特開2019-183591(P2019-183591A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-183591(P2019-183591A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】ひび割れを有する構造物の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20190927BHJP
【FI】
   E04G23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-79436(P2018-79436)
(22)【出願日】2018年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515267264
【氏名又は名称】株式会社日本メンテ
(72)【発明者】
【氏名】結城 康弘
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造物のひび割れを補修するにあたり、ひび割れや内部欠陥などの空隙に、無機質系材料をひび割れの内部から高品質で効率よく注入できる補修方法の提供。
【解決手段】ひび割れ補修用の無機質系注入材を注入するための注入孔10を、構造物表面のひび割れ11と一定の離隔を備えた位置から、ひび割れ11と斜めに交差するよう穿孔し、注入孔10の構造物表面の開放口に、無機質系注入材を注入するための注入プラグ1を挿入する。注入プラグ1からひび割れ内部の夾雑物を取り除くために水を圧入して洗浄し、その後注入プラグ1を介して、無機質系注入材を注入する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にひび割れを有する構造物を、前記ひび割れへの無機質系注入材の充填により補修するひび割れ補修方法であって、前記ひび割れに沿って、前記ひび割れと一定の距離を保持する位置に、前記ひび割れに対応する間隔で、複数の削孔位置をマーキングする工程と、水流式ドリルにより、マーキングした前記削孔位置に、前記ひび割れ内部で斜めに貫通する注入孔を削孔する注入孔削孔工程と、前記無機質系注入材を注入するための注入プラグを、前記注入孔に挿入固定する注入プラグ取付け工程と、前記注入プラグより、前記ひび割れの内部に浄水を注入して、前記ひび割れ内部の洗浄と湿潤化を行うひび割れ洗浄工程と、前記無機質系注入材を、前記注入プラグより注入した際に、前記ひび割れが前記構造物の表面に開放されているひび割れ開放口から前記注入材が漏出するのを防ぐために、前記ひび割れ開放口を無機質系シール材により閉塞するひび割れ開放口シール工程と、前記ひび割れの内部に、前記無機質系注入材を、前記注入プラグを介して、注入ポンプにて充填する無機質系注入材充填工程と、前記無機質系注入材の硬化後に、前記注入プラグ及び無機質系シール材を撤去するプラグ・シール撤去工程と、前記注入プラグの撤去により生じる有底孔に、補修用モルタルを充填し、前記構造物表面の仕上げを行う仕上げ工程を有することを特徴とする構造物のひび割れ補修方法。
【請求項2】
前記注入孔削孔工程は、前記注入孔が前記ひび割れを内部で貫通するために、前記ひび割れ開放口より一定の距離をなす位置から、前記注入孔が前記構造物表面の法線に対して45°以上60°以下の角度をなすように傾斜させ、水流式ドリルにより切削粉塵を洗い流しながら穿孔することを特徴とする、請求項1記載の構造物のひび割れ補修方法。
【請求項3】
前記注入プラグは、中心に前記無機質系注入材が通過する注入材通過孔が穿設された略円筒状を備え、前記無機質系注入材の吐出側には小径部が形成され、前記無機質系注入材の圧入側には大径部が形成されてなる中空シャフトと、前記大径部の内部に形成されてなる前記無機質系注入材の逆流を防止する逆流防止機構と、前記小径部の外周に弾性素材のジャバラパッキンを装着してなる定着部とを備えることで、取付に接着剤や特殊な工具を必要としないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造物のひび割れ補修方法。
【請求項4】
前記無機質系シール材は、規定量のセメント系材料の粉体を充填したプラスチック製のカートリッジに、規定量の浄水を、使用時に加えて混合することで調製されることを特徴とする請求項1に記載の無機質系シール材。
【請求項5】
