【解決手段】リニアフィーダ3は、ワークWが置かれる搬送面30を有する振動部21bと、搬送面30に第1定在波を発生させる第1加振部51と、搬送面30に第2定在波を発生させる第2加振部52と、を有し、搬送面30に第1定在波及び第2定在波を発生させることで搬送面30に進行波を発生させる進行波生成手段22と、を備える。振動部21bは、第1加振部51が設けられる第1領域102と、第2加振部52が設けられる第2領域103と、を有し、第1領域102と第2領域103とが、進行波の進行方向において、少なくとも部分的に重なっている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図10を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、
図1に示す方向を前後左右上下方向とする。
【0017】
(パーツフィーダの概略構成)
まず、本実施形態に係るパーツフィーダ1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、パーツフィーダ1の斜視図である。パーツフィーダ1は、ワークWを供給するためのボウルフィーダ2(本発明のワーク供給源)と、ボウルフィーダ2の前端部に接続されたリニアフィーダ3(本発明のワーク搬送装置)とを備える。ボウルフィーダ2及びリニアフィーダ3は、いずれもたわみ進行波を利用してワークWを搬送する。本実施形態では、リニアフィーダ3に対して本発明を適用した場合について説明するが、ボウルフィーダ2に本発明を適用することも勿論可能である。
【0018】
ボウルフィーダ2は、ワークWが収容されるボウル本体11等を有する。ボウル本体11は、上部が開口した略逆円錐台状の部材である。ボウル本体11の内周壁には、底部から螺旋状に上昇するらせんトラック12が形成されている。ボウル本体11は、ボウル駆動手段(不図示)によって振動させられる。ワークWは、らせんトラック12に沿ってリニアフィーダ3に向かって上昇する。
【0019】
リニアフィーダ3は、ボウルフィーダ2から供給されたワークWを前方に搬送するためのものである。リニアフィーダ3は、たわみ進行波が生成される部材である搬送部21と、搬送部21を超音波振動させるための進行波生成手段22(
図4等参照)とを備える。進行波生成手段22によって搬送部21が振動すると、搬送部21の上面に形成された搬送面30にたわみ進行波が発生する。このたわみ進行波によって、ワークWは搬送面30に沿って搬送される。リニアフィーダ3の詳細については、後述する。
【0020】
(リニアフィーダの構成)
次に、リニアフィーダ3の構成について、
図1〜
図6を用いて説明する。前述したように、リニアフィーダ3は、搬送部21と、進行波生成手段22等を有する。
【0021】
搬送部21について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、リニアフィーダ3の平面図である。
図3(a)は、リニアフィーダ3の断面斜視図である。
図3(b)は、リニアフィーダ3の前後方向に直交する断面図である。
【0022】
搬送部21は、例えば金属製の平面視略矩形状の部材である。
図2及び
図3に示すように、搬送部21の平面視中央部には、平面視周辺部よりも厚みが小さい略長円形状の固定部21aが形成されている。また、固定部21aよりも平面視外側に、平面視でトラック形状であり、且つ、固定部21aよりも厚みが大きい振動部21bが形成されている。つまり、搬送部21は、長手方向に直交する断面が略凹状になっている(
図3参照)。
図3(b)において、一点鎖線で囲まれた部分が固定部21aであり、二点鎖線で囲まれた部分が振動部21bである。固定部21aは、押さえ板38と押さえ板39とによって上下から挟まれ、複数の止着具40によって固定されている。
【0023】
振動部21bは、上述したように、平面視でトラック形状を有する(
図2参照)。振動部21bの左右両側部分は、前後方向に延びる長尺部分(直線部分)である。振動部21bの前後両側部分は、左右方向に沿った短尺部分である。また、
図3(b)に示すように、振動部21bは、断面視で略矩形状である。振動部21bの上面には、ワークWが搬送される溝である搬送トラック27が形成されている。
