【解決手段】船尾に配置した一基のプロペラ推進器101と、プロペラ推進器101の後方に配置した左右一対の高揚力舵102、103と、各高揚力舵102、103をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機104、105と、2枚の高揚力舵102、103の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する操舵制御装置200を備える一軸二舵船において、操舵制御装置200は、各ロータリーベーン舵取機104、105に指示舵角を与えるジョイスティック操船部255と、ジョイスティック操船部255においてジョイスティックレバー254の操作により指示する指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせるインジケータランプ277を有する。
船尾に配置した一基の推進プロペラと、推進プロペラの後方に配置した左右一対の高揚力舵と、各高揚力舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機と、2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する操舵制御装置を備える一軸二舵船において、
操舵制御装置は、各ロータリーベーン舵取機に指示舵角を与えるジョイスティック操船部と、ジョイスティック操船部においてジョイスティックレバーの操作により指示する指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる舵角一致通知手段を有することを特徴とする一軸二舵船の操舵制御装置。
操舵制御装置は、各舵の実舵角が船体をその場に静止させるホバリング舵角に達したことを操船者に知らせるホバリング通知手段を有することを特徴とする請求項1に記載の一軸二舵船の操舵制御装置。
操舵制御装置は、舵角遷移表示装置を有し、指示舵角がホバリング指示舵角に近づくと、指示舵角および舵角一致通知手段を舵角遷移表示装置に画像情報として表示することを特徴とする請求項1に記載の一軸二舵船の操舵制御装置。
操舵制御装置は、各舵の実舵角がホバリング舵角に近づくと、実舵角およびホバリング通知手段を舵角遷移表示装置に画像情報として表示することを特徴とする請求項3に記載の一軸二舵船の操舵制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の操縦装置としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、一基の推進プロペラの後方に一対の舵を推進プロペラ軸心に対して対称の位置に設けた二枚舵システム、あるいは、二基の推進プロペラの後方にそれぞれ一枚の舵を設けた二枚舵システムを有する船舶の操舵制御装置である。
【0003】
この操舵制御装置は、操舵命令系統がオートパイロット装置とジョイスティック・パネルとから構成され、オートパイロット装置は針路設定装置とジャイロコンパスとからなり、ジョイスティック・パネルはテールインボード設定装置とジョイスティックレバーと舵角設定装置と緊急停止押釦とからなり、制御装置系統が自動演算装置とテールインボード対応操舵量調整器とジョイスティック・ユニットと舵角設定器と緊急停止制御ユニットとから構成される。
【0004】
そして、自動操舵モードによる航行時は、設定針路復帰のための当て舵において、テールインボードとなっている二枚の舵を、テールインボード対応操舵量調整器により、それぞれ別々の転舵パターンで転舵させるようにしている。さらに、操縦モードによる出入港又は狭水路航行時は、自動演算装置とジョイスティック・ユニットと緊急停止制御ユニットとにより、二枚の舵のそれぞれの舵角の組合せによる船の複数の操縦パターンと緊急停止とができるようにしたものである。
【0005】
また、特許文献2には、一軸二舵船の舵角指示器が開示されている。これは、左右一対の舵と、各舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機を備えた一軸二舵船の舵角指示器であり、単一の表示盤面内に、各舵の舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針と、各指針の周囲に配置されて、外舷側にロータリーベーン舵取機の外舷側の転舵限度舵角を表示し、内舷側にロータリーベーン舵取機の内舷側の転舵限度舵角を表示する左右一対の舵角目盛を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1では、ディスプレイ装置に、ジョイスティックレバーで指示する指示旋回方向と指示推力の大きさを示す指示値がベクトル表示される。ジョイスティックレバーによる指示値が船体のその場静止(ホバー)位置を原点とする指示ベクトル値として表示されるとともに、実行旋回方向と実行推力の大きさを示す実行値が船体のその場静止(ホバー)位置を原点とする実行ベクトル値として表示される。
