【解決手段】取付面と平行な方向が開口する収容孔51を有する合成樹脂製のケース5と、金属製の芯材を合成樹脂製の被覆材により被覆することで形成されケース5を挿通するリンク4と、収容孔51に収容され、リンク4の表面を摺動可能なシュー6と、収容孔51に収容され、シュー6をリンク4の表面に向けて付勢するスプリング7と、ドアの全開位置を規制する全開ストッパ41と、ケース5に対して回動させられることにより、ケース5における収容孔51の開口が形成される開口面55に固定されて収容孔51を閉塞するとともに、スプリング7を収容孔に圧縮状態で保持する合成樹脂製の蓋部材8、80、800とを備える。
前記蓋部材は、前記ケースに対して回動させられることにより、前記ケースに設けた雌ねじ部または雄ねじ部に螺合して前記ケースに固定されることを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアチェック装置。
前記蓋部材の表面中央に、前記蓋部材を前記ケースに組み付けるための組付治具が嵌り込む凹部を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車用ドアチェック装置。
前記シューは、有底筒状を呈して、前記ケースの前記収容孔に前記圧縮コイルスプリングの軸方向へ移動可能に収容されるとともに、前記圧縮コイルスプリングを軸方向に収容するスプリング収容凹部を有することを特徴とする請求項10記載の自動車用ドアチェック装置。
前記シューの外周面に、前記ケースの前記収容孔の内周面に摺接可能であって、前記圧縮コイルスプリングの軸方向へ延伸する突条部を複数設けたことを特徴とする請求項11記載の自動車用ドアチェック装置。
前記ケースを前記取付面に固定するためのボルトは、頭部が前記ケースに埋め込まれて固着されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の自動車用ドアチェック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の自動車用ドアチェック装置は、スプリングが金属製であることに相俟って、装置の各要素の中でも大型のケース及びカバーが金属製であることから、装置全体の重量増を招くとともに、ドアの開閉動作に伴うシューのケース内での上下動、及びスプリングの伸縮動作時に、合成樹脂と金属との異種材料同士の擦れ音及び金属同士の擦れ音等による異音が発生し、品質の低下を招く虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、軽量化を図るとともに、異音発生を低減させた自動車用ドアチェック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、自動車のドアまたは車体のいずれか一方の取付面に固定され、当該取付面と平行な方向が開口する収容孔を有する合成樹脂製のケースと、一端部が前記ドアまたは前記車体とのいずれか他方に枢支軸により枢支されるとともに、金属製の芯材を合成樹脂製の被覆材により被覆することで形成され、前記ケースを長手方向へ移動可能に挿通するリンクと、前記ケースの前記収容孔に収容され、前記リンクの表面を長手方向に沿って相対移動可能なシューと、前記ケースの前記収容孔に収容され、前記シューを前記リンクの表面に向けて付勢するスプリングと、前記リンクの他端部に設けられ前記ドアの全開位置を規制する全開ストッパと、前記ケースに対して回動させられることにより、前記ケースにおける前記収容孔の開口が形成される開口面に固定されて前記収容孔を閉塞するとともに、前記スプリングを前記収容孔に圧縮状態で保持する合成樹脂製の蓋部材と、を備えることを特徴とする。これにより、ケースを合成樹脂により形成したことで軽量化を図ることができるとともに、ケースと当該ケース内に収容されたシュー及びスプリングとの接触による擦れ音等による異音発生を軽減できる。
【0007】