前記無機質系注入材は、規定量のセメント系材料の粉体を充填したプラスチック製のカートリッジに、規定量の専用配合水を、使用時に加えて混合することで調製されることを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の無機質系注入材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを代表とする構造物のひび割れや内部欠陥の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、様々な構造物に多用されているが、下記の原因等によりひび割れが生じることがある。
(1)コンクリートの硬化反応に伴う収縮
(2)地盤変動や荷重などによる外的要因
(3)環境条件に伴う膨張・収縮
(4)内部に浸み込んだ水分の凍結膨張
(5)アルカリ骨材反応による骨材の膨張
(6)内部鋼材(鉄筋)の発錆
【0003】
ひび割れの補修方法として、特許文献1には、構造物表面に露出したひび割れ表面に、注入プラグの台座を接着剤により固定し、樹脂製の圧力タンクを取付けて、タンク内に注入材料を充填することでタンク内の空気を圧縮し、空気の復元膨張力により圧入する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、構造物表面に露出したひび割れ表面に、注入プラグの台座を接着剤により固定し、軟質素材の筒状のインジェクターに注入材を充填することで加圧膨張され、軟質素材の形状復元力によりひび割れ内部に補修材を圧入する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開2003−129675
【特許文献2】特開2004−169550
【発明の概要】
【発明が解決しようとする問題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているひび割れ補修方法は、比較的新しいひび割れに、低粘度のエポキシ樹脂を、低圧で且つ低速で注入することを目的として設計されており、特に年月の経過した土木構造物にみられるひび割れ表面の汚れや閉塞物などがある場合では注入が困難であった。また、ひび割れ内部に注入する補修材が、構造物の材質と異なるため、親和性の観点から改善の余地がある。
【0006】
さらに、前記と同様の方法でセメント系材料を代表とする無機質系材料を注入する場合においては、低速で注入する過程で、比重の差に起因する、材料を構成する素材の沈降速度の差による分離の発生や、構造物側の吸水によるドライアウトを生じる問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に艦みてなされたもので、構造物のひび割れを補修するにあたり、ひび割れや内部欠陥等の空隙に、母材と同質の無機質系材料を、ひび割れの内部から高品質で効率よく注入できる補修方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、前記課題の解決のため、ひび割れに補修材料を充填する方法を、鋭意検討した結果なされたものである。
【0009】
つまり、本発明は、内部にひび割れを有する構造物を、前記ひび割れへの無機質系注入材の充填により補修するひび割れ補修方法であって、前記ひび割れに沿って、前記ひび割れと一定の距離を保持する位置に、前記ひび割れに対応する間隔で、複数の削孔位置をマーキングする工程と、水流式ドリルにより、マーキングした前記削孔位置に、前記ひび割れ内部で斜めに貫通する注入孔を削孔する注入孔削孔工程と、前記無機質系注入材を注入するための注入プラグを、前記注入孔に挿入固定する注入プラグ取付け工程と、前記注入プラグより、前記ひび割れの内部に浄水を注入して、前記ひび割れ内部の洗浄と湿潤化を行うひび割れ洗浄工程と、前記無機質系注入材を、前記注入プラグより注入した際に、前記ひび割れが前記構造物の表面に開放されているひび割れ開放口から前記注入材が漏出するのを防ぐために、前記ひび割れ開放口を無機質系シール材により閉塞するひび割れ開放口シール工程と、前記ひび割れの内部に、前記無機質系注入材を、前記注入プラグを介して、注入ポンプにて充填する無機質系注入材充填工程と、前記無機質系注入材の硬化後に、前記注入プラグ及び無機質系シール材を撤去するプラグ・シール撤去工程と、前記注入プラグの撤去により生じる有底孔に、補修用モルタルを充填し、前記構造物表面の清掃を行う仕上げ工程を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記注入孔削孔工程が、前記注入孔が前記ひび割れを内部で貫通するために、前記ひび割れ開放