】
本発明の撥液剤は、物品表面に適用されて、これに、撥液性を付与する。
前記した通り、当該物品表面の材質は特に限定されず、その例は、ガラス、金属、及び樹脂を包含する。
【0107】
本発明の撥液剤は、物品表面に対し、例えば、
ポリエチレンイミン誘導体の量が、物品表面1cm当たり、
好ましくは1〜1000mg、
より好ましくは10〜1000mg、及び
更に好ましくは50〜1000mg
になる量で、適用される。
【0108】
5.撥液膜
本発明は、本発明の撥液剤を含有する撥液膜もまた提供する。
本発明は、前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体を含有する撥液膜もまた提供する。
本発明は、本発明の撥液剤から形成された撥液膜もまた提供する。
本発明は、前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体から形成された撥液膜もまた提供する。
本発明の撥液膜は、本発明の撥液剤の固化物であることができる。
本発明の撥液膜の厚さは、例えば、
好ましくは0.0001〜5μm、
より好ましくは0.0001〜4μm、及び
更に好ましくは0.0001〜3μm
の範囲内であることができる。
【0109】
本発明の撥液膜は、前記ポリ(ヒドロカルビルアミン)誘導体を含有し、好ましくは、前記式ポリエチレンイミン誘導体(PU1)を含有する。
本発明の撥液膜は、前記本発明の撥液剤についての説明に基づいて、理解される。
本発明の撥液膜は、好適に、高い結晶性を有し得る。
【0110】
6.撥液膜の製造方法
(1)撥液膜の製造方法1
本発明の撥液膜は、例えば、
1)物品表面の上に、ポリエチレンイミンを含有する液体を塗工する工程、及び
2)更にその上に、1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、Rfaである。)を有していてもよいオキシラン(以下、これを単にオキシラン化合物と称する場合がある。)を含有する液体を塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、当該撥液膜を形成させる工程
を含む製造方法
によって、製造できる。
【0111】
工程1
前記「ポリエチレンイミンを含有する液体」は、ポリエチレンイミン、及び溶媒を含有する液体であることができる。
当該溶媒の例は、
水;
アルコール溶媒[例:メタノール、エタノール];
非芳香族炭化水素溶媒[例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n−デカン、イソドデカン、トリデカン];
芳香族炭化水素溶媒[例:ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド];
ケトン溶媒[例:アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、イソホロン];
ハロゲン化炭化水素溶媒[例:ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン];
エーテル溶媒[例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、フェネトール、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル];
エステル溶媒[例:酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン];
ニトリル溶媒[例:アセトニトリル、ベンゾニトリル];
スルホキシド系溶媒[例:ジメチルスルホキシド、スルホラン];及び
アミド溶媒[例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド]
を包含できる。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
当該液体は、所望により、ポリエチレンイミン、及び溶媒以外の物質を含有していてもよい。
当該物質の例は、1個以上の置換基を有していてもよいアジリジン、1個以上の置換基を有していてもよいオキサゾリン、及びハロゲン化アルキルを包含する。
当該置換基の好適な例は、アルキル基、及びアリール基を包含する。
【0112】
当該ポリエチレンイミンは、好ましくは300〜1000000、より好ましくは300〜900000、及び更に好ましくは300〜800000の質量平均分子量を有する。
【0113】
当該液体におけるポリエチレンイミン濃度は、例えば、1〜50質量%の範囲内であることができる。
【0114】
前記オキシラン化合物の好適な例は、式(A):
【化3】
[式中、Rは、各出現において同一又は異なって、水素原子、又はRfaを表す。4個のRのうちの少なくとも1個はRfaである。]
