特開2019-187800(P2019-187800A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-187800(P2019-187800A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20191004BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20191004BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   A61F13/49 100
   A61F13/532 200
   A61F13/539
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-84312(P2018-84312)
(22)【出願日】2018年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100214226
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博文
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA12
3B200BA04
3B200BA16
3B200BB03
3B200CA08
3B200DB05
3B200DB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の製品と比較して、十分なモレ防止機能を発揮可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、吸収体は、吸収性物品の長手方向の一方端部側の異なる位置に、幅方向に延びる、互いに略線対称な、少なくとも2本のスリットからなる幅方向スリット群を有し、バックシートの衣類側表面には、少なくとも、幅方向スリット群に対応する位置を含む領域に、粘着剤層が設けられており、粘着剤層の長手方向前後端部を対向させて接着させることにより、幅方向スリット群を含む領域を隆起部として形成可能となっている、吸収性物品を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記吸収性物品の長手方向の一方端部側の異なる位置に、幅方向に延びる、互いに略線対称な、少なくとも2本のスリットからなる幅方向スリット群を有し、
前記バックシートの衣類側表面には、少なくとも、前記幅方向スリット群に対応する位置を含む領域に、粘着剤層が設けられており、
前記粘着剤層の長手方向前後端部を対向させて接着させることにより、前記幅方向スリット群を含む領域を隆起部として形成可能となっている、吸収性物品。
【請求項2】
前記幅方向スリット群は、偶数本の、曲線状のスリットからなり、前記スリットが、幅方向に延びる軸を中心に線対称に配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記粘着剤層の長手方向前後端部を対向させて接着させたときに、形成される前記隆起部の厚みが、前記吸収性物品の他の部位の厚みの1.8倍以上2.2倍以下の厚みとなる、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品の幅方向両端部近傍に、長手方向に延びる少なくとも2本の長手方向スリットが形成されており、前記長手方向スリットが、前記幅方向スリット群に属するスリットの少なくとも一部と交差するとともに、前記吸収性物品の前記一方端部側に延在する、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記幅方向スリット群に属する少なくとも2本の前記スリットと、少なくとも2本の前記長手方向スリットと、が交差しており、前記スリット及び前記長手方向スリットに囲まれる領域が、前記吸収性物品の前記一方端部側40%以内の位置に形成されている、請求項4に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液の拡散性が良好で、吸収性に優れる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品には、テープ止めタイプ、尿取りパッド、パンツタイプ等が上市されており、これらの吸収性物品は、使用者の症状や用途に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
テープ止めタイプの吸収性物品、尿取りパッド、パンツタイプの吸収性物品等は、就寝時に使用されることも多いが、就寝時に使用される吸収性物品においては、後モレの防止性能が、非常に重要であり、この後モレ防止性能を向上させるため、従来、吸収性物品に対して様々な改良が試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用状態において自由隆起する、ウエスト用バリヤーカフスを有する、使い捨ての吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、前後モレを防止するために、長手方向両端部を、長手方向中心部に向けて折り返すことにより、ポケット構造を形成することが可能な、使い捨ての吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−293032号公報
【特許文献2】特開2015−024070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の使い捨ての吸収性物品においては、着用者が仰向け状態にあるときには、吸収性物品に形成されるポケット形状が体重によって押し潰されてしまうため、これらのポケット形状のみでモレ防止機能を発揮しようとする場合には、モレ防止機能が十分に発揮されない場合があった。
【0007】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、従来の製品と比較して、十分なモレ防止機能を発揮可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った。その結果、吸収体に、幅方向に延びる、互いに略線対称な、少なくとも2本のスリットからなる幅方向スリット群を設けるとともに、幅方向スリット群を含む領域を隆起部として形成可能にした吸収性物品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、前記吸収性物品の長手方向の一方端部側の異なる位置に、幅方向に延びる、互いに略線対称な、少なくとも2本のスリットからなる幅方向スリット群を有し、前記バックシートの衣類側表面には、少なくとも、前記幅方向スリット群に対応する位置を含む領域に、粘着剤層が設けられており、前記粘着剤層の長手方向前後端部を対向させて接着させることにより、前記幅方向スリット群を含む領域を隆起部として形成可能となっている、吸収性物品。
【0010】
(2)前記幅方向スリット群は、偶数本の、曲線状のスリットからなり、前記スリットが、幅方向に延びる軸を中心に線対称に配置されている、(1)に記載の吸収性物品。
【0011】
(3)前記粘着剤層の長手方向前後端部を対向させて接着させたときに、形成される前記隆起部の厚みが、前記吸収性物品の他の部位の厚みの1.8倍以上2.2倍以下である、(1)又は(2)に記載の吸収性物品。
【0012】
