【解決手段】銅または銅合金を含む配管本体と、配管本体の外表面に形成された防錆膜と、を備え、防錆膜は、(A)有機スルホネート化合物、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物、および、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の防錆剤が配合された塗布剤を配管本体の外表面に塗布して得られ、塗布剤が(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物の防錆剤を含む場合には、塗布剤には(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が2.0重量%以上10.0重量%以下含まれている、冷媒配管。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該特許文献1に記載の冷媒配管のように、防錆膜を外表面に形成して腐食を抑制することが提案されているが、銅を含む配管の腐食を抑制することが可能な物質であって、特許文献1に記載のベンゾトリアゾール系化合物以外の物質については、これまでなんら検討されていない。
【0006】
本開示の課題は、上述した点に鑑みてなされたものであり、銅を含む冷媒配管において腐食を抑制することが可能な冷媒配管、熱交換器および冷媒配管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点に係る冷媒配管は、銅または銅合金を含む配管本体と、配管本体の外表面に形成された防錆膜と、を備えている。防錆膜は、(A)有機スルホネート化合物、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物、および、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物、からなる群より選ばれる1種または2種以上の防錆剤を含んでいる。防錆膜が(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物の防錆剤を含む場合には、防錆膜には(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1平方センチメートル当たり1.5μg以上200.0μg以下含んでいる。
【0008】
この冷媒配管では、腐食を抑制することが可能になる。
【0009】
第2観点に係る冷媒配管は、第1観点に係る冷媒配管であって、防錆膜は、(A)有機スルホネート化合物を1平方センチメートル当たり0.1μg以上200.0μg以下含んでいるか、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物を1平方センチメートル当たり0.1μg以上200.0μg以下(ただし、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量以上含んでいるものを除く。)含んでいるか、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1平方センチメートル当たり1.5μg以上200.0μg以下(ただし、多価アルコールの有機酸エステル化合物を(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量以上含んでいるものを除く。)含んでいるか、の少なくともいずれかである。
【0010】
この冷媒配管では、酸による腐食を抑制することが可能になる。
【0011】
第3観点に係る冷媒配管は、第1観点に係る冷媒配管であって、防錆膜は、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物を1平方センチメートル当たり0.1μg以上200.0μg以下(ただし、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量以上含んでいるものを除く。)含んでいるか、または、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1平方センチメートル当たり1.5μg以上200.0μg以下(ただし、多価アルコールの有機酸エステル化合物を(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量以上含んでいるものを除く。)含んでいる。防錆膜は、さらに、(D)下記式(I)で表されるコハク酸無水物誘導体を含んでいる。
【0012】
この冷媒配管では、酸による腐食を抑制することが可能になる。
【0013】
第4観点に係る冷媒配管は、銅または銅合金を含む配管本体と、配管本体の外表面に形成された防錆膜と、を備えている。防錆膜は、(A)有機スルホネート化合物、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物、および、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物、からなる群より選ばれる1種または2種以上の防錆剤が配合された塗布剤を配管本体の外表面に塗布して得られる。なお、塗布剤が(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物の防錆剤を含む場合には、塗布剤には(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が1.5重量%以上10.0重量%以下含まれている。
【0014】
この冷媒配管では、腐食を抑制することが可能になる。
【0015】
第5観点に係る冷媒配管は、第4観点に係る冷媒配管であって、塗布剤は、(A)有機スルホネート化合物を0.1重量%以上8.0重量%以下含んでいるか、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物を0.1重量%以上10.0重量%以下(ただし、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいるか、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1.5重量%以上10.0重量%以下(ただし、多価アルコールの有機酸エステル化合物を(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいるか、の少なくともいずれかである。
【0016】
この冷媒配管では、酸による腐食を抑制することが可能になる。
【0017】
第6観点に係る冷媒配管は、第4観点または第5観点のいずれかに係る冷媒配管であって、防錆膜は、塗布された塗布剤を、塗布剤の表面温度が60℃以上200℃以下である条件下で乾燥させることで得られる。
【0018】
この冷媒配管では、防錆膜の配管本体への定着性を高めることができる。
【0019】
第7観点に係る冷媒配管は、第4観点から第6観点のいずれかに係る冷媒配管であって、塗布剤は、揮発性の金属加工油を含んでいる。
【0020】
この冷媒配管では、塗布剤に揮発性の金属加工油が含まれているため、防錆剤のみを塗布する場合と比べて塗膜の均一性を高めやすい。
【0021】