で表されるオキシラン化合物であることができる。
当該オキシラン化合物のより好適な例は、後記で述べる、式(A)で表されるオキシラン化合物を包含する。
【0115】
ポリエチレンイミンは、商業的に入手可能であるか、又は公知の方法により製造可能である。
ポリエチレンイミンは、具体的には、例えば、エチレンイミンを水性溶媒(例:水)中で、塩酸又は硫酸等の酸触媒の存在下で開環重合することにより製造できる。
【0116】
工程1において、撥液性を付与する表面上(以下、「適用表面」と称する場合がある。)に、ポリエチレンイミンを含有する液体を塗工する方法は、当該塗工が達成される限り特に制限されず、及びその例は、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、及びグラビアコート法を包含する。
【0117】
前記撥液性を付与する表面の材質は特に限定されず、その例は、金属、及び樹脂を包含する。
【0118】
当該塗工は、適用表面の1cm当たり、ポリエチレンイミンが、
好ましくは1〜1000mg、
より好ましくは10〜1000mg、及び
更に好ましくは50〜1000mg
の量で適用されるように実施される。
【0119】
当該塗工は、例えば、室温で実施できる。
【0120】
当該塗工により、ポリ(ヒドロカルビルアミン)、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシラン
の少なくとも一部が反応して、本発明の撥液膜が形成される。
【0121】
工程2
前記オキシランを含有する前記液体は、前記オキシラン、及び溶媒を含有する液体であることができる。
当該溶媒の例は、
水;
アルコール溶媒[例:メタノール、エタノール];
非芳香族炭化水素溶媒[例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n−デカン、イソドデカン、トリデカン];
芳香族炭化水素溶媒[例:ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド];
ケトン溶媒[例:アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、イソホロン];
ハロゲン化炭化水素溶媒[例:ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン];
エーテル溶媒[例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、フェネトール、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル];
エステル溶媒[例:酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン];
ニトリル溶媒[例:アセトニトリル、ベンゾニトリル];
スルホキシド系溶媒[例:ジメチルスルホキシド、スルホラン];及び
アミド溶媒[例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド]
を包含できる。
これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。 当該液体は、所望により、前記オキシラン、及び前記溶媒以外の物質を含有していてもよい。
【0122】
当該物質の例は、1個以上の置換基を有していてもよいアジリジン、1個以上の置換基を有していてもよいオキサゾリン、及びハロゲン化アルキルを包含する。
当該置換基の好適な例は、アルキル基、及びアリール基を包含する。
【0123】
工程2では、前記工程1により設けられた塗工層の上に、前記オキシランを含有する液体を塗工する。当該塗工の方法は、当該塗工が達成される限り特に制限されず、及びその例は、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、及びグラビアコート法を包含する。
【0124】
当該塗工は、適用対象表面の1cm当たり、オキシランが、
好ましくは1〜1000mg、
より好ましくは10〜1000mg、及び
更に好ましくは50〜1000mg
の量で適用されるように実施される。
【0125】
当該塗工は、例えば、室温で実施できる。
【0126】
当該塗工により、
ポリ(ヒドロカルビルアミン)、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシラン
の少なくとも一部が反応して、本発明の撥液膜が形成される。
【0127】
当該塗工後、好適に、加熱処理を実施できる。
当該加熱処理により、前記撥液膜の前記適用表面への密着、及び構造の安定化が達成され得る。
【0128】
当該加熱処理の温度は、
