【実施例】
【0010】
図1に示すように、実施例に係るダクト10は、空気が流通する空気流通路12が内側に設けられた筒状であり、空気入口10aから空気出口10bに向かう空気流通路12が三次元的に曲がるように形成されている。なお、実施例のダクト10は、空気入口10aと空気出口10bとが同様の向きになるように湾曲した形状である。ダクト10は、互いの端縁を突き合わせて爪嵌合構造によって組み付けられる第1分体14および第2分体16に囲われて、空気流通路12の少なくとも一部が画成されている。実施例では、ダクト10における空気出口10b側の一部が、第1分体14の筒状部分で構成されている一方で、その他の大部分が、溝形樋状の2つの分体14,16を組み合わせて筒状に構成されている。各分体14,16は、ポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HDPE)などのソリッド樹脂(ソリッドの合成樹脂)を材質とし、インジェクション成形等によって得られる成形品である。ダクト10は、空気流通路12の空気流通方向に沿って分けた2つの分体14,16で構成されているので、各分体14,16の端縁の延在方向が空気流通方向に沿っている。そこで、以下の説明では、分体14,16における端縁の延在方向を、空気流通方向と指称する場合がある。
【0011】
図1に示すように、第1分体14は、空気出口10b側の一部分が筒状に形成され、下方に開放する断面円弧状の溝形樋状に形成されたその他の部分により、第2分体16と組み合わせた際にダクト10の上側半分を構成する。第2分体16は、上方に開放する断面円弧状の溝形樋状に形成され、第1分体14と組み合わせた際にダクト10の下側半分を構成する。第1分体14は、溝形樋状部分の端縁が、空気流通路12をなす流路壁14aから外方へ張り出した後に下方へ延出するように形成され、端縁における延出部18が流路壁14aよりも下方へ延出している(
図3(b)および
図5(b)参照)。第2分体16の端縁は、空気流通路12をなす内壁16aと、該内壁16aの外側に対向配置された外壁20と、内壁16aおよび外壁20の下端を繋ぐ底部22とにより、上方に開放する溝形状に形成されている(
図3(b)および
図5(b)参照)。
図3に示すように、ダクト10は、第1分体14の端縁の延出部18を、第2分体16の端縁の溝形状に嵌め合わせると共に、第1分体14の流路壁14aの下端と第2分体16の内壁16aの上端とを突き合わせて、第1分体14と第2分体16とが爪嵌合構造によって連結されている。
【0012】
次に、第1分体14と第2分体16とを連結する爪嵌合構造について具体的に説明する。
図1に示すように、第1分体14の端縁には、空気流通方向に互いに離して複数の係止部24が、第2分体16側へ突出するように設けられている。
図2および
図4に示すように、係止部24は、空気流通方向(第1分体14の端縁の延在方向)に並べて設けられた複数の係止爪26(実施例では2つ)を有している。複数の係止爪26は、第1分体14の端縁において、延出部18よりも下方(第2分体16側)へ突出するように形成されている。実施例の係止部24は、2つの係止爪26,26を有する2股形状であり、2つの係止爪26,26が、係止部24の中央を該係止爪26(係止部24)の突出方向に沿うように通る仮想線を挟んで対称な形状になっている。また、係止部24は、隣り合う係止爪26,26が互いに近づくように弾性変形可能に構成することが好ましく、実施例では、係止部24において2股形状に構成された係止爪26,26が、互いに近づくように弾性変形し得るようになっている。
図3および
図5に示すように、係止爪26の先端部には、該係止爪26の突出方向と交差する外向きへ張り出した係止突起26aが設けられている。各係止爪26は、空気流通方向(第1分体14の端縁の延在方向)に弾性変形可能であることに加えて、ダクト10の内外方向へ弾性変形可能に構成されている。係止爪26は、相手の係止爪26との反対面が該係止爪26の突出方向に対して傾いた先細り形状である。
【0013】
第2分体16の端縁には、空気流通方向に互いに離して複数の係止受部28が設けられており、ダクト10において係止受部28と係止部24とが対応している。係止受部28は、係止部24における複数の係止爪26を受け入れ可能に設けられ、第1分体14の端縁と第2分体16の端縁とを突き合わせた際に、自身に引っ掛かる係止爪26を抜け止めするよう構成されている。
図3および