第8観点に係る冷媒配管は、第4観点から第7観点のいずれかに係る冷媒配管であって、塗布剤は、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物を0.1重量%以上10.0重量%以下(ただし、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいるか、または、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1.5重量%以上10.0重量%以下(ただし、多価アルコールの有機酸エステル化合物を(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいる。塗布剤は、さらに、(D)下記式(I)で表されるコハク酸無水物誘導体を含んでいる。
【化1】
[上記式(I)中、Rは炭素数8以上24以下である直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0022】
この冷媒配管では、酸による腐食を抑制することが可能になる。
【0023】
第9観点に係る冷媒配管は、第1観点から第8観点のいずれかに係る冷媒配管であって、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物が、下記式(II)で表されるグリセリン脂肪酸エステルである。
式(II):R−COOCH
2−CH(OH)−CH
2OH
[上記式(II)中、Rは炭素数11以上29以下の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0024】
この冷媒配管では、酸による腐食を十分に抑制することが可能になる。
【0025】
第10観点に係る冷媒配管は、第9観点に係る冷媒配管であって、グリセリン脂肪酸エステルが、オレイン酸モノグリセリルである。
【0026】
この冷媒配管では、酸による腐食をより十分に抑制することが可能になる。
【0027】
第11観点に係る冷媒配管は、第1観点から第10観点のいずれかに係る冷媒配管であって、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が、オレイルアミンである。
【0028】
この冷媒配管では、酸による腐食を十分に抑制することが可能になる。
【0029】
第12観点に係る冷媒配管は、第1観点から第11観点のいずれかに係る冷媒配管であって、防錆剤が、(A)有機スルホネート化合物を含んでいる。(A)有機スルホネート化合物が、下記式(III)で表される合成スルホネート化合物および/または下記式(IV)で表される合成スルホネート化合物である。
【化2】
[上記式(III)中、R1〜R7はそれぞれ独立して水素、または炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を表し(ただし、R1〜R7全てが水素の場合を除く)、MはCaまたはZnを表す。]
【化3】
[上記式(IV)中、R1〜R7はそれぞれ独立して水素、または炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を表し(ただし、R1〜R7全てが水素の場合を除く)、MはCaまたはZnを表す。]
【0030】
この冷媒配管では、酸による腐食を十分に抑制することが可能になる。
【0031】
第13観点に係る冷媒配管は、第12観点に係る冷媒配管であって、(A)有機スルホネート化合物が、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩である。
【0032】
この冷媒配管では、酸による腐食をより十分に抑制することが可能になる。
【0033】
第14観点に係る熱交換器は、第1観点から第13観点のいずれかに係る冷媒配管である伝熱管と、伝熱管に対して固定される伝熱フィンと、を有している。
【0034】
この熱交換器では、伝熱管の腐食が抑制されるため、冷凍装置における冷媒回路の一部として用いられた場合に比較的多くの冷媒が集まりがちである熱交換器からの冷媒の漏洩を抑制することが可能になる。
【0035】
第15観点に係る熱交換器は、第14観点に係る熱交換器であって、伝熱フィンは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されている。伝熱フィンの外表面には、防錆剤が存在しない。
【0036】
この熱交換器では、伝熱フィンの外表面における撥水性を小さく抑えることで、伝熱フィンの表面から結露水が飛散してしまうことを抑制できる。
【0037】
第16観点に係る冷媒配管の製造方法は、銅または銅合金を含む配管本体を用意する工程と、(A)有機スルホネート化合物、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物、および、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の防錆剤が配合された塗布剤を配管本体の外表面に塗布して防錆膜を形成する工程と、を備えている。塗布剤が(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物の防錆剤を含む場合には、塗布剤には(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が1.5重量%以上10.0重量%以下含まれている。
【0038】
この冷媒配管の製造方法によれば、得られる冷媒配管の腐食を抑制することが可能になる。
【0039】
第17観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点に係る冷媒配管の製造方法であって、塗布剤は、(A)有機スルホネート化合物を0.1重量%以上8.0重量%以下含んでいるか、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物を0.1重量%以上10.0重量%以下(ただし、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいるか、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1.5重量%以上10.0重量%以下(ただし、多価アルコールの有機酸エステル化合物を(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいるか、の少なくともいずれかである。
【0040】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食を抑制することが可能になる。
【0041】
第18観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点または第17観点に係る冷媒配管の製造方法であって、塗布剤は、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物を0.1重量%以上10.0重量%以下(ただし、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいるか、または、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を1.5重量%以上10.0重量%以下(ただし、多価アルコールの有機酸エステル化合物を(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量以上含んでいるものを除く)含んでいる。塗布剤は、さらに、(D)下記式(I)で表されるコハク酸無水物誘導体を含んでいる。
【化4】
