【解決手段】パレット1は、下板2と、上板3と、下板と上板を連結するブロック4(4L,4S)と、上板の上に設ける底トレイ7を備える。底トレイと上板には、製品20のキャスタ21が通過する貫通孔10,6が形成され、ブロック4Lには貫通孔と対応する位置にキャスタを収納する下方に開口しない収納孔5が形成される。収納孔にキャスタを収納するように製品をパレット上に載置する。梱包後、外のごみ等は内部に侵入しない。キャスタは収納孔内なので上板と下板の隙間にフォークを差し込んでもキャスタは損傷を受けない。全体の梱包高さは、パレットの厚さと、製品に被せる箱体25の高さの合計より小さくなる。
前記上板の上に設けられ、前記上板の前記貫通孔と対応する位置に前記キャスタが通過する第2の貫通孔が形成された底トレイを有することを特徴とする請求項1に記載のパレット。
前記製品を、緩衝材を介して前記底トレイの上に載置した場合に、前記キャスタの下端が前記収納孔の底に接触しないように前記収納孔の深さが定められていることを特徴とする請求項2に記載のパレット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態を
図1〜
図7を参照して説明する。
例えば複写機等の画像形成装置には、その底面に移動用のキャスタを備えたものがある。本実施形態は、このようなキャスタ付きの製品を梱包する際に用いられる梱包材料としてのパレットに関するものである。まず、実施形態に係るパレットを構成する材料及び構造を説明し、次に、このパレットを用いてキャスタ付きの製品を梱包した梱包体について説明する。
【0012】
1.パレットの構造(
図1〜
図4)
図1に示すように、実施形態のパレット1は、下板2(2L,2S)と、上板3と、下板2(2L,2S)と上板3の間に設けられて下板2(2L,2S)と上板3を連結する連結部材としてのブロック4(4L,4S)を備えている。
図1に示すように、下板2は、複数の長板材2L及び短板材2Sを連結した枠状の構造体である。実施形態では、3枚の長板材2Lを、所定間隔をおいて互いに平行に並べ、長板材2Lと長板材2Lの間に長板材2Lと直交する向きで6枚の短板材2Sを並べ、全体として枠状の矩形の中に十字形が配置されたパターンとなっている。ただし、長板材2Lと短板材2Sが直接的に連結されているわけではなく、後述するようにブロック4(4L,4S)を介して連結されている。
【0013】
長板材2L及び短板材2Sの材質は限定しないが、例えば木製板、樹脂板、丈夫な厚紙板、軽量で薄い金属板等が利用可能である。
【0014】
図1に示すように、ブロック4は、4個の大ブロック4Lと、5個の小ブロック4Sからなる。大ブロック4Lは、下板2の4隅に対応する位置に配置される。小ブロック4Sは、下板2の各辺の中央に相当する4つの位置と、下板2の中央に相当する1つの位置に配置される。
【0015】
図1中に隠れ線(破線)で示すように、大ブロック4Lは、その上面に、梱包しようとする製品のキャスタを収納するための収納孔5が形成されている。収納孔5は、円形であり、その深さはキャスタが収納孔5の底部に干渉しない深さに設定されている。すなわち、この収納孔5は大ブロック4Lの下面には開口していない。
【0016】
ブロックの材質は限定しないが、下板2や後述する上板3のような板状部材と異なり高さが大きく、また収納孔5を加工する都合上、例えば木材、発泡スチロール等のような加工しやすく軽い材料が好ましい。
【0017】
図1に示すように、上板3は、ブロック4の上に取り付けられる板材である。上板3は、下板2と同一の外形を有する一枚の板材であり、その材質は下板2と同様である。上板3には、大ブロック4Lの収納孔5と対応する位置に貫通孔6が形成されている。
【0018】
図2に示すように、
図1に示した枠状パターンに配置した長板材2L及び短板材2Sの上に、4個の大ブロック4Lと5個の小ブロック4Sを
図1に示した配置で重ね、長板材2L及び短板材2Sと、大ブロック4L及び小ブロック4Sとを釘で固定する。必要な固定強度が得られるのであれば、釘でなく接着剤やその他の固定手段で固定してもかまわない。これによって、枠状パターンに配置された長板材2Lと短板材2Sは、互いに当接する部分(連結部分)において大ブロック4L又は小ブロック4Sを介して一体化される。
【0019】
図2から
図3に示すように、一体となった下板2(2L,2S)及びブロック4(4L,4S)の上に、上板3を重ねる。互いに連結された下板2及びブロックの外形と、上板3の外形とは一致し、全体として矩形のパネル状となる。
【0020】
