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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-183577(P2019-183577A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】トンネル施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20190927BHJP
【FI】
   E21D9/04 F
   E21D9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-78776(P2018-78776)
(22)【出願日】2018年4月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成29年12月1日、独立行政法人 水資源機構 技術管理室契約企画課(さいたま市中央区新都心11番地2 ランド・アクシス・タワー内)において、独立行政法人水資源機構が入札公告した技術提案項目を説明する際、清水建設株式会社が説明用添付資料において発明した「トンネル施工方法」を公開
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】水戸 聰
(72)【発明者】
【氏名】秦 健二
(72)【発明者】
【氏名】林 秀明
(72)【発明者】
【氏名】井本 厚
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC02
2D054FA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長尺管の中間から先端に亘って十分に注入材を地山に注入することができ、地山の改良を効果的に行うことができる、トンネル施工方法及びこれに用いられる長尺管を提供する。
【解決手段】トンネルボーリングマシンのカッタヘッドの後方から地山の前方に向けて、カッタヘッドの周方向の少なくとも一部において、放射状に複数の長尺管を打設し、長尺管の軸方向の前方側及び後方側にそれぞれパッカを配置して、両パッカ間に閉鎖空間を形成し、閉鎖空間に第1注入材100を注入して、閉鎖空間から地山に注入材を排出し、閉鎖空間よりも前方の前方空間に第2注入材を注入して、地山に第2注入材200を排出し、トンネルボーリングマシンにより地山を掘削する。これらの手順を繰り返してトンネルを形成する。長尺管において閉鎖空間に対応する部分の貫通孔による開口率は、前方空間に対応する部分の貫通孔による開口率よりも大きい。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルボーリングマシンを用いて地山にトンネルを形成するトンネル施工方法であって、
前記トンネルボーリングマシンのカッタヘッドの後方から前記地山の前方に向けて、前記カッタヘッドの周方向の少なくとも一部において、放射状に複数の長尺管を打設する第1ステップと、
前記長尺管の軸方向の中間部の内部空間における、前記長尺管の軸方向の前方側及び後方側にそれぞれパッカを配置し、前記両パッカの間に前記長尺管の内部空間を軸方向に仕切る閉鎖空間を形成する第2ステップと、
前記閉鎖空間に第1注入材を注入し、前記長尺管において、前記閉鎖空間に対応する部分から前記地山に前記第1注入材を排出する第3ステップと、
前記長尺管の内部空間において、前記閉鎖空間よりも前方の前方空間に第2注入材を注入し、前記長尺管において前記前方空間と対応する部分から前記地山に前記第2注入材を排出する第4ステップと、
前記トンネルボーリングマシンにより地山を掘削する第5ステップと、
を備え、
前記第1から第5ステップを繰り返し、
前記長尺管には前記内部空間と連通し、前記各注入材を排出する複数の貫通孔が形成され、
前記長尺管において前記閉鎖空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率は、前記前方空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率よりも大きい、トンネル施工方法。
【請求項2】
前記長尺管は、複数の鋼管を軸方向に連結することで形成され、