図2において、ハッチングされた部分が搬送トラック27に該当する。搬送トラック27は、ワークWが置かれる搬送面30を有する。搬送トラック27は、メイントラック28とリターントラック29とに分かれている。メイントラック28は、ボウルフィーダ2から供給されたワークWを次工程の装置4(本発明のワーク供給先)へ供給するためのものであり、振動部21bの左側部分の後端部から前端部に亘って延びた経路である。メイントラック28の搬送面30を、第1搬送面31とする。リターントラック29は、メイントラック28から取り除かれたワークWをボウルフィーダ2に戻すためのものであり、平面視略U字状の経路である。すなわち、リターントラック29は、振動部21bの左側部分の後端部から、メイントラック28と並んで前方に延び、固定部21aの前端部に沿って回り、振動部21bの右側部分において後方に延びて、振動部21bの後端部に戻る経路になっている。リターントラック29の搬送面30を、第2搬送面32とする。
【0024】
また、
図3(a)に示すように、リニアフィーダ3には、選別部49が設けられている。選別部49は、並設されたメイントラック28及びリターントラック29の上方に配置されたセンサ49aと、図示しないエア噴出部と、を有する。センサ49aは、メイントラック28上を搬送されるワークWの姿勢を検出するためのものである。エア噴出部は、メイントラック28上のワークWに横からエアを吹き付けて、ワークWをリターントラック29へ飛ばすためのものである。センサ49aによって、メイントラック28上のワークWの姿勢が正常と異なると検知された場合、エア噴出部がそのワークWをリターントラック29へ吹き飛ばす。これにより、そのワークWは第1搬送面31上から取り除かれ、第2搬送面32上を搬送されてボウルフィーダ2へ戻される。また、メイントラック28を搬送されるワークWの姿勢が正常である場合は、エア噴出部は作動しない。つまり、正常な姿勢でメイントラック28を搬送されてくるワークWのみが、そのまま次工程の装置4へ供給される。
【0025】
進行波生成手段22について、
図4を用いて説明する。
図4は、進行波生成手段22の構成を示す模式図である。進行波生成手段22は、加振部23と、信号発信器41と、アンプ42、43等を有する。
【0026】
加振部23は、振動部21bに沿って伸縮することで振動部21bを加振し、搬送面30に定在波を発生させるためのものである。加振部23は、振動部21bの裏面25に貼り付けられて固定されている(
図3(b)参照)。加振部23は、第1定在波(詳細は後述)を搬送面30に発生させるための第1加振部51と、第1定在波とは腹及び節の位置が異なる第2定在波(詳細は後述)を搬送面30に発生させるための第2加振部52とを有する。第1加振部51及び第2加振部52の詳細については、後述する。
【0027】
信号発信器41は、超音波領域の周波数の信号を生成して加振部23へ出力することで、振動部21bを加振するためのものである。信号発信器41は、所定の振幅及び周波数を有する第1の信号を第1加振部51へ出力可能な構成になっている。また、信号発信器41は、第1の信号と位相が異なる第2の信号を第2加振部52へ出力可能な構成になっている。
【0028】
信号発信器41は、生成する信号の波形を選択する波形選択部44と、信号の周波数(すなわち、振動部21bを加振する加振周波数)を調整する加振周波数調整部45と、信号の位相を調整する電気的位相調整部46と、信号の振幅を調整する振幅調整部47、48と、を有する。波形選択部44は、加振周波数調整部45と電気的に接続されている。加振周波数調整部45は、電気的位相調整部46及び振幅調整部47と電気的に並列に接続されている。電気的位相調整部46は、振幅調整部48と電気的に接続されている。
【0029】
第1の信号は、波形選択部44によって選択された波形と、加振周波数調整部45によって調整された加振周波数と、振幅調整部47によって調整された振幅とを有し、アンプ42へ出力される。第2の信号は、波形選択部44によって選択された波形と、加振周波数調整部45によって調整された加振周波数と、電気的位相調整部46によって調整された位相と、振幅調整部48によって調整された振幅とを有し、アンプ43へ出力される。第2の信号の位相は、電気的位相調整部46によって変更された分だけ、第1の信号の位相と異なる。なお、第1の信号及び第2の信号は、例えば正弦波信号である。第1の信号の周波数と第2の信号の周波数は、略等しい。
【0030】
