【解決手段】ラッチと係合しリリース分力によりラッチから離脱可能なラチェット部材15と、ラチェット部材15のラッチからの離脱を規制するラチェット抑え22と、ラチェット抑え22を変位させるパワーリリース手段とを有する。ラチェット部材15はベースレバーとポールレバー20とを備える。ベースレバーはラチェット抑え22の変位により非規制位置に変位してリリース分力によりポールレバー20をラッチから離脱可能にする。ポールレバー20には手動リリース手段32を連結する。ポールレバー20と手動リリース手段32との間にはロック機構35を設ける。
請求項2において、前記ロック機構は前記外側開扉ハンドル10Bの作動を不能若しくは無効にするロック状態と可能にするアンロック状態とに切り替わる外側ロック機構34と前記内側開扉ハンドル10Cの作動を不能若しくは無効にするロック状態と可能にするアンロック状態とに切り替わる内側ロック機構35とから構成した車両ドアラッチ装置。
請求項3において、前記ラッチ13はラッチユニット10Aのラッチボディ11にラッチ軸12により軸止させ、前記外側ロック機構34は前記外側開扉ハンドル10Bの近傍に、また、前記内側ロック機構35は前記内側開扉ハンドル10Cの近傍にそれぞれ配設した車両ドアラッチ装置。
請求項3又は4のいずれか一項において、前記外側ロック機構34および前記内側ロック機構35は、前記ラチェット抑え22が前記ブロック位置から前記解放位置に変位した後も、ロック状態若しくはアンロック状態に留まる構成とした車両ドアラッチ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図14の模式図のように、本発明の車両ドアラッチ装置10は、ドアに固定されるラッチユニット10Aと、ラッチユニット10Aに接続されるドアの外側開扉ハンドル10Bと、ラッチユニット10Aに接続されるドアの内側開扉ハンドル10Cとを有している。
【0012】
図1は閉扉状態のラッチユニット10Aの正面を示しており、ラッチユニット10Aのラッチボディ11には、ラッチ軸12によりラッチ13が軸止される。ラッチ13はラッチバネ14(弾力方向を示す矢印による図示)により開扉方向(アンラッチ方向・反時計回転方向)に付勢される。
【0013】
ラッチボディ11の下部側にはラチェット部材15がラチェット軸16により軸止される。ラチェット部材15はラチェットバネ17(
図11)によりラッチ係合方向に付勢される。ラチェット部材15の爪部15aは、アンラッチ状態(
図3(A)、
図4(D))では、ラチェットバネ17の弾力によりラッチ13の外周縁13aに当接させる。
【0014】
車両ドアが閉扉方向に移動すると、車体(図示ない)に固定されたストライカ18は、ラッチボディ11に形成した水平方向のストライカ進入路11a内に相対的に進入して、ラッチ13のU型のストライカ係合溝13bに当接し、ラッチ13をラッチバネ14の弾力に抗して閉扉方向(フルラッチ方向・時計回転方向)に回転させる。ラッチ13には、典型的な周知のラッチと同様に、その外周縁にハーフラッチ係合部13cとフルラッチ係合部13dとを並設させる。
【0015】
ラッチ13は、通常、
図3(A)のアンラッチ位置から、爪部15aがハーフラッチ係合部13cと係合可能となるハーフラッチ位置(
図3(B))、および、爪部15aがフルラッチ係合部13dと係合可能となるフルラッチ位置(
図3(C))を超えて、
図3(D)の余剰回転位置まで回転する。ラッチ13は余剰回転位置まで回転した後、ラッチバネ14の弾力及びドアと車体との間に設けられるシール部材(図示省略)の反発力(以後、「ラッチリターン力」と称する)により、アンラッチ方向(反時計回転方向)に戻される。
【0016】
他方、ラチェット部材15の爪部15aは、ラチェットバネ17の弾力でラッチ離脱位置からラッチ係合位置に変位し、余剰回転位置からフルラッチ位置に戻されるラッチ13のフルラッチ係合部13dに当接係合し、
図3(E)のフルラッチ状態となり、閉扉が完了する。
【0017】
ラッチ13のフルラッチ係合部13dからラチェット部材15の爪部15aに伝わるラッチリターン力の多くは、後述するようにメイン分力F1としてラチェット軸16により支受されるが、ラッチリターン力の一部はリリース分力F2としてラチェット部材15をラッチ離脱方向(反ラッチ係合方向)に押し出す方向にも作用するように設定する。
【0018】
(ラチェット部材15)
本発明のラチェット部材15は、
