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特開2019-191160RCCピボットを備えた細長材共振器のための衝撃に対する保護
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-191160(P2019-191160A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】RCCピボットを備えた細長材共振器のための衝撃に対する保護
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/04 20060101AFI20191004BHJP
   G04B 31/02 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   G04B17/04
   G04B31/02
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-56020(P2019-56020)
(22)【出願日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】18169741.8
(32)【優先日】2018年4月27日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ジャック・ボルン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RCCたわみピボットを備えた細長材共振器を提供する。
【解決手段】構造1及び軸Dのまわりを振動する慣性要素2を備える計時器用共振器機構100であって、慣性要素2には、弾性共振器細長材3でRCCたわみピボット200が与える戻し力が与えられ、各細長材3は、構造1と慣性要素2に固定され、実質的に軸Dに垂直な平面内にて変形可能で、直線状であり、互いに平行な平面内又は一致する平面内にて延在し、軸Dに垂直な平面上への射影において、細長材3の方向の交差点が軸Dを定め、細長材3は、衝撃対策要素10が備える高剛性要素13に対する慣性要素2の側に固定され、高剛性要素13には細長材3)が固定され、高剛性要素13は、慣性要素2を懸架し続けるように構成している衝撃対策用フレキシブル要素11と一体化され、衝撃対策要素10は、たわみピボット200の細長材3を衝撃に対して保護する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(1)と少なくとも1つの慣性要素(2)を有する計時器用共振器機構(100)であって、
前記少なくとも1つの慣性要素(2)は、回転軸(D)のまわりの回転運動をするように振動するように構成しており、
前記少なくとも1つの慣性要素(2)の慣性中心は、前記回転軸(D)上に整列しており、
前記少なくとも1つの慣性要素(2)には、複数の弾性共振器細長材(3)を有する少なくとも1つのRCCたわみピボット(200、201、301)が与える戻し力が与えられ、
各弾性共振器細長材(3)は、その第1の端にて前記構造(1)に直接又は間接的に固定されており、第2の端にて前記少なくとも1つの慣性要素(2)に直接又は間接的に固定されており、
各弾性共振器細長材(3)は、前記回転軸(D)に垂直な平面内にて延在しており、実質的に前記回転軸(D)に垂直な前記平面内にて変形可能であり、
前記弾性共振器細長材(3)は、直線状であり、互いに平行である平面内又は一致している平面内にて延在しており、
前記回転軸(D)に垂直な平面上への射影において、前記弾性共振器細長材(3)が延在している方向(D1、D2)どうしの交差点を前記回転軸(D)が通り、
前記共振器機構(100)は、高剛性要素(13)を有する衝撃対策要素(10)を備え、
前記高剛性要素(13)には、前記弾性共振器細長材(3)の前記第2の端が固定され、
前記高剛性要素(13)には、内面(15)を境界としているチャンバー(16)があり、
この内面(15)には、前記チャンバー(16)内にて、少なくとも1つの衝撃対策用フレキシブル細長材(11)が固定されており、
この衝撃対策用フレキシブル細長材(11)は、前記慣性要素(2)を担持している又は前記慣性要素(2)が備えるアーバー(22)を担持している内側リング(14)を懸架し続けて、前記チャンバー(16)の閉じ込めの範囲内にて、前記内側リング(14)の前記回転軸(D)に対する半径方向の運動又は前記回転軸(D)に垂直な平面内の近軸運動のいずれも可能にするように構成しており、
これによって、前記慣性要素(2)が衝撃によって加速したときに前記高剛性要素(13)のいずれの回転をも防ぎ、
前記衝撃対策要素(10)は、前記たわみピボット(200、201、301)の前記弾性共振器細長材(3)を衝撃に対して保護する
共振器機構(100)。
【請求項2】
前記高剛性要素(13)は、あらゆる自由度において、前記たわみピボットの前記弾性共振器細長材(3)よりも、そして、前記衝撃対策要素(10)が備える各衝撃対策用フレキシブル細長材(11)よりも、少なくとも100倍剛性が高い
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項3】
