で表される含フッ素単量体、及び、これらと共重合可能な他の単量体からなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体単位のモル比が87/13〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であり、ガラス転移温度が25℃以下である非晶質の含フッ素エラストマーの架橋物からなる成形品を提供する。
エンジン、燃料電池もしくは二次電池の冷却系、または、化学品分野、薬品分野、食品機器分野もしくはエネルギー資源探索採掘機器部品分野で用いる機器の冷却系で用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の成形品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本開示の成形品は、冷却液に接触する表面が
ビニリデンフルオライド(VDF)、下記一般式(1):
CHX
a=CX
bRf (1)
(式中、X
aおよびX
bは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体、及び、これらと共重合可能な他の単量体からなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であり、ガラス転移温度が25℃以下である非晶質の含フッ素エラストマーの架橋物からなることを特徴とする。
【0014】
含フッ素エラストマーは、特定の構成を有することによって、極めて低いガラス転移温度を示す。また、上記一般式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位を含む含フッ素ポリマーは、耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性を有しており、高温で冷却液と長時間接触し続けてもクラックを生じにくい。また、架橋特性に優れており、製造が容易であるという利点もある。また、非晶質であることが好ましい。
「高温」とは例えば100℃以上を意味する。また、本開示において、「非晶質」とは、DSC測定(昇温温度10℃/分)において現れた融解ピーク(ΔH)の大きさが2.0J/g以下であることをいう。
【0015】
含フッ素エラストマーは、ガラス転移温度が25℃以下である。また、0℃以下とすることもできる。ガラス転移温度は、−5℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましい。更には−20℃以下とすることも可能である。含フッ素エラストマーは、このように極めて低いガラス転移温度を示すので、低温特性(耐寒性)にも優れる。ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(日立テクノサイエンス社製、X−DSC823e)を用い、−75℃まで冷却した後、試料10mgを20℃/分で昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点を示す温度をガラス転移温度とした。
【0016】
耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、高温で冷却液と長時間接触し続けてもより一層クラックを生じにくいことから、一般式(1)で表される含フッ素単量体は、Rfが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rfが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。本開示において、「フルオロアルキル基」は、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。また、本開示において、「パーフルオロアルキル基」は、水素原子の全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。Rfの炭素数は1〜6であることが好ましい。上記一般式(1)においては、X
aがHであり、X
bがFであることが好ましい。一般式(1)で表される含フッ素単量体としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CFCF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
2CF
3等があげられ、なかでも、CH
2=CFCF
3で示される2,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることが好ましい。
【0017】
含フッ素エラストマーは、更に、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体以外の他の単量体からなるものであってもよい。他の単量体としては、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、1種又は2種以上の単量体を使用してよい。
【0018】
他の単量体は、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、及び、架橋部位を与える単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、アルキルビニルエーテル、及び、架橋部位を与える単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。更に好ましくはTFEである。TFEのみであることも好ましい形態の一つである。
【0019】
含フッ素エラストマーにおいて、架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1CHR
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R
1は、水素原子または−CH
3、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式:
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
3
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
3は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、又は臭素原子である。)で表される単量体、一般式:
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
4
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
4は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は−CH
2OHである。)で表される単量体、があげられる。
【0020】
なかでも、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CH
