【解決手段】電池の製造方法は、正極集電体に電解液を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体に電解液を含む負極活物質層が形成されてなる負極とを、セパレータを介して積層し、外周部にシール部50が配置された単セル20を形成する単セル形成工程(S20)と、単セルの外周部に配置したシール部をヒートシールするシール工程(S30)と、シール工程の後に、冷却媒体によって単セルの外周部を冷却する冷却工程(S40)と、を有する。
正極集電体に電解液を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体に電解液を含む負極活物質層が形成されてなる負極とを、セパレータを介して積層し、外周部にシール部が配置された単セルを形成する単セル形成工程と、
前記単セルの外周部に配置された前記シール部をヒートシールするシール工程と、
前記シール工程の後に、冷却媒体によって前記単セルの外周部を冷却する冷却工程と、
を有する、電池の製造方法。
前記冷却工程では、前記冷却媒体として冷却部材を用いて、前記冷却部材を前記単セルの外周部に当接させて冷却する、請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、以下では、便宜上本発明に係る電池の説明をした後、本発明に係る電池の製造方法について詳説する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。
【0012】
<電池>
本発明の実施形態に係る電池の一例として非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池について説明するが、本発明を適用する電池は双極型リチウムイオン二次電池に制限されない。ここで、双極型リチウムイオン二次電池とは、双極型電極を含み、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。例えば、本発明は、発電要素において電極が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池にも適用可能である。なお、以下の説明では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「電池」と称する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池10を模式的に表した断面図である。電池10は、外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、
図1に示すように、実際に充放電反応が進行する発電要素が外装体12の内部に封止された構造とするのが好ましい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の電池10の発電要素は、複数の単セル20が積層されてなる積層体11である。以下、発電要素のことを「積層体11」とも称する。なお、単セル20の積層回数は、所望する電圧に応じて調節することが好ましい。
【0015】
図1に示すように、正極30aおよび負極30bは、集電体31の一方の面に電気的に結合した正極活物質層32aが形成され、集電体31の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層32bが形成された双極型電極35を構成する。
【0016】
なお、
図1では、集電体31は、正極集電体31aおよび負極集電体31bを組み合わせた積層構造(2層構造)として図示しているが、単独の材料からなる単層構造であってもよい。
【0017】
さらに、
図1に示す電池10では、正極側の正極集電体31aに隣接するように正極集電板(正極タブ)34aが配置され、これが延長されて外装体12から導出している。一方、負極側の負極集電体31bに隣接するように負極集電板(負極タブ)34bが配置され、同様にこれが延長されて外装体12から導出している。
【0018】
[単セル]
図2Aは、本実施形態に係る電池10の単セル20を示す断面図である。
図2Aに示すように、単セル20は、正極30aおよび負極30bと、電解質層40とから構成される。正極30aは、電解液を含む正極活物質層32aが正極集電体31aに配置されてなる。負極30bは、電解液を含む負極活物質層32bが負極集電体31bに配置されてなる。
【0019】
正極活物質層32aと負極活物質層32bとは、電解質層40を介して互いに向かい合うように配置されている。正極集電体31aおよび負極集電体31bは、単セル20の最外層に位置する。
【0020】
単セル20の外周部60には、シール部50が配置されている。なお、本明細書中、単セル20の外周部60とは、シール部50を介してヒートシールされる領域(
図2A中の破線で囲んだ領域)と定義する。
図2Aに示す本実施形態のように、正極集電体31aの外周部と負極集電体31bの外周部との間にシール部50を介在させた構成の場合は、集電体31の外周部およびシール部50を含む領域が単セル20の外周部60に相当する。
【0021】
図2Bは、本発明の他の実施形態に係る電池の単セル20aを示す断面図である。
図2Bに示す他の実施形態に係る単セル20aのように、シール部50が集電体31の外周よりも面方向の外側に配置された構成の場合は、集電体31の端部およびシール部50が配置された領域が単セル20aの外周部60aに相当する。
【0022】
シール部50は、正極活物質層32a、負極活物質層32bおよび電解質層40の周囲を液密に封止し、電解液の漏れによる液絡を防止している。また、単セル20内で正極集電体31aと負極集電体31bとを電気的に隔てて、正極集電体31aと負極集電体31bとが接触することによる短絡を防止している。
【0023】
[集電体]
集電体31(隣接する正極集電体31aおよび負極集電体31b)は、正極活物質層32aと接する一方の面から、負極活物質層32bと接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体31を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、導電性を有する樹脂や、金属が用いられうる。
【0024】
