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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-183610(P2019-183610A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】改修外囲体
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/00 20060101AFI20190927BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20190927BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   E04D3/00 T
   E04F13/08 101S
   E04G23/02 G
   E04G23/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-112169(P2018-112169)
(22)【出願日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2018-71504(P2018-71504)
(32)【優先日】2018年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 晃二
(72)【発明者】
【氏名】大西 正晃
【テーマコード(参考)】
2E108
2E110
2E176
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108BB04
2E108BN05
2E108CC15
2E108DD05
2E108EE02
2E108FF12
2E108GG15
2E110AA42
2E110AA51
2E110AA52
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB22
2E110BD02
2E110BD03
2E110BD05
2E110CA09
2E110CA13
2E110DA12
2E110DA16
2E110DB13
2E110DB22
2E110DC12
2E110GA33
2E110GB23
2E176AA02
2E176AA23
2E176BB25
(57)【要約】
【目的】老朽化した波形スレートの屋根,壁等の外囲体の改修において、その既設スレート外囲体を撤去せず、そのままにしてその外面から新設の屋根板又は壁板を簡易且つ迅速に施工することができる改修外囲体とすること。
とすること。
【構成】既設スレート壁7と、通し下地材1と、既設固定ボルト73と、貫通孔22と係止溝部21とが形成された取付基板部2と下支持片32を有する取付ピースAと、ロック部材5と、新設建築板材81とを備えること。取付ピースAは、既設スレート壁7から突出する固定ボルト73が係止溝部21に挿入されると共にロック部材5,6を介して既設スレート外囲体7に装着され、通し下地材1が取付ピースAに固定されると共に、通し下地材1上に新設建築板材81が取付施工されること。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面波形状の既設スレート外囲体と、長手方向に長尺とした通し下地材と、前記既設スレート外囲体の既設固定ボルトが挿入される貫通孔と該貫通孔に連通する直線且つ垂直状の係止溝部が形成された取付基板部と該取付基板部の下端に位置する下支持片を有する取付ピースと、該取付ピースを前記既設固定ボルトに固定するロック部材と、新設建築板材とを備え、前記取付ピースは、前記既設スレート外囲体から突出する前記固定ボルトが前記係止溝部に挿入されると共に前記ロック部材を介して前記既設スレート外壁に装着され、前記通し下地材が前記取付ピースに固定されると共に、前記通し下地材上に前記新設建築板材が取付施工されてなることを特徴とする改修外囲体。
【請求項2】
請求項1に記載の改修外囲体において、前記取付ピースの前記下支持片は前記取付基板の下端から折返し状に屈曲形成されてなることを特徴とする改修外囲体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の改修外囲体において、前記取付ピースの前記取付基板部の幅方向両側で、且つ前記下支持片の形成側とは反対側に向かって突出する補強片が形成されてなることを特徴とする改修外囲体。
【請求項4】
請求項1,2又は3の何れか1項に記載の改修外囲体において、前記取付ピースの前記取付基板部における前記貫通孔と前記係止溝部との境に位置する角部分には、前記取付基板部の外面側に向かって傾斜する傾斜突起が形成されてなることを特徴とする改修外囲体。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の改修外囲体において、前記ロック部材は、ベース板部とボルト軸貫通孔と該ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に形成された複数の捩れ傾斜板状部とを有し、複数の該捩れ傾斜板状部の先端は、前記ボルト軸貫通孔の周方向に沿って同一方向に傾斜させると共に前記既設固定ボルトのボルト軸部の外ネジ部に係止することを特徴とする改修外囲体。
【請求項6】