各衝撃対策用フレキシブル細長材(11)は、実質的に前記回転軸(D)のまわりに巻かれる
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項4】
各衝撃対策用フレキシブル細長材(11)は、実質的に前記回転軸(D)のまわりの回転体である
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項5】
前記衝撃対策要素(10)には、前記回転軸(D)のまわりにて規則的に分布している複数の同一の前記衝撃対策用フレキシブル細長材(11)がある
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項6】
前記衝撃対策要素(10)は、弾性内側リング(14)を有しており、この弾性内側リング(14)には、前記衝撃対策用フレキシブル細長材(11)がその内側にて固定されており、
前記衝撃対策用フレキシブル細長材(11)は、前記高剛性要素(13)にその外側から固定されており、
前記高剛性要素(13)は、実質的に環状であり、前記高剛性要素(13)に、前記弾性内側リング(14)が懸架されており、
前記弾性内側リング(14)には、前記慣性要素(2)のアーバー(22)の保持と同心的クランプのための複数の内側肩部(12)がある
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項7】
第1の固有モードにおける前記衝撃対策要素(10)の回転共鳴周波数は、1000Hzよりも高い
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項8】
前記慣性要素(2)の振動周波数は、5〜100Hzである
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの慣性要素(2)には、互いに対向するようにマウントされた1対の同一の前記RCCたわみピボット(201、301)が与える戻し力が与えられ、
前記弾性共振器細長材(3)はすべて、その第2の端にて、単一の共通の衝撃対策要素(10)に固定される
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項10】
前記慣性要素(2)の重心は、前記RCCたわみピボット(200、201、301)の回転軸どうしが離れているときには、それらの回転軸から等距離にあり、
回転軸どうしが同軸であるときには、その回転軸と整列している
請求項9に記載の共振器機構(100)。
【請求項11】
前記対の前記RCCたわみピボット(200、201、301)は、前記慣性要素(2)の両側にて、平行な平面内に配置されている
請求項9に記載の共振器機構(100)。
【請求項12】
前記対の前記RCCたわみピボット(200、201、301)は、前記構造(1)の2つの固定要素の両側に配置されており、これらの固定要素の間を前記慣性要素(2)が動くことができる
請求項11に記載の共振器機構(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記衝撃対策用フレキシブル細長材(11)は、前記慣性要素(2)を保持し弾性的にクランプするように構成している
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項14】
前記衝撃対策要素(10)には、複数の衝撃対策用フレキシブル細長材(11)があり、
各衝撃対策用フレキシブル細長材(11)は、前記慣性要素(2)を保持し弾性的にクランプするように構成している
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項15】
前記共振器機構(100)には、少なくとも1つの下側の軸方向の止め及び/又は少なくとも1つの上側の軸方向の止めを有する軸方向の止め手段があり、
前記軸方向の止め手段は、少なくとも1つの前記慣性要素(2)と当接するように係合するように構成しており、
これによって、前記回転軸(D)の方向の軸方向の衝撃から前記共振器機構(100)を保護する
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項16】
前記共振器機構(100)には、いくつかの平行な高さレベルにわたって延在している複数の前記慣性要素(2)があり、
前記共振器機構(100)には、2つの隣接した前記高さレベルにある前記慣性要素(2)の間に配置された少なくとも1つの中間的な軸方向の止めがある
請求項1に記載の共振器機構(100)。
【請求項17】
請求項1に記載の共振器機構(100)を有しており、
エスケープ機構(300)と連係するように構成している
発振器(400)。
【請求項18】
請求項17に記載の発振器(400)を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメント(500)。
【請求項19】
請求項1に記載の共振器機構(100)を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメント(500)。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のムーブメント(500)を少なくとも1つ、
