【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明の半導体装置1は基板50上に形成された半導体素子30と、グラウンド60に接続された、開口部21を有する導電シールドカン20と、該導電シールドカン20の上部に設けられた導電冷却部材40と、少なくとも前記導電シールドカン20の開口部21を通して、前記半導体素子30と、前記導電冷却部材40との間に形成された熱伝導シート10と、前記導電シールドカン20の上面20aと前記導電冷却部材40の下面40bとの間に形成され、前記導電シールドカン20と前記導電冷却部材40とを電気的に接続する導電性部材11と、備えることを特徴とする。
前記導電性部材は、前記熱伝導シートを介して対向する導電性部材同士の間隔が、前記半導体素子の最大周波数における波長の1/10以下であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を用いて具体的に説明する。
ここで、
図1〜3は、本発明の半導体装置の実施形態について、断面を模式的に示した図である。また、
図4は、本発明の半導体装置の一実施形態について、組立状態を説明するための斜視図である。なお、各図面については、説明の便宜のため、各部材の形状やスケールが実際のものとは異なる状態で示されている。各部材の形状やスケールについては、本明細書の中で規定されていること以外は、半導体装置ごとに適宜変更することが可能である。
【0013】
本発明の半導体装置1は、
図1〜3に示すように、半導体素子30と、導電シールドカン20と、導電導電冷却部材40と、熱伝導シート10と、導電性部材11と、を備える。
そして、本発明の半導体装置1では、前記導電シールドカン20が開口部21を有し、該開口部21を通して、前記熱伝導シート10が、前記半導体素子30と前記導電導電冷却部材40との間に形成されていること、並びに、前記導電性部材11が、前記導電シールドカン20の上面20aと前記導電冷却部材の下面40bとの間に形成され、前記導電シールドカン20と前記導電冷却部材40とを電気的に接続することを特徴とする。
【0014】
前記半導体素子30は、熱及び電磁波の発生源となるが、該半導体素子30を覆うように導電シールドカン20を設けることによって、電磁波遮蔽が可能となるため、優れた電磁波抑制効果が得られる。さらに、前記導電シールドカン20に開口部21を設け、少なくともその開口部21を通して、電磁波吸収性能を有し且つ熱伝導性の高いシート部材(熱伝導シート10)を半導体素子30と導電冷却部材40との間に設けることによって、導電冷却部材40への熱伝導が大きく改善される結果、優れた放熱性を実現できる。
また、前記導電性部材11が、前記導電シールドカン20と前記導電冷却部材40とを電気的に接続することによって、本発明の半導体装置1において電気的に閉じられた空間が形成される結果、導電シールドカン20の電磁波遮断効果を高めることが可能となり、導電シールドカン20に開口部21を設けた場合であっても、高い電磁波抑制効果が得られる。
【0015】
なお、
図6は、従来技術による熱伝導シートを備えた半導体装置の一例を示したものである。従来の半導体装置100では、半導体素子30と導電冷却部材40との間に熱伝導シート10を設けているため、優れた熱導伝導性が得られる。しかしながら、本発明の半導体装置1のシールドカン20のような電磁波遮蔽材や、導電性部材11のような電磁波遮蔽効果を高めるための部材を備えていないことから、電磁波抑制効果が十分なレベルに達しない。
【0016】
次に、本発明の半導体装置を構成する各部材について説明する。
(半導体素子)
本発明の半導体装置1は、
図1〜3に示すように、基板50上に形成された半導体素子30を備える。
ここで、前記半導体素子30については、半導体による電子部品であれば特に限定されるものではない。例えば、ICやLSI等の集積回路、CPU、MPU、グラフィック演算素子、イメージセンサなどが挙げられる。
【0017】
前記半導体素子30が形成される基板50についても、特に限定はされず、半導体装置の種類に応じて、適したものを使用することができる。前記基板50には、グラウンド(GND)60が設けられている。グラウンド60は、基板50の内層、あるいは裏面(
図1〜3では基板の裏面)に形成される。
【0018】
また、本発明の半導体装置1では、例えば
図1〜3に示すように、前記基板50の面上に、前記半導体素子30の周りを囲むように、全周あるいは部分的にランド51を設けることができ、この部分に前記導電シールドカン20を半田等により接続してもよい。前記ランド51は、前記基板50に中に形成された導電処理スルーホール52を介して前記グラウンド60と電気的に接続されており、これにより前記導電シールドカン20をグラウンド60と電気的に接合させることができる。なお、
図1〜3では、前記導電シールドカン20を前記ランド51上に設けることで、前記グランド60と電気的に接続しているが、前記導電シールドカン20が、前記基板50内を貫通し、直接グラウンド60と接続するような構成とすることもできる。