図4に示すように、上板3の上に底トレイ7を重ねる。底トレイ7は、このパレット1と、箱形の容器を用いて製品を梱包する場合、箱形の容器の底となる部材である。底トレイ7は、上板3と同一外形の底板8と、底板8の4辺に設けられたフラップ9を有する。底トレイ7の底板8には、上板3の貫通孔6と対応する位置に第2の貫通孔10が形成されている。また、底トレイ7のフラップ9には、長手方向に2個ずつ、短手方向に1個ずつの留め孔11が形成されている。
【0021】
底トレイ7の材質は限定しないが、このパレット1を用いて製品を梱包するために製品を収納する箱体がダンボールであれば、この底トレイ7もダンボールとすれば材料を共通化できる利点が得られる。しかしながら、製品を収納する箱体や底トレイ7を、樹脂等、その他の材料で構成することもできる。
【0022】
図4に示すように、上板3の上に底トレイ7の底板8を重ね、各ブロック4に相当する9カ所の位置に底トレイ7の上面から釘等の固定手段12を打ち込む。この固定手段12によって、底トレイ7、上板3、ブロック4(4L,4S)が一体化し、トレイ1が完成する。
【0023】
2.パレット1を用いた梱包体の構造(
図5〜
図7)
次に、キャスタ付きの製品をパレット1用いて梱包した梱包体について説明する。
図5は、キャスタ21を有する製品である画像形成装置20を、前記パレット1で梱包した梱包体の分解斜視図である。画像形成装置20は略直方体状であり、その底面は、パレット1よりも一回り小さい矩形である。画像形成装置20の底面の四隅には、それぞれキャスタ21が下方に突出して設けられている。4つのキャスタ21の配置は、パレット1の4隅に設けられた貫通孔6,10及び収納孔5の配置に一致している。
【0024】
図5に示すように、パレット1の上には、画像形成装置20の底面の4辺に相当する位置に、細長い直方体状の下部緩衝材22を配置する。緩衝材の材質は限定しないが、発泡スチロール等、軽く柔らかで加工しやすい材料が好ましい。画像形成装置20の4個のキャスタ21を4個の貫通孔10から収納孔5にそれぞれ挿入し、画像形成装置20の底面の4辺に下部緩衝材22を当てて、画像形成装置20を底トレイ7の底板8の上に載置する。
【0025】
図6は、パレット1の上に画像形成装置20を載置した状態であり、製品を収納する箱体を被せていない状態を示す。この
図6に示すように、キャスタ21は大ブロック4Lの収納孔5の中に入り、収納孔5の底面に接触せずに浮いた状態になる。このとき、下板2の底面と上板3の底面の間隔よりも、下板2の底面とキャスタ21の下端との距離の方が小さい。換言すれば、キャスタ21の下端は、上板3の底面よりも下方の位置にあるが、収納孔5の底には接触していない。
【0026】
このように、本実施形態によれば、パレット1に載置した画像形成装置20のキャスタ21を、パレット1に形成した貫通孔10から挿入して収納孔5の中で浮いた状態にて収納した。従って、キャスタ21が大ブロック4Lの中に入り込んだ分だけ、パレット1上に載置した画像形成装置20の高さは小さくなり、最終的な梱包高さを小さくすることができる。
【0027】
また、画像形成装置20とパレット1の間に挟んだ下部緩衝材22の高さも小さくすることができる。ただし、特に下部緩衝材22には、製品を衝撃から守るために一定以上の厚さ(高さ)が必要になるので、基本的には製品の荷重等に応じて厚さを決める必要はある。しかしながら、少なくとも収納孔5の中にキャスタ21を収納した分だけは下部緩衝材22を薄くすることが可能になるため、設計上の自由度は向上する。
【0028】
また、搬送中に画像形成装置20に荷重が加わっても、その荷重は下部緩衝材22に加わって緩衝され、キャスタ21が収納孔5の底に突き当たって損傷することはない。キャスタ21と収納孔5の底の間隔は、荷重を受けて下部緩衝材22が圧縮された場合にも、キャスタ21が収納孔5の底に接触しない程度に設定することも考慮して定めるのが好ましい。
【0029】
図5に示すように、パレット1の上に載置した画像形成装置20の4つの角部を縦方向に沿って覆うように、4つの側部緩衝材23を配置する。さらに、底トレイ7のフラップ9を外方に開いた状態で、側部緩衝材23と画像形成装置20の全体を覆うように、画像形成装置20の上方から箱体25を被せる。箱体25は下面と上面が開放された枠状であり、上下の開口の近傍には複数箇所に留め孔26が形成されている。4つの側部緩衝材23は箱体25の四隅の内面に当接し、画像形成装置20を箱体25の内部で安定させる。
【0030】
図7に示すように、画像形成装置20に箱体25を被せたのち、フラップ9を持ち上げて箱体25の外面に接触させ、留め具27をフラップ9の留め孔11から箱体25の留め孔26に挿入し、底トレイ7と箱体25を結合する。