[上記式(I)中、Rは炭素数8以上24以下である直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0042】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食を抑制することが可能になる。
【0043】
第19観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点から第18観点のいずれかに係る冷媒配管の製造方法であって、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物が、下記式(II)で表されるグリセリン脂肪酸エステルである。
式(II):R−COOCH
2−CH(OH)−CH
2OH
[上記式(II)中、Rは炭素数11以上29以下の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0044】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食を十分に抑制することが可能になる。
【0045】
第20観点に係る冷媒配管の製造方法は、第19観点に係る冷媒配管の製造方法であって、グリセリン脂肪酸エステルが、オレイン酸モノグリセリルである。
【0046】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食をより十分に抑制することが可能になる。
【0047】
第21観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点から第20観点のいずれかに係る冷媒配管の製造方法であって、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が、オレイルアミンである。
【0048】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食を十分に抑制することが可能になる。
【0049】
第22観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点から第21観点のいずれかに係る冷媒配管の製造方法であって、防錆剤が、(A)有機スルホネート化合物を含んでいる。(A)有機スルホネート化合物が、下記式(III)で表される合成スルホネート化合物および/または下記式(IV)で表される合成スルホネート化合物である。
【化5】
[上記式(III)中、R1〜R7はそれぞれ独立して水素、または炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を表し(ただし、R1〜R7全てが水素の場合を除く)、MはCaまたはZnを表す。]
【化6】
[上記式(IV)中、R1〜R7はそれぞれ独立して水素、または炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を表し(ただし、R1〜R7全てが水素の場合を除く)、MはCaまたはZnを表す。]
【0050】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食を十分に抑制することが可能になる。
【0051】
第23観点に係る冷媒配管の製造方法は、第22観点に係る冷媒配管の製造方法であって、(A)有機スルホネート化合物が、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩である。
【0052】
この冷媒配管の製造方法では、得られる冷媒配管の酸による腐食をより十分に抑制することが可能になる。
【0053】
第24観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点から第23観点のいずれかに係る冷媒配管の製造方法であって、防錆膜は、塗布された塗布剤を、塗布剤の表面温度が60℃以上200℃以下である条件下で乾燥させることで形成される。
【0054】
この冷媒配管の製造方法では、防錆膜を配管本体に定着させやすくなる。
【0055】
第25観点に係る冷媒配管の製造方法は、第16観点から第24観点のいずれかに係る冷媒配管の製造方法であって、塗布剤は、揮発性の金属加工油を含んでいる。
【0056】
この冷媒配管の製造方法では、塗布剤に揮発性の金属加工油が含まれているため、防錆剤のみを塗布する場合と比べて均一に塗布しやすい。
【0057】
第26観点に係る冷媒配管の製造方法は、第25観点に係る冷媒配管の製造方法であって、塗布剤が塗布された冷媒配管を180度折り曲げる工程を更に備えている。
【0058】
この冷媒配管の製造方法では、冷媒配管に金属加工油が塗布されているため、折り返して冷媒を流すための冷媒流路を形成するための加工が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、冷媒配管、冷媒配管の製造方法、熱交換器の一実施形態を例に挙げて説明する。
【0061】
(1)冷媒配管
冷媒配管は、配管本体と、防錆膜と、を有している。
【0062】
(2)配管本体
配管本体は、円筒形状の配管であり、銅または銅合金によって構成されている。銅または銅合金の例としては、例えば、純銅、黄銅、青銅等が挙げられる。ここで、銅合金としては、銅が最も多い構成成分となっている合金が好ましい。
【0063】
(3)防錆膜
防錆膜は、塗布剤を配管本体の外表面に塗布することで形成される。
【0064】
ここで、防錆膜としては、配管本体の外表面に塗布された塗布剤を乾燥させることで得られるものであることが好ましい。乾燥の手法としては、防錆膜を配管本体に十分に定着させる観点から、表面温度が60℃以上200℃以下となるような加熱乾燥であることが好ましく、130℃以上180℃以下となるような加熱乾燥であってもよい。
【0065】
塗布剤は、金属加工油に対して、以下に述べる防錆剤を溶解させることで得られる。なお、金属加工油に対して防錆剤を溶解させる手法は、特に限定されないが、例えば、マグネチックスターラー等を用いて攪拌させることで分散させてもよい。
【0066】
防錆剤は、(A)有機スルホネート化合物、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物、および、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上である。
【0067】
(3−1)(A)有機スルホネート化合物
有機スルホネート化合物を防錆剤として用いることで、配管本体の腐食を抑制することが可能になる。
【0068】
有機スルホネート化合物としては、下記式(III)で表される合成スルホネート化合物および/または下記式(IV)で表される合成スルホネート化合物であることが好ましい。
【化7】
[上記式(III)中、R1〜R7はそれぞれ独立して水素、または炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を表し(ただし、R1〜R7全てが水素の場合を除く)、MはCaまたはZnを表す。]
【化8】
[上記式(IV)中、R1〜R7はそれぞれ独立して水素、または炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を表し(ただし、R1〜R7全てが水素の場合を除く)、MはCaまたはZnを表す。]
【0069】
以上の合成スルホネート化合物によれば、得られる塗膜から粉体となって飛散してしまうことも抑制でき、得られる塗膜の臭気を小さく抑えることが可能になる。