前記複数の鋼管の少なくとも一つが前記閉鎖空間を形成し、当該閉鎖空間を形成する鋼管の少なくとも一部は、エキスパンドメタル又はパンチングメタルにより形成されている、請求項1に記載のトンネル施工方法。
【請求項3】
前記閉鎖空間の少なくとも一部は、前記カッタヘッドよりも前方に配置されている、請求項1または2に記載のトンネル施工方法。
【請求項4】
先に打設された前記長尺管から排出された注入材と、後に打設された前記長尺管において前記閉鎖空間が形成されている部分から排出された注入材とが、側面視においてオーバーラップしている、請求項1から3のいずれかに記載のトンネル施工方法。
【請求項5】
前記長尺管において、前記閉鎖空間よりも後方には、前記貫通孔が形成されていない、請求項1から4のいずれかに記載のトンネル施工方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のトンネル施工方法に用いられる長尺管であって、
軸方向に連結される複数の鋼管を備え、
前記複数の鋼管の少なくとも一つが前記閉鎖空間を形成し、
前記閉鎖空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率は、前記前方空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率よりも大きい、長尺管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルボーリングマシンを用いて地山にトンネルを形成するトンネル施工方法、及びこれに用いる長尺管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネルボーリングマシンを用いたトンネルの施工方法が開示されている。この際、トンネルボーリングマシンよりも前方の地山を改良するため、例えば、図13に示すように、トンネルボーリングマシン4の前方の周囲の地山に長尺管900を打設し、この長尺管900から注入材500を施して地山を改良する、AGF工法、サイドパイル、レッグパイル等の各種補助工法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−280882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、トンネルボーリングマシンにより地山が掘削されると、地山が緩み、岩盤の割目が開口し、図13に示すように、長尺管900から注入した注入材500が、長尺管900の後端部付近に流れることがあり、最も事前補強したい長尺管900の中間から先端部分に亘って、注入材を地山に十分に注入できないことがある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、長尺管の中間から先端に亘って十分に注入材を地山に注入することができ、地山の改良を効果的に行うことができる、トンネル施工方法及びこれに用いられる長尺管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トンネルボーリングマシンを用いて地山にトンネルを形成するトンネル施工方法であって、前記トンネルボーリングマシンのカッタヘッドの後方から前記地山の前方に向けて、前記カッタヘッドの周方向の少なくとも一部において、放射状に複数の長尺管を打設する第1ステップと、前記長尺管の軸方向の中間部の内部空間における、前記長尺管の軸方向の前方側及び後方側にそれぞれパッカを配置し、前記両パッカの間に前記長尺管の内部空間を軸方向に仕切る閉鎖空間を形成する第2ステップと、前記閉鎖空間に第1注入材を注入し、前記長尺管において、前記閉鎖空間に対応する部分から前記地山に前記第1注入材を排出する第3ステップと、前記長尺管の内部空間において、前記閉鎖空間よりも前方の前方空間に第2注入材を注入し、前記長尺管において前記前方空間と対応する部分から前記地山に前記第2注入材を排出する第4ステップと、前記トンネルボーリングマシンにより地山を掘削する第5ステップと、を備え、前記第1から第5ステップを繰り返し、前記長尺管には前記内部空間と連通し、前記各注入材を排出する複数の貫通孔が形成され、前記長尺管において前記閉鎖空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率は、前記前方空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率よりも大きい。
【0007】