【0008】
このジョイスティックレバーによる操船においては、その場静止の操船が最も確実性が求められる。他の運動方向への操船は一定の誤差が存在しても許容可能である。しかし、その場静止の操船においては、船体が動けばその場静止ではなくなる。このため、ジョイスティックレバーを正確に操作する必要がある。
【0009】
しかし、ジョイスティックレバーがその場静止の位置に正確に保持されているか、否かを知る術はなかったので、操船者の熟練に依拠するところが大きく、ジョイスティックレバーによる操船に不慣れなもの、例えばレジャーボート等の操船者によるその場静止の正確な操船には困難性があった。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するものであり、操船に不慣れな者でも迅速に、かつ正確にその場静止を操船することができる一軸二舵船の操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明の一軸二舵船の操舵制御装置は、船尾に配置した一基の推進プロペラと、推進プロペラの後方に配置した左右一対の高揚力舵と、各高揚力舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機と、2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する操舵制御装置を備える一軸二舵船において、操舵制御装置は、各ロータリーベーン舵取機に指示舵角を与えるジョイスティック操船部と、ジョイスティック操船部においてジョイスティックレバーの操作により指示する指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる舵角一致通知手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一軸二舵船の操舵制御装置において、操舵制御装置は、各舵の実舵角が船体をその場に静止させるホバリング舵角に達したことを操船者に知らせるホバリング通知手段を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の一軸二舵船の操舵制御装置において、操舵制御装置は、舵角遷移表示装置を有し、指示舵角がホバリング指示舵角に近づくと、指示舵角および舵角一致通知手段を舵角遷移表示装置に画像情報として表示することを特徴とする。
【0014】
本発明の一軸二舵船の操舵制御装置において、操舵制御装置は、各舵の実舵角がホバリング舵角に近づくと、実舵角およびホバリング通知手段を舵角遷移表示装置に画像情報として表示することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成により、操船者はジョイスティックレバーの操作において舵角一致通知手段の通知を受けることで自身が指示する指示舵角を正確にホバリング指示舵角に一致させることができる。よって、操船に不慣れな者でも迅速に、かつ正確にその場静止を操船することができる。また、操船者は、ホバリング通知手段が通知するまでは各舵の実舵角がホバリング舵角に達していないこと、およびホバリング通知手段の通知を受けることで各舵の実舵角がホバリング舵角に達した事実とその時を正確に知ることができ、不慣れな操船者の操船の安全性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る一軸二舵船の操舵制御装置は、船舶の大きさに拘わらず適用可能であるが、特にレジャーボート等のような小型船舶において操船に不慣れなものが操船する場合に有用である。
(実施の形態1)
本実施の形態における二枚舵操舵システムは、
図1から
図7に示すように、推力システム100と推力システム100を制御する操船システム(操舵制御装置)200からなる。
【0018】
推力システム100は、船体110の船尾に配置した1基1軸のプロペラからなるプロペラ推進器101と、プロペラの後方に配置した2枚の高揚力舵102、103を配したものである。
【0019】
