特開2019-184476(P2019-184476A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-184476(P2019-184476A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】シリコン基板の分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20190927BHJP
【FI】
   G01N27/62 F
   G01N27/62 V
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-77292(P2018-77292)
(22)【出願日】2018年4月13日
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505322131
【氏名又は名称】株式会社 イアス
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】呉 佳紅
(72)【発明者】
【氏名】川端 克彦
(72)【発明者】
【氏名】池内 満政
(72)【発明者】
【氏名】李 晟在
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
2G041EA01
2G041FA16
2G041GA20
2G041JA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膜厚の厚い窒化膜が成膜されたシリコン基板における微量金属等の不純物を、ICP−MSにより高精度に分析可能なシリコン基板の分析方法を提供する。
【解決手段】ロードポート10、基板搬送ロボット20、アライナー30、乾燥室50、気相分解チャンバー40、分析ステージ61及び基板分析用ノズル62を有する分析スキャンポート60、分析液採取手段70、誘導結合プラズマ分析する分析手段80を備えるシリコン基板用分析装置1を用いた分析方法であって、窒化膜が成膜されたシリコン基板Wを、基板分析用ノズルによりフッ化水素酸と過酸化水素水との混合液の回収液でシリコン基板表面を掃引回収し、その後回収液をシリコン基板表面に吐出して加熱乾燥し、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出して加熱乾燥して、分析液によりシリコン基板表面を掃引して回収し、分析液をICP−MSで分析することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象のシリコン基板を格納した格納カセットを設置するロードポートと、ロードポートに格納されたシリコン基板の取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボットと、シリコン基板の位置調整をするアライナーと、シリコン基板を加熱乾燥させる乾燥室と、エッチングガスによりシリコン基板をエッチングするための気相分解チャンバーと、シリコン基板を載置する分析ステージと、分析ステージに載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を回収する基板分析用ノズルと、を有する分析スキャンポートと、基板分析用ノズルにより回収された分析液が投入される分析容器を有する分析液採取手段と、分析容器に投入した分析液を吸引するネブライザーと、ネブライザーから供給される分析液を誘導結合プラズマ分析する分析手段と、を備えるシリコン基板用分析装置を用いたシリコン基板の分析方法において、
シリコン基板には窒化膜が成膜されており、
基板搬送ロボットによりロードポートから取り出された当該シリコン基板を気相分解チャンバーに搬送、設置して、気相分解チャンバーにてエッチングガスによりシリコン基板の気相分解処理を行い、
気相分解処理されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、1%〜10%質量濃度のフッ化水素酸と1%〜30%質量濃度の過酸化水素との混合液である回収液で、当該シリコン基板表面を掃引して回収し、回収された回収液をシリコン基板表面に吐出した後、
回収液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、
加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、
強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、
加熱乾燥したシリコン基板を、分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析することを特徴とするシリコン基板の分析方法。
【請求項2】
