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特開2019-187761流体温度調節装置、その使用方法及び体温調節システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-187761(P2019-187761A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】流体温度調節装置、その使用方法及び体温調節システム
(51)【国際特許分類】
   A62B 17/00 20060101AFI20191004BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   A62B17/00
   A41D13/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-83655(P2018-83655)
(22)【出願日】2018年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】591240984
【氏名又は名称】株式会社鎌倉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】堀江 威史
(72)【発明者】
【氏名】田畑 大輔
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA02
2E185BA08
2E185BA09
2E185CC52
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
(57)【要約】
【課題】作業者の姿勢変化による影響を抑えて、安定した体温調節機能を確保する。
【解決手段】本発明の一形態に係る流体温度調節装置は、体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置であって、回路ユニットと、筐体と、固定具とを具備する。回路ユニットは、冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、冷熱回路で冷却又は加熱された流体を体温調節服へ送出する流体回路とを含む。筐体は、回路ユニットを収容する。筐体は、前面部と、前面部と対向する後面部とを有し、第2ヘッダから第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直下向き傾斜となるように前記凝縮器を所定角度傾斜した状態で保持する。固定具は、前面部を体温調節服の着用者の背面に向けて筐体を固定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置であって、
冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、前記冷熱回路で冷却又は加熱された流体を前記体温調節服へ送出する流体回路とを含む回路ユニットと、
前記回路ユニットを収容する筐体であって、前面部と、前記前面部と対向する後面部とを有し、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直下向き傾斜となるように前記凝縮器を所定角度傾斜した状態で保持する筐体と、
前記前面部を前記体温調節服の着用者の背面に向けて前記筐体を固定する固定具と
を具備する流体温度調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体温度調節装置であって、
前記凝縮器は、前記冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が前記前面部側から前記後面部側に向かって鉛直下向き傾斜となるように前記筐体に保持される
流体温度調節装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体温度調節装置であって、
前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向は、前記第1ヘッダと略直交しており、
前記所定角度は、前記第1ヘッダと前記前面部とがなす角度であり、当該角度は45°以上65°以下である
流体温度調節装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体温度調節装置であって、
前記凝縮器は、前記冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が前記後面部側から前記前面部側に向かって鉛直下向き傾斜となるように前記筐体に保持される
流体温度調節装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体温度調節装置であって、
前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向は、前記第1ヘッダと略直交しており、
前記所定角度は、前記第1ヘッダと前記前面部とがなす角度であり、当該角度は20°以上40°以下である
流体温度調節装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の流体温度調節装置であって、