【0031】
図5及び
図7に示すように、箱体25の上の開口に蓋板30を被せる。蓋板30は4辺にフラップ31を有しており、一対のフラップ31,31には留め孔32が設けられている。
図7に示すように、箱体25の上の開口に被せた蓋板30のフラップ31を下方に折り曲げ、留め具27をフラップ31の留め孔32から箱体25の留め孔26に挿入し、蓋板30と箱体25を結合する。これによって、トレイ1と、箱体25と、蓋板30が一体となり、その内部に画像形成装置20が収納された梱包体が完成する。
【0032】
以上のように構成されたパレット1によれば、上板3と下板2でブロック4を挟んで結合した構造において、上板3の貫通孔6の真下にある大ブロック4Lに収納孔5を設けてキャスタ21を収納するようになっており、しかも、この収納孔5は下方には開口しない構造となっている。従って、梱包した後には、運搬中や運搬後の時期に係わらず、画像形成装置20が収納されている上板3より上方の収納領域と外界とを連絡するルートはなく、収納領域に外界からごみやほこりが侵入することはない。すなわち、収納領域に必要な密封性は確保されている。
【0033】
また、このパレット1は、上板3と下板2を連結する連結部材として、互いに離れて配置した複数個のブロック4(4L,4S)を用いている。従って、上板3と下板2の間の空間は、パレット1の4つの辺の何れにも開口している。フォークリフトでこの梱包体を運ぶ場合には、パレット1の4つの辺の何れからでもフォークを挿入することができ、作業上便利である。
【0034】
また、このパレット1は、下板2を複数枚の長板材2Lと短板材2Sの組合せとし、これらを複数個のブロック4(4L,4S)で結合して一体化している。このため、下板2を一枚板で構成する場合や、連結部材として長尺の桁材を用いる場合に比べて軽量化することができる。
【0035】
また、画像形成装置20のキャスタ21は、大ブロック4Lの収納孔5内に収納されて保護された状態にある。このため、この梱包体をフォークリフトで搬送する際、上板3と下板2の隙間にフォークを差し込んでも、そこにキャスタ21露出していることはなく、キャスタ21をフォークで損傷することがない。
【0036】
また、画像形成装置20のキャスタ21が、パレット1の大ブロック4Lの収納孔5内に入り込んでいるので、全体の梱包高さは、パレット1の厚さと製品の高さの合計よりも、その入り込んだ分だけ小さくなり、全体としての梱包高さを低く抑えることができる。
【0037】
以上説明した実施形態では、下板2を複数枚の長板材2Lと短板材2Sで構成したが、
図1に示したようなパターン、すなわち矩形の枠内に十字型を配したような形状を有する一体形の下板2(一枚の矩形板から小さな4枚の矩形板を打ち抜いて製作できる)や、上板3と同様の形状の1枚ものの下板2を用いてもよい。その場合には、ブロックは下板2と上板3を確実に連結し、かつ梱包物の荷重を支えることさえできれば、その配置や個数は自由である。
【0038】
また、以上説明した実施形態では、連結部材としてブロックを用いたが、下板2の1辺の長さと等しい長手形状の桁部材を連結部材とし、これを下板2の上に互いに平行に間隔を置いて例えば3本並べ、その上に上板3を取り付けるようにしてもよい。この場合は、パレット1の桁部材を設けた辺からはフォークを挿入できないが、直交する他の辺には下板2と上板3の間に隙間ができるので問題ない。
【0039】
また、以上説明した実施形態では、大ブロック4Lの上面に開口させた収納孔5は、下面にまでは貫通していなかった。しかしながら、加工の都合等によっては上下に貫通させてもよい。ただし、その場合には、収納孔5の下の開口が下板2の上に配置され、下板2で塞がれて下方に開口しない構造とする必要がある。このようにすれば、梱包体の内部の密閉性は確保される。
【0040】
また、以上説明した実施形態では、パレット1は矩形状であり、その4つの角部に収納孔5が開口していた。しかしながら、収納孔5の開口位置は、必ずしもこの位置に限定されるものではない。また、収納孔5や貫通孔6、貫通孔10は円形に限定せず、角孔であってもよい。製品に設けられたキャスタの配置や数は必ずしも一定ではなく、本実施形態の画像形成装置20と同様であるとも限らない。従って、収納孔5の位置は、パレット1に載せる製品のキャスタの位置に合せて定めればよい。例えば矩形のパレット1の4辺の各中央近傍に設けてもよいし、矩形のパレット1の上の任意の3点に設けてもよい。
【0041】