集電体31の軽量化の観点からは、集電体31は、導電性を有する樹脂によって形成された樹脂集電体であることが好ましい。なお、単セル20間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、樹脂集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0025】
具体的には、樹脂集電体の構成材料である導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0026】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0027】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0028】
導電性フィラーの添加量は、集電体31に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、好ましくは、5〜35体積%程度である。
【0029】
また、集電体31が金属によって形成される場合は、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属のめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体31へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0030】
[電極活物質層(正極活物質層、負極活物質層)]
電極活物質層(正極活物質層32a、負極活物質層32b)32は、電極活物質(正極活物質または負極活物質)および電解液を含む。また、電極活物質層32は、必要に応じて、被覆剤(被覆用樹脂、導電助剤)、導電部材等を含んでもよい。さらに、電極活物質層32は、必要に応じてイオン伝導性ポリマー等を含んでもよい。
【0031】
電極活物質層32に含まれる電解液は、後述するスラリー調製工程において、電極活物質の分散媒として機能する。電極30を形成した後の工程で電解液を注入する工程を省いて工数を削減する観点から、電極活物質層32の電解液は、電池10の電解質層40に含まれる電解液と同じ組成を有することが好ましい。
【0032】
電解液は、溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6LiClO
4、Li[(FSO
2)
2N](LiFSI)等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、およびLiC(CF
3SO
2)
3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。
【0033】
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn
2O
4、LiCoO
2、LiNiO
2、Li(Ni−Mn−Co)O
2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni−Mn−Co)O
2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0034】
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li
4Ti
5O
12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、(メタ)アクリレート系共重合体等の被覆用樹脂は特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有している。したがって、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
【0035】
(導電助剤)
導電助剤は、被覆用樹脂とともに電極活物質の表面を被覆する被覆剤として用いられる。導電助剤は、被覆剤中で電子伝導パスを形成し、電極活物質層32の電子移動抵抗を低減することで、電池の高レートでの出力特性向上に寄与し得る。
【0036】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;グラファイト、炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0037】
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0038】
(導電部材)
導電部材は、電極活物質層32中で電子伝導パスを形成する機能を有する。特に、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層32の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成していることが好ましい。このような形態を有することで、電極活物質層32中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減されるため、電池の高レートでの出力特性をより一層向上しうる。なお、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層32の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成しているか否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて電極活物質層32の断面を観察することにより確認することができる。
【0039】
導電部材は、繊維状の形態を有する導電性繊維であることが好ましい。具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレスのような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。なかでも、導電性に優れ、軽量であることから炭素繊維が好ましい。
【0040】