【0019】
(シールドカン)
本発明の半導体装置1は、
図1〜3に示すように、グラウンド60に接続された、開口部21を有する導電シールドカン20を備える。
前記グラウンド60に接続された導電シールドカン20によって、電磁波のシールドが可能となり、本発明の半導体装置1の電磁波抑制効果を向上できる。
【0020】
ここで、前記シールドカン20を構成する材料としては、電磁波のシールド効果が高い材料が用いられ、特に限定はされない。例えば、アルミ、銅、ステンレス等の導電率の高い金属や、導電性の高い磁性体等を用いることができる。該導電性の高い磁性体材料としては、パーマロイ、センダスト、Fe系若しくはCo系のアモルファス材料、微結晶材料等が挙げられる。前記シールドカン20を構成する材料として、上述のような磁性体材料を用いた場合には、電気的シールド効果のほかに、磁気的シールド効果及び磁気的吸収効果についても期待できる。
【0021】
前記シールドカンに設けられた開口部21は、前記シールドカンに設けられた貫通孔のことである。なお、前記開口部21は、内部に後述する熱伝導シート10が充填され、半導体素子30と導電冷却部材と40との間を繋ぐため、
図1〜3に示すように、前記半導体素子30と前記導電冷却部材40とを結ぶ方向(
図1〜3では各部材の積層方向)に形成される。
前記、前記開口部21の大きさについては、特に限定はされず、半導体素子30の大きさ等に応じて適宜変更することができる。前記開口部21は、開口面積が小さい方が、電磁波の放出を少なくでき、放射電磁界を小さくすることが可能である。ただし、半導体素子30からの熱を逃がすという観点からは、前記開口部21を大きくして大きな熱伝導シート10を用いることが好ましい。そのため、開口部21の大きさは、本発明の半導体装置1に要求される熱伝導性や電磁ノイズ抑制効果に応じて適宜変更することになる。
【0022】
(導電冷却部材)
本発明の半導体装置1は、
図1〜3に示すように、前記導電シールドカン20の上部に導電冷却部材40を備える。
ここで、前記導電冷却部材40は、前記熱源(半導体素子30)から発生する熱を吸収し、外部に放散させる部材である。後述する熱伝導シート10を介して、前記半導体素子30と接続されることによって、半導体素子30が発生した熱を外部に拡散させ、半導体装置の放熱性を確保できる。
また、前記導電冷却部材40は、導電性を有するため、後述する、導電性部材21を介して、前記導電シールドカン20と電気的に接続されることによって、電気的に閉じた空間(
図1の破線で囲んだ領域A)を形成し、半導体装置1の電磁波抑制効果を高めることができる。
【0023】
前記導電冷却部材40の種類については、特に限定はされず、本発明の半導体装置1の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、放熱器、冷却器、ヒートシンク、ヒートスプレッダ、ダイパッド、冷却ファン、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。これらの導電冷却部材の中でも、より優れた放熱性が得られる点からは、導電性を有する、放熱器、冷却器又はヒートシンクを用いることが好ましい。また、上述した導電冷却部材40を構成する材料については、熱伝導率を高める点から、アルミ、銅、ステンレス等の金属や、グラファイト等を含むことが好ましい。
【0024】
なお、前記導電冷却部材40は、
図1〜3に示すように、前記導電シールドカン20の上部に設けられるが、前記導電シールドカンとは接しておらず、一定の距離を開けて設けられることが好ましい。後述する熱伝導シート10や導電性部材11が、前記導電シールドカン20の上面20aと、前記導電冷却部材40との間に充填されるためである。
また、前記導電冷却部材40は、その裏面40bにおいて、後述する導電性部材11と接触する部分に突起(図示せず)を設けることもできる。突起を設けることによって、導電性部材11及び該導電性部材11を介して設けられた導電シールドカン20との間価格を狭くでき、前記導電性部材11をフィルム等から構成した場合であっても強固な接続が可能となる。
【0025】
(熱伝導シート)
本発明の半導体装置1は、
図1〜3に示すように、少なくとも前記導電シールドカン20の開口部21を通して、前記半導体素子30と、前記導電冷却部材40との間に形成された熱伝導シート10を備える。
熱伝導性の高い熱伝導シート10が、半導体素子30と導電冷却部材40との間に設けられることで、放熱性を向上させることが可能となる。また、前記熱伝導シート10が、電磁波吸収性能を有する場合には、電磁波抑制効果も得ることも可能である。
【0026】
ここで、前記熱伝導シート10形状についても特に限定はされず、前記導電シールドカン20の開口部21の形状等に応じて適宜変更することができる。
また、前記熱伝導シート10のサイズについても、特に限定はされない。例えば、
図1に示すように、前記導電シールドカン20の開口部21の面積よりも小さな断面積を有することもできるし、