口より一定の距離をなす位置から、前記注入孔が前記構造物表面の法線に対して45°以上60°以下の角度をなすように傾斜させ、水流式ドリルにより切削粉塵を洗い流しながら穿孔することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記注入プラグが、中心に前記無機質系注入材が通過する注入材通過孔が穿設された略円筒状を備え、前記無機質系注入材の吐出側には小径部が形成され、前記無機質系注入材の圧入側には大径部が形成されてなる中空シャフトと、前記大径部の内部に形成されてなる前記無機質系注入材の逆流を防止する逆流防止機構と、前記小径部の外周に弾性素材のジャバラパッキンを装着してなる定着部とを備えることで、取付に接着剤や特殊な工具を必要としない注入プラグを用いることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記無機質系シール材及び前記無機質系注入材が、規定量のセメント系材料の粉体を充填したプラスチック製のカートリッジに、規定量の浄水又は専用の配合水を、使用時に加えて混合することで調製されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、ひび割れに沿って一定の間隔で、予めマーキングを施した位置に、水流式ドリルを用いて、無機質系注入材を注入するための注入プラグを挿入固定するするための注入孔を穿孔する。このような処理は、一箇所の注入孔から無機質系注入材をひび割れ内部に注入できる範囲が限定されるからであり、適正な間隔で複数の注入口を設けることにより、ひび割れ内部に十分な量の無機質系注入材を充填できる。
【0014】
ひび割れ内部には、塵や析出物などによる閉塞物が存在することが多く、ひび割れが表面に露出した開口部から、直接無機質系注入材を圧入すると、閉塞物の影響を強く受けて、ひび割れの内部まで十分に無機質系注入材を充填できないことがあるが、本発明においては、ひび割れを構造物内部で貫通するように、注入孔を斜めに穿孔することで、ひび割れ内部から無機質系注入材を注入できるためこの問題を大幅に低減できる。なお、注入孔を構造物表面の法線に対して45°以上60°以下とした理由は、これよりも小さい角度ではプラグの固定が困難となり、これよりも大きい角度では、注入孔がひび割れに到達する距離が過度に長くなるためである。
【0015】
また、本発明においては、注入孔穿孔に水流式ドリルを用いることで、穿孔により生じるコンクリートの切削粉を洗い流しながら穿孔するため、ひび割れに通じた目詰まりのない清浄な注入孔を設けることができる。
【0016】
また、本発明においては、注入プラグの定着側には、弾性素材で構成されるジャバラパッキンを備え、注入孔に挿入した注入プラグは簡単に固定が可能であり、接着剤や、特殊な工具が不要となり、施工時間の短縮に寄与する。また、注入作業終了後に撤去する作業も容易である。
【0017】
また、本発明においては、無機質系注入材をひび割れ内部に注入する前に、注入プラグより浄水を加圧注入することで、ひび割れ内部の塵や汚れを洗い流す工程により、ひび割れ空隙への無機質系注入材の充填性及び接着性を向上させると共に、無機質系注入材料のドライアウトを防止するための湿潤化が可能である。なお、ここで用いる浄水とは、泥分や塩分などの不純物を含まない水であり、水道水を用いることが可能である。
【0018】
また、本発明に用いる注入プラグは、前記のように固定用のジャバラパッキンを備える他、圧縮ばねで付勢された弁により注入圧を加えることで弁が開き、注入を終了することで弁が閉じて逆流を防ぐ逆流防止機構を備える。また、逆流防止弁を開放するための逆止弁開放ピンを取付けることで、他の場所に取付けた注入プラグから注入された注入材のリーク口として、また、内圧を開放するためのエアー抜き口として用いることが可能で、3種の機能を付与することが可能である。
【0019】
また、予めセメント系材料と水を混合しておくと、特に硬化が速いセメント系材料では、注入する時点で一定の流動性を確保するのが困難となるため、本発明に用いる無機質系注入材では、規定量のセメント系材料の粉体をプラスチック製のカートリッジに充填して調製した製品を用い、材料使用時直前に、規定量の浄水又は配合水を加えて振り混ぜることで、必要な量の無機質系シール材及び無機質系注入材が得られ、手動式注入ポンプによりこれらの材料を用いることにより、配合間違いのない安定した材料品質確保、閉所や足場上での施工性向上、カートリッジの空体による注入量の正確な管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に用いる注入プラグの一例を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は断面図
