【解決手段】スプリング室50内に連通穴54を通過できない大きさの端板55を設け,他端側端壁53の内面と端板55間にスプリング40を収容し,スプリング室50の一端側端壁52に設けた連通穴54と弁箱10に設けた取付穴16を介して,一端30aに弁体20が取り付けられた弁棒30の他端30bを前記端板55に当接,又は連結することで,弁箱10の連通口11に設けたシート面11aに弁体20を着座させることができるようにする。弁体20がシート面11aに着座した閉弁時,端板55が一端側端壁52の内面と接触し,又は微小間隔δを介して近接した位置に配置されるように構成することで,弁箱10とスプリング室50の締結を解除しても,スプリング40の伸長が規制されることでスプリング室50の飛び出しが防止される。
前記スプリング室の前記他端側端壁の内壁と前記スプリング間に,前記スプリング室内を移動可能な第2の端板を設け,前記端板と前記第2の端板間に前記スプリングを保持すると共に,前記スプリング室の前記他端側端壁を貫通するネジ孔に,前記スプリング室外からスプリング室内に向かって螺合され,先端が前記第2の端板と接触する,設定圧力調整用ボルトを設けたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の保圧弁。
前記スプリング室の前記一端に,前記連通穴と連通すると共に前記二次流路内に突出するシリンダを設け,前記弁棒を,前記シリンダ内を軸線方向に摺動するピストン状の構造に形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の保圧弁。
前記弁箱に設けた前記取付穴をシリンダとして形成し,前記弁棒を,前記シリンダ内を軸線方向に摺動するピストン状の構造に形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の保圧弁。
【背景技術】
【0002】
図7に示す油冷式スクリュ圧縮機100において,圧縮機本体130は,一対のスクリュロータの噛み合い回転により吸入流路137を介して導入された空気等の被圧縮気体を冷却油と共に圧縮して気液混合流体として吐出する構成であることから,圧縮機本体130より気液混合流体として吐出された圧縮気体は,これを一旦,レシーバタンク160内に導入し,圧縮気体と冷却油とに分離することが行われる。
【0003】
そして,レシーバタンク160に導入されて冷却油が分離された圧縮気体は,更にセパレータ165を通過させて圧縮気体中にミストの状態で含まれる油分を除去した後,消費側に供給される。
【0004】
以上のように構成された油冷式スクリュ圧縮機100において,セパレータ165を通過する圧縮気体の流速が速すぎると,セパレータ165において十分に冷却油を捕集することができずに,消費側に油分を含んだ圧縮気体が供給されるおそれがあることから,セパレータ165を通過する圧縮気体の流速を制限する必要がある。
【0005】
また,レシーバタンク160内に回収された潤滑油は,レシーバタンク160内の圧力によって給油流路140を介して圧縮機本体130の給油口に給油されることから,レシーバタンク160内の圧力は,このような給油に必要な圧力に維持されている必要がある。
【0006】
そのため,セパレータ165の二次側に保圧弁200を設け,セパレータ165を通過する圧縮気体の流速を制限してセパレータ165の油分離性能が低下することを防止すると共に,レシーバタンク160内の圧力が所定の設定圧力未満に低下することを防止して,圧縮機本体130に対する冷却油の給油を行うに必要な圧力を維持することで,給油不良に伴う圧縮機本体130の破損等を防止している。
【0007】
このような油冷式スクリュ圧縮機100に設けられる保圧弁200として,後掲の特許文献1及び特許文献2には,
図8及び
図9に示す保圧弁200が記載されている。
【0008】
これらの保圧弁200は,本体である弁箱210に,レシーバタンク160のセパレータ165に連通される入口212と,消費側に連通される出口213が設けられていると共に,弁箱210内には,前記入口212と連通する一次流路214と,前記出口213と連通する二次流路215が形成されており,この一次流路214と二次流路215とを連通する連通口211に設けたシート面211aに,弁体220を着座又は離間させることによって,前記連通口211を開閉することができるように構成されている。
