【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本明細書において特記しない限り、濃度等は重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。また、実施例における各種成分濃度は、以下の方法で測定した。
【0032】
(糖類濃度の測定)
飲料中のブドウ糖濃度及び乳糖濃度は、HPLC糖分析装置(LC-20AD株式会社 島津
製作所社製)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
・カラム:Inertsil NH
2,φ3mm×150mm[ジーエルサイエンス株式会社]
・カラム温度:室温
・移動相:アセトニトリル:水=8:2
・流量:0.7ml/min
・注入量:5μL
・検出:示差屈折計 RID-10A [株式会社 島津製作所]
【0033】
(カフェイン濃度の測定)
飲料中のカフェイン濃度は、コーヒー飲料を移動相Aで10倍希釈(w/w)した後、メ
ンブランフィルター(ADVANTEC製 Cellulose Acetate 0.45μm)で濾過し
、HPLCに注入して定量した。HPLCの測定条件は以下のとおり。
・カラム:TSK-gel ODS-80TsQA(4.6mmφx150mm、東ソー株式会社)
・移動相:A:水:トリフルオロ酢酸=1000:0.5
B:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=1000:0.5
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・グラディエント条件;分析開始から5分後まではA液100%保持、
5分から10分まででB液7.5%、
10分から20分まででB液10.5%、
20分から32分までB液10.5%保持、
32分から45分まででB液26.3%、
45分から46分まででB液75.0%、
46分から51分までB液75.0%保持、
51分から52分まででB液0%
52分から58分までB液0%保持、
・注入量:5.0μl
・検出波長:280nm
・リテンションタイム:19.3分
・標準物質:カフェイン(無水) (ナカライテスク株式会社)
【0034】
(クロロゲン酸濃度の測定)
飲料中のクロロゲン酸濃度は、コーヒー飲料を移動相Aで10倍希釈(w/w)した後、
メンブランフィルター(ADVANTEC製 Cellulose Acetate 0.45μm)で濾過
し、HPLCに注入して定量した。HPLCの測定条件は以下のとおり。
・カラム:ガードカラムInertsil ODS-3(4.0mmφx20mm)+Inertsil ODS-2(4.6mmφx250mm)(GLサイエンス株式会社)
・移動相:A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、3(V/V)%アセトニトリル溶液
B:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、97(V/V)%アセトニトリル溶液
・流速:1.0ml/min
・カラム温度:35℃
・グラディエント条件;分析開始から1分後まではA液100%保持、
1分から20分まででB液13%、
20分から25分まででB液13%保持、
25分から27分まででB液15%、
27分から45分までB液15%保持、
45分から55分まででB液20%、
55分から60分まででB液100%
60分から70分までB液100%保持、
70分から75分までA液100%、
75分から100分までA液100%保持
・注入量:10.0μl
・検出波長:325nm
・標準物質:クロロゲン酸0.5水和物(含量99%)(和光一級)
【0035】
(実施例1)
コーヒー分として、コロンビア産のコーヒー豆から製造された既存のコーヒーエキスを用いた。コーヒーエキスに牛乳113mL/Lを配合し、さらにコーヒー固形分が1.55%となるように水で希釈して、500メッシュで濾過して不溶性固形分を除き、使用した(以下、コーヒー調合液という)。
【0036】
このコーヒー調合液(乳糖:0.5g/100g、カフェイン:53mg/100g含有)に、ブドウ糖とショ糖が総量56.0g/Lとなるように種々の割合で配合し、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム)を用いてpHを6.7に調整し、この液を190mLずつ缶に充填してレトルト殺菌処理を行った(サンプルNo.2〜7)。また、対照として、ブドウ糖を配合せずにショ糖のみを用いること以外は同様にして缶入りコーヒー飲料を調製した(サンプルNo.1)。
【0037】
得られた容器詰めコーヒー飲料(乳固形分:1.49g/100g、糖類濃度:6.0g/100g、pH6.3)について、専門パネルによる官能評価を行った。評価は、トップの香ばしい香り(トップ香)の強さ、後味に感じる香ばしい香り(ラスト香)の強さについて、No.1を対照(3点)として、5点:対照よりもとても強い(好ましい)、4点
