【解決手段】誘導加熱溶解装置は、被溶解材料が入れられるルツボと、ルツボの底に設けられた、溶解している被溶解材料を出湯させるための出湯ノズル部と、出湯ノズル部の周囲に配置された、ルツボの底に形成されるスカルを誘導加熱により溶解させる出湯コイルと、出湯コイルに電力を供給する出湯用電源と、を備える。このような誘導加熱溶解装置において、前記出湯用電源の出力を所定の第1出力まで上げて前記出湯部から被溶解材料を出湯させ、前記被溶解材料の出湯の開始後に、前記出湯用電源の出力を前記第1出力よりも低い第2出力まで下げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、以下のように、出湯時に出湯コイルに供給する電力を従来よりも大きくするケースが増えている。例えば、溶解させる対象の金属材料として、軽量且つ高強度のチタン合金等が用いられるようになっている。チタン合金等の融点は従来の鉄等の被溶解材料と比べて高いので、スカルを溶解させるために、出湯コイルに供給する電力を大きくする必要がある。或いは、上述したガスアトマイズ法によって生成される粉末材料の径は、一般に単位時間あたりの出湯量に応じて変わるので、粉末材料のさらなる微細化のために、出湯部の開口径を小さくして出湯量を少なくしたいという要望がある。出湯部の開口径が小さいと、例えばスカルが十分に溶解していない場合等に目詰まりが起こりやすいおそれがあるので、目詰まりを抑制するために、出湯コイルに供給する電力を大きくして、出湯部近傍のスカルを確実に溶解させることが求められる。
【0005】
このように、出湯時の出湯コイルへの供給電力が大きいと、従来のように出湯コイルに一定の電力を供給し続けた場合に、出湯部自体の誘導加熱等によって、出湯部が過熱されるおそれがある。このような問題は、上述したように出湯部の開口径が小さい場合に、スカルを確実に溶解させるために出湯部を誘導加熱されやすい構成とすることによって、特に発生しやすくなる。出湯部の過熱により、出湯部を構成する部材が溶解すると、溶湯を汚染し又は溶湯と反応を起こすおそれ等がある。また、出湯部の溶解により、出湯部の開口径が拡大してしまうという問題や、出湯部自体が溶けて無くなってしまうという問題も生じる。
【0006】
本発明の目的は、出湯時における出湯部の過熱を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の誘導加熱溶解装置における出湯方法は、被溶解材料が入れられるルツボと、前記ルツボの底に設けられた、溶解している前記被溶解材料を出湯させるための出湯部と、前記出湯部の周囲に配置された、前記ルツボの底に形成されるスカルを誘導加熱により溶解させる出湯コイルと、前記出湯コイルに電力を供給する出湯用電源と、を備える誘導加熱溶解装置における出湯方法であって、前記出湯用電源の出力を所定の第1出力まで上げて前記出湯部から被溶解材料を出湯させ、前記被溶解材料の出湯の開始後に、前記出湯用電源の出力を前記第1出力よりも低い第2出力まで下げることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、出湯開始後に、出湯用電源の出力が第1出力から第2出力まで下げられる。これにより、出湯部及びその近傍における出湯開始後の誘導加熱が抑制される。したがって、出湯開始後すみやかに出湯用電源の出力を下げることで、出湯時における出湯部の過熱を抑制することができる。
【0009】
第2の発明の誘導加熱溶解装置は、被溶解材料が入れられるルツボと、前記ルツボの底に設けられた、溶解している前記被溶解材料を出湯させるための出湯部と、前記出湯部の周囲に配置された、前記ルツボの底に形成されるスカルを誘導加熱により溶解させる出湯コイルと、前記出湯コイルに電力を供給する出湯用電源と、前記被溶解材料の出湯を検知する検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記出湯用電源の出力を所定の第1出力まで上げて前記出湯部から被溶解材料を出湯させ、前記検知部によって前記被溶解材料の出湯が検知された後に、前記出湯用電源の出力を前記第1出力よりも低い第2出力まで下げることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、第1の発明と同様に、出湯時における出湯部の過熱を抑制することができる。