図5〜8のように、ベースレバー19とポールレバー20とに分割形成する。ベースレバー19およびポールレバー20は、それぞれ構造体となる金属プレート19a、20aと、その樹脂カバー19b、20bとを備えたインサート成形品である。樹脂カバー19bは、
図3、
図4からは省略してある。
【0019】
ベースレバー19の基部はラチェット軸16に軸止させ、ポールレバー20の基部は連結軸15bによりベースレバー19の先端部に軸止させる。本発明では、連結軸15bはポールレバー20に一体形成して、樹脂カバー19bに形成した軸孔19c(
図5参照)に軸止させている。爪部15aはポールレバー20の金属プレート20aの端部に形成している。
【0020】
ベースレバー19の金属プレート19aの先端部には二叉部19dを形成し、ポールレバー20の基部側は二叉部19d内に臨ませる。ポールレバー20の基部側と二叉部19dとの間にはギャップ21(
図6参照)を形成する。ギャップ21によりポールレバー20は連結軸15bを中心にベースレバー19に対して単独で所定角度回転可能に構成する。
【0021】
ラチェットバネ17は、
図11のように、好適には、トーションコイルバネ製とし、中央のコイル部17aは連結軸15bの外周に配置し、一方のバネ脚部17bはベースレバー19に当接させ、他方のバネ脚部17cはポールレバー20に当接させる。このバネ配置によれば、ラチェットバネ17の弾力は、ベースレバー19に対しては回転方向には殆ど作用せず、専ら、ポールレバー20を単独で連結軸15bを中心にラッチ係合方向へ付勢する。
【0022】
ポールレバー20をベースレバー19に軸止する連結軸15bは、ラチェット部材15の長さ方向の中間位置に配置させる。ラッチリターン力によりラチェット部材15にリリース分力F2が生じると、専ら、中間位置の連結軸15bにラッチ離脱方向のリリース分力F2が作用する。リリース分力F2を受けるとラチェット部材15は中折れ状態に屈折し(
図4(B)参照)、爪部15aはフルラッチ係合部13dから離脱する。換言すれば、本願のラチェット部材15は、ラッチリターン力によりラッチ13から押し出されてラッチ13から離脱する。このように、本願のラチェット部材15は、従来のラチェットとは異なり、単独ではリリース分力F2に抗してラッチ13をフルラッチ位置に維持することはできないとの特徴を備える。
【0023】
(ラチェット抑え22)
ラチェット部材15の側方近傍には、ラチェット部材15のラッチ離脱方向への変位をブロックしうるラチェット抑え22を配置する。ラチェット抑え22はラッチボディ11の正面側に支持軸23により回転自在に軸止させる。ラチェット抑え22は支持軸23を中心に360度回転することで、ブロック位置(
図4(A)、
図4(D))と、解放位置(
図4(B))と、押圧位置(
図4(C))とに変位する。ラチェット抑え22の外周には、
図10のように、ブロック面22aと、解放面22bと、復帰カム面22cとを形成する。
【0024】
(ブロック面22a)
ラチェット抑え22のブロック面22aは支持軸23を中心とする円弧状である。ラチェット抑え22がブロック位置にあると、ブロック面22aがベースレバー19の一方の外壁19eに対向・対峙する。
【0025】
ブロック面22aが外壁19eと対峙するブロック状態では、ラッチ13からのラッチリターン力がラチェット部材15に伝わって、連結軸15bにラッチ離脱方向のリリース分力F2が作用しても、リリース分力F2は円弧状のブロック面22aにより確実に支受され、連結軸15b(ベースレバー19)はラッチ離脱方向に移動できない。このため、ブロック状態では、ラチェット部材15とラッチ13との係合状態は維持され、
図1および
図4(A)の閉扉状態は継続される。
【0026】
ラチェット抑え22のブロック位置は、初期位置又は待機位置でもあり、ラチェット抑え22は、通常、ブロック位置に留まっている。なお、外壁19eがブロック位置のブロック面22aに当接する位置がベースレバー19の規制位置となる。
【0027】
(解放面22b)
解放面22bはブロック面22aより短径に形成する。ラチェット抑え22が
図1、
図4(A)において反時計回転すると、解放面22bが外壁19eに対峙して、ベースレバー19に対するブロックは解除される。すると、ベースレバー19はリリース分力F2によりラッチ離脱方向に移動して、規制位置から非規制位置に変位する。ベースレバー19が非規制位置に変位すると、爪部15aはフルラッチ係合部13dからラッチ離脱方向に弾き出され、ラッチ13とラチェット部材15との係合は解除され、開扉可能となる。
