特開2019-189294(P2019-189294A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-189294(P2019-189294A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】土のう詰め替え袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/22 20060101AFI20191004BHJP
   B65D 90/20 20060101ALI20191004BHJP
   D03D 1/04 20060101ALI20191004BHJP
   D03D 15/02 20060101ALI20191004BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   B65D88/22 A
   B65D90/20
   D03D1/04
   D03D15/02 C
   D03D15/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-84052(P2018-84052)
(22)【出願日】2018年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 紘一朗
【テーマコード(参考)】
3E070
4L048
【Fターム(参考)】
3E070AA31
3E070AB14
3E070DA07
3E070DA11
3E070VA21
3E070VA30
3E070WK03
3E070WK06
3E070WK10
4L048AA15
4L048AA20
4L048AB06
4L048AB28
4L048AC01
4L048BA01
4L048BA13
4L048CA00
4L048DA30
4L048DA32
4L048DA33
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】異色の織り糸の組み合わせによって高い識別性及び視認性と袋体の損傷検知機能を発揮可能な土のう詰め替え袋を提供すること。
【解決手段】本発明の土のう詰め替え袋1は、上方に開口した袋体10と、袋体10と接合した吊りベルト20と、を備え、袋体10の少なくとも胴部11が、第一色c1を有する縦糸a1と、第二色c2を有する横糸a2と、の組み合わせによる織地Aからなり、第一色c1と第二色c2が異色であることによって、織地A全体として第一色c1及び第二色c2のいずれとも異なる複合色cMを発色可能に構成したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土のうを充填物ごと封入するための、土のう詰め替え袋であって、
上方に開口した袋体と、前記袋体と接合した吊りベルトと、を備え、
前記袋体の少なくとも胴部が、第一色を有する縦糸と、第二色を有する横糸と、の組み合わせによる織地からなり、
前記第一色と前記第二色が異色であることによって、織地全体として前記第一色及び前記第二色のいずれとも異なる複合色を発色可能に構成したことを特徴とする、
土のう詰め替え袋。
【請求項2】
前記第一色及び前記第二色のうち一方が黒色であり、他方が白色、黄色、又はベージュ色のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の土のう詰め替え袋。
【請求項3】
前記縦糸及び前記横糸がフラットヤーンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の土のう詰め替え袋。
【請求項4】
前記袋体が開口付近に封鎖手段を備え、前記封鎖手段が、開口に周設した紐体による巾着構造、または開口の一側に接続した紐体と他側に設けたループの組み合わせ構造のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の土のう詰め替え袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土のう詰め替え袋に関し、特に異色の織り糸の組み合わせによって、高い識別性及び視認性と、袋体の損傷検知機能を発揮可能な、土のう詰め替え袋に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年の福島第一原子力発電所の事故に伴い、汚染土を主とする大量の放射性廃棄物が発生している。これらの放射性廃棄物は土のうやフレコンバッグに封入されて仮置き場に保管され、処分の進捗に応じて随時中間貯蔵施設へと搬送されている。
しかし、土のう等の耐用年数は数年程度であり、紫外線等によって袋体の表面等が劣化すると破けて中の放射性物質が漏出したり、吊り上げ時に吊り上げベルトがちぎれて落下するなどのおそれがある。そこで、放射性物質を封入した土のう等を保管、搬送するに際して、劣化しているおそれがある土のう等を、袋ごと新たな詰め替え袋に移し替える作業が行われている。