:対照よりも強い(好ましい)、3点:対照と同程度、2点:対照よりも弱い(好ましくない)、1点:対照よりもとても弱い(好ましくない)で各人が評価した結果から平均点を算出した。また、乳劣化臭の強さについて、No.1を対照(3点)として、5点:対照よりもとても弱い(好ましい)、4点:対照よりも弱い(好ましい)、3点:対照と同程度、2点:対照よりも強い(好ましくない)、1点:対照よりもとても強い(好ましくない)で各人が評価した結果から平均点を算出した。さらに、総合的な好ましさについても同様に評価した。
【0038】
結果を表1に示す。乳糖(a)に対するブドウ糖(b)の割合[(b)/(a)]が、0.2以上、
好ましくは0.3以上となるようにブドウ糖を配合することによって、高温殺菌に伴う乳劣化臭が抑制されることが明らかとなった。また、特定量のブドウ糖を配合することによってコーヒー風味も増強され、良好な乳風味とコーヒー風味のバランスの取れたドリンカビリティの高いミルク入りコーヒー飲料となった。ここで、本明細書でいうドリンカビリティとは、毎日摂取可能な嗜好性(ドリンカビリティ;飲料の性質を指し、ある飲料を一定量飲用した後も、なおおいしく飲み続けられる場合には、その飲料はドリンカビリティがあるといえる。ドリンカビリティは「飲みたいかどうか」と表現されることもある。)を表わす。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2)
牛乳を遠心分離して脂肪分の多いクリームと脂肪分の少ない脱脂乳に分離した。この脱脂乳をイオン交換樹脂を充填した筒に通過させてカルシウムイオンを除去した後、これを遠心分離して得られたクリーム分と混合し、この液を乾燥させて、脱カルシウム粉乳を得た。
【0041】
実施例1における乳分を、表2に示す割合の牛乳と脱カルシウム粉乳の併用に変えること以外は、実施例1のNo.5の飲料と同様にして缶入りのレトルト殺菌コーヒー飲料を製造した。
【0042】
【表2】
【0043】
得られた缶入りコーヒー飲料(乳固形分:1.49g/100g、糖類濃度:6.0g/100g、pH6.3)について、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。いずれもコーヒー風味も増強され、良好な乳風味とコーヒー風味のバランスの取れたドリンカビリティの高いミルク入りコーヒー飲料であったが、表3より明らかなように、乳糖が
同量のコーヒー飲料において、飲料中のカルシウム濃度が低くなるにしたがって乳劣化臭がより低減でき、コーヒーの香りが増強されることが示唆された。
【0044】
【表3】
【0045】
(実施例3)
ブラジル産コーヒー豆(L値20程度)を粉砕機(日本グラニュレーター社製)で粉砕し、94℃の熱水でドリップしてBrix2.9のコーヒー抽出液を得、500メッシュで濾過して不溶性固形分を除いた。このコーヒー抽出液500g/Lに、ブドウ糖とショ糖を総量59.0〜74.0g/L(加熱による分解を見越した量)となるように種々の割合で配合し、さらに乳分(牛乳55mL/L)を配合して、全量が1Lとなるように水を添加した後、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム)を用いてpHを6.7に調整し、この
液を190mLずつ缶に充填してレトルト殺菌処理を行った(サンプルNo.11〜15
)。また、対照として、ブドウ糖を配合せずにショ糖のみを用いること以外は同様にして缶入りコーヒー飲料を調製した(サンプルNo.10)。
【0046】
得られた缶入りコーヒー飲料(クロロゲン酸類:63mg/100g、乳固形分:0.72g/100g、糖類濃度:6.0g/100g、pH6.3)について、実施例1と同様に対照と比べた官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
(実施例4)
実施例3のコーヒー抽出液に、ブドウ糖とショ糖が総量56.0〜70.0g/L(加熱による分解を見越した量)となるように種々の割合で配合し、さらに乳分(牛乳135mL/L)とする以外は、実施例3と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造した。得られた缶入りコーヒー飲料(クロロゲン酸類:63mg/100g、乳固形分:1.78g/
100g、糖類濃度:6.0g/100g、pH6.3)について、実施例3と同様に官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
(実施例5)
実施例3のコーヒー抽出液に、ブドウ糖とショ糖が総量52.0〜65.0g/L(加熱による分解を見越した量)となるように種々の割合で配合し、さらに乳分(牛乳185mL/L)とする以外は、実施例3と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造した。得られた缶入りコーヒー飲料(クロロゲン酸類:63mg/100g、乳固形分:2.81g/