【0011】
第3の発明の誘導加熱溶解装置は、前記第2の発明において、前記出湯部から出湯された前記被溶解材料を粉末化するアトマイズ部、をさらに備えることを特徴とするものである。
【0012】
出湯された後の被溶解材料には、例えば、アトマイズ部による粉末化等の加工が施される。ここで、出湯部の過熱による出湯部の溶解に起因して被溶解材料の汚染等が起こると、アトマイズ部で製造される粉末材料の品質が悪化するおそれがある。本発明では、出湯部の過熱を抑制できるため、被溶解材料の汚染等を抑制でき、アトマイズ部によって高品質の粉末材料を製造できる。また、出湯部の過熱を抑制できるため、出湯部の開口径を小さくすることができるので、より微細な粉末材料を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。なお、
図1の紙面上下方向を上下方向とする。ルツボ11の径方向を径方向とする。上下方向及び径方向の両方と直交する方向を周方向とする(図示省略)。
【0015】
(誘導加熱溶解装置)
まず、誘導加熱溶解装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る誘導加熱溶解装置1の概略図である。誘導加熱溶解装置1は、例えば水冷式のコールドクルーシブル炉であり、チタン合金(例えばTiAl)等の被溶解材料101を誘導加熱によって溶解させて出湯させるためのものである。
図1に示すように、誘導加熱溶解装置1は、ルツボ11と、溶解コイル12と、出湯コイル13と、制御装置15とを備える。
【0016】
ルツボ11は、被溶解材料101が入れられる容器であり、例えば銅等の金属部材で形成されている。ルツボ11は、円筒状の側壁21と、概ね円板状の底壁22とを有する。側壁21と底壁22とによって、被溶解材料101が入れられる内部空間23が形成されている。側壁21及び底壁22は、例えば不図示の架台にそれぞれ設置されることで、互いに分離可能に設けられている。
【0017】
側壁21及び底壁22は、周方向において複数のセグメント24に分割(セグメント化)されている。複数のセグメント24間には、スリット24aがそれぞれ形成されている。各セグメント24は中空形状を有しており(不図示)、内部を水等の冷媒が通れるようになっている。スリット24aには、薄板状の絶縁部材25が埋め込まれている。絶縁部材25は、後述するように、磁束を通過させるためのものである。セグメント24の数は、特に限定されない。
【0018】
側壁21は、例えば円筒形状を有する壁である。側壁21は、上下方向に延びている。側壁21の周囲(径方向外側)には、溶解コイル12が配置されている。側壁21は中空形状を有しており、不図示の冷却水源から供給される水によって内側から冷却される。側壁21の形状は一例であり、これに限定されるものではない。
【0019】
底壁22は、側壁21の下方に配置された概ね円板状の壁である。底壁22の径方向内側部分の一部は、下方に突出している。底壁22の径方向内側部分には、後述の出湯ノズル部26が取り付けられている。底壁22は、出湯ノズル部26を囲むように形成されている。底壁22の径方向外側部分には、図示しない支持部によって下方から支持される被支持部28が形成されている。底壁22も中空形状を有しており、冷却水源(不図示)から供給される水によって内側から冷却される。底壁22の形状は一例であり、これに限定されるものではない。
【0020】
底壁22には、ルツボ11の底から被溶解材料101を出湯させるための出湯ノズル部26(本発明の出湯部)が設けられている。出湯ノズル部26は、例えば、上下方向に延びた漏斗状の部材である。出湯ノズル部26は、底壁22に囲まれるように配置されている。出湯ノズル部26の材質は、例えば、被溶解材料101の種類等に応じて選定される。被溶解材料101の種類が前述したチタン合金である場合は、チタン製の出湯ノズル部26を採用することが好ましい。被溶解材料101の種類が鉄等である場合は、鉄等と反応しにくい窒化ホウ素製の出湯ノズル部26を採用することが好ましい。或いは、経済性や加工性の観点から、黒鉛製の出湯ノズル部26が採用される場合もある。出湯ノズル部26の下部には、被溶解材料が出湯するための開口27が形成されている。開口27の径は、例えばφ3mm〜φ5mmである。