前記固定具は、着用者の両肩に架け渡される一対のストラップである
流体温度調節装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の流体温度調節装置であって、
前記固定具は、前記筐体を着用者の腰部に固定するベルトである
流体温度調節装置。
【請求項8】
体温調節服の着用者に取り付けられ、冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、前記冷熱回路で冷却又は加熱された流体を前記体温調節服へ送出する流体回路とを有する回路ユニットが筐体に収容された流体温度調節装置の使用方法であって、
前記流体温度調節装置を背面に取り付けた着用者の前後方向の姿勢変化に伴う前記凝縮器の傾斜角度範囲にわたって、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が水平又は鉛直下方に向けられた状態を維持することができる角度で前記凝縮器を前記筐体に固定する
流体温度調節装置の使用方法。
【請求項9】
着用者の体温を調節することが可能な体温調節服と、
前記体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置と
を具備し、
前記流体温度調節装置は、
冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、前記冷熱回路で冷却又は加熱された流体を前記体温調節服へ送出する流体回路とを含む回路ユニットと、
前記回路ユニットを収容する筐体であって、前面部と、前記前面部と対向する後面部とを有し、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直下向き傾斜となるように前記凝縮器を所定角度傾斜した状態で保持する筐体と、
前記前面部を前記体温調節服の着用者の背面に向けて前記筐体を固定する固定具と、を有する
体温調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置、その使用方法及び体温調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高温あるいは低温の作業環境にある屋内や、夏季あるいは冬季における屋外での作業での快適性を高めるため、冷却または加熱された流体を作業者の身体近傍に流通させることによって作業者の体温調節を行う体温調節服の開発が進められている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
体温調節服の内部を循環する流体の温度は、体温調節服に接続される流体温度調節装置によって調節される。流体温度調節装置は、典型的には、冷媒が循環する冷熱回路と、冷熱回路で冷却または加熱された流体を体温調節服に送出する流体回路とを有する。流体温度調節装置は、典型的には、体温調節服の着用者(作業者)の近傍に設置されるが、体温調節服と流体温度調節装置との間の流体の接続配管が作業性を阻害し、あるいは、接続配管の長さによって作業者の行動範囲が制限されるという点で難がある。一方、流体温度調節装置を作業者の背中や腰に取り付けることで、作業性の向上及び行動範囲の拡大を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−125272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体温度調節装置が作業者に取り付け可能に構成される場合、作業者の姿勢によって流体温度調節装置の姿勢も変化しやすくなる。例えば、作業者が前傾姿勢で作業する場合、直立姿勢から前傾姿勢への変化によって流体温度調節装置の鉛直方向に対する傾きが前後方向に変動する。ところが、流体温度調節装置の傾きの変動によって、凝縮器等の熱交換器の内部で冷媒の流れが滞ってしまい、冷熱回路における冷媒の循環量が減少して流体に対する十分な冷却性能が得られなくなるおそれがある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、作業者の姿勢変化による影響を抑えて、安定した体温調節機能を確保することができる流体温度調節装置、その使用方法及び体温調節システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る流体温度調節装置は、体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置であって、回路ユニットと、筐体と、固定具とを具備する。
前記回路ユニットは、冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、前記冷熱回路で冷却又は加熱された流体を前記体温調節服へ送出する流体回路とを含む。
前記筐体は、前記回路ユニットを収容する。前記筐体は、前面部と、前記前面部と対向する後面部とを有し、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直下向き傾斜となるように前記凝縮器を所定角度傾斜した状態で保持する。
前記固定具は、前記前面部を前記体温調節服の着用者の背面に向けて前記筐体を固定する。
【0008】