図5に示すように、実施例の係止受部28は、第2分体16において溝形状に形成された端縁において、外壁20と内壁16aとを繋ぐ底部22を貫通するように形成されている。係止受部28は、空気流通方向の開口寸法が、係止部24における両係止爪26,26の空気流通方向の寸法と同一または若干小さく設定することが好ましく、係止受部28の空気流通方向に対向する開口縁が受け入れた係止爪26と当たるまたは干渉する構成がよい。爪嵌合構造は、係止受部28に挿入した係止爪26の係止突起26aが、係止受部28における外壁20側の開口縁下面に引っ掛かることで、第1分体14と第2分体16とが相対的に離れる方向の移動を規制して、第1分体14と第2分体16との組み付け状態を保持する。
【0014】
ダクト10は、爪嵌合構造により組み付けられた第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置関係を規定する位置決め構造を、係止部24および係止受部28に対応して備えている。位置決め構造としては、第1分体14における係止部24の根元部分に設けられた位置決め部30と、第2分体16の端縁における係止受部28に対応する位置に設けられた規制部32とを有している。位置決め構造は、係止爪26が係止受部28に受け入れられるように第1分体14と第2分体16とが組み合わさった際に、位置決め部30が規制部32に受け入れ可能な関係にある。また、係止爪26と係止受部28とが引っ掛かった際に、第1分体14と第2分体16との空気流通方向に向けた相対的な移動を規制するように、規制部32が位置決め部30の移動を規制可能な関係で構成されている。
【0015】
図2および
図4に示すように、位置決め部30は、係止部24の根元部分において、隣り合う2つの係止爪26,26の間に配置されており、実施例では、2つの係止爪26,26の中間に位置して、係止部24における空気流通方向中央に設けられている。
図3および
図5に示すように、位置決め部30は、第1分体14の外面から突出する突起状に形成され、係止部24から係止爪26の係止突起26aと同じ向きに張り出している。位置決め部30は、係止爪26(係止部24)の突出方向に沿って該係止爪26の先端に向かうにつれて先細り形状になるように、係止爪26の突出方向に対して傾いた案内面30aを有している。実施例の位置決め部30は、係止部24の中央を係止爪26の突出方向へ通る仮想線を挟んで対称な傾きの案内面30a,30aを有する三角形状である。
【0016】
図2および
図4に示すように、規制部32は、第2分体16の端縁において第1分体14側に開く凹状に形成されている。より具体的には、規制部32は、第2分体16の端縁において溝形状をなす外壁20の上縁に、上方へ開く凹状に形成されている。規制部32は、係止爪26が係止受部28に受け入れられるように第2分体16と組み合わさった第1分体14の位置決め部30を受け入れ可能になっている。また、規制部32は、係止爪26と係止受部28とが引っ掛かった際に、空気流通方向に向けた位置決め部30の移動を規制するように構成されている。規制部32は、外壁20において係止受部28の空気流通方向中央に対応する位置に配置されており、位置決め部30の空気流通方向の寸法と同じまたはわずかに大きく形成されている。また、規制部32は、位置決め部30の外形に合わせて形成されており、外形が頂角を下方へ向けた三角形状である位置決め部30に合わせて、頂角を下方に向けた三角形状の凹状に形成されている。
【0017】
図3(a)および
図5(a)に示すように、第2分体16には、内壁16aに連なる外面から突出する抜止部34が、係止受部28を通って突出する係止爪26の先端部に対応する位置に設けられている。抜止部34は、外壁20から離れるように円弧状に湾曲する第2分体16の外面から突出して、係止受部28に挿入した係止爪26の先端部に相対するように配置されている。抜止部34は、上部が上から下へ向かうにつれて第2分体16の外面から次第に突出する傾斜面となっており、係止爪26の先端部に相対する面が該先端部と並行して上下に延在している。係止爪26の先端部と抜止部34との間隔は、係止爪26の係止突起26aと係止受部28の開口縁との引っ掛かり代(実施例では係止突起26aの突出寸法分)よりも小さくなるように設定されている。抜止部34は、係止爪26が内側へ変形した際に当たって、係止突起26aが係止受部28の開口縁から外れないように構成してある。
【0018】
前述したダクト10における第1分体14と第2分体16との組み付けについて、
図6を参照して説明する。第1分体14と第2分体16とを相対的に近づけて、係止部24の両係止爪26,26を係止受部28に挿入する(