2I、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CN、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOH、及び、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。架橋部位を与える単量体としては、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2Iが、パーオキサイドを用いた架橋において、架橋密度を向上させて、圧縮永久歪を良好にすることができるので、特に好ましい。その他、後述する共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体として例示される単量体も好適に使用できる。
【0021】
含フッ素エラストマーにおいては、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比は、85/15〜20/80が好ましい。ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比は、22/78以上が好ましく、50/50以上がより好ましく、60/40以上が更に好ましい。また、他の単量体単位は、全単量体単位の0〜50モル%であるが、0〜20モル%がより好ましい。
【0022】
含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド、一般式(1)で表される含フッ素単量体(1)及び他の単量体のみからなる共重合体であることが好ましい。
【0023】
含フッ素エラストマーは、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有するものであってもよく、ヨウ素原子を有するものであることが好ましい。その場合、ヨウ素原子及び臭素原子の含有量の合計は0.001〜10重量%が好ましい。
【0024】
耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、高温で冷却液と長時間接触し続けてもクラックを生じにくいことから、含フッ素エラストマーは、
ビニリデンフルオライド及び含フッ素単量体(1)のみからなり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が87/13〜22/78である共重合体(I)、
ビニリデンフルオライド、含フッ素単量体(1)、および、これらと共重合可能な他の単量体のみからなり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%である共重合体(II)、及び、
ビニリデンフルオライド、含フッ素単量体(1)、および、これらと共重合可能な他の単量体からなり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であり、ヨウ素原子または臭素原子を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である共重合体(III)、
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
共重合体(I)は、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体のみからなり、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が87/13〜20/80であるが、モル比としては、85/15〜22/78が好ましい。耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、高温で冷却液と長時間接触し続けてもクラックを生じにくいことから、共重合体(I)は、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜60/40が好ましい。
【0026】
共重合体(II)は、ビニリデンフルオライド、式(1)で表される含フッ素単量体、並びに、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体のみからなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%である。耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、高温で冷却液と長時間接触し続けてもクラックを生じにくいことから、共重合体(II)は、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜50/50が好まく、85/15〜60/40がより好ましい。
【0027】
耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、高温で冷却液と長時間接触し続けてもクラックを生じにくいことから、共重合体(II)は、他の単量体単位は、全単量体単位の1〜40モル%が好ましく、1〜20モル%がさらに好ましい。他の単量体としては、上述したものが好適である。
【0028】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド、下記一般式(1):
CHX
a=CX
bRf (1)
(式中、X
aおよびX
bは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体、並びに、ビニリデンフルオライド及び上記含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体からなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であり、ガラス転移温度が25℃以下であり、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である。
【0029】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド及び下記一般式(1):
CHX
a=CX
bRf (1)
(式中、X
aおよびX
bは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体のみからなる共重合体、又は、ビニリデンフルオライド、下記一般式(1):
CHX
a=CX
bRf (1)
(式中、X
aおよびX
bは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体、並びに、ビニリデンフルオライド及び上記含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体のみからなり、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である共重合体であることが好ましい。この場合、共重合体(III)は、実質的にビニリデンフルオライド、及び、式(1)で表される含フッ素単量体のみからなる共重合体、若しくは、実質的にビニリデンフルオライド、式(1)で表される含フッ素単量体、及び上記他の単量体のみからなり、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である共重合体であるが、本開示の効果を損なわない範囲で、反応性乳化剤を使用して製造したものであってもよい。また、連鎖移動剤に由来するヨウ素または臭素末端等を含んでいてもよい。
【0030】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド及び下記一般式(1):
CHX
a=CX
bRf (1)
(式中、X
aおよびX
