【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、炭素数4〜16のアルキルアルコール(B)0.05〜3質量部と、リン系安定剤(C)0.005〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物を溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造する方法であって、得られるペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量を0.001〜1.5質量%とするポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、炭素数4〜16のアルキルアルコール(B)0.05〜3質量部と、リン系安定剤(C)0.005〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物を溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造する方法であって、得られるペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量を0.001〜1.5質量%とすることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
前記ポリカーボネート樹脂組成物がさらにエポキシ化合物(D)を0.01〜0.5質量部含有することを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
[ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、炭素数4〜16のアルキルアルコール(B)0.05〜3質量部と、リン系安定剤(C)0.005〜0.5質量部とを含有するポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本発明のポリカーボネート樹脂組成物」と称す場合がある。)を溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造する方法であって、得られるペレット(以下、「本発明のペレット」と称す場合がある。)中のアルキルアルコール(B)の含有量を0.001〜1.5質量%とすることを特徴とするものであり、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、さらに、エポキシ化合物(D)を0.01〜0.5質量部含有していてもよい。
なお、本発明のペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量は、後述の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
【0017】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
ポリカーボネート樹脂(A)としては、従来公知の任意のポリカーボネート樹脂を使用できる。ポリカーボネート樹脂(A)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂である。
【0018】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0019】
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
【0020】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物に加えてさらに分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を少量添加してもよい。この場合、上記芳香族ポリカーボネート樹脂は分岐を有するものになる。
【0022】
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン又は1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01〜10モル%となる量であり、より好ましくは0.1〜2モル%となる量である。
【0023】
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0024】
また上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル及びイソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで炭酸ジエステルの一部を置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0025】
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
【0026】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂には、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。
【0027】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10,000〜22,000であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が10,000未満である場合、得られる成形品の機械的強度が不足し、十分な機械的強度を有するものを得ることができない場合がある。また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が22,000を超える場合、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が大きくなるため、例えば本発明のペレットを射出成形などの方法で成形して導光部材等の長尺状の成形品を製造する際に優れた流動性を得ることができず、また、樹脂の剪断による発熱量が大きくなり、熱分解により樹脂が劣化する結果、優れた色相を有する成形品を得ることができない場合がある。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量はより好ましくは12,000〜18,000であり、さらに好ましくは14,000〜17,000である。
【0028】
ここで粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算して求めたものである。
【0029】
ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよく、また粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量の範囲内としたものであってもよい。
【0030】
<アルキルアルコール(B)>
本発明において用いるアルキルアルコール(B)は、炭素数4〜12のアルキルアルコールである。
本発明のペレットがアルキルアルコール(B)を含むことで、優れた色相の改善効果が得られる。
【0031】
炭素数4〜16のアルキルアルコール(B)は、炭素数4〜16のアルキル基を有するアルコールであり、そのアルキル基は直鎖アルキル基であってもよく、分岐を有するものであってもよく、シクロロアルキル基であってもよいが、好ましくは直鎖アルキル基又は分岐アルキル基、より好ましくは直鎖アルキル基であり、アルキル基の炭素数は、好ましくは4〜14であり、より好ましくは4〜12である。
また、アルキルアルコール(B)は、直鎖アルキル鎖の末端にヒドロキシル基が結合した一級アルコールであることが好ましい。
【0032】
アルキルアルコール(B)としては、具体的にはブタノール(n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール)、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノールが挙げられる。
【0033】
これらのアルキルアルコール(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明のペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量は、0.001〜1.5質量%、好ましくは0.10〜1.25質量%である。
ペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量が過度に多いと成形品が白濁したり、熱や光に対する耐久性が悪化するおそれがある。このため、本発明のペレットは、上記範囲でアルキルアルコール(B)を含むものとする。
【0035】
