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特開2019-188045空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-188045(P2019-188045A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20191004BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   A61L9/01 F
   A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-87592(P2018-87592)
(22)【出願日】2018年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】509266789
【氏名又は名称】株式会社微酸研
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】土井 豊彦
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180BB11
4C180CB06
4C180DD03
4C180EA58X
4C180HH11
(57)【要約】
【課題】 被処理空気を除臭および殺菌する空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システムを提供すること。
【解決手段】 本空気除臭殺菌方法は、遊離次亜塩素酸を含有する処理水に被処理空気を懸濁する工程と、被処理空気が懸濁された処理水に対し、近紫外線を照射する工程とを含む。本空気除臭殺菌装置または空気除臭殺菌システム50は、遊離次亜塩素酸を含有する処理水が満たされる処理槽30と、被処理空気を処理槽30内に取り入れる取入口1と、処理槽30内の処理水に被処理空気を懸濁させる気泡発生器3と、被処理空気が懸濁された処理水に対し近紫外線を照射する紫外線光源7とを含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気除臭殺菌方法であって、
遊離次亜塩素酸を含有する処理水に被処理空気を懸濁する工程と、
前記被処理空気が懸濁された処理水に対し、近紫外線を照射する工程と
を含む、空気除臭殺菌方法。
【請求項2】
前記遊離次亜塩素酸を含有する処理水は、微酸性次亜塩素酸水であり、前記近紫外線は、波長270nm〜330nmの範囲の紫外線を含む、請求項1に記載の空気除臭殺菌方法。
【請求項3】
前記懸濁する工程は、
前記処理水を処理槽の底部に供給し、前記処理槽内の下部から上部に前記処理水を流動させる工程と、
前記被処理空気を、前記処理槽の底部に設けられた気泡発生器に通して前記処理水中に懸濁し、前記処理水とともに前記処理槽内を上昇させる工程と
を含む、請求項1または2に記載の空気除臭殺菌方法。
【請求項4】
前記空気除臭殺菌方法は、
前記被処理空気が懸濁された処理水を、撹拌混合する流路機構が形成された処理区画を通過させる工程
をさらに含む、請求項3に記載の空気除臭殺菌方法。
【請求項5】
前記撹拌混合する機構が形成された処理区画が、単位構成物が規則的配列に組み合わせられた規則充填物、単位構成物が不規則に組み合わされた不規則充填物、またはこれらの混合として構成されるか、または動力撹拌機構を備える、請求項4に記載の空気除臭殺菌方法。
【請求項6】
前記近紫外線を照射する工程は、前記撹拌混合する機構が形成された処理区画の上側に設けられた紫外線照射区画で、紫外線光源を用いて前記処理水に対する近紫外線の照射を行うことを特徴とする、請求項4または5に記載の空気除臭殺菌方法。
【請求項7】
遊離次亜塩素酸を含有する処理水が満たされる処理槽と、
被処理空気を前記処理槽内に取り入れる取入口と、
前記処理槽内の前記処理水に前記被処理空気を懸濁させる気泡発生器と、
前記被処理空気が懸濁された処理水に対し、近紫外線を照射する紫外線光源と
を含む、空気除臭殺菌装置。
【請求項8】
請求項7に記載の空気除臭殺菌装置と、
前記遊離次亜塩素酸を含有する処理水を生成する処理水の製造装置と