好ましくは、前記ケースは、前記収容孔の周囲に外方へ張り出した形状の複数の押さえ部を有し、前記蓋部材は、前記ケースの前記開口面に対向する複数の嵌合部を有し、前記ケースに対して回動させられることにより、前記複数の嵌合部が前記複数の押さえ部にそれぞれ嵌合して前記ケースに固定されるものとする。これにより、組立工程において、蓋部材を回転させることでケースに簡単に固定できる。
【0008】
好ましくは、前記ケースは、前記収容孔の周囲に前記蓋部材の回転方向へ延伸する複数の押さえ部を有し、前記蓋部材は、長辺方向と短辺方向とを有する形状を呈し、前記ケースに対して回動させられることにより、前記長辺方向の両端部が前記複数の押さえ部にそれぞれ嵌合して前記ケースに固定されるものとする。これにより、組立工程において、蓋部材を回転させることでケースに簡単に固定できる。
【0009】
好ましくは、前記ケースは、前記ケースに対する前記蓋部材の回動量を規制する阻止部を有するものとする。これにより、蓋部材をケースに回転させて固定する際、蓋部材を確実に正規の位置に止めることができる。
【0010】
好ましくは、前記蓋部材は、前記ケースに対して回動させられることにより、前記ケースに設けた雌ねじ部または雄ねじ部に螺合して前記ケースに固定されるものとする。これにより、組立工程において、蓋部材を回転させることでケースに簡単に固定できる。
【0011】
好ましくは、前記ケースの前記雌ねじ部は、前記収容孔の内周面に設けられ、前記蓋部材は、裏面に前記収容孔に内嵌合する円形の押込み部を有し、前記押込み部の外周面に前記ケースの前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を設けたものとする。これにより、組立工程において、蓋部材を回転させることでケースに簡単に固定できる。
【0012】
好ましくは、前記蓋部材の表面中央に、前記蓋部材を前記ケースに組み付けるための組付治具が嵌り込む凹部を設けたものとする。これにより、組立工程において、組立治具により蓋部材を確実にケースに固定できる。
【0013】
好ましくは、前記蓋部材の前記凹部に、前記組付治具が前記蓋部材の回動方向に対して係合する係合部を設けたものとする。これにより、組立工程において、組立治具の回転により蓋部材を確実にケースに固定できる。
【0014】
好ましくは、前記蓋部材を前記ケースに溶着したものとする。これにより、蓋部材をケースにより強固に固定できる。
【0015】
好ましくは、前記スプリングは、圧縮コイルスプリングであり、前記蓋部材は、前記ケースに固定される際、前記圧縮コイルスプリングの端部に当接して前記圧縮コイルスプリングを圧縮方向へ押し込む押込み部を有するものとする。これにより、蓋部材をケースに固定する際、圧縮コイルスプリングを確実に圧縮させることができる。
【0016】
好ましくは、前記シューは、有底筒状を呈して、前記ケースの前記収容孔に前記圧縮コイルスプリングの軸方向へ移動可能に収容されるとともに、前記圧縮コイルスプリングを軸方向に収容するスプリング収容凹部を有するものとする。これにより、圧縮コイルスプリングを安定した状態にケース内に保持できる。
【0017】
好ましくは、前記シューの外周面に、前記ケースの前記収容孔の内周面に摺接可能であって、前記圧縮コイルスプリングの軸方向へ延伸する突条部を複数設けたものとする。これにより、シューはケースの収容孔内で円滑に移動できる。
【0018】
好ましくは、前記ケースの前記収容孔を横断面視で多角形とし、前記シューの前記突条部は、前記収容孔の多角形の内隅に係合するものとする。これにより、シューは、ケースの収容孔で不必要に回転することなく安定した状態に保持される。
【0019】
好ましくは、前記シューの前記突条部の内側に、前記突条部の弾性変形を可能にするための空洞部を設けたものとする。これにより、ケースの収容孔でのシューのがた付きを阻止して、より円滑な移動を可能にする。
【0020】
好ましくは、前記ケースを前記取付面に固定するためのボルトは、頭部が前記ケースに埋め込まれて固着されるものとする。これにより、ボルトをケースに強固に固着できる。
【0021】