本実施形態の電池10において、電極活物質層32の厚さは、正極活物質層32aについては、好ましくは150〜1500μmであり、より好ましくは180〜950μmであり、さらに好ましくは200〜800μmである。また、負極活物質層32bの厚さは、好ましくは150〜1500μmであり、より好ましくは180〜1200μmであり、さらに好ましくは200〜1000μmである。電極活物質層32の厚さが上述した下限値以上の値であれば、電池のエネルギー密度を十分に高めることができる。一方、電極活物質層32の厚さが上述した上限値以下の値であれば、電極活物質層32の構造を十分に維持することができる。
【0041】
なお、本実施形態の電池10においては、電極活物質層32の構成部材として、上記の電極活物質や、必要に応じて用いられる導電部材、イオン伝導性ポリマー、リチウム塩、被覆剤(被覆用樹脂、導電助剤)以外の部材を適宜使用しても構わない。しかしながら、電池のエネルギー密度を向上させる観点から、充放電反応の進行にあまり寄与しない部材は、含有させないほうが好ましい。例えば、電極活物質とその他の部材とを結着させ、電極活物質層32の構造を維持するために添加されるバインダは、極力使用しないことが好ましい。上記の機能を有するバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の溶剤系バインダや、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の水系バインダ等が挙げられる。具体的には、バインダの含有量は、電極活物質層32に含まれる全固形分量100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0042】
[電解質層]
電解質層40は、セパレータに電解質が保持されてなる層であり、正極活物質層32aと負極活物質層32bとの間にあって両者が直接に接触することを防止する。本実施形態の電解質層40に使用される電解質は、特に制限はなく、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質などが挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保されうる。
【0043】
電解液は、上述の電極活物質層32に使用される電解液と同様のものが用いられうる。なお、電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1〜3.0Mであることが好ましく、0.8〜2.2Mであることがより好ましい。また、添加剤を使用する場合の使用量は、添加剤を添加する前の電解液100質量%に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0044】
添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の電解液が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
【0046】
ゲルポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0047】
セパレータは、電解質を保持して正極30aと負極30bとの間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極30aと負極30bとの間の隔壁としての機能を有する。
【0048】
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0049】
[正極集電板および負極集電板]
集電板34a、34bを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板34a、34bの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板34aと負極集電板34bとでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0050】
[シール部]
シール部50は、集電体31同士の接触や単セル20の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部50を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いてもよく、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いてもよい。なかでも、耐食性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
[外装体]
図1に示す本実施形態では、外装体12は、ラミネートフィルムによって袋状に構成されているが、これに限定されず、例えば、公知の金属缶ケースなどを用いてもよい。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点からは、外装体12は、ラミネートフィルムによって構成することが好ましい。ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン(PP)、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。また、外部から掛かる積層体11への群圧を容易に調整することができ、所望の電解質層40の厚みへと調整容易であることから、外装体12はアルミネートラミネートがより好ましい。
【0052】
<電池の製造方法>
本発明の一形態は、電池の製造方法に関するものである。本実施形態に係る電池の製造方法を用いて製造された電池は、例えば上述した実施形態に係る双極型電池等の非水電解質二次電池として用いられうる。
【0053】
図3は、本実施形態に係る電池10の製造方法の一連の工程の一例を示す概略図である。
図4は、本実施形態に係る電池10の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態に係る電池10の製造方法は、
図3および
図4に示すように、電極形成工程(S10)と、単セル形成工程(S20)と、シール工程(S30)と、冷却工程(S40)と、電池形成工程(S50)と、を有する。
【0054】
なお、
図3に示す電池10の製造方法では、冷却工程(S40)と電池形成工程(S50)との間に初回充電工程を行っているが、これに限定されず、電池形成工程(S50)の後に初回充電工程を行ってもよい。また、