を含む、空気除臭殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気除臭殺菌技術に関し、より詳細には、被処理空気を処理水に懸濁することにより被処理空気を除臭および殺菌する空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人が呼吸している空気中には、化学物質や、細菌、黴、ウイルスなどの微生物など、種々の微量物質が浮遊混在している。それらは、ときに、異臭源となって環境悪化をもたらしたり、微生物の場合は感染源となって人に危害をもたらすこともある。また例え香気であっても常時感じると苦痛の原因となることもある。従来より、多数の人が集まる半閉鎖空間、例えば、学校、病院、工場、遊戯場、劇場などの空気、各種工場排気の臭気および微生物を安全に除去することが可能な技術が求められている。
【0003】
ところで、希塩酸を無隔膜電解槽で電解し水で希釈して得られる、微酸性次亜塩素酸水が知られている。微酸性次亜塩素酸水中に含まれる遊離次亜塩素酸は、高い殺菌効果や除臭効果を有し、食品添加物としての安全性も確認されており、幅広い分野で使用されている。さらに成分として次亜塩素酸を含む次亜塩素酸ナトリウム溶液や、それを酸で中和した物も、含まれる次亜塩素酸によって同様の効果をもたらすことも知られている。
【0004】
また、次亜塩素酸水を用いた除臭および殺菌に関連し、国際公開第2017/047136(特許文献1)および国際公開第2016/189757号(特許文献2)が知られている。特許文献1は、空間内の腐食を抑制しながら、効果的に殺菌・除臭を行う目的で、空間内の空気を吸気する吸気部、吸気した空気を、腐食性物質を含む処理雰囲気で除菌または除臭する処理部、および処理部を通過した空気から腐食性物質を除去する除去部を備える空気処理装置を開示する。そして、処理部では、殺菌液のミストを噴霧する方式、殺菌液に気体をバブリングする方式、もしくは殺菌液を染み込ませたフィルターに気体を通過させる方式を使用することができる点が開示される。特許文献2は、被処理空間にガス状および/または霧状の次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給部を含み、被処理空間中の次亜塩素酸濃度を400ppbないし500ppmにする空間殺菌装置を開示する。
【0005】
これまで、上述した特許文献1の従来技術を含めて様々な空気除臭・殺菌技術について検討がなされてきた。しかしながら、人によってはごくわずかな臭気成分でも感じ取る場合があり、また、除臭・殺菌処理をより安全に実施することも求められる。したがって、依然として、臭気の除去や殺菌をより安全にかつより低コストに行うことが可能な技術の開発が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、人が感じ得る臭いの除去や殺菌を安全にかつ低コストに行い、安全で快適な空間を実現し、かつ、維持することが可能な新規な空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、それらの臭気を安全に除去しかつ殺菌することを目的に鋭意検討を重ねた結果、遊離次亜塩素酸を含有する処理水に被処理空気の気泡を懸濁し、かつ、紫外線を照射することにより、好適に空気を除臭殺菌することが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記特徴を有する空気除臭殺菌方法を提供する。本空気除臭殺菌方法は、遊離次亜塩素酸を含有する処理水に被処理空気を懸濁する工程と、被処理空気が懸濁された処理水に対し、近紫外線を照射する工程とを含む。
【0009】
好適な実施形態では、遊離次亜塩素酸を含有する処理水は、微酸性次亜塩素酸水であり、近紫外線は、波長270nm〜330nmの範囲の紫外線を含む。
【0010】
好適な実施形態では、上記懸濁する工程は、処理水を処理槽の底部に供給し、処理槽内の下部から上部に処理水を流動させる工程と、被処理空気を、処理槽の底部に設けられた気泡発生器に通して処理水中に懸濁し、処理水とともに処理槽内を上昇させる工程とを含むことができる。
【0011】
さらに他の好適な実施形態では、空気除臭殺菌方法は、被処理空気が懸濁された処理水を、撹拌混合する流路機構が形成された処理区画を通過させる工程をさらに含むことができる。
【0012】
また、さらに他の好適な実施形態は、撹拌混合する機構が形成された処理区画が、単位構成物が規則的配列に組み合わせられた規則充填物、単位構成物が不規則に組み合わされた不規則充填物、またはこれらの混合として構成されるか、または、動力撹拌機構を備えることを特徴とする。
【0013】
また、さらに他の好適な実施形態は、上記近紫外線を照射する工程は、撹拌混合する機構が形成された処理区画の上側に設けられた紫外線照射区画で、紫外線光源を用いて処理水に対する近紫外線の照射を行うことを特徴とする。
