【解決手段】収容部35を備える支持体30と、第1面50aと、第1面50aに設けられた複数のセンサ端子51cとを有し、収容部35の内部に収容された圧力センサ素子50と、圧力センサ素子50から離れた位置に設けられ、収容部35の内部に位置する複数のリード端子21cを有するリードフレーム20と、一つのセンサ端子51cと一つのリード端子21cとを対応させて接続するように、複数のセンサ端子51cと複数のリード端子21cとを電気的に接続する複数のボンディングワイヤ52cと、収容部35の内部において、複数のセンサ端子51c及び複数のリード端子21cを被覆する封止樹脂60、70と、を備える。封止樹脂60、70の絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、封止樹脂60、70のヤング率は1.0MPa以下である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の実施形態を説明する図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
(第1実施形態)
図1及び
図2は、本実施形態に係る圧力センサ10を示す図である。
図1は、圧力センサ10を示す平面図である。
図2は、圧力センサ10を示す図であって、
図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【0016】
なお、以下の説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、リードフレーム20の主面に垂直な方向をZ方向(
図2参照)、平面視におけるリード部21a〜21dの長さ方向をX方向(
図1参照)、平面視におけるリード部21a〜21dの幅方向をY方向とする。
【0017】
(圧力センサ)
本実施形態に係る圧力センサ10は、
図1及び
図2に示すように、パッケージ30(支持体)と、リードフレーム20と、信号処理IC40(制御素子、Integrated Circuit)と、圧力センサ素子50と、第1封止樹脂60と、第2封止樹脂70とを備える。
【0018】
(パッケージ)
パッケージ30は、リードフレーム20を支持する部材である。パッケージ30を構成する材料は、特に限定されない。本実施形態において、パッケージ30を構成する材料として、樹脂材料が採用されている。パッケージ30を構成する樹脂材料としては、比較的、高い硬さを有する材料が好ましく、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、エポキシ等を用いることが好ましい。また、樹脂材料に限定されず、無機材料が採用されてもよい。
【0019】
平面視(XY面視)におけるパッケージ30の形状は、特に限定されない。本実施形態において、パッケージ30の形状は、
図1に示すように、例えば、円形状である。パッケージ30は、本体34と、壁部33と、突出部31と、載置部32と、収容部35とを備える。
【0020】
本体34の内部には、
図2に示すように、信号処理IC40が埋設されている。
壁部33は、本体34の上面34aから圧力センサ素子50が設けられている位置に向かう方向(+Z方向)に突出して設けられた筒状の壁部である。壁部33の形状は、筒状であれば、特に限定されない。壁部33の形状は、四角筒状であっても、多角筒状であってもよい。本実施形態においては、壁部33の形状は、
図1及び
図2に示すように、例えば、円筒状である。
【0021】
平面視(XY面視)において、突出部31は、リードフレーム20における後述するリード部21a〜21dと、圧力センサ素子50との間に、本体34の上面34aから、壁部33が突出する方向と同じ方向(+Z方向)に突出して設けられている。突出部31の突出高さW(Z方向長さ)は、壁部33よりも小さい。
【0022】
載置部32は、圧力センサ素子50が載置される部分である。載置部32は、突出部31の上面に一致しており、本実施形態においては、
図2に示すように、本体34の上面34aから突出して設けられている。
【0023】
本実施形態においては、本体34の上面34aと突出部31の突出面31aとの間には、段差が形成されている。突出部31と載置部32とによって段差が形成されていることにより、本体34の上面34aを底面とする凹部36が形成されている。
図1においては、突出部31と載置部32との境界を2点鎖線で示している。本発明は、このような構造に限定されず、段差や凹部が形成されていない構造、例えば、突出面31aと上面34aとが一致している構造が採用されてもよい。
【0024】
