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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-184435(P2019-184435A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】携帯用周囲温度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20190927BHJP
【FI】
   G01K7/00 381G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-76039(P2018-76039)
(22)【出願日】2018年4月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】今村 徹治
(72)【発明者】
【氏名】森田 健文
(72)【発明者】
【氏名】浦上 伸太郎
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056JG03
(57)【要約】
【課題】真の周囲温度を高い精度で測定することができる携帯用周囲温度測定装置を提供する。
【解決手段】第1の温度センサ5は、ケーシング3に実装されてケーシング3の温度に比例した第1の温度T1を検出する。第2の温度センサ7はケーシング3の周囲温度T2に比例した第2の温度T2を検出する。被測定対象物11はケーシング3と熱的に絶縁した状態でケーシング3に保持されている。周囲温度決定部9は、第1の温度センサ5の出力と第2の温度センサ7の出力とに基づいて、演算によりケーシング3の周囲の真の周囲温度T0を決定する。本実施の形態の周囲温度決定部9で用いる関係式は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度Tから選択した二組の二つの温度の差の間にある相関関係または二組の二つの温度の比の間にある相関関係から求められた、真の周囲温度T0を解とする式である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに実装されて前記ケーシングの温度に比例した第1の温度T1を検出する第1の温度センサと、
前記ケーシングの周囲温度T2に比例した第2の温度T2を検出する第2の温度センサと、
前記第1の温度センサの出力と前記第2の温度センサの出力とに基づいて、演算により前記ケーシングの周囲の真の周囲温度T0を決定する周囲温度決定部とを有する周囲温度測定装置であって、
前記ケーシングと熱的に絶縁した状態で前記ケーシングに保持された、前記ケーシングの熱容量よりも熱容量の小さい材料により形成された被測定対象物を備え、
前記第2の温度センサは前記被測定対象物の温度を前記周囲温度に比例した第2の温度T2として検出するように配置され、
前記周囲温度決定部は、前記第1の温度T1と、前記第2の温度T2と前記真の周囲温度T0との間に成立する関係式に基づいて、前記真の周囲温度T0を演算するように構成されており、
前記関係式は、前記第1の温度T1と、前記第2の温度T2と前記真の周囲温度T0から選択した二組の二つの温度の差の間にある相関関係または前記二組の二つの温度の比の間にある相関関係から求められた、前記真の周囲温度T0を解とする式であることを特徴とする周囲温度測定装置。
【請求項2】
前記比測定対象物の単位容積当たりの熱容量は4000J m・3 K・1以下である請求項1に記載の周囲温度測定装置。
【請求項3】
前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの応答時間は実質的に同じである請求項1に記載の周囲温度測定装置。
【請求項4】
前記相関関係は、実質的にY=aX+bの一次関数で表される関係にあり、前記aは前記一次関数の傾きであり、前記bは前記一次関数の切片であり、
前記YはT0−T1で前記XはT2−T1であるか、若しくは、
前記YはT1−T0で前記XはT1−T2のとき、前記関係式は、
T0=a(T2−T1)+b+T1であり、
または、
前記YはT1−T0で前記XはT2−T0であるか、若しくは、
前記YはT0−T1で前記XはT0−T2のとき、前記関係式は、
T0=(aT2+b−T1)/(a−1)であり、
または、
前記YはT2−T1で前記XはT2−T0であるか、若しくは、
前記YはT1−T2で前記XはT0−T2のとき、前記関係式は、
T0=(T2(a−1)+T1+b)/aであり、
または、
前記YはT0/T1で前記XはT2/T1であるか、若しくは、
前記YはT1/T0で前記XはT1/T2のとき、前記関係式は、
T0=aT2+bT1であり、
または、
前記YはT1/T0で前記XはT2/T0であるか、若しくは、
前記YはT0/T1で前記XはT0/T2のとき、前記関係式は、
T0=(T1−aT2)/bであり、
または、