請求項17に記載の発振器(400)を少なくとも1つ、
又は請求項1に記載の共振器機構(100)を少なくとも1つ
有する腕時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造と少なくとも1つの慣性要素を有する計時器用共振器機構に関する。前記少なくとも1つの慣性要素は、回転軸のまわりの回転運動をするように振動するように構成しており、前記少なくとも1つの慣性要素の慣性中心は、前記回転軸上に整列している。前記少なくとも1つの慣性要素には、複数の弾性共振器細長材を有する少なくとも1つのRCCたわみピボットが与える戻し力が与えられ、各弾性共振器細長材は、その第1の端にて前記構造に直接又は間接的に固定されており、第2の端にて前記少なくとも1つの慣性要素に直接又は間接的に固定されている。各弾性共振器細長材は、前記回転軸に垂直な平面内にて延在しており、実質的に前記回転軸に垂直な前記平面内にて変形可能である。前記弾性共振器細長材は、直線状であり、互いに平行である平面内又は一致している平面内にて延在しており、前記回転軸に垂直な平面上への射影において、前記弾性共振器細長材が延在している方向どうしの交差点を前記回転軸が通る。
【0002】
本発明は、さらに、前記のような共振器機構及びエスケープ機構を少なくとも1つ備える発振器に関する。
【0003】
本発明は、さらに、前記のような発振器及び/又は前記のような共振器機構を少なくとも1つ備える計時器用ムーブメントに関する。
【0004】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント及び/又は少なくとも1つの前記のような発振器及び/又は少なくとも1つの前記のような共振器機構を備える腕時計に関する。
【0005】
本発明は、計時器用共振器の分野に関し、特に、発振器の動作のための戻し手段としてはたらく弾性共振器細長材を備えるものに関する。
【背景技術】
【0006】
ほとんどの計時器用発振器、特に、交差型の細長材共振器用のもの、にとって、耐衝撃性は解決することが困難な課題である。実際に、面外の衝撃を受けたときに、細長材が経験する応力は非常に高い値まで急に達し、このことによって、その部品が降伏の前に可能な移動量が小さくなる。
【0007】
計時器用のショックアブソーバーには多くの変種がある。しかし、それらの機能は、本質的に、アーバーの脆弱なピボットを保護することであり、伝統的なバランスばねのような弾性要素を保護することではない。
【0008】
ETA Manufacture Horlogere Suisseによる欧州特許出願EP3054357A1は、構造といくつかの別個のプライマリー共振器を備える計時器用発振器を開示している。これらのプライマリー共振器は、時間的かつ幾何学的構成的にオフセットされておりそれぞれが弾性戻し手段によって構造の方に戻される錘を備える。この発振器は、車セットの運動を駆動する駆動手段を備えるプライマリー共振器の間の相互作用のための連結手段を有しており、この車セットは、トランスミッション手段に連接する制御手段を駆動しガイドするように構成している駆動及びガイド手段を有しており、そのそれぞれは、制御手段から離れた位置においてプライマリー共振器の錘に連接している。プライマリー共振器と車セットは、2つのプライマリー共振器のいずれかの連接軸と、制御手段の連接軸とが共面となることはないように構成している。
【0009】
Swatch GROUP RESEARCH & DEVELOPMENT Ltdによる欧州特許出願EP3035127A1は、音叉によって形成している共振器を備える計時器用発振器を開示している。この音叉には、フレキシブル要素によって接続要素に固定された少なくとも2つの可動振動部分がある。このフレキシブル要素の幾何学的構成によって、プレートに対する所定の位置の仮想的な回転軸が決まり、このフレキシブル要素のまわりを、対応する可動振動部分が振動し、この可動振動部分の重心が、待機位置において、対応する仮想的な回転軸と一致している。
【0010】
少なくとも1つの可動部に対して、フレキシブル要素は、2つの平行な平面内において互いに離れている交差型の弾性細長材によって形成されており、その方向は、平行な平面のうちの1つの上への射影において、可動部の前記仮想回転軸にて交差する。
【0011】
PATEK PHILIPPEによるスイス特許出願CH711573A2は、フレームと、そのフレームの内部又はそのフレーム上にてマウントされている機構を備える計時器用ムーブメントを開示している。この機構は、弾性ベアリング部によって接続している固定部分及び可動部分を有するたわみベアリングシステムを備える。このたわみベアリングシステムは、少なくとも部分的にフレーム要素の開口内に位置しており、固定部分によって前記開口の側壁に固定される。
【0012】