【0009】
この弁体220は,その弁軸222を挿入孔231内に摺動自在に挿入されてピストン230の一端側に取り付けられており,このピストン230と,該ピストン230を連通口211に向けて付勢するスプリング240を収容するシリンダ260を,前記弁箱210の上方に突設した構造となっている。
【0010】
以上のように構成された保圧弁200では,レシーバタンク160内の圧力がスプリング240の付勢力によって決まる所定の圧力(設定圧力)を超えている場合には,スプリング240の付勢力に抗して弁体220がシート面211aから離れて連通口211を開き、消費側に対して圧縮気体の供給が行われる。これに対して、レシーバタンク160内の圧力が前記設定圧力以下に低下すると,スプリング240の付勢力によって弁体220が連通口211に設けたシート面211aに着座して連通口211を閉じ,消費側に対する圧縮気体の供給が停止する。これによりレシーバタンク160内の圧力は前記設定圧力未満に低下せず,前記設定圧力以上の圧力に保持できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように構成された保圧弁200では,シリンダ260内に圧縮流体が入り込まないようにするために,
図8に示すようにピストン230の外周とシリンダ260の内壁間にOリング等のシール材234が設けられている。
【0013】
また,閉弁時の漏れを防止するために,弁体220自体や,弁体220のシート面211aと接触する部分をゴム等の弾性材料によって形成し,また,連通口211のシート面211aにシール材を取り付けることが行われる。
【0014】
そのため,このような保圧弁200では,定期的に前述したシール材や弁体の交換を行う等のメンテナンス作業が必要で,このメンテナンス作業を行うために,保圧弁200の一部を取り外し,弁箱210の上部を開放することが行われる。
【0015】
図8に示す特許文献1に記載の保圧弁200では,図示せざるボルト等の締結部材を取り外す等してシリンダ260を弁箱210に固定している固定リング259を取り外すと,シリンダ260の下端を弁箱210より抜き取ることができ,これにより弁箱210の上部を開放して,前述したシール材や弁体220の交換を行うことができる。
【0016】
しかし,前述のスプリング240は,ピストン230を介して弁体220を連通口211に向けて付勢することができるように圧縮された状態でシリンダ260内に収容されていることから,固定リング259を取り外すと,スプリング240の付勢力によってシリンダ260やスプリング240が勢い良く飛び出すことで,これらの部品を紛失するおそれがあり,また,飛び出した部品が作業者に当たれば怪我をするおそれもある。
【0017】
そのため,シリンダ260の取り外しに際しては,このような飛び出しを防止するために,シリンダ260の上方を一方の手で押さえながら,他方の手で固定リング259と弁箱210を固定しているボルト等の締結部材を緩める作業を行う必要があるため,作業性が悪い。
【0018】
特に,保圧弁200の設定圧力が高い場合には,その分,スプリング240の付勢力も大きくなっていることから,シリンダ260を飛び出させる力も大きく,この力に打ち勝つ強い力でシリンダ260を押さえ付けておきながら行うシリンダ260の脱着作業は,より一層,作業性を悪化させ,また,シリンダ260を飛び出させる力が大きいため,飛び出したシリンダ260やスプリング240が当たることで作業者が負う怪我も重大なものとなりかねない。
【0019】
このようなシリンダ260の飛び出しを防止する方法としては,例えば,固定リング259と弁箱210とを締結している図示せざるボルト等の締結部材の長さを長く取り,複数ある締結部材を,少しずつ順番に数回に分けて緩めていくことで,締結部材が緩め終わるまでにスプリング240を自由長にまで伸長させ,あるいは付勢力が十分に弱まる長さまで伸長させておくことで,シリンダ260を押さえることなく取り外し作業ができるようにすることも考えられる。