平面視(XY面視)において、載置部32の形状は、特に限定されない。載置部32の形状は、円形状であっても、矩形状であっても、その他の形状、例えば、多角形状、扇形状、楕円形状等であってもよい。本実施形態においては、例えば、
図1に示すように、載置部32の平面視形状は、円形の一部が直線(
図1に示す2点鎖線)でカットされた形状である。
【0025】
収容部35は、
図2に示すように、壁部33の内壁33aと、載置部32の載置面32aと、突出部31の突出面31aと、本体34の上面34aとによって囲まれた領域であり、一方側(+Z方向)に開口されている。収容部35には、圧力センサ素子50と第1封止樹脂60とが収容されている。収容部35の内部には、収容部35に収容された部材が封止されるようにして、第2封止樹脂70が設けられている。
【0026】
(リードフレーム)
リードフレーム20は、圧力センサ素子50から離れた位置に設けられている。リードフレーム20は、例えば、金属等の導電材料で形成された平板部材である。リードフレーム20の形成材料が金属の場合、例えば、リードフレーム20の形成材料として、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、金(Au)、パラジウム(Pd)等を選択できる。また、このような金属材料を含む合金が用いられてもよい。また、金属の表面にメッキ処理が施された構造がリードフレーム20に適用されてもよい。例えば、銅合金に銀メッキが施された構造がリードフレーム20に用いられてもよい。
【0027】
リードフレーム20は、台座部24と、複数のリード部21a,21b,21c,21d(リード端子)と、図示しない外部接続部とを備える。リード部21a,21b,21c,21dは、収容部35の内部に位置する。
図1において、複数のリード部21a,21b,21c,21dが配列する方向(Y方向)において、互いに隣り合うリード部の間の距離P1(ピッチ)は、100μmである。
【0028】
外部接続部は、信号処理IC40から出力される信号を外部に取り出すための部分である。外部接続部は、ボンディングワイヤ等を介して、信号処理IC40と電気的に接続されている。外部接続部の少なくとも一部は、パッケージ30の外部に露出されている。
【0029】
台座部24は、信号処理IC40が設置される部分である。台座部24の裏面24bには、
図2に示すように、信号処理IC40が設置されている。平面視(XY面視)において、台座部24の形状は、特に限定されない。本実施形態において、台座部24の形状は、例えば、リード部21a〜21dが配置されている位置とは反対側(−X方向における位置)にて、パッケージ30の平面視における外形に沿ってリードフレーム20の端部がカットされた形状である(図示せず)。本実施形態においては、台座部24は、パッケージ30に埋設されている。
【0030】
リード部21a〜21dは、圧力センサ素子50と信号処理IC40との電気的接続を中継する部分である。リード部21a〜21dと圧力センサ素子50とは、ボンディングワイヤを介して接続されている。また、リード部21a〜21dと信号処理IC40とは、ボンディングワイヤを介して接続されている。平面視(XY面視)において、リード部21a〜21dの形状は、特に限定されない。本実施形態において、リード部21a〜21dの形状は、例えば、台座部24が配置されている位置とは反対側(+X方向における位置)にて、パッケージ30の平面視における外形に沿ってリードフレーム20の端部がカットされた形状である。リード部21a〜21dの表面22a,22b,22c,22dは、収容部35内に露出し、リード部21a〜21dの一端(+X方向における端部)は、パッケージ30に埋設されている。
【0031】
リード部21a〜21dは、幅方向(Y方向)に並んで設けられている。換言すると、リード部21a〜21dは、圧力センサ素子50とは反対側(+X方向における位置)に設けられている。リード部21cは、
図2に示すように、台座部24と同一の高さ(Z方向における位置)に設けられている。リード部21a〜21dは、第1封止樹脂60によって被覆されている。
【0032】
(ボンディングワイヤ)
リード部21a〜21dの表面22a,22b,22c,22dには、
図1に示すように、ボンディングワイヤ52a,52b,52c,52dの一端(第1端)が接続されている。ボンディングワイヤ52a〜52dの他端(第2端)は、後述する圧力センサ素子50のセンサ端子51a,51b,51c,51dと接続されている。
即ち、一つのボンディングワイヤが一つのセンサ端子と一つのリード部(リード端子)とを対応させて接続するように、複数のボンディングワイヤは、複数のセンサ端子と複数のリード部とを電気的に接続している。