図3に示す電極形成工程(S10)では、塗工工程によって得られた塗膜を切り出した後に一枚毎にプレスする例を示しているが、これに限定されず、ロールトゥロール方式を用いて連続的に塗工工程およびプレス工程を行ってもよい。
【0055】
本実施形態に係る電池10の製造方法は、単セル20の外周部60(
図2Aを参照)に配置されたシール部50をヒートシールするシール工程(S30)の後に、単セル20の外周部60を冷却する冷却工程(S40)を必須に含む。本実施形態に係る電池10の製造方法によれば、加熱された単セル20の外周部60を冷却することによって、熱が集電体31を介して電極活物質層32に伝わって、電極活物質層32中の電解液が揮発することを抑制できる。その結果、電極活物質層32の組成が変動することを抑制し、サイクル耐久性を向上することができる。なお、シール部50は、単セル形成工程(S20)において形成される。
【0056】
以下、上述した特徴も含め、本実施形態に係る電池10の製造方法について、詳細に説明する。
【0057】
[電極形成工程]
まず、
図5を参照して電極形成工程(S10)について説明する。
図5は、
図4に示す電極形成工程(S10)のサブルーチンフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態に係る電極形成工程(S10)は、活物質製造工程(S11)と、スラリー調製工程(S12)と、塗工工程(S13)と、プレス工程(S14)とを含むことが好ましい。
【0058】
(活物質製造工程)
活物質製造工程では、電極活物質を製造する。被覆電極活物質の製造方法は、特に制限されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず電極活物質を万能混合機に入れて10〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂および溶媒を含む溶液(被覆用樹脂溶液)を1〜90分間かけて滴下混合する。この際の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好適に使用できる。その後、さらに導電助剤を添加し、混合する。そして、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に、10〜150分間保持することにより、被覆電極活物質を得ることができる。
【0059】
(スラリー調製工程)
電極活物質および分散媒である電解液を混合して電極活物質スラリーを調製する。電極活物質スラリーは、電極活物質および電解液を必須に含む混合物である。ここで、電極活物質スラリーに含まれる固形分((被覆)電極活物質、導電部材、イオン伝導性ポリマー、リチウム塩など)の具体的な構成(種類や含有量など)については、上述において説明したものと同様の構成が採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、必要に応じて少量のバインダを塗布液に添加しても構わない。ただし、バインダの含有量は、上述したように、電極活物質層32に含まれる全固形分量100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0060】
電極活物質スラリーを構成する電解液(分散媒)は、最終的に電極活物質層32を構成する電解液となる。電極活物質スラリーを構成する電解液(分散媒)は、上述した電極活物質層32を構成する電解液と同様のため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
ここで、電極活物質スラリーに含まれる各成分を混合して電極活物質スラリーを調製する方法については特に制限はなく、部材の添加順、混合方法等、従来公知の知見が適宜参照されうる。ただし、上記電極活物質スラリーの固形分濃度は比較的高いことから、各材料を混合する混合機として、高せん断を付与できる混合機を用いることが好ましい。具体的には、プラネタリーミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ディスパージャー等のブレード型撹拌機が好ましく、特に固練りをするという観点からはプラネタリーミキサーが特に好ましい。また、混合の具体的な方法についても特に制限はないが、最終固形分濃度よりも高い固形分濃度で固練りを実施した後に分散媒成分を追加してさらに混合を行うことで電極活物質スラリーを調製することが好ましい。なお、混合時間は特に制限されず、均一な混合が達成されればよい。一例として、固練りおよびその後の混合はそれぞれ10〜60分程度行えばよく、各工程は一度に行ってもよいし数回に分けて行ってもよい。
【0062】
(塗工工程)
塗工工程では、上記で得られた電極活物質スラリーを集電体31の表面に塗工して塗膜を形成する。この塗膜は、最終的に電極活物質層32を構成することとなる。
【0063】
塗工工程における電極活物質スラリーの塗工によって得られる塗膜の厚さについて特に制限はなく、上述した電極活物質層32の厚さが達成されるように適宜設定すればよい。
【0064】
塗工工程における塗工を実施するための塗工手段についても特に制限はなく、従来公知の塗工手段が適宜用いられうる。なかでも、固形分濃度の高い電極活物質スラリーを塗工することにより平坦性の高い表面を有する塗膜(電極活物質層32)を得るという観点からは、塗工時に比較的高いせん断応力が加えられるような塗工速度で電極活物質スラリーの塗工を行うことができる塗工手段が用いられることが好ましい。なかでも、スリットから電極活物質スラリーを塗出して塗工するスリットダイコーターによる塗工方式は薄膜の塗工および塗工厚みの均一性に優れていることから、好適な塗工手段の一例である。
【0065】
本実施形態に係る塗工工程では、電極活物質スラリーを塗工して塗膜を得た後に、得られた塗膜に対して加熱による乾燥処理を施さない。これにより、電極活物質層32のひび割れを抑制できるとともに、乾燥処理に必要な製造コストを削減することができる。電極活物質スラリーの塗工後に加熱乾燥しない場合には、電極活物質スラリーの塗工後に所望の面積に電極を切り出すことが難しい。よって、本実施形態に係る電池10の製造方法においては、所望の面積となるように電極活物質スラリーを集電体31の表面に塗工することが必要となる。そのためには、予め塗工部分以外の集電体31の表面にマスキング処理等を施してもよい。
【0066】
(プレス工程)