上記流体温度調節装置において、筐体は、第2ヘッダから第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直下向き傾斜となるように凝縮器を所定角度傾斜した状態で保持するため、体温調節服の着用者の前後方向への姿勢変化の際に冷媒出口に向かう上記冷媒の流れ方向が鉛直方向上向きとなることが抑えられる。これにより、凝縮器内での冷媒の滞留を回避することができるため、冷熱回路における冷媒の循環量を維持して安定した流体温度の調節機能および体温調節機能を確保することができる。
【0009】
前記凝縮器は、前記冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が前記前面部側から前記後面部側に向かって鉛直下向き傾斜となるように前記筐体に保持されてもよい。
これにより、着用者の前傾姿勢時において上記冷媒の流れ方向が鉛直上向きとなることを抑えることができる。
【0010】
この場合、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向は、前記第1ヘッダと略直交しており、上記所定角度は、前記第1ヘッダと前記前面部とがなす角度であり、当該角度は、例えば、45°以上65°以下である。
【0011】
あるいは、前記凝縮器は、前記冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が前記後面部側から前記前面部側に向かって鉛直下向き傾斜となるように前記筐体に保持されてもよい。
これにより、着用者の後ろ反り時において上記冷媒の流れ方向が鉛直上向きとなることを抑えることができる。
【0012】
この場合、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向は、前記第1ヘッダと略直交しており、上記所定角度は、前記第1ヘッダと前記前面部とがなす角度であり、当該角度は、例えば、20°以上40°以下である。
【0013】
前記固定具は、着用者の両肩に架け渡される一対のストラップであってもよい。
あるいは、前記固定具は、前記筐体を着用者の腰部に固定するベルトであってもよい。
【0014】
本発明の一形態に係る流体温度調節装置の使用方法は、体温調節服の着用者に取り付けられ、冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、前記冷熱回路で冷却又は加熱された流体を前記体温調節服へ送出する流体回路とを有する回路ユニットが筐体に収容された流体温度調節装置の使用方法であって、
前記流体温度調節装置を背面に取り付けた着用者の前後方向の姿勢変化に伴う前記凝縮器の傾斜角度範囲にわたって、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が水平又は鉛直下方に向けられた状態を維持することができる角度で前記凝縮器を前記筐体に対して固定する。
【0015】
本発明の一形態に係る体温調節システムは、着用者の体温を調節することが可能な体温調節服と、前記体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置と
を具備する。
前記流体温度調節装置は、回路ユニットと、筐体と、固定具とを有する。
前記回路ユニットは、冷媒出口を有する第1ヘッダと、第2ヘッダとを有するパラレルフロー式の凝縮器を有する冷熱回路と、前記冷熱回路で冷却又は加熱された流体を前記体温調節服へ送出する流体回路とを含む。
前記筐体は、前記回路ユニットを収容する。前記筐体は、前面部と、前記前面部と対向する後面部とを有し、前記第2ヘッダから前記第1ヘッダの冷媒出口へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直下向き傾斜となるように前記凝縮器を所定角度傾斜した状態で保持する。
前記固定具は、前記前面部を前記体温調節服の着用者の背面に向けて前記筐体固定する。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、作業者の姿勢変化による影響を抑えて、安定した体温調節機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る体温調節システムの使用例を示す作業者の側面図である。
図2】上記体温調節システムの概略構成図である。
図3】上記体温調節システムにおける熱交換器の構成の一例を示す側面図である。
図4】作業者の姿勢変化と比較例に係る流体温度調節装置の傾きとの関係を説明する図である。
図5】比較例に係る熱交換器の傾きの変化の一例を説明する図である。
図6】作業者の姿勢変化と本発明の一実施形態に係る流体温度調節装置の傾きとの関係の一例を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係る熱交換器の傾きの変化の一例を説明する図である。
図8】流体温度調節装置を構成する冷熱回路の筐体への配置例を示す概略平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る流体温度調節装置の筐体と熱交換器との関係の一例を示す部分破断側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る流体温度調節装置の筐体と熱交換器との関係の他の一例を示す部分破断側面図である。