図2又は3に示すように、前記熱伝導シート10が、前記導電シールドカン20の上面20aの一部を覆うようなサイズをとすることもできる。
【0027】
また、より優れた放熱性や電磁波抑制効果が得られる点からは、前記熱伝導シート10が、
図3に示すように、前記導電シールドカン20の上面20aの一部を覆っていることが好ましい。
さらに、特に優れた電磁波抑制効果が得られる点からは、前記熱伝導シート10が、
図2に示すように、前記導電シールドカン20の上面20a及び下面20bの一部を覆っていることが好ましい。
【0028】
なお、前記熱伝導シート10は、一層のシートから構成しても良いし、複数枚のシートから構成することもできる。
例えば、
図1に示すように、前記熱伝導シート10が前記シールドカン20の上面20a又は下面20bを覆わない場合には、前記熱伝導シート10を一層のシートにより構成することができる。ただし、シートの厚さを調整しやすい等の観点から、複数のシートから構成することもできる。
また、
図2及び3に示すように、前記熱伝導シート10が前記シールドカン20の上面20aや下面20bの一部を覆う場合には、前記熱伝導シート10を一層のシートにより構成してもよいし、複数のシートにより構成することもできる。前記熱伝導シート10を一層のシートから構成する場合には、熱伝導シート10と部材(
図2及び3では、半導体素子30及び導電冷却部材40)とを圧着することによって、シートの一部が押し出され、前記シールドカン20の上面20aや下面20bの一部を覆うことができる。前記熱伝導シート10を複数枚のシートから構成する場合には、大きさが異なるシートを組み合わせることによって、所望の形状の熱伝導シート10を得ることができる。
【0029】
ただし、
図2及び3に示すように、前記熱伝導シート10が前記シールドカン20の上面20aや下面20bの一部を覆う場合には、前記熱伝導シート10を複数のシートから構成することが好ましい。圧着等の工程がないため、後述する繊維状の熱伝導性充填材を配向させた状態で前記熱伝導シート10を形成することができる結果、より優れた放熱性及び電磁波抑制効果を得ることができる。
【0030】
なお、
図1に示すように、前記熱伝導シート10が前記導電シールドカン20の開口部21の面積よりも小さな断面積を有する(前記熱伝導シート10と前記導電シールドカン20の端部との間に隙間ができる)場合、実装の際の干渉が小さくなる点や、製造コストを低減できる点では好ましい。
ただし、前記熱伝導シート10と前記導電シールドカン20の端部との間の隙間が大きくなりすぎると、放熱効果が低下することが考えられるため、放熱効果の観点からは、前記熱伝導シート10と前記導電シールドカン20の端部との間の隙間の大きさXは、小さくすることが好ましい。
【0031】
また、前記熱伝導シート10の厚さTについては、特に限定はされず、半導体素子30と導電冷却部材40との距離や、が前記シールドカン20のサイズ等に応じて適宜変更することができる。ただし、放熱性及び電磁波抑制効果をより高いレベルで実現できる点からは、前記熱伝導シート10の厚さTが50μm〜4mmであることが好ましく、100μm〜4mmであることがより好ましく、200μm〜3mmであることが特に好ましい。前記熱伝導シート10の厚さTが4mmを超えると、前記半導体素子30と前記導電冷却部材40との距離が長くなるため、熱伝導特性が低下するおそれがあり、一方、前記熱伝導シート10の厚さTが50μm未満の場合には、電磁波抑制効果が小さくなるおそれがある。
ここで、前記熱伝導シート10の厚さTは、
図1〜3に示すように、前記熱伝導シート10の最も厚さが大きな部分の厚さTのことを意味し、一層のシートから形成されても、複数のシートから形成される場合も含む。
【0032】
さらに、前記熱伝導シート10は、その表面にタック性を有することが好ましい。熱伝導シート10と他の部材との接着性を向上できるからである。さらに、前記熱伝導シート10が複数のシートから構成される場合には、シート同士の接着性についても向上できる。
なお、前記熱伝導シート10の表面にタック性を付与する方法については特に限定はされない。例えば、後述する熱伝導シート10を構成するバインダ樹脂の適正化を図ってタック性を持たせることもできるし、該熱伝導シート10の表面にタック性のある接着層を別途設けることもできる。
【0033】
なお、前記熱伝導シート10の熱伝導率を変更させる方法としては特に限定はされないが、後述するように、シート中心部とシート外周部とで、繊維状の熱伝導性充填材の材料、配合量及び配向方向等を変えることによって、熱伝導率を変更することが可能である。
【0034】
また、前記熱伝導シート10を構成する材料については、優れた電磁波吸収性能及び熱伝導性を有するものであれば特に限定はされない。
例えば、高いレベルで、電磁波吸収性能及び熱伝導性を実現できる点からは、前記熱伝導シートとして、バインダ樹脂と、熱伝導性充填剤とを含む、熱伝導シートを用いることができる。
【0035】
以下、熱伝導シート10を構成する材料について記載する。
・バインダ樹脂