(4)前記吸収性物品の幅方向両端部近傍に、長手方向に延びる少なくとも2本の長手方向スリットが形成されており、前記長手方向スリットが、前記幅方向スリット群に属するスリットの少なくとも一部と交差するとともに、前記吸収性物品の前記一方端部側に延在する、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品。
【0013】
(5)前記幅方向スリット群に属する少なくとも2本の前記スリットと、少なくとも2本の前記長手方向スリットと、が交差しており、前記スリット及び前記長手方向スリットに囲まれる領域が、前記吸収性物品の前記一方端部側40%以内の位置に形成されている、(4)に記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着用者の後側にあてがわれる、吸収性物品の一方端部側を隆起部として形成可能なものとしているので、着用者が仰向けになっている場合であっても、体液の後モレが効果的に防止される。さらに、吸収体の隆起部に該当する領域に、幅方向に延びる、互いに略線対称な、少なくとも2本のスリットを設けているので、隆起部により堰き止められた体液を、幅方向に効果的に拡散させることができ、吸収体による体液の吸収速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の吸収性物品が備える吸収体の平面図である。
図2】本発明の吸収性物品に隆起部を形成したときの断面概略図である。
図3】隆起部の形成態様を示す、本発明の吸収性物品のモデル図である。
図4】本発明の吸収性物品の作用モデルを示す図面である。
図5】本発明の吸収性物品における幅方向スリット群の設置態様の一例を示す図面である。
図6図1におけるY−Y断面図であり、隆起部を形成したときの吸収体のモデル断面図である。
図7】本発明の吸収性物品のバックシートに形成される粘着剤層の態様を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド等であってもよいが、本発明は、特に大人用のテープ止めタイプ及びパンツタイプの使い捨ておむつ、並びに尿取りパッドに好適に適用される。
【0017】
吸収性物品1は、身体側表面に配された液透過性のトップシート21と、トップシート21に対向して配置された液不透過性のバックシート22と、トップシート21とバックシート22との間に少なくとも1層配置された吸収体23と、を備えている。
【0018】
また、吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート21上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザーを備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザーの外端は、バックシート22に固定され、その内端はトップシート21に固着され、その中央はトップシート21に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザーが起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0019】
[トップシート]
トップシート21は、体液が吸収体23へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート21の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート21の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体23へと誘導するために必要とされる、吸収体23を覆う形状であればよい。
【0020】
[吸収体]
吸収体23は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体23の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m以上800g/m以下の坪量とすることが好ましい。
【0021】
吸収体23の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体23のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m以上500g/m以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0022】
吸収体23において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものであることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体23の形状の安定化の目的から、吸収体23をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0023】
吸収体23は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、後述する、幅方向スリット群231を構成するスリット232、及び長手方向スリット233は、少なくとも上層吸収体に設けられていればよい。上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の長さは、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより長くてもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さと同じであってもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより短くてもよい。
【0024】
(幅方向スリット群)
図1は、本発明の吸収性物品1が備える吸収体23の平面図である。本発明においては、吸収体23が、吸収性物品1の長手方向の一方端部側の異なる位置に、幅方向に延びる、互いに略線対称な、少なくとも2本のスリット232からなる幅方向スリット群231を有している。なお、本発明の吸収性物品1は、この一方端部側が、着用者の背側に位置するようにあてがわれることが好ましい。幅方向スリット群231が形成されていることにより、後述する隆起部11により堰き止められた体液が、スリット232を介して、吸収体23の幅方向に拡散するため、体液の迅速な吸収を担保することができる。
【0025】
スリット232の幅(吸収性物品1の長手方向における寸法)は、10mm以上100mm以下であることが好ましく、20mm以上50mm以下であることがより好ましい。また、スリット232の長さ(吸収性物品1の幅方向における寸法)は、吸収性物品1の幅方向の最小長に対して、30%以上90%以下であることが好ましく、50%以上80%以下であることがより好ましい。スリット232の寸法を上記の範囲内のものとすることにより、着用時に違和感を生じさせることなく、吸収体23における体液の拡散性を向上させることができる。
【0026】
幅方向スリット群231を構成するスリット232の本数は、2本以上4本以下であることが好ましく、2本以上3本以下であることがより好ましいが、後述する隆起部11を形成した場合に、隆起部11の表裏で、スリット232同士を同じ位置に配置することができるよう、偶数本であることが最も好ましい。また、幅方向スリット群231を構成するスリット232の間隔は、等間隔であることが好ましく、例えば、各スリット232の最短距離が、10mm以上100mm以下であることがより好ましく、20mm以上60mm以下であることが更に好ましい。
【0027】