前記YはT1/T2で前記XはT0/T2であるか、若しくは、
前記YはT2/T1で前記XはT2/T0のとき、前記関係式は、
T0=(T1−bT2)/a
である請求項3に記載の周囲温度測定装置。
【請求項5】
前記相関関係は、実質的に二次関数Y=cX2+dX+eの関係にあり、ただしcは2次の係数であり、dは1次の係数であり、eは定数項であり、
前記YはT0−T1で前記XはT2−T1であるか、若しくは、
前記YはT1−T0で前記XはT1−T2のとき、
または、
前記YはT1−T0で前記XはT2−T0であるか、若しくは、
前記YはT0−T1で前記XはT0−T2のとき、
または、
前記YはT2−T1で前記XはT2−T0であるか、若しくは、
前記YはT1−T2で前記XはT0−T2のとき、
または、
前記YはT0/T1で前記XはT2/T1であるか、若しくは、
前記YはT1/T0で前記XはT1/T2のとき、
または、
前記YはT1/T0で前記XはT2/T0であるか、若しくは、
前記YはT0/T1で前記XはT0/T2のとき、
または、
前記YはT1/T2で前記XはT0/T2であるか、若しくは、
前記YはT2/T1で前記XはT2/T0のときに、
前記解T0を求める関係式は、上記X及びYの場合分けにおいて立てた二次方程式を解くことにより得られたものである請求項3に記載の周囲温度測定装置。
【請求項6】
前記第2の温度センサは非接触式温度センサである請求項1または2に記載の周囲温度測定装置。
【請求項7】
前記被測定対象物と前記ケーシングとの間には、伝導率が20(W/m・K)以下の材料で形成された支持部材が配置されており、前記支持部材は前記被測定対象物と前記ケーシングとの間隔寸法の10倍以上の長さ寸法を有している請求項1に記載の周囲温度測定装置。
【請求項8】
前記被測定対象物は、ケーシングと対向しない面の反射率RがR=0.5以上であり、第2の温度センサと対向する面の放射率εがε=0.6以上である請求項6に記載の周囲温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温の影響を実質的に受けることなく周囲温度を測定できる携帯用周囲温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開昭56−162022号公報(特許文献1)には、外気に接する温度センサの温度と体温を測定する温度センサの温度を用いて体温の温度の影響を除去するために、測定データから真の周囲温度を算出する式に従ってCPUによって処理して、周囲温度を演算により求める技術の概念が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−162022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1には、具体的な演算式は何も開示されていない。また周囲温度は外気と温度センサを触れさせるという単純な構造で測定するため、外周囲温度の測定が不安定であり、その結果、真の周囲温度の測定精度が悪くなることが予想される。
【0005】
本発明の目的は、真の周囲温度を高い精度で測定することができる携帯用周囲温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の周囲温度測定装置は、ケーシングと、ケーシングに実装されてケーシングの温度に比例した第1の温度T1を検出する第1の温度センサと、ケーシングの周囲温度T2に比例した第2の温度T2を検出する第2の温度センサと、第1の温度センサの出力と第2の温度センサの出力とに基づいて、演算によりケーシングの周囲の真の周囲温度T0を決定する周囲温度決定部とを有する。本発明の周囲温度測定装置は、ケーシングと熱的に絶縁した状態でケーシングに保持された、ケーシングの熱容量よりも熱容量の小さい材料により形成された被測定対象物を備えている。そして第2の温度センサはこの被測定対象物の温度を周囲温度に比例した第2の温度T2として検出するように配置されている。また周囲温度決定部は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度T0との間に成立する関係式に基づいて、真の周囲温度T0を演算するように構成されている。そして関係式は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度T0から選択した二組の二つの温度の差の間にある相関関係または二組の二つの温度の比の間にある相関関係から求められた、真の周囲温度T0を解とする式である。なおここで相関関係を求める際に使用する「真の周囲温度」は、予め周囲温度を測定できる既存の高精度温度センサにより測定したものである。本発明は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度から選択した二組の二つの温度の差の間に相関関係があること、また二組の二つの温度の比の間に相関関係があることを見いだしたことを基礎とする。そしてこの相関関係から求めた真の周囲温度T0を解とする式により、真の周囲温度T0を演算する。本発明によれば、二つの温度センサの出力を用いて真の周囲温度を高い精度で演算により測定できる。