この構成によれば、長尺管の中間部に閉鎖空間を形成し、この閉鎖空間から開口率の大きい貫通孔を介して地山に第1注入材を排出しているため、長尺管における閉鎖空間の周囲には、多量の第1注入材が供給され、これを壁とすることができる。これにより、閉鎖空間よりも先端側の前方空間に注入された第2注入材が、第1注入材による壁によって、長尺管の後端側に流れるのを防止することができる。その結果、長尺管における中間部から前方の地山を第1注入材及び第2注入材により確実に改良することができ、地山の改良を効果的に行うことができる。
【0008】
上記トンネル施工方法において、前記長尺管は、複数の鋼管を軸方向に連結することで形成され、前記複数の鋼管の少なくとも一つが前記閉鎖空間を形成し、当該閉鎖空間を形成する鋼管の少なくとも一部は、エキスパンドメタル又はパンチングメタルにより形成することができる。
【0009】
上記トンネル施工方法において、前記閉鎖空間の少なくとも一部は、前記カッタヘッドよりも前方に配置することができる。
【0010】
上記トンネル施工方法においては、先に打設された前記長尺管から排出された注入材と、後に打設された前記長尺管において前記閉鎖空間が形成されている部分から排出された注入材とが、側面視においてオーバーラップするように構成することができる。
【0011】
上記トンネル施工方法では、前記長尺管において、前記閉鎖空間よりも後方には、前記貫通孔が形成されていないように構成することができる。
【0012】
本発明は、上述したいずれかのトンネル施工方法に用いられる長尺管であって、軸方向に連結される複数の鋼管を備え、前記複数の鋼管の少なくとも一つが前記閉鎖空間を形成し、前記閉鎖空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率は、前記前方空間に対応する部分の前記貫通孔による開口率よりも大きい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長尺管に中間から先端に亘って十分に注入材を地山に注入することができ、地山の改良を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のトンネル施工方法に用いられる長尺管の概略構成を示す側面図である。
図2図1の長尺管の先端付近の断面図である。
図3】第1中間管とバルクヘッド管との接続を説明する側面図(図3(a))、第1中間管と他のバルクヘッド管との接続を説明する側面図(図3(b))である。
図4】第1中間管とさらに他のバルクヘッド管との接続を説明する側面図である。
図5】トンネルボーリングマシン及び長尺管によるトンネル施工の断面図である。
図6図5の断面図である。
図7】長尺管の打設を説明する断面図である。
図8】パッカと注入管の取付を説明する断面図である。
図9】パッカの取付を説明する断面図である。
図10】パッカの取付を説明する断面図である。
図11】第1注入材の注入を説明する図である。
図12】第2入材の注入を説明する図である。
図13】従来のトンネルボーリングマシン及び長尺管によるトンネル施工の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るトンネル施工方法の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。このトンネル施工方法は、長尺先受工法(所謂AGF工法)により地山を改良した後、トンネルボーリングマシン用いてトンネルを施工する方法である。まず、このトンネル施工方法で用いる長尺管について説明した後、トンネルボーリングマシンを用いてトンネルを施工する方法について説明する。
【0016】
<1.長尺管>
図1は長尺管の側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る長尺管1は、複数の円筒状の鋼管を軸方向に連結したものであり、本実施形態では、先頭管11、第1中間管12、バルクヘッド管13、第2中間管14、及び端末管15をこの順に連結したものである。
【0017】
先頭管11及び第1中間管12は、概ね同様の構成を有しており、軸方向の両端に雄ネジ111,121(図3及び図4参照)が形成された鋼管である。そして、これら先頭管11及び第1中間管12は、内壁面に雌ネジが形成された円筒状のカプラ16によって接続されている。すなわち、先頭管11の後端部と第1中間管12の先端部とがカプラ16を介して接続され、これらの鋼管11,12の内部空間が連通する。また、先頭管11及び第1中間管12の外周面には、軸方向及び周方向に所定間隔をおいて複数の貫通孔112,122(図3及び図4参照)が形成されており、各貫通孔112,122により、各鋼管11,12の内部空間と外部とが連通する。