前記熱伝導シートを構成するバインダ樹脂とは、熱伝導シートの基材となる樹脂成分のことである。その種類については、特に限定されず、公知のバインダ樹脂を適宜選択することができる。例えば、バインダ樹脂の一つとして、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0036】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、架橋性ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
なお、前記架橋性ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、上述した熱硬化性樹脂の中でも、成形加工性及び耐候性に優れるとともに、電子部品に対する密着性及び追従性の点から、シリコーンを用いることが好ましい。シリコーンとしては、特に制限はなく、目的に応じてシリコーンの種類を適宜選択することができる。
上述した成形加工性、耐候性、密着性等を得る観点からは、前記シリコーンとして、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とから構成されるシリコーンであることが好ましい。そのようなシリコーンとしては、例えば、付加反応型液状シリコーン、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン等が挙げられる。
【0039】
前記付加反応型液状シリコーンとしては、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを硬化剤とした、2液性の付加反応型シリコーン等を用いることが好ましい。
なお、前記液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤との組合せにおいて、前記主剤と前記硬化剤との配合割合としては、質量比で、主剤:硬化剤=35:65〜65:35であることが好ましい。
【0040】
また、前記熱伝導シートにおける前記バインダ樹脂の含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シートの成形加工性や、シートの密着性等を確保する観点からは、前記熱伝導シートの20体積%〜50体積%程度であることが好ましく、30体積%〜40体積%であることがより好ましい。
【0041】
・熱伝導性充填剤
前記熱伝導シートは、前記バインダ樹脂内に熱伝導性充填剤を含む。該熱伝導性充填剤は、シートの熱伝導性を向上させるための成分である。
なお、熱伝導性充填剤の形状、材料、平均粒径等については、シートの熱伝導性を向上させることができるものであれば、特に限定はされない。
【0042】
例えば、形状については、球状、楕円球状、塊状、粒状扁平状、針状、繊維状、コイル状等とすることができる。それらの中でも、より高い熱伝導性を実現できる点からは、繊維状の熱伝導性充填剤を用いることが好ましい。
なお、前記繊維状の熱伝導性充填剤の「繊維状」とは、アスペクト比の高い(およそ6以上)の形状のことをいう。そのため、本発明では、繊維状や棒状等の熱導電性充填剤だけでなく、アスペクト比の高い粒状の充填材や、フレーク状の熱導電性充填剤等も繊維状の熱導電性充填剤に含まれる。
【0043】
また、前記繊維状の熱伝導性充填剤の材料についても、熱伝導性の高い材料であれば特に限定はされず、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子、炭素繊維等が挙げられる。
なお、前記熱伝導性充填剤については、一種単独でもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、二種以上の熱伝導性充填剤を用いる場合には、いずれも同じ形状であってもよいし、それぞれ別の形状の熱伝導性充填剤を混合して用いてもよい。
これらの繊維状の熱伝導性充填剤の中でも、より高い熱伝導性を得られる点からは、繊維状の金属粉や、炭素繊維を用いることが好ましく、炭素繊維を用いることがより好ましい。
【0044】
前記炭素繊維の種類について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ピッチ系、PAN系、PBO繊維を黒鉛化したもの、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成されたものを用いることができる。これらの中でも、高い熱伝導性が得られる点から、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、ピッチ系炭素繊維がより好ましい。
【0045】
また、前記炭素繊維は、必要に応じて、その一部又は全部を表面処理して用いることができる。前記表面処理としては、例えば、酸化処理、窒化処理、ニトロ化、スルホン化、あるいはこれらの処理によって表面に導入された官能基若しくは炭素繊維の表面に、金属、金属化合物、有機化合物等を付着あるいは結合させる処理等が挙げられる。前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