bは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体のみからなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が80/20〜20/80であり、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%であることがより好ましい。
【0031】
共重合体(III)は、また、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜50/50であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であることも好ましい。
【0032】
各単量体単位の含有量は、NMR法により測定する値である。
【0033】
共重合体(III)は、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である。ヨウ素原子及び臭素原子の含有量の合計は、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。ヨウ素含有量の測定は、試料(含フッ素ポリマー)12mgにNa
2SO
3を5mg混ぜ、純水20mlにNa
2CO
3とK
2CO
3とを1対1(重量比)で混合したものを30mg溶解した吸収液を用い、石英製の燃焼フラスコ中、酸素中で燃焼させ、30分放置後、島津20Aイオンクロマトグラフを用い測定することができる。検量線はKI標準溶液、ヨウ素イオン0.5ppmを含むもの又は1.0ppmを含むものを用いることができる。
【0034】
ヨウ素原子及び臭素原子の結合位置は、共重合体(III)の主鎖の末端でも側鎖の末端でもよく、もちろん両者であってもよい。このような共重合体においては、当該ヨウ素末端又は臭素末端が架橋点(架橋部位)となり、架橋密度が高い、架橋した含フッ素ポリマーが得られる他、パーオキサイド架橋をより容易に行うことが可能になる。
【0035】
共重合体(III)は、架橋部位を与える単量体としてヨウ素または臭素含有単量体を使用しても良く、重合開始剤又は連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して製造することができる。
【0036】
共重合体(III)において、他の単量体は、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、1種又は2種以上の単量体を使用してよい。
【0037】
共重合体(III)において、他の単量体は、全単量体単位の0〜50モル%であることが好ましい。0〜40モル%であることがより好ましく、0〜20モル%であることがさらに好ましい。
【0038】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1CHR
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R
1は、水素原子または−CH
3、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体(好ましくは、一般式:CH
2=CH(CF
2)
nI(nは2〜8の整数である。)で表されるヨウ素含有単量体)、一般式:
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
3
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
3は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、又は臭素原子である。)で表される単量体、一般式:
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
4
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
4は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子又は−CH
2OHである。)で表される単量体、一般式:
CR
2R
3=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Zは、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数3〜18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1〜10のアルキレン基若しくはオキシアルキレン基、又は、
−(Q)
p−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
n−CF
2−(Q)
p−
(式中、Qはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2〜5である。)で表され、分子量が500〜10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表される単量体等が挙げられる。
【0039】
上記一般式:
CR
2R
3=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
で表される化合物としては、例えば、CH
2=CH−(CF
2)
2−CH=CH
2、CH
2=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2、CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2、下記式:
CH
2=CH−Z
1−CH=CH
2
(式中、Z
1は、−CH
2OCH
2−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m1(CF
2O)
n1−CF
2−CH
2OCH
2−で表されるフルオロポリオキシアルキレン基であり、m1/n1は0.5であり、分子量は2000である。)で表される単量体等が挙げられる。
【0040】
架橋部位を与える単量体としては、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CN、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOH、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CH
2OH、及び、CH
2=CHCF
2CF
2I、CH
2=CH(CF
2)
2CH=CH
2からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい形態の一つである。上記架橋部位を与える単量体としては、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2Iが、パーオキサイドを用いた架橋において、架橋密度を向上させて、圧縮永久歪を良好にすることができるので、特に好ましい。
【0041】
架橋部位を与える単量体としてはまた、たとえば、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1CHR
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R
1は、水素原子または−CH
3、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体(好ましくはCH
2=CH(CF
2)