【0021】
出湯ノズル部26には、温度センサ31が取り付けられている。温度センサ31は、例えば一般的な熱電対であり、出湯ノズル部26に接触している。
【0022】
溶解コイル12は、ルツボ11の内部空間23内の被溶解材料101を誘導加熱により溶解させるためのものである。溶解コイル12は、側壁21の周りを囲むように螺旋状に配置されている。溶解コイル12は、底壁22よりも上方に配置されている。溶解コイル12には、高周波電圧を出力可能な溶解用電源105が電気的に接続されている。溶解用電源105は、制御装置15と電気的に接続されている。溶解用電源105から溶解コイル12に高周波電圧が印加されると、溶解コイル12に高周波電流が流れて交流磁束が生成される。交流磁束は、複数のセグメント24間に配置された絶縁部材25を通過可能であり、それによって内部空間23を通過可能となっている。内部空間23を通る交流磁束は、被溶解材料101の表面を流れる。これにより、電磁誘導によって被溶解材料101の表面に誘導起電力が生じて渦電流が流れる。渦電流が流れることで、ジュール熱により被溶解材料101が溶解する。このように、被溶解材料101が誘導加熱により溶解させられる。被溶解材料101の大部分は、誘導加熱により溶解して溶湯102となる。被溶解材料101の下端部は、水冷されている底壁22に接触することで冷却され、スカル(凝固層)103となる。スカル103は、内部空間23の底部に形成され、出湯ノズル部26の開口27を塞ぐ。
【0023】
出湯コイル13は、スカル103を誘導加熱により溶解させるためのものである。出湯コイル13は、出湯ノズル部26の周りを囲むように配置されている。出湯コイル13には、高周波電圧を出力可能な出湯用電源106が電気的に接続されている。出湯用電源106は、制御装置15と電気的に接続されている。出湯用電源106から出湯コイル13に高周波電圧が印加されると、ルツボ11の底部に交流磁束が生成される。この交流磁束は、底壁22を構成する絶縁部材25を通過可能である。つまり、出湯コイル13で生成される交流磁束は、ルツボ11の外側と内部空間23との間で、底壁22を通過可能となっている。出湯コイル13による誘導加熱で、スカル103が溶解して出湯ノズル部26の開口27が開放されると、溶湯102が開口27から出湯される。
【0024】
制御装置15は、操作部(不図示)と、表示部(不図示)と、記憶部(不図示)等を備える。制御装置15は、例えばオペレータ(不図示)が操作部を操作することで、溶解用電源105及び出湯用電源106を操作可能となっている。或いは、オペレータは、溶解用電源105や出湯用電源106を直接操作しても良い。また、制御装置15の表示部は、溶解用電源105の出力、出湯用電源106の出力、及び、温度センサ31の検知結果等を表示可能に構成されている。記憶部は、溶解用電源105の出力、出湯用電源106の出力、及び、温度センサ31の検知結果等を記憶可能に構成されている。
【0025】
以上のような構成を有する誘導加熱溶解装置1において、近年、以下のように、出湯時に出湯コイル13に供給する電力を従来よりも大きくするケースが増えている。例えば、被溶解材料101として、上述したように、チタン合金等が用いられるようになっている。チタン合金は、軽量且つ高強度である一方で、従来の鉄等の被溶解材料と比べて融点が高い(例えば、炭素を含有する一般的な鉄の融点は概ね1500℃未満であるのに対し、代表的なチタン合金であるTiAlの融点は約1500℃である)。そのため、スカル103を溶解させるために、出湯コイル13に供給する電力を大きくする必要がある。
【0026】
出湯時の出湯コイル13への供給電力が大きいと、出湯コイル13に一定の電力を供給し続けた場合に、出湯ノズル部26自体の誘導加熱等によって、出湯ノズル部26が過熱されるおそれがあり、以下のような問題の原因となりうる。例えば、出湯ノズル部26が温度上昇により溶解して、開口径が拡大し又は出湯ノズル部26自体が溶けてなくなるおそれがある。或いは、出湯ノズル部26と被溶解材料101とが反応を起こし、被溶解材料101が反応物で汚染されるおそれがある(被溶解材料101が、チタン合金などの高融点で高活性の金属である場合に、この問題が顕著となる)。出湯ノズル部26の溶解や被溶解材料101との反応による汚染を抑制するためには、出湯ノズル部26の過熱を抑制することが求められる。そこで、本実施形態の誘導加熱溶解装置1においては、出湯ノズル部26の過熱を抑制するために、オペレータ(不図示)が以下のような方法で出湯を行う。