【0018】
長尺管1を地山に打設する際には、先頭管11の先端に削孔ビット等が取り付けられる。以下、この点について、図2を参照しつつ詳細に説明する。図2は削孔ビット等が取り付けられた先頭管の一部断面図である。図2に示すように、先頭管11の先端には、筒状のケーシングシュー21がネジ締め又は溶接で取り付けられており、このケーシングシュー21の内部に、ビットアダプタ22が、削孔振動による軸方向への移動を許容された形で収まっている。そして、ビットアダプタ22の先端には、地山を削孔する削孔ビット23が取り付けられ、ケーシングシュー21から突出している。削孔ビット23の先端には、複数の刃体231が設けられており、この刃体231によって地山を削孔する。また、ビットアダプタ22の後部にはロープねじ状の雌ネジが形成されており、この雌ネジに、削孔ロッド24が螺合されている。そして、削孔ロッド24は、長尺管1の内部を通過して、長尺管1の後方に配置されるドリフタ等の削孔機3に連結されている(図7参照)。
【0019】
また、削孔ビット23とビットアダプタ22とは、行き止まり嵌合キー溝で係合しており、削孔機3によって削孔ロッド24をビットアダプタ22とともに正転駆動させると係合状態が維持され、逆転させると、このキー溝からビットアダプタ22が離脱する。
【0020】
次に、バルクヘッド管13について、図3(a)、図3(b)、及び図4を参照しつつ説明する。図3(a)、図3(b)、及び図4は長尺管の一部を示す側面図である。図3(a)に示すように、バルクヘッド管13は、円筒状に形成され、軸方向の両端部に雄ネジ131が形成されている。また、これら雄ネジ131の間の部分はエキスパンドメタルにより形成されている。すなわち、バルクヘッド管13は、エキスパンドメタルにより多数の貫通孔132が形成された鋼管であり、これら貫通孔132によりバルクヘッド管13の内部空間と外部が連通している。そして、バルクヘッド管13の先端部と、第1中間管12の後端部とは、上述したカプラ16により接続されている。なお、バルクヘッド管13は、エキスパンドメタル以外で構成してもよく、例えば、図3(b)に示すように、両端の雄ネジ131の間をパンチングメタルにより形成することもできる。すなわち、バルクヘッド管13は、先頭管11及び第1中間管12よりも貫通孔が多い、開口率の大きい鋼管により形成されている。
【0021】
さらに、バルクヘッド管13は、先頭管11及び第1中間管12よりも貫通孔132による開口率が大きければ良いので、例えば、図4に示すように、バルクヘッド管を構成することができる。例えば、先頭管11及び第1中間管12の貫通孔112,122のピッチが300mmごとに周方向に2箇所づつ開いている場合、図4に示すように、バルクヘッド管13の貫通孔132を50〜100mmピッチで形成する等、先頭管11及び第1中間管12と同材質の鋼管を用いて貫通孔112,122よりも貫通孔132の数量を増やすことで、バルクヘッド管13を形成しても良い。
【0022】
第2中間管14及び端末管15は、円筒状の鋼管であり、軸方向の両端部に雄ネジ141,151が形成されている。但し、先頭管11や第1中間管12と異なり、貫通孔が形成されていない。そして、バルクヘッド管13と第2中間管14、第2中間管14と端末管15とは、上述したカプラ16により接続されている。なお、上述した例においては、先頭管11、第1中間管12、バルクヘッド管13、第2中間管14及び端末管15の接続にカプラ16を用いているが、それぞれの管11、12、13、14、15の側端部に雄ネジ又は雌ネジを形成しておき、カプラ16を用いることなく管同士をネジ結合で接続しても構わない。
【0023】
<2.トンネルの施工>