各高揚力舵102、103は、それぞれ、アウトボード(外舷側)へ105°、インボード(内舷側)へ35゜転舵可能に構成されている。そして、1基1軸の推進器(プロペラ)をプロペラ前進回転のままで、1対2枚の高揚力舵102、103をそれぞれ独立して種々の角度に作動させ、両舷の高揚力舵102、103を舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に分配し、それぞれの方向の推力を自在に変えることができる。従って、それぞれの方向の推力の合成推力を自在に変えることができ、プロペラ後流を制御して船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御することで、船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等の操船を行わせ、船の運動を自由に制御することができる。
【0020】
さらに、推力システム100は、高揚力舵102、103を駆動するロータリーベーン舵取機104、105と、ロータリーベーン舵取機104、105を制御する舵制御装置(サーボアンプ)106、107と、船体110の船首側に配置した船首スラスター108および船首スラスター108を制御するスラスター制御装置109を有している。
【0021】
また、ロータリーベーン舵取機104、105のそれぞれには、ポンプユニット151、152と舵角発信器153、154とフィードバックユニット155、156が接続しており、フィードバックユニット155、156が舵制御装置106、107に接続している。
【0022】
操船システム(操舵制御装置)200は、操船スタンド250に格納されており、ジャイロコンパス251のジャイロ方位を表示するジャイロ方位表示部252と、GPSコンパスを用いたオートパイロットによる操縦モードで操船するオート操船部253と、ジョイスティックレバー254による操縦モードで操船するジョイスティック操船部255と、手動操舵輪256による操縦モードで操船する手動操船部257と、ノンフォローアップ操舵レバー258による操縦モードで操船するノンフォローアップ操船部259と、モード切替スイッチ260により各操船部の切替を行うモード切替部261と、画面にタッチパネルを配したディスプレイ装置262と、ディスプレイ装置262に映す画像を制御する画像制御部263と、緊急停船押釦264を操作することにより全ての操縦モードに優先して船舶を緊急に停船させる操縦モードで操船する緊急停船部265と、各高揚力舵102、103の現在舵角を表示する舵角指示装置270を制御する舵角指示部271をスタンド筺体300に一体的に備えている。本実施の形態では、舵角指示装置270が舵角遷移表示装置を兼ねており、詳細は後述する。
【0023】
画像制御部263は、ジャイロ方位を映すジャイロ方位表示画像267と、ジャイロ方位表示部252をモニター画面上でタッチ操作するための方位表示部操作画像268と、オート操船部253をモニター画面上でタッチ操作するためのオート操船操作画像269を選択的に表示し、あるいは同時に表示する。
【0024】
ジョイスティック操作部255は、ジョイスティックレバー254がX−Y方向の何れの方向へも操作可能に構成されており、ジョイスティックレバー254の傾倒方向で船体の指令運動方向を制御し、傾倒方向における傾倒角度で船首尾方向指令速度および船体横方向指令速度を制御するものである。
【0025】
ジョイスティック操船部255は、両舷の高揚力舵102、103の舵角をそれぞれジョイスティックレバー254の傾倒方向に応じて設定した舵角に制御し、かつ両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せることで、プロペラ後流の推力を目的方向に向けて変向し、双方のロータリーベーン舵取機104、105により両舷の高揚力舵102、103のそれぞれの舵角を外舷側へ105°、内舷側へ35°の範囲で制御する。詳細は後述する。
【0026】
オート操船部253は、GPSコンパス、電子海図システムにより自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて自船を予め定めた設定針路に誘導制御するものである。
【0027】
緊急停船部265は、緊急時に緊急停止押釦264を押すと、ジョイスティックレバー254でいかなる操船状態を指示していようとも、あるいは他の操縦モードで操船していても、現在の操船に係る舵角をキャンセルして、左舷舵103を取舵方向(上から見て時計回りの方向)に、右舷舵102を面舵方向(上から見て反時計回りの方向)に、それぞれハードオーバー(舵いっぱい)まで転舵させ、船に制動力を与えて停止させる。