【0014】
特定の実施形態では、本空気除臭殺菌方法は、紫外線照射区画を通過した後の処理水の少なくとも一部を廃棄する工程と、処理水の残部を新たな遊離次亜塩素酸を含む溶液と混合し、処理槽の底部に再び供給する工程とを含むことができる。
【0015】
特定の実施形態では、近紫外線は、280nm〜310nmの範囲の波長のものを含んでもよい。被処理空気の気泡の平均直径は、10mm以下であってもよい。
【0016】
本発明によれば、さらに、下記特徴を有する空気除臭殺菌装置を提供する。本空気除臭殺菌装置は、遊離次亜塩素酸を含有する処理水が満たされる処理槽と、被処理空気を処理槽内に取り入れる取入口と、処理槽内の前記処理水に被処理空気を懸濁させる気泡発生器と、被処理空気が懸濁された処理水に対し、近紫外線を照射する紫外線光源とを含む。
【0017】
好適な実施形態では、遊離次亜塩素酸を含有する処理水は、微酸性次亜塩素酸水であり、近紫外線は、波長270nm〜330nmの範囲の紫外線を含む。
【0018】
好適な実施形態では、気泡発生器は、処理槽の底部に設けられ、気泡発生器を通過して処理水中に懸濁された被処理空気は、下部から上部に流動する処理水とともに処理槽を上昇するように構成されていてもよい。
【0019】
他の好ましい実施形態では、処理槽内に設けられ、撹拌混合する機構が形成された処理区画をさらに含み、被処理空気が懸濁された処理水が構造物中を通過するよう構成することができる。
【0020】
より好ましい実施形態は、撹拌混合する機構が形成された処理区画が、単位構成物が規則的配列に組み合わせられた規則充填物、単位構成物が不規則に組み合わされた不規則充填物、またはこれらの混合で構成されるか、または動力撹拌機構を備えることを特徴とする。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、紫外線光源は、撹拌混合する機構が形成された処理区画の上側の紫外線照射区画に設けられ、紫外線照射区画で、撹拌混合する機構が形成された処理区画を通過してきた処理水に対し近紫外線の照射を行うことができる。
【0022】
特定の実施形態では、紫外線照射区画を通過した後の処理水の少なくとも一部を廃棄するとともに、処理水の残部を新たな遊離次亜塩素酸を含む溶液と混合し、処理槽の底部に再び供給する流路をさらに含むことができる。
【0023】
特定の実施形態では、近紫外線は、280nm〜310nmの範囲の波長のものを含んでもよい。被処理空気の気泡の平均直径は、10mm以下であってよい。
【0024】
本発明によれば、また、上述した空気除臭殺菌装置と、次亜塩素酸を含有する処理水を生成する処理水の製造装置とを含む空気除臭殺菌システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記構成により、人が感じ得る臭いの除去および殺菌を安全にかつ低コストに行い、安全で快適な空間を実現し、かつ、維持することが可能な新規な空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】空気除臭殺菌システムの実施形態を示す図。
図2】空気除臭殺菌システムを構成する空気処理槽の詳細な実施形態を示す図。
図3】撹拌混合区画に充填物を充填する例示的な実施形態を説明する図。
図4】空気除臭殺菌方法の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明について実施形態をもって説明するが、本発明は、これらの図面に示される特定の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、空気除臭殺菌システム50の実施形態を示す図である。図1に示す空気除臭殺菌システム50は、遊離次亜塩素酸を含有する処理水を貯留する処理水タンク14と、遊離次亜塩素酸を含有する処理水を使って空気の除臭および除菌を行うための空気処理槽30とを含んで構成される。
【0029】
処理水タンク14は、遊離次亜塩素酸を含有する処理水を貯留しており、貯留された処理水は、処理水供給ポンプ16により処理水供給管15を介して空気処理槽30に供給される。空気処理槽30の底部には、処理水供給ポンプ16により遊離次亜塩素酸を含有する処理水が供給される。空気処理槽30の底部には、さらに、空気取入口1から空気取入ブロア2で取り入れられた、除臭および殺菌の対象となる空気(以下、被処理空気と参照する。)が送気されている。空気処理槽30内では、供給された遊離次亜塩素酸を含有する処理水を使用して、送気された被処理空気の除臭および除菌が行われる。