【0007】
比測定対象物の単位容積当たりの熱容量は4000J m・3 K・1以下であれば、第2の温度センサが測定する温度に、ケーシング内部の温度の影響が含まれることを抑制して演算精度を高めることができる。
【0008】
第1の温度センサ及び第2の温度センサの応答時間が実質的に同じであるのが好ましい。応答時間に大きなずれがなければ、演算速度を早くした場合でも、演算精度が低下するのを阻止できる。
【0009】
相関関係が、実質的にY=aX+bの一次関数で表される関係にある場合、aは一次関数の傾きであり、bは一次関数の切片である。そして、関係式は、YがT0−T1でXがT2−T1であるか、若しくは、YがT1−T0でXがT1−T2のときにT0=a(T2−T1)+b+T1となる。またはYがT1−T0でXがT2−T0であるか、若しくは、YがT0−T1でXがT0−T2のときに、関係式はT0=(aT2+b−T1)/(a−1)となる。または、YがT2−T1でXがT2−T0であるか、若しくは、YがT1−T2でXがT0−T2のときに、関係式はT0=(T2(a−1)+T1+b)/aとなる。または、YがT0/T1でXがT2/T1であるか、若しくは、YがT1/T0でXがT1/T2のときに、関係式はT0=aT2+bT1となる。または、YがT1/T0でXがT2/T0であるか、若しくは、YがT0/T1でXがT0/T2のときに、関係式はT0=(T1−aT2)/bとなる。または、YがT1/T2でXがT0/T2であるか、若しくは、YがT2/T1でXがT2/T0のときに、関係式は、T0=(T1−bT2)/aとなる。
【0010】
これらの式を用いると演算結果と高精度温度センサで測定した真の周囲温度との相関係数が0.99以上になる。
【0011】
また相関関係が、実質的に二次関数Y=cX2+dX+eの関係にある場合(ただしcは2次の係数であり、dは1次の係数であり、eは定数項である)。YとXの条件は、上記一次関数の場合と同じである。そして関係式は、上記X及びYの場合分けにおいて立てた二次方程式を解くことに得られたものである。
【0012】
第2の温度センサは非接触式温度センサであるのが好ましい。非接触式温度センサであれば、被測定物に電気的な配線を接続する必要が無く、防水性の面で有利である。
【0013】
被測定対象物とケーシングとの間には、伝導率が20(W/m・K)以下の材料で形成された支持部材が配置されており、支持部材は被測定対象物とケーシングとの間隔寸法の10倍以上の長さ寸法を有しているのが好ましい。このような支持部材を用いれば、ケーシングからの被測定対象物への熱的影響を小さくすることができる。
【0014】
被測定対象物は、ケーシングと対向しない面の反射率RがR=0.5以上であり、第2の温度センサと対向する面の放射率εがε=0.6以上であるのが好ましい。このようにするケーシングと対向しない面の反射率RをR=0.5以上とすると、太陽光などの赤外線による輻射影響を省くことができる。また、第2の温度センサと対向する面の放射率εをε=0.6以上にすると、より精度よく周囲温度を算出することができる。また、ケーシングと対向しない面に凹凸をつけて表面積を稼ぐことでより精度が向上できる。
【0015】
また周囲温度決定部は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度T0との間に成立する相関関係に基づいて求めた、それぞれの係数を用いて周囲温度T0を決定する決定部を備えている。この場合も、相関関係は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度T0から選択した二組の二つの温度の差の間にある相関関係または二組の二つの温度の比の間にある相関関係である。また、周囲温度T0の算出には、データテーブルを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の周囲温度測定装置の一実施の形態の構成を示す概念図である。
図2】(A)は第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度Tから選択した二組の二つの温度の差の間に相関関係があることを示す図であり、(B)は二組の二つの温度の比の間に相関関係があることを示す図である。
図3】(A)は第1の温度センサ及び第2の温度センサとして、非接触温度センサを用いる場合の本発明の第2の実施の形態の概要を示す図であり、(B)は本実施の形態で用いる非接触温度センサの構造を概略的に示す図である。
図4】(A)及び(B)は、図1の実施の形態及び図3の実施の形態において、ケーシングをペルチエ素子に載せてケーシングの温度を10℃と40℃に温度制御した場合における各温度センサの出力の変化を示す図である。