請求項5に記載の改修外囲体において、前記ロック部材の前記捩れ傾斜板状部の前記ベース板部からの立ち上がり箇所の折曲線は、前記ボルト軸貫通孔に対して接線方向となることを特徴とする改修外囲体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の改修外囲体において、前記ロック部材は、前記ベース板部に前記ボルト軸貫通孔が形成され、該ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に切込み線が形成され、前記ボルト軸貫通孔の周縁に前記切込み線と同数で且つ接線方向に折曲基準線が形成され、該折曲基準線に沿って前記ベース板部より一方側の面に立ち上げるように折曲することにより前記捩れ傾斜板状部が形成されてなることを特徴とする改修外囲体。
【請求項8】
請求項5,6又は7の何れか1項に記載の改修外囲体において、隣接する前記捩れ傾斜板状部間の切込み線の外端箇所には補助貫通孔部が形成されてなることを特徴とする改修外囲体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した波形スレートの屋根,壁等の外囲体の改修において、その既設スレート外囲体を撤去せず、そのままにしてその外面から新設の屋根板又は壁板を簡易且つ迅速に施工することができる改修外囲体に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した断面略波形状の屋根又は壁等の既設スレート外囲体を改修する工事では、現場である工場,会社,駐車場等において、既設スレート外囲体を撤去する作業時に粉塵等が立ち込めたり、取り外した屋根板材又は壁板材等の部品が落下したり、或は雨天の場合には設備、製品,自動車等に保護のためテント,天幕,カバー等の仮設家屋を設営しなければならないものであった。
【0003】
しかも、既設スレート外囲体を撤去する際には、飛散する粉塵に多量のアスベストが混じっており、作業員の人体及び環境に悪影響を及ぼす。このため、最近では改修外囲体の施工において、既設スレート外囲体はなるべく、そのまま残して、既設スレート外囲体上に新たなる屋根又は外壁を施工することが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−302916号公報
【特許文献1】特開2006−194050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところがこの既設スレート外囲体をベースにして、新設屋根板材又は新設建築板材を装着して新設外囲体を施工するためには、新設屋根板材又は新設建築板材を既設スレート外囲体に取り付けるための金具を既設スレート外囲体上に装着しなくてはならない。そのために、既設スレート外囲体に金具を装着するためのボルト孔等の加工を施す必要がある。
【0006】
しかし、既設スレート外囲体を構成するスレート板材の主原料は、アスベストであり、このアスベストが人体に害を与えることは大きな社会問題である。前述したように既設スレート外囲体に、金具を装着するための、貫通孔を穿孔する作業では、必ず切粉等による粉塵が発生する。この粉塵は、当然アスベストを含み、周囲に飛散し、又は付近の母屋等の鉄骨に溜まる等して、深刻なる環境汚染を発生する。
【0007】
以上述べたように、作業員にとっては、極めて危険な作業環境の中で作業が行わなければならず、そのために既設スレート外囲体への加工作業によって生じる粉塵が周囲に飛散しないように、十分なる飛散防御設備を設置しなければならず、大変な時間と手間をかけることになる。
【0008】
特許文献1及び特許文献2では、既設スレートの外壁又は屋根を残したままの状態で新設壁又は新設屋根を施工するものが開示されている。特許文献1及び特許文献2に開示された内容では、既設スレート上に新設壁又は穿設屋根を施工するための作業が面倒であったり、或いは部品点数が多かったりする等の欠点を有している。そこで、本発明が解決しようとする技術的課題は、既設スレート外壁の改修において、作業性を簡単且つ迅速にできるものとし、環境保全に即したものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、断面波形状の既設スレート外囲体と、長手方向に長尺とした通し下地材と、前記既設スレート外囲体の既設固定ボルトが挿入される貫通孔と該貫通孔に連通する直線且つ垂直状の係止溝部が形成された取付基板部と該取付基板部の下端に位置する下支持片を有する取付ピースと、該取付ピースを前記既設固定ボルトに固定するロック部材と、新設建築板材とを備え、前記取付ピースは、前記既設スレート外囲体から突出する前記固定ボルトが前記係止溝部に挿入されると共に前記ロック部材を介して前記既設スレート外壁に装着され、前記通し下地材が前記取付ピースに固定されると共に、前記通し下地材上に前記新設建築板材が取付施工されてなる改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。
【0010】