【0027】
(誘導加熱溶解装置における出湯方法)
誘導加熱溶解装置1における出湯方法について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、出湯の手順を示すフローチャートである。
図3は、出湯コイルへの供給電力及び出湯ノズル部の温度の時間依存性を示すグラフである。なお、以下の説明においては、出湯ノズル部26の材質は、チタン(融点は約1670℃)である。被溶解材料101の種類は、TiAl(融点は約1500℃)である。
【0028】
まず、初期状態として、ルツボ11の内部空間23に被溶解材料101が入れられている。また、溶解用電源105から溶解コイル12に電力が供給され、被溶解材料101の大部分が溶解して溶湯102になっている(
図1参照)。この状態で、オペレータは、出湯用電源106を操作し、出湯用電源106の出力を第1出力まで上げる(S101)。第1出力とは、出湯ノズル部26近傍のスカル103を速やかに溶解させるために必要な電力であり、例えば出湯用電源106における最大出力(100%)である(
図3参照)。なお、オペレータは、出湯用電源106を直接操作しても良く、制御装置15の操作部を操作することで出湯用電源106を間接的に操作しても良い。次に、オペレータは、出湯ノズル部26を目視確認し(S102)、溶湯102が出湯ノズル部26から出湯されたかどうか(出湯が開始されたかどうか)判断する(S103)。オペレータは、出湯が開始されるまで、出湯ノズル部26を目視確認し続ける。
【0029】
出湯開始後、オペレータは、出湯用電源106の出力を第1出力よりも低い第2出力まで下げる(S104)。第2出力とは、出湯ノズル部26の過熱を抑制しつつ、溶湯102が出湯ノズル部26で冷却されて再凝固してしまうことを防ぐ程度の出力である。第2出力は、例えば、第1出力(すなわち、最大出力)の45%である(
図3参照)。オペレータは、出湯用電源106の出力の低減を、出湯開始後すみやかに行う(好ましくは、出湯開始と同時に出力の低減を行う。また、遅くとも出湯完了前に行う)。出湯用電源106の出力低減を開始した後、出力を第1出力から第2出力に下げるまでの時間は、数秒程度が好ましい。
【0030】
その後、オペレータは、出湯ノズル部26を目視確認し(S105)、溶湯102が出湯ノズル部26から出湯されなくなったかどうか(出湯が完了したかどうか)判断する(S106)。出湯完了後、オペレータは、出湯用電源106の出力をゼロにする(S107)。以上のようにして、出湯操作が行われる。
【0031】
上述した一連の出湯操作中における出湯コイル13への供給電力、及び、出湯ノズル部26の温度について、
図3を用いて説明する。
図3のグラフにおいて、横軸は時間を示す。左側の縦軸は、出湯用電源106から出湯コイル13に供給される電力(%)を示す。右側の縦軸は、出湯ノズル部26の温度の測定結果を示す。出湯ノズル部26の温度は、温度センサ31を用いて測定されたものである。
図3に示すように、出湯コイル13への電力供給を開始する前(出湯用電源106の出力が0%のとき)、出湯コイル13の温度は、溶解している被溶解材料101からの熱伝導によって、時間経過と共に徐々に上昇した。出湯用電源106の出力が第1出力(100%)まで上げられると、誘導加熱により、出湯ノズル部26の温度が約1000℃まで急激に上昇した。その後、出湯ノズル部26の温度は、出湯開始までの間に約1100℃まで上昇した。このときの温度の時間変化を鑑みると、出湯完了まで出湯用電源106の出力が第1出力に維持された場合、出湯ノズル部26の温度はいずれチタンの融点(約1670℃)まで到達するおそれがあると推定される。出湯開始後、出湯用電源106の出力が第2出力(45%)まで下げられると、出湯ノズル部26の温度は約1000℃まで下がり、出湯完了まで1000℃前後に維持された。なお、このように出湯ノズル部26の温度が下がっても、溶湯102は十分な熱量を有しているため、出湯ノズル部26で冷却されることによる溶湯102の再凝固は抑制される。