図2】本発明に用いる逆止弁開放ピンの一例の断面図
図3】構造物内部に発生したひび割れを、ひび割れがなす面に直行する方向から示した断面図で、本発明に係る注入孔設置方法の基本構成を示す図
図4図3を図における横方向から見た、ひび割れに対応する間隔にて設置した注入プラグの配列構成を示す図
図5】構造物を補修する補修方法の工程を示した施工工程図
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に具体的な例を示す図に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明に用いる注入プラグの一例を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は断面図である。また、図2は、本発明に用いる逆止弁開放ピンの一例を示す正面図である。
【0023】
図1(a)、(b)に示した注入プラグ1は、図1(a)、(b)における左側の端部を注入孔に挿入する。ジャバラパッキン2は、材質がゴム系の弾性材料で、外径が注入孔の内径よりも大きくなるように構成し、図における左側先端に向けて外径が小さくなるテーパー形状を付与することで、プラスチックハンマーなどを用いて注入孔に打ち込むことで、ジャバラパッキン2の弾性で注入孔の内部に固定される。
【0024】
また、逆止弁開放ピン6を、図1(a)の注入プラグ1に、図1(b)示した矢印の方向から挿入し、係止部8が注入プラグの右端に達する位置まで挿入固定することで、逆止弁5aは図における矢印の方向に押し込まれ、逆止弁機構5が開放状態となる。
【0025】
図3は、構造物内部に発生したひび割れを、ひび割れがなす面に直交する方向から示した断面図で、本発明に係る注入孔設置方法の基本構成を示す。図3に示したように、注入孔10を、水流式ドリルを用いて構造物表面の法線に対して、図に示した角度θを45°以上60°以下として、斜めに貫通削孔するには、構造物表面から例えば100mm程度の深さでひび割れを貫通するための必要長として、有効長220mm、即ち、図3に示したように、深さをaとしたときの、a/sinθの軸長を持ったドリルシャフトを用い、注入孔の穿孔に必要なドリルの回転数である無負荷回転数10000(回/分)程度の電動ドリルを使用することが望ましい。
【0026】
注入孔10を穿孔した後、図3に示したように、注入プラグ1を挿入し、注入プラグ1を介して浄水を、ひび割れ11に加圧注入して洗浄し無機質系シール材12で開口部11aを閉塞する。このように、ひび割れ内部に堆積した塵や汚れを事前に洗い流すことで、ひび割れ空隙への補修材の注入阻害要因を除去し、補修材料の充填性及び接着性を大幅に向上させることが可能となり、さらに無機質系注入材のドライアウトを防止するための湿潤化も可能となる。
【0027】
無機質系シールに用いる材料としては、例えば10分ないし30分以内で硬化するいわゆる超速硬セメントの粉体を、規定量でプラスチック製のカートリッジに充填した製品に、材料使用時に規定量の浄水を加えて振り混ぜることで、安定した品質の超速硬セメントシール材が得られるカートリッジ式無機質系シール材を、コーキングガンなどにより使用する。なお、ひび割れの充填に用いる無機質系注入材は、構造物の劣化性状に合わせて様々な材料の配合、選択が可能である。
【0028】
図4は、ひび割れ面を横方向からみた、ひび割れに適用する間隔にて設置した注入プラグの配列構成を示す図である。図4(a)は、前述の注入個所設置方法の基本構成にて、ひび割れに沿って無機質系注入材が充填されたカートリッジ15を注入プラグに挿入して、手動式注入ポンプ(図示せず)でひび割れ内部に無機質系注入材を充填する状態を示す。
【0029】
図4(b)は、カートリッジ15より注入された無機質系注入材が、ひび割れ内部に溜まっていき、材料水位が隣接するプラグ位置まで達した段階で、逆止弁開放ピン14aが取り付けられた注入プラグより排出されることで、材料の充填完了の確認ができる状態を示す。また、図4(c)は、逆止弁開放ピン14bが取り付けられた注入プラグより、ひび割れ内部の空気を排出し、無機質系注入材の充填を阻害する内圧の開放を行う状態を示す。
【0030】