図11】作業者の姿勢変化と本発明の一実施形態に係る流体温度調節装置の傾きとの関係の他の一例を説明する図である。
図12】本発明の一実施形態に係る熱交換器の傾きの変化の他の一例を説明する図である。
図13】上記体温調節システムの他の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る体温調節システム1の使用例を示す作業者の側面図、図2は、体温調節システム1の概略構成図である。
【0020】
[体温調節システム]
本実施形態の体温調節システム1は、体温調節服100と、流体温度調節装置200とを備える。
体温調節服100は、作業者Uが着用可能な適宜の形態の衣服であって、作業者Uの体温を調節(冷却又は加温)することが可能な流体(本例では、水)の循環通路を有する。
流体温度調節装置200は、体温調節服100の内部を循環する流体の温度を調節する冷熱回路を内蔵する。作業者Uは特に限定されず、典型的には、溶接現場や土木現場等の作業従事者が該当する。
【0021】
本実施形態の体温調節システム1においては、流体温度調節装置200が作業者Uの背後に取り付けられることで、体温調節服100を着用する作業者Uと一体的に移動可能に構成される。
【0022】
[体温調節服]
図2に示すように、体温調節服100は、本体部10と、本体部10の内部に形成された循環通路15とを有する。
【0023】
本体部10は、着用者である作業者Uの体型に合わせて構成され、胴部11、袖部12及び襟部13を有する。胴部11は、前身頃と後身頃とを有し、典型的には、右前身頃と左前身頃との合わせ目に閉止手段としてのスライドファスナを備える。本体部10は、例えば、変形可能な複数の樹脂シートを適宜の位置で溶着した積層体、あるいは、これら樹脂シートと断熱シートとの積層体等で構成される。
【0024】
本体部10は、循環通路15に接続される入水口151及び出水口152を有する。入水口151及び出水口152は、典型的には、胴部11の適宜の位置に設けられる。
【0025】
循環通路15は、胴部11、袖部12及び襟部13の各部位に流体を循環させることが可能に構成される。循環通路15は、例えば、本体部10を構成する2枚の樹脂シートの間の非溶着部で形成され、入水口151から入水した冷却水(又は加温水)を本体部10の各部位に巡回させてから出水口152へ導くことが可能な任意の流路パターンを有する。循環通路15は、入水口151と出水口152との間を結ぶ1本の流路で形成される場合に限られず、適宜の位置に形成された分流路や合流路等を含んでいてもよい。
【0026】
循環通路15は、入水口151及び出水口152にそれぞれ接続された接続配管16及びカプラ17(171,172)を介して流体温度調節装置200の流体回路22へ液的に接続される。
【0027】
[流体温度調節装置]
続いて、流体温度調節装置200の詳細について説明する。
【0028】
流体温度調節装置200は、回路ユニット20と、回路ユニット20を収容する筐体30と、筐体30を作業者Uの背面に固定するストラップ41(固定具)とを有する。
【0029】
回路ユニット20は、冷熱回路21と、流体回路22と、これらの運転を制御する制御部23とを有する。
【0030】
冷熱回路21は、冷媒を作動流体として用いる冷凍サイクル回路で構成され、圧縮機211と、凝縮器212と、キャビラリーチューブ213と、蒸発器214とを有する。凝縮器212及び蒸発器214は、冷媒を空気又は流体と熱交換させる熱交換器として構成される。本実施形態では、凝縮器212において、冷媒と空気を熱交換するとともに、蒸発器214において、冷媒と流体回路22内の流体(水)とを熱交換して流体を所定温度に冷却する場合について説明する。
なお、冷媒の循環経路を変更もしくは切り替える切替弁を設けることにより、蒸発器214を凝縮器として機能させるとともに、凝縮器212を蒸発器として機能させるようにすれば、流体回路22内の流体を所定温度に加熱することができる。
【0031】
圧縮機211は、例えば、ロータリー式コンプレッサであり、蒸発器214から供給される気体冷媒を圧縮し、凝縮器212へと吐出する。
【0032】
凝縮器212は、圧縮機211から吐出された高温高圧の冷媒ガスを凝縮して液化させる。凝縮器212には必要に応じて凝縮効率を促進させるファン215が付設される。凝縮器212で凝縮された冷媒は、キャピラリーチューブ213で減圧された後、蒸発器214で蒸発(気化)する。キャピラリーチューブ213に代えて、電子膨張弁等が採用されてもよい。
【0033】
凝縮器212は、図3に概略的に示すようなパラレルフロー式の熱交換器で構成される。これにより、凝縮器212の小型化、軽量化を図ることができる。凝縮器212は、第1ヘッダ51と、第2ヘッダ52と、第1ヘッダ51と第2ヘッダ52との間を連通する複数の伝熱管56と、隣接し合う伝熱管56の間に挿入されろう付けされた波状あるいは板状の複数の伝熱フィン55とを有する。複数の伝熱管56は、第1ヘッダ51の長手方向と直交する方向に等ピッチで配列され、第1ヘッダ51と第2ヘッダ52との間で冷媒を連通させる直線的な流路を形成する。第1ヘッダ51及び第2ヘッダ52は伝熱管56と直交する方向に軸心を有する円筒形状に形成され、第1ヘッダ51の一端側及び他端側に冷媒入口53及び冷媒出口54がそれぞれ設けられる。第1ヘッダ51及び第2ヘッダ52にはそれらの内部を複数の空間に区画する仕切51a,51b,52aが設けられている。そして、冷媒入口53から第1ヘッダ51に流入した冷媒は、複数の伝熱管56を介して両ヘッダ51,52間を交互に移動しながら、伝熱フィン55を介して熱交換を行い、冷媒出口54から流出するように構成される。図示の例では、冷媒入口53が冷媒出口54とともに第1ヘッダ51に設けられた例を示すが、冷媒入口53は第2ヘッダ52に設けられてもよい。