次に、トンネルの施工について説明する。まず、トンネルボーリングマシン4について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5に示すように、トンネルボーリングマシン4は、公知のものであり、全体として円筒状に形成されている。そして、先端部には多数のカッタビット411が取り付けられた円板状のカッタヘッド41が設けられている。また、このカッタヘッド41の後方に、円筒状のサポートプレート42が設けられている。そして、このサポートプレート42の後方から、上述した長尺管1を地山に打設するようになっている。具体的には、長尺管1は、トンネルの軸線方向Xと所定の仰角θをなすように打設される。また、図6に示すように、トンネルボーリングマシン4の外周の上部において、周方向に約90度〜120度の領域に複数の長尺管1が打設される。
【0024】
<2−1.長尺管の打設>
次に、長尺管1の打設について、図7図12を参照しつつ説明する。まず、図2に示すように、削孔ビット23とビットアダプタ22とを連結するとともに、削孔ビット23を先頭管11に配置する。また、図7に示すような公知の削孔機3を準備する。削孔機3には、シャンクロッド(図示省略)を介して削孔ロッド24が取り付けられ、削孔ロッド24の先端をビットアダプタ22を介して削孔ビット23に連結する。シャンクロッドの後端にはスプライン軸が取り付けられており、このスプライン軸は、削孔機3の駆動軸に連結される。すなわち、削孔ビット23は先頭管11内に挿通された削孔ロッド24とビットアダプタ22を介して削孔機3の駆動軸とスプライン結合され、回転力、打撃力、推力が伝達される。
【0025】
そして、削孔ビット23の先端面を地山表面に当接させ、削孔機3を駆動して地山を削孔していく。このとき、先頭管11は、上述したように、トンネル軸線方向Xと所定の仰角θをなすように打設される。こうして、削孔されていくが、削孔ビット23は先頭管11と連結されているため、削孔ビット23とともに先頭管11も地山に進入していく。このとき、削孔ビット23の外径は先頭管11の外径より僅かに大きいだけなので、先頭管11は削孔内壁面と接しつつ、前進していく。こうして、先頭管11を地山に進入させたところで、カプラ16により第1中間管12を先頭管11の後端に連結するとともに、削孔ロッド24にも同様に2本目を連結し、削孔・打設作業を継続していく。こうして、削孔の進行とともにバルクヘッド管13、第2中間管14、及び端末管15を連結していき、その後、削孔機3を停止する。なお、図7は、先頭管11、第1中間管12、及びバルクヘッド管13を連結した状態で削孔を行っている図である。これに続いて、削孔機3を逆転させ、ビットアダプタ22を削孔ビット23から取り外し、ビットアダプタ22及び削孔ロッド24を長尺管1から引き抜く。すなわち、地山には、削孔ビット23及び長尺管1が取り残された状態となる。
【0026】
<2−2.パッカの施工>
次に、長尺管の内部に2個のパッカと4本の注入管を取り付ける。この点について、図8図10を参照しつつ説明する。ここでは、先端側に配置されるパッカを第1パッカ5、後端側に配置されるパッカを第2パッカ6と称し、長尺管1の先端側に注入材を注入するための注入管を第1注入管7、第1パッカ5と第2パッカ6との間の領域に注入材を注入するための注入管を第2注入管8、第1パッカ5に注入材を注入するための注入管を第1パッカ注入管59、第2パッカ6に注入材を注入するための注入管を第2パッカ注入管69と称することとする。
【0027】
まず、図8に示すように、長尺管1の後端から第1及び第2パッカ5,6と第1及び第2注入管7,8、第1及び第2パッカ注入管59,69を挿入する。このとき、第1注入管7、第1パッカ注入管59、第2注入管8、及び第2パッカ注入管69を、この順で軸方向に後方にずらせて束ねる。そして、第1注入管7の先端が第1パッカ5より前方に突出するように取り付け、第1パッカ注入管59の先端が第1パッカ5内に開口するように取り付ける。また、第2注入管8の先端が第2パッカ6より前方に突出するように取り付け、第2パッカ注入管69の先端が第2パッカ6内に開口するよう取り付ける。このとき、第2パッカ6には、第1注入管7と第1パッカ注入管59とが通り抜けるように取り付けられる。また、第1パッカ5は、バルクヘッド管13の先端付近に配置され、第2パッカ6はバルクヘッド管13の後端付近に配置される。
【0028】