本実施形態に係る電池10の製造方法では、電極活物質スラリーの塗工によって得られた塗膜に対してプレス処理を施してもよい。このプレス処理を施す際には、塗膜の表面に多孔質シートを配置した状態でプレスを行うことが好ましい。このようなプレス処理を施すことで、より表面の均一性の高い電極活物質層32が得られる。なお、多孔質シートは、塗膜をプレスする際に、プレス装置にスラリーが付着するのを防ぐ目的、プレスの際に滲出する余分な電解液を吸収する目的などで使用される。そのため、多孔質シートの材料や形態は、上記目的を達成できるものであれば特に制限されない。
【0067】
一例を挙げると、多孔質シートとして、本技術分野でセパレータとして使用される、微多孔膜、不織布などと同様のものを使用することができる。具体的には、微多孔膜としては、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。また、不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなどを、単独または混合して用いた不織布が挙げられる。
【0068】
なお、上記多孔質シートは、プレス後に取り除いてもよいし、そのまま電池10のセパレータとして用いても構わない。プレス後に多孔質シートをそのままセパレータとして用いる場合は、当該多孔質シートのみをセパレータとして電解質層40を形成してもよいし、当該多孔質シートと別のセパレータとを組み合わせて(すなわち、セパレータを2枚以上として)電解質層40を形成してもよい。
【0069】
プレス処理を施すためのプレス装置は、塗膜の全面に均一に圧力を加えられる装置であることが好ましい。プレスの際に塗膜の単位面積あたりにかかる圧力は、特に制限されないが、好ましくは0.01〜2MPaであり、より好ましくは0.1〜1MPaである。圧力が上記範囲であると、上述した好ましい実施形態に係る電極活物質層32の空隙率や密度を容易に実現することができる。
【0070】
[単セル形成工程]
単セル形成工程(S20)では、
図2Aや
図2Bに示すように、正極30aの正極活物質層32aと負極30bの負極活物質層32bとがセパレータを介して向かい合うように、正極30a、負極30bおよびセパレータを積層して単セル20、20aを形成する。この際、
図2Aに示すように正極集電体31aの外周部と、負極集電体31bの外周部との間には、シール部50を介在させることが好ましいがこれに限定されず、
図2Bに示すように集電体31の外周よりも面方向の外側にシール部50を配置してもよい。シール部50は、集電体31の外周部に沿って枠状に配置することが好ましい。
図2Aに示す形態の場合は、例えば、正極集電体31aのうち正極活物質層32aが形成された面に正極活物質層32aの外周を囲むようにシール材(シール部50を構成する材料)を塗布する。同様に、負極集電体31bのうち負極活物質層32bが形成された面に負極活物質層32bの外周を囲むようにシール材を塗布する。その後、正極30aの正極活物質層32aと負極30bの負極活物質層32bとがセパレータを介して向かい合うように、正極30a、負極30bおよびセパレータを積層する。これにより、正極集電体31aの外周部と、負極集電体31bの外周部との間に介在するようにシール部50を形成することができる。
図2Bに示す形態の場合は、例えば、予め正極集電体31aおよび負極集電体31bの外周にシール材を接着等によって接合して一体化しておく。その後、正極30aの正極活物質層32aと負極30bの負極活物質層32bとがセパレータを介して向かい合うように、正極30a、負極30bおよびセパレータを積層する。これにより、集電体31の外周よりも面方向の外側にシール部50を形成することができる。
【0071】
[シール工程]
シール工程(S30)では、シール部50を含む単セル20の外周部60をヒートシールする。ヒートシールは、一般的に、接着剤で接着する場合に比べて、接合強度を長期間維持することができるため長期信頼性が高い。また、シール工程は、略真空状態の雰囲気中で行うことが好ましい。略真空状態とすることによって、単セル20の集電体31およびシール部50によって囲まれた領域の内部に外気が侵入することを効率的に防止して密封することができる。シール工程を実施するための装置については特に制限はなく、従来公知のヒートシール装置が適宜用いられうる。
【0072】
図7Aは、ヒートシール装置100の一例を示す斜視図であり、
図7Bは、ヒートシール装置100を用いてヒートシールをする様子を示す概略断面図である。
【0073】
図7Aに示すヒートシール装置100は、単セル20の外周部60を加熱する加熱部材110と、正極30a、負極30bおよびセパレータを積層した状態を保持する保持部材120と、電極30およびセパレータを内部に収容し、内部の雰囲気を略真空状態にする収容部130と、を有する。
【0074】
ヒートシール装置100は、予め所定の温度に加熱された状態で、単セル20の外周部60に加熱部材110を当接させて、積層方向(
図7A中の白抜き矢印方向)から挟持して圧着させる。加熱された加熱部材110を正極30aの外周部および負極30bに直接的に接触させることによって効率的に熱を伝えることができる。
図7Bに示すように、単セル20の外周部60が、正極集電体31aの外周部と負極集電体31bの外周部との間にシール部50を介在させた構成の場合は、加熱部材110を正極集電体31aの外周部および負極集電体31bの外周部に当接させる。
【0075】
シール工程中の加熱部材110の温度は、特に限定されないが、例えば、約100℃〜200℃程度に設定することができる。また、加熱工程の時間(ヒートシールに要する時間)についても特に制限はなく、シール部50の構成部材との関係で適宜設定されうる。加熱工程の時間は、通常は1秒間〜5分間程度である。なお、加熱部材110の構成材料は特に限定されないが、熱伝導率の高い金属が好ましい。熱伝導率の高い金属としては、例えば、アルミニウム、銅などが挙げられる。
【0076】
図7B中の矢印で示すように、シール工程で単セル20の外周部60に加えられた熱は、各集電体31a、31bへ伝導する。本実施形態では、次に説明する冷却工程で直ぐに冷却するため、各集電体31a、31bから各活物質層32a、32bへの熱の伝導を抑制することができる。
【0077】
[冷却工程]