【0046】
さらに、前記繊維状の熱伝導性充填剤の平均繊維長(平均長軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、50μm〜300μmの範囲であることが好ましく、75μm〜275μmの範囲であることがより好ましく、90μm〜250μmの範囲であることが特に好ましい。
さらにまた、前記繊維状の熱伝導性充填剤の平均繊維径(平均短軸長さ)についても、特に制限はなく適宜選択することができるが、確実に高い熱伝導性を得る点から、4μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜14μmの範囲であることがより好ましい。
【0047】
前記繊維状の熱伝導性充填剤のアスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)については、確実に高い熱伝導性を得る点から、6以上であるものが用いられ、7〜30であることが好ましい。前記アスペクト比が小さい場合でも熱伝導率等の改善効果はみられるが、配向性が低下するなどにより大きな特性改善効果が得られないため、アスペクト比は6以上とする。一方、30を超えると、熱伝導シート中での分散性が低下するため、十分な熱伝導率を得られないおそれがある。
ここで、前記繊維状の熱伝導性充填剤の平均長軸長さ、及び平均短軸長さは、例えばマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)等によって測定し、複数のサンプルから平均を算出することができる。
【0048】
また、前記熱伝導シートにおける前記繊維状の熱伝導性充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4体積%〜40体積%であることが好ましく、5体積%〜30体積%であることがより好ましく、6体積%〜20体積%であることが特に好ましい。前記含有量が4体積%未満であると、十分に低い熱抵抗を得ることが困難になるおそれがあり、40体積%を超えると、前記熱伝導シートの成型性及び前記繊維状の熱伝導性充填剤の配向性に影響を与えてしまうおそれがある。
【0049】
さらに、前記熱伝導シートでは、前記熱伝導性充填剤が一方向又は複数の方向に配向していることが好ましい。前記熱伝導性充填剤を配向させることによって、より高い熱伝導性や電磁波吸収性を実現できるためである。
例えば、前記熱伝導シートによる熱伝導性を高め、本発明の半導体装置の放熱性を向上させたい場合には、前記熱伝導性充填剤をシート面に対して略垂直状に配向させる(前記半導体素子と前記導電冷却部材とを結ぶ方向に配向させる)ことが有効である。一方、前記熱伝導シートによる電磁波シールド性能を高め、本発明の半導体装置の電磁波抑制効果を向上させたい場合には、前記熱伝導性充填剤をシート面に対して略平行状に配向させることができる。
ここで、前記シート面に対して略垂直状や、略平行の方向は、前記シート面方向に対してほぼ垂直な方向やほぼ平行な方向を意味する。ただし、前記熱伝導性充填剤の配向方向は、製造時に多少のばらつきはあるため、本発明では、上述したシート面の方向に対して垂直な方向や平行な方向から±20°程度のズレは許容される。
【0050】
なお、前記熱伝導性充填剤の配向角度を整える方法については、特に限定はされない。例えば、前記熱伝導シートの元になるシート用成形体を作製し、繊維状の熱伝導性充填剤を配向させた状態で、切り出し角度を調整することによって、配向角度の調整が可能となる。
【0051】
・無機物フィラー
また、前記熱伝導シートは、上述したバインダ樹脂及び熱伝導性繊維に加えて、無機物フィラーをさらに含むことができる。熱伝導シートの熱伝導性をより高め、シートの強度を向上できるからである。
前記無機物フィラーとしては、形状、材質、平均粒径等については特に制限がされず、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状等が挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。
【0052】
前記無機物フィラーの材料としては、例えば、窒化アルミニウム(窒化アルミ:AlN)、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点から、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましい。
【0053】
また、前記無機物フィラーは、表面処理が施されたものを用いることもできる。前記表面処理としてカップリング剤で前記無機物フィラーを処理すると、前記無機物フィラーの分散性が向上し、熱伝導シートの柔軟性が向上する。
【0054】
前記無機物フィラーの平均粒径については、無機物の種類等に応じて適宜選択することができる。