また、本発明のペレット中のアルキルアルコール(B)含有量を上記範囲とするために、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、アルキルアルコール(B)をポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜3質量部含むものとし、好ましくはこの含有量は0.1〜2.5質量部、より好ましくは0.3〜2.2質量部である。
【0036】
<リン系安定剤(C)>
リン系安定剤(C)としては、好ましくは、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(C−I)(以下、単に「ホスファイト系安定剤(C−I)」と称す場合がある。)と、下記一般式(II)で表されるホスファイト系安定剤(C−II)(以下、単に「ホスファイト系安定剤(C−II)」と称す場合がある。)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、特にホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)を併用することが好ましい。
【0038】
(式(II)中、R
21〜R
25は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0039】
<ホスファイト系安定剤(C−I)>
ホスファイト系安定剤(C−I)としては、スピロ環骨格を有するホスファイト系化合物であればよく、特に制限はないが、例えば、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【0041】
(式(I)中、R
10A及びR
10Bはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表す。)
【0042】
上記一般式(I)中、R
10A,R
10B表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。R
10A,R
10Bがアリール基である場合、以下の一般式(I−1)、(I−2)、又は(I−3)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。
【0044】
(式(I−1)中、R
Aは炭素数1〜10のアルキル基を表す。式(I−2)中、R
Bは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0045】
ホスファイト系安定剤(C−I)としては、例えば、下記構造式(I−A)で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0047】
ホスファイト系安定剤(C−I)としてはまた、下記一般式(I−B)で表される化合物も好ましいものとして挙げられる。
【0049】
(式(I−B)中、R
11〜R
18は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、R
19〜R
22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
【0050】
上記一般式(I−B)において、R
11〜R
18は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが好ましく、また、a〜dは、0であることが好ましい。
【0051】
上記一般式(I−B)で表される化合物としては、下記構造式(I−b)で表されるビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0053】
上記のホスファイト系安定剤(C−I)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
<ホスファイト系安定剤(C−II)>
ホスファイト系安定剤(C−II)は、前記一般式(II)で表されるものである。
【0055】
前記一般式(II)中、R
21〜R
25で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基などが挙げられる。
【0056】
ホスファイト系安定剤(C−II)としては、特に、下記構造式(II−A)で表される(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0058】
上記のホスファイト系安定剤(C−II)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
<リン系安定剤(C)の含有量>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、リン系安定剤(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.005〜0.5質量部であり、好ましくは0.01〜0.4質量部、より好ましくは0.03〜0.3質量部である。ポリカーボネート樹脂組成物中のリン系安定剤(C)の含有量が上記下限未満では、リン系安定剤(C)を含有することによる色相の改善効果を得ることができず、上記上限を超えるとかえって色相が低下するおそれがあり、また成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、得られる成形品の光透過率が低下するおそれがある。
【0060】
ホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)を併用する場合、同様の理由から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物のホスファイト系安定剤(C−I)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.003〜0.3質量%、さらに好ましくは0.005〜0.2質量%、ホスファイト系安定剤(C−II)の含有量は好ましくは0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.003〜0.3質量%、さらに好ましくは0.005〜0.2質量%であって、これらの合計が上記範囲内であることが好ましい。
【0061】
また、ホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)とを併用することによる効果をより有効に得るために、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるホスファイト系安定剤(C−I)とホスファイト系安定剤(C−II)の含有質量比は1:1〜15、特に1:1.5〜10、とりわけ1:2〜5となるような量であることが好ましい。
【0062】
<エポキシ化合物(D)>
エポキシ化合物(D)としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6’−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル−3−t−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。これらのうち、特に、1分子中にエポキシ基を2個以上有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ化合物(D)は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がエポキシ化合物(D)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.003〜0.3質量%、特に好ましくは0.005〜0.2質量%である。エポキシ化合物(D)の含有量が上記下限未満の場合は、エポキシ化合物(D)を含むことによる色相の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えるとかえって色相が低下し、また湿熱安定性も低下する傾向がある。
【0064】
<その他の成分>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分としてさらに酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、充填剤等が配合されてもよい。
【0065】
<ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法>