分析対象のシリコン基板を格納した格納カセットを設置するロードポートと、ロードポートに格納されたシリコン基板の取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボットと、シリコン基板の位置調整をするアライナーと、シリコン基板を加熱乾燥させる乾燥室と、エッチングガスによりシリコン基板をエッチングするための気相分解チャンバーと、シリコン基板を載置する分析ステージと、分析ステージに載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を回収する基板分析用ノズルと、を有する分析スキャンポートと、基板分析用ノズルにより回収された分析液が投入される分析容器を有する分析液採取手段と、分析容器に投入した分析液を吸引するネブライザーと、ネブライザーから供給される分析液を誘導結合プラズマ分析する分析手段と、を備えるシリコン基板用分析装置を用いたシリコン基板の分析方法において、
シリコン基板には窒化膜が成膜されており、
基板搬送ロボットによりロードポートから取り出された当該シリコン基板を気相分解チャンバーに搬送、設置して、気相分解チャンバーにてエッチングガスによりシリコン基板の気相分解処理を行い、
気相分解処理されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、1%〜10%質量濃度のフッ化水素酸と1%〜30%質量濃度の過酸化水素との混合液である回収液で、当該シリコン基板表面を掃引して回収し、回収された回収液をシリコン基板表面に吐出した後、
回収液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、
加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、硝酸以外の酸による強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、
硝酸以外の酸による強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、
続いて、再度、加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、
強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、
加熱乾燥したシリコン基板を、分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析することを特徴とするシリコン基板の分析方法。
【請求項3】
分析対象のシリコン基板を格納した格納カセットを設置するロードポートと、ロードポートに格納されたシリコン基板の取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボットと、シリコン基板の位置調整をするアライナーと、シリコン基板を加熱乾燥させる乾燥室と、エッチングガスによりシリコン基板をエッチングするための気相分解チャンバーと、シリコン基板を載置する分析ステージと、分析ステージに載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を回収する基板分析用ノズルと、を有する分析スキャンポートと、基板分析用ノズルにより回収された分析液が投入される分析容器を有する分析液採取手段と、分析容器に投入した分析液を吸引するネブライザーと、ネブライザーから供給される分析液を誘導結合プラズマ分析する分析手段と、を備えるシリコン基板用分析装置を用いたシリコン基板の分析方法において、
シリコン基板には窒化膜が成膜されており、
基板搬送ロボットによりロードポートから取り出された当該シリコン基板を気相分解チャンバーに搬送、設置して、気相分解チャンバーにてエッチングガスによりシリコン基板の気相分解処理を行い、
気相分解処理されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、
強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥する第一溶液処理を行い、
第一溶液処理により加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、第一溶液処理と異なる強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、
第一溶液処理と異なる強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥する第二溶液処理を行い、
第二溶液処理による加熱乾燥したシリコン基板を、分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析することを特徴とするシリコン基板の分析方法。
【請求項4】
強酸はフッ化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸のいずれか1種以上であり、強アルカリは水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムである請求項1〜請求項3いずれかに記載のシリコン基板の分析方法。
【請求項5】