【0020】
この方法では,シリンダ260を押さえておく必要がなく,両手を使ってボルト等の締結部材の取り外し作業を行える点では作業性が向上するが,締結部材が長くなった分,分解時にボルト等の締結部材を回す回数が増えるため,作業性の悪さは依然として改善されない。
【0021】
なお,
図9に示す特許文献2に記載の保圧弁200の構成では,弁箱210とシリンダ260を一体的に形成し,このシリンダ260の上端を頂蓋253で閉塞する構造であると共に,この頂蓋253に,スプリング240の付勢力を調整するための調節螺杆253cを設けていることから,頂蓋253を取り外す前に調節螺杆253cを緩めてスプリング240を自由長又はこれに近い状態まで伸長させて付勢力を失わせ又は十分に弱めた状態で頂蓋253を取り外すことで,頂蓋253を手で押さえておかなくとも,頂蓋253や受皿255’,及びスプリング240の飛び出しを防止できる。
【0022】
しかし,保圧弁200の設定圧力が高い場合には,調節螺杆253cを緩めただけでは,片手で押さえた程度の力で頂蓋253や受皿255’,スプリング240の飛び出しを防止できるまでにスプリング240の付勢力を弱めることができない場合もあり,構造的に分解時の作業性の悪さと,作業の危険性が依然として存在する。
【0023】
なお,
図9に示す特許文献2に記載の保圧弁200の構成においても,シリンダ260の長さを長くすると共に,調節螺杆253cの長さを長くすることで,頂蓋253を取り外す前に調節螺杆253cを緩めることでスプリング240を自由長にまで伸長させることができれば,設定圧力の高い保圧弁200であっても手で押さえることなく頂蓋253や受皿255’,スプリング240の飛び出しを防止できるが,この構成においても,調節螺杆253cが長くなる分,分解前に調節螺杆253cを回す回数と,組付け後に設定圧力に戻すために調節螺管253cを回す回数が増えるため,作業性が悪いという問題が依然として解消できないだけでなく,シリンダ260が長くなることで,保圧弁200が大型化するという問題も生じる。
【0024】
なお,以上では,油冷式スクリュ圧縮機に使用する保圧弁を例に挙げて説明したが,分解時に,内蔵するスプリングの付勢力によって構成部品が飛び出すこと,及びこれに伴う作業性の悪さや危険性は,油冷式スクリュ圧縮機に使用される保圧弁のみならず,保圧弁全般において生じる得る問題であり,また,気体を対象とする保圧弁のみならず,液体,その他の流体全般を制御対象とする保圧弁全般に共通して生じ得る問題である。
【0025】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,比較的簡単な構造でありながら,内蔵するスプリングの付勢力によって分解時に保圧弁の構成部品が飛び出すことがなく,従って,保圧弁の弁箱を開放するために行う分解時の作業性が向上すると共に,部品の飛び出しに伴う作業の危険性を取り除くことができる構造を備えた保圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0027】
上記目的を達成するために,本発明の保圧弁1は,
入口12と連通する一次流路14,出口13と連通する二次流路15,及び,前記一次流路14と二次流路15とを連通する連通口11を備えた弁箱10と,
前記連通口11を開閉する弁体20と,
前記弁体20が一端30a側に取り付けられる弁棒30と,
前記弁棒30の他端30bを押圧して,前記弁体20を前記連通口11に設けたシート面11aに着座させる方向に付勢するスプリング40を備え,
前記スプリング40を収容するスプリング室50の一端50aを画成する一端側端壁52に設けた連通穴54が,前記弁箱10に設けた取付穴16を介して前記二次流路15と連通するように,前記スプリング室50の前記一端50aを,前記弁箱10に着脱可能に取り付けて成り,
前記スプリング室50は,該スプリング室50内を移動可能で前記連通穴54を通過できない大きさの端板55を内部に備え,前記スプリング室50の他端側端壁53の内面と,前記端板55間に,前記スプリング40を収容しており,