特許文献1には、劣化したフレコンバッグを充填物ごと詰め替えるための土のう詰め替え袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−190175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には、次のような課題がある。
<1>土のう詰め替え袋は、大きさが土のうに近く、色彩も同じ黒色系統であるため、両者を識別しにくい。このため、詰め替えが完了しているのか否かを判別しにくく、詰め替え作業の作業効率が悪い。
<2>土のう袋の表面に破れや孔等の損傷が生じた場合、そこから土砂等の内容物がこぼれ出るため、損傷は初期段階で検知されやすい。一方、土のう詰め替え袋は土砂等を直接封入するものではないので、表面に損傷が生じても土砂等のこぼれ出しがないため、検知されにくい。初期段階で損傷が検知されないと、損傷が加速度的に広がるため、吊り上げ時に中身の土のうが破れ出すなどして多大な損害を被るおそれがある。
<3>素材が黒色系の単色からなるため、袋体の立体形状を視認しにくい。このため、内部の土のうの配置や内容物の漏れ出しなどを外部から把握するのが困難である。
<4>袋体の色を、縦糸・横糸共通の単色によって設定するため、製品の色を切り替えるには横糸と縦糸の全てを交換する必要がある。交織は、製造工程の特質上、横糸1〜15本に対し500〜3000本もの縦糸を組み合わせるため、交換する糸の本数が膨大となる。このため、設計変更に多大な手間がかかり、製造の柔軟性が低い。
【0005】
以上より、本願発明は、高い識別性及び視認性と、袋体の損傷検知機能を兼備した土のう詰め替え袋を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決する本発明の土のう詰め替え袋は、袋体と吊りベルトを備え、袋体の少なくとも胴部が、異色の縦糸と横糸の組み合わせによる織地からなることを特徴とする。
この構成によれば、袋体が複合色を発色することにより高い識別性と視認性を発揮できると共に、袋体の損傷部分に複合色と異なる色が露出するため、袋体の損傷を容易に検知することができる。
【0007】
本発明の土のう詰め替え袋は、縦糸と横糸が黒色と白色、黄色又はベージュ色のいずれかの組み合わせであってもよい。
この構成によれば、複合色と白色又は黄色のコントラストが大きいため、袋体の損傷を検知しやすい。
【0008】
本発明の土のう詰め替え袋は、縦糸及び横糸がフラットヤーンであってもよい。
この構成によれば、フラットヤーンが面状であり袋体損傷時の露出面積が大きいため、袋体の損傷を検知しやすい。
【0009】
本発明の土のう詰め替え袋は、巾着構造または紐体とループの組み合わせからなる封鎖手段を備えていてもよい。
この構成によれば、袋体の開口を強固に締結することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土のう詰め替え袋は、以上の構成より、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>袋体が異色の組み合わせによる複合色を備える。複合色は見る角度によって色合いが変化し、立体的に発色するため、黒色系統の土のう袋と容易に識別することができる。このため、袋体の色によって、詰め替え作業が完了しているか否かを即時に判断することができる。
<2>袋体の表面に損傷が生じると、損傷部分の複合色がこれと異なる二色に分解され、複合色との色のコントラストによって、袋体の損傷を早期に検知することができる。これによって、大きな損害が発生する前に、補修や詰め替えなどの事前対応が可能になる。
<3>袋体が異色の組み合わせからなるため、見る角度によって色彩が変化する。このため、表面の凹凸が強調されることで、内部の土のうの形状や配置を外部から容易に視認することができる。
<4>製造時に1〜15本程度の横糸を交換するだけで、膨大な数の縦糸を交換することなく袋体の複合色を替えることができる。このため製品の色の切り替えが容易で、製造の柔軟性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る土のう詰め替え袋の説明図。
図2】織地の説明図。
図3】損傷検知機能の説明図(一)。
図4】損傷検知機能の説明図(二)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の土のう詰め替え袋について詳細に説明する。
なお、本明細書等において「土のう」とは、土のう袋やフレコンバッグに放射性廃棄物などの充填物を充填した物を意味する。
【実施例1】
【0013】
<1>全体の構成(図1)。
本発明の土のう詰め替え袋1は、充填物が充填された土のうBを内部に封入することで、土のうBの劣化による充填物の漏出を防止するための袋体である。
土のう詰め替え袋1は、上方に開口した有底略円筒状の袋体10と、袋体10に接合する吊りベルト20と、を備える。