【0030】
遊離次亜塩素酸を含有する処理水として用いることができるものとしては、市販の次亜塩素酸ナトリウム液を水で希釈したもの、該溶液を酸類で中和したもの、塩素ガスを溶解した水、塩素イオンを含む塩類を電気分解して得られるものなど多数挙げることができ、何れも、本実施形態における遊離次亜塩素酸を含有する処理水として使用することができる。それらの中でも、希塩酸のみを電解し希釈して得られる微酸性次亜塩素酸水は、殆どの微生物に対して高い殺菌効果を示す遊離次亜塩素酸を高比率で含有し、蒸発後残渣を残さないため、好適に利用することができる。
【0031】
ここで、微酸性次亜塩素酸水とは、次亜塩素酸水(塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液)の一種であって、塩酸および必要に応じ塩化ナトリウム水溶液を加え適切な濃度に調整した水溶液を無隔膜電解槽内で電解して得られた水溶液をいう。なお、微酸性次亜塩素酸水の有効塩素濃度の範囲は、10〜80mg/Lであり、pHの範囲は、5.0〜6.5とされている。
【0032】
空気処理槽30には、さらに、紫外線光源7が配設されており、紫外線光源7を用いて、殺菌および臭い物質の分解除去、残留塩素の無害化を効果的に行うように構成されている。
【0033】
また、空気処理槽30には排気口11が設けられており、空気処理槽30内で処理された被処理空気は、処理水から分離されて、排気口11から排気される。被処理空気の処理で用いられた使用済み処理水は、排水管9を介して排水される。排水管9には、液体のみが排出されるように空気トラップ10が設けられている。
【0034】
なお、排水先は、図1には示していないが、特に限定されるものではない。特定の実施形態では、使用済みの処理水すべてを下水などに排水するよう構成されていてもよい。好ましい実施形態では、使用済みの処理水の一部が廃棄される一方で、残部が例えば処理水タンク14に再び導入されて、新しく生成された遊離次亜塩素酸を含む溶液に混合され、再び空気処理槽30の底部に供給されるように流路が構成されてもよい。例えば、ヨウ素吸光光度法などの有効塩素濃度計を用いて、回収された使用済み処理水の有効塩素濃度を計測し、計測された有効塩素濃度が所定の範囲内となった場合は、再利用に回し、一方、有効塩素濃度が所定の範囲外となった場合に破棄するように構成することもできる。
【0035】
図1に示す空気除臭殺菌システム50は、さらに、処理水を製造する処理水製造装置17を含み構成することができる。処理水製造装置17は、原料から電気分解により次亜塩素酸を含有する電解液を生成し、生成された電解液を希釈し、所定の次亜塩素酸濃度および所定のpHとして、遊離次亜塩素酸を含有する処理水を、処理水排出管13を介して処理水タンク14に供給する。
【0036】
処理水製造装置17により生成された次亜塩素酸を含む処理水は、一旦、処理水タンク14に貯留される。処理水タンク14には、水位センサ19が設けられており、水位の情報が処理水水位信号線18を介して処理水製造装置17に与えられ、必要時に処理水が使用できるように、水位センサ19によって水位が一定に保たれるように制御されている。
【0037】
以下、図2を参照しながら、空気除臭殺菌システム50を構成する空気処理槽30について、より詳細に説明する。図2は、空気除臭殺菌システム50を構成する空気処理槽30のより詳細な実施形態を示す図である。図2に示す空気処理槽30は、縦長の筒状構造体を鉛直に配置して構成されており、その筒状構造体の内側に、遊離次亜塩素酸を含有する処理水が満たされている。筒状構造体は、特に限定されるものではないが、円形や多角形の横断面を有するように構成することができる。
【0038】
被処理空気および処理水は、筒状構造体の下部に供給され、混和されて上昇し、それぞれ、上部に配設された排気口11および排水口12から排出される。微酸性次亜塩素酸水の供給量および被処理空気の送気量は、特に限定されるものではないが、微酸性次亜塩素酸水の供給量を30ml/min〜120ml/minとした場合に、被処理空気の送気量は、典型的には、0.7L/min〜2.6L/minとすることができる。
【0039】
筒状構造体内には、予備混合区画4、撹拌混合区画5および紫外線照射区画6が設けられる。
【0040】
予備混合区画4には、気泡発生器3が配置され、気泡発生器3により、処理水供給ポンプ16により供給された遊離次亜塩素酸を含む処理水中に、空気取入口1から空気取入ブロア2で取り入れられた被処理空気が微細な気泡として懸濁混合される。被処理空気の気泡の平均直径は、充分な接触面積を確保する観点からは、好ましくは10mm以下とすることができる。気泡発生器3としては、多孔質焼結体を用いた方式、メンブレン式などの種々の散気装置を用いることができる。
