【解決手段】支持装置は、上向き凹所7が形成された下部材2と、下向き凹所13が形成された上部材3と、両部材2,3を挟持するクリップ体4とから成っている。上部材3の後端は下部材2の後端に連結されており、クリップ体4は、上部材3に設けた支軸20に回動自在に連結されている。下部材2には、クリップ体4の係止部23が弾性に抗して係合する下顎部22を形成している。クリップ体4による上下部材2,3のクランプは、ワンタッチ的に行える。クランプ力はクリップ体4の弾性力に決まるため、作業者によるバラツキも生じない。
前記上部材は樹脂成形品であり、この上部材のうち回動支点と反対側の自由端部に、前記クリップ体が取り付けられる支軸が、前記上部材の回動軸心の方向に離れた2つのリブに装架された状態に形成されており、前記上部材のうち前記支軸の下方は貫通穴になっている、
請求項2又は4に記載したケーブル類の支持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、いわば、樹脂ベルトによってケーブル類を受け部材に縛り付けるものであるが、薄暗い環境下で手袋をして細い樹脂ベルトをロッキンドヘッドの隙間に通すのは非常に厄介であり、作業性が良くないという問題がある。また、時間の経過と共にロック爪による押さえ機能が低下するおそれも懸念される。
【0006】
更に、特許文献1では、ケーブル類をいったん樹脂べルトで縛り付けると、樹脂ベルトをロッキンドヘッドから抜き外すことはできないため、ケーブル類を交換したり、ケーブル類を多段に配置した場合に高さを変更したりする場合は、樹脂ベルトを切除せねばならない。このため、ケーブル類の交換や配置のやり直しの作業も面倒であった。
【0007】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、構造体の壁面に配置されてケーブル類を水平状に保持する支持装置に係るもので、このケーブル類の支持装置は、請求項1では、
「構造体の壁面に配置されてケーブル類を水平状に保持する支持装置であって、
前記ケーブルが上から嵌まる上向き凹所が形成された下部材と、前記ケーブル類に上から嵌まる下向き凹所が形成された上部材と、前記上部材と下部材とを上下方向からクランプするクリップ体とを有しており、
前記クリップ体は、弾性変形させることにより、前記上部材と下部材とをクランプした状態とクランプ解除した状態とに変更自在である」
という構成になっている。
【0009】
本願発明は、様々な構成に展開することができる。その例を請求項2以下で特定している。このうち請求項2の発明は、請求項1において、
「前記上部材は、前記壁面に近い一端部を支点にして上下回動するように前記下部材に連結されている一方、
前記クリップ体は、前記上部材の回動支点と反対側から上部材と下部材とを上下から挟むようになっており、前記クリップ体の上端は、前記上部材に、当該上部材の回動軸心と平行な軸心回りに回動するように取付けられて、前記クリップ体の下部には、前記下部材に形成された下顎部に弾性に抗して係合する係止部が形成されている」
という構成になっている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、
「前記上部材は、前記壁面に近い一端部を支点にして上下回動するように前記下部材に連結されている一方、
前記クリップ体は、前記上部材の回動支点と反対側から上部材と下部材とを上下から挟むようになっており、前記クリップ体の下端は、前記下部材に、前記上部材の回動軸心と平行な軸心回りに回動するように取付けられて、前記クリップ体の上部には、前記上部材に形成された上顎部に弾性に抗して係合する係止部が形成されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項4の発明では、請求項2又は3において、
「前記クリップ体は、弾性金属体製であり、前記上部材の回動軸心方向から見て略C字状の部位を有している」
という構成になっている。
【0012】
請求項5では、請求項2又は4において、
「前記上部材は樹脂成形品であり、この上部材のうち回動支点と反対側の自由端部に、前記クリップ体が取り付けられる支軸が、前記上部材の回動軸心の方向に離れた2つのリブに装架された状態に形成されており、前記上部材のうち前記支軸の下方は貫通穴になっている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、上部材は、弾性変形するクリップ体によって下部材に固定されるため、ケーブル類の固定は、クリップ体を弾性変形させて上部材と下部材とを挟持するワンタッチ的な作業で行える。従って、トンネルのような薄暗い環境下で手袋を使用しての作業であっても、ケーブル類の固定作業を能率よく行うことができる。