nI(nは2〜8の整数である)で表されるヨウ素含有単量体)、一般式:
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
5
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
5はヨウ素原子または臭素原子である)
で表される単量体、及び、一般式:
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
5
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
5はヨウ素原子または臭素原子である)
で表される単量体、からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることも好ましい形態の一つである。このようなヨウ素または臭素含有単量体を上記他の単量体として使用することによって、共重合体(III)を製造することもできる。
【0042】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体は、全単量体単位の0.01〜10モル%であることが好ましく、0.01〜2モル%であることがより好ましい。
【0043】
耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れることから、含フッ素エラストマーは共重合体(III)であることが更に好ましい。
【0044】
含フッ素エラストマーは、耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、高温で冷却液と長時間接触し続けてもより一層クラックを生じにくいことから、数平均分子量(Mn)が7000〜500000であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が10000〜1000000であることが好ましく、Mw/Mnが1.3〜4.0であることが好ましく、1.4〜3.9であることがさらに好ましい。上記数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、Mw/Mnは、GPC法により測定する値である。
【0045】
含フッ素エラストマーは、成形加工性が良好である点から、100℃におけるムーニー粘度(ML1+10(100℃))は2以上が好ましく、5以上がより好ましい。また、同様に成形加工性が良好であるという点から、200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定した値である。
【0046】
含フッ素エラストマーは、従来公知の方法で製造できる。
【0047】
本開示の成形品は、含フッ素エラストマーの架橋物からなる。
【0048】
本開示の成形品において、上記架橋物は、好ましくは、上記含フッ素エラストマーと架橋剤とを含む架橋性組成物を架橋して得られる。
【0049】
架橋剤としては、ポリアミン架橋、ポリオール架橋及びパーオキサイド架橋で通常使用される架橋剤であれば特に限定されないが、ポリアミン化合物、ポリヒドロキシ化合物及び有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、有機過酸化物であることがより好ましい。
【0050】
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどがあげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0051】
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0052】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、含フッ素ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0053】
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0054】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7―ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、DBU−Bが好ましい。
【0055】
第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0056】
架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0057】
架橋促進剤の配合量は特に限定されないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜8質量部が好ましく、0.02〜5質量部がより好ましい。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素ポリマーの架橋が充分に進行せず、得られる成形品の耐薬品性、耐油性、耐熱性が低下する傾向があり、8質量部をこえると、架橋性組成物の成形加工性が低下する傾向がある。
【0058】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0059】
架橋剤が有機過酸化物である場合、架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0060】
架橋助剤の配合量は特に限定されないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10質量部をこえると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、成形品の圧縮永久歪も低下する傾向がある。
【0061】
また、上記架橋性組成物は、必要に応じて含フッ素エラストマー組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤(カーボンブラック、硫酸バリウム等)、受酸剤、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤、架橋促進剤を1種またはそれ以上配合してもよい。カーボンブラックなどの充填剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して0〜150質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましく、2〜50質量部であることが更に好ましい。また、ワックス等の加工助剤の含有量としては、パーオキサイド架橋可能な含フッ素エラストマー100質量部に対して0〜10質量部であることが好ましい。
【0062】
含フッ素エラストマーまたは架橋性組成物の架橋および成形は、従来公知の方法で行うことができる。
【0063】
本開示の架橋物からなる成形品は、従来公知の方法で上記含フッ素エラストマーまたは架橋性組成物を架橋および成形することにより製造できる。
【0064】
本開示の成形品は、冷却液に接触する表面を有している。本開示の成形品においては、冷却液に接触する表面の少なくとも一部が上記含フッ素エラストマーの架橋物からなることが必要であり、冷却液に接触する表面の全てが上記含フッ素エラストマーの架橋物からなることが好ましい。
【0065】