【0041】
気泡発生器3を通過して処理水中に懸濁された被処理空気は、処理水供給ポンプ16により同じく空気処理槽30の底部から供給され下部から上部に流動する処理水とともに、空気処理槽30を上昇するように構成される。被処理空気は、微細な気泡となって遊離次亜塩素酸を含んだ処理水中に分散されることで、空気に含まれる臭い物質や微生物を効率よく処理水に接触させながら処理水の中を上昇する。
【0042】
予備混合区画4で混合された被処理空気の気泡および処理水は、それぞれ、図2において白抜きおよび黒の矢印で示すように、空気処理槽30の上下方向の中央付近に設けられた撹拌混合区画5に導入される。撹拌混合区画5は、複雑な形状をした充填物で充填された区画であり、撹拌混合する流路機構が形成されている。
【0043】
図3は、撹拌混合区画5に充填物を充填する例示的な実施形態を説明する図である。図3は、複数の円筒形状の充填物31が不規則に充填された構造を例示する。単位構成物である円筒形状の充填物31は、比表面積が大きく、これらが不規則に充填された構造は、複雑な形状の流路機構を構成する。
【0044】
なお、図3に示す実施形態は、円筒形状の充填物31が単位構成物として不規則に組み合わされた不規則充填物の一例であるが、充填物は、これに限定されるものではなく、充填する態様も特に限定されるものではない。他の実施形態では、単位構成物が規則的配列に組み合わせられた規則充填物であってもよいし、規則充填物と不規則充填物との混合で構成されてもよい。
【0045】
被処理空気の気泡と処理水の混合物が、流体の集合離散を繰り返す複雑な流路が形成された構造物を通過するときに、効率よく撹拌され、気泡と処理水の接触が促進される。その結果、被処理空気に含まれる臭い物質や微生物と処理水との接触が達成され、次亜塩素酸による強い酸化力により、臭い物質は、変性または分解されて臭いが除去され、微生物は、微生物の細胞構造破壊や生命維持機序の阻害や破壊作用によって殺菌される。なお、単位構成物は、図3に示す円筒形状の充填物31に限定されるものではなく、いかなる形状を有する充填物を用いることができる。
【0046】
さらに、撹拌混合区画5には、上記充填物による受動的な撹拌機構に代えて、あるいは、受動的な撹拌機構とともに、図示しない撹拌翼などによる能動的な動力撹拌機構を配置してもよい。
【0047】
再び図2を参照する。撹拌混合区画5の上側(流れの下流)に設けられた紫外線照射区画6には、被処理空気が懸濁された処理水に対し紫外線を照射する紫外線光源7が設けられている。紫外線光源7が放射する紫外線は、近紫外線を含み、好ましくは、270nm〜330nmの範囲の波長のものを含み、より好ましくは、280nm〜310nmの範囲の波長のものを含む。
【0048】
なお、撹拌混合区画5に、上記能動的な撹拌機構を配置した場合は、撹拌混合区画5と紫外線照射区画6の間に、両区画間の処理水等の過剰な混合逆流を防ぐために、所定の粒度の目を有する樹脂ネットなどを配置してもよい。
【0049】
上記構成によると、紫外線照射自体が除臭殺菌する効果を奏するが、本実施形態による空気除臭殺菌システム50では、さらに、紫外線による光化学反応により次亜塩素酸の分解で活性酸素種が発生し、この発生した強力な酸化作用を持つ活性酸素種による殺菌および臭い物質の分解除去が好適に行われる。加えて、紫外線は、除臭殺菌処理中に被洗浄気泡中に移行した塩素種も分解除去する効果もあり、残留塩素の無害化が図られ、有毒な塩素種が被処理空気に混じって排出されることが避けられ、より安全な空気を排出することが可能となるか、あるいは、安全に排出するための追加のコストが削減される。さらに、撹拌混合区画5の上側(流れの下流)で紫外線の照射を行うことで、撹拌混合区画5を通過しても残留している強い臭い物質に対して紫外線を照射による活性酸素種を作用させることで、効率的な分解除去が可能となる。
【0050】
紫外線照射区画6の上側は、何も設けない空間が構成され、その空間の略中央位置に飛沫同伴を防止する水滴分離網8が張られている。処理水から分離された空気は、空気処理槽30の上部に設けられた排気口11から排気される。空気処理槽30内の高さ方向で所定の位置に、排水口12が設けられ、排水口12を介して使用済みの処理水が排水される。好ましくは、排水口12に接続された排水管9には、空気トラップ10が設けられ、液体のみが排出されるように構成される。