LVMHによる欧州特許出願EP3021174A1は、単一のプレートにおいて作られたモノリシックな計時器用レギュレーターを開示している。これは、高剛性の外装要素、高剛性の内部要素、及び弾性懸架メンバーを有しており、この弾性懸架メンバーは、高剛性の外装要素を高剛性の内部要素に接続しており、これによって、それらの間にて振動する回転運動が可能になる。高剛性の内部要素には、互いに堅く接続されるアームがあり、これらのアームの間の角間隔は自由であり、これらの自由な角間隔の範囲内にて懸架メンバーが位置する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、RCC(リモートセンターコンプライアンス)たわみピボットを備えた細長材共振器の細長材を保護し、したがって、システムの良好な性能を確実にすることを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、本発明は、請求項1に記載の細長材共振器機構に関する。
【0015】
本発明は、さらに、前記のような共振器機構及びエスケープ機構の少なくとも1つを備える発振器に関する。
【0016】
本発明は、さらに、前記のような発振器を少なくとも1つ及び/又は前記のような共振器機構の少なくとも1つを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0017】
本発明は、さらに、前記のような計時器用ムーブメント及び/又は少なくとも1つの前記のような発振器及び/又は少なくとも1つの前記のような共振器機構を備える腕時計に関する。
【0018】
添付図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことで、本発明の他の特徴及び利点を理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】RCCたわみピボットがある弾性共振器細長材を備えた共振器機構の部分的な概略平面図である。これは、このRCCピボットの弾性共振器細長材の端に、本発明に係る衝撃対策要素を備え、その中に慣性錘のアーバー(図示せず)が保持されている。
図2】この衝撃対策要素の詳細を示している。これは、実質的に環状の高剛性の外装要素を備え、これに、RCCピボットを衝撃に対して保護する3つの耐衝撃フレキシブル細長材を介して弾性内部要素が懸架されている。具体的には、この内側リングは慣性錘のアーバーをクランプする。なお、これに限定されない。
図3】対向するように配置された2つのRCCピボットを備えたアセンブリーについての概略的な軸方向に沿った断面図である。上側ピボットがブリッジよりも上にあり、下側ピボットがプレートよりも下にあり、これらの上側ピボットと下側ピボットのそれぞれが、ブリッジとプレートの間に位置している慣性錘のアーバーの一端をクランプしている。
図4図3のアセンブリーについての概略的な平面図である。
図5】上側ピボットにおける図3の詳細の概略的な軸方向に沿った断面図である。
図6】発振器を備えるムーブメントを有する腕時計を示しているブロック図である。この発振器は、本発明に係る共振器機構を備える。
図7】2つの重なり合ったRCCピボットを備えた1つの変種のアセンブリーについての図3と同様な形態の図である。これらのRCCピボットもプレートとブリッジの両側に配置されている。
図8図7のアセンブリーについての図4と同様な形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、RCC(リモートセンターコンプライアンス)たわみピボットを備えた細長材共振器の細長材を保護し、したがって、システムの良好な性能を確実にすることを提案するものである。
【0021】
Swatch Group Research & Development Ltdによるスイス特許出願CH01511/16は、ヘッドツーテール構成のV字形のたわみピボット及びRCCたわみピボットのための耐衝撃デバイスを開示している。この出願は、前記のような機構に有利であり当業者が本説明の開示内容と組み合わせて実装することが容易であるような数多くのバンキング構成を必要とする。これらについてはここで再び詳細に説明しない。
【0022】
なお、頭部と尾部が対向する構成のV字形のピボット構成には、4つの細長材を並置して、その少なくとも1つの細長材が曲がったり屈曲してアセンブリーの損傷を防ぐことができるという利点がある。
【0023】
RCCピボットに衝撃が発生する場合には状況はもっと難しい。なぜなら、衝撃の方向が細長材の1つと平行であり非常に剛性が高く細長材を伸ばす傾向がある場合、伸びが過度になれば細長材が壊れることがあるからである。このような状況で、本発明は、この特定の場合に対して単純な解決策を提供することを提案する。
【0024】
このために、本発明は、RCCピボットの細長材と慣性要素の間に少なくとも1つの衝撃対策要素を導入することを伴う。
【0025】
このようにして、本発明は、構造1及び少なくとも1つの慣性要素2を備える計時器用共振器機構100に関し、この慣性要素2は、回転軸Dのまわりの回転運動をするように振動するように構成している。この少なくとも1つの慣性要素2の慣性中心は、振動時に回転軸D上に整列している。
【0026】