即ち、リード部21a〜21dは、ボンディングワイヤ52a〜52dを介して、圧力センサ素子50と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ52a〜52dを構成する材料は、例えば、金(Au)である。
【0033】
リード部21cの裏面23cには、
図2に示すように、ボンディングワイヤ42cの一端(第1端)が接続されている。ボンディングワイヤ42cの他端(第2端)は、後述する信号処理IC40の制御端子41cと接続されている。即ち、リード部21cは、ボンディングワイヤ42cを介して、信号処理IC40と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ42cを構成する材料は、ボンディングワイヤ52a〜52dと同様である。これにより、圧力センサ素子50と、信号処理IC40とは、リード部21a〜21dを介して、電気的に接続されている。
【0034】
リード部21a〜21dと圧力センサ素子50とを接続する複数のボンディングワイヤは、第1ボンディングワイヤと称することもできる。また、リード部21a〜21dと信号処理IC40とを接続する複数のボンディングワイヤは、第2ボンディングワイヤと称することもできる。
【0035】
なお、
図2においては、リード部21cについてのみ図示しているが、リード部21a,21b,21dについても同様である。リード部21a〜21dについては同様の構成であるため、以下の説明においては、代表してリード部21cについてのみ説明する場合がある。
【0036】
(信号処理IC)
信号処理IC40は、端子面に設けられた複数の制御端子を有する。
図2においては、複数の制御端子のうちの一つの制御端子41cが示されている。
信号処理IC40は、圧力センサ素子50から出力されたセンサ信号を受けて圧力検出信号を出力する。信号処理IC40は、リードフレーム20の台座部24の裏面24b上に設置されている。信号処理IC40には、圧力センサ素子50から出力されたセンサ信号が、ボンディングワイヤ52c、リード部21c、ボンディングワイヤ42cを介して入力される。
【0037】
信号処理IC40は、例えば、圧力センサ素子50から出力されたセンサ信号の増幅、圧力センサ素子50のON/OFF制御、内蔵する温度センサによる検出値の補正、圧力センサ素子50の出力値の補正、検出データのA/D変換、リニアリティの補正、信号波形の整形等の機能を有する。信号処理IC40は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセス等によって製造できる。
【0038】
(圧力センサ素子)
圧力センサ素子50は、上面50a(第1面)と、上面50aに設けられた複数のセンサ端子51a,51b,51c,51dとを有し、収容部35の内部に収容されている。
圧力センサ素子50の構成としては、例えば、ケイ素(Si)等で構成された半導体基板の一方の面に、ダイヤフラム部と、基準圧力室として機能する密閉空間と、圧力変化に伴うダイヤフラム部の歪抵抗の変化を測定する複数の歪ゲージとを備える構成を採用できる。基準圧力室として機能する密閉空間は、例えば、ガラスを陽極接合する方法、SOI(Silicon On Insulator)技術を用いた方法等により作成できる。
【0039】
上記のような構成を採用した場合においては、圧力センサ素子50のダイヤフラム部が圧力を受けて撓むと、各歪ゲージにダイヤフラム部の歪み量に応じた応力が発生する。そして、この応力に応じて歪ゲージの抵抗値がピエゾ抵抗効果によって変化し、この抵抗値変化に応じたセンサ信号が出力される。これにより、圧力を測定することができる。このような構成の圧力センサ素子50は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用した圧力センサチップである。
【0040】
なお、圧力センサ素子50の構成においては、上述したようにピエゾ抵抗効果を用いたピエゾ抵抗式の圧力センサ素子が採用されているが、圧力センサ素子50の構成は、これに限定されない。例えば、静電容量式等、その他の方式の圧力センサ素子が用いられてもよい。
【0041】
圧力センサ素子50は、ダイボンド樹脂53を介して、載置部32の載置面32a上に設置されている。
ダイボンド樹脂53としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン等を選択できる。ダイボンド樹脂53の材料としては、ヤング率の小さい樹脂を選択することが好ましい。パッケージ30からダイボンド樹脂53を介して圧力センサ素子50に加わる応力を低減できるためである。ダイボンド樹脂53の厚み(Z方向長さ)は、圧力センサ素子50のセンサ特性に応じて設計され、例えば、30μm程度である。