好ましくは20〜200℃、
より好ましくは20〜80℃、及び
更に好ましくは20〜150℃
の範囲内であることができる。
当該加熱処理の時間は、
好ましくは5〜3000分間、
より好ましくは10〜2000分間、及び
更に好ましくは15〜1000分間
の範囲内であることができる。
【0129】
前記液体が含有し得る溶媒は、所望により、減圧、及び加熱並びにそれらの組合せ等の手段により、除去されてもよい。
【0130】
所望により、このようにして形成された撥液膜を、溶媒(例:THF)によって洗浄し、及び減圧乾燥等の方法で乾燥させることができる。
【0131】
(2)撥液膜の製造方法2
別法として、本発明の撥液膜は、また例えば、
ポリエチレンイミン、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシラン
を含有する液体を
適用表面上に塗工し、及びこれらの少なくとも一部を反応させることにより、当該撥液膜を形成させることを含む製造方法
によって、製造できる。
【0132】
当該ポリエチレンイミン、及び当該オキシランは、前記撥液膜の製造方法1で説明したものと同じであることができる。
工程2では、前記工程1により設けられた塗工層の上に、前記オキシランを含有する液体を塗工する。当該塗工の方法は、当該塗工が達成される限り特に制限されず、及びその例は、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、及びグラビアコート法を包含する。
【0133】
前記液体が含有する前記ポリエチレンイミン、及び前記オキシランのモル比は、
好ましくは1:1〜1:10、
より好ましくは1:1〜1:7、及び
更に好ましくは1:1〜1:5
の質量比で含有できる。
【0134】
当該塗工は、適用表面の1cm当たり、ポリエチレンイミンが、
好ましくは1〜1000mg、
より好ましくは10〜1000mg、及び
更に好ましくは50〜1000mg
の量で適用されるように実施される。
【0135】
当該塗工は、適用表面の1cm当たり、オキシランが、
好ましくは1〜3000mg、
より好ましくは10〜3000mg、及び
更に好ましくは50〜3000mg
の量で適用されるように実施される。
【0136】
当該塗工は、例えば、室温で実施できる。
【0137】
当該塗工により、ポリエチレンイミン、及び
1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である)を有していてもよいオキシラン
の少なくとも一部が反応して、本発明の撥液膜が形成される。
【0138】
当該塗工後、好適に、加熱処理を実施できる。
当該加熱処理により、前記撥液膜の前記適用表面への密着、及び構造の安定化が達成され得る。
【0139】
当該加熱処理の温度は、
好ましくは20〜200℃、
より好ましくは20〜180℃、及び
更に好ましくは20〜150℃
の範囲内であることができる。
当該加熱処理の時間は、
好ましくは5〜3000分間、
より好ましくは10〜2000分間、及び
更に好ましくは15〜1000分間
の範囲内であることができる。
【0140】
前記液体が含有し得る溶媒は、所望により、減圧、及び加熱並びにそれらの組合せ等の手段により、除去されてもよい。
【0141】
所望により、このようにして形成された撥液膜を、溶媒(例:THF)によって洗浄し、及び減圧乾燥等の方法で乾燥させることができる。
【0142】
7.物品
本発明の物品(撥液性物品)は、本発明の撥液膜を備える。
本発明の物品は、その1以上の部分、又は全部の表面上に本発明の撥液膜を有することができる。
当該物品における本発明の撥液膜、並びにそれらの調製方法は、前記本発明の撥液膜についての説明から理解される。
本発明の物品、及びその製造方法は、これらの記載、及び技術常識に基づいて理解される。
当該撥液性物品は、その物品本来の機能を有し、且つ撥液性が付与されている。
【0143】
前記適用表面上に設けられた本発明の本発明の撥液膜の厚さは、例えば、
0.0001〜5μm、
0.0001〜4μm、又は
0.0001〜3μm、
の範囲内であることができる。
【0144】
8.ポリエチレンイミン誘導体
本発明の撥液剤が含有するポリエチレンイミン誘導体のうち、
1個以上の置換基で置換されたポリエチレンイミンであって、当該置換基のうち少なくとも1個は、当該ポリエチレンイミンのアミン窒素上に置換された、
式:−Rfy
[式中、
fyは、1個以上の置換基
(当該置換基のうちの少なくとも1個は、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基又は
1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基である)
を有していてもよいヒドロキシエチル基を表す。]