前記端板55に,前記取付穴16及び前記連通穴54を介して,前記弁棒30の前記他端30bが当接,又は連結されると共に,
前記端板55が前記一端側端壁52の内面と接触した位置,又は微小間隔δを介して近接した位置にあるときに前記連通口11が前記弁体20により塞がれて閉弁するよう構成したことを特徴とする(請求項1)。
【0028】
上記構成の保圧弁1において,前記端板55と前記弁棒30は,これを別部材として形成することができる(請求項2;
図1〜5参照)。
【0029】
または,前記端板55と前記弁棒30は,これを一体的に形成して連結するものとしても良い(請求項3;
図6参照)。
【0030】
更に,前記スプリング室50の前記他端側端壁53の内壁と前記スプリング40間に,前記スプリング室50内を移動可能な第2の端板55’を設け,前記端板55と前記第2の端板55’間に前記スプリング40を保持すると共に,前記スプリング室50の前記他端側端壁53を貫通するネジ孔53bに,前記スプリング室50外からスプリング室50内に向かって螺合され,先端が前記第2の端板55’と接触する,設定圧力調整用ボルト53cを設けるものとしても良い(請求項4;
図4参照)。
【0031】
前記スプリング室50の前記一端50aには,前記連通穴54と連通すると共に前記二次流路15内に突出するシリンダ60を設け,前記弁棒30を,前記シリンダ60内を軸線方向に摺動するピストン状の構造に形成することもできる(請求項5;
図1〜5参照)。
【0032】
または,上記構成に代え,前記弁箱10に設けた前記取付穴16をシリンダ60’として形成し,前記弁棒30を,前記シリンダ60’内を軸線方向に摺動するピストン状の構造に形成するものとしても良い(請求項6;
図6参照)。
【発明の効果】
【0033】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の保圧弁1では以下の顕著な効果を得ることができた。
【0034】
スプリング40を収容するスプリング室50の一端50aに設けた連通穴54が,弁箱10に設けた取付穴16を介して弁箱10の二次流路15と連通するように,前記スプリング室50の一端50aを,前記弁箱10に着脱可能に取り付けると共に,スプリング室50内に,該スプリング室50内を移動可能で前記連通穴54を通過できない大きさの端板55を設けて,前記スプリング室50の他端側端壁53の内面と,前記端板55間に,前記スプリング40を収容し,前記端板55に,前記取付穴16及び前記連通穴54を介して,一端30aに取り付けた弁体20に前記スプリング40の付勢力を伝える弁棒30の他端30bを当接,又は連結すると共に,前記端板55が前記一端側端壁52の内面と接触した位置,又は微小間隔δを介して近接した位置にあるときに前記連通口11が前記弁体20により塞がれて閉弁するよう構成したことで,弁箱10にスプリング室50の一端50aを固定しているボルト等の締結部材を取り外した場合であっても,スプリング40は伸長せず,又は,微小間隔δに対応した長さしか伸長することができないため,スプリング室50や,スプリング室50内に収容されているスプリング40や端板55等の部品が飛び出すことのない構造とすることができた。
【0035】
その結果,シール材34や弁体20等の交換に際してスプリング室50を取り外す際に,スプリング室50が飛び出さないように押さえておく必要がなく,分解時の作業性を向上させることができると共に,飛び出した部品が作業者に当たって怪我をさせる等の危険性のない,分解作業時の安全性にも優れた保圧弁1を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下,添付図面を参照しながら本発明の保圧弁について説明する。
【0038】
1.実施形態1
〔保圧弁の全体構成〕