【0042】
圧力センサ素子50の上面50aには、
図1に示すように、センサ端子51a,51b,51c,51dが形成されている。センサ端子51a,51b,51c,51dは、それぞれ、ボンディングワイヤ52a,52b,52c,52dを介して、リード部21a,21b,21c,21dと接続されている。
【0043】
圧力センサ素子50と信号処理IC40とは、平面視(XY面視)において、少なくとも一部が重なるように設けられている。本実施形態においては、圧力センサ素子50の全体が、平面視において信号処理IC40と重なっている。
【0044】
図1において、複数のセンサ端子51a,51b,51c,51dが配列する方向(Y方向)において、互いに隣り合うセンサ端子の間の距離P2(ピッチ)は、100μmである。
【0045】
(第1封止樹脂)
第1封止樹脂60は、収容部35の内部において、複数のリード部21a〜21dを被覆する。第1封止樹脂60は、リード部21a〜21dと、パッケージ30との境界を封止する。第1封止樹脂60は、
図1及び
図2に示すように、凹部36に設けられ、リード部21a〜21dと、ボンディングワイヤ52a〜52dの一部とを覆っている。
第1封止樹脂60の形成材料、即ち、封止樹脂としては、リード部21a〜21dと、パッケージ30との境界を封止できる範囲内において、特に限定されず、例えば、フルオロシリコーンゲル、フッ素ゲル、シリコーン、エポキシ樹脂等を選択できる。また、電気絶縁性を向上させる無機材料等の粉末が上記の材料に添加されてもよい。
【0046】
リード部21a〜21dとパッケージ30との境界には、隙間が生じる場合があり、そのような場合においては、外部の空気がその隙間を介して第2封止樹脂70の内部に入り込み、第2封止樹脂70内に気泡を生じさせる場合がある。このような場合においては、気泡によって圧力センサ素子に伝わる圧力値が変わり、測定精度が低下するといった問題がある。
【0047】
これらの問題に対して、第1封止樹脂60を設けることにより、リード部21a〜21dとパッケージ30との境界を封止できるため、リード部21a〜21dとパッケージ30との境界に隙間が生じるような場合であっても、第2封止樹脂70の内部に気泡が生じることを抑制できる。
【0048】
第1封止樹脂60の材料の特性に関し、絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、ヤング率は1.0MPa以下である。
一般的に知られているように、絶縁体に加わる電圧がある限度以上になった時、絶縁体が電気的に破壊され、絶縁性が失われ、絶縁体を挟持する導電体の間に電流が流れ、絶縁破壊が生じる。「絶縁破壊強さ」とは、このような絶縁破壊に対する強さを意味する。
【0049】
上述したように、第1封止樹脂60で覆われているリード部21a〜21dにおいて、互いに隣り合うリード部の間の距離P1は、100μmである。上記絶縁破壊強さを有する第1封止樹脂60で覆われた2つのリード部の間に、例えば、5Vの電圧が加わった場合、2つのリード部の間には、50V/mmの電界が発生すると見積もることができる。この値は、上記の絶縁破壊強さよりも十分に低いため、第1封止樹脂60が絶縁破壊することがない。
さらに、距離P1が10μmである場合において、隣り合う2つのリード部の間に5Vの電圧が加わったとしても、2つのリード部の間には、500V/mmの電界が発生すると見積もることができる。この値は、上記の絶縁破壊強さよりも十分に低いため、第1封止樹脂60が絶縁破壊することがない。
【0050】
第1封止樹脂60を構成する樹脂材料に関し、樹脂材料のヤング率が1.0MPaよりも大きいといった硬い樹脂材料が採用されている場合では、圧力センサ素子50(圧力センサ10)の出力に影響が生じてしまう。また、樹脂材料が硬い場合では、リード部に生じる振動が樹脂材料に吸収されず、ボンディングワイヤの強度に影響を与える可能性がある。このため、ヤング率が1.0MPa以下といった柔らかい樹脂材料で第1封止樹脂60が形成されていることが好ましい。
【0051】
(第2封止樹脂)
第2封止樹脂70は、収容部35の内部において、圧力センサ素子50の上面50a、複数の51a,51b,51c,51d、第1封止樹脂60、及びボンディングワイヤ52a,52b,52c,52dを被覆する。第2封止樹脂70は、収容部35内に収容された部材を封止するとともに、圧力センサ10の外部から内部に対する水分の侵入を防止するゲル状部材である。第2封止樹脂70は、収容部35内に防水ゲルが充填されて形成されている。第2封止樹脂70は、圧力センサ10の防水性を向上させる。即ち、第2封止樹脂70によって、圧力センサ10の外部の水や空気から圧力センサ素子50へ与えられる影響を低減することができる。