【0070】
なお、上記式(III)および式(IV)に係る合成スルホネート化合物では、R1〜R7全てが水素の場合が除かれているため、後述する金属加工油への溶解性を良好とすることが可能になっている。
【0071】
なかでも、合成スルホネート化合物として、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩を含むことが好ましい。
【0072】
防錆剤は、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩のみから構成されていてもよい。
【0073】
以上の有機スルホネート化合物は、配管本体の外表面に形成される防錆膜中において、1平方センチメートル当たり0.1μg以上200.0μg以下含んでいることが好ましく、1.0μg以上100.0μg以下含んでいることがより好ましく、1.0μg以上10.0μg以下含んでいることがさらに好ましい。
【0074】
また、以上の有機スルホネート化合物は、配管本体の外表面に塗布して防錆膜を形成させるための塗布剤中において、0.1重量%以上15.0重量%以下含まれていてもよく、0.1重量%以上8.0重量%以下含まれていることが好ましく、0.2重量%以上5.0重量%以下含まれていることがより好ましく、0.5重量%以上3.0重量%以下含まれていることがさらに好ましい。これらの範囲では、用いる有機スルホネート化合物の量を低く抑えながらも十分な防錆効果を得ることが可能となる。
【0075】
なお、冷媒配管の外表面を構成する防錆膜中に有機スルホネート化合物が存在することは、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いた分析により確認することができる。
【0076】
(3−2)(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物
多価アルコールの有機酸エステル化合物を防錆剤として用いることで、配管本体の腐食を抑制することが可能になる。
【0077】
多価アルコールの有機酸エステル化合物としては、下記式(II)で表されるグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
式(II):R−COOCH
2−CH(OH)−CH
2OH
[上記式(II)中、Rは炭素数11以上29以下の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0078】
以上の多価アルコールの有機酸エステル化合物によれば、後述する金属加工油への溶解性を良好とすることが可能になるとともに、得られる塗膜から粉体となって飛散してしまうことも抑制でき、得られる塗膜の臭気を小さく抑えることが可能になる。
【0079】
なかでも、多価アルコールの有機酸エステル化合物として、オレイン酸モノグリセリルを含むことが好ましい。
【0080】
防錆剤は、オレイン酸モノグリセリルのみから構成されていてもよい。
【0081】
以上の多価アルコールの有機酸エステル化合物は、配管本体の外表面に形成される防錆膜中において、1平方センチメートル当たり0.1μg以上200.0μg以下含んでいることが好ましく、1.0μg以上150.0μg以下含んでいることがより好ましく、10.0μg以上100.0μg以下含んでいることがさらに好ましい。
【0082】
また、以上の多価アルコールの有機酸エステル化合物は、配管本体の外表面に塗布して防錆膜を形成させるための塗布剤中において、0.1重量%以上10.0重量%以下含まれていることが好ましく、0.2重量%以上8.0重量%以下含まれていることがより好ましく、1.0重量%以上5.0重量%以下含まれていることがさらに好ましい。
【0083】
なお、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いた分析によれば、防錆膜中に存在する多価アルコールの有機酸エステル化合物は、対応する有機酸となって検出される。例えば、オレイン酸モノグリセリル(C
21H
40O
4)の場合は、オレイン酸(C
18H
33O
2−)となって検出される。
【0084】
なお、防錆剤として多価アルコールの有機酸エステル化合物が配合された塗布剤を用いる場合には、防錆効果を高めるために、さらに防錆剤として(D)下記式(I)で表されるコハク酸無水物誘導体を配合させていることが好ましい。
【化9】
[上記式(I)中、Rは炭素数8以上24以下である直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0085】
ここで、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と上記(D)コハク酸無水物誘導体とを併用させる場合には、塗布剤中(防錆膜中も同様)における両者の配合量の比率が1:4〜4:1の範囲内であることが好ましく、1:2〜2:1の範囲内であることがより好ましい。なお、当該併用の際には、塗布剤中に(D)コハク酸無水物誘導体が、1.0重量%以上10.0重量%以下含まれていることが好ましく、2.0重量%以上8.0重量%以下含まれていることが好ましい。
【0086】
なお、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いた分析によれば、防錆膜中に存在する(D)コハク酸無水物誘導体は、対応するコハク酸誘導体となって検出される。例えば、オクタデセニルコハク酸無水物(C
22H
38O
3)の場合は、オクタデセニルコハク酸(C
22H
39O
4−)となって検出される。
【0087】
また、防錆剤として(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物が配合された塗布剤を用いる場合には、防錆効果を高めるために、塗布剤中に(防錆膜中も同様)、後述する(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が配合されたとしても、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物と同じ量未満であることが好ましく、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物の半分以下であることがより好ましく、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物の1/5以下であることがさらに好ましく、配合されていないことが特に好ましい。
【0088】
また、配管本体の外表面に塗布して防錆剤を形成させるための塗布剤中において、以上の(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物は、上述の(A)有機スルホネート化合物と共に配合されていることが好ましく、なかでも、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルと(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩とが共に配合されていることが好ましい。
【0089】
(3−3)(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物
炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を用いる場合には、配管本体の外表面に塗布して防錆膜を形成させるための塗布剤中において1.5重量%以上10.0重量%以下配合させることで、または、防錆膜中に1平方センチメートル当たり1.5μg以上200.0μg以下含ませることで、配管本体の腐食を抑制することが可能になる。
【0090】
以上の炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物によれば、後述する金属加工油への溶解性を良好とすることが可能になるとともに、得られる塗膜から粉体となって飛散してしまうことも抑制でき、得られる塗膜の臭気を小さく抑えることが可能になる。
【0091】
なかでも、炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物として、オレイルアミンを含むことが好ましい。
【0092】
防錆剤は、オレイルアミンのみから構成されていてもよい。
【0093】
以上の炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物は、配管本体の外表面に形成される防錆膜中において、1平方センチメートル当たり50.0μg以上150.0μg以下含んでいることが好ましく、1平方センチメートル当たり70.0μg以上100.0μg以下含んでいることが好ましい。
【0094】
また、以上の炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物は、配管本体の外表面に塗布して防錆膜を形成させるための塗布剤中において、3.0重量%以上8.0重量%以下含まれていることが好ましく、4.0重量%以上6.0重量%以下含まれていることがより好ましい。
【0095】
なお、冷媒配管の外表面を構成する防錆膜中に炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が存在することは、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いた分析により確認することができる。
【0096】
なお、防錆剤として炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が配合された塗布剤を用いる場合には、防錆効果を高めるために、さらに防錆剤として(D)下記式(I)で表されるコハク酸無水物誘導体を配合させていることが好ましい。
【化10】
[上記式(I)中、Rは炭素数8以上24以下である直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0097】
ここで、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と上記(D)コハク酸無水物誘導体とを併用させる場合には、塗布剤中(防錆膜中も同様)における両者の配合量の比率が1:4〜4:1の範囲内であることが好ましく、1:2〜2:1の範囲内であることがより好ましい。なお、当該併用の際には、塗布剤中に(D)コハク酸無水物誘導体が、1.0重量%以上10.0重量%以下含まれていることが好ましく、2.0重量%以上8.0重量%以下含まれていることが好ましい。
【0098】
また、防錆剤として(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物が配合された塗布剤を用いる場合には、防錆効果を高めるために、塗布剤中に(防錆膜中も同様)、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物が配合されたとしても、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物と同じ量未満であることが好ましく、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物の半分以下であることがより好ましく、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物の1/5以下であることがさらに好ましく、配合されていないことが特に好ましい。
【0099】
また、配管本体の外表面に塗布して防錆剤を形成させるための塗布剤中において、以上の(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物は、上述の(A)有機スルホネート化合物と共に配合されていることが好ましく、なかでも、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンと(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩とが共に配合されていることが好ましい。
【0100】
(3−4)金属加工油
金属加工油としては、特に限定されないが、金属の加工用に用いられる加工油であって、アルミニウムや銅等の金属に対して腐食性が無い(錆びさせにくい)ものが好ましい。
【0101】
また、金属加工油としては、加工後の加熱乾燥により実質的に消失させることが可能となるように、大気圧下において180℃以上で揮発するものが好ましい。このように加工後の加熱乾燥により金属加工油を実質的に消失させることができる場合には、残存物の劣化や分解により生じるギ酸などの有機物の発生を抑制することができ、当該有機物に由来して生じやすい蟻の巣状の腐食を抑制することが可能になる。
【0102】
なお、防錆剤のみを配管本体に塗布すると、粘度が高いために加工時の材料ロスが生じやすく塗布効率が悪く、塗膜を均一化させることが困難であるため、防錆剤は金属加工油に溶解させた状態で塗布することが好ましい。
【0103】
金属加工油は、40℃における動粘度が、1.0mm
2/s以上5.0mm
2/s以下であることが好ましく、1.2mm
2/s以上2.5mm
2/s以下であることがより好ましい。なお、当該動粘度は、JIS K2283にしたがって測定される値である。
【0104】
また、金属加工油の15℃における密度は、0.75g/cm
3以上0.79g/cm
3以下であることが好ましい。なお、当該密度は、JIS K2249にしたがって測定される値である。
【0105】
また、金属加工油は、その酸価が0mgKOH/gであることが好ましい。このような金属加工油としては、ギ酸や酢酸などの低級カルボン酸を含まないものが好ましい。
【0106】
以上の金属加工油は、市販品を用いてもよい。このような市販品としては、例えば、出光興産社製のダフニーパンチオイルAF−Aシリーズ、エヌ・エスルブリカンツ社製のプロホーマーシリーズ等が挙げられ、なかでも、出光興産社製の商品名「AF−2A」、「AF−2AS」や、エヌ・エスルブリカンツ社製の商品名「プロホーマー RF520」、「プロホーマー RF510」がより好ましく、出光興産社製の商品名「AF−2A」が特に好ましい。
【0107】
(4)冷媒配管および熱交換器の製造方法
冷媒配管は、例えば、以下のようにして製造される。
【0108】
まず、上述した銅または銅合金によって構成される配管本体、上述した防錆剤および金属加工油を用意する。
【0109】
用意した防錆剤を金属加工油に溶解させることで、塗布剤を得る。
【0110】
配管本体の外表面に対して、この塗布剤を塗布することで、防錆膜を形成させる。
【0111】
以上のようにして得られる冷媒配管50の側断面図を
図1に示す。ここで、冷媒配管50は、円筒形状の配管本体51と、配管本体51の外表面に形成された防錆膜52を有している。