次に、各パッカについて、図9を参照しつつ説明する。図9は、バルクヘッド管に挿入された拡張前の第2パッカを示している。同図に示すように、拡張前の第2パッカ6は、上述した4つの注入管7,8,59,69を覆う筒状に形成され、軸方向に並ぶ3つの部位により形成されている。すなわち、先端側から後端側に並ぶ、第1部位61,第2部位62,及び第3部位63がこの順で並ぶように連結されている。第1部位61は、ナイロンなどの液不透過性のシート材で形成されており、その先端部が第1及び第2注入管7,8及び第1パッカ注入管59に固定されている。第2部位は、さらし木綿などの液透過性のシート材で形成されており、第1部位61よりも径が小さく形成されている。また、第2パッカ注入管69は、その先端が、第2部位62内で開口するよう挿通されている。そして、第3部位63は、第1部位61と同様の外径を有する液不透過性のシート材で形成され、その後端部が4つの注入管6,7,59,69に固定されている。第1から第3部位61〜63の内部空間は連通し、4つの注入管7,8,59,69の周囲に閉空間を形成している。
【0029】
第1パッカ5も、第2パッカ6と同様に形成されている。但し、第1パッカ5では、第1部位61の先端部が第1注入管7に固定され、第1パッカ注入管59の先端が、第2部位62内で開口するように構成されている。また、第3部位63の後端部が第1注入管6及び第1パッカ注入管59に固定されている。
【0030】
次に、パッカの施工について説明する。図10に示すように、第2パッカ注入管69にウレタンにより構成された第1注入材(例えば、株式会社ケー・エフ・シー製 RBSレジン・LV−60N)100を注入する。これにより、第1注入材100は、第2パッカ注入管69の先端開口から排出され、第2パッカ6の内部に充填される。第1注入材100は、第2パッカ6の第1部位61と第3部位63を拡張させ、これらはバルクヘッド管13の内壁面に接触する。また、第1注入材100は第2部位62からバルクヘッド管13の内部に流入し、第1部位61と第3部位63の間に充填される。そして、第1注入材100の一部は、バルクヘッド管13から貫通孔132を介して外部に流出する。こうして、第1部位61及び第3部位63がバルクヘッド管13に密着し、さらに第1部位61と第3部位63との間に第1注入材100が充填されることで、長尺管1の内部空間は第2パッカ6により軸方向に仕切られる。
【0031】
同様にして、第1パッカ注入管59に第1注入材100を注入すると、第1パッカ5が拡張し、長尺管1の内部空間は第1パッカ5により軸方向に仕切られる。そして、第1注入材100が硬化すると、第1パッカ5及び第2パッカ6により、バルクヘッド管13の前端部及び後端部が閉じられ、バルクヘッド管13には軸方向に閉鎖された閉鎖空間が形成される。但し、第2注入管8の先端開口は、この閉鎖空間に開放されている。また、第1注入管7の先端開口は、第1パッカ5よりも先端側、つまり第1中間管12の内部で開放されている。
【0032】
<2−3.注入材の注入>
次に、図11に示すように、第2注入管8から第1注入材100を注入し、その先端開口から排出させる。これにより、閉鎖空間に第1注入材100が注入される。第1注入材100は、閉鎖空間から貫通孔132を介して地山に流れ出す。そして、第1注入材100は発泡しながら、バルクヘッド管13の周囲の地山で硬化する。
【0033】
続いて、第1注入管7から、シリカレジンで構成された第2注入材(例えば、株式会社ケー・エフ・シー製 RBS−USR)200を加圧注入する。例えば、注入速度5kg/minで初期圧+0.25MPaになるまで加圧するように、第2注入材200を注入する。第2注入材200は、第1注入管7の先端の第2開口72から排出され、先頭管11及び第1中間管12の内部空間(前方空間)に注入される。そして、図12に示すように、第2注入材200は、貫通孔112,122から先頭管11及び第1中間管12の外部の地山に流れ出し、硬化する。こうして、トンネルボーリングマシン4のカッタヘッド41よりも先端の地山が長尺管1及び注入材100,200により改良される。
【0034】
<2−4.掘削>
続いて、トンネルボーリングマシン4を駆動し、長尺管1の長さの2/3程度地山を掘削する。その後、上記のような長尺管1の打設、注入材100,200の注入、及びトンネルボーリングマシン4による掘削を繰り返し、トンネルの施工を進行していく。なお、図5に示すように、先に打設された長尺管1と、後に打設された長尺管1とが、側面視において、オーバーラップするように長尺管1の打設を行う。特に、バルクヘッド管13は、カッタヘッド41の直上付近、即ち、トンネルボーリングマシン4により掘削されて緩んで岩盤の割目が開口した範囲と緩んでいない範囲の境界に設置されることが好ましい。
【0035】