【0052】
第2封止樹脂70は、第1封止樹脂60とは異なる材料で構成されている。具体的に、第2封止樹脂70の形成材料、即ち、防水ゲルとしては、例えば、ケイ素(Si)系の樹脂、フッ素系の樹脂等を選択できる。防水ゲルとしては、例えば、硬度約0(ショアA硬度。JIS K 6253に準拠)の柔らかいゲル剤を用いることが好ましい。第2封止樹脂70は、高い粘性を持つことが好ましい。
【0053】
第2封止樹脂70は、光透過性が低いことが好ましい。可視光や紫外線を遮断することができ、圧力センサ素子50の出力特性の変化を抑制できるためである。例えば、第2封止樹脂70の形成材料に黒色の顔料等を含有させることによって、第2封止樹脂70の光透過性を低くすることができる。
【0054】
第2封止樹脂70は、圧力センサ10の外部雰囲気に露出する露出面70Rを有しており、この露出面70Rは、感圧面として機能する。このため、第2封止樹脂70は、測定対象から圧力センサ10に加わる圧力をそのまま圧力センサ素子50に伝達できる。このため、第2封止樹脂70によって圧力センサ素子50が覆われることによる、圧力センサ素子50の圧力検出精度の低下を抑制できる。
【0055】
第2封止樹脂70の材料の特性に関し、絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、ヤング率は1.0MPa以下である。
上述したように、第2封止樹脂70で覆われているセンサ端子51a〜51dにおいて、互いに隣り合うセンサ端子の間の距離P2は、100μmである。上記絶縁破壊強さを有する第2封止樹脂70で覆われた2つのセンサ端子の間に、例えば、5Vの電圧が加わった場合、2つのセンサ端子の間には、50V/mmの電界が発生すると見積もることができる。この値は、上記の絶縁破壊強さよりも十分に低いため、第2封止樹脂70が絶縁破壊することがない。
さらに、距離P2が10μmである場合において、隣り合う2つのセンサ端子の間に5Vの電圧が加わったとしても、2つのセンサ端子の間には、500V/mmの電界が発生すると見積もることができる。この値は、上記の絶縁破壊強さよりも十分に低いため、第2封止樹脂70が絶縁破壊することがない。
【0056】
第2封止樹脂70を構成する樹脂材料に関し、樹脂材料のヤング率が1.0MPaよりも大きいといった硬い樹脂材料が採用されている場合では、圧力センサ素子50(圧力センサ10)の出力に影響が生じてしまう。また、樹脂材料が硬い場合では、リード部に生じる振動が樹脂材料に吸収されず、ボンディングワイヤの強度に影響を与える可能性がある。このため、ヤング率が1.0MPa以下といった柔らかい樹脂材料で第2封止樹脂70が形成されていることが好ましい。
【0057】
(圧力センサの製造方法)
次に、
図2及び
図3を参照し、第1封止樹脂60及び第2封止樹脂70を形成する工程を中心に、圧力センサ10の製造方法について説明する。
本実施形態に係る圧力センサ10の製造方法は、リードフレーム基板準備工程と、信号処理IC実装工程と、パッケージ形成工程と、個片化工程と、圧力センサ素子実装工程と、第1封止樹脂塗布工程と、第2封止樹脂充填工程とを有する。
リードフレーム基板準備工程、信号処理IC実装工程、パッケージ形成工程、及び個片化工程については、説明を省略する。
【0058】
(圧力センサ素子実装工程)
図3(A)に示すように、圧力センサ素子実装工程を行う。これにより、圧力センサ素子50がダイボンド樹脂53を介して載置部32の載置面32a上に接着され、ボンディングワイヤ52cを介して、圧力センサ素子50のセンサ端子51cと、リード部21cの表面22cとが電気的に接続される。なお、
図3(A)では省略されているが、
図1に示す他のセンサ端子51a,51b,51dも同様にボンディングワイヤを介して、リード部の表面に電気的に接続される。
【0059】
(第1封止樹脂塗布工程)
次に、
図3(B)に示すように、第1封止樹脂塗布工程が行われ、封止樹脂を塗布して第1封止樹脂60が形成される。
リード部21cと壁部33との境界を封止するように、第1封止樹脂60の形成材料となる樹脂を塗布する。本実施形態においては、突出部31及び載置部32が形成されているため、凹部36内に封止樹脂が塗布される。これにより、リード部21cと壁部33との境界を封止することができる。封止樹脂を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、ディスペンサーを用いた塗布方法等を選択できる。