【0032】
以上のように、出湯開始後に、出湯用電源106の出力が第1出力から第2出力まで下げられる。これにより、出湯ノズル部26及びその近傍における出湯開始後の誘導加熱が抑制される。したがって、出湯開始後すみやかに出湯用電源106の出力を下げることで、出湯時における出湯ノズル部26の過熱を抑制することができる。
【0033】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0034】
(1)前記実施形態においては、第2出力は第1出力の45%であるものとしたが、これには限られない。例えば、
図4のグラフの実線で示すように、第2出力が第1出力の10%程度でも良い(変形例1)。或いは、
図4のグラフの破線で示すように、第2出力が第1出力の60%程度でも良い(変形例2)。すなわち、出湯ノズル部26の材料、構造及び形状や、被溶解材料101の種類等に応じて、出湯ノズル部26の過熱を抑制しつつ溶湯102が再凝固しないように、第2出力の値を最適化すれば良い。また、出湯用電源106の出力を第2出力まで下げた後、必ずしも出力を一定の値に維持しなくても良く、例えば時間経過とともに出力を徐々に小さくする等しても良い。
【0035】
(2)前記までの実施形態においては、オペレータが出湯用電源106を操作するものとしたが、これには限られない。すなわち、以下で説明するように、誘導過熱溶解装置1a(
図5参照)において、制御装置15(本発明の制御部)が出湯用電源106を制御しても良い。
【0036】
図5は、誘導過熱溶解装置1aの出湯ノズル部26近傍の拡大図である。
図5に示すように、出湯ノズル部26の下方には、光学センサ41(本発明の検知部)が配置されている。光学センサ41は、例えば受光部(不図示)を有する。受光部は、溶湯102が出湯されているとき、溶湯102自体の熱放射によって発せられる光を検知し、検知信号を制御装置15に送る。
【0037】
制御装置15の記憶部には、出湯用電源106を制御して出湯コイルに電力を供給するための、電力の時間変化のパターン(例えば、
図3、
図4参照)が記憶されている。具体的には、出湯を開始するために出湯用電源106の出力を第1出力まで上げ、出湯開始後に出湯用電源106の出力を第2出力まで下げるためのパターンが記憶されている。
【0038】
以上の構成を有する誘導過熱溶解装置1aにおいて、制御装置15は、以下のように出湯用電源106を制御する(
図6のフローチャート参照)。初期状態は、前述したものと同様である。まず、制御装置15は、記憶部に記憶された電力の時間変化のパターンを予め読み込んでおく。そして、制御装置15は、出湯用電源106の出力を第1出力まで上げる(S201)。その後、制御装置15は、光学センサ41の検知結果を受信し(S202)、溶湯102が出湯ノズル部26から出湯されたかどうか判断する(S203)。制御装置15は、溶湯102が出湯されるまで、光学センサ41の検知結果を繰り返し受信する。出湯が検知された後、制御装置15は、電力の時間変化のパターンに基づき、出湯用電源106の出力を第1出力から第2出力まで下げる(S204)。その後、制御装置15は、光学センサ41の検知結果を受信し(S205)、溶湯102が検知されなくなったかどうか(出湯が完了したかどうか)判断する(S206)。制御装置15は、出湯が完了するまで、光学センサ41の検知結果を繰り返し受信する。出湯完了後、制御装置15は、出湯用電源106の出力をゼロにする(S207)。このようにして、出湯制御が行われる。
【0039】
以上のように、オペレータが出湯操作を行う場合と同様に、出湯時における出湯部の過熱を抑制することができる。また、出湯された被溶解材料101を光学センサ41で光学的に検知することで、出湯開始とほぼ同時に出湯を検知できる。これにより、出湯のタイミングと、出湯用電源106の出力を下げるタイミングとがずれることを抑制できる。
【0040】