【0051】
以下、図4を参照しながら、上述した実施形態による処理水を用いて被処理空気を除臭する方法について説明する。なお、図4に示す空気除臭殺菌方法は、空気除臭殺菌システム50の全体を制御する制御装置により実行される。
【0052】
図4に示す空気除臭殺菌方法は、例えば空気除臭殺菌システム50の起動に応答して、工程S100から開始される。
【0053】
工程S101では、制御装置は、紫外線光源7を点灯する。工程S102では、制御装置は、空気取入ブロア2および処理水供給ポンプ16の作動を開始させ、空気取入口1から被処理空気を、処理水タンク14から処理水を、それぞれ空気処理槽30に供給する。
【0054】
工程S102の空気取入ブロア2および処理水供給ポンプ16の始動に応答して、工程S200から工程S204の各工程が行われる。なお、工程S200〜S204は、処理対象である被処理空気に注目して説明するものである。
【0055】
工程S200では、処理水供給ポンプ16の始動に応じて、遊離次亜塩素酸を含有する処理水が空気処理槽30の底部に供給され、空気処理槽30内の下部から上部へ処理水が流動される。
【0056】
工程S201では、空気取入ブロア2の始動に応答して、被処理空気が、空気処理槽30の底部に設けられた気泡発生器3を通り、処理水中に気泡として懸濁し、処理水とともに空気処理槽30内を上昇する。工程S202では、被処理空気が懸濁された処理水が、充填物31が充填された撹拌混合区画5を通過する。工程S203では、紫外線光源7により、撹拌混合区画5から上がってきた被処理空気が懸濁された処理水に対し紫外線が照射される。
【0057】
工程S204では、処理水から分離した空気を排気口11から排気するとともに、使用済み処理水の一部を排水口12から排水する。好ましい実施形態では、工程S204では、紫外線照射区画6を通過した後の使用済みの処理水の少なくとも一部を廃棄するとともに、使用済み処理水の残部を新たな遊離次亜塩素酸を含む溶液と混合し、空気処理槽30の底部に再び供給することもできる。
【0058】
ここで、上述した工程S102の続きを説明すると、工程S103では、制御装置は、水位センサ19により処理水タンク14の水位をモニタし、読み取られた水位の情報を取得する。工程S104では、制御装置は、水位が下限値を下回るか否かを判定する。工程S104で、水位が下限値を下回ったと判定された場合(YES)は、工程S105へ進められる。工程S105では、制御装置は、処理水製造装置17を作動させて処理水を生成させ、工程S103へ制御が戻される。
【0059】
一方、工程S104で、水位が下限値を下回らないと判定された場合(NO)は、工程S106へ進められる。工程S106では、制御装置は、水位が上限値を上回る否かを判定する。工程S106で、水位が上限値を上回ったと判定された場合(YES)は、工程S107へ進められる。工程S107では、制御装置は、処理水製造装置17を停止させて処理水の生成を止め、工程S103へ制御が戻される。工程S106で、水位が上限値を上回らないと判定された場合(NO)は、工程S103へ制御が戻される。
【0060】
以上説明した実施形態によれば、人が感じ得る臭いの除去および殺菌を安全にかつ低コストに行い、安全で快適な空間を実現し、かつ、維持することが可能な新規な空気除臭殺菌方法、空気除臭殺菌装置および空気除臭殺菌システムを提供することができる。
【0061】
上記構成によれば、臭い物質や微生物を含んだ被処理空気が、まず微細な気泡として、遊離次亜塩素酸を含有する処理水に混和されることによって、空気に含まれている微生物が殺滅され、臭い物質は酸化分解される。さらに、紫外線照射によって処理水中に活性酸素種を発生させることによって、臭い物質をより一層分解するとともに、処理水に含まれる次亜塩素酸を無害の塩素イオンに分解することができる。この場合、処理水をそのまま放流した場合にでも、外部への悪影響を排除できる。さらに、流路中に設けられた撹拌混合区画5により、複雑な流路を形成し、気泡と微酸性電解水の混合分散を反復して行い、加えて気泡と微酸性電解水の接触時間を長くすることによって、その上述した効果を一層増すことができる。
【0062】
これまで、本発明を実施形態をもって説明したが、以下、本発明をより具体的な内容を試験例および実施例によって説明する。
(試験例)
【0063】