本発明の土のう詰め替え袋1は、袋体10が異色の組み合わせによる織地Aを有することにより、袋体10の損傷時にこれを検知させる損傷検知機能を備える点に特徴を有する。
【0014】
<2>袋体。
袋体10は、土のうBを封入する袋状の構成要素である。
袋体10は、略円筒状の胴部11と、胴部11の上縁に接続する略円筒状の蓋部12と、胴部11の下方を塞ぐ底部13と、を少なくとも備える。
袋体10の少なくとも胴部11は、異色の糸の組み合わせによる織地Aからなる。但し、これに限らず、胴部11に加えて蓋部12や底部13も異色の組み合わせによる織地Aとしてもよい。
蓋部12の上縁付近には、土のうBの配置後に開口を封鎖するための封鎖手段12aを有する。
【0015】
<2.1>織地(図2)。
織地Aは、縦糸a1と横糸a2を平織りしてなる。
本例では、縦糸a1及び横糸a2として、ポリプロピレン製のフラットヤーンを採用する。ただし素材はこれに限られず、ポリエステルその他の合成樹脂素材を採用してもよい。
縦糸a1は第一色c1を備え、横糸a2は第一色c1と異なる第二色c2を備える。
異色の第一色c1と第二色c2を組み合わせることにより、織地A全体が第一色c1及び第二色c2のいずれとも異なる複合色cMを発色する。
また、織地Aは、見る方向によって縦糸a1と横糸a2の露出面積が変わるため、角度によって色彩が少しずつ変化する。
このため、表面の凹凸が強調されるので、内部の土のうBの形状や配置を外部から容易に視認することができる。
【0016】
<2.2>色の組み合わせ。
本例では、第一色c1を黒色、第二色c2を白色とする例について説明する。
縦糸a1と横糸a2それぞれは黒色、白色の単色であるが、これを平織りすると織地A全体として灰色系の複合色cMを発色する。
このほか、例えば、黒色と黄色の組み合わせでスモークグレー、黒色とベージュ色の組み合わせで煤色、赤色と白色の組み合わせでピンク色、赤色と青色の組み合わせで紫色、青色と白色の組み合わせで水色、青色と黄色の組み合わせで緑色、などの複合色cMを採用してもよい。
この内、特に黒色と白色の組み合わせ、黒色と黄色の組み合わせ、及び黒色とベージュ色の組み合わせは、複合色cMと白色、黄色、煤色のコントラストが大きいため、袋体10損傷時の損傷検知機能が特に優れている。損傷検知機能については後述する。
【0017】
<2.3>封鎖手段。
封鎖手段12aは、蓋部12の開口を締結して袋体を封鎖する手段である。
本例では、蓋部12内の上縁付近に周設した紐体による巾着構造を採用する。
環状に締結した紐体を両側に引っ張ることで、蓋部12の内部に挿通した紐体によって開口を引き寄せて固く閉じることができる。
なお、封鎖手段12aは、巾着構造に限られず、例えば蓋部12の一側に接続した紐体と他側に設けたループの組み合わせ構造を採用してもよい。
この場合、蓋部12の開口を紐体で絞った後に、ループを通して締結することで、袋体10の蓋部12を固く締結することができる。
【0018】
<3>吊りベルト。
吊りベルト20は、袋体10吊り上げ用の帯状体である。
本例では、吊りベルト20として、全体で無端状に接続する吊りベルトを胴部11の周方向の4カ所で胴部11の上下方向に沿って接続してなる。
但しこれに限らず、中身の土のうBを袋体10ごと吊り上げ可能であれば、他の構造であってもよい。
吊りベルト20は、高強度、対候性、及び耐久性を備えた素材を採用するのが望ましい。
本例では、吊りベルト20としてポリプロピレン製の帯体を採用する。但しこれに限られず、ポリエステルその他の合成樹脂素材を採用してもよい。
【0019】
<4>損傷検知機能(図3、4)。
袋体10の織地Aに破れや小孔などの損傷が生じると、縦糸a1と横糸a2の交差が解かれることにより、損傷部分の複合色cMが、縦糸a1の第一色c1と、横糸a2の第二色c2に分解される。
すると、複合色cMの織地Aを背景に、縦糸a1と横糸a2が外部に露出することにより、複合色cMとの色のコントラストによって第一色c1及び第二色c2がより鮮明に発色する。
これによって、離れた場所からでも袋体10の損傷の検知が容易になり、補修や詰め替えなどの早期の対応が可能になる。
【実施例2】
【0020】
[縦糸及び横糸を複数色にする実施例]
実施例1の他、織地Aにおける縦糸a1又は横糸a2のいずれかを複数色の組み合わせとすることもできる。
例えば、縦糸a1を第一色c1の黒色、横糸a2を第二色c2の白色と第三色c3の黄色の組み合わせとしてもよい。この場合、第二色c2と第三色c3を交互に配する。
あるいは、縦糸a1を第一色c1の黒色、横糸a2を第二色c2の白色と第一色c1の黒色の組み合わせとしてもよい。
また、縦糸a1及び横糸a2の両方を複数色の組み合わせとすることもできる。
本例の場合、縦糸a1及び横糸a2の色の組み合わせの数が増えることで、織地Aがより奥行きのある複合色cMを発色可能となる。
【符号の説明】
【0021】
1 土のう詰め替え袋
10 袋体
11 胴部
12 蓋部
12a 封鎖手段
13 底部
20 吊りベルト
A 織地
a1 縦糸
a2 横糸
c1 第一色
c2 第二色
cM 複合色
B 土のう
図1
図2
図3
図4