【0028】
解放面22bと外壁19eとが対峙する位置がラチェット抑え22の解放位置となる。また、ベースレバー19の規制位置とは外壁19eがブロック位置のブロック面22aに当接する位置であり、ベースレバー19の非規制位置とはリリース分力F2によりラッチ離脱方向に移動してラッチ13とラチェット部材15との係合を解除できる位置である。
【0029】
(復帰カム面22c)
復帰カム面22cは解放面22bとブロック面22aとの間に設けられ、解放面22bからブロック面22aに至るに従い長径に形成する。解放面22bとの対峙で非規制位置へ移動したベースレバー19は、外壁19eが復帰カム面22cに当接することで、徐々にラッチ係合方向に押し込まれて規制位置に復帰する。解放面22bが外壁19eと対峙する位置がラチェット抑え22の押圧位置となる。
【0030】
ラチェット抑え22の支持軸23は、リリース分力F2により連結軸15bが移動する延長軌跡線上に配置するのが好ましい。これにより、連結軸15bは支持軸23に向かって移動することになり、また、外壁19eがブロック面22aに当接する点と、連結軸15bと、支持軸23とを実質的に直線状に配置できる。このため、リリース分力F2を効率よく吸収できると共に、ラチェット抑え22とラチェット部材15とをコンパクトに配置できる。
【0031】
(パワーリリース手段24)
ラチェット抑え22は、ラッチボディ11の背面側に設けたパワーリリース手段24からの電動リリース操作力により変位するように構成する。
【0032】
図2のように、パワーリリース手段24のモータ25の出力軸には円筒ウォーム26を設け、円筒ウォーム26にはウォームホイール27の外周ギア27aを噛合させる。ウォームホイール27のホイール軸28は支持軸23に対して同一軸芯に設定する。ホイール軸28は支持軸23と兼用して単一軸とすることも可能であるが、実施例では、ホイール軸28はラッチボディ11の正面側に長く突出させた中空軸とし、中空内部に支持軸23を挿通させている。
【0033】
ウォームホイール27とラチェット抑え22とは連結ピン29で互いに一体回転するように連結する。これにより、パワーリリース手段24が作動すると、モータ25の動力によりウォームホイール27が回転し、連結ピン29を介してラチェット抑え22は
図1、
図4において反時計回転する。
【0034】
(開扉動作)
図4はラチェット抑え22の回転に伴うラチェット部材15およびラッチ13の動作を順に示している。なお、ラチェット抑え22は360度回転するのに約850ミリ秒を要するのに対して、ラッチ13はラッチリターン力により約50ミリ秒程度の短時間でフルラッチ位置からアンラッチ位置に復帰する。このため、
図4においては、経過時間に対する各パーツの動きは誇張して示してある。
【0035】
図4(A)はフルラッチ状態を示しており、パワーリリース手段24の起動によりラチェット抑え22が反時計回転すると、ベースレバー19の外壁19eはブロック面22aから外れて解放面22bと対峙し、
図4(B)のように、ベースレバー19はラチェット抑え22によるブロックから解除される。ブロックが解除されると、ベースレバー19は連結軸15bに作用するリリース分力F2(
図1、
図11参照)により反時計回転し、他方、ポールレバー20はラチェットバネ17の弾力で時計回転方向に付勢されることから、ラチェット部材15は中折れ状態に屈折し、爪部15aはフルラッチ係合部13dからラッチ離脱方向に弾き出され、ラッチ13はアンラッチ回転し、開扉が行われる(
図4(C)参照)。
【0036】
パワーリリース手段24によるラチェット抑え22の反時計回転は、ラッチ13が解放された後も継続され、ラチェット抑え22の復帰カム面22cがベースレバー19の外壁19eに当接する。すると、復帰カム面22cはベースレバー19をラッチ係合方向に徐々に押し込み(
図4(C)参照)、ベースレバー19を規制位置に復帰させる。その後、ベースレバー19はラチェット抑え22のブロック面22aにより、
図4(D)のように、規制位置に保持される。
【0037】
(360度回転制御)
パワーリリース手段24は、ラチェット抑え22が360度回転して、
図4(D)のように、初期位置に復帰したら作動を停止する。好適には、パワーリリース手段24のECU30(