請求項2の発明を、請求項1に記載の改修外囲体において、前記取付ピースの前記下支持片は前記取付基板の下端から折返し状に屈曲形成されてなる改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の改修外囲体において、前記取付ピースの前記取付基板部の幅方向両側で、且つ前記下支持片の形成側とは反対側に向かって突出する補強片が形成されてなる改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3の何れか1項に記載の改修外囲体において、前記取付ピースの前記取付基板部における前記貫通孔と前記係止溝部との境に位置する角部分には、前記取付基板部の外面側に向かって傾斜する傾斜突起が形成されてなる改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の改修外囲体において、前記ロック部材は、ベース板部とボルト軸貫通孔と該ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に形成された複数の捩れ傾斜板状部とを有し、複数の該捩れ傾斜板状部の先端は、前記ボルト軸貫通孔の周方向に沿って同一方向に傾斜させると共に前記既設固定ボルトのボルト軸部の外ネジ部に係止する改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。
【0012】
請求項6の発明を、請求項5に記載の改修外囲体において、前記ロック部材の前記捩れ傾斜板状部の前記ベース板部からの立ち上がり箇所の折曲線は、前記ボルト軸貫通孔に対して接線方向となる改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項5又は6に記載の改修外囲体において、前記ロック部材は、前記ベース板部に前記ボルト軸貫通孔が形成され、該ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に切込み線が形成され、前記ボルト軸貫通孔の周縁に前記切込み線と同数で且つ接線方向に折曲基準線が形成され、該折曲基準線に沿って前記ベース板部より一方側の面に立ち上げるように折曲することにより前記捩れ傾斜板状部が形成されてなる改修外囲体としたことにより上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項5,6又は76の何れか1項に記載の改修外囲体において、隣接する前記捩れ傾斜板状部間の切込み線の外端箇所には補助貫通孔部が形成されてなる改修外囲体としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、本発明における取付ピースはその係止溝部を既設スレート外壁の表面より突出した既設固定ボルトと締付ナットとの間に係止溝部を挿入するのみでよく、その装着も水平方向に打ち込むようにするのみで完了するものである。また、取付基板部の下端に下支持片が形成されており、取付ピースに通し下地材を装着する際には、該通し下地材の下端を前記下支持片に一旦載置することで、作業員は通し下地材を手に持って支持する必要がなく、通し下地材を取付基板部にビス等の固着具にて固着する作業を極めて行い易くすることができる。請求項2の発明では、取付ピースの下支持片は前記取付基板の下端から折返し状に屈曲形成された構成により、既設スレート外壁に既設固定ボルトを介して装着された取付ピースに対して通し下地材を装着するときに、通し下地材の下支持片を下支持片に係止し易く、且つ外れ難い構造にでき、より一層作業性を向上させると共に、通し下地材を装着する際に該通し下地材を落下し難い状態とし、作業安全を確保することができる。
【0014】
請求項3の発明では、取付ピースの取付基板部の幅方向両側で、且つ前記下支持片と形成側とは反対側に向かって突出する補強片が形成される構成としたことにより、取付ピースの力学的強度を向上させると共に、耐久性を向上させることができる。請求項4の発明では、取付ピースの取付基板部における貫通孔と係止溝部との境に位置する角部分には、取付基板部の外面側に向かって僅かに傾斜する傾斜突起が形成される構成としたことにより、既設スレート外壁を構成する既設固定ボルトに金属製の座金と、ゴム,繊維等の非金属製の比較的柔軟な材質からなる軟質スペーサーとの間に前記傾斜突起の先端部分が入り込み易いものにできる。そして、取付ピースを既設スレート外壁に装着するときに、取付ピースが既設スレート外壁のスレート壁板材に直接接触することなく、スレート壁板材を作業中に破損することを防止できる。
【0015】
請求項5の発明では、ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に形成された複数の捩れ傾斜板状部とを有し、複数の該捩れ傾斜板状部の先端は、ボルト軸貫通孔の周方向に沿って同一方向に傾斜された構成により、取付ピースが既設スレート外囲体の既設固定ボルトを利用して装着されるときに、ロック部材のボルト軸貫通孔に既設固定ボルトを挿入させつつ押し込むだけで、既設スレート外囲体に極めて強固に装着でき、且つその作業も迅速にできる。特に捩れ傾斜板状部は、ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に形成され、且つ全ての捩れ傾斜板状部の先端は同一方向に傾斜状に形成されたことにより、複数の先端がロック部材の外周に絡みつくように包持する。したがって、ロック部材に既設固定ボルトから外れる方向に外力がかかっても、捩れ傾斜板状部の先端が既設固定ボルトの外周に極めて強い圧力で当接することになり、極めて外れ難い構造にできる。請求項6の発明では、ロック部材の捩れ傾斜板状部のベース板部からの立ち上がり箇所の折曲線は、ボルト軸貫通孔に対して接線方向となる構成としたことにより、捩れ傾斜板状部はベース板部から比較的捲られ易い構造となり、ロック部材は、ボルト軸貫通孔に既設固定ボルトを貫通させたときに既設固定ボルトの付根側に押し込みやすい構成となり、作業効率を向上させることができる。
【0016】