好ましくは、前記ケースは、前記枢支軸を中心とする前記リンクの振れを規制するガイド部を有するものとする。これにより、リンクの不必要な振れを防止できる。
【0022】
好ましくは、前記全開ストッパは、前記芯材の他端部を略90度捻ることで形成されるものとする。これにより、全開ストッパのケースに対する当接面を広くでき、強度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、ケースを合成樹脂により形成したことにより、軽量化を図ることができるとともに、ケースと当該ケース内に収容されたシュー及びスプリングとの接触による擦れ音等による異音発生を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施例を
図1〜13に基づいて説明する。
図1は、第1実施例の自動車用ドアチェック装置1の斜視図、
図2は、同じく側面図、
図3は、同じく平面図、
図4は、同じく分解斜視図である。
【0026】
自動車用ドアチェック装置1は、自動車の車体Bに図示略の上下一対のドアヒンジにより枢支されるドアDの開閉動作に抵抗力を付与してドアDを任意の開位置に保持したり全開位置に停止させたりする機能を有するものであって、基端部が車体Bに固定されるブラケット2に上下方向を向く枢支軸3により車内外方向(
図3において上下方向)へ揺動可能に枢支されるとともに、先端部にドアDを全開位置に停止させるための全開ストッパ41を一体的に形成したリンク4と、当該リンク4が挿通されるとともに、ドアD内の取付面D1に固定される合成樹脂製のケース5と、ケース5に収容されドアDの開閉動作に伴ってリンク4の上下の表面を長手方向に沿って摺動する上下のシュー6、6と、ケース5に収容され上下のシュー6、6をそれぞれリンク4の上下の表面に向けて付勢する上下の圧縮コイルスプリング7、7と、ケース5に嵌合固定されることで、上下のシュー6、6及び圧縮コイルスプリング7、7が収容されるケース5の収容孔51の上下の開口を閉塞する上下の蓋部材8、8とを備える。
【0027】
なお、自動車用ドアチェック装置1は上下対称構造であるため、以下の説明においては、重複説明を回避するため、シュー6、スプリング7及び蓋部材8の要素については、上の要素を代表して説明する。したがって、下の要素については、上の要素の説明で使用する表現「上」を「下」、「下」を「上」にそれぞれ置き換えて理解するものとする。
【0028】
ドアDが閉鎖位置にある場合、ケース5は、
図2、3に2点鎖線で示すように、リンク4の基端部寄り側に位置している。ドアDが閉鎖位置から開動作すると、当該開動作に伴って、ケース5はリンク4の先端部側(
図2、3において左側)へ向けて移動するとともに、リンク4は枢支軸3を中心に車外方向(
図3において反時計方向)へ回動する。そして、
図2、3に実線で示すように、ケース5が全開ストッパ41に当接することで、ドアDは全開位置に停止する。また、ドアDが全開位置から閉動作した場合には、ケース5はリンク4の基端部側へ向けて移動するとともに、リンク4は枢支軸3を中心に
図3において時計方向へ回動して、
図2、3に2点鎖線で示す閉鎖状態となる。
【0029】
ケース5に収容されたシュー6は、ケース5がリンク4の長手方向へ移動することに伴って、圧縮コイルスプリング7の付勢力によりリンク4の上下の表面に設けられる後述のディテント面に押圧された状態でディテント面を摺動することで、ドアDの開閉動作に抵抗力を付与するとともに、ドアDを任意の開位置に保持する。
【0030】
図5に示すリンク4の内部を説明するための透視図から理解できるように、リンク4は、1枚の金属製の芯材4Aの表面全体を合成樹脂製の被覆材4Bにより被覆することで形成される。リンク4の基端部には、枢支軸3が挿入される軸孔42が設けられ、同じく先端部には、全開ストッパ41が設けられ、同じく基端部と先端部との間にあって、ドアDの開閉動作に伴ってシュー6が摺動する領域には、長手方向に沿って上下両面に隆起部43と陥没部44とを互い違いに形成するディテント面(符号無し)が設けられる。
【0031】