図13)はラチェット抑え22の回転位置をリミットスイッチ31により検出し、モータ25の回転を制御する。なお、タイマーでパワーリリース手段24の作動時間を制御することで、ラチェット抑え22を初期位置に復帰させることもできる。
【0038】
(リターン式ラチェット抑え22)
なお、ラチェット抑え22はブロック位置から解放位置に変位した後、モータ25の反転によりブロック位置に復帰するように構成することも可能である。この場合、解放面22bは復帰カム面22cの機能を備える形状にする。
【0039】
(ハーフラッチ状態)
再び
図3(A)〜(E)を参照して閉扉動作中のラチェット部材15の作動について追加説明する。図から明らかなように、閉扉動作中は、ラチェット抑え22はブロック位置に留まっており、ラチェット部材15のベースレバー19は継続して規制位置に保持されている。
図3(A)のように、ラッチ13の外周縁13aに当接しているポールレバー20は、ラッチ13が閉扉回転すると、ベースレバー19との間に形成されるギャップ21によりいったんラッチ離脱方向に押し出される。ついで、ラッチ13がハーフラッチ位置なると、ポールレバー20は、ラチェットバネ17の弾力によりラッチ係合方向に変位可能となる。このため、車両ドアの閉扉力が弱く、ラッチ13がハーフラッチ位置を超えた後、フルラッチ位置を超えられなかったときは、
図12のように、従来のドアラッチ装置と同様に、ポールレバー20の爪部15aがハーフラッチ係合部13cに係合し、ラッチ装置10をハーフラッチ状態にすることができる。
【0040】
(ハーフラッチ状態の維持)
図12のハーフラッチ状態におけるラチェット抑え22とラチェット部材15との関係は、
図3(D)のフルラッチ状態と同一である。したがって、ハーフラッチ状態においても、ラチェット部材15の連結軸15bに作用するリリース分力F2はラチェット抑え22により支受され、爪部15aとハーフラッチ係合部13cとの係合状態は保持され、ラッチ13のアンラッチ回転は防止され、予期せぬ車両ドアの開扉を避けられる。
【0041】
(ハーフラッチ状態の解除)
図12のハーフラッチ状態では、ポールレバー20は規制位置のベースレバー19に対してギャップ21により連結軸15bを中心に単独でラッチ離脱方向に変位可能である。このため、爪部15aとハーフラッチ係合部13cとの係合は、ラッチ13をフルラッチ位置に向けて回転させることで解除できる。
【0042】
具体的には、例えば、ドアを閉扉方向に押し込むことでラッチ13をフルラッチ位置に向けて回転させると、ハーフラッチ係合部13cとフルラッチ係合部13dとの間に形成された連結斜面13eがポールレバー20に当接する。すると、ポールレバー20は連結斜面13eに押されてベースレバー19を回転させることなく単独でラッチ離脱方向に移動する。従って、従来と同じように、強くドアを閉扉方向に押し込んでラッチ13をフルラッチ位置まで回転させれば、爪部15aをハーフラッチ係合部13cから離脱させてフルラッチ係合部13dに係合させることができる。
【0043】
このように、本発明では、ラチェット部材15のラッチ離脱方向への移動をラチェット抑え22によりブロックする構成において、ラチェット抑え22を回転させることなく、ラチェット部材15をハーフラッチ係合部13cから離脱させることができるため、ラッチ13の外周にフルラッチ係合部13dと共にハーフラッチ係合部13cを並設することが可能となる。
【0044】
(ロータリー式ラチェット抑え22の効果)
ロータリー式のラチェット抑え22は360度回転することで初期位置に復帰するため、ラチェット抑え22を初期位置に復帰させるバネが不要となり、バネを使用しないため、パワーリリース手段24によりラチェット抑え22を回転させるときの抵抗が少なくなる。
【0045】
更に、ラチェット抑え22は一方向のみに回転して初期位置に復帰するため、パワーリリース手段24の出力を反転させるための制御回路を不要にできる。ラチェット抑え22およびパワーリリース手段24の構造も簡素化できる。
【0046】
(外力P1、P2)
ラッチ13のラッチリターン力は、フルラッチ係合部13dと爪部15aとの当接点から連結軸15bに外力P1として伝達され、連結軸15bからラチェット軸16に外力P2として伝達される。これら外力P1,P2を分解したものがメイン分力F1とリリース分力F2である。
【0047】
(手動リリース手段32)
本発明の手動リリース手段32は、