【0060】
本実施形態においては、リード部21a〜21dの全てが圧力センサ素子50における+X方向の位置に設けられているため、第1封止樹脂60の形成材料を一箇所、即ち、凹部36に塗布することによって各リード部21a〜21dと壁部33との境界をまとめて封止することができる。
【0061】
封止樹脂を塗布した後に、例えば、封止樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、封止樹脂を加熱することにより、封止樹脂を硬化させる。この工程により、第1封止樹脂60が形成される。
【0062】
(第2封止樹脂充填工程)
次に、
図2に示すように、第2封止樹脂充填工程が行われ、収容部35に第2封止樹脂70の形成材料である防水ゲルが充填される。
図2に示すように、圧力センサ素子50及びボンディングワイヤ52cの全体が封止されるように、第2封止樹脂70の形成材料を収容部35内に注入する。収容部35を注入する方法は、特に限定されず、例えば、ディスペンサーを用いた方法等を選択できる。
ここで、収容部35に注入した第2封止樹脂70の形成材料の内部に気泡が生じるような場合には、パッケージ30を減圧雰囲気下に配置し、減圧脱泡によって内部の気泡を除去してもよい。この工程により、第2封止樹脂70が形成される。
以上の工程により、本実施形態に係る圧力センサ10の製造工程は終了し、
図2に示す本実施形態に係る圧力センサ10が製造される。
【0063】
本実施形態によれば、圧力センサ10の小型化に伴って、隣り合うリード部間のピッチP1や隣り合うセンサ端子間のピッチP2が狭くなったとしても、第1封止樹脂60及び第2封止樹脂70を構成する材料が、1.0kV/mm以上の絶縁破壊強さを有するので、封止樹脂における絶縁破壊を防止することができる。従って、絶縁耐圧性に優れた小型の圧力センサを提供することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、第1封止樹脂は第2封止樹脂とは異なる材料で構成されている。本発明はこの構成に限定されない。絶縁破壊強さの条件を満たしていれば、第1封止樹脂及び第2封止樹脂は、同じ材料で構成されてもよい。
【0065】
(第2実施形態)
次に、
図4を参照し、本発明の第2実施形態に係る圧力センサについて説明する。
図4は、圧力センサ11を示す断面図である。
図4において、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
第1実施形態においては、第2封止樹脂70の露出面70Rが感圧面として機能している例について説明したが、本実施形態では、圧力センサ素子50の下面が感圧面として機能している例について説明する。
【0066】
(圧力センサ)
本実施形態に係る圧力センサ11は、パッケージ80(支持体)と、リードフレーム20と、圧力センサ素子55と、第1封止樹脂60と、第2封止樹脂70とを備える。なお、圧力センサ11は、信号処理IC40を備えておらず、圧力センサ素子の出力値を補正する等の機能を有していない。
【0067】
(パッケージ)
パッケージ80は、リードフレーム20を支持する部材である。パッケージ80を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、上述した第1実施形態におけるパッケージ30と同様の材料が採用される。パッケージ80の形状は、平面視(XY面視)において、例えば、円形状である。
パッケージ80は、本体81、凹部81R、キャップ82、外気導入部83、連通孔84、壁部85、及び収容部86を備える。パッケージ80を構成する部位のうち、本体81、外気導入部83、及び壁部85は、同一の材料で構成されており、一体成型品である。
キャップ82は、本体81とは別体の部材であり、壁部85の先端に設けられた段差部87に嵌合され、公知の接着剤を介して気密に固定されている。
【0068】
本体81の内部には、リードフレーム20が埋め込まれており、固定されている。リードフレーム20のリード部21の表面22は、収容部86の内部空間に露出している。
凹部81Rは、本体81の中央に位置しており、収容部86の内部空間に開口している。凹部81Rは、凹部81Rの内部にガラス台座56(後述)及び圧力センサ素子55を収容可能な程度の深さを有している。
【0069】
外気導入部83は、本体81から突出するように−Z方向に沿って延出している。外気導入部83の内部には、連通孔84が形成されている。連通孔84は、圧力センサ11の外部と凹部81Rとを連通している。換言すると、連通孔84は、圧力センサ11の外部雰囲気と圧力センサ素子55の下面55b(第2面、後述)とを連通している。