加熱乾燥する際の加熱温度が、100℃〜130℃である請求項1〜請求項4いずれかに記載のシリコン基板の分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造等に用いられるシリコン基板に含まれる微量金属等の不純物を分析する分析方法に関する。特に、本発明は、分析対象であるシリコン基板表面に、厚い膜厚の窒化膜が成膜されたシリコン基板を分析する際に好適なシリコン基板の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の製造に用いられるシリコン製ウェーハ等のシリコン基板では、高集積化に伴い、デバイス特性に影響する金属等の不純物を検出可能な分析装置が求められている。シリコン基板の金属などの不純物量が、極微量であっても検出可能な分析方法の一つとして、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を用いる方法が知られている。この分析方法では、シリコン基板に含まれる金属等の不純物を、ICP−MSに導入可能な形態として取り出すべく、気相分解法によりシリコン基板をエッチングして、そのエッチング後のシリコン基板表面を分析液で掃引することで、金属などの不純物を分析液中に移行させて、その分析液をICP−MSに導入して分析を行う(例えば、特許文献1)。また、特許文献2には、基板分析用ノズルを用いて、シリコン基板に含まれる不純物を分析液に取り込んで分析する方法が開示されている。
【0003】
このような分析方法において、厚い膜厚の窒化膜やシリコンの酸化膜などが成膜されたシリコン基板を分析する技術が提案されている(例えば、特許文献3)。この特許文献3による分析方法では、分析対象であるシリコン基板を気相分解処理し、基板分析用ノズルにより、10%〜30%質量濃度のフッ化水素酸と1%〜30%質量濃度の過酸化水素水との混合液である高濃度回収液で、当該シリコン基板表面を掃引して回収し、回収された高濃度回収液をシリコン基板表面に吐出した後、高濃度回収液が吐出されたシリコン基板を加熱乾燥し、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析する。この方法によれば、シリコン基板に比較的厚い膜厚の窒化膜が形成されている場合であっても、フッ化水素酸のエッチングガスで気相分解した際に生じる、Si(NHのフッ化アンモニウム系の白色塩の影響を抑制し、ICP−MSによる高精度の分析を可能となる。また、分析装置のメインテナンス負担も軽減することができる。そして、シリコン基板に比較的厚い膜厚の酸化膜が形成されている場合でも、フッ化水素のエッチングガスで気相分解する際に生成される、Si(OH)とHSiFの影響を抑制して、ICP−MSによる高精度の分析が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−281542号公報
【特許文献2】特開2013−257272号公報
【特許文献3】特許第6108367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリコン基板に、かなり厚めの窒化膜、例えば200nm以上、が形成されている場合、上述した分析方法であっても、高精度の分析を行えない場合が生じた。これは、シリコンウェーハ上に成膜された窒化膜は、理想的なSiでないことからフッ化水素酸で気相分解後の白色塩も理想的なSi(NH26の形とはならなく、Si(NHの形となっていることによる。理想的な窒化膜の場合、その化学形態はSiであり、フッ化水素酸のエッチングガスで気相分解した際に生じる化合物も、Si(NHとなり、これを加熱することにより次のような反応を生じ、SiをSiFの気体としてシリコン基板表面から減少することができる。
Si(NH26 → SiF + 2NH
ところが、実際に生成される化合物はSi(NH)xFyであり、200nm以上の膜厚の窒化膜が成膜されている場合、フッ化水素酸が過剰な状態で加熱した後でも分析液中のSi濃度が1000ppm以上となり、高精度の分析ができなかった。
【0006】
より具体的には、先行技術の特許文献3の分析方法によると、膜厚100nmの窒化膜が成膜された12インチシリコン基板に、高濃度回収液を用いて乾燥させることで、1mLの分析液中のSi濃度を70ppm程度まで低減することができたが、膜厚200nmの窒化膜の場合では、1,000ppm以上のSiが残ってしまった。この除去されるSi量は用いる高濃度回収液のフッ化水素酸量により異なり、フッ化水素酸量が少ないと、1,000ppm〜10,000ppmのSiが1mLの分析液中に残る現象が生じた。
【0007】
このような事情のもと、本発明は、膜厚200nm以上の窒化膜が成膜されたシリコン基板であっても、窒化膜に含まれる微量金属等の不純物を、ICP−MSによる高精度な分析が可能となるシリコン基板の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の本発明は、分析対象のシリコン基板を格納した格納カセットを設置するロードポートと、ロードポートに格納されたシリコン基板の取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボットと、シリコン基板の位置調整をするアライナーと、シリコン基板を加熱乾燥させる乾燥室と、エッチングガスによりシリコン基板をエッチングするための気相分解チャンバーと、シリコン基板を載置する分析ステージと、分析ステージに載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を回収する基板分析用ノズルと、を有する分析スキャンポートと、基板分析用ノズルにより回収された分析液が投入される