100g、糖類濃度:6.0g/100g、pH6.3)について、実施例3と同様に官能評価を行った。結果を表6に示す。表4〜6より、飲料中のブドウ糖含量(b)と、飲料
中の乳糖含量(a)の濃度比[(b)/(a)]が0.2以上となるようにブドウ糖を配合すると
、トップ香、ラスト香、乳劣化臭の評価項目全てにおいて、ブドウ糖を配合しなかった場合と比較して改善する傾向がみられ、乳糖由来のオフフレーバーが低減され、コーヒー風味が増強されたドリンカビリティの高いミルク入りコーヒー飲料となった。特に、(b)/(a)が1.7以上となるようにブドウ糖を配合すると、評価点が全て4点を超え、対照と比べて顕著に改善されていると専門パネル全員が評価した。一方、(b)/(a)が30以上となるものは、トップ香、ラスト香、乳劣化臭の評価では改善がみられるものの、濃厚感(ボディ感ともいう)が著しく不足し、総合評価では劣る結果となった。これより、(b)/(a)は0.2〜15とすることが示唆された。
【0051】
【表6】
【0052】
(実施例6)
実施例3のコーヒー抽出液に、ブドウ糖40g/L、ショ糖63g/Lを配合し、さらに乳分(牛乳135mL/L)とする以外は、実施例3と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造した(サンプルNo.29)。また、対照として、ブドウ糖を配合せずにショ糖95g/Lを配合した缶入りコーヒー飲料を製造した(サンプルNo.28)。得られた缶入りコーヒー飲料(クロロゲン酸類:63mg/100g、乳固形分:1.78g/10
0g、糖類濃度:9.7g/100g、pH6.3)について、対照と比較した官能評価を行った。結果を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
(実施例7)
ブドウ糖及びショ糖の配合量を4g/L、7g/Lとし、さらに乳分(牛乳130mL/L)とする以外は、実施例6と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造した(サンプルNo.31)。また、対照として、ブドウ糖を配合せずにショ糖10g/Lを配合した缶入りコーヒー飲料を製造した(サンプルNo.30)。得られた缶入りコーヒー飲料(クロロゲン酸類:63mg/100g、乳固形分:1.71g/100g、糖類濃度:1.5
g/100g、pH6.3)について、対照と比較した官能評価を行った。結果を表8に示す。表7及び8から、糖類濃度にかかわらず、飲料中の乳糖含量(a)の濃度比[(b)/(a)]が0.2〜15となるようにブドウ糖を配合したコーヒー飲料は、ブドウ糖を配合し
ていないものと比較して、トップ香、ラスト香、乳劣化臭のいずれの評価項目においても上回り、パネル全員が対照と比較して好ましい、ドリンカビリティの高い飲料であると評価した。
【0055】
【表8】
【0056】
(実施例8)
実施例5のNo.23のブドウ糖を0.19g/100gとし、乳分として脱脂粉乳及び実施例2で調製した脱カルシウム粉乳の配合割合を変えること以外は、実施例5と同様にして缶入りコーヒー飲料を製造した。得られた缶入りコーヒー飲料(クロロゲン酸類:63mg/100g、乳固形分:2.05〜2.81g/100g、糖類濃度:5.9g
/100g、pH6.3)について、ブドウ糖を配合していない対照(サンプルNo.22)と比較した官能評価を行った。
【0057】
結果を表9に示す。飲料中の乳糖含量(a)の濃度比[(b)/(a)]が0.2以上となるコ
ーヒー飲料は、トップ香、ラスト香、乳劣化臭のいずれの評価項目においても改善が見られ、ドリンカビリティの高い飲料となったが、特に、ブドウ糖及び乳糖含量が同じ、すなわち(b)/(a)が同じ場合には、カルシウム濃度が少ないほど乳劣化臭がより低減でき、コーヒーの香りが増強された。
【0058】
【表9】
【0059】
(実施例9)
市販のミルク入り飲料(無糖タイプ、甘味料(アセスルファムカリウム)配合)を用い、これにブドウ糖5.5g/Lの濃度で配合して0.53g/100gを配合して得られる液(サンプルNo.37)を、市販のミルク入り飲料を対照(サンプルNo.36)として官能評価を行った。結果を表10に示す。ブドウ糖を配合した飲料では、好ましいコーヒーの風味が増強され、一層ドリンカビリティの高い飲料となった。
【0060】
【表10】
【0061】
(比較例)
実施例1のNo.6の飲料について、ブドウ糖を果糖又は還元麦芽糖に変えて、同様に容器詰めコーヒー飲料を製造した(No.38,39)。評価結果を表11に示す。果糖の添加で乳劣化臭は抑制できる傾向にあったが、コーヒーのトップ香やラスト香が損なわれ、乳風味とコーヒー風味のバランスを欠く飲料となった。還元麦芽糖の添加では、乳劣化臭、コーヒー風味の増強ともに効果はなかった。
【0062】
【表11】