芯材6は、金属製であって、板面が水平方向を向き、かつ長手方向が前後方向を向くようにして形成され、全開ストッパ41が設けられる先端部には、板面が垂直方向を向くように、捩り加工(ツイスト加工)により90度捻られた鈎部41Aが設けられる。
【0032】
芯材4Bの表面全体を被覆する被覆材4Bは、芯材4Bの鈎部41Aを被覆することで全開ストッパ41を形成し、芯材41Aを長手方向に被覆することでディテント面を形成する。
【0033】
ケース5は、合成樹脂製であって、外形が略四角柱形状を呈して、上下2本のボルト9によりドアDの取付面D1に固定される。
図7に縦断面図で示すように、ボルト9は、ドアDの上下方向を向く取付面D1に対向するケース5の前面(
図7において右面)に、拡径の頭部91のみ、または
図7に他の実施形態として示すように、頭部91とネジ部92の根本部分が埋め込まれる形態で固着される。好ましくは、ボルト9のケース5に対する固着はインサート成形により行われる。これにより、ボルト9をケース5に簡単かつ強固に固着できる。
【0034】
ケース5の後面(
図2において左面)と全開ストッパ41との間には、ドアDの全開位置でケース5が全開ストッパ41に当接する際の衝撃を緩和するための緩衝部材10が介在される。緩衝部材10は、矩形の孔10aを有し、当該孔10aにリンク4が挿通した状態で、ケース5の後面と全開ストッパ41との間に介在される。
【0035】
ケース5の前面とドアDの取付面D1との間には、取付面D1に設けられる図示略の貫通孔(リンク4が挿通する孔)を閉塞するための閉塞部材11が介在される。閉塞部材11は、発泡ゴム等により形成されるとともに、リンク4が挿通する切込み孔11aを有し、当該切込み孔11aにリンク4が挿通した状態で、ケース5の前面とドアDの取付面D1との間に圧縮された形態で介在される。
【0036】
ケース5には、シュー6及びスプリング7を収容するためのドアDの取付面D1と平行な方向(本実施形態においては上下方向)へ貫通する空洞の収容孔51と、リンク4が前後方向へ挿通し得るようにドアDの取付面D1に交差する方向(本実施形態においては前後方向)へ貫通する通孔53とが形成される。
【0037】
ケース5における収容孔51の開口が形成される上下の開口面55には、上下の蓋部材8が収容孔51の開口を上下から閉塞し得るように、上下の蓋部材8を固定するための押さえ部52がそれぞれ設けられる。本実施形態においては、押さえ部52は、上下に2個ずつ設けられる。
【0038】
収容孔51は、
図10に示す横断面図のように、多角形孔(本実施形態においては6角形孔)で、ケース5をドアDの取付面D1と平行な上下方向へ貫通して形成される。収容孔51の内周面には、互いに対向する回転止め突条部51a、51aが上下方向に延伸して設けられる。回転止め突条部51a、51aは、シュー6の外周面に係合することで、収容孔51内でのシュー6の回転止めを行って正規の位置に保持する。
【0039】
通孔53は、リンク4が前後方向へ挿通し得るように、ケース5の前後面が開口し、ケース5の内部で収容孔51に交差する。通孔53は、横幅がリンク4の幅よりも大であり、高さが隆起部43が形成される部分のリンク4の厚みよりも大となるように形成される。
【0040】
図11に示すように、ケース5内で、かつ通孔53の両側には、リンク4の横振れを規制する左右のガイド部54、54が設けられる。ガイド部54、54は、互いに相対する方へ山形状に突出する形状を呈し、尖端部がリンク4の側面に接触することで、リンク4を長手方向へ案内するとともに、リンク4の不要な横振れを規制する。
【0041】
図6、9、12に示すように、押さえ部52は、収容孔51の開口の周囲にあって、ケース5の開口面55から上方(下の押さえ部52にあっては、下方)へ所定量離れた位置から外方へ円弧状に張り出すように形成される。これにより、押さえ部52とケース5の開口面55との間には、蓋部材8の後述の嵌合部84が潜り込むようにして嵌合可能な間隙が設けられる。
【0042】