分析容器を有する分析液採取手段と、分析容器に投入した分析液を吸引するネブライザーと、ネブライザーから供給される分析液を誘導結合プラズマ分析する分析手段と、を備えるシリコン基板用分析装置を用いたシリコン基板の分析方法において、シリコン基板には窒化膜が成膜されており、基板搬送ロボットによりロードポートから取り出された当該シリコン基板を気相分解チャンバーに搬送、設置して、気相分解チャンバーにてエッチングガスによりシリコン基板の気相分解処理を行い、気相分解処理されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、1%〜10%質量濃度のフッ化水素酸と1%〜30%質量濃度の過酸化水素水との混合液である回収液で、当該シリコン基板表面を掃引して回収し、回収された回収液をシリコン基板表面に吐出した後、回収液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、加熱乾燥したシリコン基板を、分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析することを特徴とする。
【0009】
まず、第一の本発明に係るシリコン基板の分析方法について説明する。膜厚の厚い窒化膜が成膜されたシリコン基板の分析を行う場合、基板搬送ロボットによりロードポートから取り出されたシリコン基板は、まず、気相分解チャンバーに搬送されて、チャンバー内に設置される。そしてフッ化水素酸の蒸気を含むエッチングガスをシリコン基板に接触させて気相分解処理を行う。この気相分解処理を行ったシリコン基板は、基板搬送ロボットにより分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置される。この際、分析スキャンポートの基板分析用ノズルには、1%〜10%質量濃度のフッ化水素酸と1%〜30%質量濃度の過酸化水素水との混合液である回収液が1mL投入されており、この回収液をノズル先端に保持した基板分析用ノズルによりシリコン基板表面を掃引して、Si(NHのフッ化アンモニウム系の白色塩を溶解する。そして、回収した回収液には、気相分解処理を行ったシリコン基板表面に残渣として存在していた金属等の不純物も取り込まれている。
【0010】
続いて、基板分析用ノズルに回収した回収液は、シリコン基板表面に吐出して戻され、シリコン基板表面の特定の場所に回収液を載せる。回収液が載せられたシリコン基板は、基板搬送用ロボットにより、乾燥室に搬送設置されると、100℃程度の加熱乾燥をすることにより、回収液に含まれる、Si(NHが分解されてある程度のSiはSiFガスとして取り除かれるが、基板表面にはNHFとSi(NHの白色塩が残渣として析出される。
【0011】
そして、加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出する。この強酸溶液、強アルカリ溶液を吐出することにより、窒化膜における白色塩のSi(NHの(NHを強酸或いは強アルカリと反応させることにより、強酸ではより安定性の良い化合物NHNO等に変化し、また、強アルカリでは、NHに変化し、Si(NHのSiとFがSiFを生成しやすくさせる。その後、強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥することにより、SiFを気体にして蒸発させる。この工程により、シリコン基板表面のSi成分が大幅に低減される。
【0012】
乾燥室にて加熱乾燥されたシリコン基板は、基板搬送用ロボットにより、再び、分析ステージに搬送、載置される。この時、基板分析用ノズルには1mLの分析液が投入されており、そして、分析液でシリコン基板表面を掃引して、分析液中に不純物を取り込む。基板用ノズルにより回収した分析液は、分析液採取手段にある分析容器に投入され、ネブライザーに到達する。その後、ネブライザーの分析液をICP−MSにて分析する。この分析液には、200nm以上の膜厚の窒化膜が成膜された12インチシリコン基板であっても、分析液中のSi濃度が低い状態(10ppm程度)となる。よって、本発明に係るシリコン基板の分析方法によれば、200nm以上の膜厚の厚い窒化膜が成膜されたシリコン基板であっても、窒化膜中に含まれた微量金属等の不純物を、ICP−MSにより高精度に分析可能となる。
【0013】
本発明に係るシリコン基板の分析方法の強酸溶液、強アルカリ溶液には特に制限はないが、強酸はフッ化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸のいずれか1種以上であることが好ましく、強アルカリは水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが好ましい。強酸と強アルカリは、1種類の溶液で使用してもよく、複数の強酸の混合溶液、複数の強アルカリの混合溶液で使用してもよい。強酸溶液、強アルカリ溶液の濃度は、できるだけ希釈しない方が乾燥時間を低減することができる。本発明における回収液及び分析液の濃度は、フッ化水素酸が1%〜10%質量濃度、過酸化水素水が1%〜30%質量濃度であることが好ましい。
【0014】