図14のように、外側開扉ハンドル10Bおよび内側開扉ハンドル10Cを有している。外側開扉ハンドル10Bおよび内側開扉ハンドル10Cは、押したり引いたりすることで作動する一般的なハンドルである。
【0048】
図11、
図14のように、手動リリース手段32からの手動リリース操作力は、ラチェット部材15のポールレバー20に伝達させる。具体的には、ポールレバー20の先端にラチェットピン20cを設け、手動リリース操作力をオープンレバー33等を介してラチェットピン20cに伝達させる。手動リリース操作力を受けたポールレバー20は、連結軸15bを中心にラッチ離脱方向に回転する。ポールレバー20のラッチ離脱方向の回転は、ギャップ21によりベースレバー19に対して独立して行える。このため、パワーリリース手段24に不具合が起きても、手動リリース手段32による手動リリース操作力で開扉可能となる。
【0049】
このように、本発明では、手動リリース手段32はポールレバー20を動かし、パワーリリース手段24はラチェット抑え22を動かすことで、それぞれアンラッチを行っており、手動リリース手段32とパワーリリース手段24とは互いに干渉しない。ラチェット抑え22が手動リリース手段から完全に独立していることも本発明の特徴のひとつである。
【0050】
(外側ロック機構34と内側ロック機構35)
本発明では、外側開扉ハンドル10Bの近傍に外側ロック機構34を、また、内側開扉ハンドル10Cの近傍に内側ロック機構35を個別に設け、その作動を不能若しくは無効にできるようにする。外側ロック機構34および内側ロック機構35は、対応する外側開扉ハンドル10Bおよび内側開扉ハンドル10Cの変位をブロックすることで開扉操作を不能にする。外側ロック機構34は、好適には、悪意の操作を避けるためにディンプルキーのような防犯性を備えたキーでブロック位置(ロック位置)とアンブロック位置(アンロック位置)とに切り替わるキーシリンダーで構成する。
【0051】
内側ロック機構35は、好適には、閂機構であり、室内のロックボタン等の操作によりブロック位置(ロック位置)とアンブロック位置(アンロック位置)とに切り替わる。
【0052】
このように、開扉ハンドル10B、10Cの近傍にロック機構34、35を個別に設けると、ラッチユニット10Aを簡素化できる。また、開扉ハンドル10B、10Cとロック機構34、35をユニット化できて製造が容易になりドアへの組み付けも容易になる。
【0053】
(常時ブロック)
本発明では、外側ロック機構34および内側ロック機構35はブロック状態を初期設定とし、通常時は、手動リリース手段32の手動リリース操作力による開扉は行えないようにする。
【0054】
本発明では、パワーリリース手段24はラチェット抑え22を回転させることでアンラッチを行い、手動リリース手段32はポールレバー20を回転させることでアンラッチを行う。そして、ラチェット抑え22とポールレバー20とは、互いに干渉されることなく単独で開扉移動を行えるので、手動リリース手段32を常時ブロック状態で使用することが可能となる。このため、手動リリース手段32をパワーリリース手段24が作動不能になったときのフェールセーフ手段としての機能に特化させることが可能となる。
【0055】
(内側ロック機構35の非ブロック)
本発明では、外側開扉ハンドル10Bおよび内側開扉ハンドル10Cに対して外側ロック機構34および内側ロック機構35を個別に設けているため、内側ロック機構35だけをアンブロック状態として、室内からの手動開扉を可能とすることも可能である。
【0056】
(チャイルド機構36)
本実施例では、内側開扉ハンドル10Cは、チャイルド機構36を介してオープンレバー33に操作的に連結させている。チャイルド機構36はオープンレバー33に対してロックとアンロックに切り替わる切替部37を備え、切替部37のスライドにより内側開扉ハンドル10Cとオープンレバー33との連結を係合離脱させる。内側開扉ハンドル10Cをチャイルド機構36を介してオープンレバー33に連結することで、子供による内側開扉ハンドル10Cの不用意な開扉操作による開扉を防止できる。
【0057】
(開扉操作スイッチ38)
パワーリリース手段24はドアやリモコンの開扉操作スイッチ38により作動する。開扉操作スイッチ38は好適には静電センサーであり、外側開扉ハンドル10Bに取り付ける。開扉操作スイッチ38は、キーレスエントリーシステムのような認証手段と連動させる。パワーリリース手段24は室内からのスイッチ操作でも作動するように構成する。
【0058】