【0112】
なお、塗布剤は、用意した配管本体の外表面にそのまま塗布してもよいが、配管本体の外表面を前処理した後に塗布してもよい。ここで、配管本体の前処理としては、例えば、脱脂処理等が挙げられる。この脱脂処理を行う場合には、アセトン等の溶剤やアルカリ性液体や(3−4)に記載の金属加工油を用いてもよい。
【0113】
ここで、防錆膜を形成させるために、配管本体の外表面に塗布された塗布剤を加熱乾燥させてもよい。
【0114】
なお、形成させる防錆膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば、1nm以上5000nm以下であってよく、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0115】
この冷媒配管は、内部に冷媒を流す配管として用いることができるが、冷媒回路において用いられる箇所は特に限定されず、例えば、熱交換器の伝熱管(特に、冷媒の蒸発器としての熱交換器の伝熱管)として用いてもよいし、冷媒回路の主要構成機器(圧縮機、膨張弁、熱交換器等)を接続する接続配管として用いてもよい。
【0116】
なお、冷媒配管を空気調和装置の熱交換器における伝熱管として用いる場合には、伝熱フィン表面が撥水性を有している場合には結露水が飛散してしまうため、これを抑制する観点から、当該伝熱管に貫通される伝熱フィンに対しては上記塗布剤が塗布されないことが好ましく、伝熱フィンの表面に防錆剤が存在しないことが好ましい。以下、冷媒配管を空気調和装置の熱交換器における伝熱管として用いる場合の当該熱交換器の製造方法を説明する。
【0117】
まず、配管本体51の外表面に、金属加工油に対して防錆剤を溶解させることで得られる塗布剤を塗布する。そして、このように塗布剤が塗布された冷媒配管50(金属加工油を含む塗布剤が未乾燥のもの)を、
図2に示すように、180度折り曲げて、ヘアピン形状の冷媒配管50とする。そして、このようなヘアピン形状の冷媒配管50を複数本並べる。
【0118】
ここで、
図3に示すように、板状の伝熱フィン60を用意する。伝熱フィン60は、フィン本体61と、複数本の冷媒配管50を貫通させるためにフィン本体61の板厚方向に貫通するように設けられた複数の孔62と、を有している。この伝熱フィン60は、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金によって構成される。このような伝熱フィン60は、金属加工油が塗布される。この伝熱フィン60に塗布される金属加工油としては、特に限定されないが、上述した塗布剤を構成する金属加工油と同じであってもよい。
【0119】
このように金属加工油が塗布された複数の伝熱フィン60は、
図4に示すように、並んで配置されている複数本のヘアピン形状の冷媒配管50に対して挿入される。ここで、複数の伝熱フィン60を全て挿入した後、伝熱管としての冷媒配管50は、内側から内径を大きくするように拡管され、冷媒配管50の外径が伝熱フィン60の孔62の内径と一致し、冷媒配管50と伝熱フィン60とが密着する。
【0120】
以上のようにして得られた複数の冷媒配管50と複数の伝熱フィン60は、加熱乾燥される。加熱乾燥時の冷媒配管50と伝熱フィン60の表面温度としては、特に限定されないが、例えば、60℃以上200℃以下であることが好ましく、130℃以上180℃以下であってもよい。ここで、冷媒配管50の配管本体51の表面に塗布されていた塗布剤のうち、金属加工油は揮発等により実質的に消失する。また、伝熱フィン60の表面に塗布されていた金属加工油等も同様に揮発等により実質的に消失する。
【0121】
なお、炉から取り出された構造体は、
図5に示すように、冷媒配管50の曲げ部分50aとは反対側の複数の端部に対して、複数のU字管70がそれぞれロウ付け接続される。このようにして得られる熱交換器(後述する熱交換器23、熱交換器31)は、空気調和装置の冷媒回路の一部を構成することとなる。
【0122】
(5)冷媒配管を有する熱交換器を備えた空気調和装置
上述の冷媒配管を有する熱交換器23、熱交換器31を備えた空気調和装置100の例を、
図6を参照しつつ、以下に説明する。
【0123】
空気調和装置100は、冷媒回路10と、室外ファン24と、室内ファン32と、制御部7等を有している。
【0124】
冷媒回路10は、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、膨張弁25、室内熱交換器31を有している。冷媒回路10は、四路切換弁22の接続状態を切り換えることで冷房運転と暖房運転を切り換えて行うことが可能になっている。
【0125】
なお、室内熱交換器31および室内ファン32は、空調対象空間に配置される室内ユニット30の内部に設けられている。また、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、膨張弁25、室外ファン24、制御部7は、空調対象空間外に配置される室外ユニット20の内部に設けられている。
【0126】
冷房運転時には、圧縮機21から吐出された冷媒は、四路切換弁22の接続ポートの1つを通過した後、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23において放熱した冷媒は、膨張弁25を通過する際に減圧され、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31で蒸発した冷媒は、四路切換弁22の接続ポートの別の1つを通過して、再び圧縮機21に吸入される。
【0127】
暖房運転時には、圧縮機21から吐出された冷媒は、四路切換弁22の接続ポートの1つを通過した後、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31において放熱した冷媒は、膨張弁25を通過する際に減圧され、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23で蒸発した冷媒は、四路切換弁22の接続ポートの別の1つを通過して、再び圧縮機21に吸入される。
【0128】
なお、制御部7は、図示しない各種センサの検知情報に基づいて、圧縮機21の駆動周波数、膨張弁25の弁開度、室外ファン24の風量、室内ファン32の風量などを制御する。
【0129】
<実施例>
以下、冷媒配管の実施例および比較例を示すが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
(実施例1a〜1c)
実施例1a〜1cとして、(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩を防錆剤として用い、これを金属加工油としての出光興産社製の商品名AF−2Aに対して溶解させた塗布剤を、配管本体としてのKMCT製リン脱酸銅の管の外表面に塗布(10秒間浸漬)し、70℃の環境下で5分乾燥させ、冷媒配管を得た。
【0131】
ここで、塗布剤におけるジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩の重量比率が5.0重量%である例を実施例1aとし、当該重量比率が1.0重量%である例を実施例1bとし、当該重量比率が0.2重量%である例を実施例1cとした。
【0132】
(実施例2a〜2c)
実施例2a〜2cとして、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを防錆剤として用いた点以外は実施例1a〜1cと同様にして冷媒配管を得た。
