【解決手段】枠組足場1の足場板3の縁部3a,3bに沿って配置される幅木10を、建枠2に取り付けるための幅木取付金具100であって、建枠2の上下の建地材4を連結するためのジョイントピン50に設けられたプレート70と、幅木10の両端部に設けられた一対のフック80と、を備え、プレート70は、フック80が挿入される開口部71と、開口部71に挿入されたフック80が係合する係合部72と、を有し、一対のフック80のそれぞれがプレート70の係合部72に係合することによって、幅木10は建枠2に取り付けられる。
前記幅木の両端部に回動自在に支持され、前記開口部に挿入された前記フックと共に前記係合部を囲うフック抜止具をさらに備える請求項1から4のいずれか一つに記載の枠組足場用の幅木取付金具。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
建築現場や土木工事現場では、枠組足場1が使用されている。本実施形態では、枠組足場1の足場板3の縁部3a,3bに沿って配置される幅木10と、その幅木10を取り付けるための幅木取付金具100と、について説明する。
【0012】
まず、
図1及び2を参照して、枠組足場1について説明する。
図1は枠組足場1の正面図であり、幅木10の正面側の図である。
図2は枠組足場1の側面図であり、幅木10の裏面側の図である。
【0013】
枠組足場1は、複数の建枠2と、隣り合う建枠2間に渡し設けられた足場板3と、を有する。
【0014】
建枠2は、一対の建地材4(4a,4b)と、建地材4a,4bの上端部間に渡って設けられた横地材5と、を有する門型形状である。一対の建地材4a,4bと横地材5は、溶接によって連結される。
【0015】
建枠2は、隣り合う横地材5同士が平行に対向するように所定間隔で横方向に複数立て並べられる。隣り合う建枠2の建地材4a同士及び建地材4b同士は、筋交部材(図示せず)で連結され、隣り合う建枠2の横地材5間には、フック3cを介して足場板3が渡し設けられる。
【0016】
建枠2は、上下方向にも複数連結される。上下に隣り合う建枠2の建地材4a同士及び建地材4b同士は、ジョイントピン50によって連結される。このように、枠組足場1は、建枠2を横方向及び上下方向に複数連結することによって構成される。
【0017】
次に、主に
図2〜4を参照して、ジョイントピン50について説明する。
図3はジョイントピン50の正面図であり、
図4はジョイントピン50の側面図である。
【0018】
建地材4は筒状に形成される。ジョイントピン50は、上側の建地材4の下端開口に挿入される上側ピン51と、下側の建地材4の上端開口に挿入される下側ピン52と、上側ピン51と下側ピン52の間に形成され、上側の建地材4の下端面と下側の建地材4の上端面との間に渡って設けられる本体部53と、を有する筒状部材である。上側ピン51、下側ピン52、及び本体部53は、一体に形成される。
【0019】
上側ピン51及び下側ピン52は、その外径が建地材4の内径と略同一であり、建地材4の内周面に沿って挿入される。
【0020】
本体部53は、その外径が上側ピン51及び下側ピン52の外径よりも大きい。したがって、本体部53と上側ピン51の境界、及び本体部53と下側ピン52の境界には、それぞれ段差部54,55が形成される。
【0021】
図2に示すように、上側ピン51が上側の建地材4の下端開口に挿入された状態では、上側の建地材4の下端面は段差部54に当接した状態となる。また、下側ピン52が下側の建地材4の上端開口に挿入された状態では、下側の建地材4の上端面は段差部55に当接した状態となる。
【0022】
本体部53は、その外径が建地材4の外径と略同一であり、上側ピン51及び下側ピン52がそれぞれ上側の建地材4及び下側の建地材4に挿入された状態では、上側の建地材4、本体部53、及び下側の建地材4の外周面は、軸方向に滑らかに連続する。
【0023】
本体部53の外周面には、幅木10を支持する幅木受け部材としてのプレート70が設けられる。プレート70は、幅木取付金具100の一部品である。プレート70については、後に詳しく説明する。
【0024】
ジョイントピン50は、さらに、上側ピン51及び下側ピン52と建地材4との外れを防止する外れ防止機構と、その外れ防止機構の機能を解除する解除機構と、を有する。具体的には、ジョイントピン50は、ロックピン56と、ロックピン56を付勢する板ばね57と、板ばね57の付勢力に抗してロックピン56を押圧するためのレバー58と、を有する。
【0025】
ロックピン56は、ジョイントピン50の中空部内に設けられ、両端部の爪部60,61のそれぞれが上側ピン51及び下側ピン52に形成された開口部51a,52aから外部へと露出する。爪部60は、上側ピン51先端側がテーパ面60aとして形成され、本体部53側が上側ピン51の外周面に垂直な垂直面60bとして形成される。爪部61にも、同様にテーパ面61aと垂直面61bとが形成される。