図5】(A)及び(B)は、演算により求めた真の周囲温度T0と高精度温度センサが測定した真の周囲温度との誤差を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の周囲温度測定装置の一実施の形態の構成を示す概念図である。本実施の形態の周囲温度測定装置1は、ケーシング3と、第1の温度センサ5と、第2の温度センサ7と、周囲温度決定部9、被測定対象物11を有している。ケーシング3は、例えば腕時計のケース等のように金属成形品または樹脂成形品であり、人の腕に装着される腕時計であれば、ケーシング3には、人間の体温が固体熱伝導によりケーシング3に伝わり、この熱とケーシング3の内部の温度を含む熱が第1の温度センサ5によって検出される。その結果、第1の温度センサ5は、ケーシング3に実装されてケーシング3の温度に比例した第1の温度T1を検出する。第1の温度センサ5としては、ケーシング3の温度を直接または間接に測定できるものであればどのような温度センサを用いてもよいが、第1の温度センサ5としては例えば熱電対を用いることができる。第2の温度センサ7は、ケーシング3の周囲温度T2に比例した第2の温度T2を検出する。本実施の形態では、具体的には、被測定対象物11の温度を直接測定するように第2の温度センサ7は配置されている。被測定対象物11は、ケーシング3と熱的に絶縁した状態でケーシング3に保持されている。被測定対象物11は、ケーシング3の熱容量よりも熱容量の小さい材料、及び構造(例えば、銅、アクリル樹脂等)により形成されている。例えば、被測定対象物11の単位容積当たりの熱容量が4000J m・3 K・1以下であれば、第2の温度センサ11が測定する温度に、ケーシング3内部の温度の影響が含まれることを抑制して演算精度を高めることができる。また本実施の形態では、被測定対象物11とケーシング3との間に、支持部材13が配置されている。支持部材13は、伝導率が20(W/m・K)以下の材料(例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ふっ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ガラス、シリコンゴム、天然ゴム、ウレタンゴム等)で形成されており、しかも被測定対象物11とケーシング3との間隔寸法の10倍以上の長さ寸法を有している。このような支持部材13を用いれば、ケーシング3からの被測定対象物11への熱的影響を大幅に小さくすることができる。
【0019】
第2の温度センサ7としては、被測定対象物11の温度を直接または間接に測定できるものであればどのような温度センサを用いてもよい。直接測定する場合には、第2の温度センサ5としては、第1の温度センサ3と応答時間が同じものが好ましく、例えば熱電対を用いることができる。また、防水性能や外観を考慮した場合、被測定物に配線を有することは妥当ではないので、ケーシング3の内部に配置した、後述する赤外線を利用する非 接触温度センサを用いれば、なお良い。
本実施の形態の周囲温度決定部9は、第1の温度センサ5の出力と第2の温度センサ7の出力とに基づいて、演算によりケーシング3の周囲の真の周囲温度T0を決定する。本実施の形態の周囲温度決定部9で用いる関係式は、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度T0から選択した二組の二つの温度の差の間にある相関関係または二組の二つの温度の比の間にある相関関係から求められた、真の周囲温度T0を解とする式である。なおここで相関関係を求める際に使用する「真の周囲温度」は、予め周囲温度を測定できる既存の高精度温度センサ15により測定したものである。高精度温度センサ15としては、空中に周囲の物と熱的に完全に切り離した熱電対を用いている。
【0020】
本発明は、図2(A)及び(B)に示すように、第1の温度T1と、第2の温度T2と真の周囲温度Tから選択した二組の二つの温度の差[図2(A)の場合にはT2−T1とT0−T1]の間に相関関係があること、また二組の二つの温度の比[図2(B)の場合には、T2/T1とT0/T1]の間に相関関係があることを見いだしたことを基礎とする。図2(A)及び(B)の場合、この相関関係は一次関数または二次関数で表すことができる。本実施の形態では、この相関関係から求めた真の周囲温度T0を解とする式により、真の周囲温度T0を演算する。相関関係が、実質的にY=aX+bの一次関数で表される関係にある場合、aは一次関数の傾き[図2(A)及び(B)に示されるグラフの線の傾き]であり、bは一次関数の切片[図2(A)及び(B)に示されるグラフの線がY軸と交差する部分の値]である。
【0021】