【0133】
ここで、塗布剤におけるオレイン酸モノグリセリルの重量比率が5.0重量%である例を実施例2aとし、当該重量比率が1.0重量%である例を実施例2bとし、当該重量比率が0.2重量%である例を実施例2cとした。
【0134】
(実施例3a〜3c)
実施例3a〜3cとして、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを防錆剤として用いた点以外は実施例1a〜1cと同様にして冷媒配管を得た。
【0135】
ここで、塗布剤におけるオレイルアミンの重量比率が5.0重量%である例を実施例3aとし、当該重量比率が1.0重量%である例を実施例3bとし、当該重量比率が0.2重量%である例を実施例3cとした。
【0136】
(参考例1)
参考例1として、ベンゾトリアゾール系化合物としての大和化成社製の商品名OA−386を防錆剤として用いた点以外は実施例1a〜1cと同様にして冷媒配管を得た。
【0137】
ここで、塗布剤におけるベンゾトリアゾール系化合物の重量比率が0.3重量%であった。
【0138】
(比較例1a〜1c)
比較例1a〜1cとして、(D)特定のコハク酸無水物誘導体としてのオクタデセニルコハク酸無水物を防錆剤として用いた点以外は実施例1a〜1cと同様にして冷媒配管を得た。
【0139】
ここで、塗布剤におけるオクタデセニルコハク酸無水物の重量比率が5.0重量%である例を比較例1aとし、当該重量比率が1.0重量%である例を比較例1bとし、当該重量比率が0.2重量%である例を比較例1cとした。
【0140】
(比較例2)
比較例2として、防錆剤を配合させていない点以外は実施例1a〜1cと同様にして冷媒配管を得た。
【0141】
(腐食性確認試験)
これらの各実施例1a〜1c、2a〜2c、3a〜3c、参考例1、比較例1a〜1c、比較例2のそれぞれについて、
図7に示す環境下に曝した際の腐食の発生度合いを確認する試験を行った。
【0142】
図7に示すように、各実施例1a〜1c、2a〜2c、3a〜3c、参考例1、比較例1a〜1c、比較例2のサンプルとなる冷媒配管50を、円筒形状のガラス管91の中に入れ、ガラス管91の上下をシリコン栓により密閉した。冷媒配管50は、管の内側における腐食が生じないようにするため、長手方向の両端をホットメルト樹脂93によって密閉した。また、冷媒配管50は、その上方の周囲にPTFEによって構成されるシールテープ94を張り、ガラス管91に固定した。当該密閉空間(ガラス管91の内部であって冷媒配管50の外部)の中には、ギ酸の濃度が1000ppmであるギ酸水溶液95を入れた。以上の環境下において、冷媒配管50を常温で曝した。
【0143】
防錆剤を用いていない比較例2については、3日経過した段階で、冷媒配管のうち気液界面にわたって変色が確認され、蟻の巣状の腐食が生じていることが確認された。比較例1a〜1cおよび参考例1については、11日経過した段階で、冷媒配管のうち気相部分について変色が確認され、蟻の巣状の腐食が生じていることが確認された。実施例1a〜1cについては、11日経過した段階で、実施例1cについては変色が確認されたものの、実施例1a、1bについては変色がわずかであり、実施例1a〜1cのいずれについても蟻の巣状の腐食は生じていないことが確認された。実施例2a〜2cについては、11日経過した段階で、実施例2a〜2cのいずれについても液相部分に変色が生じていたが、いずれについても蟻の巣状の腐食は生じていないことが確認された。実施例3a〜3cについては、11日経過した段階で、実施例3cについては変色が確認されたものの、実施例3a、3bについては変色がわずかであり、実施例3a〜3cのいずれについても蟻の巣状の腐食は生じていないことが確認された。
【0144】
(実施例4a〜4c)
実施例4aとして、(D)特定のコハク酸無水物誘導体としてのオクタデセニルコハク酸無水物を5.0重量%および(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを5.0重量%含む防錆剤を用い、これを金属加工油としての出光興産社製の商品名AF−2Aに対して溶解させた塗布剤を、配管本体としてのKMCT製リン脱酸銅の管の外表面に塗布(10秒間浸漬)し、70℃の環境下で5分乾燥させ、冷媒配管を得た。
【0145】
実施例4bとして、(D)特定のコハク酸無水物誘導体としてのオクタデセニルコハク酸無水物を5.0重量%および(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを5.0重量%含む防錆剤を用い、これを金属加工油としての出光興産社製の商品名AF−2Aに対して溶解させた塗布剤を、配管本体としてのKMCT製リン脱酸銅の管の外表面に塗布(10秒間浸漬)し、70℃の環境下で5分乾燥させ、冷媒配管を得た。
【0146】
実施例4cとして、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを5.0重量%および(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを5.0重量%含む防錆剤を用いた点以外は、実施例4aと同様として冷媒配管を得た。
【0147】
これらの実施例4a〜4cについて、上記と同様の腐食性確認試験を行ったところ、11日経過した段階で、実施例4a〜4cのいずれについても変色はわずかであり、いずれについても蟻の巣状の腐食は生じていないことが確認された。
(実施例5a−1、5a−2、5a−3、5a−4、5b−1、5b−2、5c−1、5d、5e、5f、5g、5h、5i、比較例3、参考例2、参考例3、比較例4)
実施例5a−1、5a−2、5a−3、5a−4として、(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩を防錆剤として用い、これを金属加工油としての出光興産社製の商品名AF−2Aに対して溶解させた塗布剤を、配管本体としてのKMCT製リン脱酸銅の管の外表面に塗布(10秒間浸漬)し、70℃の環境下で5分乾燥させ、冷媒配管を得た。ここで、塗布剤におけるジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩の重量比率が1.0重量%である例を実施例5a−1とし、8.0重量%である例を実施例5a−2とし、2.0重量%である例を実施例5a−3とし、0.1重量%である例を実施例5a−4とした。
【0148】
実施例5b−1、5b−2として、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを防錆剤として用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。ここで、塗布剤におけるオレイン酸モノグリセリルの重量比率が5.0重量%である例を実施例5b−1とし、重量比率が1.0重量%である例を実施例5b−2とした。
【0149】
実施例5c−1、比較例3として、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを防錆剤として用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。ここで、塗布剤におけるオレイルアミンの重量比率が5.0重量%である例を実施例5c−1とし、重量比率が1.0重量%である例を比較例3とした。
【0150】