好ましくは、上下の押さえ部52はそれぞれ2個ずつ形成される。この場合には、
図9に示すように、2個の押さえ部52、52は、互いに収容孔51の開口の中心を対称の中心とする点対称形状となるように形成される。そして、1個の押さえ部52は、収容孔51の開口の周囲に沿って略90度の円弧状に設けられる。したがって、押さえ部52の端と押さえ部52の端の間には、円周方向に略90度の間隙A、Aが形成される。
【0043】
図6、9に示すように、押さえ部52における時計方向の一端には、押さえ部52とケース5の開口面55を接続する阻止部52aが設けられる。なお、押さえ部52の反時計方向の他端には、押さえ部52に蓋部材8の嵌合部84を嵌合させる際の回転を許可するため阻止部52aは設けられない。
【0044】
シュー6は、合成樹脂製であって、
図4、7に示すように上方が開口する有底筒状で、
図10に示す横断面図のように外形が星形を呈して、ケース5の収容孔51に上下方向に移動可能に収容される。本実施形態においては、ケース5及びシュー6を合成樹脂製としたことで、シュー6の上下動による接触は、合成樹脂同士の接触のため、擦れ音を抑えて異音発生を低減できる。
【0045】
シュー6の下端部には、リンク4のディテント面を摺動する摺動部61が設けられ、同じく内側には、圧縮コイルスプリング7をその軸方向(上下方向)に収容保持するための上方が開口するスプリング収容凹部62が設けられる。
【0046】
摺動部61は、ドアDの開閉動作に伴ってリンク4のディテント面を安定した状態で摺動し得るように
図7に示す縦断面図のように山形状を呈している。
【0047】
スプリング収容凹部62は、横断面形状が円形で、上方が開口している。スプリング収容凹部62の深さは、少なくとも圧縮状態(ケース5の収容孔51に収容された状態)にある圧縮コイルスプリング7の軸方向の長さの1/2よりも大となるように設定される。これにより、圧縮コイルスプリング7をシュー6のスプリング収容凹部62に安定して保持することができるため、圧縮コイルスプリング7の伸縮動作時に、金属製である圧縮コイルスプリング7のコイル部がケース5の収容孔51の内周面に擦れて異音が発生するような事態を防止できる。
【0048】
スプリング収容凹部62の底面には、上方へ突出する円形突部62aが設けられる。円形突部62aには、圧縮コイルスプリング7のコイル部の下端が外嵌される。これにより、圧縮コイルスプリング7をより確実にシュー6のスプリング収容凹部62に保持できる。
【0049】
シュー6のスプリング収容凹部62を形成する周壁の外周面には、
図10に示すように、周方向に所定の間隔をもって複数(本実施形態においては6個)の突条部63が形成される。突条部63は、上下方向へ延伸するとともに、ケース5における多角形の収容孔51の内隅部分に係合する。
【0050】
突条部63の内部には、
図10、12に示すように、空洞部64が上下方向に沿って設けられる。これにより、突条部63を上下方向に沿って薄肉状の形態とすることで、シュー6の径方向へ弾性変形可能な構成とすることができる。突条部63をシュー6の径方向へ弾性変形可能とすることにより、シュー6は、合成樹脂製のケース5の収容孔51内で上下方向へがた付き無く円滑に移動でき、かつ擦れ音の発生をより確実に抑えることができる。好ましくは、空洞部64は、シュー6の周壁を上下方向に貫通して設けられる。
【0051】
金属製の圧縮コイルスプリング7は、シュー6とケース5の開口面55に固定される蓋部材8との間に圧縮された状態でシュー6のスプリング収容凹部62に保持されて、シュー6をリンク4のディテント面に向けて付勢する。圧縮コイルスプリング7は、シュー6のスプリング収容凹部62に収容されることから、前述のように、伸縮動作時に、圧縮コイルスプリング7のコイル部分がケース5の収容孔51の内周面に接触して擦れることがないので、ドアDの開閉動作に伴う伸縮動作による異音発生を軽減できる。
【0052】
蓋部材8は、合成樹脂製であって、