【0028】
手動操船部257は、手動操舵輪256の回転操作により二枚の高揚力舵102、103の舵角を制御して操船するものである。
【0029】
ノンフォローアップ操船部259は、ノンフォローアップ操舵レバー258を左右に操作している時間に応じて右舷もしくは左舷に舵を切る。
【0030】
高揚力舵102、103の基本的な舵角の組合せ、およびジョイスティックレバー254の状態と、その呼称及びプロペラ後流線と運動方向を、
図7において説明する。
【0031】
図7中で、舵は水平断面で示してあり、その横あるいは下方に各々の舵の舵角を示している。舵角は右に取るのが正(+)、左に取るのが負(−)として表示し、これらの舵角の組み合わせに対する呼称を掲げている。プロペラ後流は、細い矢印線で、又、それによる船の推進方向を太い中抜き矢印線で画いている。
【0032】
ちなみに、「TURN TO PORT」(前進左旋回)は左舷舵−35°、右舷舵−25°であり、「ROTATE TO PORT」(船首左回頭)は左舷舵−70°、右舷舵−25°であり、「STERN TO PORT」(船尾左旋回)は左舷舵−105°、右舷舵+45°から+75°であり、「ASTERN TO PORT」(後進左旋回)は左舷舵−105°、右舷舵+75°から+105°であり、「AHEAD」(前進)は左舷舵0°、右舷舵0°であり、「HOVERING」(その場停止)は左舷舵−75°、右舷舵+75°であり、「ASTERN」(後進)は左舷舵−105°、右舷舵+105°であり、「TURN TO STARD」(前進右旋回)は左舷舵+25°、右舷舵+35°であり、「ROTATE TO STARD」(船首右回頭)は左舷舵+25°、右舷舵+70°であり、「STERN TO STARD」(船尾右旋回)は左舷舵−45°から−75°、右舷舵+105°であり、「ASTERN TO STARD」(後進右旋回)は左舷舵−75°から−105°、右舷舵+105°である。
【0033】
図3に示すように、舵角指示装置270は、単一の表示盤面272の領域内に、各高揚力舵102、103の実舵角をそれぞれ指し示す左右一対の二つの指針273、274と、各指針の周囲に配置されて、外舷側にロータリーベーン舵取機104、105の外舷側の転舵限度舵角を表示し、内舷側にロータリーベーン舵取機104、105の内舷側の転舵限度舵角を表示する左右一対の舵角目盛275、276を備えている。
【0034】
さらに、舵角指示装置270は、舵角一致通知手段とホバリング通知手段を兼ねるインジケータランプ277を備えている。
【0035】
舵角指示部271は、ジョイスティック操船部255においてジョイスティックレバー254の操作により指示する指示舵角がホバリング指示舵角に一致したときに、舵角指示装置270のインジケータランプ277を、例えばオレンジ色に点灯させて、指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる。
【0036】
また、舵角指示部271は、高揚力舵102、103が指示舵角に向けて転舵し、各高揚力舵102、103の実舵角が船体110をその場に静止させるホバリング舵角に達したときに、インジケータランプ277を、例えばグリーン色に点灯させて、実舵角がホバリング舵角に達したことを操船者に知らせる。
【0037】
本実施の形態では、舵角一致通知手段とホバリング通知手段としてインジケータランプ277を採用するが、舵角一致通知手段とホバリング通知手段はインジケータランプ277に限るものではない。
【0038】
例えば、舵角一致通知手段とホバリング通知手段として、舵角目盛275、276にレベルインジケータを併設し、レベルインジケータで指示舵角を表示するとともに、インジケータランプ277と同様の点灯により操船者に通知することも可能である。
【0039】
また、舵角一致通知手段とホバリング通知手段として、異なる通知音を発する音源を備えた警報装置を採用することも可能である。
【0040】
さらに、舵角一致通知手段とホバリング通知手段として、電気信号や無線信号を発信する信号発信装置を採用することも可能であり、信号発信装置が発する信号を受けて作動する機器を配置することも可能である。
【0041】
以下、上記構成における作用を説明する。
1.ジョイスティックによる操縦モード
モード切替スイッチ260を操作してジョイスティックによる操縦モードを選択する。ジョイスティック操船部255は、ジョイスティックレバー254によって船体の指令運動方向、船首尾方向指令推力、船体横方向指令推力を指令する。
【0042】