請求項7発明では、ロック部材は、前記ベース板部に前記ボルト軸貫通孔が形成され、該ボルト軸貫通孔の周縁から放射状に切込み線が形成され、前記ボルト軸貫通孔の周縁に前記切込み線と同数で且つ接線方向に折曲基準線が形成され、該折曲基準線に沿って前記ベース板部より一方側の面に立ち上げるように折曲することにより前記捩れ傾斜板状部が形成されてなる構成により、放射状に切込み線と、折曲基準線とに従って、加工することで極めて簡単に製造することができる。請求項8の発明では、隣接する捩れ傾斜板状部間の切込み線の外端箇所には補助貫通孔部が形成される構成としたことにより、取付ピースを既設スレート外囲体に装着するときに、ロック部材のボルト軸貫通孔に既設固定ボルトを挿通させて、ロック部材を押し込む場合、捩れ傾斜板状部が変形し易くなり、且つ変形によって、ベース板部に応力及び歪が伝達し難い構造となり、ロック部材を既設固定ボルトに極めて高い精度で且つ安定した状態で強固に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は本発明の改修外囲体の要部縦断側面図、(B)は(A)のX1−X1矢視断面で且つ通し下地材及び取付ピースを水平状に設定した縦断平面図である。
図2】(A)は既設スレート外壁に取付ピースと通し下地材を設けた斜視図、(B)は取付ピースの貫通孔に既設ボルト及び既設ナットを遊挿させた状態を示す要部拡大正面図、(C)は取付ピースの傾斜突起により係止溝部が座金と軟質スペーサとの間に挿入する工程を示す要部拡大断面図である。
図3】(A)は取付ピースの斜視図、(B)は取付ピースの正面図、(C)は(A)のY1−Y1矢視断面図、(D)は(B)のX2−X2矢視一部拡大断面図、(E)は通し下地材の一部省略した斜視図である。
図4】(A)はロック部材をカシメナットとした実施形態の本発明の要部斜視図、(B)は(A)の縦断側面図、(C)はロック部材をプッシュナットとした実施形態の本発明の要部斜視図、(D)は(C)の縦断側面図である。
図5】(A)は第3実施形態のロック部材の平面図、(B)は第3実施形態のロック部材の斜視図、(C)は第3実施形態のロック部材の側面図、(D)は(C)のX3−X3矢視拡大図、(E)は(D)のY2−Y2矢視展開図である。
図6】(A)は第3実施形態のロック部材が完成される前の平面図、(B)は第3実施形態のロック部材が既設固定ボルトに係止している要部拡大側面図、(C)は(B)のX4−X4矢視図である。
図7】(A)は取付ピースを第3実施形態のロック部材にて既設屋根に装着した斜視図、(B)は(A)の縦断側面図、(C)は取付ピースを第3実施形態のロック部材にて既設外壁に装着した斜視図である。
図8】(A)は本発明における改修外囲体を屋根とした実施形態の正面略示図、(B)は(A)の(α)部拡大図、(C)は(B)の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明は、主に、老朽化または劣化した既設のスレート屋根又はスレート外壁等の既設スレート外囲体が改修された改修外囲体である。本発明の構成は、主に、通し下地材1,取付ピースA,既設スレート外囲体7及び新設建築板材81等から構成される(図1,2参照)。既設スレート外囲体7は、屋根及び壁を含むものである。そして、既設スレート外囲体7を屋根とした場合では、新設建築板材81は屋根板材となり、既設スレート外囲体7を壁とした場合では新設建築板材81は壁板材となる。ここで、本発明では、説明の便宜上、方向を示す文言が存在し、上下方向,幅方向及び前後方向が存在する。上下方向は、既設スレート外囲体7及び新設外囲体8が屋根又は壁として使用された場合におけるそれぞれの上下方向を示すものであり、高さ方向と称してもよい。
【0019】
また、幅方向は、前記上下方向に直交する方向で、水平方向と一致する。具体的には、既設スレート外囲体7及び新設外囲体8を屋根とした場合では、図8(A),(B)に示すように、上下方向は屋根の高さ方向となり、幅方向は屋根とした既設スレート外囲体7を構成するスレート板材71,71,…が幅方向に隣接し、略サインカーブ状に見える方向のことを言う。或いは、屋根とした新設外囲体8の複数の山形部81a,81a,…が隣接する方向のことを言う。また、屋根とした既設スレート外囲体7及び新設外囲体8の屋根傾斜方向(前後方向と称しても良い)は、水上から水下に沿う方向とする〔図8(C)参照〕。また、既設スレート外囲体7及び新設外囲体8を壁とした場合では、図1図2等に示すように、上下方向は壁の高さ方向となり、既設スレート外囲体7を構成するスレート板材71,71,…が幅方向に隣接し、略サインカーブ状に見える方向のことを言う。或いは、壁とした新設外囲体8の複数の山形部81a,81a,…が隣接する方向のことを言う。また、前後方向は、壁とした既設スレート外囲体7及び新設外囲体8の室内側と室外側に沿う方向のことである(図1図2参照)。
【0020】
取付ピースAの上下方向,幅方向及び前後方向は、改修外囲体の施工において既設スレート外囲体7に対して適正に装着されたときの状態を基準として設定されるものである。したがって、施工に使用される前の単なる部品として保管されている場合等は、それぞれの部材の上下方向及び幅方向は適正に装着された場合の各方向が適用されるものである。前後方向とは、前記幅方向と水平面上で直交する方向である。ここで、取付ピースAは、既設スレート外囲体7及び新設外囲体8を屋根又は壁とした何れの場合に使用しても、それぞれの上下方向,幅方向及び前後方向は同一方向として統一する。つまり、取付ピースAは、屋根に使用しても、壁に使用しても各部分に付与された方向は同一とする。
【0021】