本開示の成形品は、冷却液に接触する表面が、100℃以上の冷却液と長時間接触しても、クラックが発生しにくい。また、冷却液に接触する表面の温度が100℃以上になっても、あるいは、成形品全体の温度が100℃以上となった状態で、冷却液と長時間接触しても、クラックが発生しにくい。そのため、100℃以上の冷却液と長時間接触したり、成形品の表面あるいは成形品全体が加熱されて100℃以上となった状態で冷却液、特に100℃以上の冷却液と長時間接触したりする用途に有用である。例えば、高温になる自動車等のエンジンルームや、燃料電池、二次電池、あるいは、化学品分野、薬品分野、食品機器分野、エネルギー資源探索採掘機器部品分野で用いる機器などにおいて利用できる。
【0066】
本開示の成形品は、上記含フッ素エラストマーの架橋物からなる表面を、冷却液に接触させて使用する。
【0067】
上記冷却液としては、高温で長時間接触させたときに、従来のフッ素ゴム(FKM)にクラックを生じさせる成分が含まれているものを好適に用いることができる。
上記クラックを生じさせる成分としては、アルコール類、界面活性剤、防錆剤を挙げることができる。
【0068】
上記アルコール類としては、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール、グリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0069】
一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0070】
二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0071】
三価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、5−メチル−1,2,4−ヘプタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0072】
グリコールモノアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0073】
上記界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記防錆剤としては、リン酸及び/又はその塩、脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、芳香族カルボン酸及び/又はその塩、トリアゾール類、チアゾール類、ケイ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、モリブテン酸塩、及びアミン塩のいずれか1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0075】
冷却液は、上記成分とは別に、水またはその他の有機溶媒を含んでいてもよい。また、冷却液は、水またはアルコール類等の有機溶媒を含むことが好ましく、水およびアルコール類を含むことがより好ましい。冷却液は、たとえば、水を40〜80重量%の範囲で含むことができ、アルコール類を20〜60重量%の範囲で含むことができる。アルコール類としては、例示したもののなかでも、エチレングリコールが特に好ましい。
【0076】
冷却液の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。
【0077】
本開示の成形品としては、冷却液に接触させながら使用するものであれば特に限定されないが、冷却液と180℃で1008時間接触し続けてもクラックを生じにくいため、例えばエンジンや燃料電池、二次電池の冷却系、あるいは、化学プラント等の化学品分野、化学プラント等の薬品分野、食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野、石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野で用いる機器の冷却系などに好適に使用することができる。
【0078】
本開示の成形品の使用形態としては、例えば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシール等の各種シール材やパッキンなどが挙げられる。
また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料などとしても使用できる。
なお、上記リング、パッキン、シールの断面形状は、種々の形状のものであってよく、具体的には、例えば、四角、O字、ヘルールなどの形状であってもよいし、D字、L字、T字、V字、X字、Y字などの異形状であってもよい。
【0079】
特に自動車エンジンの冷却系においては、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットや、ラジエータ周辺のウォーターホース、ラジエータのシール、ラジエータのガスケット、ラジエータのO−リング、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホース、ウォーターポンプのシール、ウォーターポンプのO−リング、ウォーターポンプのベローズ、ラジエーターホース、ラジエータータンク、オイルプレッシャー用ダイアフラム、ファンカップリングシール、サーモスタットのガスケット、サーモスタットのO−リング、リザーバータンクのパッキンなどに用いることができる。
特に燃料電池の冷却系においては、セパレータのシール、セパレータのガスケット、セパレータのO−リング、ラジエータのシール、ラジエータのガスケット、ラジエータのO−リング、配管、継手、バルブ、イオン交換器のシール、イオン交換器のガスケット、イオン交換器のO−リング、ポンプなどに用いることができる。
【0080】
なお、本開示の成形品の自動車関連部品用途については、同様の構造の自動二輪車の部品用途、作業車両用途も含まれる。
【0081】
上記化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野においては、例えば、医薬品、農薬、塗料、樹脂等の化学品を製造する工程に用いる機器の冷却系において、ホース、シール、ガスケット、O−リング、ベローズ、タンク、ダイアフラム、パッキンなどとして用いることができる。
上記化学品分野及び薬品分野で用いる機器としては、熱交換器、攪拌機等の化学装置、化学薬品用ポンプや流量計、化学薬品用配管、農薬散布機、農薬移送ポンプ、ガス配管、燃料電池、分析機器や理化学機器(例えば、分析機器や計器類)、排煙脱硫装置、硝酸プラント、発電所タービン、ケミカルポンプ、高温真空乾燥機、硫酸製造装置、ダイアフラムポンプ、排煙脱硫プラントなどが挙げられる。
【0082】
上記食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野においては、食品製造工程や、食品移送器用または食品貯蔵器用に用いる機器の冷却系において、ホース、シール、ガスケット、O−リング、ベローズ、タンク、ダイアフラム、パッキンなどとして用いることができる。
上記食品機器分野で用いる機器としては、熱交換器、プレート式熱交換器、自動販売機、ジャーポット、湯沸器、食品加工処理装置、酒類、清涼飲料水等の充填装置、食品殺菌装置、醸造装置、各種自動食品販売機などが挙げられる。
【0083】
上記石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野においては、石油、天然ガス等の採掘の際に用いられる機器の冷却系において、ホース、シール、ガスケット、O−リング、ベローズ、タンク、ダイアフラム、パッキンなどとして用いることができる。