前記無機物フィラーがアルミナの場合、その平均粒径は、1μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましく、4μm〜5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が1μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがある。一方、前記平均粒径が10μmを超えると、前記熱伝導シートの熱抵抗が大きくなるおそれがある。
さらに、前記無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その平均粒径は、0.3μm〜6.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.0μmであることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が、0.3μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなるおそれがあり、6.0μmを超えると、前記熱伝導シートの熱抵抗が大きくなるおそれがある。
なお、前記無機物フィラーの平均粒径については、例えば、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0055】
・磁性金属粉
さらに、前記熱伝導シートは、上述したバインダ樹脂、繊維状の熱伝導性繊維及び無機物フィラーに加えて、磁性金属粉をさらに含むことが好ましい。該磁性金属粉を含むことで、熱伝導シートの電磁波吸収性を向上させることができる。
【0056】
前記磁性金属粉の種類については、電磁波吸収性有すること以外は、特に限定されず、公知の磁性金属粉を適宜選択することができる。例えば、アモルファス金属粉や、結晶質の金属粉末を用いることができる。アモルファス金属粉としては、例えば、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B系、Co−Si−B系、Co−Zr系、Co−Nb系、Co−Ta系のもの等が挙げられ、結晶質の金属粉としては、例えば、純鉄、Fe系、Co系、Ni系、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Si−Al系のもの等が挙げられる。さらに、前記結晶質の金属粉としては、結晶質の金属粉に、N(窒素)、C(炭素)、O(酸素)、B(ホウ素)等を微量加えて微細化させた微結晶質金属粉を用いてもよい。
なお、前記磁性金属粉については、材料が異なるものや、平均粒径が異なるものを二種以上混合したものを用いてもよい。
【0057】
また、前記磁性金属粉については、球状、扁平状等の形状を調整することが好ましい。例えば、充填性を高くする場合には、粒径が数μm〜数十μmであって、球状である磁性金属粉を用いることが好ましい。このような磁性金属粉末は、例えばアトマイズ法や、金属カルボニルを熱分解する方法により製造することができる。アトマイズ法とは、球状の粉末が作りやすい利点を有し、溶融金属をノズルから流出させ、流出させた溶融金属に空気、水、不活性ガス等のジェット流を吹き付けて液滴として凝固させて粉末を作る方法である。アトマイズ法によりアモルファス磁性金属粉末を製造する際には、溶融金属が結晶化しないようにするために、冷却速度を1×10
6(K/s)程度にすることが好ましい。
【0058】
上述したアトマイズ法により、アモルファス合金粉を製造した場合には、アモルファス合金粉の表面を滑らかな状態とすることができる。このように表面凹凸が少なく、比表面積が小さいアモルファス合金粉を磁性金属粉として用いると、バインダ樹脂に対して充填性を高めることができる。さらに、カップリング処理を行うことで充填性をより向上できる。
【0059】
なお、前記熱伝導シートは、上述した、バインダ樹脂、繊維状の熱伝導性充填剤、無機物フィラー及び磁性金属粉に加えて、目的に応じてその他の成分を適宜含むことも可能である。
その他の成分としては、例えば、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、微粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤等が挙げられる。
【0060】
(導電性部材)
本発明の半導体装置1は、
図1〜3に示すように、前記導電シールドカン20の上面20aと前記導電冷却部材40の下面40bとの間に形成された、導電性部材11を備える。
前記導電性部材11が、前記導電シールドカン20と前記導電冷却部材40とを電気的に接続することによって、前記導電シールドカン20が開口部21を有する場合であっても、電気的に閉じた空間(
図1の破線で囲んだ領域A)を形成することが可能となるため、電磁ノイズ抑制効果を高めることができる。
【0061】
ここで、前記導電性部材11については、上述したように、前記導電シールドカン20の上面20aと前記導電冷却部材40の下面40bとの間に形成され、導電性を有するものであれば、形状や、材料については特に限定はされない。
前記導電性部材11の形状としては、例えば、
図4に示すように、中央に孔が空いたシート状を取ることもできる。これによって、