図5は、本発明の吸収性物品1における幅方向スリット群231の設置態様の一例を示す図面である。幅方向スリット群231を構成するスリット232の形状は、直線状のものであってもよいし、曲線状のものであってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。幅方向スリット群231を構成するスリット232の形状が直線状のものである場合、各スリット232は、互いに略平行なものとなるが、スリット232の形状が曲線状のものである場合、各スリット232は、幅方向に延びる軸を中心として、線対称に配置されており、結果として、互いに鏡像の関係性を有するものとなる。
【0028】
(長手方向スリット)
本発明においては、吸収体23が、幅方向両端部近傍に、長手方向に延びる少なくとも2本の長手方向スリット233が形成されており、長手方向スリット233が、幅方向スリット群231に属するスリット232の少なくとも一部と交差していることが好ましい。長手方向スリット233の機能は、特に限定されるものではないが、長手方向スリット233を設けることにより、隆起部11及びスリット232により堰き止められた体液が、長手方向に拡散するため、体液の吸収速度を早め、後モレを効果的に防止することもできる。ここで、長手方向スリット233は、主に、幅方向スリット群231が形成されている、吸収性物品1の一方端部側に延在していることが好ましく、上記一方端部側に偏在していることがより好ましい。
【0029】
長手方向スリット233の幅は、5mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。また、長手方向スリット233の長さは、吸収性物品1の長手方向の最小長に対して、20%以上70%以下であることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。長手方向スリット233の寸法を上記の範囲内のものとすることにより、着用時に違和感を生じさせることなく、吸収体23における体液の拡散性を向上させることができる。なお、本発明においては、後モレ防止のために長手方向スリット233を設けることから、上述した長手方向一方端部側における長手方向スリット233の端部と、吸収体23の端部との距離は、長手方向他方端部側における長手方向スリット233の端部と、吸収体23の端部との距離よりも短いことが好ましい。
【0030】
なお、本発明においては、幅方向スリット群231に属する少なくとも2本のスリット232と、少なくとも2本の長手方向スリット233と、が交差していてもよく、この場合、スリット232及び長手方向スリット233に囲まれる領域が、吸収性物品1の長手方向の一方端部側40%以内の位置(例えば、特に、幅方向スリット群231が着用者の背側にあてがわれる場合、図1において、Y軸の下側40%以内の位置)に形成されていることが好ましい。幅方向スリット群231の長手方向スリット233の位置関係をこのようなものとすることにより、着用者の背側にあてがわれる一方端部側において、後モレが効果的に防止される。
【0031】
[バックシート]
バックシート22は、吸収体23が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0032】
強度及び加工性の点から、バックシート22の坪量は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート22は、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0033】
(粘着剤層)
図7は、本発明の吸収性物品1のバックシート22に形成される粘着剤層221の態様を示す図面である。バックシート22の衣類側表面には、少なくとも、幅方向スリット群231に対応する位置を含む領域に、粘着剤層221が設けられており、必要に応じて、この粘着剤層221に剥離シートがあてがわれていてもよい。粘着剤層221は、幅方向スリット群231に対応する位置を含む領域の全面に均一に設けられていてもよく(例えば、図7(a))、長手方向又は幅方向に延びるストライプとなるように間欠的に設けられていてもよく(例えば、図7(b)及び(c))、幅方向スリット群231に対応する位置を含む領域の長手方向両端部のみに線状に設けられていてもよい。本発明の吸収性物品1を使用するにあたっては、粘着剤層221を内側に向けて、バックシート22の一部を折り曲げて、粘着剤層221の長手方向前後端部を対向させて接着させることにより、後述する隆起部11を形成可能なものとなる。
【0034】
[隆起部]
図2は、本発明の吸収性物品1に隆起部11を形成したときの断面概略図であり、図3は、隆起部11の形成態様を示す、本発明の吸収性物品1のモデル図であり、図4は、本発明の吸収性物品1の作用モデルを示す図面であり、図6は、図1におけるY−Y断面図であり、隆起部11を形成したときの吸収体23のモデル断面図である。本発明の吸収性物品1は、バックシート22上の粘着剤層221の長手方向前後端部を対向させて接着させることにより、幅方向スリット群231を含む領域を隆起部11として形成可能となっている。このように、隆起部11を形成することにより、体液の背側方向への移動が妨げられ、後モレが効果的に防止できることに加え、仮に、着用者が仰向けになって、隆起部11が倒された状況においても、幅方向スリット群231を構成するスリット232が、隆起部11の他の部位よりも厚みが薄くなっているため、このスリット232により体液が堰き止められるとともに、幅方向に拡散し、吸収体23に迅速に吸収される。
【0035】
本発明においては、粘着剤層221の長手方向前後端部を対向させて接着させたときに、形成される隆起部11の厚みが、吸収性物品1の他の部位の厚みの1.8倍以上2.2倍以下の厚みとなることが好ましく、約2倍となることがより好ましい。このため、仮に隆起部11が押し倒された場合には、押し倒された隆起部11を含む部位の厚みは、他の部位の厚みの約3倍となる(図6)。
【0036】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマーとともに積繊して吸収体マットを作製し、吸収体23を形成する工程、(B)トップシート21と立体ギャザーをホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(C)トップシート21、立体ギャザー、及びバックシート22の内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(D)集合ドラムにおいて、吸収体23の上部にトップシート21を、吸収体23の下部にバックシート22を配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(E)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。そして、本発明において吸収性物品1の吸収体23を成形する際には、吸収体23のトップシート21側に、上記のスリット232や長手方向スリット233を形成するとともに、バックシート22の衣類側表面に粘着剤層221を設け、吸収性物品1を一体化すればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 吸収性物品
11 隆起部
21 トップシート
22 バックシート
221 粘着剤層
23 吸収体
231 幅方向スリット群
232 スリット
233 長手方向スリット
Y 長手方向
X 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7