アンプ42は、第1の信号を増幅するためのものであり、信号発信器41と第1加振部51との間に配置されている。アンプ43は、第2の信号を増幅するためのものであり、信号発信器41と第2加振部52との間に配置されている。第1の信号は、アンプ42によって増幅されて第1加振部51に印加され、第2の信号は、アンプ43によって増幅されて第2加振部52に印加される。
【0031】
以上の構成において、第1加振部51が振動部21bを加振することで第1定在波が、第2加振部52が振動部21bを加振することで第2定在波が、それぞれ搬送面30に発生する。これらの定在波の重ね合わせによって、トラック状の振動部21bの周回方向に進行する進行波が搬送面30に発生する。
【0032】
ここで、従来、第1加振部51と第2加振部52は、上記周回方向(すなわち、進行波の進行方向)において、互いに異なる位置に配置されるのが一般的であった。例えば、第1加振部51が、振動部21bの右方側の直線部分の裏面に配置され、第2加振部52が、振動部21bの左方側の直線部分の裏面に配置されていた。しかしながら、この構成には、以下の2つの問題点がある。
【0033】
1つ目の問題点は、定在波の減衰による影響である。上記の従来の構成において、第1定在波は、振動部21bの右方側の直線部分から左方側の直線部分(すなわち、第2加振部52が配置された領域)に伝播する途中で減衰する。逆に、第2定在波は、振動部21bの左方側の直線部分から右方側の直線部分に伝播する途中で減衰する。このため、搬送面30の進行方向における位置によって、第1定在波の振幅と第2定在波の振幅が異なりやすい(すなわち、2つの定在波の振幅比が変動しやすい)。第1定在波及び第2定在波の振幅が位置によって互いに異なる場合、搬送面30には、波が一様に伝わるような理想的な進行波が発生するのではなく、進行波と定在波が混在した波が発生しうる。このような波が発生すると、ワークWの停滞や跳躍などの問題が生じ、安定したワーク搬送ができなくなるおそれがある。
【0034】
2つ目の問題点は、加振部23の剛性と振動部21bの剛性の差による影響である。振動部21bの、加振部23が貼り付けられた部分の剛性と、貼り付けられていない部分の剛性とが、互いに異なると(すなわち、両者の振動のしやすさが互いに異なると)、両者の境界部分で進行波の振幅が異なることでワークWの搬送速度が変動するおそれがある。特に、振動部21bのうち、ワークWを次工程へ供給するための第1搬送面31が形成された領域に加振部23が設けられていると、第1搬送面31上で搬送が不安定になり、次工程にも悪影響を及ぼすおそれがある。
【0035】
(加振部の詳細構成)
そこで、本実施形態の進行波生成手段22は、ワークWの搬送の安定性を向上させるために、以下の構成を有する。まず、加振部23の詳細構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、加振部23の模式図である。
図5(a)は加振部23の平面図であり、
図5(b)は同じく側面図であり、
図5(c)は同じく裏面図である。
【0036】
加振部23は、上述したように、第1加振部51と第2加振部52とを有する。本実施形態では、第1加振部51と第2加振部52は、
図5(a)〜(c)に示すように、1つの加振部23において一体的に形成されている。
【0037】
第1加振部51は、所定の波長(以下、λとする)を有する第1定在波を搬送面30に発生させるためのものである。第1加振部51は、4つの第1圧電素子53(本発明の第1加振素子)を有する。4つの第1圧電素子53は、第1定在波を励起するためのものである。4つの第1圧電素子53は、矩形の薄板状のセラミックス部61と、セラミックス部61の一方の面(便宜上、表面とする)に貼り付けられた4つの第1電極62と、セラミックス部61の他方の面(同じく、裏面とする)に貼り付けられた共通電極64と、を有する。なお、
図5(a)においてハッチングされた部材が、4つの第1電極62である。
【0038】
セラミックス部61は、電圧を印加されることによりたわむ圧電体セラミックスの部材である。セラミックス部61は、4つの第1圧電素子53において共通に用いられる。セラミックス部61には、λ/2のピッチで、極性(+、−)が交互に反転するように分極処理が施されている(
図5(a)、