【0026】
板ばね57は、ジョイントピン50の中空部内に設けられ、爪部60,61が上側ピン51及び下側ピン52の開口部51a,52aから外部へと露出する方向にロックピン56を付勢する。
【0027】
レバー58は、ジョイントピン50の外部から作業員が操作可能なように、本体部53に形成された開口部53aから外部へと露出する。
【0028】
上側ピン51が挿入される上側の建地材4の下端側には、ロックピン56の爪部60が挿通可能な貫通孔が形成される。同様に、下側ピン52が挿入される下側の建地材4の上端側にも、ロックピン56の爪部61が挿通可能な貫通孔が形成される。
【0029】
上側ピン51が、上側の建地材4の下端開口から内周面に沿って挿入されると、ロックピン56の爪部60は、そのテーパ面60aが建地材4の内周面に押圧されて上側ピン51内に引っ込んだ後、建地材4の貫通孔に対向した際に、板ばね57の付勢力によってその貫通孔を挿通する。この状態では、爪部60の垂直面60bが建地材4の貫通孔に係合するため、上側ピン51と建地材4との外れが防止される。上側ピン51から建地材4を外す際には、レバー58を本体部53内に押し込む。これにより、板ばね57の付勢力に抗してロックピン56が押圧され、爪部60が上側ピン51内に引っ込むため、上側ピン51から建地材4を外すことが可能となる。下側ピン52の爪部61の機能は上側ピン51の爪部60の機能と同じであるため、説明を省略する。
【0030】
以上のように、ジョイントピン50を用いれば、建枠2を上下方向に複数連結することができ、複数段を有する枠組足場1を構築することができる。ここで、建枠2の高さ、つまり上下の足場板3間の長さは、建地材4の長さで決まる。建枠2は規格品であり、建地材4の長さが1700mmのものが長らく標準品として用いられている。しかし、このサイズは、近年の作業員の身長には合わないものとなっており、枠組足場1内での通行、作業がし難い状況となっている。そこで、このような状況に対応するために、ジョイントピン50のうち本体部53の軸方向長さを長くすることによって、建枠2の高さを高くすることができる。例えば、本体部53の長さを100mm長くすることによって、従来の建枠2を使用しながらも、建枠2の高さを1800mmとすることができる。このように、ジョイントピン50のみを変更するだけで、建枠2の高さを変更することができるため、枠組足場1内での通行、作業の改善を安価に達成することができる。
【0031】
次に、主に
図5〜7を参照して、幅木10について説明する。
図5は幅木10の裏面図であり、
図6は幅木10の平面図であり、
図7は
図5のA−A線に沿う断面図である。なお、
図7では、幅木取付金具100の図示を省略している。
【0032】
幅木10は、足場板3の縁部3a,3b(
図10,11参照)から作業道具や資材等の物品の落下を防止するために、足場板3の縁部3a,3bに沿って配置されるものである。幅木10には、足場板3の長手方向の縁部3aに沿って配置される長幅木10A(
図1参照)と、足場板3の短手方向の縁部3bに沿って配置される短幅木10B(
図2参照)との2種類がある。長幅木10Aと短幅木10Bは、長手方向の長さが異なるだけで、構成は同じである。
【0033】
幅木10は、長方形の板状の幅木本体11と、幅木本体11に連続して形成され、幅木本体11と足場板3との隙間を塞ぐ隙間塞ぎ板12と、を有する。
【0034】
幅木本体11は、
図1に示すように、足場板3に対して垂直に配置され、足場板3からの物品の落下を防止する。しかし、幅木本体11のみでは、足場板3の縁部3a,3bと幅木本体11の下端部との間には、それぞれ隙間18,19(
図10,11参照)が存在することになる。隙間塞ぎ板12は、この隙間18,19を塞ぐものである。
【0035】
隙間塞ぎ板12は、幅木本体11の一方の長辺に連続して形成される。幅木本体11の他方の長辺には、隙間塞ぎ板12とは逆側にコの字状に折り返された折り返し部13が連続して形成される。隙間塞ぎ板12及び折り返し部13は、一枚の板材を曲げ成形することによって形成される。
【0036】
次に、主に
図8〜11を参照して、幅木10を建枠2に取り付けるための幅木取付金具100について説明する。
図8はジョイントピン50の平面図であり、
図9は幅木取付金具100の側面図であり、
図10はプレート70に長幅木10Aが支持された状態の平面図であり、
図11はプレート70に長幅木10Aと短幅木10Bが支持された状態の平面図である。
【0037】
幅木取付金具100は、ジョイントピン50に設けられたプレート70と、幅木10の両端部に設けられた一対のフック80(80A,80B)と、を備える。
【0038】