【0034】
一方、蒸発器214は図示せずとも、例えば、複数の伝熱プレートの間に高温流体用の流路と低温流体用の流路とが交互に配列されたプレート式熱交換器で構成される。
【0035】
流体回路22は、体温調節服100の出水口152にカプラ172を介して着脱可能に接続される吸水配管221と、体温調節服100の入水口151にカプラ171を介して着脱可能に接続される送水配管222とを有する。
【0036】
流体回路22はさらに、吸水配管221を介して導入された流体(以下、冷却水ともいう)を貯留するタンク223と、タンク223内の冷却水を蒸発器214へ向けて吐出するポンプ224とを有する。ポンプ224から吐出された冷却水は、蒸発器214において、主に冷媒の蒸発潜熱に相当する熱量を奪われることで冷却される。蒸発器214において所定温度に冷却された冷却水は、送水配管222を介して体温調節服100の入水口151へ送出される。
【0037】
制御部23は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やメモリを有するコンピュータで構成される。制御部23は、圧縮機211、ファン215、ポンプ224等の駆動を制御する。
【0038】
筐体30は、前面部31、後面部32、底面部33、天面部34及び両側面部35等を有する概略直方体形状に形成される。筐体30は、典型的には金属材料で構成されるが、合成樹脂材料、金属材料と合成樹脂材料との複合体等で構成されてもよい。
【0039】
前面部31には、固定具としての一対のストラップ41が取り付けられている。ストラップ41は、作業者Uの両肩に架け渡され、それらの両端は、流体温度調節装置200の筐体30の前面部31の上下の端部付近にそれぞれ固定される。前面部31には、クッション性を有する背当て部材39が設けられてもよい。これにより、筐体30と作業者Uの背面との間の隙間をなくしてフィット性を高めることができる。
【0040】
後面部32には、図示せずとも、入力操作部、表示部等が設けられる。入力操作部は、電源スイッチ、温度設定部等の操作キーを含む。表示部は、入力操作部の入力状態を表示する液晶ディスプレイ等の適宜の表示素子で構成される。表示部の表示制御は、例えば、制御部23において実行される。
なお、入力操作部及び表示部は、後面部32に設置される例に限られず、筐体30の天面部34や側面部35に設置されてもよい。あるいは、図示しないリモートコントローラを介して入力操作を行うことが可能に構成されてもよい。
【0041】
流体温度調節装置200は、回路ユニット20へ電源を供給する電源ケーブル37をさらに備える(図2参照)。電源ケーブル37は、筐体30の例えば側面部から外部へ延出される。電源ケーブル37は交流を直流に変換するアダプタ38を有する。
【0042】
流体温度調節装置200は、電源ケーブル37に代えて又はこれに加えて、充電可能なバッテリユニットを備えていてもよい。これにより、外部電源を必要とすることなく体温調節システム1を稼働させることができるとともに、作業者Uの行動範囲が広がり、移動の自由度が高められる。
【0043】
(凝縮器の配置)
筐体30の内部空間は、回路ユニット20の収納空間として構成される。筐体30内部における回路ユニット20の配置レイアウトは特に限定されず、適宜設定可能である。
一方、回路ユニット20を収容する筐体30は、作業者Uの背後に固定されるため、図4に示すように、作業者Uの直立姿勢と前傾姿勢(前屈み姿勢)と後ろ反り姿勢との間で筐体30の鉛直方向Vに対する傾きが前後方向に大きく変動し、これに伴って、筐体30の内部の回路ユニット20も前後方向に傾くことになる。したがって、筐体30に保持される凝縮器212においては、前後方向に対する傾きの大きさによっては冷媒出口が鉛直上向きになり、熱交換器内に冷媒が滞留しやすくなる。
【0044】
例えば、筐体30の非装着状態(作業者Uに装着されていない状態)において、各伝熱管56が水平方向に配置されるような姿勢で凝縮器212が筐体30に固定されている場合、筐体30が作業者Uの背後に装着されたとき、凝縮器212は、図4及び図5に示すように、作業者Uの直立時、前屈み時、後ろ反り時において、凝縮器212が鉛直方向に対して前後方向に大きく傾く。この例では、作業者Uの直立時及び後ろ反り時において、凝縮器212の第2ヘッダ52から第1ヘッダ51の冷媒出口54へ向かう冷媒の流れ方向が前面部31側から後面部32側に向かっていずれも鉛直下向き傾斜となる。これに対して、作業者Uの前屈み時においては、冷媒出口54へ向かう冷媒の流れ方向が鉛直上向き傾斜となるため、第2ヘッダ52の最下段(図中破線Aで示す領域)で冷媒が溜まり易くなる。その結果、冷熱回路21における冷媒の循環量が減少して、体温調節服100へ供給される流体(水)に対する十分な冷却性能が得られなくなるおそれがある。