図1〜3に示すように、前記導電シールドカン20の開口部21を囲むように、前記導電性部材11が配設され、前記導電シールドカン20と前記導電冷却部材40とを電気的に接続することができる。
【0062】
また、前記導電性部材11については、
図4に示すようなシート状以外にも、スポンジ状、ペースト状、ゲル状、糸状等の種々の形状を取ることが可能であり、前記導電シールドカン20の開口部21の形状や、前記導電シールドカン20の上面20aと前記導電冷却部材40の下面40bとの距離等を考慮して、適宜選択することができる。
【0063】
なお、前記導電性部材11は、
図1〜3に示すように、積層方向に沿った断面で見たとき、前記熱伝導シート10を介して対向する導電性部材11同士の間隔Pが、前記半導体素子の最大周波数における波長の1/10以下であることが好ましい。より確実に高い電磁波抑制効果を得ることができるためである。例えば、周波数が1GHzの場合には、波長が300mm(光の速さ/周波数)となるため、前記間隔Pが30mm以下であることが好ましい。
【0064】
さらに、前記導電性部材11は、
図4に示すように、1つの部材とすることもできるし、複数の部材から構成することもできる。複数の部材から構成された導電性部材11は、その形状を自由に変化させることができ、製造性の点で好ましい。
なお、各部材の形状は同じものでもよいし、異なる形状の部材を組み合わせて用いることもできる。
ただし、前記導電性部材11が複数の部材から構成される場合には、上述した熱伝導シート10を介して対向する導電性部材11同士の間隔Pと同様に、確実に高い電磁波抑制効果を得る点から、各部材同士の間隔が、前記半導体素子の最大周波数における波長の1/10以下であることが好ましい。
【0065】
また、前記導電性部材11は、前記導電シールドカン20及び前記導電冷却部材40と連結し、
図1に示すように、電気的に閉じた空間(破線で囲んでいる領域)を形成していることが好ましい。より優れた電磁波抑制効果を得ることができるからである。
【0066】
また、前記導電性部材11を構成する材料については、導電性を有するものであれば特に限定はされない。
例えば、前記導電シールドカン20と前記導電冷却部材40との電気的な接続を確実に可能とすることができる点からは、前記導電性部材11の材料が、少なくとも、バインダ樹脂と、導電性充填剤と、を含むことが好ましい。
【0067】
前記導電性部材11の材料に含まれるバインダ樹脂については、樹脂の硬化物であり、前記導電性部材11のベースとなる材料であり、成形性や柔軟性の観点等から、上述した熱伝導シート10に用いられるバインダ樹脂と同様のものを用いることができる。
なお、
図2で示すように、前記導電性部材11と前記熱伝導シート10とが接するような実施形態の場合には、前記熱伝導シート10を、前記導電性部材11と同じ材料から構成する(つまり、熱伝導シート10が導電性部材11の役目を果たすようにする)こともできる。
【0068】
また、前記導電性部材11の材料に含まれる熱導電性充填剤については、高い導電性を有するものが好ましく、例えば、金属粉、金属皮膜樹脂、導電性高分子、導電性粒子、金属繊維、金属皮膜繊維、グラファイトや黒鉛や炭素繊維といった炭素系フィラー等を用いることができる。
さらに、前記熱導電性充填剤の形状については、特に限定はされない。例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状、繊維状、コイル状、網目状等のものを用いることができる。
【0069】
さらにまた、前記導電性部材11の材料には、上述したバインダ樹脂及び熱導電性充填剤の他にも、各種添加剤を含有することができる。
前記添加剤としては、例えば、磁性粉、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、微粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等が挙げられる。
【0070】
なお、前記導電性部材11の材料については、市販品を用いることも可能である。例えば、低抵抗率でシリコーンベースのシートである信越化学工業社のECシリーズ(体積抵抗率0.009、0.025、0.05Ωm)等が挙げられ、さらに、電極間の電気的接続に多用されている異方性導電シート(例えば、デクセリアル社のCPシリーズ)を用いることが可能である。
【0071】
なお、前記導電性部材11については、優れた電磁波抑制効果を実現する点からは、前記熱伝導シート10よりも導電性が高いことが好ましい。
具体的には、前記導電性部材11の抵抗値は、2Ω以下であることが好ましく、0.2Ω以下であることがより好ましく、0.1Ω以下であることがさらに好ましく、0.01Ω以下であることが特に好ましく、0.001Ω以下であることが最も好ましい。前記導電性部材11の抵抗値を2Ω以下とすることで、より優れた電磁波抑制効果が得られるからである。
なお、前記導電性部材11の熱伝導性(抵抗値)を変更させる方法としては、特に限定はされないが、バインダ樹脂の種類や、熱伝導性充填材の材料、配合量及び配向方向等を変えることによって、変更することが可能である。