上記した本発明に係るシリコン基板の分析方法によれば、200nm以上の膜厚の厚い窒化膜が成膜された12インチシリコン基板であっても、Si濃度の影響を抑制し、ICP−MSによる高精度な分析が可能となるが、強酸として硝酸を用いた場合、シリコン基板表面がエッチングされる現象が生じることがあった。そのため、このシリコン基板のエッチングを防止すべく、第二の本発明として、次のようなシリコン基板の分析方法を見出した。
【0015】
第二の本発明は、分析対象のシリコン基板を格納した格納カセットを設置するロードポートと、ロードポートに格納されたシリコン基板の取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボットと、シリコン基板の位置調整をするアライナーと、シリコン基板を加熱乾燥させる乾燥室と、エッチングガスによりシリコン基板をエッチングするための気相分解チャンバーと、シリコン基板を載置する分析ステージと、分析ステージに載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を回収する基板分析用ノズルと、を有する分析スキャンポートと、基板分析用ノズルにより回収された分析液が投入される分析容器を有する分析液採取手段と、分析容器に投入した分析液を吸引するネブライザーと、ネブライザーから供給される分析液を誘導結合プラズマ分析する分析手段と、を備えるシリコン基板用分析装置を用いたシリコン基板の分析方法において、シリコン基板には窒化膜が成膜されており、基板搬送ロボットによりロードポートから取り出された当該シリコン基板を気相分解チャンバーに搬送、設置して、気相分解チャンバーにてエッチングガスによりシリコン基板の気相分解処理を行い、気相分解処理されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、1%〜10%質量濃度のフッ化水素酸と1%〜30%質量濃度の過酸化水素との混合液である回収液で、当該シリコン基板表面を掃引して回収し、回収された回収液をシリコン基板表面に吐出した後、回収液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、硝酸以外の酸による強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、硝酸以外の酸による強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、続いて、再度、加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥し、加熱乾燥したシリコン基板を、分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析するものとした。
【0016】
第二の本発明では、第一の本発明における回収液による処理後、二回の強酸溶液又は強アルカリ溶液による処理を行うもので、まず、回収液による処理後のシリコン基板表面に、硝酸以外の酸による強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出して、加熱乾燥を行い、続いて、再度、強酸溶液(強酸溶液を構成する酸として硝酸も含まれる)又は強アルカリ溶液を吐出して加熱乾燥して、その後、分析液による掃引を行うものである。
【0017】
回収液による処理後、硝酸による強酸溶液をシリコン基板表面に吐出すると、シリコン基板表面に残存するフッ化水素と硝酸が混ざることによりに、次のような反応を生じてシリコン基板をエッチングするものと考えられる。
6HF+4HNO+Si → HSiF+4NO+4H
そこで、第二の本発明では、回収液による処理後、1度目の強酸溶液の処理として、硝酸以外の酸による強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出して、加熱乾燥を行うことで、ある程度のSi成分をシリコン基板表面から除去する。その後、2度目の処理として、シリコン基板表面に強酸溶液又は強アルカリ溶液を再度吐出して、加熱乾燥をすることで、シリコン基板表面のSi成分を大幅に低減するようにした。この第二の本発明のシリコン基板の分析方法によれば、シリコン基板表面のSi成分が大幅に低減されるものの、シリコン基板表面のエッチングを抑制できる。
【0018】
この第二の本発明における、1度目の強酸溶液を構成する硝酸以外の酸としては、フッ化水素酸、硫酸、塩酸のいずれか1種以上を、強アルカリ溶液としては、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムを用いることができる。そして、2度目の強酸溶液を構成する酸としては、フッ化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸のいずれか1種以上を、強アルカリ溶液としては、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムのいずれか1種以上を用いることができる。
【0019】