通し下地材1は、前記既設スレート外囲体7の上方に新設外壁8を施工するための支持部材としての役目をなす。通し下地材1は、金属製であり、その長手方向に沿って長尺となる部材である〔図2(A)参照〕。そして、通し下地材1が既設スレート外囲体7に取付ピースAを介して装着されるときには、その長手方向が通常では、水平方向となる。よって、通し下地材1は、通常は、その長手方向を略水平状となるようにして、既設スレート外囲体7に設置される。
【0022】
その通し下地材1は、金属製であり、その長手方向に沿って長尺となる部材である〔図3(E)参照〕。通し下地材1は、通常は、その長手方向を略水平状となるようにして、既設スレート外囲体7に設置される。具体的には、断面略「コ」字形状で長手方向に連続する下地本体部11と、該下地本体部11の上端に形成された上支持縁12と、前記下地本体部11の下端に形成された下支持縁13とから構成される。これら下地本体部11と上支持縁12と下支持縁13によって通し下地材1は、断面ハット形状に構成される。
【0023】
次に、取付ピースAは、取付基板部2に係止溝部21と貫通孔22とが設けられている。取付基板部2は、略方形状で、具体的には長方形状の板状部である〔図3(A),(B)参照〕。係止溝部21と貫通孔22は、上下方向に配列され、係止溝部21は、貫通孔22の上方に位置して連続形成される。係止溝部21は、取付基板部2の上下方向に沿って直線状であり、貫通孔22と連通する構成である。
【0024】
係止溝部21は、その溝幅寸法が既設固定ボルト73の螺子軸部73aの直径よりも僅かに大きい程度が好ましい。貫通孔22は、既設固定ボルト73の螺子軸部73aと該螺子軸部73aに螺合されている既設ナット51及び座金75,軟質スペーサー76とが遊挿状態で挿入可能な大きさである〔図2(B)参照〕。係止溝部21と貫通孔22との境で且つ係止溝部21の入り口部分を挿入開口21aと称する〔図3(A),(B)参照〕。
【0025】
また、取付ピースAの取付基板部2において、前記係止溝部21と前記貫通孔22との境で且つ係止溝部21の挿入開口21aの幅方向両側に位置する両角部分には、それぞれ傾斜突起23,23が形成されている。該傾斜突起23は、取付基板部2の前面側(外面側と称してもよい)に向かって僅かに捲(まく)れるように或いは反り出すように突出する傾斜面として形成されたものであり、略爪状に形成されている〔図3(A),(B)参照〕。
【0026】
両傾斜突起23,23は、前述したように、取付基板部2の外面側に捲れるようにして傾斜する部位であり、略三角形状をなしている〔図3(B)参照〕。図3(C)及び(D)は、前記傾斜突起23が取付基板部2に対して捲れ状態となることにより傾斜する面が形成されている状態を示す断面図である。
【0027】
両傾斜突起23,23は、既設スレート外壁Bの既設固定ボルト73が係止溝部21に挿入するときに、該係止溝部21の幅方向両端縁が座金75と軟質スペーサー76との間に食い込むように挿入して入り込むことができる〔図2(C)の(2)参照〕。そして、既
設固定ボルト73が係止溝部21内に完全に入り込んだときには、取付基板部2の係止溝部21の幅方向両端縁は、座金75と軟質スペーサー76との間に挿入される〔図2(C)の(3)参照〕。
【0028】
そのために、取付ピースAを既設スレート外囲体7の取付箇所に配置し、貫通孔22に既設固定ボルト73を遊挿させた状態において、傾斜突起23の先端部分が、座金75と軟質スペーサー76との間に位置するように設定されることが好適である〔図2(C)の(1)参照〕。
【0029】
図2(C)は、取付ピースAの取付基板部2を既設スレート外囲体7の所定の位置に当接させた状態から、ハンマー等の工具により取付ピースAを下方に打ち込み、移動させたときに、傾斜突起23が軟質スペーサー76と座金75との間に食い込むように挿入して装着される工程を示したものである。これによって取付ピースAは、既設固定ボルト73を介して既設スレート外囲体7に装着される工程で、取付基板部2の係止溝部21が座金75と軟質スペーサー76との間に挿入されつつ、既設スレート外囲体7に固定される。
【0030】
この工程において、取付基板部2は、軟質スペーサー76によって既設スレート外囲体7のスレート壁板材71の表面から前方側に押し退けられるように作用する。これによって、取付基板部2が既設スレート外囲体7のスレート壁板材71にほとんど当接することなく、該スレート壁板材71を取付作業において割れる等の損傷を防止できる。
【0031】
取付基板部2には、その前後方向前方側に向かって上端側に上支持片31が形成され、下端に下支持片32が形成されている〔図3(A),(C)参照〕。下支持片32は、取付基板部2の下端から上方に向かって折返し状に屈曲形成され、断面略「V」字形状となっている。下支持片32が、取付基板部2に対して折返し状に形成されたことにより、取付基板部2に通し下地材1を固定するときには、該取付基板部2の支持縁23が前記下支持片32に係止状態で支持され、作業員は通し下地材1を取付ピースAに仮設置することができる。
【0032】
したがって、作業員は、一方の手で、通し下地材1を持ちながら、他方の手で通し下地材1を固着するという作業をするものではなく、両手を通し下地材1の固着作業に使用することができる。これによって、作業効率を格段に向上させ、安全性を確保することができる。また、上支持片31は、取付基板部2に対して略直角である。
【0033】