(3)前記(2)の変形例において、制御装置15は、光学センサ41の検知結果に基づき出湯が開始されたかどうか判断するものとしたが、これには限られない。すなわち、制御装置15は、温度センサ31の検知結果に基づいて出湯用電源106を制御しても良い。つまり、出湯ノズル部26の温度が所定の値以上となったときに、出湯ノズル部26からの出湯が開始したと判断しても良い。これにより、出湯ノズル部26の温度が出湯ノズル部26の構成材料の融点を超えることを回避できる。したがって、出湯ノズル部26の過熱を確実に抑制できる。この変形例において、温度センサ31が本発明の検知部に相当する。なお、温度センサ31は接触式のものでなくても良い。例えば、出湯ノズル部26の温度を非接触で測定する、一般的な赤外線温度計(不図示)等が設けられていても良い。
【0041】
(4)
図7に示すように、誘導過熱溶解装置1bが、ガスアトマイズ部50(本発明のアトマイズ部)を有していても良い。ガスアトマイズ部50は、出湯された溶湯102に高圧のアルゴン等の不活性ガスを噴きつけて、溶湯102を微小な金属粉末にする(アトマイズする)ためのものである。この変形例において、底壁22よりも下方の空間には、例えばアルゴン等の不活性ガスが充填されている。ガスアトマイズ部50は、ルツボ11の下方に配置された2つのアトマイズノズル51、52を有する。アトマイズノズル51、52は、出湯ノズル部26の真下の空間を挟んで互いに対向するように配置されている。アトマイズノズル51の延在方向を第1延在方向とし、アトマイズノズル52の延在方向を第2延在方向としたとき、アトマイズノズル51の第1延在方向に沿った延長線111と、アトマイズノズル52の第2延在方向に沿った延長線112とが互いに交わる。延長線111と延長線112の交点Pは、出湯ノズル部26の開口27の真下に位置する。これにより、アトマイズノズル51、52からアルゴン等の不活性ガス(本発明のガス)がそれぞれ噴出されたとき(
図7の気流113、114参照)、不活性ガスは交点Pで互いに衝突しつつ溶湯102に噴きつけられる。これにより、溶湯102が微小な粉末材料になる。なお、アトマイズノズル51、52の配置位置や角度を適切にすることで、噴出された不活性ガスを出湯ノズル部26に当てることもできる。つまり、不活性ガスを噴きつけることで、出湯ノズル部26を効率良く冷却しても良い。また、アトマイズノズルの数は2つに限定されない。1つでも良く、或いは3つ以上でも良い。アトマイズノズルの数が3つ以上の場合、複数のアトマイズノズルが、上下方向に直交する円の周方向において等間隔に配置されていても良い。
【0042】
ガスアトマイズ部50によって生成される粉末材料の径は、一般に単位時間あたりの出湯量に応じて変わるので、粉末材料のさらなる微細化のために、出湯ノズル部26の開口27の径を小さくすることで出湯量を少量にし、且つ安定的な出湯を行いたいという要望がある。ここで、開口径が大きければ、出湯ノズル部26近傍のスカル103が完全には溶解していなくても出湯をスムーズに行うことが可能だが、開口径が小さいと、スカル103が十分に溶解していない場合等に目詰まりが起こりやすいおそれがある。このため、目詰まりを抑制するために、出湯コイル13に供給する電力を大きくして、出湯ノズル部26の近傍のスカル103を確実に溶解させることが求められる。出湯コイル13に供給する電力が大きいと、上述したように、出湯ノズル部26が過熱されるおそれがある。本発明では、出湯ノズル部26の過熱を抑制するために、上述したように、出湯開始後に出湯用電源106の出力が下げられる。これにより、出湯ノズル部26の過熱を抑制できるため、被溶解材料101の汚染等を抑制でき、ガスアトマイズ部50によって高品質の粉末材料を製造できる。また、出湯ノズル部26の過熱を抑制できるため、出湯ノズル部26の開口27の径を小さくすることができるので、より微細な粉末材料を作ることができる。また、出湯開始後に出湯用電源106の出力を下げて出湯ノズル部26の過熱を抑制することに加えて、さらに、不活性ガスによって出湯ノズル部26を冷却することもできる。したがって、出湯ノズル部26の過熱をより確実に抑制することができる。
【0043】
(5)前記(4)の変形例において、出湯された溶湯102が、ガスアトマイズ部50によって粉末化されるものとしたが、これには限られない。溶湯102は、例えば、高速回転するディスクを有するディスクアトマイズ装置(特開2017−128778号公報等を参照)によって粉末化されても良い。
【0044】
(6)本発明は、コールドクルーシブル炉に限定されず、誘導加熱式の様々な溶解装置に適用可能である。