この操船においては、プロペラ推進器101をプロペラ前進回転のままで、それぞれの高揚力舵102、103をそれぞれ独立に種々の角度に作動させてプロペラ後流を制御し、船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御する。この制御によって船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等を行わせることにより操船における機動性を向上させることができる。
【0043】
すなわち、両舷の舵の舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に向けてその方向に推力を変えることができる。ここに挙げた舵角の組み合わせは一例であり、目的とする推進方向及び推力を得るように、舵角の組み合わせを任意に変えることができる。
【0044】
このように、操船においては推進器推力の反転(プロペラ逆転)が不要であり、主機関は常に前進回転のままであらゆる操船制御が行え、主機関の回転数を加減せずとも、両舵の舵角を加減して、そのときのプロペラ回転数に対応した前進最大速度から後進最大速度まで無段階にきめ細かく船速を制御することができる。
【0045】
そして、本実施の形態の操船システム(操舵制御装置)200は、「HOVERING」(その場停止)、つまり左舷舵−75°、右舷舵+75°の操船において、その特徴を発揮する。
【0046】
すなわち、操船システム(操舵制御装置)200は、ジョイスティック操船部255により各ロータリーベーン舵取機104、105に指示舵角としてホバリング指示舵角、つまり左舷舵−75°、右舷舵+75°を指示する際に、ジョイスティックレバー254の操作中にその指示舵角がホバリング指示舵角に一致した時点で、舵角指示部271が舵角指示装置270のインジケータランプ277をオレンジ色に点灯させて、指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる。
【0047】
さらに、ホバリング指示舵角を受けて高揚力舵102、103が指示舵角に向けて転舵し、各高揚力舵102、103の実舵角が船体110をその場に静止させるホバリング舵角に達すると、舵角指示部271は、インジケータランプ277をグリーン色に点灯させて、実舵角がホバリング舵角に達したことを操船者に知らせる。
【0048】
したがって、操船者はジョイスティックレバー254の操作においてインジケータランプ277の通知を受けることで自身が指示する指示舵角を正確にホバリング指示舵角に一致させることができる。よって、操船に不慣れな者でも迅速に、かつ正確にその場静止を操船することができる。
【0049】
また、操船者は、インジケータランプ277が通知するまでは各高揚力舵102、103の実舵角がホバリング舵角に達していないこと、およびインジケータランプ277の通知を受けることで各高揚力舵102、103の実舵角がホバリング舵角に達した事実とその時を正確に知ることができ、不慣れな操船者の操船の安全性が向上する。
2.緊急停船部による操縦モード
緊急停船押釦264を押すことの一挙動で、緊急停船部265を起動し、全ての操縦モードに優先して船舶を緊急に停船させることができる。すなわち、ジョイスティックレバー254の操舵モードにかかわらず、あるいは他の操縦モードにかかわらず、緊急停船部265によってクラッシュアスターンモード(左舷舵は左般105°、右舷舵は右舷105゜に舵を取る)に切換えて、両舵により非常に大きな制動力と後進力を発生させるので、プロペラ逆転による操船よりもはるかに短い時間、短い距離で船体を停止させることができる。
【0050】
また、クラッシュアスターンにおいても、主機関を止めて後進再始動をする必要がないため、操船中にいわゆる無制御状態となることがないので、航行における事態ヘのすばやい対応が可能である。
【0051】
尚、緊急停船部265による操船中に、船の特性、外乱等により旋回を起した場合や、または必要によって船首方位を含めて進行力向を変えたい場合には、そのままジョイスティツクレバー254を操作すれば通常のジョイスティック操作と同様に、ジョイスティックレバー254によって自在に操船して避行航行することができる。
3.オートパイロットによる操縦モード
通常航行操船では、モード切替スイッチ260を操作してオートパイロットによる操縦モードを選択する。
【0052】