上述した実施形態による効果を検証するために、予備試験を行った。遊離次亜塩素酸を含む水として、株式会社微酸研社製HOCL0.36tを使用して調製した微酸性次亜塩素酸水を使用した。使用した微酸性次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、24ppmであり、pHは、6.2であった。臭いの測定には、フィガロ技研社製の臭いセンサTGS2602を組み込んだ臭い測定装置を使用した。当該臭い測定装置は、臭い強度に対応する数値を表示する機能を有しており、臭い強度の相対値を得ることができる。
【0064】
まず、ポリエチレン袋に室内空気を採取し、臭いセンサをポリエチレン袋に入れ測定した(試験例1)。続いて、タバコの煙をポリエチレン袋に噴き込んで、臭いセンサをポリエチレン袋に入れ測定した(試験例2)。引き続き、試験例2のタバコの煙の入った袋に、体積の約20%の微酸性次亜塩素酸水を注入し、口を閉じた後、約1分間激しく振盪し、その後、再びセンサを袋の中に入れて臭い強度を測定した(試験例3)。なお、処理水の有効塩素濃度およびpHは、23ppmおよび6.10であった。上記試験例の結果を表1にまとめる。数値の明確な減少が確認された。
【0065】
【表1】
【0066】
さらに、試験例3について官能試験を実施した。試験例3の処理後の袋内の臭いを直接嗅覚で確認した結果、かすかな焦げ臭様の匂いが感じられた。数値上明確な改善を示した一方で、かすかな焦げ臭様の匂いが感じられたのは、空気と処理液の混合に改善の余地があり、また、紫外線照射をしなかったことにより効果が限定的であったためと推察された。
【実施例】
【0067】
さらに本発明の有効性をより正確に実証するために、図1および図2で示した空気除臭殺菌システム50を次の寸法で製作した。空気処理槽30は、断面が250x70mmの矩形の筒状体とし、全長1200mmの容器を硬質塩化ビニール板で製作した。最下部から高さ100mmまでの部分は、予備混合区画4とし、その上の700mmを撹拌混合区画5とした。撹拌混合区画5には、内径13mmの硬質塩化ビニール管を15mmの長さにカットした充填物を不規則に充填した。その上部の300mmの区画を紫外線照射区画として、紫外線灯(10W、環境テクノス社製)を配設した。
【0068】
更にその上の100mmの区画は、何も設けない空間とし、該区画の高さ方向の中央位置に、飛沫同伴を防止する樹脂製の水滴分離網8を断面全体に張った。さらに、筒状体の上端から100mm下の位置に、処理水用の排水口12を付けた。排水口12に接続した排水管9にはフロートを内蔵した気体チェックバルブ(空気トラップ10)を設置し、液体のみが排出されるようにした。最下部の予備混合区画の底部には、空気取入口1に繋がった気泡発生器3と、処理水の供給口を設置し、ここに、株式会社微酸研社製HOCL0.36tで生成した微酸性次亜塩素酸水を供給した。
【0069】
上記構成の空気処理槽30を用いて、たばこの煙の混じった空気を処理し、脱臭性能を確認した。被処理空気の送気量は、1.3L/min、微酸性次亜塩素酸水の供給量は、60ml/minとし、上述の装置を使い、処理前後の匂いを測定した。処理前および処理後の処理水についても官能試験を実施した。
【0070】
処理前の試料(比較例)は、タバコ煙の強い臭いがあったが、処理後(実施例)は、かすかな塩素臭が感じられたものの、その他の匂いは感じられなかった。僅かながらも塩素臭が残った理由は、処理空気量に対する微酸性電解水量が幾分過剰だったためと推測されるが、この方法の除臭効果が確認された。測定結果を、表2にまとめる。
【0071】
【表2】
【0072】
これまで説明してきた実施形態および実施例から、本発明によれば、遊離次亜塩素酸含有の処理水を用いて、安全かつ効率的に空気の除臭および除菌を行うことができる。また、その用途は家庭用の小規模な空気清浄機から、事業者用の大規模な空気除臭殺菌装置まで、幅広く応用することができる。
【0073】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
1…空気取入口、2…空気取入ブロア、3…気泡発生器、4…予備混合区画、5…撹拌混合区画、6…紫外線照射区画、7…紫外線光源、8…水滴分離網、9…排水管、10…空気トラップ、11…排気口、12…排水口、13…処理水排出管、14…処理水タンク、15…処理水供給管、16…処理水供給ポンプ、17…処理水製造装置、18…処理水水位信号線、19…水位センサ、30…空気処理槽、50…空気除臭殺菌システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】国際公開第2017/047136号
【特許文献2】国際公開第2016/189757号
図1
図2
図3
図4