【0014】
また、特許文献1では、樹脂ベルトの引っ張り具合によってケーブル類の押さえ強度が相違するため、作業員によるばら付きが発生しやすいが、本願発明では、クリップ体をクランプにすると、上部材と下部材とのクランプ強度は一律に規定されるため、作業の仕方によるバラツキは生じない。従って、作業の品質の安定化に大きく貢献できる。
【0015】
更に、クリップ体を弾性変形させると上部材と下部材との固定を解除できるため、ケーブル類の交換や高さの変更もごく簡単に行える。この点も大きな利点である。
【0016】
請求項2,3では、上部材は上下回動可能となるように予め下部材に連結されているため、上部材を跳ね上げた状態にしておいてケーブル類を下部材に載せてから、上部材を下に回動させて下部材に重ねて、その後、クリップ体で上部材と下部材とを挟持したらよい。従って、上部材を下部材にセットするような細かい作業は不要であり、作業性は一層良くなる。また、クリップ体は、上端又は下端を支点にして回動させるだけで固定状態とフリー状態とに変更できるため、作業性は更に高くなる。
【0017】
クリップ体は、金属線材製とすることもできるが、請求項4のように金属板製を採用すると、大きな弾性力を付与できるため、高い固定強度を容易に確保できる利点がある。
【0018】
上部材は、下部材に重なっている状態を基準姿勢として、上下方向に密着・離反する金型を使用して成形できるが、請求項5の構成を採用すると、下に位置した金型に、貫通穴に嵌まる突起を設けることにより、スライド型を使用することなく、いわゆるキャビとコアとによって支軸を成形できる。従って、上部材の成形コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態は、トンネルの壁面に鉄道用ケーブル類を配置する装置に適用している。以下では、説明のために前後・左右の文言を使用するが、左右方向はケーブル類の長手方向、前後方向はケーブル類の長手方向と直交した水平方向としている。前後については、トンネルの壁面に近い側を後ろ、トンネルの壁面から遠い側(張り出し方向)を前としている。念のため、
図1に方向を明示している。
【0021】
(1).第1実施形態の基本構造
まず、
図1,2に示す第1実施形態を説明する。支持装置は、トンネルの壁面から張り出した状態に配置されており、トンネルの壁面に沿って水平配置されたケーブル類1を下から支持する下部材2と、下部材2に上から重なってケーブル類1を覆う上部材3と、上部材3と下部材2とを重ねた状態に保持するクリップ体4とで構成されている。上部材3及び下部材2は合成樹脂の成形品であり、クリップ体4は、ステンレス板のような弾性製金属板を曲げ加工して製造されている。
【0022】
トンネルの壁面には、左右側部を蟻溝5aと成した上下長手の保持金具5が固定されており、下部材2は、保持金具5に上から抜き差し自在な板状の基部6を備えている。基部6には、ケーブル類1の略下半分が嵌まる上向き凹所7を形成した受け部8が、一体に形成されている。基部6の左右両側部は、受け部8の左右両側に突出したはみ出し部6aになっており、このはみ出し部6aが保持金具5の蟻溝5aに嵌まっている。
【0023】
下部材2の受け部8のうち後端(一端)の上部には、上部材3を上向き動不能に保持するリア係合溝9が、左右方向及び前方に開口するように形成されている。リア係合溝9は、左右中間部に位置したセンターリブ10によって左右に分離している。
【0024】
下部材2の基部6及び受け部8には、軽量化及び肉厚の均等化のための空所11,12を形成している。なお、支持装置は、その複数個が保持金具5に多段に取付けられる。すなわち、下段に位置した下部材2の基部6に、上段に位置した下部材2の基部6が上から載るようになっている。支持装置を上下に重ねた状態で、上下に隣り合った支持装置の下部材2と上部材3との間には若干の間隔が空くように設定している。
【0025】
上部材3は、ケーブル類1の上半分が嵌まる下向き凹所13を有して側面視略半円状に形成されており、上面には、補強のために、左右のフランジ3aとこれを繋ぐ左右横長のリブ3bとが形成されている。また、
図2(A)に明示するように、上部材3の後端(一端)には、下部材2のリア係合溝9に前から嵌まる庇状のリア係合片14を形成している。リア係合溝9がセンターリブ10で左右に分離していることに対応して、リア係合片14も、センタースリット15(
図1参照)によって左右に分離している。
【0026】
(2).第1実施形態の連結構造