第二の本発明の別手法として、本発明者らはさらに次のようなシリコン基板の分析方法(第三の本発明)を見出した。第三の本発明は、分析対象のシリコン基板を格納した格納カセットを設置するロードポートと、ロードポートに格納されたシリコン基板の取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボットと、シリコン基板の位置調整をするアライナーと、シリコン基板を加熱乾燥させる乾燥室と、エッチングガスによりシリコン基板をエッチングするための気相分解チャンバーと、シリコン基板を載置する分析ステージと、分析ステージに載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を回収する基板分析用ノズルと、を有する分析スキャンポートと、基板分析用ノズルにより回収された分析液が投入される分析容器を有する分析液採取手段と、分析容器に投入した分析液を吸引するネブライザーと、ネブライザーから供給される分析液を誘導結合プラズマ分析する分析手段と、を備えるシリコン基板用分析装置を用いたシリコン基板の分析方法において、シリコン基板には窒化膜が成膜されており、基板搬送ロボットによりロードポートから取り出された当該シリコン基板を気相分解チャンバーに搬送、設置して、気相分解チャンバーにてエッチングガスによりシリコン基板の気相分解処理を行い、気相分解処理されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥する第一溶液処理を行い、第一溶液処理により加熱乾燥されたシリコン基板を分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより、当該シリコン基板表面に、第一溶液処理と異なる強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、第一溶液処理と異なる強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥する第二溶液処理を行い、第二溶液処理による加熱乾燥したシリコン基板を、分析スキャンポートの分析ステージに搬送、載置して、基板分析用ノズルにより当該シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析することを特徴とする。
【0020】
ここで、第三の本発明に係るシリコン基板の分析方法について説明する。ここでは、第二の本発明に係るシリコン基板の分析方法と異なる点についてのみ解説する。
【0021】
第三の本発明に係るシリコン基板の分析方法では、気相分解処理後にフッ化水素酸と過酸化水素水の回収液による処理を行わず、2段階の溶液処理を行うものである。つまり、第三の本発明においては、気相分解処理後のシリコン基板表面に、強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥する第一溶液処理を行う。続いて、第一溶液処理を行ったシリコン基板表面に、第一溶液処理と異なる強酸溶液又は強アルカリ溶液を吐出し、第一溶液処理と異なる強酸溶液又は強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥する第二溶液処理を行う。その後、シリコン基板表面を分析液で掃引し、分析対象物を移行させた分析液を誘導結合プラズマ分析するものである。
【0022】
この第三の本発明について、第一溶液処理の強酸として塩酸、第二溶液処理の強酸として硝酸を用いた場合を例にして具体的に説明する。気相分解処理後、第一溶液処理に塩酸溶液を用いると、Si成分の一部はSi(NHClの形態になるため、その後の加熱乾燥によりある程度のSi成分が蒸発される。塩酸濃度が高いほどSi成分の除去能力は高くなる。シリコン基板がエッチングされる要因は、フッ素(F)イオンと酸化剤が混合することで生じる。一方、塩酸は還元剤であり、フッ素(F)イオンを塩素(Cl)イオンに置き換えることによりシリコン基板のエッチングを抑制することができる。その後、第二溶液処理に硝酸溶液を用いると、Si(NHと先の塩酸溶液により生成したSi(NHClの混合した塩の(NHClと(NH部が硝酸により(NHNOに変換されて、SiFおよびSiClを生成しやすくさせる。その後、硝酸溶液が吐出されたシリコン基板を乾燥室に搬送、設置して、加熱乾燥することにより、SiFおよびSiClを気体にして蒸発させる。先の塩酸溶液による工程とこの硝酸溶液による工程により、シリコン基板表面のSi成分が大幅に低減される。さらに、この第三の本発明に係るシリコン基板の分析方法では、シリコン基板表面のエッチングも抑制できる。この場合、硝酸濃度は、高濃度の方がSiの除去効率は高い。
【0023】
第一乃至第三の本発明における強酸溶液又は強アルカリ溶液の濃度は次のようにすることが好ましい。ここで示す濃度は、各薬品を単独で使用する場合の質量濃度である。強酸として塩酸の場合は18%〜36%であり、硝酸の場合は34%〜68%、フッ化水素酸の場合は1%〜38%、硫酸の場合は1%〜10%であり、強アルカリとして水酸化カリウムの場合は1%〜50%、水酸化ナトリウムの場合は1%〜30%である。尚、複数混合して使用する場合は適宜調整を行って溶液を作ることができる。
【0024】
本発明に係るシリコン基板の分析方法においては、加熱乾燥する際の加熱温度を100℃〜130℃にすることが好ましい。130℃を超える温度になると、蒸発の際に、金属などの不純物も一緒に蒸発する傾向となる。100℃未満であると、加熱乾燥に時間がかかる傾向となり、シリコン基板上にある液体成分が確実に蒸発しなくなる。
【発明の効果】
【0025】