上記エネルギー資源探索採掘機器部品分野で用いる機器としては、熱交換器、ドリル、水平掘削モーター、暴噴防止装置(BOP)、回転暴噴防止装置、MWD(リアルタイム掘削情報探知システム)、検層装置、セメンチング装置、パーフォレーター(穿孔装置)、マッドポンプ、水圧破砕装置、LWD(掘削中検層)などが挙げられる。
【0084】
また、本開示の成形品は、種々の分野において各種部品として使用することもできる。そこで次に、本開示の成形品の用途について説明する。
【0085】
本開示の成形品は、金属、ゴム、プラスチック、ガラスなどの表面改質材;メタルガスケット、オイルシールなど、耐熱性、耐薬品性、耐油性、非粘着性が要求されるシール材および被覆材;OA機器用ロール、OA機器用ベルトなどの非粘着被覆材、またはブリードバリヤー;織布製シートおよびベルトへの含浸、焼付による塗布などに用いることができる。
本開示の成形品は、高粘度、高濃度にすることによって、通常の用法により複雑な形状のシール材、ライニング、シーラントとして用いることができ、低粘度にすることによって、数ミクロンの薄膜フィルムの形成に用いることができ、また中粘度にすることによりプレコートメタル、O−リング、ダイアフラム、リードバルブの塗布に用いることができる。
さらに、織布や紙葉の搬送ロールまたはベルト、印刷用ベルト、耐薬品性チューブ、薬栓、ヒューエルホースなどの塗布にも用いることができる。
【0086】
本開示の成形品は、被覆材としても使用でき、被覆する対象としては鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、炭素鋼、真鍮などの金属類;ガラス板、ガラス繊維の織布及び不織布などのガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどの汎用および耐熱性樹脂の成形品および被覆物;SBR、ブチルゴム、NBR、EPDMなどの汎用ゴム、およびシリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性ゴムの成形品および被覆物;天然繊維および合成繊維の織布および不織布;などを使用することができる。
【0087】
本開示の成形品は、高温で冷却液と長時間接触し続けてもクラックを生じにくいため、シリコーンラバー、ニトリルラバー、および他のエラストマーの被覆に有用である。本開示の成形品は、ホースおよびチューブと別の部品との接続部および結合部におけるシーリング部材としても使用できる。上記成形品はさらに、多層ホースのような多層ラバー構造における、製造欠陥(および使用に起因する損傷)の補修においても有用である。
上記成形品は、塗料が塗布される前または後に、形成され、またはエンボス加工され得る薄鋼板の被覆にも有用である。例えば、被覆された鋼の多数の層は組み立てられて、2つの剛性金属部材の間にガスケットを作ることもできる。
【0088】
本開示の成形品は、その他、コーティング剤;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にディスペンサー成形してなる基材一体型ガスケット、パッキン類;金属、セラミック等の無機材料を含む基材にコーティングしてなる複層品などとしても使用することができる。
【0089】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0090】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
含フッ素エラストマー(1):VDF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン=77/23モル%、ガラス転移温度−13℃、ヨウ素含有量0.12重量%
含フッ素エラストマー(2):VDF/HFP/TFE=50/30/20モル%、ガラス転移温度−5℃、ヨウ素含有量0.23重量%
含フッ素エラストマー(3):VDF/HFP/TFE=61/18/21モル%のプレコンパウンド(ポリオール架橋)、ガラス転移温度−15℃
カーボンブラック:Thermax N990(Can Carb社製)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
パーヘキサ25B:(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製)
酸化マグネシウム:MA150(協和化学工業社製)
水酸化カルシウム:NICC5000(井上石灰工業社製)
【0092】
冷却液(1):TOYOTA SUPER LONG LIFE COOLANT (0888901005) (トヨタ自動車社製)
冷却液(2):PITWORK LLC長寿命タイプ スーパーロングライフクーラント KQ301−34002(日産自動車社製)
【0093】
実施例1および比較例1
表1および表2に示した各成分を表1および表2に記載した配合量で配合し、8インチオープンロールを用いて通常の方法で混練し、含フッ素エラストマー組成物を調製した。得られた含フッ素ゴムエラストマー組成物をプレス架橋成形して一次架橋を行い、その後、熱オーブンを用いて、二次架橋を行った。一次架橋の条件は、160℃、10分、二次架橋の条件は、180℃、4時間とした。得られた成形品を用いて以下の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0094】
比較例2
表1および表2に示した各成分を表1および表2に記載した配合量で配合し、8インチオープンロールを用いて通常の方法で混練し、含フッ素エラストマー組成物を調製した。得られた含フッ素ゴムエラストマー組成物をプレス架橋成形して一次架橋を行い、その後、熱オーブンを用いて、二次架橋を行った。一次架橋の条件は、170℃、10分、二次架橋の条件は、230℃、24時間とした。得られた成形品を用いて以下の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0095】
<引張物性>
JIS K6251に準じて、100%モデュラス(M100)、引張破断強度(Tb)および引張破断伸び(Eb)を測定した。
【0096】
<硬度(Hs〔Shore A〕)>
JIS K6253に準じ、デュロメータ タイプAにて測定した(ピーク値および3秒後の値)。
【0097】
<冷却液浸漬試験>
冷却液(1)および(2)の水溶液(冷却液:水=50:50(体積%))を用いて、180℃で表1および表2に記載の浸漬時間の浸漬試験を行った。試験片としてはJIS6号ダンベルを用いて、浸漬試験後の100%モデュラス(M100)、引張破断強度(Tb)、引張破断伸び(Eb)、硬度(Hs〔Shore A〕)、体積膨潤率(ΔV)を測定し、浸漬前の値に対する変化率を求めた。ΔVは、試料片を所定の条件で浸漬した後の体積の変化率(膨潤の程度を表す。)であり、試料片の元の体積をVo、試験後の体積をVとしたとき、ΔV=(V−Vo)/Vo×100で表される。体積は空気中の重さと、水中での重さから計算する。また、外観を観察しクラックが生じているかを確認した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
エンジン、燃料電池もしくは二次電池の冷却系、または、化学品分野、薬品分野、食品機器分野もしくはエネルギー資源探索採掘機器部品分野で用いる機器の冷却系で用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の成形品。