で表される置換基である、ポリエチレンイミン誘導体
は、新規化合物である。
本発明は、当該新規化合物もまた提供する。
【0145】
当該ポリエチレンイミン誘導体は、例えば、ポリエチレンイミンをオキシラン化合物と反応させることにより製造できる。
【0146】
当該オキシラン化合物は、好適に、式(A):
【化4】
[式中、
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又は置換基を表す。
但し、4個のRのうちの少なくとも1個はフルオロアルキル基であることができる。]
で表されるオキシラン化合物であることができる。
【0147】
好ましくは、Rは、各出現において、同一又は異なって、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいアルキル基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基を表す。
但し、4個のRのうちの少なくとも1個は、
1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基である。
【0148】
より好ましくは、Rは、各出現において、同一又は異なって、
水素原子、
炭素数1〜30(好ましくは炭素数6〜20、及びより好ましくは炭素数12〜20)のアルキル基、又は
炭素数6〜14のアリール基
を表す。
但し、4個のRのうちの少なくとも1個は、
炭素数1〜30(好ましくは炭素数6〜20、及びより好ましくは炭素数12〜20)の、1個以上の置換基を有していてもよく、且つ1個以上の−O−部が挿入されていてもよいフルオロアルキル基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいフルオロアリール基
である。
【0149】
前記反応の反応温度は、
好ましくは20〜200℃、
より好ましくは20〜180℃、及び
更に好ましくは20〜150℃
の範囲内であることができる。
前記反応の反応時間は、
好ましくは5〜3000分間、
より好ましくは10〜2000分間、及び
更に好ましくは15〜1000分間
の範囲内であることができる。
【0150】
前記撥液膜の製造方法1、及び2は、それぞれ、当該ポリエチレンイミン誘導体の製造方法の一態様であることができる。
【0151】
当該ポリエチレンイミン誘導体は、
好ましくは1〜100、
より好ましくは1〜80、及び
更に好ましくは1〜60
の範囲内の水酸基価を有する。
【0152】
当該ポリエチレンイミン誘導体は、
好ましくは1〜50、
より好ましくは1〜40、及び
更に好ましくは1〜30
の範囲内のアミン価を有する。
【0153】
当該ポリエチレンイミン誘導体は、
好ましくは0〜80、
より好ましくは0〜70、及び
更に好ましくは0〜60
の範囲内のフッ素含有率を有する。
【0154】
当該ポリエチレンイミン誘導体は、
好ましくは300〜1000000、
より好ましくは300〜900000、及び
更に好ましくは300〜800000
の範囲内の重量平均分子量を有する。
【0155】
当該ポリエチレンイミン誘導体は、
好ましくは1〜100、より好ましくは1〜80、及び更に好ましくは1〜60
の範囲内の水酸基価を有し;
好ましくは1〜50、より好ましくは1〜40、及び更に好ましくは1〜30
の範囲内のアミン価を有し;
好ましくは0〜80、より好ましくは0〜70、及び更に好ましくは0〜60
の範囲内のフッ素含有率を有し、且つ
好ましくは300〜1000000、より好ましくは300〜900000、及び更に好ましくは300〜800000
の範囲内の重量平均分子量を有する。
【0156】
前記本発明の撥液剤の一態様は、当該本発明のポリエチレンイミン誘導体を含有する撥液剤であることができる。
【0157】
9.撥液剤キット
本発明はまた、
1)ポリエチレンイミン;及び
2)1個以上の置換基(当該置換基のうちの少なくとも1個は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)を有していてもよいオキシランを含有する
を含む撥液剤キットも提供する。
当該キットは、好ましくは、
前記ポリエチレンイミン1、及び前記オキシラン2を、互いに接触しない形態で含有する。
当該形態の例は、前記ポリエチレンイミン1、及び前記オキシラン2が、それぞれ別の容器に入れられた形態を包含する。
【0158】
当該キット、その製造方法、及びその使用方法は、前記の撥液剤、及び撥液膜についての説明、並びに本発明が属する技術分野の技術常識から理解される。
【実施例】
【0159】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0160】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