【0072】
さらに、前記導電性部材11については、表面に粘着性又は接着性を有することが好ましい。前記導電性部材11の他部材との接着力(具体的には、前記導電シールドカン20及び前記導電冷却部材40との接着力)が高くなり、外部からの衝撃を受けた場合でも、電気的接続状態を維持でき、電磁波抑制効果の低下を抑えることができるためである。
なお、前記導電性部材11の表面に粘着性や接着性を付与する方法については特に限定はされない。例えば、前記導電性部材11を構成するバインダ樹脂の調製を行って接着力を向上させることもできるし、該導電性部材11の表面に粘着性のある材料を塗布することもできる。
【0073】
また、前記導電性部材11が設けられる位置については、前記導電シールドカン20の上面20aと前記導電冷却部材40の下面40bとの間であれば、特に限定はされない。
例えば、
図1及び3に示すように、前記導電性部材11が、前記熱伝導シート10から離れた位置に設けることもでき、また、
図2に示すように、前記導電性部材11が、前記熱伝導シート10と接触するような位置に設けることもできる。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
実施例1では、3次元電磁界シミュレータANSYS HFSS(アンシス社製)を用いて、
図5(a)及び(b)に示すような半導体装置の解析モデルを作製し、電磁波抑制効果の評価を行った。
・ここで、半導体装置のモデルに用いた熱伝導シート10は、樹脂バインダとして2液性の付加反応型液状シリコーンを用い、磁性金属粉として平均粒径5μmのFe-Si-B-Crアモルファス磁性粒子を用い、繊維状熱伝導性充填剤として平均繊維長200μmのピッチ系炭素繊維(「熱伝導性繊維」 日本グラファイトファイバー株式会社製)を用い、2液性の付加反応型液状シリコーン:アモルファス磁性粒子:ピッチ系炭素繊維=35vol%:53vol%:12vol%の体積比となるように分散させて、シリコーン組成物(シート用組成物)を調製したものを用いた。得られた熱伝導シートは、垂直方向の平均熱伝導率(界面の熱抵抗と内部の熱抵抗を合わせて算出している)が、ASTM D5470に準拠した測定で9.2 W/m.Kを示し、該シートの磁気特性及び誘電特性については、Sパラメータ法で測定した値を用いた。なお、熱伝導シート10の厚さTは、0.7mmとした。
・また、半導体装置のモデルに用いた冷却部材40(ヒートシンク)は、アルミ板を材料として用い、大きさは60×120mmで、厚さは、0.3mmとした。
さらに、シールドカン20は、肉厚0.2mmのステンレスであり、外径寸法は、20mm×20mm×1.2mmとして中央に開口部21を設けた。開口部21の大きさは、□10mm:10mm×10mmとした。
・さらに、導電性部材11については、バインダ樹脂として熱伝導シート10と同様のシリコーンを用い、導電性充填剤として、炭素繊維を用い、外径寸法を、16mm×16mm×0.2mmとし、□12mmの開口を有するシート状のものを用いた。そして、上記導電性充填剤の含有量を変えることで、導電性部材11の抵抗値については、
図7に示すように、180Ω、18Ω、1.8Ω、0.18Ω及び0.018Ωのサンプルを作製した。
【0076】
図5(a)及び(b)は、半導体装置の解析モデルを示したものであり、それぞれ上面部側(表面側)から、下面部側(裏面側)から見た状態を示したものである。なお、
図5(a)及び(b)では、半導体装置を構成する各部材の位置関係がわかるように、透過させて描いている。
なお、前記解析モデルの断面構造は、
図1と同様であり、半導体素子30は、
図5(a)及び(b)に示すように、マイクロストリップライン(MSL)31を樹脂モールドで覆ったものとし、該MSL31については、誘電体基板50(基板サイズ:60 mm×120 mm×0.65 mm)表面側に銅の信号線(信号線サイズ:1mm×14 mm×0.02 mm)、裏面側にグラウンド60を配したものとした。半導体素子30の信号源は、このMSL31で簡略化し両端を信号の入出力端に設定している。なお、上述の半導体素子30の本体(樹脂でモールドした部分)は、比誘電率4、誘電正接0.01の誘電体とした。なお、半導体素子30の本体の大きさは16mm×16mm×0.7mmとした。
【0077】
そして、電磁波抑制効果の評価については、半導体装置から3m離れた位置における最大電界強度を算出し、周波数に応じた電界強度(dBμV/m)として表記した。得られた電界強度算出結果を
図7に示す。
図7では、導電性部材11の抵抗値が180Ω、18Ω、1.8Ω、0.18Ω及び0.018Ωのものを用いた場合の結果を、それぞれ示している。
【0078】
図7の結果から、導電性部材11を設けることで電磁波抑制効果ができること、及び、導電性部材11の抵抗値が小さい程電磁波抑制効果に優れることが確認された。
その中でも特に、抵抗値を0.18Ω、0.018Ωの導電性部材11を備えるサンプルの電界強度が小さく、さらに優れた電磁波抑制効果を確認できた。