図6(a)参照)。この際、仮に係止部24と係止受部28とがずれている場合、係止爪26が係止受部28の開口縁に当たるが、係止爪26が係止部24において組をなす相手の係止爪26側へ変形可能であるので、係止受部28の開口縁に当たった係止爪26が変形して逃げる(
図6(b)参照)。これにより、係止部24と係止受部28とがずれている場合であっても、係止受部28への両係止爪26,26の挿入が、挿入荷重の増加を抑えつつ許容される。また、係止爪26が係止受部28の開口縁に弾力的に当たることで、係止部24と係止受部28との位置ずれが補正される。そして、仮に係止部24と係止受部28とがずれている場合、位置決め部30の案内面30aが規制部32の開口縁に当たり、係止爪26の係止受部28への挿入につれて案内面30aの傾斜に案内されて、係止部24と係止受部28との位置ずれが補正される(
図6(c)参照)。係止爪26の係止突起26aが係止受部28を通って係止受部28の開口縁にかかると、位置決め部30が規制部32に嵌まって、係止部24(第1分体14)と係止受部28(第2分体16)とが空気流通方向において適正な位置関係で配置される(
図6(d)参照)。
【0019】
前述したダクト10は、係止爪26と係止受部28とがかかった組み付け状態において、第1分体14の位置決め部30が第2分体16の規制部32に嵌まり、位置決め部30と規制部32との嵌め合いにより、第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置を精度よく合わせることができる。また、位置決め部30と規制部32との嵌め合いにより、第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置ずれが規制されるので、第1分体14と第2分体16との空気流通方向のガタツキを防止することができる。このように、位置決め部30と規制部32との位置決め構造によって、第1分体14および第2分体16との位置決めができるので、係止受部28の空気流通方向の開口寸法を、係止部24における2つの係止爪26,26の空気流通方向寸法より大きく設定することも可能になる。これにより、係止部24と係止受部28とのずれ等を吸収し得ると共に、係止部24を係止受部28に対して無理なく嵌め合わせることができる。
【0020】
このように、ダクト10は、2つの分体14,16が爪嵌合によってガタツキが防止された安定した状態で精度よく組み付けられている。従って、ダクト10は、第1分体14と第2分体16とのガタツキに起因する異音や通気に伴うビビリ音等の発生を防止することができる。また、ダクト10は、第1分体14と第2分体16とが空気流通方向へ相対的にずれ難いように強固に組み付いているので、ねじれ等に対して強くなり、全体として剛性が増すので、補強を減らすことができる。
【0021】
ダクト10は、係止部24における複数の係止爪26が互いに近づくように変形可能にすることで、係止部24と係止受部28とがずれている場合や、係止受部28の空気流通方向の開口寸法が両係止爪26,26の空気流通方向の寸法に対して余裕がない場合であっても、係止爪26の変形によって係止爪26を係止受部28に挿入することができる。これにより、両係止爪26,26の空気流通方向の寸法に対して係止受部28の空気流通方向の開口寸法を大きく設定することに伴う隙を小さくすることができる。また、両係止爪26,26の空気流通方向の寸法に対して係止受部28の空気流通方向の開口寸法を同じまたは若干小さく設定して、係止受部28に挿入した係止爪26と係止受部28との間に隙ができないようにすることも可能となる。このように、前述した爪嵌合構造によれば、係止受部28に挿入した係止爪26と係止受部28との間に隙を小さくまたは無くすことができるので、係止受部28に挿入した係止爪26と係止受部28との間に隙により生じる第1分体14と第2分体16との空気流通方向のガタツキを防止することができる。更に、係止爪26が空気流通方向へ変形することで、係止受部28に対する係止爪26の挿入荷重の増加を抑えることができ、係止爪26の係止突起26aが係止受部28にかからない爪嵌合不良を回避することができる。第1分体14および第2分体16を治具に位置決めしてセットして、上下にプレスして所定荷重を加えることで、係止部24を係止受部28に機械的に挿入して爪嵌合を行う場合であっても、挿入荷重も増大を抑えることができるので、爪嵌合不良を回避することができる。
【0022】