(操作系の不一致)
本発明では、ドアは開扉操作スイッチ38によりパワーリリース手段24を作動させて行うため、外側開扉ハンドル10Bおよび内側開扉ハンドル10Cが、共にブロック状態であっても、又は一方のみがブロック状態であっても、操作系の不一致は感じさせることはない。
【0059】
(バッテリー39)
図14のように、ラッチユニット10Aには、非常用のバッテリー39を設ける。バッテリー39は全てのドアのラッチユニット10Aにそれぞれ設けることが好ましい。バッテリー39には小型軽量なキャパシタが好ましい。バッテリー39により、エンジン作動用の電源電圧が不足した場合でも、パワーリリース手段24を作動させることができる。
【0060】
(凍結対策)
図2のように、ウォームホイール27の裏面には、約半周に亘る円弧状のリブ40を形成し、ラッチボディ11にはリブ40との当接でオンになるリブスイッチ41を設けている。リブ40はパワーリリース手段24の作動後、所定時間経過するとリブスイッチ41に当接する。この所定時間とは、パワーリリース手段24の作動によりラッチ13がラチェット部材15から解放されてアンラッチ位置に復帰するまでに充分な時間であり、かつ、ラチェット抑え22の復帰カム面22cがベースレバー19に当接するまでに要する時間より短い時間となる。
【0061】
パワーリリース手段24は、リブスイッチ41がオンである間に、ラッチ13のアンラッチ位置への復帰が検出されなかったときには、ラッチ13の回転異常が生じたと見なして、作動を停止してラチェット抑え22の回転を止める。ラッチ13の回転異常の具体例としては、凍結によりドアが車体に固着してラッチリターン力だけでは正常に開扉できないときや、車両の強い傾斜によりラッチリターン力が不足してドアを開くことが出来ない状態などである。
【0062】
ラッチ13の回転異常が発生したときに、パワーリリース手段24の作動を継続させてラチェット抑え22をブロック位置に復帰させてしまうと、ラチェット部材15の爪部15aは再度ラッチ13のフルラッチ係合部13dやハーフラッチ係合部13cに係合してしまい、メカ的に開扉できない状態に戻ってしまう。このため、所定条件が満たされたときは、ラチェット抑え22の復帰カム面22cがベースレバー19に当接する前にラチェット抑え22の回転を中止させ、ラチェット部材15の爪部15aがフルラッチ係合部13dやハーフラッチ係合部13cと再係合しないようにする。爪部15aとフルラッチ係合部13dやハーフラッチ係合部13cとの再係合を回避できれば、例えば、凍結の際には、強い力でドアを引っ張ったり、熱で氷を溶かすなどの対策で、充分に開扉を期待できる。
【0063】
リブ40とリブスイッチ41の機能をタイマー42で代用することもできる。タイマー42により、パワーリリース手段24が起動してから、ラッチ13が正常にアンラッチ位置に復帰するまでに充分な時間と、ラッチ13の回転異常と判断できる時間とを設定し、ECU30で制御する。
【0064】
ラッチ13のアンラッチ位置の検出には、ラッチ13の回転位置を検出するラッチスイッチ43を用いるのが好ましい。また、ストライカ18は、ラッチ13のアンラッチ回転によりラッチボディ11のストライカ進入路11aから離脱することから、ストライカ進入路11aに対するストライカ18の位置をストライカスイッチ44により検出することでも、ラッチユニット10Aのアンラッチ状態を検出することは出来る(特許4530912号公報参照)。車体に配備される既存のカーテシースイッチからの信号もアンラッチ状態の検出に利用できる。
【0065】
(強制開扉)
ラチェット部材15のベースレバー19には、支持軸23に向かって伸びている当接アーム19fを形成する。当接アーム19fはベースレバー19の樹脂カバー19bに一体形成するのが好ましい。当接アーム19fの先端側には当接面19gを形成する。当接面19gはラチェット軸16の軸芯に対して半径方向に位置する面である。
【0066】
当接面19gは、パワーリリース手段24によりウォームホイール27が回転したとき連結ピン29と当接し、ベースレバー19を強制的にラッチ離脱方向に回転させる。これはフェールセーフ機構として機能する。何らかの異常により、ラチェット部材15に充分なリリース分力F2が作用せず、ラチェット抑え22によるブロック状態が解除されてもラチェット部材15がラッチ離脱方向に移動しなかったとき、連結ピン29がベースレバー19を強制的にラッチ離脱方向に回転させて、開扉可能状態にする。