図1を参照して本発明の一実施形態における保圧弁1の構造を説明すると,この保圧弁1は,保圧弁1の本体部分を成す弁箱10,前記弁箱10内に形成された一次流路14と二次流路15間を連通する連通口11を開閉する弁体20,該弁体20が一端30aに取り付けられる弁棒30,前記弁棒30の他端30bを押圧して,前記弁体20を,前記連通口11に向かって付勢するスプリング40,及び,前記スプリング40を収容するスプリング室50によって構成されている。
【0039】
〔弁箱〕
前述の弁箱10は,保圧弁1の本体部分を成すもので,この弁箱10には,
図7を参照して説明した油冷式スクリュ圧縮機100のレシーバタンク160等の保圧対象とする機器に連通される入口12と,前記入口12を介して導入された流体を排出する出口13が設けられていると共に,前記入口12に連通する一次流路14と,前記出口13に連通する二次流路15がその内部に設けられ,この一次流路14と二次流路15が,連通口11を介して連通されている。
【0040】
従って,この連通口11に設けたシート面11aに,後述の弁体20を着座させることで,前記一次流路14と二次流路15間の連通を遮断して,レシーバタンク160から消費側に対する圧縮気体の供給を停止できるように構成されている。
【0041】
前述の連通口11には,二次流路15側から前記連通口11を弁体20によって塞ぐことができるよう,弁体20を着座させるための前述のシート面11aが形成されており,連通口11のうち,後述の弁体20と接触する前記シート面11aの部分には,必要に応じて図示せざるシール材を取り付けるように構成するものとしても良い。
【0042】
この連通口11の上方には,後述するスプリング室50の取り付けを可能とする取付穴16が設けられており,この取付穴16の形成位置にスプリング室50の一端50aを取り付けて取付穴16を塞ぐことで,弁箱10内に形成された流路14,15を密封することができるように構成されている。
【0043】
〔スプリング室〕
弁箱10に設けた取付穴16上には,前述のようにスプリング室50の一端50aが着脱可能に取り付けられ,このスプリング室50を弁箱10に取り付けることにより弁箱10内の流路14,15を密封することができるように構成されている。
【0044】
このスプリング室50は,円筒状の本体51と,この本体51の一端側を被蓋する一端側端壁52,及び他端側を被蓋する他端側端壁(スプリング室カバー)53を備え,前記一端側端壁52に,前述の連通穴54が形成されている。
【0045】
本実施形態では,スプリング室50の一端50aより突出すると共に,前記連通穴54と連続した内周面を有する円筒状のシリンダ60を前記一端側端壁52と一体的に形成し,スプリング室50を弁箱10に取り付けた際,このシリンダ60が弁箱10内の連通口11に向かって,二次流路15内に突設されるように構成されている。
【0046】
このスプリング室50内には,スプリング室50内を移動可能であるが,前述の連通穴54を通過できない大きさの端板55を設け,スプリング室50の他端側端壁(スプリング室カバー)53の内面と,この端板55間にスプリング(コイルスプリング)40を収容している。
【0047】
図示の実施形態において,この端板55は,スプリング室50の本体51の内径よりも小径の円板状に形成されており,スプリング40の端部を好適に保持することができるよう,端板55のスプリング40を保持する面(紙面上側の面)に突起56が形成されており,この突起56をスプリング40の端部内径内に嵌合させることができるように構成されている。
【0048】
また,この端板55のスプリング保持面とは反対側の面(紙面下側の面)には,後述する弁棒30の他端30bに形成された係合突起32と嵌合する係合凹部57が形成されており,両者の嵌合によって弁棒30と端板55を,同軸上に配置することができるように構成されている。
【0049】
図示の実施形態では,この係合凹部57を端板55の肉厚を貫通する貫通孔として形成しているが,この係合凹部57は,有底孔として形成するものであっても良く,弁棒30の他端30bに形成された係合突起32と係合可能なものであれば図示の構造に限定されない。
【0050】
なお,
図1に示す実施形態では,端板55のスプリング保持面とは反対側の面(紙面,下側の面)を,係合凹部57の形成部分を除き平坦な形状に形成する例を示したが,この構成に代え,