また、取付基板部2の幅方向両側且つ上下方向に沿って、補強片33,33が形成されている。両補強片33,33は、取付ピースAの前後方向後方側、すなわち前記支持片32と前記上支持片31との形成側とは反対側に向かって突出する〔図3(A),(B)参照〕。該補強片33,33によって、取付基板部2の強度及び剛性を向上させることができる。
【0034】
次に、ロック部材5は、既設スレート外囲体7に取付ピースAを既設固定ボルト73を介して設置し、取付ピースAを既設スレート外囲体7に固着する役目をなすものである。ロック部材5は、種々の実施形態が存在し、その第1実施形態として既設固定ボルト73に装着されている既設ナット51がそのまま使用されるものである〔図1図2(A),(B)参照〕。但し、既設ナット51が腐食して、再度の使用に耐えないものである場合には、新たなナットを使用することもある。
【0035】
ロック部材5の第2実施形態として可変部材52が使用される。該可変部材521は、種々のタイプが存在し、まず、第1タイプとしてカシメナット521が存在する〔図4(A),(B)参照〕。該カシメナット521は、金属製で円筒形状をなしている。カシメナット521は、その筒状部分に既設固定ボルト73のボルト軸部73aが遊挿されるようにして設置され、専用の工具にて筒状部が圧潰されてボルト軸部73aに固着される。
【0036】
次に、可変部材52の第2タイプとしてプッシュナット522が使用される〔図4(C),(D)参照〕。プッシュナット522は、環状部の内周側に複数の爪片が等間隔に形成されたものである。爪片の先端は、環状部の中心に向かって形成されたものであり、爪片の先端にて囲まれた環状領域はボルト軸部73aの直径よりも小さくなるように構成されたものである。
【0037】
そしてプッシュナット522は、ボルト軸部73aに軸方向に押し込めることで爪片の先端がボルト軸部73aの螺子山に食い込みプッシュナット522がボルト軸部73aに固着されるものである〔図4(D)参照〕。可変部材52の前記カシメナット521及び前記プッシュナット522は、既設固定ボルト73のボルト軸部73aへの装着を専用の工具を使用することで瞬時にできる。
【0038】
既設スレート外囲体7は、屋根又は壁であり、スレート等でその断面形状が、略サインカーブ状の波形に形成されており、実際には屋根又は壁等を構成する複数のスレート板材71,71,…により構成されている。図1図2は、既設スレート外囲体7を既設スレート外壁とした場合であり、図11は、既設スレート外囲体7を既設スレート屋根とした場合である。ここで、前記既設スレート外囲体7は、その高さ方向の中央より上方側を弧状山形部71aとし、また下方側を弧状谷部71bとする。既設スレート外囲体7は、弧状谷部71b箇所が母屋,胴縁等の既設構造材72上に固定された既設固定ボルト73にて固定されている。
【0039】
前記既設構造材72は、通常、断面略「C」字形状のリップ溝形鋼,断面「L」字形状のアングル鋼等の形鋼材が使用される。そして、既設固定ボルト73は、通常のボルト又は略J字形状のフックボルトであり、ボルト軸部73a,既設ナット51,座金75及び軟質スペーサー76から構成されている。そして、既設構造材72には既設固定ボルト73が装着され、ボルト軸部73aが前記既設スレート外囲体7の弧状山形部71aの頂部を貫通し、該弧状山形部71aの頂部側から前記既設ナット51により締め付けられて、前記スレート壁板材71が既設構造材72に固定される。
【0040】
既設スレート外囲体7の既設固定ボルト73には、座金75及び軟質スペーサー76が装着され、該軟質スペーサー76が既設スレート外囲体7のスレート建築板材71の山形頂部に面しており、軟質スペーサー76の外方側に座金75が設置されている。軟質スペーサー76は、既設スレート外囲体7を構成する屋根板材又は壁板材等のスレート建築板材71を既設固定ボルト73による締付圧力から保護する役目をなす。座金75は、金属製である。軟質スペーサー76は、ゴム,繊維等にて形成されたスペース材である。該軟質スペーサー76としてガスケットが使用されても構わない。
【0041】
新設外囲体8は、複数の新設建築板材81,81,…から構成されている。ここで、新設外囲体8とは、改修外囲体において既設スレート外囲体7に対して新たに施工される屋根又は壁のことをいう。その新設建築板材81は、前記既設スレート外囲体7と同様の波形のスレート材からなるものを使用してもよい。また、薄板金属材から形成されたものが使用されても良い。本発明の実施形態では、新設建築板材81,81 ,…は、金属製としている。
【0042】
金属製のものでは、山形部81aと底部81bとからなり、これら山形部81aと底部81bとが交互に連続している。そして、隣接する新設建築板材81,81の山形部81a同士を重合して連結する重合タイプとしたものである。その山形部81aの断面形状は、略台形状に形成されたものである。
【0043】
次に、改修外囲体の施工について説明する。まず、断面波形状の既設スレート外囲体7の弧状山形部71aの頂部表面と、該頂部上から突出した既設固定ボルト73のボルト軸部73aに螺合された既設ナット51の上から取付ピースAを被せるように設置する。このとき取付ピースAの貫通孔22に、既設固定ボルト73,座金75及び軟質スペーサー76を遊挿させる〔図2(B)参照〕。
【0044】
そして、取付基板部2をハンマー等の工具にて上方から下方に向けて打ち込み、既設固定ボルト73を貫通孔22から挿入開口21aを通過させて係止溝部21に挿入させる。このとき、前述した取付基板部2の傾斜突起23によって、座金75と軟質スペーサー76との間に係止溝部21の幅方向両端縁を挿入させ、固着することができる。
【0045】