PEI:ポリエチレンイミン
【0161】
後記製造例1−1及び1−2で用いたエポキシ誘導体(Ex1)は、
【化5】
である。
後記製造例2−1及び2−2で用いたエポキシ誘導体(Ex2)は、
【化6】
である。
【0162】
製造例1−1 PEI−Ex1薄膜の作製1
数平均分子量0.75×10の分岐状ポリエチレンイミンの15wt%水溶液の0.1mlをガラス基板上にスピンコート(2500rpm、100sec)して、PEI薄膜を作製した。
PEI薄膜上にエポキシ誘導体のメタノール溶液(Ex1)の0.03mlを滴下して、その上にカバーガラスを被せた。
これを120℃で30分間加熱した。
室温に放置して、室温まで冷却した後、カバーガラスを外し、前記薄膜をTHFで洗浄し、及び減圧乾燥して、PEI−Ex1薄膜(膜厚:10nm以下)を得た。
【0163】
製造例1−2 PEI−Ex1薄膜の作製2
数平均分子量0.75×10の分岐状ポリエチレンイミンの15wt%水溶液とエポキシ誘導体のメタノール溶液(Ex1)を80℃で12時間反応させた。
エバポレーターを用いて溶媒を留去し、及び減圧乾燥してPEI−Ex1を得た。
当該PEI−Ex1をメタノール中に溶解させ、当該溶液(10wt%)の0.1mlをガラス基板上にスピンコートし(2500rpm、100sec)、PEI−Ex1薄膜を作製した。
前記薄膜をTHFで洗浄し、及び減圧乾燥して、PEI−Ex1薄膜(膜厚:10nm以下)を得た。
【0164】
製造例2−1 PEI−Ex2薄膜の作製1
数平均分子量0.75×10の分岐状ポリエチレンイミンの15wt%水溶液の0.1mlをガラス基板上にスピンコート(2500rpm、100sec)して、PEI薄膜を作製した。
PEI薄膜上にエポキシ誘導体のメタノール溶液(EX2)の0.03mlを滴下して、その上にカバーガラスを被せた。
これを120℃で30分間加熱した。
室温に放置して、室温まで冷却した後、カバーガラスを外し、前記薄膜をTHFで洗浄し、及び減圧乾燥して、PEI−Ex2薄膜(膜厚:10nm以下)を得た。
【0165】
製造例2−2 PEI−Ex2薄膜の作製2
数平均分子量0.75×10の分岐状ポリエチレンイミンの15wt%水溶液とエポキシ誘導体のメタノール溶液(Ex)を80℃で12時間反応させた。
エバポレーターを用いて溶媒を留去し、及び減圧乾燥してPEI−Ex2を得た。
当該PEI−Ex2をメタノール中に溶解させ、当該溶液(10wt%)の0.1mlをガラス基板上にスピンコートし(2500rpm、100sec)、PEI−Ex2薄膜を作製した。
前記薄膜をTHFで洗浄し、及び減圧乾燥して、PEI−Ex2薄膜(膜厚:10nm以下)を得た。
【0166】
製造例3
上記製造例1−1又は2−1の方法で、後記表1の「Reacted Ex」列に記載の各化合物を用いて、各薄膜を作成した。
【0167】
製造例4
上記製造例1−2又は2−2の方法で、後記表2の「Reacted Ex」列に記載の各化合物を用いて、各薄膜を作成した。
【0168】
試験例1 撥液試験
前記製造で作成した各PEI−Ex2薄膜について、以下の方法で撥液試験を実施した。結果を表1、及び表2に示した。
<条件>
装置:接触角計(株式会社エキシマ社製)
(設定条件)
温度:25℃
液滴
水:1.6μl
n−オクタン:1.6μl
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
試験例2 ガラス転移温度測定
前記実施例2−1で作成したPEI−Ex2薄膜について、示差走査熱量測定により、以下の条件で、ガラス転移温度を測定した。そのDSCサーモグラムを図1(上から、第1昇温、降温、及び第2昇温)に示した。
この結果により、PEI−Ex2薄膜の結晶性が高いことが示された。
<条件>
装置:メトラー・トレド DSC1
方法:熱流量法
(設定条件)
第1昇温速度:10℃/分
降温速度:10℃/分
第2昇温速度:10℃/分
【0172】
試験例3 FT−IRによる薄膜解析
前記実施例2−1で作成したPEI−Ex2薄膜について、以下の条件で、FT−IRによる薄膜解析を実施した。IRスペクトルを図2に示した。
この結果により、アミノ基及びヒドロキシ基の存在が示された。
<条件>
装置:SHIMADZU IRAffinity-1
方法:フィルム法
(設定条件)
400〜4000cm−1
分解能:4cm−1
【0173】
試験例4 H−NMRによる薄膜解析
前記実施例2−1で作成したPEI−Ex2薄膜について、以下の条件で、FT−IRによる薄膜解析を実施した。IRスペクトルを図3に示した。
この結果により、数種の異なる環境のH原子の存在が示された。
<条件>
装置:Bruker AV400(400MHz)
方法:重溶媒として、重メタノールを使用
図1
図2
図3