図5(b)参照)。4つの第1電極62は、セラミックス部61の長手方向におけるサイズが、それぞれλ/4よりも小さい。4つの第1電極62は、セラミックス部61の長手方向においてλ/2のピッチで、セラミックス部61の分極している部分に貼り付けられている。共通電極64は、セラミックス部61の裏面の電位を共通電位にするためのものであり、セラミックス部61の裏面と略等しい面積を有する。共通電極64も、セラミックス部61と同様に、4つの第1圧電素子53において共通に用いられる。このように、4つの第1圧電素子53が、λ/2のピッチで、極性を交互に反転させつつ並べられている。
【0039】
第2加振部は、第1定在波と略等しい波長を有し、且つ、腹及び節の進行方向における位置が第1定在波とλ/4ずれた第2定在波を搬送面30に発生させるためのものである。第2加振部52は、4つの第2圧電素子54(本発明の第2加振素子)を有する。4つの第1圧電素子53は、第2定在波を励起するためのものである。4つの第2圧電素子54は、上述したセラミックス部61と、セラミックス部61の表面に貼りつけられた4つの第2電極63と、上述した共通電極64と、を有する。すなわち、4つの第2圧電素子54は、セラミックス部61及び共通電極64を4つの第1圧電素子53と共有している。4つの第2電極63は、4つの第1電極62と略等しいサイズを有する。4つの第2電極63は、セラミックス部61の長手方向においてλ/2のピッチで、セラミックス部61の、分極しており、且つ、第1電極が貼り付けられていない部分に貼り付けられている。このように、4つの第2圧電素子54が、λ/2のピッチで、極性を交互に反転させつつ並べられている。
【0040】
第1電極62と第2電極63は、セラミックス部61の長手方向において、λ/4のピッチで交互に配置されている。これにより、第1圧電素子53と第2圧電素子が、λ/4のピッチで交互に配置されている。言い換えると、第1加振部51と第2加振部52は、セラミックス部61の長手方向において、互いにλ/4だけずらして配置されている。
【0041】
以上のように、加振部23は、第1加振部51と第2加振部52を有し、第1加振部51は4つの第1圧電素子53を、第2加振部は4つの第2圧電素子54を、それぞれ有する。第1圧電素子53と第2圧電素子54は、セラミックス部61の長手方向において交互に、一列に並べられている。すなわち、セラミックス部61の長手方向において計8つの圧電素子が一列に並べられている。上記8つの圧電素子は、長手方向の一端部から+、+、−、−のように、一方の極性のものと他方の極性のものがそれぞれ2つずつ、交互に並べられた構成になっている。なお、本実施形態において、加振部23の剛性は、振動部21bの剛性よりも大きい。
【0042】
(加振部の配置)
次に、加振部23の配置位置について、
図6を用いて説明する。
図6は、加振部23の配置領域を示す説明図である。
図6(a)は、振動部21bの加振部23が貼りつけられる領域を示す平面図であり、
図6(b)は、加振部23が貼りつけられた振動部21bを示す平面図である。
【0043】
加振部23は、振動部21bの右方側直線部分の裏面25に貼りつけられている(
図3(b)参照)。詳細には、加振部23は、振動部21bの裏面25のうち、表面に第1搬送面31が形成されておらず、且つ、第2搬送面32が形成された領域101に配置されている(
図6(a)参照)。このように、第1加振部51及び第2加振部52は、進行波の進行方向(
図6(a)の実線矢印参照。以下、単に進行方向とも呼ぶ)において、振動部21bの一部の領域に設けられている。領域101は、
図6(a)に示すように、第1加振部51が配置される第1領域102と、第2加振部52が配置される第2領域103とを有する。第1領域102と第2領域103は、進行方向において部分的に重なっている。なお、
図6(a)におけるハッチングされた領域104が、第1領域102と第2領域103との重複領域である。
【0044】
図6(b)に示すように、第1圧電素子53と第2圧電素子54は、進行方向において互いにλ/4ずれた状態で交互に並んでいる。4つの第1圧電素子53の第1電極62は、配線71によって互いに導通している。4つの第2圧電素子の第2電極63は、配線72によって互いに導通している。配線71と配線72は、電気的に絶縁されており、第1電極62と第2電極63は導通していない。なお、上述したように、加振部23の剛性は、振動部21bの剛性よりも大きいため、加振部23と振動部21bとが互いに固定された部分の剛性は、振動部21bの、加振部23が設けられていない部分の剛性よりも大きくなっている。
【0045】
(リニアフィーダの動作)