【0045】
そこで本実施形態では、流体温度調節装置200を背面に取り付けた着用者Uの前後方向における姿勢変化に伴う凝縮器212の傾斜角度範囲にわたって、凝縮器212の冷媒出口54へ向かう冷媒の流れ方向が水平又は鉛直下方に向けられた状態を維持することができる角度で凝縮器212を筐体30に固定するようにしている。
【0046】
例えば図6及び図7に示すように、作業者Uの直立姿勢時は勿論、前屈み状態及び後ろ反り状態においても凝縮器212の冷媒出口54が直下向き、あるいは下向き傾斜となる状態を維持することで、重力に逆らうことなく冷媒を流出させることを可能とする。これにより、作業者Uの姿勢の如何にかかわらず、冷熱回路21における冷媒循環量が維持されるため、体温調節服100へ供給される流体(水)に対する十分な冷却性能を確保することができる。
【0047】
図8は、筐体30の内部における冷熱回路21の配置例を説明する模式的な平面図である。同図に示すように、凝縮器212及び蒸発器214は、圧縮機211及びファン215を挟んで対向するように筐体30の左右の側面部35に配置される。筐体30の両側面部35には通風口(図示略)がそれぞれ設けられており、ファン215の回転により、例えば、凝縮器212側から、圧縮機211及び図示しない吹出口へ向かう空気流が形成される。凝縮器212は、ブラケット等の適宜の形態及び数の支持部材60を介して左側の側面部35に保持される。
【0048】
図9は、筐体30と凝縮器212との関係を示す側面図である。同図に示す例では、凝縮器212は、第2ヘッダ52から第1ヘッダ51の冷媒出口54へ向かう冷媒の流れ方向が筐体30の前面部31側から後面部32側に向かって鉛直下向き傾斜となるように、第1ヘッダ51を前面部31に対して所定角度(α)傾斜した状態で筐体30に保持される。所定角度αは、作業者Uの前後方向の姿勢変化に伴う凝縮器212の傾斜角度範囲にわたって、冷媒出口54が水平又は鉛直下方に向けられた状態を維持することができる角度であれば特に限定されない。
【0049】
作業者Uの前後方向の姿勢変化に伴う凝縮器212の傾斜角度範囲は、筐体30の取り付け位置や作業者Uへの固定方法、作業者Uの作業内容や身長等に応じて異なるため、あらかじめ取得した統計値等に基づいて決定されるのが好ましい。図6及び図7に示した例では、作業者Uの前屈み時における鉛直方向Vに対する前方傾斜角度θaを45°以内、後ろ反り時における鉛直方向Vに対する後方傾斜角度θbを20°以内と想定した場合、上記所定角度αは、45°以上65°以下であるのが好ましい。
【0050】
一方、図10に示すように、凝縮器212は、第2ヘッダ52から第1ヘッダ51の冷媒出口54へ向かう冷媒の流れ方向が筐体30の後面部32側から前面部31側に向かって鉛直下向き傾斜となるように、第1ヘッダ51を前面部31に対して所定角度(β)傾斜した状態で筐体30に保持されてもよい。この場合においても所定角度βは、作業者Uの前後方向の姿勢変化に伴う凝縮器212の傾斜角度範囲にわたって、冷媒出口54が水平又は鉛直下方に向けられた状態を維持することができる角度であれば特に限定されない。
【0051】
例えば図11及び図12に示すように、作業者Uの前屈み時における鉛直方向Vに対する前方傾斜角度θaを45°以内、後ろ反り時における鉛直方向Vに対する後方傾斜角度θbを20°以内と想定した場合、上記所定角度αは、20°以上40°以下であるのが好ましい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0053】
例えば以上の実施形態では、筐体30を作業者Uの背後に固定するための固定具として一対のストラップ41が用いられたが、これに限られず、例えば図13に示すようなベルト40であってもよい。ベルト40は、筐体30を作業者Uの腰部背面に取り付けるためのもので、締付け力を調整可能なバックルを有するのが好ましい。前面部31に対するベルト40の固定位置は特に限定されず、図示の例では、底面部33よりの前面部31下方位置にベルト40が固定される。
【0054】
また以上の実施形態では、凝縮器212が筐体30の側面部35に保持されたが、これに限られず、筐体30の底面部33に適宜の台座を介して保持されてもよい。もしくは、凝縮器212が側面部35および底面部33の双方に保持されてもよい。
【0055】
さらに以上の実施形態では、体温調節服100の循環通路15を流れる流体が水である場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、水以外、例えば不凍液などの他の水溶液あるいは非水系溶液であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…体温調節システム
20…回路ユニット
21…冷熱回路
22…流体回路
30…筐体
31…前面部
32…後面部
35…側面部
40…ベルト(固定具)
41…ストラップ(固定具)
51…第1ヘッダ
52…第2ヘッダ
54…冷媒出口
100…体温調節服
200…流体温度調節装置
212…凝縮器
213…蒸発器
U…作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13