下部材2及び上部材3の前部(他端部)には、互いに重なり合うフロント重合部16,17を形成しており、上部材3のフロント重合部17には、上部材3の左右ずれ防止手段の一例として、下部材2のフロント重合部16を左右から挟む位置決め片18が下向きに突設されている。位置決め片18は側面視で三角形に形成しているが、矩形や半円状など、任意の形状を選択できる。
【0027】
上部材3のうちフロント重合部17に近い前部に、左右のブラケット片19を介して左右長手の支軸20を一体に設けている。支軸20、フロント重合部17の上方に位置している。
【0028】
他方、クリップ体4は、下部材2及び上部材3のフロント重合部16,17を前から覆うように曲がったC形部を有しており、C形部の上端に、上部材3の支軸20を抱持する軸受け部21を形成し、C形部の下端には、下部材2のフロント重合部16に形成した下顎部(下係合部)22に下方から引っ掛かり係合する係止部23を形成しており、更に、係止部23には、下向きの指掛け部24が一体に連続している。指掛け部24は円形にカールさせている。
【0029】
クリップ体4の軸受け部21は、前向きに開口しつつ括れた形状になっており、クリップ体4を上向きにして強制的に押し込むことにより、支軸20に強制嵌合される。使用状態では、軸受け部21は前向きに開口の姿勢になっているので、支軸20から外れることはない。
【0030】
図2(A)のとおり、クリップ体4の指掛け部24は、下部材2の受け部8に入り込んでいる。そこで、受け部8には、指掛け部24が入り込む逃がし凹所25を前向きに開口した状態に形成している。下部材2は左右方向に相対動する金型(キャビとコア)を使用して成形されるが、逃がし凹所25は、一方の金型(キャビ)に装着したスライド型を使用して成形される。
【0031】
以上の構成において、支持装置は、予め下部材2に上部材3をセットした状態で出荷できる。この場合、上部材3と下部材2とをクリップ体4でクランプ(挟持)しておくと、ユニット状態が保持されるため、運搬や保管の手間を軽減できる。
【0032】
ケーブル類1をセットするに当たっては、上部材3を上向きに回動させるか、又は、上部材3を取り外した状態で、ケーブル類1を下部材2の上向き凹所7に嵌め入れてから、上部材3を下部材2に被せて、クリップ体4の下部を後ろ向きに押し込んで、係止部23を下顎部22に係合させたらよい。
【0033】
すなわち、C形部を後ろに押して、C形部の弾性に抗して係止部23を下顎部22の後ろ側に押しやったらよい。従って、上部材3と下部材2との固定作業を、ワンタッチ的に、しかも作業員の個人差無しで行える。指掛け部24に手を掛けて手前に引くと、クリップ体4はフリー状態になって上部材3を跳ね上げ回動させることができる。従って、ケーブル類1の交換なども簡単に行える。
【0034】
上部材3と下部材2との凹所7,13にケーブル類1が嵌まっているので、上部材3と下部材2とをクリップ体4でクランプすると、上部材3は前向き移動不能に保持される。従って、ケーブル類1を保持した状態が維持される。
【0035】
図2(A)では、ケーブル類1をセットした状態で上下のフロント重合部16,17を密着させているが、上下のフロント重合部16,17の間に若干の隙間が空いた状態にクランプされることも有り得る。この場合は、ケーブル類1は、クリップ体4の弾性力によって押さえられることになる。ケーブル類1の外径には多少の誤差があり得るが、本実施形態では、クランプ状態で上下のフロント重合部16,17の間に隙間が空いていても、クリップ体4による挟持機能には問題はない。
【0036】
なお、支持装置が保持金具5に多段に取付けられている場合は、下段から順にケーブル類1をセットしていくが、上下に隣り合った支持装置の下部材2と上部材3との間の隙間は僅かなので、下段に位置した支持装置の上部材3は、仮にクリップ体4によるクランプが解除されても、ケーブル類1を抜き外しできる状態まで上向き回動させることはできない。従って、安全性が高い。
【0037】
本実施形態では、クリップ体4の指掛け部24は下部材2の逃がし凹所25に入り込んでいるため、クリップ体4が前向きにはみ出ることをできるだけ抑制して、物が引っ掛かるような不具合を抑制できる利点がある。
【0038】
下部材2は、
図1,2の状態で上下方向に相対動する金型(キャビとコア)を使用して成形されるが、ブラケット片19と支軸20とが実線の形態であると、それらブラケット片19と支軸20とは、スライド型を使用して成形する必要がある。他方、
図1に一点鎖線で示すように、ブラケット片19の前端をフロント重合部17から直立させると共に、フロント重合部17に支軸20が上から重なる切り開き溝26を形成すると、相対動するキャビとコアだけでブラケット片19及び支軸20を成形できる。