ディスプレイ装置262のモニター画面上にオート操船操作画像269を表示し、モニター画面上のタッチ操作によりオート操船部253に自船の位置、進みたい方位、到達したい位置ないし船首尾線方位を入力し、設定した針路で船を自動誘導操船する。オート操船部253は、自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて適宜に舵角を制御する。
4.手動による操縦モード
モード切替スイッチ260を操作して手動操舵輪256による操縦モードを選択する。この操縦モードでは、手動操舵輪256の回転操作により二枚の高揚力舵102、103の舵角を手動操船部257に指示し、二枚の高揚力舵102、103の舵角を制御して操船する。
5.ノンフォローアップの操縦モード
モード切替スイッチ260を操作してノンフォローアップ操縦レバー258による操縦モードを選択する。この操縦モードでは、ノンフォローアップ操船部259により、ノンフォローアップ操舵レバー258を左右に操作している時間に応じて右舷もしくは左舷に舵を切る。
(実施の形態2)
実施の形態1では、舵角一致通知手段およびホバリング通知手段としてインジケータランプ277を例示したが、本実施の形態2では、操船システム(操舵制御装置)200のディスプレイ装置262を舵角遷移表示装置として活用する構成を説明する。
【0053】
すなわち、操船システム(操舵制御装置)200は、ジョイスティック操船部255により各ロータリーベーン舵取機104、105に指示舵角としてホバリング指示舵角、つまり左舷舵−75°、右舷舵+75°を指示する際に、ジョイスティックレバー254の操作中に、指示舵角がホバリング指示舵角に近づくと、指示舵角、実舵角、舵角一致通知手段およびホバリング通知手段を舵角遷移表示装置であるディスプレイ装置262に画像情報として表示する。
【0054】
この画像情報を
図8に示す。ここでは、ディスプレイ装置262に、ジョイスティックレバー254で指示する指示旋回方向と指示推力の大きさを示す指示値が画像情報としてベクトル表示される。
【0055】
ジョイスティックレバー254による指示舵角の値が船体110のその場静止(ホバー)位置を原点とする指示ベクトル値(指示舵角に相当)V1として表示されるとともに、実行旋回方向と実行推力の大きさを示す実行値が船体のその場静止(ホバー)位置を原点とする実行ベクトル値(実舵角に相当)V2として表示される。
【0056】
そして、指示ベクトル値V1がホバリング指示舵角、すなわち原点(その場静止位置)に一致した時点で、舵角指示部271が舵角一致通知手段およびホバリング通知手段を兼ねるランプ画像P1を、例えばオレンジ色に変色させて、指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる。
【0057】
さらに、ホバリング指示舵角を受けて高揚力舵102、103が指示舵角に向けて転舵し、各高揚力舵102、103の実舵角が船体110をその場に静止させるホバリング舵角に達すると、舵角指示部271は、ランプ画像P1を、例えばグリーン色に変色させて、実舵角がホバリング舵角に達したことを操船者に知らせる。
【0058】
また、ランプ画像P1を変色させる作用に替えて、ディスプレイ装置262の画面全体を変色させることも可能である。
(実施の形態3)
舵角遷移表示装置をなすディスプレイ装置262に表示する画像情報は、
図9に示すように舵角を数値で表示することも可能である。
【0059】
すなわち、操船システム(操舵制御装置)200は、ジョイスティック操船部255により各ロータリーベーン舵取機104、105に指示舵角としてホバリング指示舵角、つまり左舷舵−75°、右舷舵+75°を指示する際に、ジョイスティックレバー254の操作中に、指示舵角がホバリング指示舵角に近づくと、指示舵角、実舵角および舵角一致通知手段を舵角遷移表示装置であるディスプレイ装置262に画像情報として表示する。
【0060】
ここでは、
図9に示すように、ディスプレイ装置262に、ジョイスティックレバー254で指示する指示舵角および高揚力舵102、103の実舵角を数値で表示する。
【0061】
そして、指示舵角の値がホバリング指示舵角に一致した時点で、舵角指示部271が舵角一致通知手段の画像情報をなすランプ画像P2を、例えばオレンジ色に変色させて、指示舵角がホバリング指示舵角に一致したことを操船者に知らせる。
【0062】
さらに、ホバリング指示舵角を受けて高揚力舵102、103が指示舵角に向けて転舵し、各高揚力舵102、103の実舵角が船体110をその場に静止させるホバリング舵角に達すると、舵角指示部271は、ホバリング通知手段の画像情報をなすランプ画像P3を、例えばグリーン色に変色させて、実舵角がホバリング舵角に達したことを操船者に知らせる。