実施例5dとして、(D)特定のコハク酸無水物誘導体としてのオクタデセニルコハク酸無水物を5.0重量%および(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを5.0重量%含む防錆剤を用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0151】
実施例5eとして、(D)特定のコハク酸無水物誘導体としてのオクタデセニルコハク酸無水物を5.0重量%および(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを5.0重量%含む防錆剤を用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0152】
実施例5fとして、(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを5.0重量%および(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを5.0重量%含む防錆剤を用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0153】
実施例5gとして、(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩を1.5重量%および(B)多価アルコールの有機酸エステル化合物としてのオレイン酸モノグリセリルを1.5重量%含む防錆剤を用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0154】
実施例5hとして、(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩を0.1重量%および(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを5.0重量%含む防錆剤を用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0155】
実施例5iとして、(A)有機スルホネート化合物としてのジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩を1.5重量%および(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物としてのオレイルアミンを1.5重量%含む防錆剤を用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0156】
参考例2、参考例3として、ベンゾトリアゾール系化合物としての大和化成社製の商品名OA−386を防錆剤として用いた点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。ここで、塗布剤におけるベンゾトリアゾール系化合物の重量比率が0.3重量%である例を参考例2とし、1.0重量%である例を参考例3とした。
【0157】
比較例4として、防錆剤が配合されていない点以外は実施例5a−1と同様にして冷媒配管を得た。
【0158】
(半浸漬試験)
これらの各実施例5a−1、5a−2、5a−3、5a−4、5b−1、5b−2、5c−1、5d、5e、5f、5g、5h、5i、比較例3、比較例4、参考例2、参考例3のそれぞれについて、
図8に示す環境下に曝した際の腐食の発生度合いを確認する試験を行った。
【0159】
図8に示すように、各実施例5a−1、5a−2、5a−3、5a−4、5b−1、5b−2、5c−1、5d、5e、5f、5g、5h、5i、比較例3、比較例4、参考例2、参考例3のサンプルとなる冷媒配管50(両端部が閉じられており内部に加圧空気が充填されている)を、上端が開口した円筒形状の500ml容積の樹脂ボトル96の中に入れ、樹脂ボトル96の上端をシリコン栓により密閉した。冷媒配管50は、ボトルの内側における腐食が生じないようにするため、上端をホットメルト樹脂97によって密閉した。当該密閉空間(樹脂ボトル96の内部であって冷媒配管50の外部)の中には、ギ酸の濃度が1000ppmであるギ酸水溶液95を300ml入れた。以上の環境下において、冷媒配管50を40℃の環境下で曝した。なお、冷媒配管50に貫通孔が開くタイミング(圧力の低下が観察されるタイミング)を特定するために、加圧空気が充填されている冷媒配管50の内部の圧力を圧力計98を用いて観察した。
【0160】
比較例4では、試験開始から87.5時間が経過した段階で貫通孔の発生(圧力の低下)が確認された。参考例2では、試験開始から84.5時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認され、比較例4と同程度であることが確認された。実施例5a−1では、試験開始から823.5時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。実施例5a−2では、試験開始から800.0時間が経過しても貫通孔の発生は確認されなかった。実施例5a−3では、試験開始から800.0時間が経過しても貫通孔の発生は確認されなかった。実施例5a−4では、試験開始から88.8時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。実施例5b−1では、試験開始から584.9時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。実施例5b−2では、試験開始から134.2時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。実施例5c−1では、試験開始から161.8時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。比較例3では、試験開始から78.5時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認され、比較例4、参考例2と同程度であることが確認された。実施例5dでは、試験開始から500時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認されなかった。実施例5eでは、試験開始から500時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認されなかった。実施例5fでは、試験開始から153.5時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。実施例5gでは、試験開始から800.0時間が経過しても貫通孔の発生は確認されなかった。実施例5hでは、試験開始から304.2時間が経過した段階で貫通孔の発生が確認された。実施例5iでは、試験開始から800.0時間が経過しても貫通孔の発生は確認されなかった。
【0161】
なお、実施例5a−4と実施例5c−1と実施例5hを比較すると、(A)有機スルホネート化合物を単独で用いる場合や、(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を単独で用いる場合よりも、(A)有機スルホネート化合物と(C)炭素数が8以上24以下である脂肪族アミン化合物を併用した場合の方が防錆効果に優れることが確認された。
【0162】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。