前記傾斜突起23により、係止溝部21の幅方向両端縁が軟質スペーサー76と座金75との間に食い込むようにして挿入する行程が図2(C)に示されている。まず、図2(C)の(1)では、既設固定ボルト73,座金75及び軟質座金76は、貫通孔22内に遊挿されて位置していることが示されている。次に、図2(C)の(2)では、取付ピースAがハンマー等の工具にて下方に打ち込まれ、傾斜突起23の先端が座金75と軟質座金76との間に食い込み始めることが示されている。
【0046】
次に、図2(C)の(3)では、取付ピースAがさらに下方に打ち込まれ、係止溝部21の幅方向両端縁が座金75と軟質スペーサー76との間に挿入していることが示されている。そして、最後に既設ナット51等のロック部材5を締め付けることで、既設スレート外壁7への取付ピースAの装着を完了できる。この工程によって、取付基板部2が既設スレート外囲体7のスレート壁板材71にほとんど当接することなく、取付作業において、スレート壁板材71が割れる等の損傷を防止できる(図1参照)。
【0047】
その取付ピースAの下支持片32と上支持片31との間に通し下地材1を配置し、下支持縁13を取付ピースAの下支持片32に係止するように設置する。そして、通し下地材1の上支持縁12を取付ピースAの取付基板部2の上方に当接させて、ビス等の固着具4にて固着する。
【0048】
このようにして、通し下地材1を直接、既設スレート外壁Bに装着を行うものである。次に、前記既設スレート外囲体7上に固定された通し下地材1に新設建築板材81,81,…がビス等の固着具にて固着され、新設壁が施工される。なお、本発明は、既設スレート屋根における改修屋根の施工にも適用することができる。
【0049】
次に、第3実施形態であるロック部材について、図5乃至図7に基づいて説明する。ここで、第3実施形態のロック部材は、その符号として6を付与する。ロック部材6は、薄い金属板からなる部材であり、ベース板部61と、ボルト軸貫通孔62と、捩れ傾斜板状部63とを備えた構成である〔図5(A),(B)参照〕。ベース板部61は、小判形状〔図5(A),(B)参照〕又は円板状又は多角形状に形成されている。ベース板部61の径方向中心位置にボルト軸貫通孔62が形成されている。該ボルト軸貫通孔62には既設固定ボルト73のボルト軸部73aが挿通する部位である。
【0050】
捩れ傾斜板状部63は、ボルト軸貫通孔62の周縁から放射状に複数個が形成されている〔図5(A),(B)参照〕。また、複数の捩れ傾斜板状部63,63,…は、ボルト軸貫通孔62の周縁に対して等間隔に形成される。具体的には、各捩れ傾斜板状部63は、ボルト軸貫通孔62に対して略接線方向に沿って延在するように形成されたものである〔図5(A),(B)参照〕。捩れ傾斜板状部63の数は、3個以上が好ましく、4個が好適であるが、その個数は使用される状況に応じて、適宜決定されればよい。
【0051】
それぞれの捩れ傾斜板状部63は、ベース板部61に対して、一方の面に傾斜状に立ち上がり形成されたものである〔図5(B),(C)参照〕。ここで、ベース板部61において、前記捩れ傾斜板状部63が突出する側をベース板部61の表面とし、該表面側の反対側をベース板部61の裏面とする。捩れ傾斜板状部63は、前述したように、ボルト軸貫通孔62の略接線方向に沿って形成されたものであって、その捩れ傾斜板状部63のベース板部61に対して立ち上がりの折曲線63kが、ボルト軸貫通孔62の接線方向又は略接線方向に沿う構成となっている。具体的には、前記折曲線63kは、ボルト軸貫通孔62の周縁の任意の点において正確に接線とするものである。また、ボルト軸貫通孔62の周縁の任意の点から外方又は内方に離間した付近の部分も含まれ、この場合は、略接線となる〔図5(A),(B)参照〕。
【0052】
そして、捩れ傾斜板状部63は、その面方向が捻じれた面となっている。捩れ傾斜板状部63における面の捩れは、該捩れ傾斜板状部63をベース板部61の表面から立ち上り形成されるときに、面に捩じりを付与するようにして形成される。また、捩れ傾斜板状部63は、ベース板部61に対して弾性且つ復元性を有することが好ましい。つまり、ベース板部61に対して傾斜状に形成された捩れ傾斜板状部63は、最初に設定され角度を維持するように弾性が働くように設定されることが好ましい。
【0053】
そして、前記ボルト軸貫通孔62の周縁が捩れ傾斜板状部63の数に合わせて分割され〔図5(A),(B)参照〕、分割されたそれぞれの周縁がそのまま捩れ傾斜板状部63の先端63tとなる〔図5(A)参照〕。換言すると、複数の捩れ傾斜板状部63,63,…の先端63t,3t,…の略円周状に配列された集合体がボルト軸貫通孔62を構成するともいえる〔図5(A),(D)参照〕。
【0054】
複数の捩れ傾斜板状部63,63,…の先端63t,3t,…は、ボルト軸貫通孔62の周方向に沿って同一方向に傾斜形成される。つまり、ボルト軸貫通孔62を円周方向に沿って展開し、該ボルト軸貫通孔62の内周側から見た水平状の形状は、換言すると、図5(D)におけるY3−Y3矢視展開図は、捩れ傾斜板状部63は、その頂部である先端63tが傾斜する略台形状となる〔図5(D),(E)参照〕。これら略台形状の捩れ傾斜板状部63の頂部つまり先端63tの傾斜方向(具体的には傾斜低位部から傾斜高位部に向かう方向)は全て同一であり、且つ傾斜角度も略同等である。捩れ傾斜板状部63の先端63tの傾斜は、ベース板部61の表面から捩れ傾斜板状部63を立り上り形成するときに、捩れ傾斜板状部63の面を捩じることにより傾斜状に形成される〔図5(B),(E)参照〕。
【0055】