例えば、長尺管1の全長が15.5mとなるよう、長さ3.5mの先頭管11に後続させて、長さ3mの第1中間管12、長さ3mのバルクヘッド管13、長さ3mの第2中間管14、長さ3mの端末管15を順次接続しながら打設する長尺先受け工を掘進距離9mごとに施す場合、ラップ長は6mとなる。そして、カッタヘッド41の後方6m程度の位置から斜め前方地山に向けて施工を行うと、カッタヘッド41の直上から約3m前方までの間にバルクヘッド管13による注入材100の塊(バルクヘッド)が形成され、それより前方側の地山にシリカレジンで構成された第2注入材200が的確に注入される。従って、トンネルボーリングマシン4により掘削されて緩んで岩盤の割目が開口した範囲と緩んでいない範囲の境界にバルクヘッド管13が設置され、これからトンネルボーリングマシンが掘進するべき地山の改良が確実に行われる。
【0036】
<3.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、バルクヘッド管13の先端部及び後端部にパッカ5,6をそれぞれ配置して閉鎖空間を形成し、この閉鎖空間から多数の貫通孔132を介して地山に第1注入材100を排出している。そのため、バルクヘッド管13の周囲には、第1注入材100が地山の割れ目ならびに空隙を塞ぐように供給されるため、これが壁になる。これにより、先頭管11及び第1中間管12から流れ出した第2注入材200が、第1注入材100による壁によって、長尺管1の後端側に流れるのを防止することができる。その結果、長尺管1の第2中間管14よりも先端側の地山を第1注入材100及び第2注入材200により確実に改良することができる。したがって、図5に示すように、先に打設した長尺管1と、後に打設した長尺管1との間に注入材が十分に注入されていない領域が生じるのを防止することができる。すなわち、先に打設した長尺管1から排出される注入材と、後に打設した長尺管1から排出される注入材とが、側面視においてオーバーラップさせることができるため、地山の改良を効果的に行うことができる。
【0037】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0038】
<4−1>
上記実施形態では、第2中間管14及び端末管15に貫通孔を設けていないが、これらの鋼管14,15に貫通孔を設け、注入材を注入して地山に排出することもできる。
【0039】
<4−2>
長尺管1を構成する鋼管の数は特には限定されない。また、バルクヘッド管13を配置する位置も特には限定されず、最後端の鋼管よりも前方で、最先端の鋼管よりも後方であれば、いずれの位置であってもよい。また、バルクヘッド管13を複数連結し、連結した複数のバルクヘッド管13の前端及び後端に上述したパッカ5.6を取り付けて閉鎖空間を形成することもできる。
【0040】
<4−3>
パッカの構成は特には限定されず、上述した閉鎖空間を形成するために、長尺管1の内部を軸方向に仕切れるような構成であればよい。また、注入管の数も特には限定されない。上記実施形態では、パッカ5,6を拡張させるために注入材を注入する注入管と、鋼管の内部に注入材を注入する注入管を同じにしているが、分けてもよい。すなわち、鋼管の内部に注入材を注入するための専用の注入管を設けることもできる。
【0041】
<4−4>
注入材の種類は特には限定されない。すなわち、第1注入材100のみを用いることもできる。すなわち、パッカ5,6を拡張でき、地山を改良できるような注入材であれば、その種類や数は特には限定されない。
【0042】
<4−5>
バルクヘッド管13の構成も特には限定されず、バルクヘッド管13よりも先端側の鋼管11,12の貫通孔112,122の開口率よりも大きい開口率となるように貫通孔132が形成されていればよい。したがって、上述したエキスパンドメタルやパンチングメタル以外でも、多数の貫通孔が形成されている鋼管であればよい。
【0043】
<4−6>
トンネルボーリングマシン4の構成も特には限定されず、カッタヘッド41よりも後方で長尺管1を打設できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 長尺管
112 貫通孔
122 貫通孔
13 バルクヘッド管
132 貫通孔
4 トンネルボーリングマシン
5 第1パッカ
6 第2パッカ
図1
図2
図3
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図13