以上説明した実施形態では、底面に回転式の車輪を有するキャスタ21が設けられた画像形成装置20を説明したが、これは一例にすぎない。本発明は画像形成装置のみを対象にするものでないことはもちろんである。そこで、本発明の適用対象である「キャスタ付き製品」について説明する。
【0042】
一般に「キャスタ」とは、家庭用又はオフィス用等の電気製品や家具等、又は台車の底面に取り付けられている移動用の部品であり、通常は回転自在又は固定式の車輪支持部と、車輪支持部に設けられた移動用の車輪を備えている。しかしながら、本明細書では、「キャスタ」の意味をより広く定義するものとし、前述した一般的な意味を含む他、一定の目的で所定位置に設置して使用される製品の底部に取り付けられる支持脚、支持体又は支持部等をも含むものとする。また、「製品」とは、前述した家庭用又はオフィス用等の電気製品や家具等を含む工業製品一般を意味する。
【0043】
3.実施形態における各態様のパレット1の構成とその効果について
第1の態様のパレット1は、
下板2と、上板3と、前記下板2と前記上板3の間に設けられて前記下板2と前記上板3を連結する連結部材4とを備え、キャスタ21を有する製品20が載置されるパレット1であって、
前記上板3には、前記キャスタ21と対応する位置に前記キャスタ21が通過する貫通孔6が形成され、
前記連結部材4Lには、前記貫通孔6と対応する位置に前記キャスタ21を収納する下方に開口しない収納孔5が形成されたことを特徴としている。
【0044】
第1の態様のパレット1は、上板3と下板2で連結部材4を挟んで結合した構造であり、上板3に設けた貫通孔6の下にある連結部材4Lに収納孔5を設けてキャスタ21を収納するようになっているが、この収納孔5は下方に開口しない構造になっている。従って、運搬中や運搬後にも、製品20が収納された上板3よりも上方の領域に外のごみやほこりが侵入することはなく、必要な密封性が確保されている。また、製品20のキャスタ21は連結部材4Lの収納孔5内に収納されて保護された状態にある。製品20を梱包したパレット1をフォークリフトで搬送するため、上板3と下板2の隙間にフォークを差し込んでも、そこにキャスタ21が露出していることはないので、キャスタ21をフォークで損傷することはない。また、製品のキャスタ21は上板3よりも下方にある連結部材4Lの内部に位置しているため、全体の梱包高さは、パレット1の厚さと、製品20の高さの合計よりも小さくなり、全体としての梱包高さを低く抑えることができる。
【0045】
第2の態様のパレット1は、
前記上板3の上に設けられ、前記上板3の前記貫通孔6と対応する位置に前記キャスタ21が通過する第2の貫通孔10が形成された底トレイ7を有することを特徴としている。
【0046】
第2の態様のパレット1によれば、パレット1の上に製品20を載置し、上から箱体25を被せて製品20を梱包する際に、底トレイ7を箱体25の底部を構成する一部品として利用することができる。
【0047】
第3の態様のパレット1は、
前記製品20を、緩衝材22を介して前記底トレイ7の上に載置した場合に、前記キャスタ21の下端が前記収納孔5の底に接触しないように前記収納孔5の深さが定められていることを特徴としている。
【0048】
第3の態様のパレット1によれば、キャスタ21は収納孔5の中で浮いた状態となるため、製品20とパレット1の間に緩衝材22を挟んでおけば、製品20の荷重及び製品20に運搬中に加わる衝撃等は緩衝材22に加わり、製品20の安全が保たれる。
【0049】
第4の態様のパレット1は、
キャスタ21を有する製品が載置されるパレット1であって、
複数の板材2L,2Sが組み合わされてなる下板2と、
少なくとも前記板材2Lと前記板材2Sが組み合わされた部分の上に取り付けられて前記板材2Lと前記板材2Sを連結し、少なくとも一部には前記キャスタ21を収納する下方に開口しない収納孔5が形成された複数の連結部材4L,4Sと、
前記連結部材4L,4Sの上に取り付けられ、前記収納孔5と対応する位置に貫通孔6が形成された上板3と、
を有することを特徴としている。
【0050】
第4の態様のパレット1によれば、下板2を複数の板材2L,2Sの組み合わせによって構成し、これら複数の板材2L,2Sを複数の連結部材4L,4Sによって一体化したため、一枚板の下板や長尺の連結部材を用いる場合に比べ、軽量化することができる。また、複数の連結部材4L,4Sを互いに離して適宜に配置すれば、上板3と下板2の間の空間をパレット1の外周の何れの位置においても開口するように構成できる。従って、フォークリフトでパレット1(又はこのパレット1を用いた梱包体)を運ぶ場合には、パレット1に対してどの向きからでもフォークを挿入することができ、作業上便利である。