【0039】
(3).第2〜3実施形態(
図3)
次に、
図3以下の実施形態を説明する。
図3(A)に示す第2実施形態では、上部材3に前向きずれ防止手段を設けている。すなわち、まず、上部材3に形成したリア係合溝9の前端に下向きリブ28を設ける一方、上部材3の後端(一端)に形成したリア係合片14の後端に上向きリブ29を形成して、これらのリブ28,29によって上部材3の前向き抜けを阻止している。
【0040】
また、下部材2に設けたフロント重合部16の後端に段部30を形成する一方、上部材3のフロント重合部17に、段部30に嵌まる下向き突起31を形成して、これら下向き突起31と段部30との嵌まり合いによっても、上部材3の前向き移動を阻止している。
【0041】
これら後部の前向き防止手段と前部の前向き防止手段とは、いずれか一方のみを採用したらよい。そして、このような前向き防止手段を採用すると、ケーブル類1をしっかり保持できると共に、特に、保管や運搬に際して、上部材3が下から外れることを防止できる。
【0042】
図3(B)に示す第3実施形態では、左右の位置決め片18の内側面に、上部材3の横向き空所11に係合する突起(アンダーカット)32を設けている。この構成では、突起32が下部材2に係合して、上部材3を下部材2に重ねた状態に仮保持できるため、運搬や保管に際して、クリップ体4はフリー状態のままにしておくことが可能である。
【0043】
従って、ケーブル類1をセットするにおいて、クリップ体4をフリー状態に戻す作業を無くすことが可能になる。
図3(A)の構成と
図3(B)の構成とを組み合わせると、更に有益である。
【0044】
(5).第4実施形態(
図4)
図4に示す第4実施形態では、上部材3にブラケット片19と支軸20とを形成するにおいて、まず、ブラケット片19はフロント重合部17の左右中間部に1つのだけ形成して、支軸20はブラケット片19から左右に張り出した状態に形成している。更に、ブラケット片19の前面は上に向けて後退する傾斜面に形成し、また、上部材3のフロント重合部17に、支軸20の下方に位置した逃がし穴33を形成している。
【0045】
この実施形態では、クリップ体4の軸受け部21は、ブラケット片19が入り込む切り開き溝34によって左右に分断されている。すなわち、クリップ体4は、軸受け部21が二股になった先割れ方式になっている。
【0046】
上部材3は、矢印35で示すように、上下方向に相対動するキャビとコアとを使用して成形されるが、本実施形態では、支軸20の下面は、逃がし穴33に貫通する形態の突起によって成形されるため、スライド型を使用することなく、キャビとコアとで製造できる。従って、成形コストを抑制できる。
【0047】
(6).第5,6実施形態(
図5,6)
図5に示す第5実施形態では、請求項3を具体化したものである。この実施形態では、下部材2における受け部8の上部に、1つの下ブラケット片36を突設して、この下ブラケット片36に左右一対の下支軸37を一体に形成している。一方、クリップ体4は、下端に軸受け部21が形成されているが、下支軸37が左右に分離していることに対応して、軸受け部21は切り開き溝34によって左右に分断している。上部材3のフロント重合部17には、クリップ体4の左右ずれを阻止するため、左右の位置決め片17aを上向きに突設している。
【0048】
そして、上部材3のフロント重合部17に、クリップ体4の係止部23が弾性変形して強制的に嵌合する上顎部(係合部)38を上向きに突設している。また、係止部23の後ろ向き移動を阻止するストッパー部39も形成している。
【0049】
この実施形態において、下部材2は左右方向に相対動する金型を使用して成形されるが、下ブラケット片36は受け部8の左右中間部に位置していて、支軸37は型抜き方向に突出しているため、スライド型を使用することなく、下ブラケット片36及び支軸37を成形できる。従って、コストを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態のように上部材3に上顎部38を形成すると、クリップ体4が挟持状態になっていることを視覚的に容易に確認できる。従って、点検作業の手間を軽減できる利点もある。
【0051】
図6に示す第6実施形態では、上部材3は
図4と同じ構造になっている。他方、
図4とは異なって、まず、下部材2に設けた下顎部22を、受け部8の外周面から前向きに突出させている。また、クリップ体4の指掛け部24は、先端を折り返して潰した形態としている。
【0052】
この実施形態では、指掛け部24は受け部8の手前に位置しており、指掛け部24と受け部8との間には、人が指先を挿入できる間隔が空いている。従って、下部材2は、スライド型を使用することなく、キャビとコアだけで成形できる。