以上で説明したように、本発明のシリコン基板の分析方法によれば、200nm以上の膜厚の厚い窒化膜が成膜されたシリコン基板であっても、窒化膜に含まれる微量金属等の不純物を、ICP−MSにより高精度に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】シリコン基板用分析装置の概略図
図2】基板分析用ノズルの概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1には、本実施形態におけるシリコン基板用分析装置の概略図を示す。図1のシリコン基板用分析装置1は、分析対象のシリコン基板Wを格納した図示せぬ格納カセットが設置されるロードポート10と、シリコン基板Wの取り出し、搬送、設置が可能な基板搬送ロボット20と、シリコン基板の位置調整をするアライナー30と、シリコン基板Wをエッチングするための気相分解チャンバー40と、加熱乾燥処理用の乾燥室50と、シリコン基板Wを載置する分析ステージ61、分析ステージ61に載置されたシリコン基板表面を分析液で掃引して回収する基板分析用ノズル62、基板分析用ノズル62を操作するノズル操作ロボット63、分析スキャンポート60と、基板分析用ノズル62により回収した高濃度回収液及び分析液を投入される分析容器(図示せず)が設置されたオートサンプラー70(分析液採取手段)と、ネブライザー(図示せず)と、誘導結合プラズマ分析を行う誘導結合プラズマ分析器(ICP−MS)80とから構成されている。尚、分析スキャンポート62には、分析方法に対応した回収液、強酸溶液、強アルカリ溶液、分析液が備えられている。
【0028】
図2に、基板分析用ノズル62の概略断面図を示す。ノズル操作ロボット(図示せず)により搬送、移動などの操作が行われる基板分析用ノズル62は、ノズル本体621の液溜部622内に、分析液などの溶液を充填、吸引、排出できるようになっている。例えば、分析液Dを用いてシリコン基板表面を掃引する場合、ノズル本体621の先端に設けられたドーム状の溶液保持部623に分析液を保持することで、シリコン基板W表面に接触させ、分析液Dがシリコン基板表面を移動するように、ノズル操作ロボットにより操作し、分析液中に分析対象である微量金属などの不純物を移行させる。
【0029】
次に、本実施形態のシリコン基板用分析装置による分析手順について説明する。ここでは、第一の本発明のシリコン基板の分析方法を例に説明する。第二、第三の本発明については、適宜、分析手順に合わせて当該シリコン基板用分析装置を操作することで対応できる。
【0030】
まず、基板搬送ロボット20によりロードポート10から分析対象のシリコン基板Wを取り出し、装置内に設置されたアライナー30に搬送してシリコン基板Wの位置調整を行う。その後、シリコン基板Wを気相分解チャンバー40に搬送してチャンバー内に配置する。
【0031】
気相分解チャンバー40では、フッ化水素酸の蒸気を含むエッチングガスをシリコン基板Wに吹き付けて、シリコン基板表面のエッチングを行う気相分解処理を行う。この気相分解処理により、シリコン基板表面の窒化膜の膜中に含まれた金属などの不純物やシリコン含有化合物がシリコン基板上に残渣として残る。
【0032】
気相分解処理を終えたシリコン基板Wは、分析ステージ61に搬送され、載置される。そして、ノズル操作ロボット63が作動して、基板分析用ノズル62に分析スキャンポート60から回収液が充填される。回収液が充填された基板分析用ノズル62は、シリコン基板W上に移動して、その一部をシリコン基板W上に吐出し、ノズル本体の先端に回収液を保持した状態でシリコン基板W表面を掃引する。これにより、シリコン基板W上に残渣として残っている金属などの不純物やシリコン含有化合物が回収液に取り込まれる。回収液による掃引の後、基板分析用ノズル62に回収された回収液は、シリコン基板W上に全量吐出される。この時の吐出場所は、一カ所にしてもよいし、複数個所に分けて行うこともできる。
【0033】
回収液を載せたシリコン基板Wは乾燥室50に搬送され室内に配置される。そして、100℃〜130℃の温度により、シリコン基板Wを加熱乾燥する。この乾燥室50での加熱乾燥により、シリコン基板W上に、白色塩などになった生成物が析出する。
【0034】
加熱乾燥後のシリコン基板Wは、基板搬送ロボット20により、分析ステージ61に搬送され、載置される。そして、ノズル操作ロボット63が作動して、基板分析用ノズル62に分析スキャンポート60から強酸溶液または強アルカリ溶液が充填される。基板分析用ノズル62は、溶液または強アルカリ溶液をシリコン基板W上に吐出する。強酸溶液または強アルカリ溶液が吐出されたシリコン基板Wは、乾燥室50に搬送され室内に配置される。そして、100℃〜130℃の温度により、シリコン基板Wを加熱乾燥する。この乾燥室50での加熱乾燥により、シリコン基板W上に存在するシリコン(Si)はSiFのガスとして揮発されて除去される。
【0035】