次に、以上のような構成を有するリニアフィーダ3の動作について説明する。
【0046】
まず、進行波の発生、及び、進行波によるワーク搬送の概要について説明する。上述した信号発信器41(
図4参照)によって生成された第1の信号が、アンプ42を介して第1加振部51に印加されると、振動部21bの裏面に設けられた4つの第1圧電素子53の伸縮によって、第1定在波が励起される。これにより、上下方向にのみ振動する第1定在波が発生する。第1定在波の波長をλとし、周期をTとする。同様に、第2の信号が、アンプ43を介して第2加振部52に印加されると、4つの第2加振部52によって第2定在波が励起される。以下、説明の簡単化のため、第1定在波と同様、第2定在波の波長をλとし、周期をTとする。
【0047】
第1圧電素子53と第2圧電素子54は、上述したように、進行方向における配置位置が互いにλ/4だけずれていることから、第1定在波と第2定在波は、進行方向における腹及び節の位置が互いにλ/4だけずれている。言い換えると、第1定在波の腹の位置と第2定在波の節の位置が略同じであり、第1定在波の節の位置と第2定在波の腹の位置が略同じである。また、第1定在波の位相と第2定在波の位相は、互いに略90°異なっている。なお、第1定在波と第2定在波との位相差は、必ずしも第1の信号と第2の信号との位相差そのものではない。信号間の位相差と定在波間の位相差との関係は、例えば、振動部21bの形状(対称性等)によって変わりうる。このため、上述した電気的位相調整部46によって、第1定在波の位相と第2定在波の位相が略90°異なるように、第2の信号の位相が調整されている。このような第1定在波及び第2定在波が、振動部21b全体に伝播することで、以下に示す進行波が、振動部21b全体に発生する。
【0048】
搬送面30における進行波の発生について、
図7を用いて概略的に説明する。
図7は、第1定在波及び第2定在波による進行波の発生を示す説明図である。
図7において、横軸は、進行波の進行方向における座標を示す。第1定在波の腹の位置を原点(x=0)とする。縦軸は、各座標における搬送面30の上下方向の変位を示す。なお、ここでは、波の減衰は考慮しない。
【0049】
図7(a)に示すように、時刻t=0において、第1定在波の腹の位置(x=0,λ/2,λ等)において搬送面30が上下方向に変位している(ブロック矢印参照)。一方、節の位置(x=λ/4,3λ/4等)においては、搬送面30が変位していない。すなわち、時刻t=0においては、第1定在波のみが搬送面30に発生しており、第1定在波と位相が略90°ずれた第2定在波は発生していない。
【0050】
時間経過に伴い、第1定在波による搬送面30の上下方向の変位が小さくなり、第2定在波による搬送面30の上下方向の変位が大きくなる。第1定在波の節の位置(x=λ/4,3λ/4等)と第2定在波の腹の位置が同じであるため、
図7(b)に示すように、時刻t=T/4においては、それらの位置において搬送面30が上下方向に変位している。このとき、時刻t=0のときと比べて、搬送面30に発生している波全体がλ/4だけ紙面右方に進行した状態になっている(実線矢印参照)。時刻t=2T/4(
図7(c)参照)においては、再び第1定在波が発生している。なお、上下方向における振動の向きは時刻t=0のときと逆向きである。同様に、時刻t=3T/4(
図7(d)参照)においては、再び第2定在波が励起されている。このように、時間が経過するにつれて、波が実線矢印で示す方向に進行することで、搬送面30に進行波が発生する。なお、実際には、搬送面30には、以下のようなたわみ進行波が発生している。
【0051】
たわみ進行波によるワークWの搬送原理について、
図8を用いて概略的に説明する。
図8は、搬送面30に発生するたわみ進行波を側面から見た図である。
図8に示すように、たわみ進行波は、進行方向(
図8(a)の実線矢印参照)へ周期Tで進行する。なお、
図8において、振動部21bの振動の中立軸Nの位置は、振動部21bの上下方向の中心にあるものとする。時刻t=0において、搬送面30上のある位置(例えば、上述したx=0)の質点Zが、最も上昇した状態であるとする(
図8(a)参照)。その後、質点Zは下降するとともに前方に移動し、時刻t=T/4において最も前方に位置する(
図8(b)参照)。また、質点Zは、時刻t=2T/4においては最も下方に位置し(
図8(c)参照)、時刻t=3T/4においては最も後方にある(