【0053】
(7).第7実施形態(
図7)
図7に示す第7実施形態では、大きな特徴として、まず、上部材3がピン41によって下部材2に連結されている。すなわち、下部材2の左右中間部と上部材3の左右側部とに軸受け部42,43を形成して、これら軸受け部42,43を左右長手のピン41で連結している。このようにピン41で連結すると、ケーブル類1を正確に位置決めできると共に、上部材3の外れを確実に防止できる。
【0054】
また、この実施形態では、他の大きな特徴として、上部材3に、上下方向に弾性変形するばね板部44を形成している。ばね板部44は、左右のスリット45によって前後長手の帯状になっており、かつ、側面視で下向きにずれるように曲げることにより、上下方向に変形することを許容している。この実施形態では、ケーブル類1の外径に多少の誤差があっても、ばね板部44によってケーブル類1を弾性的に押さえ保持されるため、ケーブル類1を誤差に関係なくガタ付きなく保持できる。
【0055】
この実施形態では、下部材2と上部材3との挟持構造(クランプ構造)は
図6の例とほぼ共通しているが、
図6は異なって、クリップ体4の指掛け部24がカール構造になっている。また、下部材2の受け部8のうち、クリップ体4の指掛け部24の後ろ側の部位は、少し凹んでいる。
【0056】
(8).第8〜10実施形態(
図8,9)
ケーブル類1は、外径が大きく相違するものが複数種類存在している。この場合、ケーブル類1の外径に応じて複数種類の支持装置を製造しておくと、コストが嵩むと共に管理にも手間がかかる。そこで、1種類の支持装置で、外径が相違する複数種類のケーブル類1に対応できると重宝である。
【0057】
このように、複数種類の外径のケーブル類1に対応する手段として、まず、
図8に示す第8実施形態では、上部材3に、小径のケーブル類1を押さえる補助スペーサ46を取付けている。
【0058】
補助スペーサ46は、弾性に抗して潰れ変形するように軟質樹脂やエラストマーで製造されており、取付け爪47を上向きに突設している。他方、上部材3には、取付け爪47が係合する係合穴48を開口させている。補助スペーサ46は着脱自在であり、ケーブル類1の外径に応じて複数種類を用意しておいたらよい。敢えて述べるまでもないが、最も大きい外径のケーブル類1を支持する場合は、補助スペーサ46は使用しない。
【0059】
図9(A)に示す第9実施形態では、補助スペーサ46は、ゴムやエラストマーのように大きく弾性変形する材料により、非ループ状に形成されている。この実施形態では、補助スペーサ46は大きく広げることができるため、ケーブル類1への嵌め込みに支障はない。ずれ動きを防止するため、上部材3及び下部材2を左右から挟むフランジ46aを設けている。
【0060】
図9(B)(C)に示す第10実施形態では、補助スペーサ46は、半円状部材49がヒンジ49aによって連結された構造になっている。この補助スペーサ46は、ポリエチレン等の樹脂の成形品であり、図示のように展開した状態に成形されて、折り返されて使用される。そして、多数のリブによって所定の内径と外径とに大きな差を形成している。また、左右両端には、上部材3及び下部材2を左右から挟むずれ防止フランジ46aを形成している。
【0061】
従来、ケーブルを結束具(ワイヤー)で縛り固定していたが、
図8に示すように、下部材2に、従来と同様に結束具53でケーブル類1を縛り固定手段を設けることも可能である。
【0062】
すなわち、下部材2のうちその背部に、結束具53が挿通可能な第1穴50を設ける一方、下部材2の前下部に、結束具53の端部を挿通可能な第2穴51が空いた縛り付け部52を突設しており、第2穴51に挿通した結束具53の両端部をねじり合わせて縛り付け部52に固定するようになっている。下部材2は従来の結束具53も使用可能であるため、ケーブル類1の外径が補助スペーサ46で対応できない寸法であっても、結束具53によって確実に固定できる。従って、下部材2の使用価値を向上できる。
【0063】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、クリップ体は、金属板製には限らず、線材製品や樹脂成形品も採用できる。金属板製とする場合でも、必ずしもC型部を有する必要はないのであり、例えばJ形に形成することも可能である。上部材や下部材の実施形態は、その趣旨に反しない限り、互いに組合わせることができる。
【0064】
また、上部材及び下部材も、ケーブル類を挟む機能とクリップ体で挟持される部分があれば良いのであり、その機能を有する限り、様々に具体化できる。