【0070】
壁部85は、本体81の上面81aから圧力センサ素子55が設けられている位置に向かう方向(+Z方向)に突出して設けられた筒状の壁部である。壁部85の形状は、筒状であれば、特に限定されない。壁部85の形状は、四角筒状であっても、多角筒状であってもよい。本実施形態においては、壁部85の形状は、例えば、円筒状である。
【0071】
収容部86は、壁部85の内壁と、本体81の上面81aと、凹部81Rと、キャップ82と、リード部21の表面22とによって囲まれた気密空間を有し、圧力センサ11の外部に開口していない。収容部86の内部には、後述するように、圧力センサ素子55、第1封止樹脂60、第2封止樹脂70、及びボンディングワイヤ52が収容されている。
【0072】
(リードフレーム)
リードフレーム20は、複数のリード部21と、屈曲部25と、外部配線26と、内部配線27とを有する。
複数のリード部21は、Y方向に沿って並んでいる。互いに隣り合うリード部の間の距離は、第1実施形態と同様に100μmである。
リード部21は、内部配線27の一部を構成している。本体81の内部に設けられた内部配線27は、本体81の側面から突出し、屈曲部25を介して外部配線26に繋がっている。
図4に示す例では、換言すると、内部配線27は、屈曲部25に達するまでX方向に延びており、外部配線26は、屈曲部25から−Z方向に沿って延在している。第1実施形態と同様に、リード部21は、ボンディングワイヤを介して、圧力センサ素子55に電気的に接続されている。
外部配線26は、圧力センサ11の外部に配置された信号処理装置に接続可能である。信号処理装置が外部配線26に接続されている場合、信号処理装置は、圧力センサ素子55から出力されたセンサ信号を受信する。
【0073】
(圧力センサ素子)
圧力センサ素子55は、例えば、ケイ素(Si)等で形成された半導体基板で構成されており、上面55a(第1面)と、上面55aとは反対側に位置する下面55b(第2面)と、上面55aに設けられた複数のセンサ端子51と、4つのピエゾ抵抗素子とを有している。圧力センサ素子55は、収容部86の内部に収容されている。
【0074】
図4においては、複数のセンサ端子51は、Y方向に沿って並んでいる。互いに隣り合うセンサ端子51の間の距離は、第1実施形態と同様に100μmである。
圧力センサ素子55の上面55aには、センサ端子51が形成されている。複数のセンサ端子51の各々は、ボンディングワイヤ52を介して、リード部21と接続されている。一方、下面55bは、上述したダイヤフラム部として機能する。
【0075】
凹部81Rの内部においては、圧力センサ素子55は、ガラス台座56上にダイボンド樹脂を介して固定されている。これにより、圧力センサ素子55の下面55bは、外気導入部83の連通孔84を通じて、圧力センサ11の外部雰囲気に露出している。
このような構造においては、圧力センサ11の外部雰囲気の圧力変動PRに伴い、下面55bのダイヤフラム部が圧力を受けて撓むと、ダイヤフラム部の歪み量に応じてピエゾ抵抗素子に応力が発生し、ピエゾ抵抗効果によってピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化する。圧力センサ素子55は、この抵抗値変化に応じたセンサ信号を出力する。これにより、圧力センサ11は、外部雰囲気における圧力を測定することができる。即ち、ダイヤフラム部が形成されている下面55bは、感圧面として機能する。
【0076】
(第1封止樹脂)
第1封止樹脂60は、リード部21と、ボンディングワイヤ52の一部とを覆っている。第1封止樹脂60の材料としては、第1実施形態と同様の材料が採用され、例えば、シリコーン系の樹脂を用いることができる。
また、第1封止樹脂60の材料の特性に関し、絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、ヤング率は1.0MPa以下である。
【0077】
(第2封止樹脂)
第2封止樹脂70は、センサ端子51と、ボンディングワイヤ52の一部とを覆っている。
第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、収容部86は、圧力センサ11の外部雰囲気から隔離されており、この収容部86の内部に第2封止樹脂70が設けられている。このため、防水ゲル(ゲル状部材)で第2封止樹脂70を形成しなくてもよい。
第2封止樹脂70の材料としては、例えば、第1封止樹脂60と同様に、シリコーン系の樹脂を用いることができる。