図5に示すように,端板55のスプリング保持面とは反対側の面に,連通穴54内に挿入される突部58を設けることで,端板55をスプリング室50の径方向の中心に確実に配置できるように構成しても良く,このように構成することで,組立時の端板55の位置決めが容易となる。
【0051】
また,スプリング室50の他端側を被蓋するスプリング室カバー53の内面にも同様にスプリング40の端部内径内に挿入される突起53aを設け,スプリング40の上端を位置決めした状態で係止できるように構成するものとしても良い。
【0052】
なお,
図1に示した実施形態では,スプリング40の上端をスプリング室カバー53の内面に直接係止する構成を示したが,この構成に代え,
図4に示すように,スプリング40の上端とスプリンク室カバー53の内面間に第2の端板55’を設け,この第2の端板55’にスプリング40の上端を係止させると共に,スプリング室カバー53を貫通するネジ孔53bに螺合させた設定圧力調整用ボルト53cの先端に第2の端板55’の上面を当接させることで,設定圧力調整用ボルト53cの締め込み量の変化により保圧弁1の設定圧力を変更できるように構成しても良い。
【0053】
〔弁体及び弁棒〕
弁箱10に設けた連通口11のシート面11aに着座して連通口11を塞ぐ弁体20は,
図1に示すように本体21と,この本体21の中心に取り付けられた弁軸22を備え,連通口11を塞いだ際,この弁体20の本体21周縁部が連通口11に設けたシート面11aと接触して,一次流路14と二次流路15間の連通を遮断するように構成されている。
【0054】
図示の実施形態では,この弁体20として円盤状の本体21を備えた構造のものを示したが,弁体20の形状は図示のものに限定されず,保圧弁1に使用する弁体20として既知の各種形状のものが採用可能である。
【0055】
この弁体20に設けた弁軸22は,弁棒30の一端30a側に設けられている挿入孔31内に摺動可能に挿入され,これにより弁棒30の一端30a側に弁体20が取り付けられている。
【0056】
また,前記弁軸22の端部は中空に形成されてスプリング室22aが形成されており,このスプリング室22a内に逆流防止用スプリング33を収容して,前述のスプリング40に比較して極めて弱い力で弁軸22を挿入孔31より押し出す方向に付勢しており,これにより,二次流路15側から一次流路14側への流体の逆流が生じた場合に,弁体20が連通口11のシート面11aに即座に接触されて流路を閉じることができるように構成されている。
【0057】
弁体20に対し前述したスプリング40の付勢力を伝達する前述の弁棒30は,前述したようにスプリング室50の下端より突出するシリンダ60を設けた本実施形態の構成では,このシリンダ60内を摺動するピストン状に形成されている。
【0058】
そして,この弁棒30の外周とシリンダ60の内周間の間隔を,Oリング等のシール材34によってシールして,この間隔を介して流体がスプリング室50内に流入することを防止している。
【0059】
図示の実施形態では,弁棒30の外周にシール溝を形成し,このシール溝内にシール材(Oリング)34を取り付ける構成としたが,シール材(Oリング)34は,シリンダ60の内周にシール溝を設けてここに取り付けるものとしても良い。
【0060】
なお,弁体20及び弁棒30の高さ方向の寸法は,弁体20がシート面11aに着座して連通口11を閉じた閉弁時,スプリング室50に設けた端板55の下面が,一端側端壁52の内面と接触する位置にあるように設計するか,好ましくは,
図2中に拡大図で示すように微小な間隔δを介して近接した位置にあるように設計する。
【0061】
このように微小間隔δが生じるように設定することで,弁体20が連通口11のシート面11aから浮き上がることがないように,弁体20をシート面11aに確実に接触させることができる。
【0062】
この微小間隔δは,ボルト等の締結部材65を取り外して弁箱10に対するスプリング室50の締結を解除した際にスプリング40が伸長し得る長さとなることから,微小間隔δは,この伸長に伴うスプリング室50の飛び出しを防止し得る程度の間隔の範囲で適宜設定することができ,一例として,これを数mm程度の間隔とする。