冷却工程(S40)では、冷却媒体によって単セル20の外周部60を冷却する。これにより、単セル20の外周部60の温度が内側よりも低くなる。熱は温度の高い方から低い方へ移動するため、
図8B中の矢印で示すように、集電体31へ伝導した熱が単セル20の外周部60へ移動する。これにより、各集電体31a、31bから各活物質層32a、32bへの熱の伝導を抑制することができる。冷却工程を実施するための冷却手段については特に制限はなく、従来公知の冷却手段が適宜用いられうる。
【0078】
例えば、冷却媒体として冷却部材210を用いて、冷却部材210を単セル20の外周部60に当接させて冷却することができる。
図8A、
図8Bは、冷却部材210を用いて単セル20の外周部60を冷却する様子を示す図である。
【0079】
図8Aに示すように、ヒートシール装置100の加熱部材110を予め所定の温度に冷却した状態の冷却部材210に交換する。そして、略真空状態の収容部130内で、保持部材120に保持された単セル20の外周部60を冷却部材210によって挟持する。冷却された冷却部材210を単セル20の外周部60に直接的に接触させることによって効率的に熱を冷却部材210へ逃がすことができる。これにより、単セル20の外周部60の冷却速度を高めることができる。
【0080】
また、冷却工程において収容部130内で略真空状態とすることによって、雰囲気中に熱を伝導する空気が存在しないため単セル20の外周部60から冷却部材210へ熱が伝導しやすくなる。これにより、単セル20の外周部60を効率的に冷却することができる。なお、冷却工程は、単セル20の外周部60を略真空状態で冷却する方法に限定されず、大気中で冷却してもよい。
【0081】
冷却工程中の冷却部材210の温度は、特に限定されないが、例えば、10℃〜25℃に設定することができる。また、冷却工程の時間についても特に制限はなく、加熱工程後の余熱による電解液の揮発を防止できる程度までシール部を冷却するのに十分な時間で適宜設定されうる。冷却工程の時間は、通常は1秒間〜5分間程度である。なお、冷却部材210の構成材料は特に限定されないが、熱伝導率の高い金属が好ましい。熱伝導率の高い金属としては、例えば、アルミニウム、銅などが挙げられる。
【0082】
冷却部材210は、シール工程のヒートシール装置100に用いた加熱部材110とは別部材であることが好ましい。仮に、加熱部材110を冷却して冷却部材として用いた場合、加熱部材110を冷却するのに時間が掛かる。このため、加熱部材110を冷却する間に、単セル20の外周部60から集電体31を介して電極活物質層32に熱が伝導し、電極活物質層32中の電解液が揮発してしまう可能性がある。冷却部材210を加熱部材110と別部材とすることによって、加熱部材110を冷却部材210に短時間で交換して、直ぐに単セル20の外周部60を冷却することができる。これにより、単セル20の外周部60から集電体31を介して電極活物質層32に熱が伝導することを抑制する効果がより高くなる。なお、冷却部材と加熱部材は、同じ部材によって構成してもよい。この場合は、できる限り早く加熱部材を冷却することが好ましい。
【0083】
なお、冷却手段は上述したものに限定されず、例えば、気体等の冷却媒体を冷却対象に吹き付けるものでもよい。
【0084】
[電池形成工程]
次に、
図6を参照して本実施形態に係る電池形成工程(S50)について説明する。
図6は、
図4に示す電池形成工程(S50)のサブルーチンフローチャートである。本実施形態に係る電池形成工程(S50)は、積層工程(S51)と、密封工程(S52)と、を有する。
【0085】
(積層工程)
積層工程(S51)では、複数の単セル20を積層して発電要素である積層体11を形成する。
【0086】
(密封工程)
密封工程(S52)では、発電要素である積層体11を外装体12の内部に封入する。これにより、
図1に示すような電池10を得ることができる。
【0087】
密封工程において積層体11を外装体12の内部に封入する方法については特に限定されない。例えば、外装体12がラミネートフィルムである場合には、積層体11を積層方向に沿った両側から挟持するように被覆して、端部を熱融着等によって封止する方法が挙げられる。また、外装体12が金属缶ケースの場合は、積層体11を金属缶ケースの内部に収容して密閉した後に、金属缶ケースの内部を公知の減圧装置を用いて減圧する方法が挙げられる。
【0088】
(初回充電工程)
次に、初回充電工程について説明する。初回充電工程は、単セル形成工程(S20)と電池形成工程(S50)との間、または電池形成工程(S50)の後に行う。
【0089】
初回充電工程では、単セル形成工程(S20)で得た単セル20、または電池形成工程(S50)で得た電池10に対して初回充電を行う。初回充電は、単セル20または電池10に所定の加圧力を付与した状態で行うことが好ましい。
【0090】
以上説明した本発明の一実施形態に係る電池10の製造方法は、以下の効果を奏する。
【0091】
電池10の製造方法は、正極集電体31aに電解液を含む正極活物質層32aが形成されてなる正極30aと、負極集電体31bに電解液を含む負極活物質層32bが形成されてなる負極30bとを、セパレータを介して積層し、外周部にシール部50が配置された 単セルを形成する単セル形成工程、単セル20の外周部60に配置されたシール部50をヒートシールするシール工程、およびシール工程の後に、冷却媒体によって単セル20の外周部60を冷却する冷却工程を有する。
【0092】
上記電池10の製造方法によれば、シール工程において加熱された単セル20の外周部60を冷却媒体によって冷却することによって、熱が集電体31を介して電極活物質層32に伝わって、電極活物質層32中の電解液が揮発することを抑制できる。その結果、電極活物質層32の組成が変動することを抑制し、電池性能を維持することができる。
【0093】
また、集電体31が樹脂集電体31である場合、シール工程では、単セル20の外周部60である一対の樹脂集電体31の外周部をヒートシールすることが好ましい。一般的に、樹脂集電体は、金属集電体に比べて伝熱性が低い。このため、シール工程における熱が樹脂集電体を介して電極活物質層32に伝導することを抑制する効果をより高めることができる。
【0094】