無機質系注入材の注入完了後、カートリッジ15を抜き、注入プラグ及び注入プラグに取付けられた逆止弁開放ピン14a、14bを、それぞれ図4における(b)から(c)の方向に、隣接されている注入プラグに順次移動しながら、ひび割れへの無機質系注入材の注入を行う。
【0031】
図5は、構造物を補修する補修方法の工程を示した施工工程図である。注入孔マーキング工程(1)は、構造物に発生したひび割れに沿って、ひび割れ幅に適用する間隔にて千古位置をマーキングする工程である。
【0032】
注入孔穿孔工程(2)は、マーキングした穿孔位置に、例えば10.5mm程度の注入孔を穿孔する工程である。注入孔の穿孔方法は、発生しているひび割れよりも一定の離隔を設けた位置に、水流式ドリルを補修の対象となる構造物表面の法線に対して、適宜角度をなすように傾斜させ、ひび割れの内部で貫通するように穿孔する。
【0033】
注入プラグ取付け工程(3)は、穿孔した注入孔に注入プラグを挿入、固定する工程である。定着部のジャバラパッキンは、テーパー状の角度を持たせているため、穿孔穴への挿入が容易で、ゴムハンマー等で軽く打設することで確実な取り付けができる。取り付けに際し、接着剤や特殊な工具が不要であり、取り付け後直ぐに注入作業が可能であり、施工時間の短縮が図れる。
【0034】
ひび割れ内洗浄工程(4)は、取付けた注入プラグから給水ポンプ等により、水道水等の浄水を加圧注入し、ひび割れ内部を洗浄する工程である。注入した浄水は、ひび割れ面より湧出し、ひび割れ内部の塵や汚れなどの堆積物を洗い流すことで、無機質系注入材の充填性を向上させる。また、事前に浄水を加圧注入することで、発生しているひび割れの連続した範囲の確認と、セメント系注入材が構造物本体に吸水されて生じるドライアウトの防止を兼ねる。
【0035】
ひび割れシール工程(5)は、注入材の充填時にひび割れ面からの材料漏出を防ぐために、ひび割れ表面をシール材により閉塞する工程である。カートリッジ式無機質系シール材を用いることにより、湿潤面への施工が可能なことや、硬化が速いことにより施工時間が短縮できる。また、無機質系シール材は撤去が容易で、外観回復性が良い
【0036】
注入材充填工程(6)は、対象となるひび割れの最下部又は最端部に取付けた注入プラグから、カートリッジ式無機質系注入材を注入ポンプにより適宜加圧して充填し、逆止弁を開放した隣接プラグからの材料リークを確認しながら順次隣のプラグへと移行する。カートリッジ式無機質系注入材を使用することで、必要な量をその場で混錬でき、これまでの混錬し過ぎによる材料の無駄をなくし、また、カートリッジの本数管理により注入量管理も容易となる。
【0037】
プラグ・シール材撤去工程(7)は、充填した材料が硬化した後に、注入プラグを注入孔から引き抜き、シール材を撤去する工程である。注入プラグは、ジャバラパッキンのグリップ力のみで固定されているため、特別な工具不要で短時間で撤去可能である。またセメント系シール材は、皮スキや平タガネ等で軽く打撃することで容易に撤去可能である。
【0038】
穿孔穴充填・仕上げ工程(8)は、プラグ撤去後の有底孔に補修モルタル等を充填し平滑に仕上げる工程である。復旧に使用するモルタルは、構造物の母材コンクリートと同等以上の性能のものを用いる。
【0039】
以上に説明したように、本発明によれば、従来の方法では施工が困難であった無機質系注入材によるひび割れ注入方法を、材料の性質を十分に考慮した方法及び工程により構成され、これまでにはない施工品質を向上させるひび割れ洗浄工程や、使用する材料全てを無機質系材料で構成したことによる環境負荷低減効果は極めて大きいと言える。なお、本発明は、前述実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有するものであれば想到し得る各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれることは論を俟たない。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・注入プラグ 2・・・・ジャバラパッキン
3・・・・小径部 4・・・・大径部
5・・・・逆流防止機構 5a・・・逆止弁
5b・・・圧縮ばね 6・・・・逆止弁開放ピン
7・・・・把持部 8・・・・係止部
9・・・・開放溝 10・・・注入孔
11・・・ひび割れ 11a・・ひび割れ開口部
12・・・無機質系シール材
13・・・鉄筋
14a、14b・・逆止弁開放ピン取付け状態のプラグ
15・・・カートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5