【0063】
〔作用等〕
以上で説明した保圧弁1では,入口12に連通したレシーバタンク内の圧力が低く,従って弁箱10の一次流路14内の圧力が低い状態では,
図2に示すようにスプリング40によって弁棒30及び弁体20が押し下げられ,弁体20が連通口11のシート面11aに着座して一次流路14と二次流路15間の連通が遮断された状態となっている。
【0064】
この状態からレシーバタンク内の圧力が高まって,弁箱10の一次流路14内の圧力が高まると,連通口11に設けたシート面11aより弁体20を持ち上げる方向の力が生じ,この力は,弁体20及び弁棒30を介して,スプリング40を圧縮する方向に作用する。
【0065】
そして,一次流路14内の圧力がスプリング40の付勢力に打ち勝って,弁体20及び弁棒30を押し上げるに至るまで上昇すると,
図3に示すように弁体20が連通口11に設けたシート面11aより離間して一次流路14と二次流路15が連通し,レシーバタンク内の圧縮気体が二次流路15及び出口13を介して消費側に導入される。
【0066】
一方,一次流路14内の圧力が低下して弁体20及び弁棒30を紙面上方へ押し上げる力が弱まると,スプリング40が元の長さに伸長して弁棒30が下降し,弁軸22の上端を挿入孔31の上端に突合させた状態で弁体20を連通口11のシート面11aに圧接することで,一次流路14と二次流路15の連通が遮断され,消費側に対する圧縮気体の供給が停止される結果,レシーバタンク内の圧力が,設定圧力未満に低下することが防止される。
【0067】
その結果,レシーバタンク内の圧力が一旦,スプリング40の付勢力によって決まる所定の設定圧力を超えて上昇すると,レシーバタンク内の圧力は設定圧力以上に維持されて設定圧力未満に低下しないように保圧される。
【0068】
以上のように構成された保圧弁1において,弁棒30に設けたOリング等のシール材34の交換や,弁体20の交換等は,弁箱10からスプリング室50を取り外して,取付穴16を開放することにより行う。
【0069】
弁箱10に対するスプリング室50の固定は,一例として
図1に示すように,スプリング室50の下端に外向きに突出形成されたフランジ59と弁箱10の取付穴16の周縁部とを,ボルト等の締結部材65によって締結することにより行われている。
【0070】
この構成では,締結部材65を取り外すことで,弁箱10からスプリング室50を取り外すと共に,スプリング室50の下端より突出するシリンダ60を,弁箱10の二次流路15から抜き取ることで取付穴16が開放される。
【0071】
このスプリング室50の取り外しに際し,前述のボルト65を緩めると,スプリング室50内では端板55の下面が一端側端壁52の内面に突合するまでスプリング40が伸長して微小間隔δ(
図2の拡大図参照)が消失して,スプリング40はそれ以上,伸長することができなくなる一方,フランジ59の下面と取付穴16の周縁上面間に前述の間隔δに対応する隙間が生じる。
【0072】
このように,ボルト等の締結部材65の着脱前後において,スプリング40は微小間隔δに対応した僅かな長さしか伸長することができず,その結果,スプリング室50を手で押さえ込む等の措置を講じることなく,ボルト65を緩めてスプリング室50を弁箱より取り外した場合であっても,スプリング室50が飛び出す心配がない。
【0073】
また,前述した微小間隔δに対応した長さのみ伸長するだけでスプリング40の伸長が規制されることから,スプリング室50と弁箱10を締結するボルト等の締結部材として,両者を締結するために必要な長さの締結部材65を使用することで好適に取り付けを行うことができ,長い締結部材を使用することにより,締結部材を回す回数が増える等,着脱時の労力が増えることもない。
【0074】
このようにして,本発明の保圧弁1では,弁箱10からスプリング室50を簡単かつ安全に取り外すことができる。
【0075】
そして,弁箱10内より引き抜いたシリンダ60から,弁棒30を引き抜き,弁棒30の外周に取り付けられているOリング34を交換すると共に,取付穴16を介して必要に応じて連通口11のシート面11aに設けたシール材や,弁体20の交換等を行う。