図8に示す平面視において多角形の蓋部81と、当該蓋部81の裏面(下面)中央に円形状に突設される押込み部82と、蓋部81の表面(上面)中央に設けられる円形の凹部83と、蓋部81の裏面側にあって、円形押込み部82の周囲に設けられる2個の爪状の嵌合部84とを一体形成する。蓋部材8は、自動車用ドアチェック装置1の組立工程において、ケース5に対して回転させられて、嵌合部84がケース5の押さえ部52に嵌合することにより、ケース5の開口面55に嵌合して収容孔51を閉塞し得るように固定される。
【0053】
蓋部81は、ケース5における収容孔51の開口を閉塞するものである。押込み部82は、ケース5における収容孔51に内嵌合するように突出する形状であって、蓋部材8をケース5に固定する際、圧縮コイルスプリング7を押し込むことにより圧縮させ、蓋部材8がケース5に固定された状態においては圧縮コイルスプリング7の伸張力を受け止める。凹部83は、自動車用ドアチェック装置1の組立工程で使用される組立治具が嵌り込むものである。凹部83には、組立治具の回転部が回転方向に係合可能な複数の突状の係合部83aが設けられる。
【0054】
嵌合部84は、
図6から理解できるように、押込み部82の周囲にあって、蓋部81の裏面からケース5の押さえ部52の厚みに相当する距離離れた位置から内側へ折り返すように形成される。嵌合部84は、円形の押込み部82の中心を通る直線を対称の軸とする線対称形状となるようにケース5の上下の開口面55にそれぞれ2個ずつ設けられるとともに、押込み部82の周囲に90度より僅かに小さい角度の円弧状に形成される。
【0055】
次に、自動車用ドアチェック装置1の組立要領について説明する。
【0056】
先ず、組立工程において、ケース5を横向き姿勢(収容孔51が横方向を向く姿勢)として、自動組立機を用いて、シュー6、圧縮コイルスプリング7の順にケース5の収容孔51に挿入する。なお、組立工程においては、ケース5を横向き姿勢とするため、組立要領で説明で使用する方位は自動車用ドアチェック装置1の使用形態で使用する方位とは異なる。
【0057】
次に、自動組立機の組付治具を蓋部材8の凹部83に嵌り込ませた状態で、蓋部材8の嵌合部84をケース5における押さえ部52と押さえ部52との間の間隙Aの位置に一致させ、この状態から蓋部材8を嵌合部84が間隙Aに嵌るように押し込む。この場合の押し込み力は、少なくとも圧縮コイルスプリング7を圧縮させる力よりも大に設定される。
【0058】
そして、蓋部材8に押し込み力を付与させつつ、蓋部材8を
図6において時計方向へ略90度回転させて、蓋部材8の嵌合部84を押さえ部52に嵌合させることで、蓋部材8は、回転組付けによりケース5に嵌合固定される。ケース5に対する蓋部材8の回転組付けは、自動組立機の組付治具が蓋部材8に設けた係合部83aに回転方向に係合することで、確実に行われる。蓋部材8の回転組付け時の回転は、嵌合部84の端が阻止部52aに当接することで制限される。これにより、蓋部材8を正規の組付位置に確実に固定できる。
【0059】
なお、ケース5に対するシュー6、圧縮コイルスプリング7及び蓋部材8の組付けは、左右いずれか一方を行った後に続いて左右いずれか他方を行っても良いし、左右両側同時に行っても良い。
【0060】
そして、ケース5にシュー6、圧縮コイルスプリング7及び蓋部材8を全て組み付けた状態で、一方のシュー6の摺動部61と他方のシュー6の摺動部61との間に、リンク4の基端部(
図7において右端部で、ブラケット2が組み付けられていない状態)を
図7において左方から差し込んで
図7に示す状態とする。そして、最後に、リンク4の基端部にブラケット2を組み付けることで完了する。
【0061】
上述のように、蓋部材8をケース5に対して回転させることでケース5に嵌合固定できるため、ケース5の収容孔51に伸張状態の圧縮コイルスプリング7を他の工具等を用いて圧縮状態に保持する必要性がないので、蓋部材8の組付けと同時に、圧縮コイルスプリング8を圧縮状態とすることができ、組立工程の効率化を図ることができる。
【0062】
図14〜