この場合、演算に用いることができる関係式は、YがT0−T1でXがT2−T1であるか、若しくは、YがT1−T0でXがT1−T2のときには、T0=a(T2−T1)+b+T1となる。またYがT1−T0でXがT2−T0であるか、若しくは、YがT0−T1でXがT0−T2のときには、関係式はT0=(aT2+b−T1)/(a−1)となる。またYがT2−T1でXがT2−T0であるか、若しくは、YがT1−T2でXがT0−T2のときには、関係式はT0=(T2(a−1)+T1+b)/aとなる。またYがT0/T1でXがT2/T1であるか、若しくは、YがT1/T0でXがT1/T2のときには、関係式はT0=aT2+bT1となる。またYがT1/T0でXがT2/T0であるか、若しくは、YがT0/T1でXがT0/T2のときには、関係式はT0=(T1−aT2)/bとなる。またYがT1/T2でXがT0/T2であるか、若しくは、YがT2/T1でXがT2/T0のときには、関係式は、T0=(T1−bT2)/aとなる。図2(A)の場合、相関関係はY=1.8614X−0.3515の一次関数で表すことができる。この相関関係で真の周囲温度T0を演算した場合、演算結果と高精度温度センサ15で測定した真の周囲温度との相関係数R2が0.9912になることが確認できた。また図2(B)の場合、相関関係はY=1.8569X−0.858の一次関数で表すことができる。この相関関係で真の周囲温度T0を演算した場合、演算結果と高精度温度センサ15で測定した真の周囲温度との相関係数R2は、0.9914になることが確認できた。
【0022】
なお相関関係が、実質的に二次関数Y=cX2+dX+eの関係にある場合(ただしcは2次の係数であり、dは1次の係数であり、eは定数項である)でも、YとXの条件は、上記一次関数の場合と同じである。そして演算に用いる関係式は、上記X及びYの場合分けにおいて立てる二次方程式を解くことにより得られた式を用いればよい。
【0023】
(第2の実施の形態)
図3(A)は、第1の温度センサ及び第2の温度センサとして、非接触温度センサ6を用いる場合の本発明の第2の実施の形態の概要を示す図である。図3(B)は本実施の形態で用いる出願人がSFBセンサ(商標)[HIR−003M:製品番号]の名称で販売する非接触温度センサ6の構造を概略的に示す図である。この非接触温度センサ6は、被測定対象物から放射された赤外線を受光して被測定対象物の温度を測定する第2の温度センサ7´とハウジング61から放射される赤外線を受講してハウジング61の温度を測定する第1の温度センサ5´を備えている。ハウジング61は、ケーシング3に固定されているため、結果として第1の温度センサ5´はケーシング3の温度に比例した温度を検出している。本実施の形態のように同じハウジング61内に赤外線に、基づいて温度を検出する2つのセンサ素子が配置された構造の温度センサを用いると、第1及び第2の温度センサ5´及び7´の応答時間が同じになり、リアルタイムに精度よく演算することが可能となる。
【0024】
図4(A)及び(B)は、図1の実施の形態及び図3の実施の形態において、ケーシング3をペルチエ素子に載せてケーシングの温度を10℃と40℃に温度制御した場合における各温度センサ5,7、5´,7´及び15,Pの出力の変化を示している。本発明の実施の形態では、真の周囲温度を、第1及び第2の温度センサ5,5´及び7,7´の出力に基づいて上述の演算により求める。図5(A)及び(B)は、演算により求めた真の周囲温度Tと図4(A)及び(B)の温度センサ15が測定した真の周囲温度との誤差を示したものである。ペルチエ素子による温度制御は同じである。
【0025】
本実施の形態において、被測定対象物11は、ケーシング3と対向しない面の反射率RがR=0.5以上であり、第2の温度センサ7´と対向する面の放射率εがε=0.6以上であるのが好ましい。このように、ケーシング3と対向しない面の反射率RをR=0.5とすると、太陽光などの赤外線による輻射影響を省くことができる。また、第2の温度センサ7´と対向する面の放射率εをε=0.6以上にすると、より精度よく周囲温度を算出することができる。また、ケーシング3と対向しない面に凹凸をつけて表面積を稼ぐことでより精度が向上できる。
【0026】
(その他)
周囲温度決定部9は、第1の温度T1と、第2の温度T2と高精度温度センサで事前に測定した真の周囲温度T0との間に成立する相関関係に基づいて求めた、真の周囲温度T0と第1の温度T1及び第2の温度T2との関係から求めた係数を用いて、周囲温度を決定するように構成することができる。この場合も、相関関係は、第1の温度T1と、第2の温度T2と実測した真の周囲温度T0から選択した二組の二つの温度の差の間にある相関関係または二組の二つの温度の比の間にある相関関係である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、二つの温度センサの出力を用いて真の周囲温度を高い精度で演算により測定できる。
【符号の説明】
【0028】
1 周囲温度測定装置
3 ケーシング
5 第1の温度センサ
7 第2の温度センサ
9 周囲温度決定部
11 被測定対象物
13 支持部材
15 高精度温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5