図8(d)参照)。このように、質点Zは、楕円軌道100を描くように上下方向及び前後方向に運動する。楕円軌道100において、質点Zが最も上方にあるとき、搬送面30とワークWとの間の摩擦力による水平方向の推進力が発生し、たわみ進行波の進行方向とは逆方向へワークWが搬送される。このように、搬送面30上の各部分が、水平方向(ワークWの搬送方向)の速度成分と上下方向の速度成分とを有するように楕円運動することでワークWが搬送される。本実施形態では、ワークWは、メイントラック28においては前方へ搬送され、リターントラック29においては反時計回りに搬送される(
図2の二点鎖線の矢印参照)。すなわち、振動部21bにおいては、平面視で時計回りにたわみ進行波が発生し、反時計回りにワークWの推進力が発生する。ここで、上記推進力は、たわみ進行波の振幅に応じて変わる。つまり、たわみ進行波を発生させるための定在波の振幅が変わると、上記推進力が変わり、ワークWの搬送速度が変わる。
【0052】
(定在波の減衰)
次に、定在波の減衰について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、
図6(b)と同様の、振動部21b及び加振部23を示す図である。
図10は、第1定在波及び第2定在波の減衰を示す説明図である。
図7と同様に、横軸は進行波の進行方向における座標を、縦軸は振動部21bの上下方向の変位を、それぞれ示す。
【0053】
定在波は、加振部23によって励起された後、振動部21bの他の領域に伝播する。定在波は、伝播する途中で減衰する。つまり、第1定在波及び第2定在波は、例えば、
図9に示すように、振動部21bの右方側直線部分の領域105から左方側直線部分の領域106に伝播する途中で減衰する。
図10(a)は、領域105における第1定在波を示す図である。
図10(b)は、同じく領域106における第2定在波を示す図である。ここで、上述したように、第1加振部51と第2加振部52は、進行方向における配置位置が互いにλ/4のみずれている。このため、第1加振部51に印加される電圧の振幅と第2加振部52に印加される電圧の振幅が等しくなるように電圧調整することで、領域105における第1定在波の振幅A1と、第2定在波の振幅A2を略等しくすることが可能である。
【0054】
図10(c)は、領域106に伝播して減衰した第1定在波を示す図である。減衰後の第1定在波の振幅A3は、振幅A1よりも小さくなる。
図10(d)は、領域106に伝播して減衰した第2定在波を示す図である。減衰後の第2定在波の振幅A4も、振幅A2よりも小さくなる。ここで、第1加振部51と第2加振部52は進行方向において互いにほとんど重なっているため、振幅A1に対する振幅A3の比率(第1定在波の減衰率)と、振幅A2に対する振幅A4との比率(第2定在波の減衰率)は、略等しい。このため、減衰後の振幅A3と振幅A4も、減衰前の振幅A1と振幅A2と同様に、略等しくなる。言い換えると、振幅A3と振幅A4の比がほぼ1である。上述したように、第1加振部51と第2加振部52が進行方向においてほとんど重なっているため、進行方向の任意の位置において、第1定在波の振幅と第2定在波の振幅との比(進行波比)は、ほぼ1になる。これにより、進行方向における位置によって進行波の振幅が大きく変動することが抑制され、搬送が安定する。
【0055】
(第1搬送面及び第2搬送面における搬送速度の変動)
次に、第1搬送面31と第2搬送面32における搬送速度の変動について説明する。振動部21bの、加振部23が設けられた部分は、上述したように、他の部分の剛性よりも大きな剛性を有しており、振動しにくい。このため、特に、加振部23が設けられた部分と設けられていない部分の境目において、搬送面30に発生する進行波の振幅が変動することで、ワークWの搬送速度が変動しうる。本実施形態では、加振部23は、振動部21bの右方側直線部分(すなわち、第1搬送面31が形成されておらず、且つ、第2搬送面32が形成された領域)に配置されている(
図2、
図3参照)。このため、第1搬送面31においては、上記のようなワークWの搬送速度の変動は起こらない。一方、振動部21bの右方側直線部分において、第2搬送面32上のワークWの搬送速度は上記要因により変動しうるが、第2搬送面32は、第1搬送面から取り除かれたワークWをボウルフィーダ2に戻すためのものであるため、搬送速度の変動による悪影響は少ない。
【0056】