この少なくとも1つの慣性要素2は、少なくとも1つのRCCたわみピボットが与える戻し力が与えられる。このRCCたわみピボットは、図1及び2においては200、図3及び4においては201、301の符号が付されている。このたわみピボット200、201、301には複数の弾性共振器細長材3がある。これらの細長材3のそれぞれは、第1の端にて構造1に直接又は間接的に固定されており、第2の端にて少なくとも1つの慣性要素2に直接又は間接的に固定されている。弾性共振器細長材3はそれぞれ、回転軸Dに垂直な平面において延びており、実質的に回転軸Dに垂直な平面内にて変形可能である。好ましくは、弾性共振器細長材3は直線状である。なお、これに限定されない。これらの弾性共振器細長材3は、互いに平行である平面内又は一致する平面内にて延在しており、回転軸Dに垂直な平面上への射影において、弾性共振器細長材3が延在している方向D1、D2どうしの交差点を回転軸Dが通る。
【0027】
本発明によると、共振器機構100は、高剛性要素13を有する衝撃対策要素10を有しており、この高剛性要素13上に細長材3の第2の端が固定されており、この高剛性要素13は、慣性要素2を懸架させ続けるように構成している少なくとも1つの衝撃対策細長材11と一体化されている。この衝撃対策要素10は、たわみピボット200、201、301の細長材3を衝撃に対して保護する。
【0028】
この高剛性要素13には、内面15を境界としているチャンバー16がある。この内面15には、チャンバー16内にて、内側リング14を懸架させ続けるように構成している少なくとも1つの前記のような衝撃対策用フレキシブル細長材11が固定されている。このようにして高剛性要素13内にて懸架されるこの内側リング14は、慣性要素2を担持しており又は慣性要素2が備えるアーバー22を担持している。
【0029】
前記少なくとも1つの衝撃対策用フレキシブル細長材11、特に、図1及び2に示しているような複数の衝撃対策用フレキシブル細長材11は、チャンバー16の範囲内における内側リング14についての、回転軸Dに対するいずれの半径方向の運動又は回転軸Dに垂直な平面内におけるいずれの近軸運動をも可能にするように構成しており、これによって、慣性要素2が衝撃の加速度を与えられたときに高剛性要素13のいずれの回転をも防ぐ。このようにして、衝撃対策要素10は、たわみピボット200、201、301の細長材3を衝撃に対して保護する。「近軸運動」とは、回転軸Dに垂直な像の平面内において、内側リング14が、図2の軸X又はYの一方に沿って、回転せずに、待機時の向きと平行に動くことを意味している。
【0030】
内側リング14の回転が防がれることによって、衝撃対策用フレキシブル細長材11が共振器機構100の動作を妨げることができなくなることが確実になる。
【0031】
内側リング14の半径方向又は近軸のトラベルは、衝撃対策用フレキシブル細長材11の構成が直接接触を可能にする場合、チャンバー16の内面15に接触する止め位置まで動くことができる。図1及び2の特定の変種(これに限定されない)におけるように、衝撃対策用フレキシブル細長材11の構成が内側リング14と内面15の間の直接接触を可能にしないようになっている場合、内側リング14は、衝撃対策用フレキシブル細長材11の少なくとも1つと接触する止め位置まで動くことができる。具体的には、図1及び2におけるように、これらの衝撃対策用フレキシブル細長材11は、チャンバー16の内面15に接触する止め位置まで動くことができ、内側リング14は、自身が内面15に当接している少なくとも1つの衝撃対策用フレキシブル細長材に接触する止め位置まで動くことができる。
【0032】
特に、高剛性要素13は、あらゆる自由度において、たわみピボットの弾性共振器細長材3よりも、そして、衝撃対策用の弾性要素10が備える各衝撃対策用フレキシブル細長材11よりも、少なくとも100倍剛性が高い。
【0033】
異なる構成の衝撃対策用フレキシブル細長材11が可能である。
【0034】
第1の変種において、少なくとも1つの衝撃対策用フレキシブル細長材11、特に、各衝撃対策用フレキシブル細長材11は、実質的に回転軸Dのまわりに巻かれる。
【0035】
第2の変種において、各衝撃対策用フレキシブル細長材11は、実質的に回転軸Dのまわりの回転体である。
【0036】
特に、衝撃対策要素10には、回転軸Dのまわりにて規則的に分布している複数の同一の衝撃対策用フレキシブル細長材11がある。
【0037】
図1及び2に示している有利な実施形態において、衝撃対策要素10には、弾性内側リング14があり、これに各衝撃対策用フレキシブル細長材11が内部的に固定されており、この衝撃対策用フレキシブル細長材11は、高剛性要素13にその外側から固定されており、この高剛性要素13は、実質的に環状であり、この高剛性要素13に弾性内側リング14が懸架されている。具体的には、弾性内側リング14には、慣性要素2のアーバー22を同心的にクランプする複数の内側肩部12がある。
【0038】
好ましくは、衝撃対策用フレキシブル細長材11は、第1の固有モードにおける衝撃対策要素10の回転共鳴周波数が1000Hzよりも大きく又は数千Hzであるように計算される。
【0039】
たわみピボット側で、慣性要素2の振動周波数は、特に、5〜100Hzである。
【0040】
対向するように配置された2つのRCCピボットを備えたアセンブリーによって、以下のことが可能になる。
− 着用時における共振器周波数に対する位置の影響を相殺することが可能になる。慣性錘の重心はRCCピボットから等距離でなければならない。