図8に示すように、プレート70は、平板状部材であり、ジョイントピン50の本体部53の外周面に対して垂直に溶接で結合される。プレート70は、フック80が挿入される開口部71と、開口部71に挿入されたフック80が係合する係合部72と、を有する。
【0039】
開口部71は、プレート70を上下方向に貫通して形成される。開口部71は、足場板3の長手方向に延設された第1開口部71aと、足場板3の長手方向に延設され、第1開口部71aと同一直線上に形成された第2開口部71bと、足場板3の短手方向に延設された第3開口部71cと、を有する。第1開口部71a及び第2開口部71bには、長幅木10Aに設けられたフック80が挿入され、第3開口部71cには、短幅木10Bに設けられたフック80が挿入される。第1開口部71a、第2開口部71b、及び第3開口部71cは、それぞれ連通してT字状に形成される。
【0040】
長幅木10Aは、
図1に示すように、隣り合う建枠2の建地材4に連結されるジョイントピン50のプレート70間に渡って設けられる。具体的には、長幅木10Aの一端部に設けられたフック80Aは、隣り合う建枠2の一方の建枠2の建地材4に連結されるジョイントピン50のプレート70の第1開口部71aに挿入され、長幅木10Aの他端部に設けられたフック80Bは、隣り合う建枠2の他方の建枠2の建地材4に連結されるジョイントピン50のプレート70の第2開口部71bに挿入される。フック80Aとフック80Bは、同じ構成であって左右対称に形成される。
【0041】
短幅木10Bは、
図2に示すように、建枠2の建地材4aと建地材4bに連結されるジョイントピン50のプレート70間に渡って設けられる。具体的には、短幅木10Bの一端部に設けられたフック80Aは、建地材4aに連結されるジョイントピン50のプレート70の第3開口部71cに挿入され、短幅木10Bの他端部に設けられたフック80Bは、建地材4bに連結されるジョイントピン50のプレート70の第3開口部71cに挿入される。短幅木10Bは、横方向に所定間隔で並べられる建枠2のうち端部に配置される建枠2のみに取り付けられる。
【0042】
プレート70の係合部72は、開口部71に挿入されたフック80が係合するものである。具体的には、
図8に示すように、係合部72は、第1開口部71aに挿入された長幅木10Aのフック80が係合する第1係合部72aと、第2開口部71bに挿入された長幅木10Aのフック80が係合する第2係合部72bと、第3開口部71cに挿入された短幅木10Bのフック80が係合する第3係合部72cと、を有する。
【0043】
図5及び9に示すように、フック80は、幅木10の両端部の裏面にボルト81で固定されたベース板82に形成される。フック80は、幅木10の長手方向に延びる直線部83と、開口部71を挿通可能なように、直線部83から幅木10の短手方向に延びる突出部84と、を有する。
【0044】
例えば、フック80の突出部84がプレート70の第1開口部71aに挿入された状態では、直線部83が第1係合部72aの上面に支持されると共に、突出部84が第1係合部72aの内壁73(
図8参照)に対向する。このようにして、フック80は、プレート70の第1係合部72aに係合する。
【0045】
幅木10の両端部に設けられるフック80A,80Bは、それぞれプレート70の係合部72に係合するため、幅木10は、一対のプレート70の係合部72の上面間に渡って支持されると共に、係合部72の内壁によって幅木10の長手方向への移動が規制される。このようにして、幅木10は、プレート70及びフック80を介して建枠2に取り付けられる。
【0046】
幅木10がプレート70及びフック80を介して建枠2に取り付けられた状態では、幅木10の隙間塞ぎ板12の先端側が足場板3の上面に接触し、足場板3の縁部3a,3bと幅木本体11の下端部との間の隙間18,19(
図10,11参照)が塞がれる。ここで、
図7に示すように、幅木本体11と隙間塞ぎ板12とのなす角度θは90度よりも大きいため、幅木10が建枠2に取り付けられた状態では、幅木10の自重で幅木本体11と隙間塞ぎ板12の境界部が弾性変形し、隙間塞ぎ板12の先端側が弾性力により足場板3の上面に密着する。したがって、隙間18,19を通じての物品の落下を効果的に防止することができる。
【0047】
開口部71に挿入されるフック80の突出部84の厚さは、開口部71の開口幅D(
図8参照)と略同じである。したがって、突出部84が開口部71に挿入された状態では、開口部71内での突出部84の厚さ方向へのがたつきはほぼない。よって、幅木10の厚さ方向への移動も規制される。
【0048】
なお、フック80の先端に、直線部83と平行に延びる爪部85を形成するようにしてもよい。フック80の突出部84が開口部71に挿入された状態では、爪部85は係合部72の下面に対向する。このため、フック80の先端に爪部85を形成することによって、フック80が係合部72に対して、よりしっかりと係合する。