ダクト10は、第1分体14と第2分体16とを組み付ける際に、位置決め部30における規制部32への挿入先端側に設けられた案内面30aが、規制部32の開口縁に当たることで、案内面30aの傾斜により位置決め部30が規制部32に揃うように案内される。このように、ダクト10は、第1分体14と第2分体16とを組み付ける際に、位置決め部30と規制部32との嵌め合いにより、第1分体14と第2分体16の空気流通方向の位置関係が揃うように自然に補正することができる。従って、得られるダクト10は、第1分体14と第2分体16との空気流通方向の位置が精度よく合わせられている。
【0023】
ダクト10は、位置決め部30を2つの係止爪26,26の間に配置しているので、2つの係止爪26,26の何れか一方に負荷をかけることを抑えて、位置決め部30と規制部32との嵌め合いによってバランスよく第1分体14と第2分体16の空気流通方向の位置関係を整えることができる。
【0024】
ダクト10は、係止受部28に嵌め合わせた係止爪26の係止突起26aが係止受部28から外れる方向に位置して抜止部34が設けられているので、係止爪26の変形を抜止部34で規制して、係止爪26が係止受部28から外れることを防止できる。これにより、係止爪26と係止受部28との爪嵌合により、第1分体14および第2分体16を強固に組み付けることができ、ダクト10の強度を向上させることができる。特に、空気入口10a側または空気出口10b側のようなダクト10の端に設けられる爪嵌合構造には、外力が加わり易いので、当該爪嵌合構造に抜止部34を設けて係止爪26を抜け止めするとよい。また、実施例のダクト10のように、第2分体16が円弧形状であると、係止受部28に挿入した係止爪26と第2分体16の外面との間に大きな間隔があいてしまうが、抜止部34によって前記間隔を詰めて係止爪26の抜け止めを図っているともいえる。換言すると、例えば、係止受部28に挿入した係止爪26の先端部と第2分体16との外面との間が、係止受部28の開口縁と係止突起26aとの引っ掛かり代よりも狭い場合、抜止部34を省略してもよい。
【0025】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
【0026】
(1)位置決め部30と規制部32との位置決め構造は、実施例の構成に限らず、例えば、
図7に示すように、規制部32の形状を変更してもよい。
図7に示す規制部32は、第2分体16の端縁において上方(第1分体14側)に開く凹状に形成されると共に、係止爪26(係止部24)の突出方向に沿って延在する規制面32aを有している。また、位置決め部30は、挿入先端側が案内面30aにより先細り形状であることに加えて、案内面30aの上端から係止爪26(係止部24)の突出方向に沿って延在する位置決め面30bを有している。このように、位置決め部30と規制部32とが略同一形状で形成されている。変更例の位置決め構造によれば、規制部32に位置決め部30を受け入れた際に、規制部32の規制面32aと位置決め部30の位置決め面30bとが当たって係止部24と係止受部28とを位置決めすることができる。また、規制面32aに位置決め面30bが案内されて係止爪26が係止受部28に真っ直ぐな経路で挿入されるように案内される。従って、係止受部28に対して係止爪26が斜めに挿入される等の挿入不良を回避でき、係止爪26と係止受部28との爪嵌合によって、第1分体14と第2分体16とをガタツキを防止した安定した状態で組み付けることができる。
【0027】
(2)実施例では、第1分体でダクトの上側部分を構成し、第2分体でダクトの下側部分を構成したが、第1分体でダクトの下側部分を構成し、第2分体でダクトの上側部分を構成してもよい。ダクトを、第1分体と第2分体とで上下に分割する構成に限らず、左右に分割するなど、ダクトの分割態様を適宜変更可能である。
(3)実施例では、第1分体と第2分体とが空気流通路の約半分ずつの領域を囲うように構成したが、空気流通路を囲う第1分体と第2分体との割合を適宜変更してもよい。
(4)本発明は、吸気ダクト、ブレーキダクト、空調ダクトなどに適用可能である。
(5)実施例の係止部は、隣り合う係止爪が互いに近づくように弾性変形可能に構成されていたが、これに限らず、隣り合う係止爪が互いに近づくように変形しなくてもよい。係止受部の空気流通方向の開口寸法が、係止部における両係止爪の空気流通方向の寸法より大きく設定されていても、位置決め部と規制部との係合によって、係止部と係止受部との係合後においてダクトにおける第1分体と第2分体との空気流通方向の相対的なズレに起因する異音等の発生を防止することができる。