また、冷却工程では、冷却媒体として冷却部材210を用い、冷却部材210を単セル20の外周部60に当接させて冷却することが好ましい。冷却された冷却部材210を単セル20の外周部60に直接的に接触させることによって効率的に熱を冷却部材210へ逃がすことができる。これにより、単セル20の外周部60の冷却速度を高めることができる。
【0095】
また、シール工程では、冷却部材210とは別部材の加熱部材110を単セル20の外周部60に当接させて加熱することが好ましい。冷却部材210が加熱部材110と別部材であることによって、短時間で単セル20の外周部60を冷却することができるため、冷却時間を短縮することができる。これにより、単セル20の外周部60から集電体31を介して電極活物質層32に熱が伝導することを抑制する効果がより高くなる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、「部」は特に断りのない限り、「質量部」を意味する。
【0097】
[実施例]
<負極活物質被覆用樹脂溶液の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、酢酸エチル83部とメタノール17部とを仕込み68℃に昇温した。
【0098】
次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2−エチルヘキシルメタクリレート242.8部、酢酸エチル52.1部およびメタノール10.7部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.263部を酢酸エチル34.2部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.583部を酢酸エチル26部に溶解した開始剤溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を4時間継続した。溶媒を除去し、樹脂582部を得た後、イソプロパノールを1,360部加えて、樹脂固形分濃度30質量%のビニル樹脂からなる負極活物質被覆用樹脂溶液を得た。
【0099】
<被覆負極活物質の作製>
難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F))88.4部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、上記で得られた負極活物質被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)を樹脂固形分として10部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
【0100】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]1.6部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持し、被覆負極活物質を得た。なお、被覆負極活物質がコア−シェル構造を有していると考えると、コアとしての難黒鉛化性炭素粉末の平均粒子径は9μmであった。また、被覆負極活物質100質量%に対する、アセチレンブラックの固形分量は1.6質量%であった。
【0101】
<被覆正極活物質の作製>
ニッケル・アルミ・コバルト酸リチウム(NCA)(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製)140.0部を万能混合機に入れ、室温、15m/sで撹拌した状態で、上記で得られた正極活物質被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)0.48部にジメチルホルムアミド14.6部を追加混合した溶液を3分かけて滴下混合し、さらに5分撹拌した。
【0102】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]8.6部を混合し、60分撹拌したままで140℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し5時間保持し、被覆正極活物質を得た。なお、被覆正極活物質がコア−シェル構造を有していると考えると、コアとしてのニッケル・アルミ・コバルト酸リチウム粉末の平均粒子径は6μmであった。また、被覆正極活物質100質量%に対する、アセチレンブラックの固形分量は0.1質量%であった。
【0103】
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に、Li[(FSO
2)
2N](LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させて、電解液を得た。
【0104】
<負極活物質スラリーの調製>
上記で得た被覆負極活物質から、平均粒子径(D50)20μmのものを616部取り分け、平均粒子径(D50)5μmのものを264部取り分け、これに導電部材としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)76.5部を添加し、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
【0105】
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液637.7部を添加した。この混合物を、混合撹拌機(DALTON社製、5DM−r型(プラネタリーミキサー))を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で30分撹拌することにより、固練りを実施した。
【0106】
その後、上記で得た電解液638.9gをさらに添加し、上記と同様の混合撹拌機を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で10分×3回撹拌することにより、固練りを実施した。このようにして、負極活物質スラリーを得た。なお、このようにして得られた負極活物質スラリーの固形分濃度は41質量%であった。
【0107】
<正極活物質スラリーの調製>
上記で得た被覆正極活物質1543.5部に導電部材としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)31.5部を添加し、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