本発明のペレットを製造する方法としては、例えば、各成分を一括又は分割して配合し、溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。ここで、各成分の配合量は、前述の範囲内であるが、このうち、アルキルアルコール(B)については、得られるペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量が前述の本発明の範囲ないしは好適範囲となるように調整する。即ち、ポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練に際しては、その溶融混練温度にもよるが、配合したアルキルアルコール(B)が一部分解するなどして減量する場合があり、得られるペレット中の含有量は必ずしもポリカーボネート樹脂組成物の調製のために配合したアルキルアルコール(B)量とは一致しない。そこで、本発明では、前述の本発明のポリカーボネート樹脂組成物を調製した上で、得られるペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量が前述の含有量となるように配合量や溶融混練温度等を制御する。
【0066】
各成分の配合方法としては、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機のホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。
【0067】
溶融混練には、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機等を使用することが好ましく、押出機先端の吐出ノズルから押出された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のストランドを、引き取りローラーにより引き取り、水槽内を搬送して冷却した後、ペレタイザーで所定の大きさにカットして芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得ることができる。
溶融混練温度は、得られるペレット中のアルキルアルコール(B)量が目的の範囲内となるように、240〜320℃、特に250〜300℃の範囲とすることが好ましい。
【0068】
[成形品の製造方法]
本発明の成形品の製造方法は、上述の本発明のペレットを成形するものである。
【0069】
本発明のペレットの成形方法には特に制限はないが、例えば、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法などが挙げられ、好ましくは射出成形法である。
【0070】
なお、成形時の樹脂の熱劣化を抑制し、色相に優れたものを得るために、本発明のペレットを成形する際には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で成形を行うことが好ましい。
【0071】
本発明のペレットを成形して得られる成形品は、従来品に比べて、色相が著しく良好であるため、照明装置の導光部材、特に、デイライトの光源のみならず白熱灯から発生する熱によっても加熱条件下に晒される自動車用照明装置の導光部材として好適に用いることができ、その優れた色相により、導光部材の光伝達効率を長期に亘り高く維持して、導光部材の交換頻度を大幅に低減することができる。
【0072】
[YI値]
本発明のペレットは、色相に著しく優れ、後掲の実施例の項に記載される方法に従って、本発明のペレットを用いて射出成形することにより得られた300mm長光路成形品について測定した300mm長のYI値が、通常約16.5以下、好ましくは15以下、より好ましくは14以下となり、従来品にない著しく優れた色相を呈する。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
実施例及び比較例において用いた材料は次のとおりである。
【0075】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
A1:三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロン(登録商標)H−4000F」:界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量15,000)
【0076】
<アルキルアルコール(B)>
B1:東京化成工業社製「n−ブタノール」
B2:東京化成工業社製「イソブタノール」
B3:東京化成工業社製「tert−ブタノール」
B4:東京化成工業社製「n−ペンタノール」
B5:東京化成工業社製「n−ヘキサノール」
B6:東京化成工業社製「n−ヘプタノール」
B7:東京化成工業社製「n−オクタノール」
B8:東京化成工業社製「n−ノナノール」
B9:東京化成工業社製「n−デカノール」
B10:東京化成工業社製「n−ウンデカノール」
B11:東京化成工業社製「n−ドデカノール」
【0077】
<リン系安定剤(C)>
<ホスファイト系安定剤(C−I)>
C1:Properties&Characteristics社製「Doverphos S−9228」:ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
<ホスファイト系安定剤(C−II)>
C2:ADEKA社製「アデカスタブAS2112」:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
【0078】
<ポリアルキレングリコール(X)>
X1:和光純薬社製「PEG#1000」:ポリエチレングリコール(数平均分子量600)
X2:日油社製「ユニオールD−2000」:ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000)
X3:日油社製「ユニオールPB−700」:ポリブチレングリコール(数平均分子量700)
【0079】
[実施例1〜22及び比較例1〜4]
<ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造>
表1,2に示す成分を表1,2に示す割合で配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物を得た。この混合物を、フルフライトスクリューとベントとを備えた単軸押出機(いすず化工機社製「VS−40」)に供給し、スクリュー回転数80rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度250℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレットについて以下の分析、評価を行った。
【0080】
<ペレット中の各成分の含有量の分析>
ペレット中のアルキルアルコール(B)の含有量は、以下のGC測定により求めた。また、ペレット中のポリアルキレングリコール(X)の含有量は、以下のNMR測定により求めた。
【0081】
<GC測定>
ペレットのジクロロメタン溶液を調製し、ここへアセトンを滴下してポリマー成分を再沈させて濾過し、濾液を濃縮したものをジクロロメタン5mlに溶解させた。このジクロロメタン溶液をキャピラリーカラム(UA−1)を装備したガスクロマトグラフィー(島津製作所製「GC−2010」)により分析した。ガスクロマトグラフィーの導入口温度は275℃、検出器温度は350℃、カラム温度は50℃から350℃まで昇温し、最終温度で5分間保持した。別途調整した標準物質から作成した検量線を用い、上記測定結果からペレット中の含有量を算出した、
【0082】
<NMR測定>
ペレットを重テトラクロロエタンに溶解して専用のサンプルチューブに封入し、核磁気共鳴装置(BRUKER製「AVANCEIII 500」)を用いて
1H NMRスペクトル測定を行い、その積分比を基に、ペレット中の含有量を算出した。
【0083】
<色相(YI)の評価>
ペレットを120℃で4〜8時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC100」)により、280℃の温度で300mm長光路成形品(6mm×4mm×300mm、L/d=50)を成形した。この成形品について、長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA1」)を使用して300mm長のYI値を測定した。
【0084】
これらの結果を表1,2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1,2より次のことが分かる。
リン系安定剤(C)を配合してもアルキルアルコール(B)を配合していない比較例1は、色相(YI)が劣る。
アルキルアルコール(B)の代りにポリアルキレングリコール(X)を配合した比較例2〜4のうち、比較例2,3は白濁してしまい、透明性が損なわれた。比較例4は、比較例1に比べて色相はわずかに改善されるが、不十分である。
これに対して、アルキルアルコール(B)とリン系安定剤(C)を配合し、ペレット中にアルキルアルコール(B)を所定の割合で含有する実施例1〜22のペレットは、色相(YI)が極めて良好である。