【0049】
幅木取付金具100は、ボルト91を介してベース板82に回動自在に支持されたフック抜止具90をさらに備える。フック抜止具90は、ボルト91を軸にベース板82上に沿って回動する。
【0050】
フック抜止具90は、ベース板82に形成されたストッパ82aに当接してフック抜止具90の所定角度以上の回転を規制する突起92と、突起92がストッパ82aに当接した状態で、フック80との間で閉空間94を区画する鉤部93と、を有する。
【0051】
鉤部93は、突起92がストッパ82aに当接した状態で、幅木10の長手方向に延びる水平面93aと、幅木10の短手方向に延びる鉛直面93bと、を有する。
【0052】
例えば、フック80の突出部84が第1開口部71aに挿入され、かつフック抜止具90の突起92がストッパ82aに当接した状態では、鉤部93の水平面93aは、第1係合部72aの下面に対向すると共に、鉤部93の鉛直面93bは、第1係合部72aの外壁74(
図8参照)に対向する。これにより、第1係合部72aは、閉空間94内に配置され、フック80と鉤部93とによって囲まれる。これにより、第1開口部71aからのフック80の抜けが防止される。
【0053】
フック抜止具90は、自重により回動して突起92がストッパ82aに当接した際に、鉤部93がフック80との間で係合部72を囲むように構成される。したがって、フック80をプレート70の係合部72に係合させる際には、幅木10の端部を上方に向ける。これにより、フック抜止具90は自重により鉤部93がフック80から遠ざかる方向に回動するため、フック80の突出部84を開口部71に挿入させることができる。その後、幅木10を水平に戻すことによって、フック抜止具90は自重により鉤部93がフック80に近づく方向に回動して突起92がストッパ82aに当接し、鉤部93がフック80との間で係合部72を囲む。このように、フック抜止具90の自重を利用して、簡単にフック80を係合部72に係合させることができる。
【0054】
なお、自重によるフック抜止具90の回動をスムーズにするために、フック抜止具90に錘95を設けるのが望ましい。
【0055】
プレート70からのフック80の取り外しは、フック抜止具90を持ち上げて鉤部93がフック80から遠ざかる方向に回動させた状態で、幅木10を上方に持ち上げることによって行う。
【0056】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0057】
幅木10は、プレート70と一対のフック80A,80Bを介して建枠2に取り付けられる。プレート70は建地材4を連結するためのジョイントピン50に設けられており、フック80A,80Bは幅木10の両端部に設けられている。このように、幅木10を建枠2に取り付けるための幅木取付金具100は、ジョイントピン50及び幅木10に設けられる。したがって、枠組足場1の部品点数が増加することはない。また、幅木10を建枠2に取り付ける作業は、プレート70に一対のフック80A,80Bを係合させるだけで行うことができるため、枠組足場1の組立工数が増加することもない。よって、枠組足場1に幅木10を簡単に取り付けることができる。
【0058】
以下に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
【0059】
(1)プレート70に形成される開口部71の形状は、T字状に限定されない。3つの開口部71a,71b,71cは連通して形成する必要はなく、独立した開口部として形成してもよい。また、3つの開口部71a,71b,71cのそれぞれを、別々のプレート70に形成するようにしてもよい。また、1つのプレート70に、第1開口部71a及び第2開口部71bを形成し、別の一つのプレート70に、第1開口部71a及び第2開口部71bの一方と、第3開口部71cと、を形成するようにしてもよい。また、上記実施形態では、開口部71は、プレート70を上下方向に貫通して形成される形態を示したが、開口部71は、貫通孔ではなく穴であってもよい。
【0060】
(2)上記実施形態では、プレート70は矩形状のものを示したが、プレート70の形状はこの形状に限定されない。例えば、ジョイントピン50の本体部53の全周に渡って形成されるリング状であってもよい。また、上記実施形態では、ジョイントピン50の本体部53に一つのプレート70を設ける形態を示したが、本体部53に複数のプレート70を設けるようにしてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態で示したフック抜止具90は本発明の必須の構成ではない。フック80をプレート70に係合させるのみによって、幅木10を建枠2に取り付けるようにしてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。