以上のように、第1定在波を搬送面30に発生させる第1加振部51が設けられる第1領域102と、第2定在波を搬送面30に発生させる第2加振部52が設けられる第2領域103とが、進行波の進行方向において、少なくとも部分的に重なっている。すなわち、第1領域102と第2領域103とが、進行方向において互いに近い位置に配置されている。これにより、進行方向において、搬送面30上の任意の箇所から第1領域102までの進行方向における距離と、当該箇所から第2領域103までの進行方向における距離との差を小さくすることができる。このため、第1定在波が第1領域102から当該箇所に伝播するまでの振幅の減衰率と、第2定在波が第2領域から当該箇所に伝播するまでの振幅の減衰率との差を小さくすることができる。これにより、第1定在波の振幅と第2定在波の振幅との比が進行方向の位置によって変動することを抑え、ひいては、進行波の振幅が位置によって大きく変動することを抑えることができる。したがって、ワークWの搬送の安定性を向上させることができる。
【0057】
また、進行方向において、第1圧電素子53と第2圧電素子54が交互に配置されている。すなわち、第1領域102と第2領域103のほとんどが、進行方向において互いに重なり合っている。したがって、第1定在波の振幅と第2定在波の振幅との比が進行方向の位置によって変動することを、さらに抑えることができる。
【0058】
また、第1加振部51及び第2加振部52が、振動部21bの全領域ではなく、進行方向における一部の領域101に設けられている。このため、第1加振部51及び第2加振部52の材料費を削減できる。また、本実施形態のように搬送面30が直線部分と曲線部分とを有する場合、直線部分に対応する領域101にのみ第1加振部51及び第2加振部52を設けることで、製造の手間やコストを削減できる。
【0059】
また、第1加振部51及び第2加振部52は、振動部21bのうち、進行方向において、第1搬送面31が形成されておらず、且つ、第2搬送面32が形成された領域に配置されている。このため、ボウルフィーダ2から次工程の装置4までワークWが搬送される(すなわち、ワークWのスムーズな搬送が求められる)第1搬送面31においては、上記のような搬送速度の変動を回避できる。一方、第2搬送面32においては、上記のような搬送速度の変動が起こりうる。但し、第2搬送面32は、ボウルフィーダ2にワークWを戻すためものであり、第1搬送面31と比べれば、搬送速度の変動による問題は小さい。したがって、ワークWのスムーズな搬送が必要な第1搬送面31において、ワークWの搬送を安定させることができる。
【0060】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0061】
(1)前記実施形態において、4つの第1圧電素子53と4つの第2圧電素子54がセラミックス部61の長手方向において一列に並んでいるものとしたが、これには限られない。例えば、
図11に示すように、加振部23aにおいて、第1加振部51aの第1圧電素子53aと第2加振部52aの第2圧電素子54aとが、千鳥配置されている構成になっていても良い。また、この場合、1つの加振部23aに第1加振部51aと第2加振部52aとが一体的に形成されていなくても良い。
【0062】
(2)前記までの実施形態において、第1加振部51が4つの第1圧電素子53を、第2加振部52が4つの第2圧電素子54を有するものとして説明したが、圧電素子の数は、これに限られるものではない。
【0063】
(3)前記までの実施形態において、進行波生成手段22は、2つの定在波を発生させる構成であるものとしたが、3つ以上の定在波を発生させる構成になっていても良い。
【0064】
(4)第1加振素子及び第2加振素子として、圧電素子以外のものを用いても良い。例えば、磁界によって形状変化する磁歪素子等を用いても良い。
【0065】
(5)前記までの実施形態において、セラミックス部61の裏面に1つの共通電極64が貼りつけられているものとしたが、これには限られない。例えば、共通電極64の代わりに、共通電極64と同程度の面積を有する8つの電極が、セラミックス部61を挟んで第1電極62及び第2電極と対向するように裏面に貼り付けられているような構成でも良い。その場合、裏面に貼り付けられた8つの電極の電位は、例えばジャンパ線等で共通化されても良い。
【0066】
(6)第1加振部51及び第2加振部52に印加される信号は、矩形波信号や三角波信号等でも良い。