加熱乾燥後のシリコン基板Wは、基板搬送ロボット20により、分析ステージ61に搬送され、載置される。そして、ノズル操作ロボット63が作動して、基板分析用ノズル62に分析スキャンポート60から分析液が充填される。分析液が充填された基板用分析ノズルは、シリコン基板W上に移動してその一部を吐出し、ノズル本体の先端に分析液を保持した状態で、シリコン基板W表面を掃引する。これにより、シリコン基板W上に残渣として残っている金属などの不純物は分析液に取り込まれる。この分析液による掃引は、回収液を吐出した場所に合わせて行うことができる。例えば、一カ所に回収液を吐出した場合、その吐出場所付近を掃引することができ、また、複数個所に分けて吐出した場合は、シリコン基板W全面を掃引することで対応できる。
【0036】
シリコン基板W表面を掃引して不純物を取り込んだ分析液は、オートサンプラー(分析液採取手段)70に備えられたPTFE製のバイアルと呼ばれる分析容器(図示せず)に投入される。分析容器の分析液は、ネブライザーで吸引され、ICP−MSにより分析が行われる。
【0037】
実施例1:膜厚200nmの窒化膜(Si)が成膜された、12インチ径のシリコン基板を分析した結果について説明する。回収液としては、3%質量濃度のフッ化水素酸と、4%質量濃度の過酸化水素水との混合液(1000μL)を使用した。また、強酸溶液として、68%質量濃度の硝酸溶液、分析液としては3%質量濃度のフッ化水素酸と、4%質量濃度の過酸化水素水との混合液を使用した。そして、分析器であるICP−MSについては、パーキンエルマー社製ELAN DRC IIを使用した。尚、この実施例1は、本願の第一の本発明に対応するものである。
【0038】
比較例1:先に、特許文献3における分析方法にて、膜厚200nmの窒化膜(Si)が成膜された、12インチ径のシリコン基板を分析した結果について説明する。高濃度回収液は、20%質量濃度のフッ化水素酸と、15%質量濃度の過酸化水素水との混合液(1000μL)を使用した。分析液は3%質量濃度のフッ化水素酸と、4%質量濃度の過酸化水素との混合液を使用した。特許文献3の場合、分析液によりシリコン基板表面の全面を掃引して、金属などの不純物を分析液に取り込み、回収した分析液の1ml中のSi濃度を調べたところ、約1000ppmであった。
【0039】
実施例1の条件で分析を行った結果、分析液によりシリコン基板表面の全面を掃引して、金属などの不純物を分析液に取り込み、回収した分析液の1mL中のSi濃度を調べたところ、約10ppmと非常に低い濃度であった。また、分析液の回収後のシリコン基板表面を観察したところ、表面の一部がエッチングされていることが確認された。
【0040】
実施例2:この実施例2では、実施例1と同様のシリコン基板を、第二の本発明に対応する分析方法により分析した結果について説明する。回収液としては、3%質量濃度のフッ化水素酸と、4%質量濃度の過酸化水素水との混合液(1000μL)を使用した。また、一度目の強酸溶液として36%の塩酸を用い、二度目の強酸溶液として68%の硝酸を用いた。分析液としては3%質量濃度のフッ化水素酸と、4%質量濃度の過酸化水素水との混合液を使用した。尚、分析装置、加熱乾燥温度などは実施例1と同様にした。
【0041】
実施例2の条件で分析を行った結果、分析液によりシリコン基板表面の全面を掃引して、金属などの不純物を分析液に取り込み、回収した分析液の1mL中のSi濃度を調べたところ、約10ppmと非常に低い濃度であった。また、分析液の回収後のシリコン基板表面を観察したところ、エッチングされているような部分はほとんど確認されなかった。
【0042】
実施例3:この実施例3では、実施例1と同様のシリコン基板を、第三の本発明に対応する分析方法により分析した結果について説明する。
この実施例3では、第一溶液として回収液を36%質量濃度の塩酸溶液(1000μL)を用いて、第二溶液として68%質量濃度の硝酸溶液(1mL)を用いた。分析液としては3%質量濃度のフッ化水素酸と、4%質量濃度の過酸化水素水との混合液を使用した。尚、分析装置、加熱乾燥温度などは実施例1と同様にした。
【0043】
実施例3の条件で分析を行った結果、分析液によりシリコン基板表面の全面を掃引して、金属などの不純物を分析液に取り込み、回収した分析液の1ml中のSi濃度を調べたところ、約10ppmと非常に低い濃度であった。また、分析液の回収後のシリコン基板表面を観察したところ、エッチングされているような部分はほとんど確認されなかった。
【符号の説明】
【0044】
1 シリコン基板用分析装置
10 ロードポート
20 基板搬送ロボット
30 アライナー
40 気相分解チャンバー
50 乾燥室
60 分析スキャンポート
70 オートサンプラー
80 誘導結合プラズマ分析器
D 分析液
W シリコン基板
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2019年6月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
強酸はフッ化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸のいずれか1種以上であり、強アルカリは水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムである請求項1〜請求項3いずれか1項に記載のシリコン基板の分析方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
加熱乾燥する際の加熱温度が、100℃〜130℃である請求項1〜請求項4いずれか1項に記載のシリコン基板の分析方法。