捩れ傾斜板状部63のベース板部61に対する傾斜角度は、前述したように、それ自身の面が捻じれ面となっている。そのために、各箇所によって傾斜角度が異なる。そして、その最大角度は、90°未満である。実際には、最大傾斜角度は、約3度程度乃至約45度程度であるが、使用状況に応じて適宜設定される。また、捩れ傾斜板状部63のベース板部61に対する傾斜角度は、ボルト軸貫通孔62の周縁とは離れた位置から周縁つまり先端63tに近づくに従い、傾斜角度が大きくなることもある。
【0056】
複数の捩れ傾斜板状部63,63,…の先端63t,63t,…によって構成されたボルト軸貫通孔62の内径は、既設固定ボルト73のボルト軸部73aの外ネジ部73bの外径よりも小さく設定される。つまり、ボルト軸貫通孔62に既設固定ボルト73のボルト軸部73aが挿通した状態で、捩れ傾斜板状部63の先端63tが既設固定ボルト73の外ネジ部73bと係止する。その係止状態は、捩れ傾斜板状部63の先端63tが外ネジ部73bの谷部に食い込むよう場合と、先端63tが外ネジ部73bのネジ山頂部に強圧にて当接するものである。
【0057】
このとき、捩れ傾斜板状部63には、弾性が働いてより一層強固に係止状態を構成するものである。複数の捩れ傾斜板状部63,63,…の先端63t,63t,…の傾斜方向は、外ネジ部73bのネジ方向と反対方向に傾斜したり、外ネジ部73bのネジ方向と同方向に傾斜する場合とがある。先端63t,63t,…の傾斜方向を外ネジ部73bのネジ方向と反対方向に傾斜させる場合では、先端63t,63t,…は、外ネジ部73bのネジ山に強圧にて当接することになり〔図6(B)参照〕、ネジ方向と同方向に傾斜する場合では先端63t,63t,…は、外ネジ部73bの谷部に食い込むようにしてかみ合うことになる。
【0058】
次に、ロック部材6の成形方法について述べる。まず、ベース板部61が金属薄板材から形成され、その径方向中心位置に、完成時にはボルト軸貫通孔62となる開口62pが形成される〔図6(A)参照〕。開口62pの周縁から放射状に複数の切込み線63c,63c,…が形成される。前記開口62pの周縁に前記切込み線63cと同数で且つ接線方向に折曲基準線63k´が形成される。該折曲基準線63k´は、完成時には折曲線63kとなる。そして、前記切込み線63cを立上り自由端側とし、前記折曲基準線63k´に沿ってベース板部61の一部を立ち上げて、所定の個数の捩れ傾斜板状部63を形成する。
【0059】
前記切込み線63cのボルト軸貫通孔62の周縁側とは反対側となる外端には、補助貫通孔部63qが形成されている。該補助貫通孔部63qは、前記折曲基準線63k´とも交わる。該補助貫通孔部63qは、ベース板部61から捩れ傾斜板状部63を立ち上げ形成するときに、ベース板部61と捩れ傾斜板状部63との間の折曲線63k箇所に歪変形が生じないようにすることができ、ベース板部61と捩れ傾斜板状部63とが整然とした高い精度に形成するための役目をなすものである。
【0060】
複数の捩れ傾斜板状部63は、それぞれの先端63tが全て同一方向に傾斜する構成である〔図5(E)参照〕。この構成により、取付ピースAを既設スレート外囲体7に装着する作業を以下に述べる。既設固定ボルト73に取付ピースAの係止溝部21にボルト軸部73aを挿通させる。
【0061】
そして、ロック部材6の裏面側からボルト軸貫通孔62に既設固定ボルト73のボルト軸部73aを挿通させ、パイプ状ツールTによって打ち込み、ロック部材6が既設固定ボルト73の付根に到達すると捩れ傾斜板状部63の先端63tがボルト軸部73aの外ネジ部73bに係止し、取付ピースAが既設スレート外囲体7に固定される(図7参照)。前記パイプ状ツールTは、中空円筒状をなしており、既設固定ボルト73の外ネジ部73bを挿入させて、ロック部材6のベース板部61の表面側にパイプ状ツールTの先端を当てて、該パイプ状ツールTをハンマー等の工具にて打ち込むものである〔図7(C)参照〕。なお、パイプ状ツールTは、前記プッシュナット522にも使用できる。
【0062】
捩れ傾斜板状部63の先端63tは、ボルト軸貫通孔62の一部であり、円弧状に形成される。よって、複数の捩れ傾斜板状部63,63,…の先端63t,63t,…は、ボルト軸部73aの外ネジ部73bと係止する状態は、外ネジ部73bの外周を包囲しつつ、先端63t,63t,…が外ネジ部73bを押圧する構成となる〔図6(B),(C)参照〕。
【0063】
また、複数の捩れ傾斜板状部63,63,…の先端63t,3t,…によって包囲された外ネジ部73bに対しては先端63tから斜め方向に分布荷重p,p,…がかかる〔図6(C)参照〕。この既設固定ボルト73の外ネジ部73bの外周に対して斜め方向にかかる分布荷重p,p,…は、ロック部材6が既設固定ボルト73から外れる方向に外力がかかった場合に先端63t,3t,…が外ネジ部73bにより一層強固に係止又は当接するように作用するものである。
【符号の説明】
【0064】
1…通し下地材、11…挿入縁、12…上支持片、13…下支持片、A…取付ピース、2…取付基板部、21…係止溝部、22…貫通孔、23…傾斜突起、33…補強片、
5…ロック部材、51…既設ナット、52…可変部材、6…ロック部材、
61…ベース板部、62…ボルト軸貫通孔、63…捩れ傾斜板状部、
63k…折曲線、63k´…折曲基準線、63t…先端、63c…切込み線、
63q…補助貫通孔部、7…既設スレート外囲体、73…既設固定ボルト、
81…新設建築板材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8