【0076】
シリンダ60より弁棒30を抜き取る際にも,スプリング40は伸長が規制されているため,スプリング40の付勢力によって弁棒30が抜けたり,飛び出したりすることがないため,この点においても分解時の作業性が良く,安全に作業を行うことができる。
【0077】
このようにして,Oリング34やその他のシール材,弁体20等を交換した後,弁棒30を再度シリンダ60内に挿入し,スプリング室50の下端より突出するシリンダ60を,取付穴16を介して弁箱10の二次流路15内に挿入し,前述したボルト等の締結部材65でスプリング室50下端のフランジ59と弁箱10の取付穴16の周縁部を締結して固定することで,保圧弁1の組み立てが完了する。
【0078】
弁箱10にスプリング室50を取り付ける際に,スプリング室50内のスプリング40を圧縮する必要がなく,弁箱10に設けた取付穴16内にスプリング室50の下端より突出するシリンダ60を挿入することで,力を加えることなく弁箱10上にスプリング室50を載置することができる。
【0079】
この状態で,ボルト等の締結部材65を取り付けることでスプリング室50を弁箱10に対し簡単に取り付けることができる。
【0080】
このように,本発明の保圧弁1では,簡単かつ安全に保圧弁1の分解と組み立てを行うことができる。
【0081】
2.実施形態2
以上,
図1〜5を参照して説明した保圧弁1では,スプリング40の下端を保持する端板55を,弁棒30とは別体に構成した例について説明した。
【0082】
これに対し,
図6に示した本実施形態の保圧弁1では,スプリング40の下端を保持する端板55を弁棒30と一体的に形成して両者を連結させている。
【0083】
また,
図1〜5を参照して説明した実施形態では,スプリング室50の下端より,弁箱10の二次流路15内に突出するシリンダ60を設けると共に,シリンダ60内に挿入される弁棒30の外周に形成されたシール溝にOリング34を取り付ける構成を説明したが,
図6に示す本実施形態の保圧弁1では,弁箱10に設けた取付穴16部分を肉厚に形成して,取付穴16の内壁でシリンダ60’を形成し,このシリンダ60’内に,前述したように端板55と一体的に形成した弁棒30を挿入している。
【0084】
そして,
図6の構成では,シリンダ60’の内周面にシール溝を設け,このシール溝内にOリング34を取り付ける構成とした点で,
図1〜5を参照して説明した保圧弁の構成とは異なる。
【0085】
以上のように構成された
図6に記載の保圧弁1においてOリング34を交換する場合,スプリング室50の下端に設けたフランジ59を弁箱に固定するボルト等の締結部材65を外してスプリング室50を弁箱10より取り外すと,スプリング室50と共に弁棒30がシリンダ60’内より抜き取られ,シリンダ60’内壁に形成されたリング溝に取り付けたOリング34を交換することができる。
【0086】
この
図6に記載の構成の保圧弁1においても,
図1〜5を参照して説明した保圧弁1と同様,スプリング室50の着脱に際し,スプリング室50を手で押さえなくともスプリング室50が飛び出す心配がないため,効率良く,安全にメンテナンス等の作業を行うことができる。
【0087】
特に,
図6に記載の構成の保圧弁1では,端板55と弁棒30が一体化されていることで,部品点数が少なく,分解や組み立ての際の作業工数が減る点においてもメンテナンス性の向上が得られると共に,端板55と弁棒30の中心が常に一致することで,円滑な動作が可能である。
【0088】
なお,
図6に示す実施形態では,シリンダ60’の内壁側にOリング34を取り付ける構成を示したが,この構成に代えて弁棒30の外周にシール溝を形成してOリング等のシール材を取り付ける構成としても良い。
【0089】
また,
図6に示す保圧弁1の構成においても,
図4に示すように,スプリング40の上端を支持する第2の端板55’を設けると共に,スプリング室カバー53にネジ孔53bとこれに螺合する圧力調整用ボルト53cを設けることで,設定圧力を可変とすることができるように構成するものとしても良い。