− システムの剛性を高め、回転軸Dに対応するZ軸に沿った回転しか行わないように慣性錘の運動を制限する。
【0041】
したがって、この少なくとも1つの慣性要素2には、対向するようにマウントされた1対の同一のRCCたわみピボット201、301が与える戻し力が与えられ、細長材3はすべて、それらの第2の端において、単一の共通の衝撃対策要素10に固定される。
【0042】
慣性要素の重心は、RCCたわみピボット201、301の回転軸どうしが離れているときにはこれらに対して等距離であり、前記回転軸が同軸であるときには整列する。
【0043】
図3及び4は、対のRCCたわみピボット201、301が、慣性要素2の両側にて、平行な平面内に配置されているような特定の場合を示している。なお、これに限定されない。特に、これらの対のRCCたわみピボット201、301は、構造1の2つの固定要素の両側に配置されており、これらの固定要素の間を慣性要素2が動くことができる。
【0044】
図7及び8は、2つの重なり合ったRCCピボットを備えた1つの変種のアセンブリーについての図3及び4と同様な形態の図である。これらのRCCピボットもプレートとブリッジの両側に配置されている。
【0045】
1つの変種において、衝撃対策要素10において、少なくとも1つの衝撃対策用フレキシブル細長材11は、慣性要素2を保持し弾性的にクランプするように構成している。特に、衝撃対策要素10には、複数の衝撃対策用フレキシブル細長材11があり、これらのそれぞれは、慣性要素2を保持し弾性的にクランプするように構成している。
【0046】
同じ慣性錘に対して、以下のことがいえる。
− 細長材11の回転剛性(システムの共振振動数)は、細長材3の剛性に対して、少なくとも100倍、特に、少なくとも500倍、さらに具体的には、少なくとも1000倍である。これによって、共振振動数が妨げられなくなる。
− 細長材11の平面における並進剛性(システムの共振振動数)は、細長材3の剛性に対して、少なくとも100倍、特に、少なくとも500倍であり、さらに具体的には、少なくとも1000倍である。これによって、衝撃を受けたときの運動が確実になる。
【0047】
細長材11と細長材3の方向Zにおける並進剛性は、衝撃を受けたときに、細長材11と細長材3の両方が止め位置への慣性錘の変位に貢献するようにされる。
【0048】
特に、共振器機構100は、少なくとも1つの下側の軸方向の止め及び/又は少なくとも1つの上側の軸方向の止めを有する軸方向の止め手段を備え、この軸方向の止め手段は、少なくとも1つの慣性要素2と当接するように係合するように構成しており、これによって、回転軸Dの方向の軸方向の衝撃から共振器機構100を保護する。
【0049】
この機構にスイス特許出願CH01511/16の様々な構成を有利に組み入れることができる。
【0050】
図3は、細長材203を備えた上側RCCピボット200を備えた特定の場合を示している。構造1にあるブリッジ120の上側には固定部分201があり、慣性要素2のアーバー22の上側ピボット210の近傍には止めがある。このアーバー22は、このブリッジ120と構造1のプレート130との間に閉じ込められ、このプレート130の下には、細長材303がある下側RCCピボット300の固定部分301が固定されている。衝撃対策要素10は、弾性共振器細長材3の先に延在しており、図5において詳細に示しておらず、この衝撃対策要素10は、両側において、ブリッジ120(又はプレート13)の対応する面121から離れた距離にて、アーバー22の肩部21に当接するように動くように設計されており、このアーバー22には、慣性要素2の側にて、ブリッジ120(又はプレート130)の下側122から離れた距離にて肩部がある。
【0051】
図示していない1つの変種において、共振器機構100には、いくつかの平行な高さレベルにわたって延在している複数の慣性要素2があり、共振器機構100には、隣接した2つの高さレベルにある慣性要素2の間に配置された少なくとも1つの中間的な軸方向の止めがある。
【0052】
本発明は、さらに、エスケープ機構300と連係するように構成している前記のような共振器機構100を備える発振器400に関する。
【0053】
本発明は、さらに、前記のような発振器400及び/又は前記のような共振器機構100を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメント500に関する。
【0054】
本発明は、さらに、前記のようなムーブメント500及び/又は前記のような発振器400及び/又は前記のような共振器機構100を少なくとも1つ有する腕時計1000に関する。
【符号の説明】
【0055】
1 構造
2 慣性要素
3 弾性共振器細長材
10 衝撃対策要素
11 衝撃対策用フレキシブル細長材
12 内側肩部
13 高剛性要素
14 内側リング
15 内面
16 チャンバー
22 アーバー
100 共振器機構
200、201、301 RCCたわみピボット
300 エスケープ機構
400 発振器
500 計時器用ムーブメント
1000 腕時計
D 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
2019191160000001.pdf