図17は、蓋部材80及び押さえ部520に係る第2実施例を示す。なお、第2実施例においては、蓋部材80及び押さえ部520に関係する部位以外は、
図1〜
図13に基づいて説明した第1実施例と同一であるので、第1実施例と同一の符号を付して説明は省略する。
【0063】
蓋部材80は、
図16に示す平面図のように、長辺方向(
図16において上下方向)と短辺方向(同じく左右方向)を有する楕円形、または長楕円形を呈する蓋部801を有して、蓋部801の長辺方向の両端部には、ケース5に設けられる押さえ部520、520にそれぞれ嵌合する嵌合部804、804が設けられる。蓋部801の表面には、自動組立機の組立治具が回転方向に係合可能な十字状の係合部803が設けられる。さらに、嵌合部802の側面には、
図15、16に拡大して示すように、押さえ部520の根本部分(後述の起立部520aに相当)に設けられる係合突部520bに対して蓋部材80の回転方向に係合可能な係合凹部805が設けられる。
【0064】
押さえ部520は、ケース5の開口面55に設けられる起立部520aから蓋部材80の回転方向(
図15、16において時計方向)へ延伸するように設けられる。起立部520aは、蓋部材80の嵌合部804の厚みに相当する寸法だけケース5の開口面55から突出するように設けられる。したがって、押さえ部520と開口面55との間には、蓋部材80の嵌合部804が回転方向から嵌合する間隙が設けられる。
【0065】
第1実施例と同様に、組立工程において、蓋部材80は、自動組立機によりケース5に向けて押し込みつつ
図15、16において反時計方向へ回転させられることにより、嵌合部804が押さえ部520に嵌合することで、ケース5に嵌合固定されて収容孔51を閉塞する。なお、組立工程における蓋部材80の回転は、自動組立機の組立治具が蓋部材80の係合部803に回転方向に係合することで行われる。また、蓋部材80がケース5に嵌合固定された状態においては、蓋部材80の係合凹部805にケース5の係合突部520bが回転方向に係合して、蓋部材80を嵌合固定された位置に保持する。
【0066】
上述のように、第2実施例においても、前記実施例と同様にして、蓋部材80をケース5に回転による嵌合固定する際、これと同時に圧縮コイルスプリング7を収容孔51で圧縮させて、収容孔51を閉塞することができ、組立工程の効率化を図ることができる。
【0067】
図18は、蓋部材800の第3実施例の縦断面図を示す。なお、第3実施例においても、蓋部材800及び当該蓋部材800に関係する部位以外は、第1実施例と同一であるので、第1実施例と同一の符号を付して説明は省略する。
【0068】
蓋部材800は、ケース5の収容孔51を閉塞する蓋部8001と、蓋部8001の裏面中央を設けられケース5の収容孔51に内嵌合する押込み部8002とを有し、押込み部8002の外周面には、雄ねじ部8003が設けられ、蓋部8001の表面中央には、自動組立機の組立治具が回転方向に係合可能な多角形孔8004が設けられる。
【0069】
ケース5における収容孔51の内周面には、蓋部材800の雄ねじ部8003が螺合可能な雌ねじ部5001が設けられる。
【0070】
第3実施例においては、ケース5の収容孔51にシュー6、圧縮コイルスプリング7を収容した状態で、蓋部材800の雄ねじ部8003をケース5の雌ねじ部5001に螺合して、蓋部材800を複数回転させることにより、蓋部材800は、圧縮コイルスプリング7を圧縮させつつケース5に固定されてケース5の収容孔51を完全に閉塞する。
【0071】
なお、第3実施例においては、蓋部材800に雄ねじ部8003、ケース5の収容孔51に雌ねじ部5001をそれぞれ設けたが、これを逆にして、蓋部材800に雌ねじ部、ケース5の外周面に雄ねじ部をそれぞれ設けても良い。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(1)リンク4をドアDに枢支し、ケース5を車体Bに固定する。
(2)蓋部材8、80、800をケース5に嵌合固定した後、レーザー溶着、超音波溶着等により蓋部材8、80、800をケース5に溶着する。