また、第2封止樹脂70の材料の特性に関し、絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、ヤング率は1.0MPa以下である。
【0078】
上述した第2実施形態によれば、リード部21が第1封止樹脂60で覆われており、センサ端子51が第2封止樹脂70で覆われているため、第1封止樹脂60及び第2封止樹脂70における絶縁破壊を防止することができる。従って、絶縁耐圧性に優れた小型の圧力センサを提供することができる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、
図5を参照し、本発明の第3実施形態に係る圧力センサについて説明する。
図5は、圧力センサ12を示す断面図である。
図5において、第1実施形態及び第2実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0080】
(圧力センサ)
本実施形態に係る圧力センサ11は、
図5に示すように、パッケージ80(支持体)と、リードフレーム20と、圧力センサ素子55と、第1封止樹脂60と、第2封止樹脂70とを備える。なお、上述した第2実施形態においては、信号処理IC40を備えない圧力センサ11について説明したが、第3実施形態の圧力センサ11においては、圧力センサ素子の出力値を補正する等の機能を有する信号処理IC40が収容部86の内部に配置されている。
【0081】
(パッケージ、リードフレーム、圧力センサ素子)
第3実施形態に係るパッケージ80は、凹部81Rが本体81に形成されていない点で、第2実施形態とは異なる。
第3実施形態に係るリードフレーム20のリード部21は、本体81の上面81a上に位置している。リード部21は、本体81と壁部85との間に固定されている。
第3実施形態に係る圧力センサ素子55は、本体81の上面81a上に位置しており、
図5においては、圧力センサ素子55が載置されるガラス台座が省略されている。圧力センサ素子55は、連通孔84の上方に配置されている。連通孔84は、圧力センサ12の外部雰囲気と圧力センサ素子55の下面55bとを連通している。
【0082】
(信号処理IC)
信号処理IC40(制御素子)は、本体81の上面81a上に配置され、固定されている。信号処理IC40は、圧力センサ素子55から出力されたセンサ信号を受けて圧力検出信号を出力する複数の制御端子41cを有する。信号処理IC40は、収容部86の内部に収容されている。
【0083】
(ボンディングワイヤ)
収容部86の内部においては、複数のボンディングワイヤ52が配置されている。
複数のボンディングワイヤ52は、圧力センサ素子55の複数のセンサ端子51と複数のリード部21とを電気的に接続する第1ワイヤ群52Aと、複数のセンサ端子51と複数の制御端子41cとを電気的に接続する第2ワイヤ群52Bと、複数の制御端子41cと複数のリード部21とを電気的に接続する第3ワイヤ群52Cと、を有する。
【0084】
(第1封止樹脂)
第1封止樹脂60は、リード部21と、第1ワイヤ群52Aの一部と、第3ワイヤ群52Cの一部とを覆っている。第1封止樹脂60の材料としては、第1実施形態と同様の材料が採用され、例えば、シリコーン系の樹脂を用いることができる。
また、第1封止樹脂60の材料の特性に関し、絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、ヤング率は1.0MPa以下である。
【0085】
(第2封止樹脂)
第2封止樹脂70は、センサ端子51と、制御端子41cと、第1ワイヤ群52Aの一部と、第2ワイヤ群52Bの一部と、第3ワイヤ群52Cの一部とを覆っている。
第2実施形態と同様に、第3実施形態では、収容部86は、圧力センサ12の外部雰囲気から隔離されており、この収容部86の内部に第2封止樹脂70が設けられている。このため、防水ゲル(ゲル状部材)で第2封止樹脂70を形成しなくてもよい。
第2封止樹脂70の材料としては、例えば、第1封止樹脂60と同様に、シリコーン系の樹脂(チップコート樹脂)を用いることができる。
また、第2封止樹脂70の材料の特性に関し、絶縁破壊強さは1.0kV/mm以上であり、ヤング率は1.0MPa以下である。
【0086】
上述した第3実施形態によれば、第1封止樹脂60及び第2封止樹脂70における絶縁破壊を防止することができる。従って、絶縁耐圧性に優れた小型の圧力センサを提供することができる。
【0087】
本発明の好ましい実施形態を説明し、上記で説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。