【0108】
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液393.8部を添加した。この混合物を、混合撹拌機(DALTON社製、5DM−r型(プラネタリーミキサー))を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で30分撹拌することにより、固練りを実施した。
【0109】
その後、上記で得た混合物に電解液417.6部をさらに添加し、上記と同様の混合撹拌機を用いて、自転:63rpm、公転:107rpmの回転数で10分×3回撹拌することにより、攪拌希釈を実施した。このようにして、正極活物質スラリーを得た。なお、このようにして得られた正極活物質スラリーの固形分濃度は66質量%であった。
【0110】
<樹脂集電体の作製>
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー(株)製](B−1)75質量%、アセチレンブラック(AB)(デンカブラック(登録商標))20質量%、樹脂集電体用分散剤(A)として変性ポリオレフィン樹脂(三洋化成工業(株)製ユーメックス(登録商標)1001)5質量%を180℃、100rpm、滞留時間10分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。得られた樹脂集電体用材料を、押し出し成形することで、樹脂集電体(20%AB−PP)を得た。
【0111】
<電極の作製>
上記で得られた負極活物質スラリーおよび正極活物質スラリーを樹脂集電体の表面に塗工してプレス処理を施した。これにより正極30aおよび負極30bを得た。
【0112】
<単セルの作製>
次に、正極30aおよび負極30bを、セパレータを介して積層して単セル20を得た。正極30aの樹脂集電体の外周部と負極30bの樹脂集電体の外周部との間には、シール部50を配置した。なお、電極幅は、256[mm]とした。また、シール部50を構成する材料としては、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いた。
【0113】
<シール工程>
次に、
図7Aに示すヒートシール装置100を用いて単セル20の外周部60を略真空状態の雰囲気中で、ヒートシールした。具体的には、まず、略真空状態の収容部130に単セルを収容した。次に、保持部材120によって単セル20の面方向の略中央部分を積層方向から挟持して保持した。次に、予め所定の温度に加熱した加熱部材110によって、単セル20の外周部を積層方向から挟持し、加圧力を加えた状態で60秒間保持した。正極30a側の加熱部材110の温度は、120±3℃、負極30b側の加熱部材110の温度を165±3℃に設定した。
【0114】
<冷却工程>
シール工程の後、
図8A、
図8Bに示すように、ヒートシール装置100の加熱部材110を、予め20±3℃に冷却しておいた冷却部材210に交換して、加熱終了後1分以内に単セル20の外周部60の冷却を開始した。なお、冷却部材210の構成材料としてはアルミニウムを用いた。略真空状態の収容部130内で、保持部材120に保持された単セル20の外周部60を冷却部材210によって挟持し、加圧力を加えた状態で1分間保持した。
【0115】
[比較例]
冷却工程を自然冷却により行ったこと以外は、上述した実施例と同様の手法により、単セルを形成した。自然冷却は、20±3℃の略真空状態の雰囲気で行った。なお、電極幅は、256[mm]とした。
【0116】
[単セルの評価]
上記実施例および比較例にて作製した単セルの電極活物質層のうち電解液が揮発した部分(ダメージ部)を観察し、電極の幅方向の長さL(
図9を参照)を測定した。また、単セルについて、下記条件下で、充放電効率[%]および放電容量維持率[%]を測定した。結果を表1に示す。
【0117】
(充放電効率の測定)
上記にて作製した単セルに1回の充放電処理を施した。なお、この充放電処理では、CCCV充電にて終止電圧4.2Vまで充電を行った後、終止電圧2.5Vまで放電を行った。単セルの充放電処理の際に、充電容量(充電時の電池容量)および放電容量(放電時の電池容量)をそれぞれ測定した。そして、充電時の電池容量に対する放電時の電池容量の割合として、充放電効率(クーロン効率)を算出した。
【0118】
(放電容量維持率の測定)
充放電処理を100サイクル繰り返した後、放電時の電池容量を測定した。そして、初回の放電容量に対する100サイクル後の放電容量の割合として、放電容量維持率を算出した。
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示すように、実施例では、ダメージ部は観察されなかった。一方、比較例では、8[mm]のダメージ部が観察され、シール工程の熱によって電解液が揮発していることが分かった。また、実施例および比較例はいずれも充放電効率[%]が99%以上であった。しかしながら、放電容量維持率[%]は、実施例に比べて比較例は20%以上も低かった。この原因について以下に検討した。
【0121】
図9は、比較例に係る冷却工程中の単セルの外周部を示す断面図である。比較例では、略真空状態で自然冷却するため、シール工程で単セルの外周部に加えられた熱は空気を伝わって放熱されなかった。このため、
図9中に矢印で示すように、熱は、集電体31a、31bを介して電極活物質層32a、32bに伝導する。その結果、電極活物質層32a、32b中の電解液が揮発して電極活物質層32a、32bの組成が変動する。初回の充放電効率については、顕著な低下は見られない。しかしながら、100サイクル後には組成の変動による影響が顕在化し、放電容量維持率(サイクル耐久性)が大幅に低下した。
【0122】
これに対して、実施例では、
図8Aに示すように、冷却工程において加熱された単セル20の外周部60を冷却した。これにより、単セル20の外周部60の温度が内側よりも低くなる。熱は温度の高い方から低い方へ移動するため、
図8B中の矢印で示すように、集電体31へ伝導した熱が単セル20の外周部60へ移動した。これにより、各集電体31a、31bから各活物質層32a、32bへの熱の伝導を抑制することができた。その結果、電極活物質層32の組成が変動することを抑制し、サイクル耐久性を向上することができた。